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【発明の名称】 多層構造体およびその用途
【発明者】 【氏名】田井 伸二
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内

【要約】 【課題】防湿性に優れ、高い酸素遮断性を有し、かつ生産性コストを大幅に改善し得る有機EL素子のカバーに適した材料を提供すること。

【解決手段】環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層、接着性樹脂からなる層、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層を、この順序に配置した多層構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層、接着性樹脂からなる層、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層を、この順序に配置した多層構造体。
【請求項2】 エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層の少なくとも一層に無機物蒸着層を有する請求項1記載の多層構造体。
【請求項3】 請求項1または2に記載の多層構造体よりなるエレクトロルミネッセンス・デバイスのカバー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水分および酸素遮断性に優れた多層構造体に関する。本発明の多層構造体は、特にエレクトロルミネッセンス・デバイスのカバーとして有用である。
【0002】
【従来の技術】エレクトロルミネッセンス・デバイス(以下EL素子という)は、固体性物質の電界発光現象を利用した発光デバイスである。従来より、無機系材料を発光体として用いたEL素子(無機EL素子)が実用化され、液晶ディスプレイやフラットディスプレイ等に応用されている。しかしながら、無機EL素子は発光のために必要な電圧が高い(〜200V)こと、大型になると鮮明な発光を得ることが困難になること、カラー化が複雑になること、等の欠点を有している。これらの欠点を解消するために、近年では、低電圧を印加するだけで発光し、高輝度高効率であって、大型化や多色表示が可能である有機系材料を用いたEL素子(有機EL素子)が開発されている。しかしながら、有機系材料は無機系材料に比較して酸化を受けやすいという欠点を有している。このため、有機EL素子のカバーとして、酸素遮断性に優れた材料が求められている。
【0003】一方、EL素子においては、発光体の湿気がその寿命に大きく影響を与えることが知られている。すなわち、発光体に湿気が含まれていると、動作通電によるパネルの温度上昇により水分が気化して膨脹し、発光体と電極および絶縁層の剥離が進行する。その結果、電圧が発光体に印加されなくなり、黒点となって、EL素子全体の輝度が低下し使用に耐えられなくなる。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】この問題を解決するために、(1)封止膜および耐湿性を有する光硬化性樹脂層を有機EL素子のカバーとして使用すること(特開平5−182759号公報)、(2)フッ素樹脂フィルム/接着樹脂層/ポリアミド樹脂層からなる多層構造体をEL素子のカバーとして使用すること(特開平5−283162号)、等が知られている。しかしながら、いずれも十分な防湿性を発現するにはカバーの厚みをある程度厚くする必要があり、生産性およびコストの点で問題がある。しかして、本発明の目的は、有機系材料に悪影響を与えず、防湿性に優れ、高い酸素遮断性を有し、かつ生産性コストを大幅に改善し得る有機EL素子のカバーに適した材料を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層、接着性樹脂からなる層、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する)からなる層を、この順序に配置した多層構造体を提供することによって達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】現在使用されているカバー材料の防湿性および酸素遮断性に対する要求レベルは極めて高い水準にある。例えば、EL素子の目標耐用年数を5年とした時、厚みが1mm(重量1000g/m)のEL素子に許容される水分量はたかだか1.5gであり、防湿材料に許容される水分透過速度は0.0004g/m・24hr・atmである。
【0007】EVOHの防湿性および酸素遮断性は、相対湿度により左右されることはよく知られた事実である。逆に考えると、EVOH層を低湿度に保持することにより、防湿性および酸素遮断性に優れた材料を得ることができる。本発明においては、防湿性に優れた環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層を使用することにより、EVOHを低湿度に保持してEVOHの有する酸素遮断性が最大限に発揮される。また、わずかに透過する水分はEVOHが吸収し、EL素子への水分の影響が最小限に抑制される。
【0008】本発明の多層構造体に使用される環状オレフィン系重合体またはその水素添加物は、主鎖および/または側鎖に脂環式構造を有する重合体であり、耐候性および防湿性等の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0009】重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造等が挙げられるが、機械的強度、耐熱性等の観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造を有するものが最も好ましい。
【0010】脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に制限はないが、4〜30個が好ましく、5〜20個がより好ましく、5〜15個がさらにより好ましい。炭素原子数がこの範囲であるとき、重合体の機械的強度、耐熱性、および成形性のバランスが良好となる。
【0011】環状オレフィン系重合体またはその水素添加物において、脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらにより好ましい。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が50重量%未満の場合、耐候性および耐熱性が不十分となるおそれがある。
【0012】環状オレフィン系重合体またはその水素添加物の具体例としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、およびこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0013】これらの中でも、ノルボルナン構造以外の脂環式構造単位を有するノルボルネン系重合体、環状共役ジエン系重合体、およびこれらの水素添加物等が好ましく、ノルボルナン構造以外の脂環式構造単位を有するノルボルネン系重合体およびその水素添加物がより好ましい。
【0014】ノルボルネン系重合体としては、格別な制限はなく、例えば、特開平3−14,882号公報や特開平3−122,137号公報等に開示されている公知の重合体が挙げられる。具体的には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体およびその水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとビニル化合物の付加型重合体等が挙げられる。
【0015】これらの中でも、耐熱性と耐候性とのバランスを考慮して、ノルボルナン構造以外の脂環式構造単位を有するノルボルネン系重合体が好ましく、たとえば、ノルボルナン構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーを含むノルボルネン系モノマーの開環重合体およびその水素添加物が好ましく、ノルボルナン構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーを含むノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が特に好ましい。
【0016】上記したノルボルナン構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン;5−メトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン;5−シアノビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド;5−シクロペンチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン;トリシクロ[4,3,0,12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4,3,0,12,5]デカ−3−エン;トリシクロ[4,4,0,12,5]ウンデカ−3,7−ジエン; トリシクロ[4,4,0,12,5]ウンデカ−3,8−ジエン; トリシクロ[4,4,0,12,5]ウンデカ−3−エン;テトラシクロ[7,4,0,110,13,0,7]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8,4,0,111,14,03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)等が挙げられる。
【0017】ノルボルナン構造を2つ以上有するノルボルネン系モノマーとしては、テトラシクロ[4,4,0,12,5 ,17,10]−ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,1]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4,4,0,12,57,10]−ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−カルボキシテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン;8−シクロペンチル−テトラシクロ[4,4,0,12,5,17,1]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−ドデカ−3−エン;ペンタシクロ[6,5,1,13,6 ,02,7 ,09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7,4,0,13,6,110,13,02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン等が挙げられる。
【0018】これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。全ノルボルネン系モノマーに対する、ノルボルナン構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーの含有量は、耐候性の観点から10重量%以上であることが好ましい。
【0019】ノルボルネン系モノマーの開環重合体または共重合体は、ノルボルネン系モノマーを、開環重合触媒の存在下に、溶媒中または無溶媒で、重合温度−50〜100℃、重合圧力0〜50kg/cm(ゲージ圧)の条件で開環重合させることにより得られる。開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤との組み合わせ、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物との組み合わせ等が挙げられる。
【0020】このとき、触媒系に、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含硫黄化合物、含ハロゲン化合物、分子状ヨウ素、その他のルイス酸等の第三成分を加えることにより、重合活性や開環重合の選択性を高めることができる。
【0021】水素添加ノルボルネン系重合体は、上記のようにして得られた重合体を、常法に従って水素添加触媒の存在下に水素により水素化する方法により得ることができる。
【0022】ノルボルネン系モノマーとビニル系化合物との付加共重合体は、例えば、モノマー成分を、溶媒中または無溶媒で、チタン、ジルコニウム、又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒系の存在下で、重合温度−50〜100℃、重合圧力0〜50kg/cm(ゲージ圧)で共重合させることにより得られる。
【0023】ビニル系化合物としては、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なものであれば格別制限はなく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン等が使用される。
【0024】これらのビニル系化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、特開昭64−66216号公報に開示されているシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体が挙げられる。
【0026】環状共役ジエン系重合体としては、例えば、特開平6−136057号公報や特開平7−258318号公報に開示されているシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体およびその水素添加物等が挙げられる。
【0027】ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、例えば、特開昭51−59989号公報に開示されているビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体およびその水素添加物、特開昭63−43910号公報、特開昭64−1706号公報等に開示されているスチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物等が挙げられる。
【0028】本発明で使用される環状オレフィン系重合体またはその水素添加物においては、水素添加を必要とする場合、その水素添加率は、耐候性および防湿性の観点から、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらにより好ましい。ここで水素添加率とは、水素添加前の炭素−炭素二重結合の全モル数に対する、水素添加されたもののモル数の割合で表される。
【0029】環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量で5000〜500000が好ましく、8000〜200000がより好ましく、10000〜100000がさらにより好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあるとき、重合体の機械的強度および成形加工性のバランスが好適となる。
【0030】環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物のメルトフローレート(MFR)は、JIS−K6719に基づく測定(280℃、2160g荷重)において、好ましくは1〜100g/10分、より好ましくは10〜50g/10分である。メルトフローレートが1g/10分未満の場合、成形温度がより高温となり、成形不良となることがある。また、100g/10分を超える場合、成形時にバリ等の成形不良が発生することがある。
【0031】これらの環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】また、上記環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物には、必要に応じてその他のポリマーや各種の配合剤を添加してもよい。各種の配合剤としては、樹脂工業において通常用いられる配合剤、例えば、老化防止剤、安定剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、無機フィラー、滑剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。
【0033】また、着色剤、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリレート系、サリチレート系等)等を配合することにより、環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層に遮光性を持たせるようにしてもよい。
【0034】環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層の厚みはとくに制限されないが、好適には1〜1000μm、より好適には10〜500μm、さらに好適には50〜300μmである。
【0035】本発明の多層構造体に使用されるEVOHは、エチレンとビニルエステルとの共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的な化合物として挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も使用できる。
【0036】EVOHのエチレン含有量は5〜55モル%であるのが好ましい。エチレン含有量が5モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化することがある。EVOHのエチレン含有量は、より好適には10モル%以上であり、さらに好適には20モル%以上である。一方、エチレン含有量が55モル%を超えると十分なガスバリア性が得られないことがある。エチレン含有量は、より好適には50モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。
【0037】EVOHのビニルエステル成分のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、さらに好適には98%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下することがある。また、熱安定性が不充分となり、成形時にゲル・ブツが発生し易くなる。
【0038】EVOHがエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。また、EVOHがケン化度の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をケン化度とする。EVOHのエチレン含有量およびケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0039】EVOHには、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレンおよびビニルアルコール以外の単量体を共重合成分として少量含有することもできる。このような単量体の例としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類等が挙げられる。
【0040】中でも、EVOHに共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は、該EVOHを基材となるべき樹脂と共に、共押出成形または共射出成形して多層構造体を得る際に、該基材樹脂との溶融粘性の整合性が改善され、均質な成形物の製造が可能である。ビニルシラン系化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0041】さらに、EVOHにホウ素化合物が添加されている場合にも、EVOHの溶融粘性が改善され、均質な共押出または共射出成形物が得られる点で有効である。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸(以下、ホウ酸と略記することがある)、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等が挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸が好ましい。
【0042】ホウ素化合物が添加される場合に、その含有量は好適にはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好適には50〜1000ppmである。この範囲にあることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。20ppm未満ではホウ素化合物の添加効果が不十分となる場合がある。一方、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0043】EVOHに、アルカリ金属塩を好適にはアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm添加しておくことも層間接着性や相容性の改善のために効果的である。アルカリ金属塩の添加量は、より好適にはアルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、さらに好適には30〜500ppmである。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられ、これらの中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムが好適である。
【0044】EVOHに、リン酸化合物を添加することも好ましい。リン酸化合物を配合することにより、EVOHの熱安定性を改善することができる。特に、長時間にわたる溶融成形を行なう際のゲル状ブツの発生や着色を抑制することができる。リン酸化合物の添加量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下、より好適には5〜100ppm、最適には5〜50ppmである。
【0045】EVOHに添加するリン化合物の種類は特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形であってもよい。リン酸塩のカチオン種も特に限定されないが、カチオン種がアルカリ金属、アルカリ土類金属であることが好ましい。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン化合物を添加することが好ましい。
【0046】EVOHの極限粘度は0.06dl/g以上であるのが好ましい。EVOHの極限粘度はより好ましくは0.07〜0.2dl/gであり、さらに好ましくは0.075〜0.15dl/gであり、特に好ましくは0.080〜0.12dl/gである。EVOHの極限粘度が0.06dl/g未満の場合、フィルム強度が極端に低下する虞がある。また、EVOHの極限粘度が0.2dl/gを超える場合、成形物にゲル・ブツが発生しやすくなる虞がある。
【0047】本発明に用いられるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、さらに好適には0.5〜20g/10分である。ただし、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
【0048】これらのEVOHは、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。また、EVOHには、本発明の目的を阻外しない範囲で熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィン等)をブレンドすることもできる。
【0049】本発明において、EVOHからなる層とはEVOHフイルムまたはシートであり、その厚みは特に制限されないが、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmである。
【0050】EVOH層は複数層であってもよい。とりわけ、酸素の遮断に重点をおいた層と水分の捕捉に重点をおいた層とを重ねて使用することは有効な方法である。前者の役割を果たすEVOH層としては無延伸フィルムおよび延伸フィルムのいずれも使用できるが、二軸延伸フィルムが好ましく、その延伸倍率は面積倍率で通常5〜15倍、好ましくは8〜12倍である。一方、後者の役割を果たすEVOH層としては無延伸EVOHフィルムが好ましい。
【0051】水分を補足するための層としては従来ポリアミド樹脂が使用されていたが、ポリアミド樹脂は極めて吸湿速度が大きく、EL素子のアセンブリ工程中に起こるポリアミド樹脂層への吸湿により、その吸湿効果が著しく減衰する。一方、EVOHの平衡吸湿量はポリアミド樹脂のそれと同水準であるにもかかわらず、EVOHの吸湿速度はポリアミド樹脂のそれのおよそ1/10であり、EL素子のアセンブリ工程中の吸湿量は問題とならない範囲であるので、本発明の多層構造体においては、EVOHの吸湿特性を最大限に利用できる。
【0052】また、EVOH層に無機物蒸着を施したものは、防湿性および酸素遮断性が大幅に改善されるので好ましい。通常のEVOH層の代わりに、無機物蒸着を施したEVOH層を使用すると、環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層の厚みを1/2以下としても同等の性能を有し、性能が向上するのみならず、コスト的に有利となる。
【0053】EVOH層に蒸着される無機物層の厚みは単分子厚み〜5000オングストロームが好ましく、300〜2000オングストロームがより好ましく、1000オングストローム近辺がさらにより好ましい。蒸着方法としては、処理時の膜の安定性の観点から、真空を利用した物理蒸着法、化合物の分解または化合物の化学反応を利用した化学的蒸着法が好適である。
【0054】本発明の多層構造体に使用される接着性樹脂としては、接着性を有する樹脂であれば特に制限はないが、ホットメルト可能な接着性樹脂であることが好ましい。
【0055】接着性樹脂としては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸類を化学的に(たとえば付加反応、グラフト反応等により)結合させて得られる、カルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体をいう。
【0056】オレフィン系重合体としては、ポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテン等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等の、オレフィンと該オレフィンと共重合し得るコモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル等)との共重合体;等が挙げられる。これらの中でも、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量5〜55重量%)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含有量8〜35重量%)が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0057】エチレン性不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;そのエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;その無水物;そのモノまたはジエステル等が挙げられる。エステルとしては、メタノールエステル、エタノールエステル等が挙げられる。これらの中でも、無水マレイン酸が好適である。
【0058】エチレン性不飽和カルボン酸類のオレフィン系重合体への付加量またはグラフト量(変性度)は、オレフィン系重合体に対して好適には0.0001〜15重量%、より好適には0.001〜10重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸類のオレフィン系重合体への導入は、たとえば溶媒(キシレン等)、触媒(過酸化物等)の存在下でラジカル重合させることにより行われる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィンの190℃、2160g荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は0.2〜30g/10分であることが好ましく、0.5〜10g/10分がより好ましい。これらの接着性樹脂は単独で使用してもよいし、また二種以上を混合して使用することもできる。
【0059】本発明の多層構造体は、環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層、接着性樹脂からなる層、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層を、この順序に配置することが必要である。このような層構成を採用することにより、防湿性および酸素遮断性に優れるという本発明の効果を十分に発揮することができる。本発明の多層構造体の製造方法としては、ドライラミネート法、共押出法、共押出コーティング法等の公知の方法が挙げられる。この場合、環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層と接着性樹脂層とのラミネート、およびEVOH層と接着性樹脂層とのラミネートをそれぞれ作成し、使用時にこれらを積層することもできるし、環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層、接着性樹脂層およびEVOH層のラミネートを一度に作成することもできる。上記の層以外に、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の層を設けても構わない。
【0060】上記の様にして得られた多層構造体を使用して、EL素子の片面、両面または全面をカバーすることにより、長期耐久性に優れたEL素子を得ることができる。この場合において、EVOH層をEL素子に近い側に、環状オレフィン系重合体または該重合体の水素添加物からなる層を外側に配置することが好ましい。また、EL素子と本発明の多層構造体との接着性を確保するために、別途接着樹脂層をEL素子の表面に接するように設けることも好適である。
【0061】以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の例において、特に断りのない限り部および%は重量基準である。各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
【0062】A.環状オレフィン系重合体水素添加物(1)主鎖水素添加率H−NMR測定(2)分子量および分子量分布シクロヘキサンを溶媒とするGPC測定(ポリイソプレン換算値)
(3)メルトフローレートJIS−K6719に基づく測定(280℃、2.16kgf荷重)
(4)ガラス転移温度JIS−K7121に基づく示差走査熱量計(DSC)測定(5)比重JIS−K7112−A法【0063】B.EVOH(6)エチレン含有量およびケン化度重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
【0064】(7)融点JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により測定した。具体的には、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を用いて、試料を240℃で5分間保持した後、100℃/分の速度で30℃まで冷却し、さらに5分間保持した後、10℃/分の速度で昇温し測定した。温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。
【0065】(8)メルトフローレート試料とする樹脂または樹脂組成物のチップを、メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)の内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、190℃で溶融した後、溶融した樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーを使用して均等に荷重をかけた。シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより単位時間あたりに押出される樹脂量(g/10分)を測定し、これをメルトフローレートとした。
【0066】(9)ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩含有量試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液を、イオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩含有量をそれぞれのカチオン含有量として金属換算の量で得た。クロマトグラフィーのカラムとして、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液として5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液を使用した。なお、定量に際してはそれぞれの金属の塩化物の水溶液で作成した検量線を用いた。
【0067】(10)酢酸含有量試料とする乾燥チップ20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液をフェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、酢酸の含有量を定量した。
【0068】(11)リン酸根含有量試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液を、イオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸根含有量をリン酸イオン(PO3−)含有量として得た。クロマトグラフィーのカラムとしては(株)横川電機製のICS−A23を使用し、溶離液としては2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液を使用した。なお、定量に際してはリン酸水溶液で作製した検量線を用いた。
【0069】C.多層構造体(12)ヘイズ値(曇価)
試料フィルムの一部を切り取り、ASTM D1003−61に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR−100型」)を使用して、ヘイズ値を測定した。
【0070】(13)防湿性JIS−Z0208に準じて透湿度を測定し、透湿度係数を求めた。透湿度係数が小さいほど防湿性に優れる。
【0071】(14)酸素透過速度試料とするフィルムを20℃−65%RHで5日間温湿度調節し、JIS K7126(等圧法)に基いて酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−2/20)を用いて酸素透過速度を測定した。
【0072】[環状オレフィン系重合体の水素添加物の合成例1]窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500重量部、1−ヘキセン0.56重量部、ジブチルエーテル0.11重量部、トリイソブチルアルミニウム0.22重量部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、8−メチル−テトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]ドデカ−3−エン(以下、MTCDと略す。ノルボルナン環構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーの割合は0重量%。)200重量部、および六塩化タングステン0.70重量%含有トルエン溶液30重量部を2時間かけて連続的に添加し、重合した。得られた重合反応液を耐圧の水素化反応器に移送し、珪藻土担持ニッケル触媒(日産ガードラー社製、G−96D、ニッケル担持率58重量%)10重量部およびシクロヘキサン200重量部を加え、180℃、水素圧45kgf/cmで10時間反応させた。
【0073】この溶液を、珪藻土をろ過助剤としてステンレス製金網を備えたろ過器を通してろ過し、触媒を除去した。ろ液を3000重量部のイソプロピルアルコール中に攪拌しながら注いで水素添加物を沈殿させ、ろ別して回収した。さらに、アセトン500重量部で洗浄した後、1torr以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、MTCD開環重合体水素添加物190重量部を得た。
【0074】得られたMTCD開環重合体水素添加物の、主鎖水素添加率は99.9%、数平均分子量(Mn)は18,000、重量平均分子量(Mw)は39,500、分子量分布(Mw/Mn)は2.19、メルトフローレート(MFR)は20g/10分、ガラス転移温度(Tg)は140℃、比重は1.01であった。
【0075】なお、上記MTCD開環重合体水素添加物において、脂環式構造を有する繰り返し単位中のうち、ノルボルナン環構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーから誘導される繰り返し単位は0重量%であった。
【0076】得られたMTCD開環重合体水素添加物を、40φ押出機(プラスチック工学研究所製PLABOR)を用いて、下記条件にてペレット化を行った。
【0077】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 24 口径 40mmφ スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼 スクリュー回転数 50rpm ダイス 3mm穴、2ヶ シリンダー、ダイ温度設定 C1/C2/C3/アダプター/ダイ=200/220/240/240/250(℃)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――【0078】[環状オレフィン系重合体の水素添加物の合成例2]窒素雰囲気下、MTCD85重量部およびノルボルナン環構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーとしてトリシクロ[4,3,0,12,5]デカ−3,7−ジエン(以下、DCPと略す)15重量部を、公知のメタセシス開環重合触媒を使用して重合し、次いで公知の方法で水素添加し、MTCD/DCP開環重合体水素添加物を得た。重合体中の各ノルボルネン類の共重合比率を、重合後の溶液中の残留ノルボルネン類組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、MTCD/DCP=85/15でほぼ仕込組成に等しかった。
【0079】このMTCD/DCP開環重合体水素添加物の、水素添加率は99.9%、Mnは26,500、Mwは56,000、Mw/Mnは2.11、MFRは10g/10分、Tgは134℃、比重は1.01であった。
【0080】なお、上記MTCD/DCP開環重合体水素添加物において、脂環式構造を有する繰り返し単位のうち、ノルボルナン環構造をただ1つ有するノルボルネン系モノマーから誘導される繰り返し単位は15重量%であった。得られたMTCD/DCP開環重合体水素添加物を合成例1と同様にしてペレット化を行った。
【0081】<実施例1>合成例1で得られたMTCD開環重合体水素添加物を、40φ押出機(プラスチック工学研究所製PLABOR)とTダイからなる製膜機を使用して下記条件で製膜し、厚み200μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムに片面コロナ処理(春日電機株式会社HFS−203型)を施した。
【0082】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 24 口径 40mmφ スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼 スクリュー回転数 80rpm ダイス 550mm幅コートハンガーダイ リップ間隙 0.3mm シリンダー、ダイ温度設定 C1/C2/C3/アダプター/ダイ=200/220/240/240/250(℃)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――【0083】一方、エチレン含有量32モル%、ケン化度99.7%、融点183℃、メルトフローレート(MFR)1.6g/10分、ナトリウム塩含有量105ppm、カリウム塩含有量7ppm、マグネシウム塩含有量45ppm(いずれも金属換算)、酢酸含有量235ppm、リン酸根含有量100ppmのEVOHを、40φ押出機(プラスチック工学研究所製PLABOR)とTダイからなる製膜機を使用して下記条件で製膜し、厚み15μmの単層フィルムを得た。
【0084】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 24 口径 40mmφ スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼 スクリュー回転数 40rpm ダイス 550mm幅コートハンガーダイ リップ間隙 0.3mm シリンダー、ダイ温度設定 C1/C2/C3/アダプター/ダイ=180/200/220/220/220(℃)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――【0085】上記のMTCD開環重合体水素添加物フィルムのコロナ処理された面に、上記のEVOHフィルムをドライラミネートし、MTCD開環重合体水素添加物層/接着性樹脂層/EVOH層の構成を有する透明な多層フィルムを得た。接着性樹脂としては、タケラックA−385(武田薬品工業(株)製)を主剤として、タケネートA−50(武田薬品工業(株)製)を硬化剤として使用し、ドライラミネートした後多層フィルムを40℃で3日間養生した。こうして得られた多層フィルムのヘイズは4.2%、フィルムの透湿度は0.27g・mm/m・24hr・atm(40℃)、酸素透過速度は3.2ml・20μm/m・day・atmであった。
【0086】次に、以下のようにして有機EL素子を製造した(図1参照)。市販のITO(InO・SnO合成膜)付き透明ガラス基板1(日本板硝子製P11OE−H−PX、寸法:44mm×12mm×1.5mm)のITO面を王水によりエッチングし、陽電極2を形成した。次に洗剤(ユーアイ化成ホワイト7−L)で1時間超音波洗浄、続いてイオン交換水で1時間超音波洗浄、続いてアセトンで30分超音波洗浄、続いてエタノールで1時間超音波洗浄、続いて沸騰エタノール中に5分間浸漬後、自然乾燥を行った。
【0087】このガラス基板1を、抵抗加熱式真空蒸着装置内にセットし、チャンバー内を1×10−6Torr以下まで減圧した後、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミンを蒸着源とし、3オングストローム/秒の蒸着速度で約500オングストロームの厚みに蒸着し、有機物質ホール輸送層3を形成した。次に、ホール輸送層3の上に、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムを蒸着源とし、2オングストローム/秒の蒸着速度で約500オングストロームの厚みに蒸着し、有機物質発光層4を形成した。続いて、有機物質発光層4の上に、マグネシウムおよび銀金属(マグネシウム/銀=10/1)を蒸着源とし、5オングストローム/秒の蒸着速度で約2500オングストロームの厚みに蒸着し、陰電極5となるマグネシウム−銀合金膜を形成した。
【0088】続いてチャンバー内に窒素を充填し、陽電極2、有機物質ホール輸送層3、有機物質発光層4、陰電極5の周辺部分を覆うように、上記の多層フィルムをEVOH層を内面側にしてエポキシ系接着剤(ニチバン株式会社製アラルダイトAR−R30)で接着し、熱可塑性樹脂膜6を形成した。
【0089】こうして得られた有機EL素子の、ITOの陽電極2とマグネシウム−銀合金の陰電極5の間に、ケンウッド製直流電圧計を用いて10Vの電圧を印加したところ、各試料とも緑色に発光した。このときの発光輝度を、東京光学製輝度計を用いて測定した。さらに、この素子を大気中に放置し、発光輝度の経時変化を調べた。その結果を図2に示す。発光面の初期発光輝度は1240cd/mであり、100日後の減衰率は7.2%で非常に安定していた。
【0090】<実施例2>EVOHフィルムとして、株式会社クラレ製「エバールフィルムEF−XL」(厚み15μm)を用いた。このEVOHフィルムを抵抗加熱式真空蒸着装置内にセットし、チャンバー内を1×10−6Torr以下まで減圧した後、SiOを蒸着源とし、5オングストローム/秒の蒸着速度でEVOHフィルムの片面に1000オングストロームの厚みのSiO蒸着層を形成した。
【0091】実施例1において、EVOHフィルムの代わりに上記のSiO蒸着層を有するEVOHフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作成した。このとき、MTCD開環重合体水素添加物フィルムのコロナ処理された面と、上記のSiO蒸着層を有するEVOHフィルムのSiO蒸着面とを貼り合わせた。こうして得られた多層フィルムのヘイズは4.5%、フィルムの透湿度は0.007g・mm/m・24hr・atm(40℃)、酸素透過速度は0.03ml・20μm/m・day・atmであった。
【0092】実施例1と同様にして有機EL素子を製造し、発光輝度の経時変化を調べた。その結果を図2に示す。発光面の初期発光輝度は1250cd/mであり、100日後の減衰率は3.1%で非常に安定していた。
【0093】<実施例3>合成例1で得られたMTCD開環重合体水素添加物の代わりに、合成例2で得られたMTCD/DCP開環重合体水素添加物を使用した以外は、実施例2と同様にして多層フィルムを作成した。得られた多層フィルムのヘイズは3.8%、フィルムの透湿度は0.005g・mm/m・24hr・atm(40℃)、酸素透過速度は0.02ml・20μm/m・day・atmであった。
【0094】実施例1と同様にして有機EL素子を製造し、発光輝度の経時変化を調べた。その結果を図2に示す。発光面の初期発光輝度は1255cd/mであり、100日後の減衰率は1.7%で非常に安定していた。
【0095】<比較例1>フッ素樹脂フィルム(ダイキン工業株式会社製「ネオフロンFEPフィルムNF−0250」、250μm)に、二軸延伸ナイロン6フィルム(三菱化学興人パックス株式会社製「サントニールSNR15」、15μm)をドライラミネートし、フッ素樹脂層/接着性樹脂層/ナイロン6層の構成を有する透明な多層フィルムを得た。接着性樹脂としては、タケラックA−385(武田薬品工業(株)製)を主剤として、タケネートA−50(武田薬品工業(株)製)を硬化剤として使用し、ドライラミネートした後多層フィルムを40℃で3日間養生した。こうして得られた多層フィルムのヘイズは4.7%、フィルムの透湿度は0.42g・mm/m・24hr・atm(40℃)、酸素透過速度は85ml・20μm/m・day・atmであった。
【0096】実施例1と同様にして有機EL素子を製造し、発光輝度の経時変化を調べた。その結果を図2に示す。発光面の初期発光輝度は1220cd/mであり、100日後の減衰率は18.7%であった。
【0097】
【発明の効果】本発明の多層構造体は、防湿性に優れ、かつ高い酸素遮断性を有しているので、EL素子のカバー材料として使用することにより、EL素子の長期耐久性を飛躍的に高めることが可能である。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地
【出願日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−103718(P2003−103718A)
【公開日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願番号】 特願2001−302362(P2001−302362)