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【発明の名称】 積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体
【発明者】 【氏名】石田 剛
【住所又は居所】神奈川県相模原市小山3丁目37番19号 帝人デュポンフィルム株式会社相模原研究センター内

【氏名】小菅 雅彦
【住所又は居所】神奈川県相模原市小山3丁目37番19号 帝人デュポンフィルム株式会社相模原研究センター内

【氏名】室岡 博文
【住所又は居所】神奈川県相模原市小山3丁目37番19号 帝人デュポンフィルム株式会社相模原研究センター内

【要約】 【課題】耐ブロッキング性、平坦性、加工適性に優れ、金属蒸着薄膜型磁気記録媒体のベースフィルムとしたときに優れた電磁変換特性を奏する積層熱可塑性樹脂フィルムの提供。

【解決手段】ポリエステル層Aとその片面に積層されたポリエステル層Bとからなり、該層Bを構成するポリエステルは、固有粘度が0.55以上で、末端カルボキシル基濃度が35eq/106g以上で、不活性粒子(B)と炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスとを含有し、積層ポリエステルフィルムのポリエステル層A側の露出面は、非接触3次元粗さ計による倍率25倍で測定した中心線粗さWRaA(25)が0.1〜4nmの範囲で、同粗さ計による倍率2.5倍で測定した中心線粗さWRaA(2.5)が1〜15nmの範囲である積層ポリエステルフィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエステル層Aとその片面に積層されたポリエステル層Bとからなり、該層Bを構成するポリエステルは、固有粘度が0.55以上で、末端カルボキシル基濃度が35eq/106g以上で、不活性粒子(B)と炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスとを含有し、積層ポリエステルフィルムのポリエステル層A側の露出面は、非接触3次元粗さ計による倍率25倍で測定した中心線粗さWRaA(25)が0.1〜4nmの範囲で、同粗さ計による倍率2.5倍で測定した中心線粗さWRaA(2.5)が1〜15nmの範囲であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】 不活性粒子(B)の平均粒径が50〜1000nmで、該粒子の含有量が、ポリエステル層Bの重量を基準として、0.001〜1重量%の範囲にある請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
【請求項3】 ポリエステル層Bのポリエステル層Aと接していない側の表面の非接触3次元粗さ計で測定した十点平均粗さ(WRzB)が30〜300nmの範囲にある請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
【請求項4】 ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】 ポリエステル層Aのポリエステル層Bと接していない面に、皮膜層Cが積層されている請求項1〜4記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】 皮膜層Cが、平均粒径10〜50nmおよび体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有する請求項5記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】 積層ポリエステルフィルムのポリエステル層A側の露出面が、強磁性金属薄膜層を形成する面で、磁気記録媒体の支持体として用いる請求項5記載の積層ポリエステルフイルム。
【請求項8】 磁気記録媒体がデジタル記録方式の磁気テープである請求項7記載の磁気記録媒体用積層ポリエステルフィルム。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載の磁気記録媒体用積層ポリエステルフイルムをベースフィルムと、その片面に設けられた磁気記録層とからなることを特徴とする磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層ポリエステルフイルムに関する。さらに詳しくは電磁変換特性や走行耐久性に優れた磁気記録媒体、特にデジタルデータを記録する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体、例えばデジタルビデオカセットテープ、データストレージテープ等の支持体として有用な積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリングなどの物理沈着法またはメッキ法により非磁性支持体上に形成させた強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の開発、実用化が進められている。例えば、Coの蒸着テープ(特開昭54―147010号公報)、Co―Cr合金からなる垂直磁気記録媒体(特開昭52―134706号公報)が知られている。
【0003】従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚く、また、記録密度が低く、記録波長も長い。これに対し、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングなどの薄膜形成手段によって形成される強磁性金属薄膜型磁気記録媒体における金属薄膜は、厚みが0.2μm以下と非常に薄くなっている。
【0004】このため、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁気記録層の表面性に影響する程度は、金属薄膜の方がはるかに大きい。すなわち、強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の場合、非磁性支持体の表面状態が、そのまま金属薄膜の表面の凹凸として発現し、それが記録・再生信号の雑音の原因となる。従って、非磁性支持体の表面は、できるだけ平滑であることが望ましい。
【0005】一方、非磁性支持体の製膜、加工工程での搬送、巻き取り、巻出しといったハンドリングの観点からは、フィルムが滑り性に優れることが好ましい。フィルム表面が平滑過ぎると、フィルム―フィルム相互の滑り性が悪化し、かつまた表面に傷が生じやすくなり、製品歩留りの低下、ひいては製品の製造コストの上昇をきたす。従って、製造コストという観点では、非磁性支持体の表面はできるだけ粗いことが好ましい。
【0006】また、金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、金属薄膜とベースフィルムとの密着性を良好にするため、金属薄膜成形前に、イオンボンバード処理と呼ばれる、ベースフィルム表面をイオンにより活性化する処理を行なう。そして、金属薄膜成形時には、フィルム表面にかなり高温の熱がかかり、ベースフィルムが融解したり、機械特性などの物性が低下しないように、フィルムの背面を冷却する。この背面冷却には、通常ドラム状冷却体にベースフィルムを巻き付ける方法が採用され、その際、ドラム表面に金属薄膜が形成されないようにベースフィルム両端をマスキングする。
【0007】従って、前記蒸着工程を通過したサンプルロールの両端部には、このマスキングによって金属薄膜が形成されかった部分がイオンボンバード処理によって表面が活性化されたままの状態で長手方向に連続的に存在する。そして、この部分は、ロール状に巻き上げられた状態では、反対面側と高い力で接触することになり、ブロッキングを引き起しやすくなる。金属薄膜型磁気記録媒体を製造する際には、金属薄膜を蒸着した後に、バックコート層および必要に応じてトップコート層を設けるが、これらの加工工程において前記ブロッキングが発生していると、ベースフィルムの切断やしわが発生しやすくなり、収率が大幅に低下してしまうという問題が生じる。このようなブロッキングを防ぐためにも、非磁性支持体の表面は粗い方が好ましい。
【0008】このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性という観点からは平滑であることが要求され、他方、ハンドリング性、製造コスト、ブロッキング防止の観点からは、粗いことが要求される。ところで、前記のような相反する要求を満たすため、2層からなり、一方の層の表面よりも、他方の層の表面を粗くした積層フィルム(例えば特公平1−26338号号公報)が提案されている。しかし、この積層フィルムは、粗面層の高い突起が平坦面層に転写したり、粗面層に添加した大きな粒子による平坦面層への突き上げ効果により、磁気記録媒体としたときの電磁変換特性が悪化という問題を抱えている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、耐ブロッキング性、平坦性、加工適性に優れ、金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性を奏する積層熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、本発明によれば、ポリエステル層Aとその片面に積層されたポリエステル層Bとからなり、該層Bを構成するポリエステルは、固有粘度が0.55以上で、末端カルボキシル基濃度が35eq/106g以上で、不活性粒子(B)と炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスとを含有し、積層ポリエステルフィルムのポリエステル層A側の露出面は、非接触3次元粗さ計による倍率25倍で測定した中心線粗さWRaA(25)が0.1〜4nmの範囲で、同粗さ計による倍率2.5倍で測定した中心線粗さWRaA(2.5)が1〜15nmの範囲であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムによって達成される。
【0011】また、本発明は、その好ましい態様として、不活性粒子(B)の平均粒径が50〜1000nmで、該粒子の含有量が、ポリエステル層Bの重量を基準として、0.001〜1重量%の範囲にあること、ポリエステル層Bのポリエステル層Aと接していない側の表面の非接触3次元粗さ計で測定した十点平均粗さ(WRzB)が30〜300nmの範囲にあること、ポリエステル層Aおよび層Bを構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートからなること、ポリエステル層Aのポリエステル層Bと接していない面に、皮膜層Cが積層されていること、該皮膜層Cが、平均粒径10〜50nmおよび体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有すること、積層ポリエステルフィルムのポリエステル層A側の露出面が、強磁性金属薄膜層を形成する面で、磁気記録媒体の支持体として用いること、磁気記録媒体がデジタル記録方式の磁気テープであることを満足する積層ポリエステルフィルムも包含する。
【0012】さらにまた、本発明によれば、上述のいずれかに記載の本発明の磁気記録媒体用積層ポリエステルフイルムを支持体とした磁気記録媒体も提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bを積層した積層フィルムである。
【0014】前記ポリエステル層A、層Bを形成するポリエステルA、Bとしては、脂肪族系ポリエステル、芳香族系ポリエステルが挙げられるが、特に芳香族系ポリエステルが好ましい。ポリエステルAとBはそれぞれ同じ種類でも、異なる種類であっても良い。
【0015】前記芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などを例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0016】これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、本発明の効果を損なわない限り、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0017】さらにトリメリット酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトールなどの3官能以上の多官能化合物を共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。
【0018】ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても、前記と同様に考えてよい。
【0019】前記ポリエステルには、本発明の効果を損なわない程度であれば、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、酸化チタン等)の如き添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0020】本発明における積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、層Bが同じポリエステルからなるのが好ましいが、異なるポリエステルからなっても良い。例えば、層A、層Bがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムが好ましいが、層A(または層B)がポリエチレンテレフタレート、層B(または層A)がポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムであってもよい。
【0021】前記ポリエステル層Aを形成するポリエステルAは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで反応生成物を重縮合せしめる方法で製造することができる。
【0022】前記の方法(溶融重合)により得られたポリエステルAは、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとすることができる。
【0023】この重合において公知の触媒を用いることができ、溶融重合でのエステル交換触媒としてはマンガン、カルシウム、マグネシウム、チタンの酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が好ましく、特に酢酸塩即ち、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸チタンが好ましく挙げられる。また重縮合触媒としては、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物が挙げられる。
【0024】前記アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン等が好ましく挙げられる。また前記チタン化合物としては、有機チタン化合物が好ましく挙げられ、例えば特開平5−298670号公報に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、チタンのアルコラートや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応物等を例示でき、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。さらにまた、前記ゲルマニウム化合物としては、例えば特許2792068号公報に記載されているものを挙げることができる。具体的には、無定形酸化ゲルマニウム、結晶性ゲルマニウム、酸化ゲルマニウムをアルカリ金属又はアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解した溶液、または酸化ゲルマニウムを水に溶解し、これにグリコールを加え水を留去して調整した酸化ゲルマニウムのグリコール溶液などを挙げることができる。
【0025】また、前記ポリエステルAには熱安定性を維持するために従来ポリエステルの製造工程で添加されるリン化合物を含有することが好ましい。このリン化合物は特に限定されないが、正リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェートが好ましく挙げられる。
【0026】前記ポリエステルAの固有粘度は0.45以上が好ましい。更に好ましくは0.47以上であり、特に好ましくは0.50以上である。このポリエステルAの固有粘度が0.45に満たない場合、オリゴマー等のブリードアウトや製膜巻取り工程での破断等が生じ、好ましくない。ポリエステルAにおけるポリマーの固有粘度を0.45以上にする方法としては、原料ポリマーの固有粘度を高くしておく方法や、溶融押出し条件のマイルド化(ポリマー劣化をできるだけ抑制する押出し条件の採用)等が用いられる。
【0027】ところで、本発明における積層ポリエステルのポリエステル層A側の露出面は、非接触3次元粗さ計による倍率25倍で測定した中心線粗さWRaA(25)が0.1〜4nmの範囲で、同粗さ計による倍率2.5倍で測定した中心線粗さWRaA(2.5)が1〜15nmの範囲、好ましくは2.5〜12nmの範囲、特に好ましくは3〜10の範囲であることが必要である。そして、このような表面形状を達成するには、前記ポリエステル層Aは、実質的に粒子を含有しないものが好ましい。ポリエステル層Aが実質的に粒子を含有しない場合、磁気記録媒体としたとき優れた電磁変換特性が得られる。
【0028】本発明におけるポリエステル層Bを形成するポリエステルBは、前記ポリエステルAと同様、従来から知られている方法で製造することができる。その際、公知の触媒を用いることができ、ポリエステルAと同様の触媒を使用するのが好ましく。また、前記ポリエステルAと同様にリン化合物を含有することが好ましい。
【0029】ポリエステルBの固有粘度は0.55以上で、好ましくは0.57以上、特に好ましくは0.60以上である。このポリエステルBの固有粘度が0.55に満たない場合、オリゴマー等のブリードアウトや突起の脱落が酷くなり、これらが反対面に転写してA層の平滑性を損なうというトラブルが生じる。ポリエステルBの固有粘度を0.55以上にする方法としては、固相重合法などによる原料ポリマーの固有粘度を予め高くしておく方法や溶融押出し条件のマイルド化(ポリマー劣化をできるだけ抑制する押出し条件の採用)等が用いられる。
【0030】また、本発明におけるポリエステルBの末端カルボキシル基濃度は35eq/106g以上である必要がある。好ましくは38eq/106g以上である。末端カルボキシル基濃度が35eq/106gに満たないとポリエステルB中の不活性粒子Bとの親和性が劣り、フイルム製造時および金属薄膜成形工程で不活性粒子Bの脱落が生じ、ポリエステル層Aに転写することによって平滑性が低下する。ポリエステル層Bの末端カルボキシル基濃度は35eq/106g以上にするには従来公知の方法が用いられ、例えば、重縮合終了後に溶融保持をしたりする方法が例示できる。なお、ポリエステルBの末端カルボキシル基濃度の上限は、60eq/106g以下であることが、ポリエステルBの熱安定性の観点から好ましく、55eq/106g以下であることが特に好ましい。
【0031】ところで、前記のとおり、本発明におけるポリエステル層A側の露出面は、非接触3次元粗さ計による倍率25倍と倍率2.5倍で測定した中心線粗さWRaA(2.5)が特定の範囲にあることが必要である。そして、このような表面形状を達成するには、前記ポリエステル層Aに実質的に粒子を含有させないほかに、ポリエステル層Bに不活性粒子Bを含有させるのが好ましい。不活性粒子Bを含有しない場合、フイルム製造工程及び金属薄膜成形工程でのブロッキング等の問題が生じる。不活性粒子Bの平均粒径(dB)は、好ましくは50〜1,000nm、さらに好ましくは100〜800nm、よりさらに好ましくは150〜700nm、最も好ましくは200〜600nmである。また、前記不活性粒子Bの含有量は、B層の重量を基準として、好ましくは0.001〜1重量%、さらに好ましくは0.005〜0.8重量%、よりさらに好ましくは0.01〜0.6重量%、最も好ましくは0.01〜0.2重量%の範囲である。さらにまた、前記不活性粒子Bの形状は、体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらには0.2〜π/6、特に0.4〜π/6であることが好ましい。
【0032】前記不活性粒子Bの平均粒径が50nm未満、または含有量が0.001重量%未満であると、巻取り性、耐ブロッキング性が不良となる。一方、平均粒径が1,000nmを超えるか、または含有量が1重量%を超えると、反対面への突起の形状転写や、A層の下からの突起の突き上げによって電磁変換特性を悪化させる。好ましい不活性粒子Bの種類としては、例えば、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、三二酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)、および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる微粒子が挙げられる。これらのうち、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、その他三二酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、合成炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ダイアモンド、またはカオリンからなる微粒子が好ましい。さらに好ましくは、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、その他三二酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、または炭酸カルシウムからなる微粒子である。
【0033】前記不活性粒子Bは1種または2種以上のものを混合して使用してもよい。不活性粒子Bが2種以上の粒子からなる場合、前記不活性粒子Bの平均粒径dBよりも小さい平均粒径の第2、第3の粒子(微細粒子)として、例えばコロイダルシリカ、α、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどの微粒子を好ましく用いることができる。また、平均粒径dBを有する不活性粒子Bとして例示した粒子種のうち、平均粒径の小さい微細粒子も、第2、第3の粒子(微細粒子)として用いることができる。
【0034】この微細粒子の平均粒径は、好ましくは5〜450nm、さらに好ましくは10〜400nm、特に好ましくは30〜350nmである。また、第2、第3の粒子(微細粒子)の含有量は、B層に対し、好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.7重量%、特に好ましくは0.02〜0.5重量%である。
【0035】本発明における積層ポリエステル層Bは、さらに、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを0.001〜1重量%含有するのが好ましい。ここで、(部分ケン化)エステルワックスとは、エステルワックスと部分ケン化エステルワックスとを包含するものである。
【0036】前記脂肪族モノカルボン酸の炭素数は8個以上、好ましくは8〜34個である。この炭素数が8個未満であると、得られたエステル生成物の耐熱性が不充分で、ポリエステルに分散させる際の加熱条件で、脂肪族モノカルボン酸が容易に分解されてしまうため、不適切である。
【0037】炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸としては、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ペヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヘントリアコンタン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびこれらを含む混合物などが挙げられる。
【0038】前記(部分ケン化)エステルワックスのアルコール成分は、水酸基を2個以上有する多価アルコールである。さらに耐熱性の観点から、水酸基を3個以上有する多価アルコールであることが好ましい。モノアルコールを用いたのでは、生成した(部分ケン化)エステルワックスの耐熱性が不足する。
【0039】前記水酸基を2個有する多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましい例として挙げられる。水酸基を3個以上有する多価アルコールとしては、グリセリン、エリスリット、トレイット、ペンタエリスリット、アラビット、キシリット、タリット、ソルビット、マンニットなどが好ましい例として挙げられる。
【0040】前記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールから得られるエステルワックスとしては、多価アルコールの水酸基の数にもよるが、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどが挙げられる。これらの中、耐熱性の観点から、モノエステルよりもジエステルが、ジエステルよりもトリエステルが好ましい。好ましいエステルワックスとしては、具体的にはソルビタントリステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
【0041】前記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる部分ケン化エステルワックスは、多価アルコールを炭素数が8個以上の高級脂肪酸で部分エステル化したのち、2価以上の金属水酸化物でケン化することにより得られる。具体的には、例えばモンタン酸ジオールエステルを水酸化カルシウムでケン化した、ワックスE、ワックスOP、ワックスO、ワックスOM、ワックスFL(全て、ヘキスト(株)社製商品名)などが挙げられる。かかる(部分ケン化)エステルワックスは1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0042】前記(部分ケン化)エステルワックスのB層への添加量は、0.001〜1重量%、好ましくは0.003〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.5重量%、特に好ましくは0.01〜0.3重量%含有する。この(部分ケン化)エステルワックスの含有量が0.001重量%未満であると、巻取り性の向上が不十分であり、ブロッキング改良効果も得られない。一方、1重量%を超えると、フィルム製造工程で、ロール上に巻き上げたときに接する反対側の面に、層Bの表面にブリードアウトしたワックス成分が多量に転写され、そのため、例えば金属蒸着層とベースフィルムの接着性を妨げたり、ドロップアウトの原因になる。
【0043】また、前記ポリエステル層BのポリエステルA層と接していない表面は、非接触3次元粗さ計で測定した十点平均粗さWRzBが好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜250nm、特に好ましくは50〜200nmの範囲である。このWRzBが30nm以下では、積層フィルムのハンドリング性が悪く十分な生産性をあげ難く、また、ブロッキング改良効果も不十分となり易い。一方、 WRzBが300nmを超えると、反対側の磁気層を設ける側の面への突起の形状転写が大きくなり、電磁変換特性を損なう場合がある。
【0044】本発明における積層ポリエステルフィルムは、磁気テープとした場合の諸特性向上のため、磁性層を設ける側の面、すなわち、ポリエステル層Aの表面(ポリエステル層Bと接していない表面)に、皮膜層Cを設けることが好ましい。この皮膜層Cは、平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有していることが好ましい。前記皮膜層Cを形成する樹脂としては、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0045】この水性ポリエステル樹脂としては、酸成分が、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウム、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩、p−ヒドロキシ安息香酸などの多価カルボン酸の1種以上よりなり、グリコール成分が、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などの多価ヒドロキシ化合物の1種以上より主としてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、ポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマーまたはブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな粒子内で特定の物理的構成(IPN(相互侵入高分子網目)型、コアシェル型など)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。また、これらは親水性を付与するため、分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位などが導入されていてもよい。
【0046】前記皮膜層Cに含有される不活性粒子Cとしては、特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重のものが好ましい。例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどの有機粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどからなる粒子が好ましく挙げられる。なかでも、架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が特に好ましく挙げられる。
【0047】前記不活性粒子Cの平均粒径dCは10〜50nm、好ましくは12〜45nm、さらに好ましくは15〜40nmである。この平均粒径が10nm未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、50nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0048】前記不活性粒子Cの形状は、下式で表わされる体積形状係数(f)が0.1〜π/6、好ましくは0.2〜π/6、さらに好ましくは0.4〜π/6であるものである。
【0049】
【数1】f=V/D3〔ここで、fは体積形状係数、Vは粒子の体積(μm3)、Dは粒子の投影面最大径(μm)である。〕
なお、体積形状係数(f)がπ/6である粒子の形状は、球(真球)である。すなわち、体積形状係数(f)が0.4〜π/6のものは、実質的に球ないしは真球、ラグビーボールのような楕円球を含むものであり、不活性粒子Cとして好ましい。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、走行耐久性が低下してしまうので好ましくない。
【0050】前記不活性粒子Cの含有量は、皮膜層C(塗液の固形分)に対し、0.5〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。この含有量が0.5重量%未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、30重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。皮膜層Cの厚みは、好ましくは1〜100nm、より好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは3〜10nm、最も好ましくは3〜8nmである。
【0051】本発明における積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A側の露出面(ポリエステル層Aのポリエステル層Bと接しない側の表面で、皮膜層Cを設ける場合は、皮膜層Cのポリエステル層Aと接しない側の表面)の非接触3次元粗さ計で倍率25倍で測定した表面粗さ(WRaA(25))が0.1〜4nm、好ましくは0.2〜3.5nm、さらに好ましくは0.3〜3.0nm、特に好ましくは0.4〜2.5nmである。さらに、同粗さ計で2.5倍の倍率で測定した粗さWRaA(2.5)が1〜15nm、好ましくは1.5〜10nm、さらに好ましくは2〜8nmである。WRaA(25)とWRaA(2.5)が同時にこの範囲にあることで、電磁変換特性と滑り性を両立させることができる。このような表面形状にポリエステル層A側の露出面をするには、例えば、既述のとおり、ポリエステル層Aに不活性粒子を含有させず、ポリエステル層Bに特定の不活性粒子Bを含有させればよい。
【0052】本発明における積層ポリエステルフィルムの全厚みは、通常2.5〜20μm、好ましくは3.0〜10μm、さらに好ましくは4.0〜10μmである。ポリエステル層Aとポリエステル層Bの厚み構成は、好ましくはB層の厚みが積層フィルムの全厚みの1/2以下、さらに好ましくは1/3以下、特に好ましくは1/4以下である。なお、積層フィルムの全厚みに占めるB層の厚み割合の下限は、特に制限されないが、好ましくは1/50以上、さらに好ましくは1/30以上、特に好ましくは1/20以上である。
【0053】本発明における積層ポリエステルフィルムは、従来から知られている、または当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。そのうち、ポリエステル層Aとポリエステル層Bとの積層構造は、共押出し法により製造するのが好ましく、皮膜層Cの積層は塗布法により行うのが好ましい。
【0054】例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で前記(部分ケン化)エステルワックス、ならびに不活性粒子Bを微分散・含有させたポリエステルBと、実質的に不活性粒子を含有しないポリエステルAとを、それぞれさらに高精度ろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、前記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層フィルムを得る。その後、前記未延伸積層フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで前記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行ってもよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0055】さらに、前記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0056】なお、積層ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルA、Bに所望により前記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤などを添加含有させることができる。
【0057】本発明におけるポリエステル層Aへの皮膜層Cの積層は、水性塗液を塗布する方法で行うのが好ましい。
【0058】塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステル層Aの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で皮膜は乾燥される。その中で、塗布は、未延伸積層フィルムまたは縦(一軸)延伸積層フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0059】前記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0060】本発明においては、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性をはじめとする各種性能を向上させ、同時に薄膜化を達成するには、積層フィルムのヤング率を、縦方向および横方向でそれぞれ、通常4500N/mm2以上および6000N/mm2以上、好ましくは4800N/mm2以上および6800N/mm2以上、さらに好ましくは5500N/mm2以上および8000N/mm2以上、特に好ましくは5500N/mm2以上および10,000N/mm2以上とする。
【0061】また、ポリエステル樹脂A、Bの結晶化度は、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合は30〜50%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回るとフィルムの耐摩耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0062】本発明によれば、前記ポリエステル層Aの片面に前記ポリエステル層Bが積層されてなる積層ポリエステルフィルム、および、ポリエステル層Aの表面(ポリエステル層Bと接していない表面)に皮膜層Cが積層されている積層ポリエステルフィルムのそれぞれをベースフィルムとする磁気記録媒体が同様に提供される。
【0063】本発明の積層ポリエステルフィルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は、下記のとおりである。
【0064】本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくは皮膜層Cの表面に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法により、鉄、コバルト、ニッケル、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物よりなる強磁性金属薄膜層(磁性層)を形成した磁気記録媒体のベースフイルムとして特に有用である。金属薄膜層の厚さは100〜300nmであるものが好ましい。
【0065】また、本発明の積層ポリエステルフイルムは、更に強磁性金属薄膜層の表面に、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに必要により、ポリエステル層Bの磁性層とは反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録媒体として使用することが好ましい。この蒸着型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV用磁気テープ媒体として極めて有用であり、特にデジタルビデオテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ、好適である。またデータストレージテープ用途にしても優れた結果を得ることができ、好適である。
【0066】また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくは皮膜層Cの表面に、鉄または鉄を主成分とする針状微細磁性粉(メタル粉)をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、ポリエステル層Bの磁性層とは反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用メタル塗布型磁気記録媒体とすることができる。また、必要に応じてポリエステル層Aまたは皮膜層Cの表面に、前記メタル粉含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子などを含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。このメタル塗布型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用8ミリビデオ、Hi8、βカムSP、W−VHS、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV、ディジタルβカム、D2、D3、SXなど用磁気テープ媒体として極めて有用である。
【0067】さらに、本発明の積層フィルムは、ポリエステル層A、好ましくは皮膜層Cの表面に、酸化鉄または酸化クロムなどの針状微細磁性粉、またはバリウムフェライトなどの板状微細磁性粉をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、ポリエステル層Bの磁性層とは反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体とすることができる。また、必要に応じて、ポリエステル層Aまたは皮膜層Cの表面に、前記酸化物粉末含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子などを含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。この酸化物塗布型磁気記録媒体は、ディジタル信号記録用データストリーマー用QICなどの高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体として有用である。
【0068】本発明の磁気記録媒体は、上述のように、磁性層形成面の反対面に、固体微粒子及び結合剤からなり、必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することにより形成されるバックコート層を設けてもよく、この固体微粒子、結合剤、添加剤としては公知のものを使用でき、特に限定されない。バックコート層の厚さは0.3〜1.5μmであることが好ましい。
【0069】上述のW−VHSはアナログのHDTV信号記録用VTRであり、またDVCはディジタルのHDTV信号記録用として適用可能なものである。それゆえ、本発明のフィルムは、これらHDTV対応VTR用磁気記録媒体に極めて有用なベースフィルムと言うことができる。
【0070】
【実施例】以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、本発明における物性値および特性は、それぞれ下記の方法で測定し、かつ定義されるものである。
【0071】(1)固有粘度オルソクロロフェノール溶媒中35℃で測定した値から求める。
【0072】(2)末端カルボキシル基濃度(eq/106g)
A.Conixの方法に準じて測定した。(Makromal.Chem.26,226(1958))
【0073】(3)粒子の平均粒径(I)(平均粒径:60nm以上)
株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle SizeAnalyzer)」を用いて測定した。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を前記平均粒径(nm)とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247)。
【0074】(4)粒子の平均粒径(II)(平均粒径:60nm未満)
小突起を形成する平均粒径60nm未満の粒子は、光散乱法を用いて測定した。すなわち、ニコンプインストゥルメント株式会社(Nicomp Instruments Inc.)製の商品名「NICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZER」により求められる全粒子の50%の点にある粒子の「等価球直径」をもって、平均粒径(nm)とする。
【0075】(5)体積形状係数(f)
走査型電子顕微鏡により、用いたサイズに応じた倍率にて各粒子の写真を撮影し、画像解析処理装置ルーゼックス500(日本レギュレーター社製)を用い、投影面最大径(D)(μm)および粒子の体積(V)(μm3)を算出し、下式により計算する。
【0076】
【数2】f=V/D3【0077】(6)ポリエステル層A、Bの厚み、およびフィルム全体の厚みフィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いた。ポリエステル層A、Bの層厚については、薄いポリエステル層の層厚みを下記に述べる方法にて測定し、厚いポリエステル層の層厚みは、全厚みより皮膜層および薄いポリエステル層の層厚を引き算して求める。すなわち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5,000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M+)とポリエステルの炭化水素(C+)の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になったのち、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、薄いポリエステル層の厚み(μm)とする。測定条件は、以下のとおりである。
【0078】(a)測定装置二次イオン質量分析装置(SIMS);パーキン・エルマー株式会社(PERKIN ELMER INC.)製、「6300」
(b)測定条件一次イオン種:O2+一次イオン加速電圧:12KV一次イオン電流:200nAラスター領域:400μm□分析領域:ゲート30%測定真空度:6.0×10-9TorrE−GUNN:0.5KV−3.0A【0079】なお、表層から5,000nmの範囲に最も多く存在する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電分光法)などで前記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚(μm)を求める。
【0080】(7)皮膜層Cの厚みフィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約600オングストロームの厚みの超薄切片(フィルムの流れ方向に平行に切断する)を作成した。この試料を透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製:H−800型)にて観察し、皮膜層Cの境界面を探して皮膜層の厚み(nm)を求める。
【0081】(8)表面粗さ■ WRaWYKO株式会社製の非接触三次元粗さ計、商品名「TOPO−3D」を用いて、測定倍率25倍もしくは2.5倍の条件にて測定を行い、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得た。前記粗さ計内蔵ソフトによる表面解析により、下式によって定義される中心面平均粗さ(WRa)を得る。
【0082】
【数3】

【0083】また、Zjkは、測定方向、それと直行する方向を、それぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における三次元粗さチャート上の高さである。
■ 十点平均粗さWRzWYKO株式会社製の非接触三次元粗さ計、商品名「TOPO−3D」を用いて、測定倍率25倍にて測定を行い、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得た。得られた表面粗さのプロフィルから前記粗さ計内蔵ソフトによる表面解析により、ピーク(Hp)の高い方から5点と谷(Hv)の低い方から5点をとって、以下の式によって定義される10点平均粗さ(WRz)とする。
【0084】
【数4】WRz={(Hp1+Hp2+Hp3+Hp4+Hp5)−(Hv1+Hv2+Hv3+Hv4+Hv5)}/5【0085】(9)ヤング率東洋ボールドウィン株式会社製の引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、長さ300nm、幅12.7mmの試料フィルムを10%/分のひずみ速度で引っ張り、引っ張り応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて、以下の式によって計算する。
【0086】
【数5】E=Δσ/Δεここで、Eはヤング率、Δσは直線上の2点間の元の平均断面積による応力差、Δεは同じ2点間のひずみ差である。
【0087】(10)巻き取り性スリット時の巻き取り条件を最適化したのち、幅600mm×12,000mのサイズで、30ロールを速度100m/分でスリットし、スリット後のフィルム表面に、ブツ状、突起やシワのないロールを良品として、以下の基準にて巻き取り性を評価する。
◎:良品ロールの本数28本以上○:良品ロールの本数25〜27本×:良品ロールの本数24本以下【0088】(11)磁気テープの製造および特性(電磁変換特性)評価積層ポリエステルフィルムの皮膜層Cの表面に、真空蒸着法により、コバルト100%の強磁性薄膜を0.2μmの厚みになるように2層(各層厚約0.1μm)形成する。形成した強磁性薄膜の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、さらに含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらにポリエステル層Aの表面に、公知の方法でバックコート層を設ける。その後、8mm幅にスリットし、市販の8mmビデオカセットにローディングした。次いで、下記の市販の機器を用いてテープの特性(C/N)を測定する。
(a)使用機器:8mmビデオテープレコーダー(ソニー株式会社製、商品名「EDV−6000」)およびノイズメーター(株式会社シバソク製)
(b)測定方法記録波長0.5μm(周波数約7.4MHz)の信号を記録し、その再生信号の6.4MHzと7.4MHzの値の比をそのテープのC/Nとし、市販8mmビデオ用蒸着テープのC/Nを0dBとし、相対値で評価する。
【0089】(12)耐ブロッキング性2枚の試料フィルムを用意し、A層形成側の表面とB層形成側の表面とを重ね合せ、これに50℃×70%RHの雰囲気下にて、最初に1N/mm2の荷重下で10時間処理し、次に15N/mm2の荷重下で100時間処理し、5cm幅の短冊状に切り取り、引張り試験機にて荷重を加えた箇所の剥離強度(mN/5cm)で評価する。なお、評価は剥離強度の値から下記の基準で評価する。
○: 0〜50△: 50〜100×:100〜破断発生【0090】[実施例1]ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール70部の混合物に、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水塩0.025部を添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、エチレングリコール2.5部中で無水トリメリット酸0.8部とテトラブチルチタネート0.65部を反応せしめた液(チタン含有率は11重量%)0.014部を添加した。次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエステルA用のポリエチレンテレフタレート(樹脂A1)を得た。
【0091】さらに、前記と同様の方法で、エステル交換反応を行い、エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモン0.03部添加した。系内に混入した水を充分留出させた後、滑剤(不活性粒子B)として、平均粒径500nmのシリコーン粒子および平均粒径100nmのθ型アルミナを、樹脂中にそれぞれ0.06%および0.2%添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを得た。この際、本ポリマー中のアンチモン残存量は250ppmであった。
【0092】得られたポリエチレンテレフタレート中に、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスとして、融点が55℃のソルビタントリステアレートの粉末0.15%を添加・分散し、ベント付き二軸ルーダーにて練り込み、固有粘度0.69のポリエステル層B用のポリエチレンテレフタレート(樹脂B1)を得た。
【0093】得られた樹脂A1、樹脂B1を、それぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、樹脂層Aの片面に樹脂層Bを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0094】得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に下記に示す組成(固形分換算)の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により乾燥後の厚みが8nmとなるように塗布した。
【0095】塗液の固形分組成バインダー:アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製、IN−170−6) 60%不活性粒子C:アクリルフィラー(平均粒径30nm)(体積形状係数0.40)(日本触媒株式会社製、エポスター) 7%界面活性剤X:(日本油脂株式会社製、ノニオンNS−208.5)3%界面活性剤Y:(日本油脂株式会社製、ノニオンNS−240) 30%続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmで、ポリエステル層Bの厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのポリエステル層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。得られた積層フィルムのヤング率は縦方向5000N/mm2、横方向7000N/mm2であった。得られた積層フィルムの特性、およびこのフィルムを用いた支持体として用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0096】[実施例2]ポリエステル層Bに含有させる不活性粒子Bの種類、平均粒径および添加量を表1に示すとおり変更する(樹脂B2)以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0097】[実施例3]ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bにおけるジメチルテレフタレートの代わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを同モル量使用した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル層A、B用のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(樹脂A3、B3)を得た。固有粘度は樹脂A3は0.60、樹脂B3は0.67であった。
【0098】この樹脂A3、B3を、それぞれ170℃で6時間乾燥後、実施例1と同様にして、各層厚みを調整し、厚さ89μmの未延伸積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0099】得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度135℃にて3.6倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に、不活性粒子Cをコアシェルフィラー(コア;架橋ポリスチレン、シェル;ポリメチルメタクリレート)(平均粒径;30nm、体積形状係数0.45)ジェイエスアール株式会社製、「SX 8721」に変更した以外は実施例1と同じ組成の水性塗液(全固形分濃度1.0%)を実施例1と同様に塗布した。
【0100】続いてステンターに供給し、155℃にて横方向に5.7倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、200℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み4.4μm、熱可塑性樹脂層Bの厚み0.6μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの熱可塑性樹脂層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの塗膜層C側の表面から測定した表面粗さWRaは、1.2nm、このフィルムのヤング率は縦方向5500N/mm2、横方向10,500N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0101】[比較例1]ポリエステル層Bを形成する原料樹脂Bの固有粘度を0.53とする以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、フイルム走行時のポリエステル層Bから不活性粒子Bが脱落する頻度が増加し、反対面への転写も多数起こったため、磁気テープにした際、十分な電磁変換特性を得ることができなかった。その他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0102】[比較例2および3]ポリエステル層Bに含有させる不活性粒子Bの種類、平均粒径、添加量を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、B層からブリードアウトしたオリゴマーが反対面へ転写することは問題なく良好であったが、比較例2の場合、B層側の突起の反対面への形状転写の程度が強く、磁気テープにした際、十分な電磁変換特性を得ることができなかった。比較例3の場合はB層が平坦すぎて良好な巻取り性が得られなかった。その他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】表1から明らかなように、本発明による積層ポリエステルフィルムは、片面が非常に平坦で、反対面からのオリゴマーの転写も少なく、優れた電磁変換特性を示すとともに、巻き取り性が極めて良好である。一方、本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時に満足できない。
【0105】
【発明の効果】本発明によれば、巻き取り性、加工適性に優れ、特に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに電磁変換特性に優れた積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】301020226
【氏名又は名称】帝人デュポンフィルム株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目1番1号
【出願日】 平成13年10月2日(2001.10.2)
【代理人】 【識別番号】100077263
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開2003−103739(P2003−103739A)
【公開日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願番号】 特願2001−306166(P2001−306166)