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【発明の名称】 ポリエステル積層シート
【発明者】 【氏名】細田 常正
【住所又は居所】岡山県倉敷市水島中通1丁目4番地 萩原工業株式会社内

【要約】 【課題】高強度で耐久性に優れ、しかも廃棄時の環境汚染問題を解決することができ、フレキシブルコンテナ用に適する柔軟性を有するポリエステル積層シートを提供する。

【解決手段】ポリエステルからなる延伸糸を経糸と緯糸に用いて交差させたネット状基布の少なくとも片面にポりエチレンテレフタレート60〜90重量%とポリブチレンテレフタレート10〜40重量%の組成物をラミネートしてなるポリエステル積層シートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエステルからなる延伸糸を経糸と緯糸に用いて交差させたネット状基布の少なくとも片面にポりエチレンテレフタレート60〜90重量%とポリブチレンテレフタレート10〜40重量%の組成物をラミネートしてなるポリエステル積層シート。
【請求項2】 ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載のポリエステル積層シート。
【請求項3】 ネット状基布が織布である請求項1に記載のポリエステル積層シート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明に属する技術分野】本発明は、ポリエステル積層シートに関し、さらに詳しくは、高強度で耐久性に優れ、フレキシブルンテナ、テントシートなどに適したポリエチレンテレフタレートを主成分とする積層シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、フレキシブルコンテナは、柔軟性材料から折り畳み可能な袋体に形成され、この袋体に吊り上げ用の吊り部と内容物の注入・排出を行うための開口部とが設けられて、長期間繰り返し使用することができ、かつ内容物を充填していないときは小さく折り畳んで格納することができるような特性を有している。このフレキシブルコンテナの原反としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミドなどの繊維からなる基布の表面に、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂をラミネートした積層シートが主として用いられており、この原反を縫糸を用いて縫製するか、または接着剤や高周波溶接などにより接合することにより袋体が形成されている。
【0003】上記フレキシブルコンテナは、袋体を構成する原反が、例えばポリアミド繊維/ポリ塩化ビニルや、ポリエステル繊維/エチレン−酢酸ビニル共重合体といった異種素材の組合わせで構成されているため、製品のクリーニング再生使用が実施されてはいるものの、老朽化した廃棄品については、いまだに焼却や埋立て処理がなされているのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリ塩化ビニルをラミネートシートしたフレキシブルコテナの廃棄品を埋立て処理する場合には、ポリ塩化ビニルに配合されている可塑剤、例えば、ジオクチルフタレート等のブリードによって土壌が汚染されたり、また、焼却処理する場合には、有毒ガスが発生するという問題があった。他方、フレキシブルコンテナは、廃棄品に至るまでに出来るだけ長期間繰り返し使用できることが望ましく、そのため、フレキシブルコンテナの特性として、さらなる高強度化および高耐久性が望まれている。このため、フレキシブルコンテナ用として、高強度および高耐久性に優れたポリエステル製延伸糸からなる織布の少なくとも片面に同種のポリエステルをラミネートした積層シートが試みられているが、得られる積層シートは硬くて、柔軟性に乏しくフレキシブルコンテナの上記特性を満足しえないという問題があった。本発明の目的は、高強度で耐久性に優れ、しかも廃棄時の環境汚染問題を解決することができ、フレキシブルコンテナ用に適する柔軟性を有するポリエステル積層シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルの延伸糸からなる織布の片面にポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの特定割合の組成物を押出ラミネートすることにより、柔軟性があり、且つ、加工性の優れたフレキシブルコンテナに適する積層シートが得られ、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の要旨は、ポリエステルからなる延伸糸を経糸と緯糸に用いて交差させたネット状基材の少なくとも片面にポりエチレンテレフタレート60〜90重量%とポリブチレンテレフタレート10〜40重量%との樹脂組成物をラミネートしてなるポリエステル積層シート、に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき詳細に説明する。本発明で用いられるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、あるいはそのジアルキルエステルなどの2官能成分とグリコール成分とを重縮合させて得られるものであって、代表的な例としては、酸成分としてテレフタル酸とグリコール成分としてエチレングリコールとからなるポリエチレンテレフタレート(PET)、酸成分としてテレフタル酸とグリコール成分としてテトラメチレングリコールを用いたポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。また、ポリエステルとして、単独のホモポリエステルであってもよいが、複数のホモポリエステルあるいはコポリエステルの混合物であってもよく、コポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分においてテレフタル酸の1部としてイソフタル酸、アジピン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが共重合したものであってもよく、また、グリコール成分においてエチレングリコールの1部がプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコールなどが共重合したものであってもよい。ポリエステルは融点が200〜260℃のものが好ましい。これらの内では、PETが好ましい。
【0007】また、本発明において延伸糸形成または押出ラミネート法による被覆層形成に使用されるポリエステルとして、再生ポリエステルが使用できる。再生ポリエステルは、通常、ポリエチレンテレフタレート製飲料用容器(通称ペットボトル)を破砕し、再ペレット化して用いるもので、再ペレット化工程において、吸水や熱履歴などにより低下した固有粘度(η値)を固相重合で調整して使用することができる。また、再生ポリエステルは、上記バージンのポリエステルと適宜混合して使用できる。
【0008】本発明において延伸糸を形成するポリエステルとして、上記PETに対して、PBTを配合するのが、例えば、フラットヤーン形成時に縦割れを防止したり、織成時に織り劣化を防止するために好ましい。PETに対するPBTの配合割合は5〜40重量%の範囲が好ましい。配合割合が5重量%未満では上記効果の発現が困難であり、40重量%を超えるとPBTの添加効果がそれ程かわらず、逆にコストが大幅に上昇するので好ましくない。
【0009】本発明に使用するポリエステルの固有粘度(η値)は、0.4〜1.2dl/gの範囲であり、好ましくは0.5〜1.0dl/gの範囲であり、さらに好ましくは0.7〜0.9dl/gの範囲である。η値が0.4dl/g未満では延伸糸の引張強度が低下し、かつ縦割れが生じやすく、一方、η値が1.2dl/gを超えると溶融押出時に流動性が劣り、延伸糸の成形性が低下するので好ましくない。
【0010】本発明において、延伸糸とは、上記ポリエステルを用いて延伸効果により高強力を備えていればよく、延伸糸の形態としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーンなどいずれも使用でき、柔軟性の点からマルチフィラメント、フラットヤーンが好ましく、特にフレキシブルコンテナ用途にはフラットヤーンがもっとも好ましい。延伸糸の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の技術を採用すればよい。
【0011】上記フラットヤーンの製造法として、例えば、原料ポリエステルを押出機より260〜290℃で溶融押出し、インフレーション法またはTダイ法によりフィルムを形成し、冷却固化後、スリットして延伸し、緩和熱処理を行ってフラットヤーンを得ることができる。延伸は、通常、2段延伸が好ましく、第1段延伸として60〜120℃で3〜6倍に延伸し、第2段延伸として150〜200℃で2〜3倍に延伸し、その後180〜220℃で緩和熱処理を行なう。なお、原料ポリエステルは、押出機投入前に乾燥機を用いて150〜160℃で、4〜5時間乾燥するのが好ましい。
【0012】上記延伸糸の繊度としては、500〜5000デシテクス(dt)の範囲であり、好ましくは1000〜3000dtの範囲である。繊度が500dt未満では基布として引張強力などの機械的特性が不充分となり、一方、5000dtを超えると柔軟性が劣り、さらにラミネート層との接着が不充分となり好ましくない。
【0013】さらに、本発明においては、本発明の特性を本質的に阻害しない範囲で、延伸糸の縦割れ、成形加工性、滑性、表面外観などを向上させる目的で、延伸糸形成用の組成物に無機充填材を配合することができる。無機充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ハイドロタルサイト等が好適に用いられる。これらのうちでは炭酸カルシウムが好ましい。無機充填材の配合量は、組成物に対して、0.5〜10重量%の範囲であり、望ましくは、1〜5重量%の範囲である。配合量が0.5重量%より小さいと上記目的の達成が困難となり、一方、5重量%を超えると延伸糸の柔軟性が失われるとともに糸切れが生じるので望ましくない。
【0014】本発明におけるネット状基布としては、上記ポリエステルからなる延伸糸を経糸と緯糸に用いて交差させた基布であり、織編布及び不織布が挙げられる。織編布としては、上記延伸糸を経緯糸に用いて織編成し織編布を形成する。織布の織組織としては、平織、綾織、絡み織、模紗織など種々の形状が使用され、編布としては、横編み、縦編みいずれでもよく、具体的にはトリコット編、ミラニーズ編、ラッセル編等が挙げられる。不織布としては、上記延伸糸の緯糸と経糸を交差させ、その交差接触部を接着させて用いる。接着方法としては、特に限定されるものではないが、融着や接着剤による接着等が挙げられ、特に熱融着が好ましい。上記ネット状基布の打込密度は、5〜40本/2.54cmの範囲であり、好ましくは10〜20本/2.54cmの範囲である。また、基布の目付量としては、100〜500g/mの範囲であり、好ましくは150〜300g/mの範囲である。
【0015】本発明において、上記で得られた基布の少なくとも片面に、ポりエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの樹脂組成物を用いて押出ラミネート法により被覆層を形成して積層シートを得ることができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)としては、上記したように酸成分としてテレフタル酸またはテレフタル酸誘導体と、グリコール成分としてエチレングリコールとを重縮合させて得られる重合体であって、そのテレフタル酸成分および/またはエチレングリコール成分の一部を共重合成分で置き換えた共重合体も包含する。また、上記した再生ポリエステルも使用できる。
【0016】上記PETの固有粘度(η値)は0.7〜1.3dl/gの範囲であり、好ましくは0.9〜1.1dl/gの範囲である。η値が0.7dl/g未満では、ネックインが大きく、膜揺れ現象により耳部が不安定になり、一方、1.3dl/gを超えるとドローダウン性が低下するので好ましくない。
【0017】一方、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)としては、上記したように酸成分としてテレフタル酸またはテレフタル酸誘導体と、グリコール成分としてテトラメチレングリコールとを重縮合させて得られる重合体であって、そのテレフタル酸成分および/またはテトラメチレングリコール成分の一部を共重合成分で置き換えた共重合体も包含する。
【0018】上記PBTの固有粘度(η値)は0.6〜1.8の範囲であり、好ましくは0.8〜1.5の範囲である。η値が0.6未満ではドローダウンが低下し、一方、η値が1.8を超えるとネックインが大きくなるので好ましくない。
【0019】PETとPBTとの配合割合は、PETが60〜90重量%及びPBTが10〜40重量%の範囲であり、好ましくはPETが70〜90重量%及びPBTが10〜30重量%の範囲である。PBTの配合割合が10重量%未満では得られる積層シートの柔軟性が不十分であり、一方、40重量%を超えると押出機の溶融粘度が高くなり、成形性が低下するので好ましくない。
【0020】押出ラミネート法においては、溶融温度は260〜300℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10〜50℃の範囲が好ましい。また、上記被覆層の厚みとしては、30〜150μmの範囲、好ましくは50〜100μmの範囲である。接着層の厚みが30μm未満では被覆層の強度が不十分になるとともに接着力が不十分となり、一方、150μmを越えると荷重が増加すると共に剛性が増加するので好ましくない。積層シートの目付量としては、150〜800g/mの範囲であり、好ましくは200〜500g/mの範囲である。
【0021】押出ラミネート法により基布の少なくとも片面に被覆層を設ける前に、接着性向上のために、予め基布の表面をコロナ放電処理またはプラズマ処理等の表面処理を施すことが望ましい。
【0022】本発明において、上記樹脂に対しては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、架橋剤、発泡剤、核剤等の添加剤を本発明の特性を本質的に阻害しない範囲で添加することができる。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の積層シートは、ポリエステル製延伸糸を経緯糸に用いて交差させてなる基布の少なくとも片面に、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの特定範囲の組成物を用いて押出ラミネート法により被覆層を形成することにより、高強度で耐久性に優れ、且つ、柔軟性及び加工性に優れたフレキシブルコンテナに適したポリエステル積層シートが得られる。
【0024】
【実施例】実施例1ポリエチレンテレフタレート(η=0.8dl/g)を乾燥機により150℃、5時間乾燥後、押出機で溶融温度270℃で押出し、Tダイを用いてチルロール冷却方式で冷却してフィルムを形成し、冷却固化したフィルムを8mm幅にスリットした後、第1段延伸を90℃で倍率4倍で延伸し、ついで第2段延伸を190℃で倍率2倍で延伸後、200℃で緩和熱処理を行って繊度2000dtのフラットヤーンを形成した。押出機の運転はサージングを起こすことなく安定的であった。得られたフラットヤーンは、引張強度3.6cN/dt、伸び10.0%であった。上記フラットヤーンを用いて打込密度14×14本/2.54cmで平織の基布を形成した。基布の目付量は220g/mであった。上記基布の片面にコロナ放電処理後、ポリエチレンテレフタレート(η=1.0dl/g)80重量%に対して、ポリブチレンテレフタレート(η=1.28dl/g)20重量%を配合した組成物を用いて、押出ラミネート法により押出温度290℃、冷却ロール表面温度30℃、厚み50μmで被覆層を積層して、積層シートを得た。積層シートの目付量は330g/m、引張強さは1440N/5cmであった。上記積層シートを縫製によりフレキシブルコンテナを得た。このポリエステル製フレキシブルコンテナは、高強力で、フレキシブルコンテナ用に適する柔軟性を有しており、フレキシブルコンテナとして好適に使用された。
【0025】比較例1実施例1において、上記基布の片面にポリブチレンテレフタレートを全く配合せず、ポリエチレンテレフタレート(η=1.0dl/g)単独の樹脂を用いて、押出ラミネートを行ったこと以外は同様にして行った。その結果、得られた積層シートは硬くて、柔軟性に乏しくフレキシブルコンテナの用途に十分満足しえなかった。
【出願人】 【識別番号】000234122
【氏名又は名称】萩原工業株式会社
【住所又は居所】岡山県倉敷市水島中通1丁目4番地
【出願日】 平成13年6月20日(2001.6.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−1773(P2003−1773A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−185974(P2001−185974)