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【発明の名称】 自動車部品用積層体
【発明者】 【氏名】江口 英樹
【住所又は居所】滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡績株式会社総合研究所内

【氏名】田村 勉
【住所又は居所】滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡績株式会社総合研究所内

【氏名】小泉 順二
【住所又は居所】愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑1番地 豊田合成株式会社内

【氏名】渡辺 悟
【住所又は居所】愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑1番地 豊田合成株式会社内

【要約】 【課題】自動車部品に要求される強度、剛性およびガソリンバリア性に優れ、長時間ガソリンに浸漬してもそれらの特性(特に強度、剛性)が維持され、かつ自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が高い、自動車部品用積層体を提供する。

【解決手段】(a)ポリアミド重合体分子中の鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数が10以上であるポリアミド重合体70〜99重量%と、(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体1〜30重量%を含有するポリアミド系樹脂組成物からなるA層、および(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなるB層とが積層され、かつ当該A層とB層とが熱融着してなることを特徴とする、自動車部品用積層体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)ポリアミド重合体分子中の鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数が10以上であるポリアミド重合体70〜99重量%と、(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体1〜30重量%を含有するポリアミド系樹脂組成物からなるA層、および(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなるB層とが積層され、かつ当該A層とB層とが熱融着してなることを特徴とする、自動車部品用積層体。
【請求項2】 ポリアミド重合体が、メタキシリレンジアミンとアジピン酸を重縮合して得られたポリメタキシリレンアジパミド(MXD−6)である、請求項1記載の自動車部品用積層体。
【請求項3】 自動車部品が燃料タンク付属バルブである、請求項1または2記載の自動車部品用積層体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車部品用積層体に関し、より詳しくは、自動車部品に要求される強度、剛性およびガソリンバリア性に優れ、長時間ガソリンに浸漬してもそれらの特性(特に強度、剛性)が維持され、自動車系部品に要求される安全性に対する信頼性が高い、自動車部品用積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の燃料タンクの樹脂化が進む中で、燃料タンクに付属する各種の燃料系部品の樹脂化の検討も行われており、フッ素系樹脂、エバール樹脂、ポリアミド系樹脂等のガソリンバリア性の優れた樹脂が注目されている。それらの中で有力候補の一つであるナイロン12系樹脂は、燃料系部品用材料としての開発が行われている。
【0003】しかしながら、ナイロン12系樹脂のガソリンバリア性は多くのポリアミド樹脂群の中でも低いため、燃料系部品用材料としては十分とは言えない。また、燃料系部品の安全性に対する信頼性を向上させるために、燃料タンクに使用されているポリエチレン系樹脂との積層体を使用することが検討されているが、ナイロン12系樹脂はポリエチレン系樹脂との熱融着性が悪く、それを成形してなる燃料系部品は、長時間ガソリン液中に浸漬していると、熱融着面の接着強度の低下が著しく、その強度や剛性が低下してしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、その目的は、自動車部品に要求される強度、剛性およびガソリンバリア性に優れ、長時間ガソリンに浸漬してもそれらの特性(特に強度、剛性)が維持され、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が高い、自動車部品用積層体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、特定のポリアミド系樹脂組成物と特定のポリエチレン系樹脂とが熱融着された積層体が、自動車部品に要求される強度、剛性およびガソリンバリア性に優れ、また、積層体の熱融着性が良好であるため、長時間ガソリンに浸漬しても積層体の熱融着面の接着強度の低下がほとんどなく強度や剛性が維持され、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が高いことを見出し、発明を完成するに到った。
【0006】即ち、本発明は以下の通りである。
(1) (a)ポリアミド重合体分子中の鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数が10以上であるポリアミド重合体70〜99重量%と、(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体1〜30重量%を含有するポリアミド系樹脂組成物からなるA層、および(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなるB層とが積層され、かつ当該A層とB層とが熱融着してなることを特徴とする、自動車部品用積層体。
(2) ポリアミド重合体が、メタキシリレンジアミンとアジピン酸を重縮合して得られたポリメタキシリレンアジパミド(MXD−6)である、上記(1)記載の自動車部品用積層体。
(3) 自動車部品が燃料タンク付属バルブである、上記(1)または(2)記載の自動車部品用積層体。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の自動車部品用積層体は、A層およびB層とが積層され、これらが熱融着してなるものである。
【0008】1.A層A層は、以下の(a)ポリアミド重合体と(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体を含有するポリアミド系樹脂組成物からなる層である。
【0009】(a)ポリアミド重合体本発明で使用される(a)ポリアミド重合体としては、その分子中に酸アミド基(−CONH−)を有するポリアミド重合体であって、その分子中の鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数が10以上であるポリアミド重合体である。具体的には、ナイロン3(25.0)、ナイロン4(20.0)、ナイロン5(16.7)、ナイロン6(14.3)、ナイロン7(12.5)、ナイロン8(11.1)、ナイロン9(10.0)、ナイロン46(16.7)、ナイロン66(14.3)、ナイロン610(11.1)、MXD−6ナイロン(ポリメタキシリレンアジパミド、15.4)、6Tナイロン(14.3)、6Iナイロン(15.4)等の重合体またはこれらを成分とする共重合体もしくはこれらのブレンド物等が例示されるが、これらに限定されるものではない。なお、上記の括弧中の数字は、その分子中の鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数である。
【0010】本発明においては、ポリアミド重合体分子中の鎖の骨格をなす原子とは、例えば、ポリアミド重合体がナイロン3の場合、【0011】
【化1】

【0012】の繰り返し単位を有するが、この1つの繰り返し単位においては、3個の炭素原子と1個の窒素原子が分子中の鎖の骨格をなす原子となり、そして1つのアミド結合を有することとなる。
【0013】なお、ポリアミド重合体分子が環構造を有する場合、環における鎖の骨格をなす原子とは、その環の結合部位の2個の原子と、当該2個の原子間の原子数が最短となる2個の原子間の原子である。例えば、ポリアミド重合体がMXD−6ナイロンである場合、【0014】
【化2】

【0015】の繰り返し単位を有するが、この1つの繰り返し単位においては、矢印部分の3つの炭素原子が環における鎖の骨格をなす原子となり、従って、11個の炭素原子と2個の窒素原子が分子中の鎖の骨格をなす原子となり、そして2つのアミド結合を有することとなる。
【0016】樹脂のガソリンバリア性については明確な理論はないが、例えばポリアミド重合体の場合、一般に、ポリアミド重合体分子中のアミド基の数が多くなるに従い、ガソリンバリア性は高くなる。従って、本発明においては、ガソリンバリア性のために、上記ポリアミド重合体分子中の鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数が10以上であることを必要とする。当該アミド基数は、好ましくは14以上である。当該アミド基数が10未満であるようなポリアミド重合体では、それを使用した積層体のガソリンバリア性は不十分となる。上記ポリアミド重合体のうち、ガソリンバリア性の高い重合体の中でも、MXD−6ナイロン(ポリメタキシリレンアジパミド、15.4)が自動車部品用積層体に使用する樹脂として最適である。
【0017】本発明において、上記ポリアミド重合体の数平均分子量は、好ましくは6,000〜40,000であり、より好ましくは10,000〜20,000である。当該分子量が6,000未満であると、そのようなポリアミド重合体を含有するポリアミド系樹脂組成物が脆くなり、逆に40,000を超えると、そのようなポリアミド重合体を含有するポリアミド系樹脂組成物の成形時の流動性が不足するので好ましくない。
【0018】本発明において、上記ポリアミド重合体のアミノ末端濃度は、重合体分子量の観点から、好ましくは10〜140meq/kg、より好ましくは30〜100meq/kgである。また、上記ポリアミド重合体のカルボキシル末端濃度は、重合体分子量の観点から、好ましくは10〜140meq/kg、より好ましくは30〜100meq/kgである。
【0019】(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体本発明で使用される(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体は、重合性不飽和2重結合を有する酸無水物を共重合成分として含むエチレン系共重合体であり、具体的には、特に限定されないが、重合性不飽和2重結合を有する酸無水物を共重合成分として含む、高密度エチレン系共重合体、低密度エチレン系共重合体、中密度エチレン系共重合体、高分子量エチレン系共重合体、超高分子量エチレン系共重合体、直鎖状低密度エチレン系共重合体等が例示される。ここで、上記の重合性不飽和2重結合を有する酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、安息香酸無水物等が例示され、中でも、無水マレイン酸が特に好ましい。酸無水物で変性したエチレン系共重合体の好適な具体例としては、無水マレイン酸で変性した中密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0020】酸無水物で変性したエチレン系共重合体中の重合性不飽和2重結合を有する酸無水物の含有量は、好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは0.02〜12重量%である。当該酸無水物の含有量が0.01重量%未満の場合、積層体の熱融着性が劣るため、長時間ガソリンに浸漬すると積層体の熱融着面の接着強度が低下して積層体の強度や剛性が低下し、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が低下する恐れがある。逆に、当該酸無水物の含有量が15重量%を超える場合、過剰の酸無水物基がポリアミド重合体の末端カルボキシル基と反応すると考えられるため、やはり、積層体の熱融着性が劣り、長時間ガソリンに浸漬すると積層体の熱融着面の接着強度が低下して積層体の強度や剛性が低下し、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が低下する恐れがある。
【0021】本発明においては、ポリアミド系樹脂組成物中の(a)ポリアミド重合体の含有量は70〜99重量%、好ましくは75〜95重量%、より好ましくは80〜90重量%であり、(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体の含有量は1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%である。酸無水物で変性したエチレン系共重合体の含有量が1重量%未満(即ち、ポリアミド重合体の含有量が99重量%を超える)の場合、積層体のガソリンバリア性は優れるが、積層体の熱融着性が劣るため、長時間ガソリンに浸漬すると積層体の熱融着面の接着強度が低下して積層体の強度や剛性が低下し、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が低下する。逆に、酸無水物で変性したエチレン系共重合体の含有量が30重量%を超える(即ち、ポリアミド重合体の含有量が70重量%未満)場合、積層体のガソリンバリア性が劣り、加えて、過剰の酸無水物基がポリアミド重合体の末端アミノ基と反応すると考えられるため、やはり、積層体の熱融着性が劣り、長時間ガソリンに浸漬すると積層体の熱融着面の接着強度が低下して積層体の強度や剛性が低下し、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が低下する。
【0022】本発明においては、A層を構成するポリアミド系樹脂組成物は、本発明の目的とする諸特性を損なわない範囲で、ガラス繊維や炭素繊維、各種ウイスカー、タルク、マイカ、カオリン、クレー、シリカ等の無機強化物を含有してもよい。また、通常のポリアミド樹脂組成物に用いられる耐候性改良材としてカーボンブラックや銅酸化物および/またはハロゲン化アルカリ金属化合物;光または熱安定剤としてフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤;顔料;染料;帯電防止剤;難燃剤;滑材等も含有してもよい。
【0023】B層B層は、以下の(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなる層である。
【0024】(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂本発明で使用される(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂は、特に限定されないが、グリシジルメタクリレート(GMA)を共重合成分として含むエチレン系共重合体が好ましく、例えば、エチレンとGMAとの共重合体、あるいはさらにエチレン以外の重合性不飽和2重結合を有するモノマーを共重合成分とした共重合体が例示される。上記のエチレン以外の重合性不飽和2重結合を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ブテン−1、オクテン−1、ヘキセン−1、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、アクリル酸エチル等が例示される。GMAを共重合成分として含むエチレン系共重合体の具体例としては、エチレン/GMA共重合体、エチレン/ブテン−1/GMA共重合体、エチレン/オクテン−1/GMA共重合体、エチレン/ヘキセン−1/GMA共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/GMA共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/GMA共重合体、エチレン/アクリル酸/GMA共重合体、エチレン/メタクリル酸/GMA共重合体、エチレン/酢酸ビニル/GMA共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/GMA共重合体等が例示され、中でも、エチレン/GMA共重合体が特に好ましい。
【0025】GMAを共重合成分として含むエチレン系共重合体中のGMAの含有量は、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%である。GMAの含有量が1重量%未満の場合、積層体の熱融着性が劣るため、長時間ガソリンに浸漬すると積層体の熱融着面の接着強度が低下して積層体の強度や剛性が低下し、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が低下する恐れがある。逆に、30重量%を超える場合、GMAを共重合成分として含むエチレン系共重合体自体が脆くなって、積層体の強度や剛性が低下する恐れがある。
【0026】本発明においては、B層を構成する樹脂組成物は、本発明の目的とする諸特性を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、結晶核剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、強化剤、あるいは他種ポリマーを含有してもよい。
【0027】本発明の自動車部品用積層体は、(a)ポリアミド重合体と(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体を含有するポリアミド系樹脂組成物からなるA層と、(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなるB層とを積層成形し、当該A層とB層とを熱融着させることにより製造され、その積層成形方法と熱融着方法は、特に限定されず、従来公知の方法が採用され得る。具体的には、例えば、(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物を射出成形した後、直ちに金型を回転して、当該成形品の内部表面の全面または一部表面に、(a)ポリアミド重合体と(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体を含有するポリアミド系樹脂組成物を積層成形し、熱融着させる「二色成形法」;(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物を予め成形し、当該成形品を射出成形機の金型のキャビテイに装着し、当該成形品の内部表面または一部表面に、(a)ポリアミド重合体と(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体を含有するポリアミド系樹脂組成物で追加成形を行い、熱融着させる「アウトサートまたはインサート成形法」;等が挙げられ、これらの積層成形法に限定されるものではないが、これらの方法は一体成形できる安価な成形法である。
【0028】また、熱融着の条件としては、B層の射出温度として、金型温度を約20〜80℃、シリンダー温度を約140〜230℃とし、A層の射出温度として、金型温度を約60〜90℃、シリンダー温度を約230〜330℃とすること等が挙げられるが、これらの条件に限定されるものではない。
【0029】本発明の自動車部品用積層体は、上記のような(a)特定のポリアミド重合体70〜99重量%と(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体1〜30重量%を含有するポリアミド系樹脂組成物からなるA層と、(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなるB層とが積層され熱融着されたものである。当該積層体のA層中では、ポリアミド重合体のアミノ基と酸無水物で変性したエチレン系共重合体の酸無水物基とが反応して(ここで、ポリアミド重合体のカルボキシル基はほとんど反応しない。)、ポリアミド重合体と酸無水物で変性したエチレン系共重合体とが相溶化するものと思われ、マトリックスがポリアミド重合体でドメインが酸無水物で変性したエチレン共重合体であるポリマーアロイとなると推測される。また、熱融着により、A層中のポリアミド重合体のカルボキシル基とB層中のエポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物のエポキシ基とが反応して、積層体の熱融着面の接着強度が良好となる。これらのことにより、積層体の強度および剛性が優れたものとなり、また、長時間ガソリンに浸漬しても積層体の熱融着面の接着強度の低下がほとんどなく、強度および剛性は維持されるのである。具体的には、好ましくは10.0(MPa)以上、より好ましくは11.0(MPa)以上の引張強度と、好ましくは20(%)以上、より好ましくは100(%)以上の引張伸度を有し、60℃で7日間ガソリンに浸漬した後は、好ましくは5.0(MPa)以上、より好ましくは6.0(MPa)以上の引張強度と、好ましくは3.0(%)以上、より好ましくは10.0(%)以上の引張伸度を有する。
【0030】また、本発明の自動車部品用積層体は、特定の(即ち、分子中の鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数が10以上の)ポリアミド重合体を含有するので、ガソリンバリア性にも優れる。具体的には、好ましくは10.0(g・mm/m2・day)以下、より好ましくは2.0(g・mm/m2・day)以下のガソリンバリア性(40℃における)を有する。さらに、本発明の自動車部品用積層体は、燃料タンク等の自動車部品にも使用されているポリエチレン系樹脂を含有している。
【0031】以上のことにより、本発明の自動車部品用積層体は、自動車部品に要求される安全性に対する極めて信頼性が高く、例えば、燃料タンク付属バルブ等に好適に使用できる。
【0032】
【実施例】次に本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】ポリアミド系樹脂組成物(A層を構成する)の製造(a)ポリアミド重合体として、MXD−6(東洋紡績(株)製ナイロンT−600、数平均分子量15,700、アミド基数15.4、アミノ末端濃度80meq/kg、カルボキシル末端濃度47meq/kg)を使用した。(b)酸無水物で変性したエチレン系共重合体として、中密度ポリエチレン(比重:0.93、融点:130℃、MFR:0.1g/10分(190℃、荷重2160g)100重量部に無水マレイン酸0.2重量部、ジクミルパーオキサイド0.1重量部を230℃の二軸押出機で混練して得られたものを使用した。これらを表1に示す割合で混合し、二軸押出機で285℃のシリンダー温度で混練、カットし、ペレットとした。
【0034】但し、比較例2では、ポリアミド重合体として、ナイロン12(宇部興産(株)製、ウベスタ3020U)を表1に示す割合で使用した。また、比較例4では、酸無水物で変性したエチレン系共重合体の代わりに、エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂として、レクスパールRA3150(エチレン/GMA共重合体、GMA含有量;15重量%、日本ポリオレフィン(株)製)を表1に示す割合で使用した。
【0035】エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂(B層を構成する)(c)エポキシ基を有するポリエチレン系樹脂として、レクスパールRA3150(エチレン/GMA共重合体、GMA含有量;15重量%、日本ポリオレフィン(株)製)を使用した。
【0036】積層成形品の製造上記のエポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を用いて、ASTM D−638に準じた引張り試験用ダンベルを成形し、引張りダンベルの中心部から切断した。次に切断したダンベルを引張り試験金型のキャビテイに装着し、上記のポリアミド系樹脂組成物を追加成形した。この引張りダンベルの中心部が熱融着された接合面となる。なお、ポリアミド系樹脂組成物の追加成形条件は、シリンダー温度285℃、金型温度80℃であった。
【0037】得られた積層成形品について、以下の特性について評価した。その結果を表1に示す。
【0038】1.ガソリンバリア性A層を構成するポリアミド系樹脂組成物について、JIS−Z 0208 に準じてカップ法で測定した。テスト溶液として、トルエン:イソオクタン=1:1溶液(容量比)90vol%と、エタノール10vol%を含む混合溶液を使用した。測定は40℃で行った。このポリアミド系樹脂組成物のガソリンバリア性を測定することにより、積層成形品のガソリンバリア性を判断した。
【0039】2.引張強度および引張伸度ASTM D−638に準じて測定した。
3.ガソリン浸漬テスト浸漬液として、トルエン:イソオクタン=1:1溶液(容量比)85vol%と、メタノール15vol%を含む混合溶液を使用し、60℃で7日間浸漬した後、取り出して、上記と同様の方法により、引張強度および引張伸度を測定した。
【0040】
【表1】

【0041】表1より、実施例1〜6では、ポリアミド系樹脂組成物のガソリンバリア性は極めて優れているので、積層成形品のガソリンバリア性も優れていると判断できた。また、積層成形品は引張強度および引張伸度に優れ、ガソリンに浸漬しても引張強度および引張伸度に優れていた。
【0042】一方、比較例1では、ポリアミド系樹脂組成物が酸無水物で変性したエチレン系共重合体を含有していないため、積層成形品の熱融着性が劣り、ガソリン浸漬後、熱融着面の接着強度が低下し、引張強度および引張伸度は低下した。
【0043】比較例2では、ポリアミド重合体が、鎖の骨格をなす原子100原子当たりのアミド基数が10未満であるナイロン12であるため、ポリアミド系樹脂組成物のガソリンバリア性に劣っており、従って、積層成形品のガソリンバリア性も劣っていると判断できた。またポリアミド系樹脂組成物が酸無水物で変性したエチレン系共重合体を含有していないため、積層成形品の熱融着性が劣り、ガソリン浸漬後、熱融着面の接着強度が低下し、ガソリン浸漬後の引張強度および引張伸度は低下した。
【0044】比較例3では、ポリアミド系樹脂組成物中のポリアミド重合体の含有量が少ないため、ポリアミド系樹脂組成物のガソリンバリア性に劣っており、従って、積層成形品のガソリンバリア性も劣っていると判断できた。また、ポリアミド系樹脂組成物中の酸無水物で変性したエチレン系共重合体の含有量が多いため、過剰の酸無水物基がポリアミド重合体の末端カルボキシル基と反応して、その結果、積層成形品の熱融着性が劣り、ガソリン浸漬後、熱融着面の接着強度が低下し、ガソリン浸漬後の引張強度および引張伸度は低下した。
【0045】比較例4は、ポリアミド系樹脂組成物が酸無水物で変性したエチレン系共重合体を含有せず代わりにエポキシ基を有するポリエチレン系樹脂を含有し、この樹脂のエポキシ基がポリアミド重合体の末端カルボキシル基と反応して、その結果、積層成形品の熱融着性が劣り、ガソリン浸漬後、熱融着面の接着強度が低下し、ガソリン浸漬後の引張強度および引張伸度は低下した。
【0046】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明によれば、自動車部品に要求される強度、剛性およびガソリンバリア性に優れ、長時間ガソリンに浸漬してもそれらの特性(特に強度、剛性)が維持され、自動車部品に要求される安全性に対する信頼性が高い、自動車部品用積層体を提供することができる。このような積層体は、例えば、燃料タンク付属バルブや他の自動車部品等に好適に使用できる。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目2番8号
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
【住所又は居所】愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑1番地
【出願日】 平成13年6月19日(2001.6.19)
【代理人】 【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
【公開番号】 特開2003−1770(P2003−1770A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−185476(P2001−185476)