トップ :: B 処理操作 運輸 :: B32 積層体

【発明の名称】 積層体フィルムおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】志波 賢人
【住所又は居所】京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株式会社中央研究所内

【氏名】岡本 昌司
【住所又は居所】京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株式会社中央研究所内

【氏名】大西 早美
【住所又は居所】京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】衛生性、耐水性、耐アルカリ性、被膜の接着性、ヒートシール性が良好な積層フィルムを提供する。

【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に0.01〜10μmの下記ポリオレフィン樹脂からなる層を設けてなる積層体フィルムであって、このポリオレフィン樹脂層中に乳化剤成分あるいは保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とするの積層体フィルム。ポリオレフィン樹脂:不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、エチレン系炭化水素(A2)、I〜IVから選ばれる少なくとも1種の化合物(A3)とから構成される共重合体であって、各構成成分(A1)〜(A3)の質量比が下記式(1)、(2)をみたすポリオレフィン樹脂。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に厚み0.01〜10μmの下記ポリオレフィン樹脂からなる層を設けてなる積層体フィルムであって、このポリオレフィン樹脂層中に乳化剤成分あるいは保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とする積層体フィルム。
ポリオレフィン樹脂:(A1)不飽和カルボン酸またはその無水物、(A2)エチレン系炭化水素、(A3)下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される少なくとも1種の化合物とから構成される共重合体であって、各構成成分(A1)〜(A3)の質量比が下記式(1)、(2)をみたすポリオレフィン樹脂。
0.01≦(A1)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100<5 (1)
(A2)/(A3)=55/45〜99/1 (2)
【化1】

【請求項2】 ポリオレフィン樹脂の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜500g/10分であることを特徴とする請求項1記載の積層体フィルム。
【請求項3】 不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)成分が無水マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体フィルム。
【請求項4】 ポリオレフィン樹脂がエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体フィルム。
【請求項5】 熱可塑性樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ポリプロピレンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜4記載の積層体フィルム。
【請求項6】 請求項1〜5記載の積層体フィルムを製造する方法であって、ポリオレフィン樹脂層を設ける際に、ポリオレフィン樹脂水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に塗布後、乾燥する工程を含むことを特徴とする積層体フィルムの製造方法。
【請求項7】 請求項1〜5記載の積層体フィルムを製造する方法であって、ポリオレフィン樹脂層を設ける際に、ポリオレフィン樹脂水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に塗布後、このフィルムを縦および/または横方向に延伸する工程を含むことを特徴とする積層体フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定組成のポリオレフィン樹脂を熱可塑性樹脂フィルムに薄く積層した積層体フィルムに関する。さらに、詳しくは、衛生性、耐水性、耐アルカリ性、接着性、ヒートシール性を兼ね備えた積層体フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】エチレン−不飽和カルボン酸共重合体などのポリオレフィン樹脂は、良好な熱接着性を有する被膜を形成できることから、繊維処理剤、コーティング剤、ヒートシール剤、パートコート剤等の用途に広く用いられている。
【0003】このようなポリオレフィン樹脂をフィルムに積層する場合、固体樹脂を溶融させて積層する方法と樹脂を溶剤や水性媒体に溶解あるいは分散させた液をフィルムにコートする方法とがあるが、前者の方法ではポリオレフィン樹脂を薄く且つ均一に積層することは困難である。後者の中でも、環境問題や安全性の面から溶剤系より水系の方が良い。
【0004】特開2000−72879号公報、特開2000−119398号公報には、不飽和カルボン酸の含有量が5〜30質量%のエチレン−不飽和カルボン酸共重合樹脂の水性分散体、及びその製法が記載されており、積層体フィルムを作製することは容易である。しかしながら、不飽和カルボン酸含有量の多い樹脂は極性が高く、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の極性の低いフィルムとの接着性が非常に弱い。また、不飽和カルボン酸が多いため、得られる被膜の耐アルカリ性は殆ど無い。
【0005】不飽和カルボン酸含有量が低いポリオレフィン樹脂は極性の低いフィルムへの接着性が比較的、良好である。不飽和カルボン酸含有量が低いポリオレフィン樹脂の水性分散化方法としては、特開昭62−252478号公報、特開平5−163420号公報、特開平7−82423号公報、特開平9−296081号公報等に開示されているように、様々な乳化剤や保護コロイドを用いている。しかしながら、このように、系中に親水性の高い乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物を含んでいると、これらが乾燥後も被膜中に残存するために、形成される被膜の耐水性は著しく低下してしまうという問題がある。さらに、乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物を含む被膜は、それらがブリードアウトする恐れがあるために環境的、衛生的にも好ましくない。
【0006】このように、乳化剤や保護コロイドを含まず、且つ不飽和カルボン酸含有量が低いポリオレフィン樹脂層を熱可塑性樹脂フィルムに薄く積層する技術は知られていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記のような問題に対して、乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含まず、不飽和カルボン酸含有量が低いポリオレフィン樹脂層を熱可塑性樹脂フィルムに薄く積層した衛生性、耐水性、耐アルカリ性、被膜の接着性、ヒートシール性が良好な積層フィルムを提供しようとするものである。
【0008】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定組成のポリオレフィン樹脂を熱可塑性樹脂フィルムに積層することで優れた衛生性、耐水性、耐アルカリ性、被膜の接着性、ヒートシール性を有することを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に0.01〜10μmの下記ポリオレフィン樹脂からなる層を設けてなる積層体フィルムであって、ポリオレフィン樹脂層中に乳化剤成分あるいは保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とするの積層体フィルム。
ポリオレフィン樹脂:不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、エチレン系炭化水素(A2)、下記(I)〜(IV)のいずれかで示される少なくとも1種の化合物(A3)とから構成される共重合体であって、各構成成分(A1)〜(A3)の質量比が下記式(1)、(2)をみたすポリオレフィン樹脂。
0.01≦(A1)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100<5 (1)
(A2)/(A3)=55/45〜99/1 (2)
【化2】

(2)ポリオレフィン樹脂層を設ける際、ポリオレフィン樹脂水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に塗布後、乾燥する工程を含むことを特徴とする(1)記載の積層体フィルムの製造方法。
(3)ポリオレフィン樹脂層を設ける際に、ポリオレフィン樹脂水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に塗布後、このフィルムを縦および/または横方向に延伸する工程を含むことを特徴とする(1)記載の積層体フィルムの製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の積層体フィルムは特性組成のポリオレフィン樹脂の層を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に設けてなる。
【0010】本発明の積層体フィルムは、前述したポリオレフィン樹脂からなる厚み0.01〜10μmの層が、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に設けられている。ポリオレフィン樹脂層の形成方法は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂層の厚みを薄くできる等の経済面を考慮した場合には、後述するようにポリオレフィン樹脂の水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、乾燥させる方法が最も好ましい。またこの際に、水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムに塗布後、フィルムの縦および/または横方向に延伸する工程を経てもよい。
【0011】本発明の積層体フィルムのポリオレフィン樹脂層は、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含有しないことを特徴とする。ここで、「乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含有しない」とは、例えば、積層体フィルムの製造工程(例えば、コーティング溶液の調製時等)において、溶液の安定化等の目的でこれらの不揮発性の薬剤や化合物を積極的には系に添加しないことにより、結果的に得られる本発明の積層体フィルムの樹脂層にこれらが含有されないことを意味する。こうした化合物は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン樹脂成分に対して0.1質量%未満程度含まれていても差し支えない。
【0012】以下、本発明で用いられるポリオレフィン樹脂の組成について説明する。本発明の積層体フィルムのポリオレフィン樹脂層に用いられるポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)成分をこの樹脂全体〔(A1)+(A2)+(A3)〕に対して0.01質量%以上、5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上、5質量%未満含有している必要があり、1〜4質量%が最も好ましい。(A1)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、極性の高いフィルムとの接着性が低下する恐れがある。一方、不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が5質量%以上の場合には、カルボキシル基量が増すために耐アルカリ性が低下してしまう。さらに、ポリオレフィン樹脂の極性が高くなり、極性の低いフィルムとの接着性が低下する恐れがある。
【0013】ポリオレフィン樹脂の(A1)成分として用いることのできる不飽和カルボン酸またはその無水物は、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていれば良く、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0014】本発明に用いるポリオレフィン樹脂は、下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される(A3)成分が構成成分として必要であり、この成分によって、ポリオレフィン樹脂に親水性が付与されるため、(A1)成分が5質量%未満であっても、乳化剤や保護コロイドの添加なしに水性化することができる。エチレン系炭化水素(A2)成分と(A3)成分との質量比(A2)/(A3)は、55/45〜99/1の範囲であることが必要であり、様々な熱可塑性樹脂フィルムとの接着性を持たせるために60/40〜98/2であることが好ましく、65/35〜97/3であることがより好ましく、70/30〜97/3であることがさらに好ましく、75/25〜97/3であることが特に好ましい。〔(A2)+(A3)〕に対する(A3)成分の比率が1質量%未満では、様々なフィルムとの接着性が低下してしまう。一方、化合物(A3)の含有比率が45質量%を超えると、(A2)成分によるポリオレフィン樹脂としての性質が失われ、塗膜耐水性や様々なフィルムとの接着性等の性能が低下する。
【0015】
【化3】

【0016】本発明に用いるポリオレフィン樹脂を構成するエチレン系炭化水素(A2)成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0017】本発明のポリオレフィン樹脂を構成する上記式(I)〜(IV)のいずれかで示される(A3)成分としては、例えば、式(I)で代表される(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、式(II)で代表されるマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、式(III)で代表される(メタ)アクリル酸アミド類、式(IV)で代表されるメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中で、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、あるいは(メタ)アクリル酸エチルが特に好ましい。
【0018】本発明に用いるポリオレフィン樹脂としては、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、無水マレイン酸からなる三元共重合体が最も好ましい。ここで、アクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、そのような場合には、それらの変化を加味した各構成成分の比率が規定の範囲にあればよい。なお、本発明におけるポリオレフィン樹脂を構成する無水マレイン酸単位等の不飽和カルボン酸無水物単位は、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。また、本発明において、樹脂のカルボキシル基量を基準として量を規定する場合には、樹脂中の酸無水物基はすべて開環してカルボキシル基をなしていると仮定して算出する。
【0019】また、本発明に用いられるポリオレフィン樹脂には、その他のモノマーが、この樹脂全体の20質量%以下で共重合されていても良い。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30のアルキルビニルエーテル類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄等が挙げられる。
【0020】本発明に用いるポリオレフィン樹脂は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜500g/10分、好ましくは1〜300g/10分、より好ましくは2〜250g/10分、最も好ましくは2〜200g/10分のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性分散体を得ることが難しい。一方、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが500g/10分を超えると、その水性分散体から得られる被膜は、硬くてもろくなり、機械的物性や加工性が低下してしまう。
【0021】本発明に用いるポリオレフィン樹脂の合成法は特に限定されないが、乳化剤や保護コロイドを用いない方が好ましい。一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸、あるいはその無水物はグラフト共重合(グラフト変性)されていても良い。
【0022】以下、本発明の積層体フィルムを製造するもっとも好ましい方法である、ポリオレフィン樹脂水性分散体(以下、「水性分散体」と呼ぶ。)を用いる方法について詳述する。
【0023】本発明に好ましく用いられる水性分散体は、前述した特定組成のポリオレフィン樹脂が水性媒体に分散もしくは溶解されている。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体からなる媒体であり、後述する水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。
【0024】水性分散体中に分散しているポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径は、水性分散体の保存安定性が向上するという点、さらには積層体フィルムの透明性の点から、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましく、0.1μm未満が特に好ましい。なお、粒度分布については、特に限定されない。これらの粒径は、後述の方法で達成することができる。
【0025】水性分散体における、樹脂含有率は、成膜条件、目的とする樹脂被膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、コーティング組成物の粘性を適度に保ち、かつ良好な被膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、5〜45質量%が特に好ましい。
【0026】積層体フィルムの樹脂層に乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物(以下、あわせて乳化剤等という。)を実質的に含有させないために、水性分散体は、これらの乳化剤等を実質的に含有しないことが好ましい。以下に開示される方法を用いると、これらを用いずとも、ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に安定に分散させることができる。乳化剤等は一般的に不揮発性であるので、もしこれらを用いて水性分散体を調製すると、積層体フィルムのポリオレフィン樹脂層中に残存し、この樹脂層を可塑化する作用を有し、耐水性等を悪化させる。これに対し、以下で述べる水性分散体は乳化剤等を実質的に含有しないため、積層体フィルムとしたときにも、これを含まず、ポリオレフィン樹脂が本来備えている被膜特性や耐水性等の性能を維持させることができる。
【0027】本発明でいう乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0028】保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0029】本発明で使用する水性分散体において、ポリオレフィン樹脂のカルボキシル基は、塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。
【0030】水性化の際に用いる塩基性化合物はカルボキシル基を中和できるものであれば良い。塩基性化合物としては、被膜形成時に揮発する化合物が被膜の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30〜250℃、より好ましくは30〜200℃の有機アミン化合物である。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、良好な水性分散体を得ることが困難になる。沸点が250℃を超えると樹脂被膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、被膜の耐水性が悪化する場合がある。
【0031】有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等を挙げることができる。塩基性化合物の添加量は、水性分散体の安定性の面から、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、1.0〜2.0倍当量がより好ましい。
【0032】また、ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に有機溶剤を添加することができる。使用する有機溶剤量は、水性媒体中の40質量%以下が好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、2〜35質量%がさらに好ましく、3〜30質量%が特に好ましい。有機溶剤量が40質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなる。また、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。
【0033】一般に、水性分散体に含有される有機溶剤は、その一部をストリッピングと呼ばれる操作で系外へ留去させることができるが、本発明に使用する水性分散体においても、この操作によって、水性分散体中の有機溶剤量を上記の範囲内で適度に減量してもよく、10質量%以下とすることができ、3質量%以下であれば、環境上好ましい。
【0034】水性分散体の製造において使用される有機溶剤の具体例としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、低温乾燥性の点から、イソプロパノールが好ましい。有機溶剤は沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものが特に好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用しても良い。なお、有機溶剤の沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。沸点が250℃を超える有機溶剤は樹脂被膜から乾燥によって飛散することが困難であり、被膜の耐水性が悪化する場合がある。
【0035】前述した各種成分からポリオレフィン樹脂水性分散体を得る方法は特に限定されないが、たとえば、既述の各成分、すなわち、特定組成のポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、有機溶剤、及び水を好ましくは密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができ、この方法が最も好ましい。この方法によれば、乳化剤等を実質的に添加しなくとも特定組成のポリオレフィン樹脂を良好に水性分散体とすることができる。容器内の温度としては、60〜200℃、好ましくは100〜200℃に保ちつつ、好ましくは5〜120分間攪拌すればよい。
【0036】前述のポリオレフィン樹脂水性分散体は、室温での造膜性に優れ、分散している樹脂の融点よりも低い温度でも透明性の高い被膜を形成することができる。ここでは、造膜性や透明性の目安として、室温でポリオレフィン樹脂水性分散体をコートしたコートフィルムのヘーズ(曇価)を用いる。基材としてヘーズ2.0〜3.0(%)のPETフィルムを用い、これにポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後コート膜厚2μmでコートし、25℃で乾燥する。こうして得られたコートフィルム全体のヘーズが5.0(%)以下である。
【0037】本発明の積層体フィルムのポリオレフィン樹脂層には、本発明の効果を損ねない範囲で、前述した乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物を除き、様々な添加剤を含有していてもよい。例えば、他の重合体、金属塩、無機粒子、架橋剤等が挙げられる。また、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加することもできる。
【0038】本発明の積層体フィルムの基材としては熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、ナイロン6(以下、Ny6)、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン(以下、PP)、ポリエチレン、変性ポリエチレン(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体など)などのポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物よりなるフィルムまたはそれらのフィルムの積層体が挙げられる。中でも、PET、Ny6、PP、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアリレートを用いることが良く、特にPET、Ny6、PPを用いることが良い。尚、PP樹脂の立体構造は特に限定されないが、例えば、アイソタクチック又はシンジオタクチック、及び種々の程度の立体規則性を有するPP単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のαオレフィンとの共重合体を挙げることができる。これらの共重合体は、2元以上の多元共重合体であってもよく、ランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよい。さらに、無水マレイン酸等で酸変性してあるPPでもよく、高温での酸化処理を施したPPでもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、製法も特に限定されない。熱可塑性樹脂フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常1〜500μmであれば良い。
【0039】次に、本発明の積層体フィルムの製造方法について説明する。前述した方法で得た水性分散体を、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材フィルム表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材フィルム表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材フィルムの特性により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、30〜フィルム樹脂の融点までが好ましく、60〜フィルム樹脂の融点までがより好ましく、80〜フィルム樹脂が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜20分が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
【0040】本発明において、ポリオレフィン樹脂層を設ける際、ポリオレフィン樹脂水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に塗布後、フィルムの縦および/または横方向に延伸する工程を含むことが好ましい。延伸に先だってコーティングを行うには、まず未延伸フィルムにコーティングして乾燥した後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)、熱処理するか、あるいは、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後にコーティングし、乾燥後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とテンターでの同時2軸延伸を組み合わせることも可能である。
【0041】また、本発明の積層体フィルムのポリオレフィン樹脂層は、0.01〜10μmとする必要があり、0.02〜9μmがより好ましく、0.03〜9μmが特に好ましい。樹脂被膜の厚さが0.01μm未満ではヒートシール性が悪化する。また、10μmを超えると、積層体フィルムとしてのヘーズが高くなり、透明性に劣ったものとなる。
【0042】なお、ポリオレフィン樹脂層の厚みを調節するためには、コーティングに用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする樹脂層の厚さに適した濃度の水性分散体を使用することが好ましい。このときの濃度は、調製時の仕込み組成により調節することができる。また、一旦調製した水性分散体を適宜希釈、あるいは濃縮して調節してもよい。さらに、前述したように、ポリオレフィン樹脂積層体フィルムを延伸することで、層の厚みを調節することもできる。
【0043】
【実施例】以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
(1)ポリオレフィン樹脂の構成オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(2)ポリオレフィン樹脂の水性化後のエステル基残存量ポリオレフィン樹脂の水性分散体を150℃で乾燥させた後、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、水性化前の(メタ)アクリル酸エステルのエステル基量を100%としてエステル基の残存率(%)を求めた。
(3)ポリオレフィン樹脂水性分散体の固形分濃度ポリオレフィン水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、ポリオレフィン樹脂固形分濃度を求めた。
(4)ポリオレフィン樹脂水性分散体の粘度トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、温度20℃における水性分散体の回転粘度を測定した。
(5)ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒径日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径を求めた。
(6)水性分散体の外観目視で評価した。
(7)ポットライフポリオレフィン樹脂水性分散体を室温で90日放置した場合、水性分散体の外観を次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
(8)ポリオレフィン樹脂水性分散体中の有機溶剤の含有率島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC-8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG-HT(5%)-UniportHP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、水性分散体または水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(9)ヘーズ(曇価)
JIS K7105に準じて、日本電色工業社製のNDH2000濁度、曇り度計を用いてヘーズ(%)を測定した。ヘーズが2.8%の2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)のコロナ処理面にポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、25℃の雰囲気中で3日放置して乾燥させてコートフィルムを作製した。このようにして作製したコートフィルム全体のヘーズを測定した。
(10)耐水性評価方法2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)のコロナ処理面にポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、100℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは室温で1日放置後、評価した。塗膜を水で濡らした布で数回擦り、塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:塗膜がくもる、×:塗膜が完全に溶解(11)耐アルカリ性評価方法2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)及び延伸PPフィルム(東セロ社製、厚み20μm)のコロナ処理面にポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、100℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは室温で1日放置後、評価した。NaOHでpHを12.0(20℃)に調製した水溶液を65℃に保温しておき、攪拌下、この水溶液にコートフィルムを3分間、浸漬した後、水洗し被膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:被膜がくもる、×:被膜が溶解、または剥離(12)接着性評価:クロスカット・テープ剥離未延伸のPETフィルム(厚さ120μm)、及びNy6フィルム(厚さ150μm)にポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、100℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムを室温で1日放置後、JIS K5400 8.5.2に準じて、評価した。粘着テープにより1mm×1mm×100個の碁盤目部分をひき剥がし、剥離せずに残っている数で評価した。n/100は、試験後に100個の碁盤目中のn個が剥離せず残っていることを示す。
(13)ヒートシール性評価方法各種熱可塑性樹脂フィルムのコロナ処理面、及び非コロナ処理面にポリオレフィン樹脂水性分散体を所定の乾燥後膜厚(実施例中に記載)になるように所定のコート条件(実施例中に記載)でコートして得られたポリオレフィン樹脂積層体フィルムのポリオレフィン樹脂コート層が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで2秒間)にて100℃及び120℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ社製、インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で被膜の剥離強度を測定することでヒートシール強力を評価した。尚、用いた熱可塑性樹脂フィルムは、2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)、2軸延伸Ny6フィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm)、延伸PPフィルム(東セロ社製、厚み20μm)である。
【0044】使用したポリオレフィン樹脂の組成を表1に示す。なお、表1に記載されている樹脂の融点はDSC(パーキンエルマー社製DSC-7)で測定した値であり、メルトフローレートはJIS 6730記載の方法(190℃、2160g荷重)で測定した値である。
【0045】
【表1】

【0046】(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX-8290(ア),住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.8倍当量)のトリエチルアミン(以下、TEA)および175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。数平均粒子径は0.072μmであり、その分布は1山であり、ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に良好な状態で分散していた。さらに、この水性分散体のポットライフは90日以上であった。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチルの残存率は100%であり、エステル基は加水分解されていなかった。このエステル基残存率は室温で90日、放置後でも変化せず100%であった。この水性分散体を前記した方法でコートしたコートフィルムのヘーズは2.8%であり、透明性は良好であった。
【0047】(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)ポリオレフィン樹脂としてボンダインHX-8210(イ)(住友化学工業社製)を用い、樹脂中のカルボキシル基に対するアミンの量を表2のように変更した以外はコート剤組成物E−1の製造と同様の操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチル単位の1%が加水分解されてアクリル酸に変化していた。すなわちエステル基残存率は99%であった。
【0048】(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)ポリオレフィン樹脂としてボンダインTX-8030(ウ)(住友化学工業社製)を用い、有機溶剤(IPA)量を表2のように変更した以外はコート剤組成物E−1の製造と同様の操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E−3を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
【0049】(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4の製造)E−1 250g、蒸留水40gを0.5リットルの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約95gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、濾液の固形分濃度を測定したところ、25.8質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し、固形分濃度が25.0質量%になるように調整した。水性分散体の各種特性を表2に示した。なお、この水性分散体中の水溶性有機溶剤の含有率は0.5質量%であった。
【0050】(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−5の製造)ポリオレフィン樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体樹脂〔プリマコール5980I(エ)、アクリル酸20質量%共重合体、ダウケミカル製〕を用いた。ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのプリマコール5980I、16.8g(樹脂中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1.0倍当量)のTEA、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100〜105℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−5を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。水性分散体の各種特性を表2に示した。
【0051】
【表2】

【0052】実施例1得られたポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を各種熱可塑性樹脂フィルムにコートした積層体フィルムを用いて、前記記載の評価方法に従い評価した。尚、ヒートシール強力測定用サンプルの作製にあたり、コート条件は、前記熱可塑性樹脂フィルムのコロナ処理面、非コロナ処理面に乾燥後のコート厚みが2μmになるようにマイヤーバーでコートした後、100℃で1分間、乾燥させた。評価結果を表3に示す。
【0053】実施例2〜5使用するポリオレフィン樹脂水性分散体を表3記載のように変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0054】比較例1使用するポリオレフィン樹脂水性分散体をE−5に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】実施例5PET樹脂をTダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押し出し、表面温度10℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み120μmの未延伸フィルムとした。続いて、未延伸フィルムをグラビアロール式コーターに導き乾燥後のコート厚みが15μmになるようにポリオレフィン水性分散体E−1をコートし、80℃の熱風ドライヤー中で45秒間乾燥した。次に、フィルムをテンター式同時2軸延伸機に供給し、温度100℃で2秒間予熱した後、95℃で縦方向に3倍、横方向に3.5倍の倍率で延伸した。尚、横方向弛緩率は5%であった。得られたコートフィルムのコート厚みは1.4μmであった。ポリオレフィン樹脂コート層が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで2秒間)にて120℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ社製、インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で被膜の剥離強度を測定することでヒートシール強力を評価した。ヒートシール強力は、2.3N/15mmであった。また、コートフィルムの耐アルカリ性も良好(評価:○)であった。
【0057】実施例6Ny6樹脂をTダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度270℃でシート状に押し出し、表面温度10℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み150μmの未延伸フィルムとした。続いて、未延伸フィルムをグラビアロール式コーターに導き、乾燥後のコート厚みが15μmになるようにポリオレフィン水性分散体E−4をコートし、80℃の熱風ドライヤー中で45秒間乾燥した。次に、フィルムをテンター式同時2軸延伸機に供給し、温度100℃で2秒間予熱した後、170℃で縦方向に3倍、横方向に3.5倍の倍率で延伸した尚、横方向弛緩率は5%であった。得られたコートフィルムのコート厚みは1.4μmであった。ポリオレフィン樹脂コート層が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで2秒間)にて120℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ社製、インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で被膜の剥離強度を測定することでヒートシール強力を評価した。ヒートシール強力は、3.4N/15mmであった。また、コートフィルムの耐アルカリ性も良好(評価:○)であった。
【0058】実施例7、比較例2コート層の厚みがヒートシール強力に与える影響を調べた。ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)のコロナ処理面、及び非コロナ処理面に乾燥後膜厚がそれぞれ0.8、2、4、8、14μmになるようにマイヤーバーでコートした後、100℃で2分間、乾燥させた。ポリオレフィン樹脂コート層が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで2秒間)にて120℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ社製、インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で被膜の剥離強度を測定することでヒートシール強力を評価した。また、ヘーズを測定した。評価結果を表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】実施例1〜4では、耐アルカリ性、接着性、ヒートシール性いずれにおいても優れていた。実施例5、6において、本発明の積層体フィルムの製造において、未延伸フィルムにポリオレフィン水性分散体を塗布して乾燥したのち、これを縦横同時2軸延伸したが、被膜の特性は良好であった。実施例7では、ポリオレフィン樹脂層の厚みを変化させてもヒートシール強力は高い水準を維持していた。比較例1では、ポリオレフィン樹脂の組成が本発明の範囲を外れたため、耐アルカリ性とヒートシール強力は劣っていた。比較例2では、ポリオレフィン樹脂層の厚みが10μmを超えるとヒートシール強力はほとんど向上せず、ヘーズが高くなった。
【0061】
【発明の効果】乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含まず、不飽和カルボン酸含有量が低いポリオレフィン樹脂層を熱可塑性樹脂フィルムに薄く積層した衛生性、耐水性、耐アルカリ性、被膜の接着性、ヒートシール性が良好な積層フィルムを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【住所又は居所】兵庫県尼崎市東本町1丁目50番地
【出願日】 平成13年9月27日(2001.9.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−103734(P2003−103734A)
【公開日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願番号】 特願2001−296881(P2001−296881)