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【発明の名称】 柔軟化延伸ポリエステルフィルム
【発明者】 【氏名】牧野 美保子
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内

【氏名】大倉 正寿
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内

【氏名】笹本 太
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内

【要約】 【課題】製品として使用可能な柔軟化延伸ポリエステルフィルムを提供するため、柔軟性を与える可塑剤が安定的にポリエステル樹脂の中に留まり、高温時などの過酷な条件でも柔軟性を維持するフィルムを提供し、更に経時や加熱による透明性等の外観や形態の変化が実質的に無い柔軟化延伸ポリエステルフィルムを提供する。

【解決手段】可塑剤を含有するポリエステル樹脂層の両面に可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層が形成されている柔軟化延伸ポリエステルフィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】可塑剤を含有するポリエステルフィルムの両面に薄膜層が形成されていることを特徴とする柔軟化延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】厚み10μm換算のループスティフネスが350μN/cm以下である請求項1の柔軟化延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】加熱処理(135℃、30分間)を施した後のループスティフネスの変化率(ΔR)が20%以下である請求項1または2に記載の柔軟化延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】薄膜層の少なくとも片面に粘着剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の柔軟化延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の柔軟化延伸ポリエステルフィルムよりなる包装用ラップフィルム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は可塑剤により柔軟化したポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは、柔軟性の耐久性が良好で、安全性が高いポリエステル延伸フィルム、及びそれからなる包装用ラップフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から軟質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂が幅広くフィルム素材として用いられている。しかしながら、特にこれらの樹脂フィルムの中で軟質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素を含有する素材は土中埋没や焼却におけるダイオキシン類の発生の疑いがあり、問題となっている。また、ポリエステル、ポリオレフィン等のフィルム素材はポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のような優れた柔軟性を発揮するには至っていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、製品として使用可能な柔軟化ポリエステルフィルムを提供することであるが、そのための課題の一つは柔軟性を与える可塑剤が安定的にポリエステル樹脂の中に留まり、高温時などの過酷な条件でも柔軟性を維持するポリエステルフィルムを提供することにある。更にもう一つの課題は、経時や加熱による透明性等の外観や形態の変化が実質的に無い柔軟化延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは以上の問題を解決するために鋭意検討した結果、可塑剤を含有するポリエステル樹脂からなるフィルムの両面に薄膜層を形成すること、加えてかかるフィルムを少なくとも一軸に延伸して分子配向、結晶性を高めておくことにより、柔軟性の耐久性が高く、経時や加熱後も外観、形態の変化が少なく、包装材料等の製品として使用できる柔軟化延伸ポリエステルフィルムを提供できることを見出した。
【0005】すなわち、本発明に係る柔軟化延伸ポリエステルフィルムは、可塑剤を含有するポリエステルフィルムの両面に薄膜層が形成されていることを特徴とするものからなる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0007】本発明に係るフィルムは、柔軟化のため可塑剤を含有したポリエステルよりなり、薄膜層がフィルムの両面に形成されている必要がある。かかる薄膜層が存在しないと、柔軟性の耐久性が不十分である。特に70℃以上の高温あるいは熱水・油などに晒された際の可塑剤の飛散・滲出を抑制するためにはかかる薄膜層は必須である。一般に可塑剤の飛散・滲出を抑制するためにベース樹脂と可塑剤の親和性を高める方法が検討されているが、高温下においても可塑剤の飛散・滲出を抑制することはどうしても困難である。
【0008】かかる薄膜層としては、可塑剤の飛散・滲出が抑制されるものであれば特に限定はなく、例えばガラス転移温度が50℃以上、好ましくは65℃以上で、使用するポリエステルとの接着性良好なポリマー層、アクリル樹脂を主たる構成成分とする層、ビニル系樹脂を主たる構成成分とする層、エポキシ系樹脂を主たる構成成分とする層、アミド系樹脂を主たる構成成分とする層などが例示出来る。特にこれらの中で効果が高いアクリル系樹脂、ビニル系樹脂が好ましい。また、包装用ラップフィルムとして用いる場合は、微粘着性をもったものが好ましく用いられる。
【0009】アクリル樹脂としてはその構成成分として各種モノマーを使用しうる。例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては炭素数1〜25のアルキル基)を基本骨格とし、更に各種の架橋性官能基を有するモノマーを共重合したものが使用し得る。このような官能基としてはカルボキシル基、メチロール基、酸無水物基、スルホン酸基、アミド基、メチロール化されたアミド基、アミノ基、水酸基、エポキシ基等を例示することが出来る。上記官能基を有するモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどを挙げることができる。更に上記以外の化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ブチルビニルエーテル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル基を有するアルコキシシランなどを共重合しても良い。もちろん上記モノマーのエステルも使用することが出来る。
【0010】又、かかる薄膜層の厚みは目的を達成するために十分な厚みであれば良いが、1μm以下が好ましく、更に好ましくは0.5μm以下である。特に本発明においては、薄膜層に用いる物質の種類と膜厚みを調整し、加熱処理(135℃、30分)を施した後のループスティフネスの変化率(ΔR)が20%以下、より好ましくは10%以下となるように柔軟性の耐久性を高めることが良い。ΔRが20%を越えると、高温に晒されるような用途、例えば電子レンジでの加熱に適用するようなラップフィルムなどの用途で柔軟性の耐久性が不十分となることがある。
【0011】更に本発明のフィルムは、少なくとも一方向に延伸をされている必要がある。結晶化や配向が進んでいない、いわゆる未延伸フィルムや押出シートでは、経時的に柔軟性が低下したり、加熱時に大きく進行する結晶化のため、可塑剤が飛散・滲出したり外観や形態が変化する等の問題が生じる。かかる問題を解決するためにはフィルムは少なくとも一方向に延伸されている必要があり、二方向(二軸)に延伸され、熱固定されていると更に好ましい。
【0012】本発明で使用するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸とジオールからの縮重合により得られるポリマーを少なくとも80重量%含有するポリマーである。芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1, 5−ナフタレンジカルボン酸、2, 6−ナフタレンジカルボン酸、4, 4' −ジフェニルジカルボン酸、4, 4' −ジフェニルエーテルジカルボン酸、4, 4' −ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2, 6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。さらに、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0013】また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1, 2−プロパンジオール、1, 3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1, 3−ブタンジオール、1, 4−ブタンジオール、1, 5−ペンタンジオール、1, 6−ヘキサンジオール、1, 2−シクロヘキサンジメタノール、1, 3−シクロヘキサンジメタノール、1, 4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2, 2' −ビス(4' −β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1, 4−ブタンジオール、1, 4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、ジエチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0014】また、ポリエステルには、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2, 4−ジオキシ安息香酸、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の他の化合物を、ポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。
【0015】本発明におけるポリエステルは、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびこれらの共重合体および変成体が、本発明の効果発現の観点から好ましく用いられ、特に耐熱性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく用いられる。
【0016】本発明で述べる可塑剤とは、ポリエステルに対して可塑化効果を有するものであれば特に限定されないが、有機系可塑剤が好ましい。ここで、可塑化効果としてはポリエステルのガラス転移温度を低下させることをいう。可塑剤は、分散性、相溶性の点から数平均分子量が200〜3000であることが好ましく、より好ましくは300〜2500、更に好ましくは400〜2000である。
【0017】有機系可塑剤としては、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン系可塑剤などが好ましく、ポリエステルとの相溶性に優れる点からエーテル系可塑剤、エステル系可塑剤がより好ましい。エーテル系可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。また、エステル系可塑剤としては脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル類等を挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸として、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸等を挙げることができ、脂肪族アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、n-ドデカノール、ステアリルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、1、2-プロピレングリコール、、1、3-プロピレングリコール、1、3-ブタンジオール、1、5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール、また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の多価アルコールを挙げることができる。
【0018】本発明で用いる可塑剤としては、ポリエステルの耐熱性、耐溶剤性を良好とする点から、ポリエステルとの反応性が低いことが好ましい。具体的には、ヒドロキシル基やカルボキシル基等、上述した可塑剤におけるポリエステルとの官能性を有する基が低減されていることが有効であり、例えば、可塑剤分子の末端の少なくとも一方が封鎖されていることがより好ましく、全ての末端が封鎖されていることが特に好ましい。末端を封鎖した可塑剤としては、例えばポリアルキレングリコールの末端を、安息香酸、メチル安息香酸、ナフタレンモノカルボン酸等の芳香族カルボン酸や酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ステアリル酸等の脂肪族カルボン酸によってエステル化したものが挙げられる。また、末端を封鎖したエステル系可塑剤としては、例えば上述したジカルボン酸と一価アルコールとのエステルや、2価以上のアルコールとのエステルのヒドロキシル基をカルボン酸類あるいは一価アルコールによって末端をエステル化あるいはエーテル化したものが挙げられる。エステル系可塑剤としてポリエステルとの相溶性、分散性の点からジカルボン酸成分が炭素数4〜20であることが好ましく、炭素数4〜15のジカルボン酸からなることがより好ましく、さらに好ましくは炭素数4〜12であり、特に好ましくは5〜10である。
【0019】可塑剤の添加量はポリエステルの柔軟化効果が発揮できる量であれば良いが、特にフィルムの厚み10μm換算のループスティッフネスが350μN/cm以下となるように可塑剤の種類や添加量を調整すると良い。厚み10μm換算のループスティッフネスが350μN/cmを越えると、柔軟化効果が不十分であり、包装用フィルム等の用途で使用する際に使い勝手が悪い。可塑剤の好ましい添加量は可塑剤の種類や用いるポリエステルの種類により異なるが、特に5〜50重量%が好ましい。5%未満では可塑化効果にバラツキが生じることが多く、50重量%を越えると表面へのブリードアウト(析出)による工程トラブルなどの問題が起こることがある。かかる観点から可塑剤の含有量は5〜30重量%であることがより好ましい。
【0020】更に本発明の柔軟化延伸ポリエステルフィルムの薄膜層の少なくとも片面に粘着剤を含有せしめることによっても得られたフィルムに適度の粘着性が付与でき、包装用フィルムとして好適に使用できる。粘着剤としては、適度な粘着性を付与する物資であれば良いが、例えば脂肪酸エステル類、脂肪族炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられる。脂肪酸エステル類としては、例えばグリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールとオレイン酸、リノール酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸とのエステル化合物で、具体的には、モノグリセリンオレエート、ポリグリセリンオレエート、ジグリセリンステアレート、グリセリンジリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレエート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレエート、ポリエチレングリコールオレエート、ソルビタンオレエート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等の一種あるいは一種以上の混合物が挙げられる。
【0021】かかる粘着剤の添加量は粘着剤を含有する薄膜層に対し0.5〜15重量%であることが好ましい。又、使用する粘着剤が生分解性であることが好ましく、かかる観点からテルペン樹脂、ロジン樹脂、脂肪酸エステル類、脂肪族炭化水素樹脂等が好ましい。
【0022】本発明の柔軟化延伸ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されないが、1〜150μm、特に好ましくは5〜100μm、更に好ましくは5〜20μmである。
【0023】本発明の柔軟化延伸ポリエステルフィルムは、柔軟性、耐熱性、柔軟性の耐久性等を生かして種々の用途に使用できるが、その中でも特に包装用ラップフィルムに用いるとその機能を十分に発揮でき、好ましい。
【0024】次に本発明の柔軟化延伸ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明の柔軟化延伸ポリエステルフィルムは、インフレーション法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの既存の延伸フィルムの製造法により得ることが出来る。インフレーション法の場合は予め、可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層を積層して押し出すか、延伸後のフィルムにオフラインで上記薄膜層を形成する。逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法での本発明の柔軟化ポリエステル延伸フィルムの製造においては、まず上述の可塑剤をポリエステル樹脂に所定量含有させ、公知の方法でスリット状の口金よりフィルム状に溶融押し出し、キャスティングドラムに密着させて冷却固化せしめて未延伸フィルムを得る。ポリエステル樹脂に可塑剤を添加する方法は、予め樹脂に可塑剤を混入しておいても良いが、二軸の押出機を使用して押出機中で溶融した樹脂に可塑剤を計量しつつ添加する方法が好ましい。かかる方法で得た未延伸フィルムを連続して少なくとも一方向に延伸し、しかる後にその両面に可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層を形成させるか、未延伸フィルムの両面に薄膜層を形成せしめた後に延伸を行う。かかる薄膜層の形成方法は薄膜層とする樹脂の押出積層やコーティング、ディッピング等種々の公知の方法で実施できる。可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層の形成は、延伸前後の製膜工程中のインラインで行っても良いし、一旦延伸フィルムを得た後にオフラインで行っても良いが、製造コストの観点からインラインが好ましい。特にこれらの中で、逐次延伸法で製膜中にインラインで薄膜層を形成せしめることがフレキシビリティが高く、安定性が良好であり好ましい。
【0025】すなわち未延伸フィルムを少なくとも一方向に延伸した後、可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層を形成する。薄膜層の形成は、上述の通り薄膜層とする樹脂の押出積層やコーティング等種々の公知の方法で実施できるが、特に縦延伸後かかる薄膜層を形成する樹脂の水溶液、エマルジョンを塗布によって積層するインラインコーティング法がコストも安く工業的に好適である。更に、縦延伸後にかかる薄膜層をインラインコーティングで積層した後、横方向に延伸し、熱処理することで、薄膜層の基材との密着性や薄膜層の強靱性を高めるので好ましい。
【0026】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明する。特に耐熱性良好であり好ましい例として代表的なポリエチレンテレフタレートを例にとって説明するが、もちろん本発明はこれに限定されない。
【0027】(ループスティフネスの測定方法)フィルムの厚さ10μm換算のループスティフネス(曲げ強さ指数)M:サンプルは測定方向に長さ150mm、幅10mmに切り出し、東洋精機製作所株式会社製ループスティフネステスタを用いて曲げ応力M1(μN)を測定した。ループ長は50mm、押しつぶし距離は5mmとした。曲げ応力の測定値M1(N)、サンプル厚さt(μm)から、下記の式を用いて厚さ10μmのループスティフネスM(μN/cm)を求めた。
【0028】M=M1×(10/t)3/(1.0)
測定は長手方向及び幅方向それぞれにつきサンプリング位置の異なるサンプル20個を用いて測定し、その平均値を求めた。
【0029】(ループスティフネスの変化率(ΔR)の測定方法)オーブン中で135℃、30分間熱処理後のサンプルのループスティフネスをR135、熱処理前のサンプルのループスティフネスをR25とし、下式によりΔRを求める。
【0030】
ΔR=(R135−R25)/R25*100(%)
(ポリエステル樹脂)ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.60(dl/g)、融点257℃、ガラス転移温度78℃、酸化珪素粒子:粒径1.2μm、添加量0.8重量%)のペレットを180℃で4時間真空加熱乾燥し、水分を十分に除去して使用した。
【0031】(可塑剤)
可塑剤A;安息香酸末端ポリエチレングリコール(分子量600)
可塑剤B;ステアリル酸末端ポリエチレングリコール(水分散塗料組成)
アクリル系樹脂;メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸(45/50/5重量%)の乳化重合で得られた平均粒子径0.05μmのアクリル樹脂エマルジョンを固形分重量比率3%となるように水で希釈して作成した。
【0032】(硬さの評価)フィルムの硬さが包装材用フィルム、特にラップフィルムに関して、使用するに十分な柔らかさを◎、やや硬めであるが使用するに不都合ない柔らかさを○、柔さががやや劣るものを△、柔軟性が良くない物を×とした。
【0033】実施例1〜6ポリエチレンテレフタレートを二軸押出機で280℃で溶融しつつ、可塑剤として表1に示した化合物を表1に示した添加量となるように計量しつつ供給し可塑剤添加を行い、ポリマー流を形成し、Tダイ口金温度250℃でフィルム状に押し出し、35℃に冷却したドラム上に静電印加キャストして未延伸フィルムを作成した。連続して95℃の加熱ロール間で長手方向に3倍延伸して、しかる後にグラビアコート方式で片面ずつ水分散塗料を二軸延伸後の薄膜層厚みが各々の面で表1のとおりの厚みとなるように塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持してテンター内に導き、60℃の予熱工程で水を一部乾燥させた後、110℃の温度で加熱しつつ横方向に5.0倍延伸し、180℃で熱処理を施し、フィルム厚み約10μmの柔軟化延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた柔軟化延伸ポリエステルフィルムの特性値を表1に示す。
【0034】比較例1〜3アクリル系樹脂による薄膜層の形成を行わない以外は実施例2、4と同様の方法で柔軟化延伸ポリエステルフィルムを得た(比較例1,2)。得られたポリエステルフィルムの特性値を表2に示す。又、可塑剤を添加せず、薄膜層も形成しないポリエステルフィルムを実施例1と同様の方法で得た。特性値を表2に併せて示す(比較例3)。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

実施例1〜6と比較例3の対比より明らかなとおり、ポリエステルに可塑剤を添加することでフィルムは柔軟化し包装材としての硬さが改善される。加熱前、加熱後のループスティフネスの値から、ループスティフネスが350μN/cm以下が特に良好であることが分かる。この効果は可塑剤の添加量増加とともに高くなる。可塑剤AとBは、どちらも効果を示すが、可塑剤により添加効果が若干異なる。
【0037】又、実施例 1〜6よりアクリル系樹脂によるコーティング薄膜層を設けることにより、加熱後のΔRが小さくキープでき、柔軟性の耐久性を高められることが分かる。一方で同じ薄膜層の厚みでも可塑剤が変わると加熱時の飛散・滲出の抑制効果は異なりΔRが異なることが分かる。ΔRが20%を越えると、依然効果はあるものの、その抑制効果が若干物足りなくなる(実施例4、5)。かかる抑制効果は薄膜層の厚みを増すことにより高められることが実施例3,6の対比によりわかる。一方でかかる薄膜層を設けない場合、加熱により可塑剤が飛散・滲出し、柔軟性がキープできず、使用に耐えない(実施例2と比較例1及び実施例3と比較例2の対比)。
【0038】比較例4ポリエチレンテレフタレートを二軸押出機で280℃で溶融しつつ、可塑剤として可塑剤A(安息香酸末端ポリエチレングリコール(分子量600))を用い添加量25重量%となるように計量しつつ供給し可塑剤添加を行い、ポリマー流を形成し、Tダイ口金温度250℃でフィルム状に押し出し、35℃に冷却したドラム上にキャストして厚さ90μmの未延伸フィルムを作成した。この未延伸フィルムは延伸を行うことなく、オフラインで実施例1と同様の水分散塗料を用い、両面に厚み0.25μmの薄膜層を形成した。
【0039】得られたフィルムは、製膜直後は柔らかいものであったが、60℃のオーブン中で10日間保管するとフィルムが白く濁り、著しく外観が悪化した。又、この未延伸フィルムを135℃で30分間加熱すると、フィルムの外観が白く変化するとともに、平面性が悪化しかつ、柔軟性が大きく低下した。
【0040】実施例7実施例3で薄膜層の片面に塗布する水分散塗料に粘着剤としてジグリセリンステアレートを固形分で3重量%添加し、他は実施例3と同じ条件で延伸フィルムを得た。得られたフィルムは柔軟性と適度な粘着性を有し、ラップフィルムとして使いやすいものであった。
【0041】実施例8ポリエチレンテレフタレートを二軸押出機で280℃で溶融しつつ、可塑剤として可塑剤A(安息香酸末端ポリエチレングリコール(分子量600))を用い添加量25重量%となるように計量しつつ供給し可塑剤添加を行い、ポリマー流を形成した。又、薄膜層としてポリエチレンテレフタレートを280℃で押出機で溶融しポリマー流を形成した。これらふたつのポリマー流を口金で合流せしめ、両面に薄膜層を設ける積層構造を形成した後、Tダイ口金温度250℃でフィルム状に押し出し、25℃に冷却したドラム上にキャストして未延伸フィルムを作成した。続いて95℃に加熱したローラー上で縦方向に3倍延伸し、一旦冷却した後テンター内に搬入せしめ、110℃で3.5倍横方向に延伸し、しかる後に180℃で熱処理を行ない、積層フィルム厚み12μm(薄膜膜の厚さは1μm)の柔軟化延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのループスティフネスは180μN/cmであった。この延伸フィルムを135℃で30分間加熱すると、若干可塑剤の飛散効果は劣るが何とか満足するレベルであった。この時のΔRは19%であった。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により、柔軟性が長期に渡りキープでき、しかも高温下等の過酷な条件でも柔軟性の耐久性が良好な延伸フィルムを提供できる。かかるフィルムは農業資材用や包装用に広く用いられ、ゴミの削減に寄与できる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目2番1号
【出願日】 平成13年6月22日(2001.6.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−1775(P2003−1775A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−190276(P2001−190276)