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【発明の名称】 銅薄膜積層体
【発明者】 【氏名】谷内 隆宏
【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田向代町125 株式会社尾池開発研究所内

【氏名】稲守 忠広
【住所又は居所】京都市南区上鳥羽北塔ノ本町34番地 関西尾池工業株式会社内

【要約】 【課題】プラスチックフイルム上に、真空薄膜形成法によって形成した銅薄膜が積層された銅薄膜積層体であって、このものを用いて電解メッキや無電解メッキで銅層をさらに積層してフレキシブルプリント配線基板を作成する等に際し、メッキ工程での投入電力が過大にならずかつメッキ浴の寿命を延ばす等の効果を有する銅薄膜積層体を提供する。

【解決手段】プラスチックフイルム(A)の少なくとも片面上に、真空薄膜形成法で形成した銅薄膜層(B)を設けた銅薄膜積層体であって、該銅薄膜層(B)の結晶子径が15nm以上であることを特徴とする銅薄膜積層体であり、また該銅薄膜層(B)の表面抵抗値が0.8Ω/□以下であるものであり、さらには銅薄膜積層体のCu薄膜層(B)上に、電解メッキおよびまたは無電解メッキで、銅層がさらに積層されたものからなるフレキシブルプリント配線基板である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 プラスチックフイルム(A)の少なくとも片面上に、少なくとも真空薄膜形成法で形成された厚さ30nm〜300nmのCu薄膜層(B)を設けた銅薄膜積層体であって、該Cu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nm以上であることを特徴とする銅薄膜積層体。
【請求項2】 Cu薄膜層(B)の表面抵抗値が0.8Ω/□以下である請求項1記載の銅薄膜積層体。
【請求項3】 請求項1または2記載の銅薄膜積層体のCu薄膜層(B)上に、電解メッキおよびまたは無電解メッキで、銅層がさらに積層されたものからなるフレキシブルプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチックフイルムの少なくとも片面上にスパッタリングや蒸着によって形成されたCu薄膜層を有する、フレキシブルプリント配線基板用等に使用される銅薄膜積層体に関するものであり、該銅薄膜積層体のCu薄膜層上に電解メッキや無電解メッキによってさらに厚いCu層を設けてなるものから製作されるフレキシブルプリント配線基板とする等に使用される銅薄膜積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピューター、携帯情報機器、ビデオ、時計等の所謂情報関連機器が発達し、これらの製品は小型、軽量化を重要な命題として開発されている。そのために、これらの機器に使用される配線基板は益々小型、軽量化が要求されている。配線基板は、従来、紙/フェノール樹脂含浸系等の絶縁性基板に銅箔を貼り合せたものが使用されてきたが、高温度での寸法安定性に問題があり、さらに重く厚く、加撓性に欠け配線基板として小型、軽量化機器に適さないものとなってきた。また、ポリイミドフイルム等の加撓性基材に銅箔等を貼り合せたものも開発されている。さらに、特公平02−55943号公報に開示されているように、ポリイミドフイルム等の加撓性基材に真空蒸着法等によって核付けなる金属極薄膜層を設けその上に、真空蒸着法等によって銅薄膜層を設けて、配線基板とする方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ポリイミドフイルム等の加撓性基材に銅箔等を貼り合せたものについては、貼り合わせに用いられる銅箔の厚さが12μm以上の厚さを有したものが大半であり、さらに張り合わせに使用する接着剤の厚さが加わり、少なくとも配線基板としての厚さが40μm以上となり、小型軽量化に対する要求に沿わない場合が多かった。またこの技術においては、接着剤の使用がその後の電気メッキ、無電解メッキさらに回路形成のためのエッチング工程において耐久性が不足する等の課題を有していた。
【0004】また、ポリイミドフイルム等の加撓性基材に真空蒸着法等によって核付けなる金属極薄膜層を設けその上に、真空蒸着法等によって銅薄膜層を設けて、配線基板としたものは、加撓性、耐久性等においてほぼ満足され、小型軽量化に対する要求に沿うものとして、近年多用されてきている。しかしこのものにおいても、加撓性基材に真空蒸着法等によって核付けなる金属極薄膜層を設けその上に、真空蒸着法等によって銅薄膜層を設け、その後電気メッキ、無電解メッキによって銅膜を厚くして、回路としての導電性を付与する工程において、真空蒸着法等によって形成された銅薄膜層の導電性不足などにより、その後の工程である電解メッキ、無電解メッキにおいて、特に電解メッキにおいて多大の電力を消費する、メッキ浴の寿命が短くなる等の障害を有する場合が多かった。
【0005】それ故、加撓性、耐久性等においてほぼ満足され、小型軽量化に対する要求に応え得るところの、プラスチックフイルムの少なくとも片面上に、少なくとも真空薄膜形成法で形成されたCu薄膜層を設けたフレキシブルプリント配線基板用の積層体におけるCu薄膜層の、後工程におけるすなわち電解メッキ工程における、多大の電力を消費する、メッキ浴の寿命が短くなる等の障害を軽減したものが要求されており、本発明はこの要求に応え得るフレキシブルプリント配線基板用の積層体等に主として使用される銅薄膜積層体を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、プラスチックフイルム(A)の少なくとも片面上に、少なくとも真空薄膜形成法で形成された厚さ30nm〜300nmのCu薄膜層(B)を設けた銅薄膜積層体であって、該Cu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nm以上であることを特徴とする銅薄膜積層体であり、またCu薄膜層(B)の表面抵抗値が0.8Ω/□以下である前記の銅薄膜積層体であり、さらに前記の銅薄膜積層体のCu薄膜層(B)上に、電解メッキおよびまたは無電解メッキで、銅層がさらに積層されたものからなるフレキシブルプリント配線基板である。
【0007】
【発明の実施態様】本発明におけるプラスチックフイルム(A)としては、特に限定されるものではないが、ポリイミドフイルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム等のポリエステルフイルム、ポリアミドイミドフイルム、ポリフェニレンフイルム、ポリスルフォンフイルム、ポリフェニレンスルフィッドフイルム、等が挙げられ、これらフイルムには滑材や補強材等を添加したものでもよく、その表面をコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理等の物理的手段による処理や化学的変性処理を施したものでもよく、それらの中で、特に好ましいのは耐熱性の観点からポリイミドフイルムである。これらのプラスチックフイルム(A)の厚さは、5〜125μm程度のものが好ましく、より好ましいのは10〜50μmである。これらの厚さの範囲から、銅薄膜積層体からのフレキシブルプリント配線基板の加撓性、蒸着やメッキ等の工程に対する耐性等の観点から適宜選定すればよいものである。
【0008】本発明における、真空薄膜形成法で形成されたCu薄膜層(B)は、スパッタリング、電子ビーム蒸着等の蒸着、CVD法等の公知の真空薄膜形成法で形成されたものであり、Cu(銅)としては、純度99.9%以上の銅からなるものが好ましいが、本発明の主旨を損なわない限り、他金属元素を含むCu(銅)でもよいものである。この真空薄膜形成法で形成されたCu薄膜層(B)の厚さは、例えばその応用であるところのフレキシブルプリント配線基板においては、その後の電解メッキ等の工程適性や得られる配線基板の加撓性から、20nm〜500nm程度であるが、好ましくは30nm〜300nmであり、さらに好ましいのは50nm〜200nmである。20nmより薄いと、例えば電解メッキ工程で溶出され易く電解メッキが困難となり、50nmより厚いとプラスチックフイルム(A)との密着性に問題が生じる等の欠点が多くなる。このCu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nm以上であることが、本発明の主旨であり、その作用効果の詳細は明らかではないが、Cu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nmに満たない場合、本発明の応用例の1であるフレキシブルプリント配線基板において、配線基板作成に必要な、電解メッキによる銅層の厚膜化において、多大の電力を消費する、メッキ浴の寿命が短くなる等の障害を多々発生することが判明した。Cu薄膜層(B)の結晶子径の平均値は、より好ましくは20nm以上でありさらに好ましくは25nm以上である。また、上記したCu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nm以上であるものであって、かつ該Cu薄膜層(B)の表面抵抗値が0.8Ω/□以下である銅薄膜積層体が、その応用であるフレキシブルプリント配線基板において、配線基板作成に必要な、電解メッキによる銅層の厚膜化工程で、多大の電力を消費することなく、メッキ浴の寿命を長く保持し得るがことが判明した。
【0009】本発明における、Cu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nm以上であるものをプラスチックフイルム(A)上に形成するに先立ち、前記したようにプラスチックフイルム(A)の表面をコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理等の物理的手段による処理や化学的変性処理等を必要に応じて施してもよく、また、Cu薄膜層(B)とプラスチックフイルム(A)との密着性を向上する等の為、クロム、ニッケル等の金属単体またはそれらの一種以上を含むものを予め薄膜形成せしめてもよく、これらの薄膜はスパッタリング、電子ビーム蒸着等公知の真空薄膜形成法で形成することが好ましく、その厚さは5nm〜80nm程度である。
【0010】本発明における、Cu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nm以上であるものをプラスチックフイルム(A)上に形成する方法は、特に限定されないが、例えばCu薄膜層(B)のスパッタリング法での薄膜形成時に、真空雰囲気中における水分比を0.07以下より好ましくは0.06以下にして薄膜形成する方法、スパッタリング法での薄膜形成時のプラスチックフイルム(A)の温度を40℃以上、より好ましくは50℃以上に維持して薄膜形成する方法等が挙げられる。これらの方法がCu薄膜層(B)の結晶子径を平均値15nm以上とする効果についての詳細は不明だが、蒸発し堆積するCuに対するCu以外のしかもCuに対し活性な原子や分子の存在が堆積する際のCuの結晶子径に主として影響を及ぼしており、そのCuに対し活性な原子や分子の存在比が銅に対して少ない状態での銅堆積が銅薄膜における結晶子径を大きくするものと考えられる。
【0011】本発明における、Cu薄膜層(B)の膜厚さの測定は、蛍光X線装置(株式会社理学 製)を用いて測定し、蛍光X線検量線法によりCu強度からその膜厚を算出した。本発明における、Cu薄膜層(B)の表面抵抗値は、低抵抗率計 ロレスターMP(MCP−T350;三菱化学株式会社 製)を用いて測定した。本発明における、Cu薄膜層(B)の結晶子径の測定は、X線回析装置(M18XHF;マックサイエンス株式会社 製)を用いて測定し、データ処理をSUNSP/IPX(マックサイエンス株式会社 製)を用いて行い、Cu(111面)の配向から算出した。本発明における真空薄膜形成時の雰囲気における水分等の測定は、残留ガスモニター REGA RG−202P (日本真空株式会社 製)を用いて測定した(表示はイオン強度比)。
【0012】以下本発明の実施例を挙げて説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】*実施例1プラスチックフイルム(A)として、25μm厚さのポリイミドフイルム(東レ・デュポン株式会社 製 Kapton 100EN)を使用し、該フイルムを真空スパッタ装置に装填し、フイルム走行速度5m/min(分)、真空薄膜形成スパッタ時の雰囲気をアルゴンガス下で2.7×10−1Pa、アルゴン/水の存在比が96/0.6において、投入電力を4W/cm2とし、Cu薄膜層を100nm厚さで形成し銅薄膜積層体を得た。得られた銅薄膜積層体の結晶子径は53.2nm、表面抵抗値は0.3Ω/□であった。
【0013】*実施例2プラスチックフイルム(A)として、25μm厚さのポリイミドフイルム(東レ・デュポン株式会社 製 Kapton 100EN)を使用し、該フイルムを真空スパッタ装置に装填し、フイルム走行速度5m/min(分)、真空薄膜形成スパッタ時の雰囲気をアルゴンガス下で2.7×10−1Pa、アルゴン/水の存在比が94/1.5において、投入電力を4W/cm2とし、Cu薄膜層を100nm厚さで形成し銅薄膜積層体を得た。得られた銅薄膜積層体の結晶子径は37.5nm、表面抵抗値は0.48Ω/□であった。
【0014】*実施例3プラスチックフイルム(A)として、25μm厚さのポリイミドフイルム(東レ・デュポン株式会社 製 Kapton 100EN)を使用し、該フイルムを真空スパッタ装置に装填し、フイルム走行速度5m/min(分)、真空薄膜形成スパッタ時の雰囲気をアルゴンガス下で2.7×10−1Pa、アルゴン/水の存在比が90/4.3において、投入電力を4W/cm2とし、Cu薄膜層を100nm厚さで形成し銅薄膜積層体を得た。得られた銅薄膜積層体の結晶子径は15.2nm、表面抵抗値は0.76Ω/□であった。
【0015】*比較例1プラスチックフイルム(A)として、25μm厚さのポリイミドフイルム(東レ・デュポン株式会社 製 Kapton 100EN)を使用し、該フイルムを真空スパッタ装置に装填し、フイルム走行速度5m/min(分)、真空薄膜形成スパッタ時の雰囲気をアルゴンガス下で2.7×10−1Pa、アルゴン/水の存在比を88/5.7として、投入電力を4W/cm2とし、Cu薄膜層を100nm厚さで形成し銅薄膜積層体を得た。得られた銅薄膜積層体の結晶子径は13.9nm、表面抵抗値は0.84Ω/□であった。
【0016】**比較例2プラスチックフイルム(A)として、25μm厚さのポリイミドフイルム(東レ・デュポン株式会社 製 Kapton 100EN)を使用し、該フイルムを真空スパッタ装置に装填し、フイルム走行速度5m/min(分)、真空薄膜形成スパッタ時の雰囲気をアルゴンガス下で2.7×10−1Pa、アルゴン/水の存在比を79/15として、投入電力を4W/cm2とし、Cu薄膜層を100nm厚さで形成し銅薄膜積層体を得た。得られた銅薄膜積層体の結晶子径は11.3nm、表面抵抗値は1.35Ω/□であった。
【0017】*実施例4プラスチックフイルム(A)として、25μm厚さのポリイミドフイルム(東レ・デュポン株式会社 製 Kapton 100EN)を使用し、該フイルムを真空スパッタ装置に装填し、フイルム走行速度5m/min(分)、真空薄膜形成スパッタ時の雰囲気をアルゴンガス下で2.7×10−1Pa、アルゴン/水の存在比を94/1.5として、投入電力を8W/cm2とし、Cu薄膜層を100nm厚さで形成し銅薄膜積層体を得た。得られた銅薄膜積層体の結晶子径は49.5nm、表面抵抗値は0.49Ω/□であった。
【0018】*比較例3プラスチックフイルム(A)として、25μm厚さのポリイミドフイルム(東レ・デュポン株式会社 製 Kapton 100EN)を使用し、該フイルムを真空スパッタ装置に装填し、フイルム走行速度5m/min(分)、真空薄膜形成スパッタ時の雰囲気をアルゴンガス下で2.7×10−1Pa、アルゴン/水の存在比を94/1.5として、投入電力を2W/cm2とし、Cu薄膜層を100nm厚さで形成し銅薄膜積層体を得た。得られた銅薄膜積層体の結晶子径は10.2nm、表面抵抗値は1.27Ω/□であった。
【0019】実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例3で得られた銅薄膜積層体を用いて、銅薄膜積層体のCu薄膜層上に同一条件で、それぞれ電解メッキ、無電解メッキ、電解メッキをして、総銅層厚さを8μmの銅層を設けフレキシブルプリント配線基板用積層体を作成した。このとき実施例で得られた銅薄膜積層体の場合は、多大の電力を消費する、メッキ浴の寿命が短くなる問題は発生せず、得られたフレキシブルプリント配線基板用積層体の外観欠点は殆どなく問題がなく殆ど全て90%以上がフレキシブルプリント配線基板として製品化しうるものであった。しかし、比較例で得られた銅薄膜積層体の場合は、多大の電力を消費し、メッキ浴の寿命が前記実施例での場合に比べて平均半分と短くなり、得られたフレキシブルプリント配線基板用積層体の外観欠点(不均一部の存在)が目立ち製品化しうる部分の比率は、比較例1で40%、比較例2で30%、比較例3で35%であった。
【0020】
【発明の効果】プラスチックフイルム上に、真空薄膜形成法で銅薄膜層を形成した銅薄膜積層体の銅薄膜層上に電解メッキや無電解メッキで銅層をさらに厚膜化してフレキシブルプリント配線基板等になす場合の、電解メッキ工程において、電力節約やメッキ浴の寿命延長さらには厚膜化された膜の均一な外観等に、本発明のプラスチックフイルム(A)の少なくとも片面上に、少なくとも真空薄膜形成法で形成された厚さ30nm〜300nmのCu薄膜層(B)を設けた銅薄膜積層体であって、該Cu薄膜層(B)の結晶子径が平均値15nm以上である銅薄膜積層体が、極めて効果のあることが判った。
【出願人】 【識別番号】000235783
【氏名又は名称】尾池工業株式会社
【住所又は居所】京都府京都市下京区仏光寺通西洞院西入木賊山町181番地
【出願日】 平成13年6月27日(2001.6.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−1756(P2003−1756A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−193883(P2001−193883)