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【発明の名称】 ポリスチレン系熱収縮フィルムおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】佐谷 昭一
【住所又は居所】東京都中央区京橋一丁目18番1号 シーアイ化成株式会社内

【氏名】田矢 直紀
【住所又は居所】東京都中央区京橋一丁目18番1号 シーアイ化成株式会社内

【氏名】田谷内 政人
【住所又は居所】東京都中央区京橋一丁目18番1号 シーアイ化成株式会社内

【氏名】吉原 資二
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会社クラレ内

【氏名】表田 護
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会社クラレ内

【氏名】古宮 行淳
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会社クラレ内

【要約】 【課題】水性インキによる印刷およびリサイクルが可能で、表面全体が溶剤シールが可能な熱収縮フィルムを提供する。

【解決手段】フィルム本体の少なくとも片面に皮膜が設けられた熱収縮フィルムであって、フィルム本体の主成分がスチレン・ブタジエン共重合体であり、皮膜が、スチレン系ブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体から形成され、80℃の温水中に30秒保持したときの少なくとも一方向の熱収縮率が20%以上のポリスチレン系熱収縮フィルムを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルム本体の少なくとも片面に皮膜が設けられた熱収縮フィルムであって、フィルム本体の主成分がスチレン・ブタジエン共重合体であり、皮膜が、スチレン系ブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体から形成され、80℃の温水中に30秒保持したときの少なくとも一方向の熱収縮率が20%以上であることを特徴とするポリスチレン系熱収縮フィルム。
【請求項2】 請求項1記載のポリスチレン系熱収縮フィルムにおいて、フィルム本体が2層以上の多層構造であることを特徴とするポリスチレン系熱収縮フィルム。
【請求項3】 前記(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)が、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる共重合体ブロックであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のポリスチレン系熱収縮フィルム。
【請求項4】 ブロック共重合体を構成するスチレン系ブロック(A)の数平均分子量が500〜30,000であり、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の数平均分子量が1,000〜50,000であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載のポリスチレン系熱収縮フィルム。
【請求項5】 スチレン・ブタジエン共重合体を主成分とするフィルム原反の少なくとも片面に、スチレン系ブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体からなる皮膜を形成し、該皮膜を形成したフィルム原反を80℃〜100℃に加熱して、延伸処理を施すことを特徴とするポリスチレン系熱収縮フィルムの製造方法。
【請求項6】 前記フィルム原反が2層以上の多層構造であることを特徴とする請求項5に記載のポリスチレン系熱収縮フィルムの製造方法。
【請求項7】 前記(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)が、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる共重合体ブロックであることを特徴とする請求項5または請求項6記載のポリスチレン系熱収縮フィルムの製造方法。
【請求項8】 ブロック共重合体を構成するスチレン系ブロック(A)の数平均分子量が500〜30,000であり、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の数平均分子量が1,000〜50,000であることを特徴とする請求項5ないし7いずれか一項に記載のポリスチレン系熱収縮フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリスチレン系熱収縮フィルムに関し、特に水性インキでの印刷が可能であり、かつリサイクル可能で、溶剤シール性に優れたポリスチレン系熱収縮フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ガラス瓶やペットボトルなどのようなプラスチック容器においては、それらの名称などの表示を施すために、印刷されたラベルが取り付けられるが、そのようなラベルとして熱収縮フィルムが用いられている。例えば、収縮前のフィルムを溶剤シールで筒状に加工して、ガラス瓶やペットボトルに被せて加熱すると、ガラス瓶やペットボトルの形状にそってフィルムが収縮し、一体化する。そのような熱収縮フィルムとしては、スチレン・ブタジエン共重合体からなるフィルムが、熱収縮する際にシワや歪みが無く、収縮後の外観に優れ、またポリエチレンテレフタレート(PET)との分別が容易で、ペットボトルのリサイクルに適しているので、広く使われている。また、現時点ではラベルの製造に際し、油性のグラビア印刷インキを用いてフィルムに印刷を施しているが、水性インキに切り替えたいという要望がある。
【0003】しかしながら、水性インキはフィルムに対する密着性が不十分で、印刷が不均質になり、印刷不良になるという問題があった。そこで、特開平7−140901号公報には、これらの課題を解決する熱収縮フィルムが提案されている。この公報には、スチレン・ブタジエン共重合体製の熱収縮フィルムの表面に、グラビア印刷版などを用いて印刷によってポリウレタン水性分散体からなるプライマー層を設け、この上に水性インキを用いて印刷する熱収縮フィルムが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スチレン・ブタジエン共重合体とポリウレタン水性分散体とは相溶性がない。したがって、これらの物質を含む熱収縮フィルムを破砕、溶融し、再び成形してリサイクルすることができないという問題があった。
【0005】さらに、通常のスチレン・ブタジエン共重合体からなる熱収縮フィルムにおいては、帯状のフィルムの端部を突き合わせて接着して筒状にする場合などに、溶剤をフィルムの表面に薄く塗布してスチレン・ブタジエン共重合体をわずかに溶解させて接着する溶剤シールが適用されている。しかし、特開平7−140913号公報に記載された熱収縮フィルムにおいては、ポリウレタン水性分散体からなるプライマー層の上に溶剤を塗布しても溶剤シールを行うことができない。したがって、プライマー層を塗布しないのりしろ部分を設けて、この部分に溶剤を塗布して溶剤シールを行わなければならないという問題があった。そのため、印刷工程時にのりしろ部分を確保するために、プライマー層を設ける位置を制御しなければならなかった。また、プライマー層の範囲とのりしろ部分の範囲が限定されてしまうため、決まった用途に用いる決まったサイズの熱収縮フィルムしか製造することができなかった。
【0006】本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、水性インキによる印刷が可能で、かつリサイクル可能な熱収縮フィルムを提供することを課題とする。また、表面全体が溶剤シールが可能な熱収縮フィルムを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明のポリスチレン系熱収縮フィルムは、フィルム本体の少なくとも片面に皮膜が設けられた熱収縮フィルムであって、フィルム本体の主成分がスチレン・ブタジエン共重合体であり、皮膜が、スチレン系ブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体から形成され、80℃の温水中に30秒保持したときの少なくとも一方向の熱収縮率が20%以上であることを特徴とする。また、前記フィルム本体が2層以上の多層構造であってもよい。前記(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)が、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸からなる共重合体ブロックであると好ましい。また、ブロック共重合体を構成するスチレン系ブロック(A)の数平均分子量が500〜30,000であり、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の数平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましい。
【0008】このポリスチレン系熱収縮フィルムは、スチレン・ブタジエン共重合体を主成分とするフィルム原反の少なくとも片面に、スチレン系ブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体からなる皮膜を形成し、該皮膜を形成したフィルム原反を80〜100℃に加熱して、延伸処理を施すことによって製造することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、フィルム本体(フィルム原反)はスチレン・ブタジエン共重合体を主成分としている。フィルム本体(フィルム原反)の材料には、このスチレン・ブタジエン共重合体以外にポリスチレン樹脂、スチレンブチルアクリレート共重合体、スチレン・イソプレン系ブロック共重合体などを配合することができる。ポリスチレン樹脂としては、スチレンの単独重合体である汎用ポリスチレン、ポリスチレンにブタジエン共重合体などの弾性体をブレンドした耐衝撃性ポリスチレンなどを用いることができる。
【0010】フィルム本体(フィルム原反)は、1層あるいは2層以上の多層構造とすることができる。多層構造の場合は、組成の異なるスチレン・ブタジエン共重合体を主成分とする層を積層して形成する。例えば特許第3001158号の特許掲載公報に記載のものなどが好ましい。すなわち、両外層が(a)ブタジエン単位含有量が少なくとも15重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体90〜100重量%と、(b)スチレン−ブチルアクリレート共重合体およびポリスチレン樹脂の中から選ばれた少なくとも1種10〜0重量%との混合物からなり、中間層が(c)ブタジエン単位含有量15〜40重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体9〜59重量%と、(d)スチレンブチルアクリレート共重合体40〜90重量%と、(e)ブタジエン単位含有量50〜80重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体、ブタジエン単位含有量20〜50重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体水素添加物およびイソプレン単位含有量20〜50重量%のスチレン−イソプレン−スチレン型ブロック共重合体水素添加物から選ばれる少なくとも1種1〜8重量%と、(f)ポリスチレン樹脂0〜50重量%との混合物からなる少なくとも3層構造を有し、全体に対する中間層の厚さの比率が50〜90%で、全体におけるブタジエン単位と水素添加ブタジエン単位と水添イソプレン単位の合計含有量が5〜15重量%のものである。
【0011】皮膜を構成するブロック共重合体は、スチレン系ブロック(A)および(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)から構成されており、例えば、AB型ジブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、BAB型トリブロック共重合体などを挙げることができる。これらのなかでも、熱収縮フィルム原反に対する接着性とともに水性インキによる印刷性に優れることから、AB型ジブロック共重合体が好ましい。
スチレン系ブロック(A):(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の重量比は好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:3〜3:1とされる。ブロック(A)の重量比が少なすぎるとフィルム原反との十分な接着性が得られなくなる傾向があるとともに、フィルム原反との相溶性が低下するため、リサイクル性が低下し、多すぎると水性インキによる印刷性が低下する傾向がある。
【0012】スチレン系ブロック(A)の数平均分子量は、好ましくは500〜30000、より好ましくは1000〜20000とされる。500未満であると皮膜の強度が低下する傾向があり、30000をこえると塗布時の分散不良や増粘が生じやすくなる。なお、本明細書でいう数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値である。
【0013】スチレン系ブロック(A)は、スチレンの単独重合体、または、スチレンおよびスチレンと共重合可能なビニル系単量体の少なくとも1種が共重合してなる共重合体である。このビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸およびそれらの誘導体(例えば、エステル、塩など)などが挙げられる。スチレン系ブロック(A)におけるスチレンに由来する構造単位の割合は、スチレン系ブロック(A)の全構造単位に対して100〜55重量%であることが好ましく、より好ましくは100〜65重量%である。スチレンに由来する構造単位の割合が少なすぎるとフィルム原反(フィルム本体)ヘの充分な接着性が得られず、不都合である。
【0014】一方、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の数平均分子量は、好ましくは1000〜50000、より好ましくは2000〜30000とされる。1000未満であると水性インキによる印刷性が低下し、30000を超えるとフィルム原反への接着性が低下する傾向がある。
【0015】(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)は、(メタ)アクリル酸エステルの単位を(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の全構造単位の合計重量に基づいて50〜100重量%含有しているものが好ましく、70〜100重量%含有しているものがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの単位としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2―ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどから誘導される単位が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0016】(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体単位を、全構造単位に対して0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%含有させることができる。(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体の単位としては、例えば、スチレン、p−スチレンスルホン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸、及びそれらの中和塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタール酸;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、;N−ビニル−2−ピロリドンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0017】また、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)は、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸からなる共重合体ブロックであると好ましい。(メタ)アクリル酸単位を含有することによって、水性インキによる印刷性が向上する。(メタ)アクリル酸単位を含有する場合、(メタ)アクリル酸単位は、全構造単位に対して5〜40重量%含有されていることが好ましい。
【0018】スチレン系ブロック(A)と(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体の合成方法に、特に制限はないが、例えば、片末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下に、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分をラジカル重合することによりブロック共重合体を製造する方法が、目的とする数平均分子量および分子量分布を有するブロック共重合体を簡便かつ効率的に製造することができるので好ましい。
【0019】本発明のポリスチレン系熱収縮フィルムは、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、押出法などの公知の成形方法によって帯状のフィルム原反を製造する。フィルム原反の厚さは特に限定しないが、例えば100〜500μm、好ましくは120〜400μmとされる。一方、皮膜の材料を酢酸エチル/イソプロピルアルコールの混合溶剤などの適当な溶剤に溶解して、前記フィルム原反の片面、あるいは両面に塗布する。または、皮膜の材料を水性分散液として、前記フィルム原反の片面、あるいは両面に塗布する。このとき、乾燥したときに皮膜の材料がフィルム原反1m2 当たり好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.5〜5gになるように塗布する。なお、水性分散液を作成する方法としては、例えば、ブロック共重合体を適当な界面活性剤の存在下で乳化する方法や、あるいは、ブロック共重合体のブロック(B)が(メタ)アクリル酸などが共重合されたブロックである場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等で中和して乳化する方法などがあげられる。
【0020】ついで、乾燥して前記溶剤または水を除去した後、80〜100℃に加熱し、熱収縮性を付与する方向に3〜8倍、好ましくは4〜6倍程度に延伸して、フィルム本体の少なくとも片面に皮膜が形成された熱収縮フィルムを得る。延伸時の温度は皮膜の材料のTg(ガラス転移点)の温度以上の温度に設定するのが好ましい。なお、ガラス瓶、ペットボトルなどのラベル用の場合は、帯状のフィルム原反の幅方向(横方向)に延伸するのが通常である。そして、必要に応じて、この熱収縮フィルムの表面に、水性インキを用いて公知の方法によって印刷を行う。
【0021】本発明の熱収縮フィルムの80℃の温水中に30秒浸漬して保持したときの熱収縮率は、20%以上、好ましくは25%以上とされる。20%未満であると熱収縮性が不十分である。熱収縮率は材料などによっても変化するが、上述の延伸時の温度、倍率などを変化させることによって変更することができる。また、熱収縮フィルムの表面に酢酸エチル/n−ヘキサンの混合溶剤などの適当な溶剤を薄く塗布することにより、溶剤シールを行うことができる。また、熱収縮フィルムを破砕し、フィルム原反の材料に混合してリサイクルして、再びフィルム原反を製造することができる。
【0022】このように本発明の熱収縮フィルムにおいては、スチレン系ブロック(A)と(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体の皮膜を形成することによって水性インキによる印刷が可能となる。また、この皮膜の作用により、熱収縮後においても印刷不良などが発生しない。また、フィルム本体(フィルム原反)の材料と皮膜の材料が相溶性があるため、熱収縮フィルムをフィルム本体(フィルム原反)の材料に混合してリサイクルすることができる。さらに、皮膜の上から溶剤を塗布して溶剤シールを行うことができるため、フィルム原反の全面に皮膜を形成することができ、皮膜材料の塗布範囲の制御が必要なく、製造操作が簡単である。また、延伸前に皮膜を形成するため、出来上がりの熱収縮フィルムの面積と比較して小さい面積に皮膜の材料を塗布すればよいので、皮膜の材料を塗布するローターなども小さくてよく、経済的である。
【0023】
【実施例】以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
[1]皮膜の材料の合成以下のようにして皮膜の材料を合成した。なお、製造例1、2は本発明に係るブロック共重合体であり、製造例3は製造例1で得られたブロック共重合体を水性分散液としたもの、製造例4はAブロックがスチレン系ブロックではないブロック共重合体である。
【0024】製造例1[ブロック共重合体(1)(ポリスチレン−アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体のAB型ブロック共重合体)の製造]
(1)スチレンモノマー750重量部を反応容器中に仕込み、窒素雰囲気下で90℃に昇温した。これにチオ−S−酢酸0.32重量部を添加して30分後に、ラジカル重合開始剤(V−65、和光純薬)のトルエン溶液(5wt%)を6ml/hの速度で、さらにチオ−S−酢酸のトルエン溶液(5wt%)を9ml/hの速度で反応容器に連続的に添加し、重合を開始した。重合率(ポリマー転換率)が40%になった時点で反応を停止した。得られた溶液をメタノールに沈殿させてから減圧乾燥し、末端にチオ−S−酢酸エステル基を有するポリスチレンを得た。
【0025】(2)(1)で得られた末端にチオ−S−酢酸エステル基を有するポリスチレン200重量部、トルエン200重量部、ブタノール100重量部を反応容器に仕込み、70℃でこれに10wt%のNaOH/メタノール溶液1mlを添加して、ポリスチレン末端のチオ−S−酢酸エステル基のエステル交換反応を行った。2時間後、これに酢酸0.25gを添加して反応を終了した。得られた溶液をメタノールに沈殿させてから減圧乾燥し、末端にメルカプト基を有するポリスチレンを得た。
【0026】(3)(2)で得られた末端にメルカプト基を有するポリスチレン100重量部、アクリル酸エチル70重量部、アクリル酸30重量部、トルエン200重量部を反応容器に仕込み、90℃、窒素雰囲気下で、これにラジカル重合開始剤(V−70、和光純薬)のトルエン溶液(0.1wt%)を7ml/hの速度で連続的に添加し、重合を開始した。重合率(ポリマー転換率)が95%になった時点で反応を停止し、ポリスチレンブロック(スチレン系ブロック(A))およびアクリル酸エチル/アクリル酸共重合体(アクリル酸エチル:アクリル酸=70:30(重量比))ブロック((メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B))から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、これを「ブロック共重合体(1)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(1)のスチレン系ブロック(A)の数平均分子量は11000、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の数平均分子量は10000であった。
【0027】製造例2[ブロック共重合体(2)(スチレン/メタクリル酸n−ブチル共重合体−アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体のAB型ブロック共重合体)の製造]
(1)スチレンモノマー570重量部、メタクリル酸n−ブチル180重量部を反応容器中に仕込み、窒素雰囲気下で90℃に昇温した。これにチオ−S−酢酸0.74重量部を添加して30分後に、ラジカル重合開始剤(V−65、和光純薬)のトルエン溶液(2wt%)を7ml/hの速度で、さらにチオ−S−酢酸のトルエン溶液(10wt%)を9.3ml/hの速度で反応容器に連続的に添加し、重合を開始した。重合率(ポリマー転換率)が50%になった時点で反応を停止した。得られた溶液をメタノールに沈殿させてから減圧乾燥し、末端にチオ−S−酢酸エステル基を有するスチレン/メタクリル酸n−ブチル共重合体を得た。
【0028】(2)(1)で得られたスチレン/メタクリル酸n−ブチル共重合体を用いて製造例1(2)と同様の操作を行い、末端にメルカプト基を有するスチレン/メタクリル酸n−ブチル共重合体を得た。
(3)(2)で得られた末端にメルカプト基を有するスチレン/メタクリル酸n−ブチル共重合体100重量部、アクリル酸エチル90重量部、アクリル酸10重量部、トルエン200重量部を反応容器に仕込み、90℃、窒素雰囲気下で、これにラジカル重合開始剤(V−70、和光純薬)のトルエン溶液(0.1wt%)を7ml/hの速度で連続的に添加し、重合を開始した。重合率(ポリマー転換率)が95%になった時点で反応を停止し、スチレン/メタクリル酸n−ブチル共重合体ブロック(スチレン系ブロック(A))およびアクリル酸エチル/アクリル酸共重合体(アクリル酸エチル:アクリル酸=90:10(重量比))ブロック((メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B))から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、これを「ブロック共重合体(2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(2)のスチレン系ブロック(A)の数平均分子量は4900、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の数平均分子量は4800であった。
【0029】製造例3[ブロック共重合体(1)の水性分散液の製造]
ブロック共重合体(1)20重量部、キシレン80重量部を撹拌機付きの反応槽に仕込み、100℃で溶解した。次に、0.2%の水酸化ナトリウム水溶液167重量部を1時間かけて系内に連続添加し、キシレン−水懸濁液を得た。この懸濁液中のキシレンを留去することにより、固形分20%濃度の水性粗乳化物を得た。この水性粗乳化物100重量部および28%アンモニア水2.0重量部を加圧反応容器に仕込み、150℃で1時間撹拌した。撹拌後室温まで冷却して水性分散液を得た。
【0030】製造例4[ブロック共重合体(3)(ポリメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体のAB型ブロック共重合体)の製造]
(1)メタクリル酸メチル750重量部を反応容器中に仕込み、窒素雰囲気下で70℃に昇温した。これにチオ−S−酢酸14.3重量部を添加して30分後に、ラジカル重合開始剤(AIBN、和光純薬)0.04重量部を添加し、重合を開始した。重合率(ポリマー転換率)が40%になった時点で反応を停止し、得られた溶液をメタノールに沈殿させてから減圧乾燥し、末端にチオ−S−酢酸エステル基を有するポリメタクリル酸メチルを得た。
【0031】(2)(1)で得られたポリメタクリル酸メチルを用いて製造例1(2)と同様の操作を行い、末端にメルカプト基を有するポリメタクリル酸メチルを得た。
(3)(2)で得られたポリメタクリル酸メチルを用いて製造例1(3)と同様の操作を行い、ポリメタクリル酸メチルブロック(A)およびアクリル酸エチル/アクリル酸共重合体(アクリル酸エチル:アクリル酸=90:10(重量比))ブロック((メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B))から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、これを「ブロック共重合体(3)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(3)のポリメタクリル酸メチルブロック(A)の数平均分子量は10200、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)の数平均分子量は9900であった。
【0032】[2]熱収縮フィルムの製造(実施例1)ブタジエン単位含有量20重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体(旭化成工業社製、製品名:アサフレックス805)を押出機で製膜して厚さ300μmの帯状のフィルム原反を製造した。このフィルム原反の片面に、製造例1のブロック共重合体(1)を酢酸エチル/イソプロピルアルコール(重量比40/60)の混合溶剤に濃度1重量%になるように溶解して、乾燥後の塗布量が1m2 当たり1.5gになるように塗布し、70℃、0.5分の条件で乾燥した。そして、このフィルム原反を90℃に加熱し、横に5倍延伸処理して厚さ60μmの熱収縮フィルムを得た。
【0033】ついで、この熱収縮フィルムの表面に水性インキを用いて印刷を施した。24時間後、この印刷面にセロハンからなる片面粘着テープ(JIS Z 1522)を貼着して剥離する、JIS K 5400に準ずるテープ剥離試験を行ったが、印刷は全く剥離しなかった。また、熱収縮フィルムの横方向(幅方向)の熱収縮率は42%であった。熱収縮後においても、印刷不良は発生しなかった。
【0034】また、帯状の熱収縮フィルムの端部の表面に酢酸エチル/n−ヘキサン(重量比70/30)の混合溶剤を連続的に塗布して溶剤シールを行ったところ、熱収縮フィルムの送り速度が120m/分の条件で、溶剤シールで筒状に加工することができ、シール強度は良好であった。さらに、この熱収縮フィルムを粉砕して、スチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体(旭化成工業社製、製品名:アサフレックス805)に30重量%配合し、フィルム原反を押出し、延伸処理した。その結果、押出性、延伸性は良好で、フィルムの透明性も良好であり、製品化できるものであった。
【0035】(実施例2)ブタジエン単位含有量が17重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体(電気化学工業社製、製品名:クリアレン)を押出機で製膜してフィルム原反を製造した。このフィルム原反に、製造例2のブロック共重合体(2)を酢酸エチル/イソプロピルアルコール(重量比40/60)の混合溶剤に濃度1重量%になるように溶解し、乾燥後の塗布量が1m2 当たり1.5gになるように塗布した後、95℃に加熱し、横に5倍延伸処理して熱収縮フィルムを得た。また、この熱収縮フィルムの横方向の熱収縮率は30%であった。この熱収縮フィルムについて実施例1と同様にして印刷を施して剥離試験を行ったところ印刷は全く剥離しなかった。また、溶剤シール性、リサイクル性についても実施例1と同様の結果が得られた。
【0036】(実施例3)以下の材料からなる3層構造のフィルム原反を、共押出法で製膜して得た。
両外層の材料:ブタジエン単位含有量が20重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体(旭化成工業社製、製品名:アサフレックス805)
中間層の材料:ブタジエン単位含有量20重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体(旭化成工業社製、製品名:アサフレックス805)27重量%、ブチルアクリレート単位含有量が15重量%のスチレン−ブチルアクリレート共重合体(旭化成工業社製、製品名:SC004)70重量%、およびブタジエン単位含有量が60重量%のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体(旭化成工業社製、製品名:タフプレン126)3重量%の混合物この3層構造のフィルム原反の厚さは250μm、外層/中間層/外層の厚さの比は10/80/10であった。
【0037】ついで、この3層フィルム原反の片面に、製造例1のブロック共重合体(1)を、酢酸エチル/イソプロピルアルコール(重量比40/60)の混合溶剤に溶解して、乾燥後の塗布量が1m2 当たり1.5gになるようにを塗布、乾燥した。ついで、このフィルム原反を85℃に加熱し、横に5倍延伸処理して、厚さ50μmの熱収縮フィルムを得た。
【0038】この熱収縮フィルムの横方向の熱収縮率は53%であった。この熱収縮フィルムについて実施例1と同様にして印刷を施し剥離試験を行ったところ印刷は全く剥離しなかった。また、溶剤シール性についても実施例1と同様の結果が得られた。さらに、この熱収縮フィルムを破砕して中間層の材料に30重量%の割合で混合し、3層構造のフィルム原反を押出し、延伸処理した。その結果、押出性、延伸性は良好で、フィルムの透明性も良好であり、製品化できるものであった。
【0039】(実施例4)製造例3で得られたブロック共重合体(1)の水性分散液をフィルム原反に塗布する以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムを作製した。この熱収縮フィルムの横方向の熱収縮率は42%であった。この熱収縮フィルムについて実施例1と同様にして印刷を施し剥離試験を行ったところ印刷は全く剥離しなかった。また、溶剤シール性についても実施例1と同様の結果が得られた。さらに、この熱収縮フィルムを破砕して中間層の材料に30重量%の割合で混合し、3層構造のフィルム原反を押出し、延伸処理した。その結果、押出性、延伸性は良好で、フィルムの透明性も良好であり、製品化できるものであった。
【0040】(比較例1)製造例4のブロック共重合体(3)を用いた以外は、実施例2と同様して熱収縮フィルムを製造した。この熱収縮フィルムの横方向の熱収縮率は30%であった。そして、実施例1と同様にして印刷を施し、テープ剥離試験を行ったところ、印刷が全面的に剥離した。
【0041】以上のように、Aブロックにスチレン系ブロックを用いない比較例1においては、印刷不良が発生した。これに対して、本発明に係る実施例1〜4においては、印刷の定着が良好で、溶剤シール性、リサイクル性も良好であった。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のポリスチレン系熱収縮フィルムは、フィルム本体の少なくとも片面に皮膜が設けられ、フィルム本体の主成分がスチレン・ブタジエン共重合体であり、皮膜が、スチレン系ブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック(B)からなるブロック共重合体から形成され、80℃の温水中に30秒保持したときの少なくとも一方向の熱収縮率が20%以上であるので、水性インキによる印刷が可能であり、熱収縮後においても印刷不良が発生しない。また、フィルム本体の材料に混合してリサイクルすることができる。さらに、溶剤を塗布して溶剤シールを行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000106726
【氏名又は名称】シーアイ化成株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目18番1号
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地
【出願日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外6名)
【公開番号】 特開2003−103720(P2003−103720A)
【公開日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願番号】 特願2001−298814(P2001−298814)