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【発明の名称】 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板
【発明者】 【氏名】松永 隆弘
【住所又は居所】鹿児島県国分市山下町1番1号 京セラ株式会社鹿児島国分工場内

【氏名】世利 拓司
【住所又は居所】鹿児島県国分市山下町1番1号 京セラ株式会社鹿児島国分工場内

【氏名】萩原 清己
【住所又は居所】鹿児島県国分市山下町1番1号 京セラ株式会社鹿児島国分工場内

【要約】 【課題】有機材料から成る絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板において、配線の高密度化や耐湿性・絶縁性・高周波伝送特性をともに満足させることができない。

【解決手段】ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2を形成して成ることを特徴とする絶縁フィルム3、および、上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体4が配設された上記の絶縁フィルム3を複数積層して成るとともに、この絶縁フィルム3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁フィルム3に形成された貫通導体5を介して電気的に接続したことを特徴とする多層配線基板6。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエーテルエーテルケトン系有機物層の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層を形成して成ることを特徴とする絶縁フィルム。
【請求項2】 前記ポリフェニレンエーテル系有機物が熱硬化性ポリフェニレンエーテルであることを特徴とする請求項1記載の絶縁フィルム。
【請求項3】 上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体が配設された請求項1または請求項2記載の絶縁フィルムを複数積層して成るとともに、該絶縁フィルムを挟んで上下に位置する前記配線導体間を前記絶縁フィルムに形成された貫通導体を介して電気的に接続したことを特徴とする多層配線基板。
【請求項4】 前記絶縁フィルムに配設された配線導体の幅方向の断面形状は、前記絶縁フィルム側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状であり、かつ、前記絶縁フィルム側の底辺と側辺との成す角度が95〜150°であることを特徴とする請求項3記載の多層配線基板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種AV機器や家電機器・通信機器・コンピュータやその周辺機器等の電子機器に使用される絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板に関し、特にポリエーテルエーテルケトン系有機物を一部に用いた絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体素子等の能動部品や容量素子・抵抗素子等の受動部品を多数搭載して所定の電子回路を構成して成る混成集積回路に用いられる多層配線基板は、通常、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムにドリルによって上下に貫通孔を形成し、この貫通孔内部および絶縁層表面に複数の配線導体を形成した配線基板を、多数積層することによって形成されている。
【0003】一般に、現在の電子機器は、移動体通信機器に代表されるように小型・薄型・軽量・高性能・高機能・高品質・高信頼性が要求されており、このような電子機器に搭載される混成集積回路等の電子部品も小型・高密度化が要求されるようになってきており、このような高密度化の要求に応えるために、電子部品を構成する多層配線基板も、配線導体の微細化や絶縁層の薄層化・貫通孔の微細化が必要となってきている。このため、近年、貫通孔を微細化するために、ドリル加工より微細加工が可能なレーザ加工が用いられるようになってきた。
【0004】しかしながら、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムは、ガラスクロスをレーザにより穿設加工することが困難なために貫通孔の微細化には限界があり、また、ガラスクロスの厚みが不均一のために均一な孔径の貫通孔を形成することが困難であるという問題点を有していた。
【0005】このような問題点を解決するために、アラミド樹脂繊維で製作した不織布にエポキシ樹脂を含浸させた絶縁フィルムや、ポリイミドフィルムにエポキシ系接着剤を塗布した絶縁フィルムを絶縁層に用いた多層配線基板が提案されている。
【0006】しかしながら、アラミド不織布やポリイミドフィルムを用いた絶縁フィルムは吸湿性が高く、吸湿した状態で半田リフローを行なうと半田リフローの熱により吸湿した水分が気化してガスが発生し、絶縁フィルム間で剥離してしまう等の問題点を有していた。
【0007】このような問題点を解決するために、多層配線基板の絶縁層の材料としてポリエーテルエーテルケトン樹脂を用いることが検討されている。ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、剛直な分子で構成されているとともに分子同士が規則的に並んだ構成をしており分子間力が強いことから、高耐熱性・高弾性率・高寸法安定性・低吸湿性を示し、ガラスクロスのような強化材を用いる必要がなく、また、微細加工性にも優れるという特徴を有している。
【0008】このようなポリエーテルエーテルケトン樹脂の特徴を活かし、特開2000-200976号公報には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするフィルム状絶縁体表面に導体箔を熱融着した後、この導体箔に回路を形成してフィルム状配線基板を得、これらを複数積層し熱融着して多層化した多層プリント配線板が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような多層プリント配線板は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルム同士を多層化する際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂分子が剛直であるとともにある程度分子が規則正しく配向して分子間力が強くなっているために分子が動き難くなり、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面のごく一部の分子だけしか絡み合うことができないために密着性が悪く、高温バイアス試験においてフィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうという問題点を有していた。また、導体箔とポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを熱融着により接着する際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂分子が動き難いために導体箔表面の微細な凹部に入ることができず、その結果、十分なアンカー効果を発揮することができず、導体箔とポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムとの密着性が悪くなって、高温高湿下において両者間で剥離して導体箔が断線してしまうという問題点も有していた。また、エポキシ系接着剤を用いて導体箔とポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを接着する方法もあるが、この場合、エポキシ系接着剤の誘電率がポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの誘電率と大きく異なることから、導体箔を接着する際の加圧によって生じるわずかな厚みばらつきにより、高周波領域、特に100MHz以上の周波数においては伝送特性が低下してしまうという問題点を有していた。
【0010】本発明はかかる従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、高密度な配線を有するとともに、耐湿性・絶縁性・高周波伝送特性に優れた絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板を提供することに有る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の絶縁フィルムは、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層を形成して成ることを特徴とするものである。
【0012】また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、ポリフェニレンエーテル系有機物が熱硬化性ポリフェニレンエーテルであることを特徴とするものである。
【0013】さらに、本発明の多層配線基板は、上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体が配設された上記の絶縁フィルムを複数積層して成るとともに、この絶縁フィルムを挟んで上下に位置する配線導体間を絶縁フィルムに形成された貫通導体を介して電気的に接続したことを特徴とするものである。
【0014】また、本発明の多層配線基板は、絶縁フィルムに配設された配線導体の幅方向の断面形状が、絶縁フィルム側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状であり、かつ、絶縁フィルム側の底辺と側辺との成す角度が95〜150°であることを特徴とするものである。
【0015】本発明の絶縁フィルムによれば、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層を形成して成るものとしたことから、ポリフェニレンエーテル系有機物分子がポリエーテルエーテルケトン系有機物分子ほど剛直でなく、また、規則正しい配向性も示さないことから比較的分子が動きやすく、その結果、絶縁フィルムを多層化した場合においても、絶縁フィルム同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験においてフィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうということはない。また、絶縁フィルム表面に配線導体を配設した場合においても、ポリフェニレンエーテル系有機物分子が配線導体表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルムと配線導体との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下で両者間で剥離して配線導体が断線してしまうということもない。さらに、ポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層とポリエーテルエーテルケトン系有機物層の誘電率の周波数挙動がほぼ等しいことから、配線導体を接着する際の加圧によって被覆層にわずかな厚みばらつきが生じたとしても、高周波領域における伝送特性に低下を生じることのない高周波伝送特性に優れた絶縁フィルムとすることができる。
【0016】また、本発明の多層配線基板によれば、多層配線基板を上記の絶縁フィルムを用いて形成したことから、耐湿性・高周波特性に優れた多層配線基板とすることができる。さらに、絶縁フィルムを多層化する際、被覆層を形成するポリフェニレンエーテル系有機物分子は動きやすいためにポリフェニレンエーテル系有機物分子同士が絡み合いやすく、絶縁フィルム同士の密着性が強くなり、その結果、高温バイアス試験下においても絶縁フィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうことはない。
【0017】さらに、本発明の多層配線基板によれば、絶縁フィルムに配設された配線導体の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とし、かつ、絶縁フィルム側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°としたことから、配線導体を被覆層に容易に埋設することができ、配線導体を埋設した後の被覆層表面をほぼ平坦にすることができるため、多層化する際に絶縁層間に空気をかみ込むことはなく、絶縁性信頼性の高い多層配線基板とすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】次に本発明の絶縁フィルムおよび多層配線基板を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】図1は、本発明の絶縁フィルムの実施の形態の一例を示す断面図であり、また、図2は、図1の絶縁フィルムを用いて形成した多層配線基板に半導体素子等の電子部品を搭載して成る混成集積回路の実施の形態の一例を示す断面図である。さらに、図3は、図2に示す多層配線基板の要部拡大断面図である。これらの図において1はポリエーテルエーテルケトン系有機物層、2は被覆層で、主にこれらで本発明の絶縁フィルム3が構成されている。また、4は配線導体、5は貫通導体で、主に絶縁フィルム3と配線導体4と貫通導体5とで本発明の多層配線基板6が構成されている。なお、本例の多層配線基板6では、絶縁フィルム3を4層積層して成るものを示している。
【0020】絶縁フィルム3は、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1と、その表面に被着形成された被覆層2とから構成されており、これを用いて多層配線基板6を構成した場合、配線導体4や多層配線基板6に搭載される電子部品7の支持体としての機能を有する。
【0021】なお、ここでポリエーテルエーテルケトン系有機物とは次式で示される構造の樹脂やこの構造に種々の官能基が結合した樹脂、あるいはこれらの誘導体・重合体を意味するものである。
【0022】
【化1】

【0023】また、ポリフェニレンエーテル系有機物とは、ポリフェニレンエーテル樹脂やポリフェニレンエーテルに種々の官能基が結合した樹脂、あるいはこれらの誘導体・重合体を意味するものである。
【0024】このようなポリエーテルエーテルケトン系有機物としては、温度サイクル信頼性・半田耐熱性・加工性の観点からは230〜430℃の温度、特に280〜380℃の温度に融点を有するものが好ましく、さらに、層としての物性を損なわない範囲内で、熱安定性を改善するための酸化防止剤や耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を改善するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル・高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数を調整するため、および/または機械的強度を向上するための酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材を含有してもよい。
【0025】なお、上記の充填材等の粒子形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは略球状が好ましい。また、粒子径は、通常0.1〜15μm程度であり、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の厚みよりも小さい。
【0026】さらに、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1は、ポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2との密着性を高めるために、その表面をバフ研磨・ブラスト研磨・ブラシ研磨・プラズマ処理・コロナ処理・紫外線処理・薬品処理等の方法を用いて中心線表面粗さRaが0.05〜5μmの値となるように粗化しておくことが好ましい。中心線表面粗さRaは、半田リフローの際にポリエーテルエーテルケトン系有機物層1と被覆層2との剥離を防止するという観点からは0.05μm以上であることが好ましく、表面に被覆層2を形成する際に空気のかみ込みを防止するという観点からは5μm以下であることが好ましい。従って、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1は、その表面を中心線表面粗さRaが0.05〜5μmの粗面とすることが好ましい。
【0027】ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の表面に形成される被覆層2は、配線導体4を被着形成する際の接着剤の機能を有するとともに、絶縁フィルム3を用いて多層配線基板6を構成する際に、絶縁フィルム3同士を積層する際の接着剤の役目を果たす。
【0028】被覆層2は、ポリフェニレンエーテル樹脂やその誘導体、または、これらのポリマーアロイ等のポリフェニレンエーテル系有機物を30〜90体積%含有しており、とりわけ熱サイクル信頼性や配線導体4を接着する際の位置精度の観点からは、アリル変性ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。
【0029】なお、ポリフェニレンエーテル系有機物の含有量が30体積%未満であると、後述する充填材との混練性が低下する傾向があり、また、90体積%を超えると、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1表面に被覆層2を形成する際に、被覆層2の厚みバラツキが大きくなる傾向がある。従って、ポリフェニレンエーテル系有機物の含有量は、30〜90体積%の範囲が好ましい。
【0030】また、被覆層2は、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1との接着性や配線導体4・貫通導体5との密着性を良好にするという観点からは、重合反応可能な官能基を2個以上有する多官能性モノマーあるいは多官能性重合体等の添加剤を含有することが好ましく、例えば、トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートおよびこれらの重合体等を含有することが好ましい。
【0031】さらに、被覆層2は、弾性率を調整するためのゴム成分や熱安定性を改善するための酸化防止剤、耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を改善するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステルや高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数を調整したり機械的強度を向上するための酸化アルミニウムや酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材、あるいは、充填材との親和性を高めこれらの接合性向上と機械的強度を高めるためのシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤を含有してもよい。
【0032】特に絶縁フィルム3を積層しプレスする際に、被覆層2の流動性を抑制し、貫通導体5の位置ずれや被覆層2の厚みばらつきを防止するという観点からは、被覆層2は充填材として10体積%以上の無機絶縁粉末を含有することが好ましい。また、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1との接着界面および配線導体4との接着界面での半田リフロー時の剥離を防止するという観点からは、充填材の含有量を70体積%以下とすることが好ましい。従って、ポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2に、10〜70体積%の充填材を含有させておくことが好ましい。
【0033】なお、上記の充填材等の形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは、略球状が好ましい。また、粒子径は、0.1〜15μm程度であり、被覆層2の厚みよりも小さい。
【0034】本発明の絶縁フィルム3によれば、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2を形成して成るものとしたことから、ポリフェニレンエーテル系有機物分子がポリエーテルエーテルケトン系有機物分子ほど剛直でなく、また、規則正しい配向性も示さないことから比較的分子が動きやすく、その結果、絶縁フィルム3を多層化した場合においても、絶縁フィルム3同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験においてフィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうということはない。また、絶縁フィルム3表面に配線導体4を配設した場合においても、ポリフェニレンエーテル系有機物分子が配線導体4表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルム3と配線導体4との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下において両者間で剥離して配線導体4が断線してしまうということもない。さらに、ポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2とポリエーテルエーテルケトン系有機物層の誘電率の周波数挙動がほぼ等しいことから、配線導体4を接着する際の加圧によってわずかな厚みばらつきが生じたとしても高周波領域における伝送特性の低下を生じることのない高周波伝送特性に優れた絶縁フィルム3とすることができる。
【0035】このような絶縁フィルム3は、例えば粒径が0.1〜15μm程度の酸化珪素等の無機絶縁粉末に、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂と溶剤・可塑剤・分散剤等を添加して得たペーストをポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の上下表面に従来周知のドクタブレード法等のシート成型法を採用して被覆層2を形成した後、あるいは上記のペースト中にポリエーテルエーテルケトン系有機物層1を浸漬し垂直に引き上げることによってポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の表面に被覆層2を形成した後、これを60〜100℃の温度で5分〜3時間加熱・乾燥することにより製作される。
【0036】なお、絶縁フィルム3の厚みは絶縁信頼性を確保するという観点からは10〜200μmであることが好ましく、また、高耐熱性・低吸湿性・高寸法安定性を確保するという観点からは、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の厚みを絶縁フィルム3の厚みの40〜90%の範囲としておくことが好ましい。
【0037】また、本発明の多層配線基板6は、上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体4が配設された絶縁フィルム3を複数積層して成るとともに、この絶縁フィルム3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁フィルム3に形成された貫通導体5を介して電気的に接続することにより形成されている。
【0038】絶縁フィルム3に形成された配線導体4は、その厚みが2〜30μm程度で銅・金等の良導電性の金属箔から成り、多層配線基板6に搭載される電子部品7を外部電気回路(図示せず)に電気的に接続する機能を有する。
【0039】このような配線導体4は、絶縁フィルム3を複数積層する際、配線導体4の周囲にボイドが発生するのを防止するという観点から、被覆層2に少なくとも配線導体4の表面と被覆層2の表面とが平坦となるように埋設されていることが好ましい。また、配線導体4を被覆層2に埋設する際に、被覆層2の乾燥状態での気孔率を3〜40体積%としておくと、配線導体4周囲の被覆層2の樹脂盛り上がりを生じさせず平坦化することができるとともに配線導体4と被覆層2の間に挟まれる空気の排出を容易にして気泡の巻き込みを防止することができる。なお、乾燥状態での気孔率が40体積%を超えると、複数積層した絶縁フィルム3を加圧・加熱硬化した後に被覆層2内に気孔が残存し、この気孔が空気中の水分を吸着して絶縁性が低下してしまうおそれがあるので、被覆層2の乾燥状態での気孔率を3〜40体積%の範囲としておくことが好ましい。
【0040】このような被覆層2の乾燥状態での気孔率は、被覆層2をポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の表面上に塗布し乾燥する際に、乾燥温度や昇温速度等の乾燥条件を適宜調整することにより所望の値とすることができる。
【0041】さらに、絶縁フィルム3に配設された配線導体4の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム3側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とするとともに、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°とすることが好ましい。絶縁フィルム3に配設された配線導体4の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム3側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とするとともに、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°とすることにより、配線導体4を被覆層2に埋設する際に、配線導体4を被覆層2に容易に埋設して配線導体4を埋設した後の被覆層2表面をほぼ平坦にすることができ、積層の際に空気をかみ込んで絶縁性を低下させることのない多層配線基板6とすることができる。なお、気泡をかみ込むことなく埋設するという観点からは、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95°以上とすることが好ましく、配線導体2を微細化するという観点からは150°以下とすることが好ましい。
【0042】また、絶縁フィルム3の層間において、配線導体4の長さの短い底辺とポリエーテルエーテルケトン系有機物層1との間に位置する被覆層2の厚みx(μm)が、上下のポリエーテルエーテルケトン系有機物層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μm(ただし、8μm≦T≦70μm、1μm≦t≦32μm)であることが好ましい。
【0043】ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、配線導体4の長さの短い底辺とポリエーテルエーテルケトン系有機物層1間のポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2の厚みx(μm)を3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μmとすることにより、配線導体4の長さの短い底辺とポリエーテルエーテルケトン系有機物層1間の距離および配線導体4の長さの長い底辺と隣接するポリエーテルエーテルケトン系有機物層1間の距離の差をt(μm)未満と小さくすることができ、被覆層2の厚みが大きく異なることから生じる多層配線基板6の反りを防止することができる。従って、配線導体4の台形状の上底側表面とポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の間に位置する、被覆層2の厚みx(μm)を、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μmの範囲とすることが好ましい。
【0044】このような配線導体4は、絶縁フィルム3となる前駆体シートに、公知のフォトレジストを用いたサブトラクティブ法によりパターン形成した、例えば銅から成る金属箔を転写法等により被着形成することにより形成される。先ず、支持体と成るフィルム上に銅から成る金属箔を接着剤を介して接着した金属箔転写用フィルムを用意し、次に、フィルム上の金属箔を公知のフォトレジストを用いたサブトラクティブ法を使用してパターン状にエッチングする。この時、パターンの表面側の側面は、フィルム側の側面に較べてエッチング液に接する時間が長いためにエッチングされやすく、パターンの幅方向の断面形状を台形状とすることができる。なお、台形の形状は、エッチング液の濃度やエッチング時間を調整することにより短い底辺と側辺とのなす角度を95〜150°の台形状とすることができる。そして、この金属箔転写用フィルムを絶縁フィルム3と成る前駆体シートに積層し、温度が100〜200℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で10分〜1時間ホットプレスした後、支持体と成るフィルムを剥離除去して金属箔を絶縁フィルム3と成る前駆体シート表面に転写させることにより、台形状の上底側が被覆層2に埋設された配線導体4を形成することができる。
【0045】なお、配線導体4の長さの短い底辺と対向するポリエーテルエーテルケトン系有機物層1間の被覆層2の厚みx(μm)は、金属箔転写時のホットプレスの圧力を調整することにより所望の範囲とすることができる。また、配線導体4は被覆層2との密着性を高めるためにその表面にバフ研磨・ブラスト研磨・ブラシ研磨・薬品処理等の処理で表面を粗化しておくことが好ましい。
【0046】また、絶縁フィルム3には、直径が20〜150μm程度の貫通導体5が形成されている。貫通導体5は、絶縁フィルム3を挟んで上下に位置する配線導体4を電気的に接続する機能を有し、絶縁フィルム3にレーザにより穿設加工を施すことにより貫通孔を形成した後、この貫通孔に銅・銀・金・半田等から成る導電性ペーストを従来周知のスクリーン印刷法により埋め込むことにより形成される。
【0047】本発明の多層配線基板6によれば、絶縁フィルム3をポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2を形成して成るものとしたことから、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1が高耐熱性・高弾性率・高寸法安定性・低吸湿性であり、ガラスクロスのような強化材を用いなくとも絶縁フィルム3を構成することが可能となり、その結果、レーザによる穿設加工が容易となり微細で均一な貫通孔を形成できる。
【0048】このような多層配線基板6は、上述したような方法で製作した絶縁フィルム3と成る前駆体シートの所望の位置に貫通導体5を形成した後、パターン形成した例えば銅の金属箔を、温度が100〜200℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で10分〜1時間ホットプレスして転写し、これらを積層して最終的に温度が150〜300℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で30分〜24時間ホットプレスして完全硬化させることにより製作される。
【0049】かくして、本発明の多層配線基板6によれば、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2を形成して成る絶縁フィルム3を複数積層して成るものとしたことから、ポリフェニレンエーテル系有機物分子はポリエーテルエーテルケトン系有機物分子ほど剛直でなく、また、規則正しい配向性も示さないことから比較的分子が動きやすいために配線導体4表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、その結果、絶縁フィルム3と配線導体4の密着性が良好となり高温高湿下において両者間で剥離を生じてしまうということがない。また、ポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層2とポリエーテルエーテルケトン系有機物層1の誘電率の周波数挙動がほぼ等しいことから、配線導体4を接着する際の加圧によって被覆層2にわずかな厚みばらつきが生じたとしても高周波領域における伝送特性の低下を生じることのない高周波伝送特性に優れた多層配線基板6とすることができる。さらに、絶縁フィルム3を多層化する際、ポリフェニレンエーテル系有機物分子は動きやすいためにポリフェニレンエーテル系有機物分子同士が絡み合いやすくなって被覆層2同士の密着性が強くなり、その結果、高温バイアス試験下においても絶縁フィルム3間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。
【0050】なお、本発明の多層配線基板6は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、上述の実施例では4層の絶縁フィルム3を積層することによって多層配線基板6を製作したが、2層や3層、あるいは5層以上の絶縁フィルム3を積層して多層配線基板6を製作してもよい。また、本発明の多層配線基板6の上下表面に、1層や2層、あるいは3層以上の有機樹脂を主成分とする絶縁層から成るビルドアップ層やソルダーレジスト層を形成してもよい。
【0051】
【発明の効果】本発明の絶縁フィルムによれば、ポリエーテルエーテルケトン系有機物層の上下面にポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層を形成して成るものとしたことから、ポリフェニレンエーテル系有機物分子はポリエーテルエーテルケトン系有機物分子ほど剛直でなく、また、規則正しい配向性も示さないことから比較的分子が動きやすく、その結果、絶縁フィルムを多層化した場合においても、絶縁フィルム同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験においてフィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうということはない。また、絶縁フィルム表面に配線導体を配設した場合においても、ポリフェニレンエーテル系有機物分子が配線導体表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルムと配線導体との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下において両者間で剥離して導体箔が断線してしまうということもない。さらに、ポリフェニレンエーテル系有機物から成る被覆層とポリエーテルエーテルケトン系有機物層の誘電率の周波数挙動がほぼ等しいことから、配線導体を接着する際の加圧によってわずかな厚みばらつきが生じたとしても高周波領域における伝送特性の低下を生じることのない高周波伝送特性に優れた絶縁フィルムとすることができる。
【0052】また、本発明の多層配線基板によれば、上記の絶縁フィルムを用いたことから耐湿性・高周波特性に優れた多層配線基板とすることができる。さらに、絶縁フィルムを多層化する際、ポリフェニレンエーテル系有機物分子は動きやすいためにポリフェニレンエーテル系有機物分子同士が絡み合いやすくなって被覆層同士の密着性が強くなり、その結果、高温バイアス試験下において絶縁フィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。
【0053】さらに、本発明の多層配線基板によれば、絶縁フィルムに配設された配線導体の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とし、かつ、絶縁フィルム側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°としたことから、配線導体を被覆層に容易に埋設することができ、配線導体を埋設した後の被覆層表面をほぼ平坦にすることができるため、積層の際に絶縁層間に空気をかみ込むことはなく、絶縁性信頼性の高い多層配線基板とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地
【出願日】 平成13年6月27日(2001.6.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−1763(P2003−1763A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−194273(P2001−194273)