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【発明の名称】 積層体および多層配線板
【発明者】 【氏名】下大迫 寛司

【氏名】伊藤 卓

【氏名】西中 賢

【要約】 【課題】高耐熱性、挟ピッチ配線パターン、小径ヴィア、均一な絶縁層厚み、適度に低い線膨張係数を有し、優れた表面平滑性を有する多層プリント配線板製造に適した金属箔/接着剤層/ポリイミドフィルム/接着剤の構成の積層体を提供することを目的とする。

【解決手段】高分子フィルムの一方の面に接着剤層を介した金属箔を、他方の面に接着剤層を有する積層体で、高分子フィルムがポリイミドフィルム、金属箔が剥離用キャリアを備えた5μm以下の金属箔であり、接着剤層の積層加工時の熱流動性が1%〜100%である積層体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高分子フィルムの一方の面に導体層を、他方の面に接着剤層を有する積層体において、該接着剤層の厚みが内層回路の厚みの1倍以下であって、該積層体と内層回路基板とを積層した後、該内層回路の凹凸に対応する該積層体の表面凹凸が2μm以下であることを特徴とする積層体。
【請求項2】 高分子フィルムの一方の面に導体層を、他方の面に接着剤層を有する積層体において、該接着剤層の積層加工時の熱流動性が1%〜100%であることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】 高分子フィルムの一方の面に導体層を、他方の面に接着剤層を有する積層体において、導体層が高分子フィルムと金属箔とを接着剤層を介して接着することにより接合していることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の積層体。
【請求項4】 導体層が剥離用キャリアを備えた5μm以下の金属箔であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の積層体。
【請求項5】 高分子フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の積層体。
【請求項6】 請求項1乃至請求項5記載の積層体を用いることを特徴とする多層配線板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層体に関するものであり、更に詳しくは高耐熱性、挟ピッチ配線パターン、小径ヴィア、均一な絶縁層厚み、適度に低い線膨張係数を有し、尚且つ表面平滑性に優れた多層配線板を提供できる積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子機器の小型化、高性能化、高機能化が進む中でプリント配線板には、高密度実装化に対応できることが要求されている。要求に応えるために配線板の多層化、絶縁層の薄膜化、従来のスルーホールに代わるインナーヴィアホールの採用、ヴィア径の小径化、回路の狭ピッチ化、等が進行している。これらを実現する技術としてビルドアップ方式による多層プリント配線板製造技術がある。このビルドアップ配線板はメーカー各社により様々な工法によって製造されているが、材料の取扱いが容易、既に導体層が形成されていることにより工程の大幅短縮化が可能、といった理由で絶縁接着剤付き銅箔を用いた工法が多くの配線板メーカーにより採用されている。この絶縁接着剤付き銅箔は、銅箔と接着剤層の2層構造を有しており、銅箔上に溶液状の接着剤を塗布、乾燥する方法で製造されている。この絶縁接着剤付き銅箔を用いたビルドアップ多層板の製造例を次に示す。予め回路を形成し、スルーホール加工を施したガラスクロス入り銅張積層板に絶縁接着剤付き銅箔をプレス加工やロールラミネート等の方法で積層し、続いてヴィアを形成する場所の銅箔を感光性樹脂を用いたエッチング法により除去した後、更にレーザードリリングによって接着層を除去してヴィアを形成し、無電解メッキによってヴィアを導電化する。その後、エッチング法によって絶縁接着剤付き銅箔の銅箔を回路パターン化して、再び絶縁接着剤付き銅箔を積層、以下同様の工程を繰り返すことでビルドアップ多層板が製造される。
【0003】しかしながら、今後ビルドアップ配線板に対する要求は更に高度化し、従来の絶縁接着剤付き銅箔に幾つかの問題点があることが指摘されている。即ち、挟ピッチの回路パターンをエッチング法で作製するためには、エッチングする導体層の厚みが薄い方が歩留まりの点で有利であるが、従来の絶縁接着剤付き銅箔の銅箔厚みは、一般的には18μm、薄くても12μmであり、挟ピッチの回路パターンを作製するには厚さに限界がある。また、レーザードリリングにより小径ヴィアを形成し、その後このヴィア中に導体層を無電解メッキなどで形成して下層回路配線と電気的に接続する場合、ヴィアのアスペクト比が小さいほど加工し易いが、そのためには絶縁層厚みを薄くする必要がある。しかしながら、従来の絶縁接着剤付き銅箔の絶縁層厚みを薄くすると、積層した際の各絶縁層の厚みを均一にすることが困難となり、また、絶縁性も低下し、電気信頼性の確保が難しくなるという問題を有していた。更に多層配線板の薄型化、軽量化も要求されているが、通常ビルドアップ配線板のコア層として使用しているガラスクロス入り銅張り積層板は、400μm程度の厚みを有しており、また、ガラスを用いているため重く、材料として上記要求を満たさない。また、このガラスクロス入り銅張り積層板の代わりに、絶縁接着剤付き銅箔だけで多層板を作製したとしても、薄型化、軽量化は可能になるが、充分な剛性は得られず、また絶縁接着剤に由来した大きな線膨張係数を示し、何れも実装信頼性に欠ける点で使用に耐えるものにはならない。
【0004】さらに外層材表面に現れる内層回路の凹凸は、外層材を回路加工する際エッチングレジストの密着性を損ねたり、めっきつきまわり性が低下するなどビルドアップ配線板のファインパターン形成には問題となるが、従来の絶縁接着剤付き銅箔で十分な表面平滑性を得るためには、絶縁接着剤の厚みを導体層厚みより数倍以上厚くする必要があり、薄型化に対応できないといった問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明が解決しようとする課題は、ビルドアップ配線板の製造に適した積層体を提供することであり、更に詳しくは高耐熱性、挟ピッチ配線パターン、小径ヴィア、均一な絶縁層厚み、適度に低い線膨張係数を有し、尚且つ表面平滑性に優れた多層配線板を実現する積層体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、高分子フィルムの一方の面に導体層を、他方の面に接着剤層を有する積層体において、該接着剤層の厚みが内層回路の厚みの1倍以下であって、該積層体と内層回路基板とを積層した後、該内層回路の凹凸に対応する該積層体の表面凹凸が2μm以下であることを特徴とする積層体及び該積層体を用いた多層配線板を提供する。本発明の接着剤層は、該接着剤層の積層加工時の熱流動性が1%〜100%であることが好ましい。本発明において、導体層は高分子フィルムと金属箔とを接着剤層を介して接着することにより接合していることが好ましい。本発明の導体層は好ましくは剥離用キャリアを備えた5μm以下の金属箔である。本発明の高分子フィルムは好ましくはポリイミドフィルムである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の積層体は、高分子フィルムの一方の面に接着剤層を介した導体層を有し、他面側に接着剤層を有する。
【0008】本発明の積層体を用いてビルドアップ法により多層配線板を作製した場合、高分子フィルムは接着剤層とともに絶縁層を形成するので、絶縁層が極端に薄くなるのを防いで、均一な絶縁層厚みと薄い絶縁層厚みでの優れた表面平滑性を実現する。
【0009】本発明に用いる高分子フィルムとしては、寸法安定性、耐熱性並びに機械的特性に優れた材料が好ましく、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−11、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド等のフィルムがあげられる。
【0010】ここで、高分子フィルムは、本発明の積層体および該積層体を用いて得られるビルドアップ配線板に十分な剛性を付与するために、引張弾性率が5GPa以上が好ましく、6GPa以上がより好ましい。
【0011】また、小径ヴィアの形成のために高分子フィルムの厚みは50μm以下が好ましく、より好ましくは35μm以下、25μm以下が更に好ましいが、一方で厚みが薄くても充分な電気絶縁性が確保される高分子フィルムが望ましい。
【0012】更に、ビルトアップ配線板加工時には熱的な安定性が求められるので、寸法安定性としては2.0×10-5/℃以下、より好ましくは1.5×10-5/℃以下、更に好ましくは1.0×10-5/℃以下の線膨張係数を有する高分子フィルムが望ましく、また、加工時の熱によって膨れ等の欠陥が発生しないように、低吸水率の高分子フィルムが望ましい。ASTM−D570に準じて測定した高分子フィルムの吸水率は、同一組成でも厚みによって左右されるが、厚み25μmのフィルムの吸水率が、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下となる組成からなる高分子フィルムが望ましい。
【0013】上記の諸特性を満足するフィルムとしてポリイミドフィルムが挙げられる。ポリイミドフィルムは、その前駆体であるポリアミド酸重合体溶液から得られるが、このポリアミド酸重合体溶液は、公知の方法で製造することができる。すなわち、1種または2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分と1種または2種以上のジアミン成分を実質等モル使用し、有機極性溶媒中で重合してポリアミド酸重合体溶液が得られる。
【0014】ポリイミドフィルムの製造に用いられる代表的なテトラカルボン酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等がある。
【0015】これらのテトラカルボン酸二無水物の中で、引張弾性率が5GPa以上で線膨張係数が2.0×10-5/℃以下、吸水率が1.5%以下であるポリイミドフィルムを得るための好ましい組み合わせを例示すると、ピロメリット酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物の0〜80モル%、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)を100〜20モル%用いる場合が挙げられる。なお、ここに記載したテトラカルボン酸二無水物の組み合わせは本発明の積層体を構成する高分子フィルムに適するポリイミドフィルムを得るための一具体例を示すものであり、これらの組み合わせに限らず、用いるテトラカルボン酸二無水物の組み合わせおよび使用比率を変えて、ポリイミドフィルムの特性を調整することが可能である。
【0016】一方、ジアミン成分としては4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4、4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3、3’−ジアミノジフェニルスルフォン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、ビスアミノフェノキシケトン、4、4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4、4’−ジアミノベンズアニリド、3、3’−ジメチル−4、4’−ジアミノビフェニル、3、3’−ジメトキシ−4、4’−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン、あるいはその他の脂肪族ジアミンを挙げることができる。
【0017】これらのジアミン成分の中で、引張弾性率が5GPa以上で線膨張係数が2.0×10-5/℃以下、吸水率が1.5%以下であるポリイミドフィルムを得るための好ましい組み合わせを例示すると、パラフェニレンジアミン及び/又は4、4’−ジアミノベンズアニリドをジアミン成分の20〜80モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを80〜20モル%用いる場合が挙げられる。なお、ここに記載したジアミン成分の組み合わせは本発明の積層体を構成する高分子フィルムに適するポリイミドフィルムを得るための一具体例を示すものであり、これらの組み合わせに限らず、用いるジアミン成分の組み合わせおよび使用比率を変えて、ポリイミドフィルムの特性を調整することが可能である。
【0018】本発明の積層体を構成する高分子フィルムとしてポリイミドフィルムを用いる場合、その前駆体であるポリアミド酸の平均分子量は10000〜1000000であることが望ましい。平均分子量が10000未満ではできあがったフィルムが脆くなる場合があり、一方、1000000を越えるとポリイミド前駆体であるポリアミド酸ワニスの粘度が高くなりすぎ取扱いが難しくなるおそれがある。
【0019】また、ポリアミド酸に各種の有機添加剤、或は無機のフィラー類、或は各種の強化材を添加し、複合化されたポリイミドフィルムとすることも可能である。
【0020】ポリアミド酸共重合体の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。
【0021】また、このポリアミド酸共重合体は前記の有機極性溶媒中に5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%溶解されているのが取扱いの面から望ましい。
【0022】このポリアミド酸共重合体溶液から、ポリイミドフィルムを得るためには熱的に脱水する熱的方法、脱水剤を用いる化学的方法のいずれを用いてもよいが、化学的方法によると生成するポリイミドフィルムの伸び率や引張強度等の機械特性がすぐれたものになるので好ましい。
【0023】以下に化学的方法によるポリイミドフィルムの作製についての例を説明する。上記ポリアミド酸重合体またはその溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミンを加えた溶液をドラム或はエンドレスベルト上に流延または塗布して膜状とし、その膜を150℃以下の温度で約5〜90分間乾燥し、自己支持性のポリアミド酸の膜を得る。ついで、これを支持体より引き剥し端部を固定する。その後約100〜500℃まで徐々に加熱することによりイミド化し、冷却後端部の固定を解放しポリイミドフィルムを得る。ここで言う脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。また触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類などが挙げられる。
【0024】また、高分子フィルムは、接着層との密着性を向上させる目的で各種表面処理を行うことができる。
【0025】例えば、高分子フィルムの表面にCr、Ni、Ti、Mo等の金属の酸化物をスパッタ、プラズマイオン打ち込み等の方法で高分子フィルム表面に金属酸化物接着層を形成する方法、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、有機モノマー、カップリング剤等の各種有機物をプライマーとして塗布する方法、金属水酸化物、有機アルカリ等で表面処理する方法、プラズマ処理、コロナ処理する方法、表面をグラフト化させる方法等、高分子フィルムの製造段階で表面処理する方法等が挙げられ、これらを単独でまたは各種組み合わせで高分子フィルム表面の処理を行っても良い。
【0026】次に本発明の積層体を構成する導体層について説明する。本発明の積層体を構成する導体層は金属箔が好ましい。金属箔に特に制限はなく、銅箔、アルミ箔、42合金箔などの金属箔を用いることが可能であるが、銅箔を用いることが好ましい。また、導体層の厚みは挟ピッチ回路パターンを作製するためには5μm以下であることが特に好ましい。
【0027】また、剥離用キャリアを備えた金属箔は、取り扱い性に優れ、剥離用キャリアの厚みとコシによりプレス積層後の表面平滑性が向上するため本発明に好適である。剥離用キャリアとしては特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、離型紙、さらには銅箔、アルミ箔、42合金箔などの金属箔を用いることが可能であるが、上述のように本発明に好適な銅箔を導体層として用いる場合には、剥離用キャリアは銅箔を用いることが好ましい。剥離用キャリアの厚みには特に制限はないが、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜50μmである。次に本発明の積層体を構成する接着剤層について説明する。本発明の積層体における接着剤層は高分子フィルムの両面に積層されており、導体層と反対の面の接着剤層1と、導体層を接着する接着剤層2の2つの接着剤層がある。接着剤層1について説明する。接着剤層1は、本発明の積層体を加熱プレス、ロール加熱等の方法により積層し多層板を作製する際に互いに接着する機能を有しており、これにより内層回路は接着剤に埋め込まれた形で強固に固定される。このため接着剤層1は半硬化状態を保ち、接着性を維持していなければならない。また、ビルドアップ配線板のファインパターン化に対応するため、本発明の積層体の接着剤層1は、厚みが内層回路の厚みの1倍以下であって、該積層体と内層回路基板とを積層した後、該内層回路の凹凸に対応する該積層体の表面凹凸が2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下であることを特徴とする。表面凹凸は積層加工時に接着剤が熱流動により内層回路の凹凸に流れ込むことで平滑化される。このため接着剤層1は積層時に上述の表面平滑性を満たす熱流動性が要求される。表面凹凸を表す別の指標として平坦化率がある。ここでいう平坦化率とは、内層回路の凹凸の段差をa、本発明の積層体と該内層回路を有する内層回路基板とを積層した後、該内層回路の凹凸に対応する該積層体の表面凹凸をbとするとき、次式によって求められる値である。
平坦化率(%)=(1−b/a)×100本発明の積層体においては、該積層体と内層回路を有する内層回路基板とを積層した後の平坦化率は好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。さらに、近年の環境に対する配慮により生じている鉛フリーの高融点半田への対応、回路パターンの挟ピッチ化に伴う導体抵抗の上昇に伴う基板温度の上昇への対応、高信頼性の点から、接着剤に要求される特性として耐湿耐熱性が挙げられる。従って、接着剤層1の樹脂組成物にも、高Tg、高耐湿耐熱性、高機械強度が要求される。上記要件を満たす接着剤層1の樹脂組成物としては、熱硬化樹脂の硬化反応を利用した硬化型の接着剤が好適である。以下、熱硬化樹脂の硬化反応を利用した硬化型の接着剤に関して説明する。
【0028】熱硬化型樹脂としてはビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアナート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、トリアジン樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができ、これらを単独または適宜組み合わせて用いることができる。また、上記熱硬化性樹脂以外に高分子鎖の側鎖または末端にエポキシ基、アリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子を熱硬化成分として使用することも可能である。さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの耐熱エンジニアリングプラスチックやポリイミド樹脂などを混合することは、耐熱性などの特性向上につながり、好ましい。中でも優れた耐熱性、電気信頼性、高耐湿性等の観点より熱可塑性ポリイミド樹脂を上記熱硬化樹脂と混合することが好ましい。高接着性、低温加工性、熱流動性に優れたエポキシ樹脂と耐熱性、電気信頼性、高耐湿性に優れた熱可塑性ポリイミド樹脂とを混合した樹脂組成物は本発明に用いられる積層体の接着剤層の樹脂組成物として好適である。以下にこの樹脂組成物を構成する熱可塑性ポリイミド樹脂およびエポキシ樹脂について説明する。熱可塑性ポリイミド樹脂としては可溶性のポリイミドを用いるのが好ましく、この熱可塑性ポリイミド樹脂は、酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させて得られる。酸二無水物成分は一般式(1)で表されるエステル酸二無水物を含むことが好ましい。
【0029】
【化1】

(式中、Xは、−(CH2k−、または芳香環を含む二価の基を示し、kは1〜10の整数。)一般式(1)のエステル酸二無水物を用いると低吸水率のポリイミド樹脂が得られる。従って、酸二無水物成分が一般式(1)で表されるエステル酸二無水物を含有することは好ましく、酸二無水物成分の50モル%以上含有することが特に好ましい。
【0030】ここで一般式(1)で表されるエステル酸二無水物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、4,4’−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、1,4−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、1,2−エチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、1,3−トリメチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、1,4−テトラメチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、1,5−ペンタメチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)などが好ましく、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて酸二無水物成分の一部または全部として用いることができる。上記のエステル酸二無水物のうち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を用いると溶媒に対する溶解性や加工特性や耐熱性においてバランスがとれたポリイミド樹脂が得られるため好ましい。
【0031】また、ジアミン成分は、一般式(2)で表されるジアミンを含むことが好ましい。
【0032】
【化2】

(式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2m−、−NHCO−、−C(CH32−、−C(CF32−、−C(=O)O−、または単結合を示す。mおよびnは1以上5以下の整数である。)一般式(2)で表されるジアミンは、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、一般式(2)において、複数個のYは各繰り返し単位間で同一であっても異なっていても良く、各ベンゼン環には、メチル基やエチル基などの炭化水素基やBrやClなどのハロゲン基が導入されていても良い。
【0033】さらに、一般式(2)で表されるジアミン化合物中、メタ位にアミノ基を有するジアミン化合物は、パラ位にアミノ基を有するジアミン化合物よりも溶解性に優れた熱可塑性ポリイミド樹脂を与えるので好ましい。
【0034】以上の説明の通り、本発明において、メタ位にアミノ基を有するジアミン化合物を用いると、目的とするポリイミド樹脂の溶解性を向上させる効果が期待できるが、これを用いる場合は全ジアミン成分に対して50〜100モル%がより好ましく、特に好ましくは80〜100モル%である。
【0035】ここで一般式(2)で表されるジアミン化合物としては、例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4 −(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1 −ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタ ン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェ ニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノ キシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−ア ミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2, 2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プ ロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ) フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフ ェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキ サフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ フェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェ ノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキ シ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキ シ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキ シ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ) フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキ シ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノ キシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノ フェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス [4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、 ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホ ン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エ ーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノ キシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3 −アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’ −ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジ フェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノ フェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4, 4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベン ジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス [4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェ ノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4− アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、 1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α −ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4− (4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジ ル]ベンゼン等が挙げられ、さらに一般式(2)で表されるジアミン化合物中、メタ位にアミノ基を有するジアミン化合物としては、1,1 −ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタ ン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノ キシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4 −(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ) フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフ ェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキ サフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェ ノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキ シ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ) フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノ キシ)フェニル]スルフィド、ビス [4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エ ーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノ キシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3 −アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(3−アミノ フェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等が挙げられる。また、一般式(2)で表されるジアミン化合物以外にもm−フェニレンジアミン、o−フェニレン ジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジ ルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミ ノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4 −アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェ ニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホ キシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニ ル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホ ン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)ス ルホン、ビス(4アミノフェニル)スルホン、 3, 4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベ ンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジア ミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニル エーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、 3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3− アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4 −(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド等を用いることも可能である。
【0036】一方、反応性を有するジアミンの使用も好ましい。反応性を有するジアミンとしては、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等を挙げることができる。例えば3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを用いたポリイミド樹脂には水酸基が導入されているので、エポキシ化合物との反応性を有する。従って本発明に用いられる積層体の接着剤層を構成する、ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物においては、架橋が進行し、耐熱性、およびPCT耐性に優れた積層板の提供を可能にする。反応性を有するジアミンを多く用いると得られるポリイミド樹脂の溶解性を損なうおそれがあるので、好ましくは0〜50モル%、更に好ましくは0〜20モル%である。
【0037】ポリイミド樹脂は、対応する前駆体ポリアミド酸重合体を脱水閉環して得られる。ポリアミド酸重合体は、前述のように酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル反応させて得られる。
【0038】ポリアミド酸をイミド化する方法は、通常熱的に脱水する熱的方法、脱水剤を用いる化学的方法があるが、本発明のポリアミド酸重合体に好ましく適用されるイミド化の方法は、減圧下で加熱してイミド化する方法である。このイミド化の方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去できるので、ポリアミド酸の加水分解を抑えることが可能で高分子量のポリイミドが得られる。またこの方法によれば、原料の酸二無水物中に不純物として存在する片側または両側開環物が再閉環するので、より一層の分子量の向上効果が期待できる。
【0039】減圧下で加熱イミド化する方法の加熱条件は80〜400℃が好ましいが、イミド化が効率よく行われ、しかも水が効率よく除かれる100℃以上がより好ましく、更に好ましくは120℃以上である。最高温度は目的とするポリイミドの熱分解温度以下が好ましく、通常のイミド化の完結温度すなわち250〜350℃程度が通常適用される。
【0040】減圧する圧力の条件は、小さいほうが好ましいが、具体的には9×104〜1×102Pa、好ましくは9×104〜1×102Pa、より好ましくは7×14〜1×102Paである。
【0041】このようにして得られたポリイミド樹脂はガラス転移温度を比較的低温において有するが、本発明において、樹脂組成物が特に良好な加工特性を得るためにはポリイミド樹脂のガラス転移温度は350℃以下が好ましく、より好ましくは320℃以下、特に好ましくは280℃以下である。
【0042】次にエポキシ樹脂について説明する。エポキシ樹脂としては、任意のエポキシ樹脂が本発明に使用可能である。例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール系エポキシ樹脂、フェノールノボラック系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック系エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック系エポキシ樹脂、ポリフェノール系エポキシ樹脂、ポリグリコール系エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0043】エポキシ樹脂の混合割合は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、好ましくは、1〜300重量部、より好ましくは10〜250重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。少なすぎると接着強度または熱流動性が低下し、多すぎると柔軟性または耐熱性が低下する。
【0044】前述したように多層配線板の表面凹凸は積層加工時に接着剤が熱流動により内層回路の凹凸に流れ込むことで平滑化される。優れた表面平滑性を有するためには本発明の積層体を構成する接着剤層1の積層加工時の熱流動性が1%〜100%であることが好ましい。本発明においては、前記したポリイミド樹脂と前記したエポキシ樹脂とを組み合わせることにより表面平滑性に優れた接着剤層を得ることができる。ここで接着剤層の熱流動性とは、縦横とも50mmで、直径1mmのパンチ穴を5箇所に空けた片面接着剤付きポリイミドフィルム(塗布、乾燥し半硬化状態に保った厚さ9μmの接着剤付きポリイミドフィルム)の接着剤層と縦横とも100mmの圧延銅箔のシャイン面とが接するように、温度200℃、圧力3MPaで1時間プレスした後、直径1mmのパンチ穴内に流出した接着剤層の面積の5点平均値をa、直径1mmのパンチ穴の面積の5点平均値をbとするとき、次式によって求められる値である。
【0045】
接着剤層の熱流動性(%)= (a/b)×100また本発明においては、前記したポリイミド樹脂と前記したエポキシ樹脂とを組み合わせることにより、低吸水性および低温接着を可能とする優れた接着剤層を得ることができる。従って、本発明に用いられる積層体の接着剤層の樹脂組成物を硬化させた場合、好ましい実施態様においては、1.5%以下、より好ましくは1.3%以下、特に好ましくは1.0%以下という優れた低吸水率を発現することを可能とする。
【0046】好ましい実施態様として、本発明に用いられる積層体の接着剤層の樹脂組成物には、少なくとも1種の溶媒が含まれる。溶媒は、ポリイミド樹脂およびエポキシ樹脂を溶解するものであれば特に限定されないが、樹脂組成物の硬化後の残揮発分を3重量%以下に抑えることができる種類および量が好ましい。また、経済性および作業性の点を考えて沸点が160℃以下の低沸点溶媒が好ましい。130℃以下の沸点を有する溶媒がより好ましく、さらに好ましくは、105℃以下の沸点を有する溶媒である。このような低沸点溶媒としては、好適には、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す。沸点66℃)、1,4−ジオキサン(以下、ジオキサンと略す。沸点103℃)、モノグライム(沸点84℃)、ジオキソラン(沸点76℃)を使用することができる。これらは、1種で使用しても良いし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0047】好ましい実施態様において、本発明に用いられる積層体の絶縁層は、硬化後の吸水率が1.0%以下とされる。吸水率を測定するための硬化物は例えば以下のように作製する。合成樹脂フィルム例えばポリイミドフィルムの両面に接着剤を塗布、乾燥し、厚さ5μmの接着剤層を形成する。得られた両面接着剤付きポリイミドフィルムの両面に、厚さ5μmおよび18μmの銅箔を200℃、圧力3MPaで5分仮圧着する。さらに200℃で60分熱硬化させ、積層体を作製し、この積層体の両面の銅箔をエッチングにより除去し、両面接着剤硬化物付きポリイミドフィルムを作製する。このフィルムの吸水率は、公知の任意の方法で測定され得る。例えば、ASTM D570に基づいた測定により算出できる。具体的には例えば、上記フィルムを150℃で30分間乾燥させたものの重量をW1とし、24時間蒸留水に浸した後表面を拭き取ったものの重重をW2とし、下記式:吸水率(%)=(W2−W1)÷W1×100により算出することができる。
【0048】さらに、本発明に用いられる積層体の接着剤層の樹脂組成物には吸水性、耐熱性、接着性、熱流動性等必要に応じて、酸二無水物などの酸無水物系、アミン系、イミダゾール系等の一般に用いられるエポキシ硬化剤、促進剤や種々のカップリング剤を併用し得る。また、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、フェノール樹脂、シアナート樹脂等を併用してもよい。
【0049】次に、本発明の積層体の接着剤層2について説明する。接着剤層2は金属箔と強固に接着するものであれば特に限定はない。しかしながら、近年の環境に対する配慮により生じている鉛フリーの高融点半田への対応、回路パターンの挟ピッチ化に伴う導体抵抗の上昇に伴う基板温度の上昇への対応、高信頼性の点から、要求される特性として耐湿耐熱性が挙げられる。従って、接着剤層2の樹脂組成物にも、高Tg、高耐湿耐熱性、高機械強度が要求される。上記要件を満たす接着剤層2の樹脂組成物としては、前記した接着剤層1と同様に熱可塑性ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とを混合した樹脂組成物を用いることが本発明においては好適である。ここで接着剤層2の熱可塑性ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂との混合比は接着剤層1の熱可塑性ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂との混合比と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、接着剤層2の厚みに特に限定はないが、好ましくは接着剤層1の厚みの0.1〜1.5倍、さらに好ましくは0.3〜1.0倍である。接着剤層2の厚みが接着剤層1の厚みの0.1倍よりも薄いと金属箔との接着性の低下や積層体のカールが問題となる。また、接着剤層2の厚みが接着剤層1の厚みの1.5倍よりも厚いと積層体のカールが問題となる。また、本発明の積層体においては、接着剤層1は半硬化状態である。ここで接着剤層1は半硬化状態である必要があるが、接着剤層2は硬化状態であってもよいし半硬化状態であってもよい。ただし、接着剤層2が硬化状態であると積層体がカールする場合があるので好ましくは半硬化状態である。
【0050】次に、本発明の積層体の製造方法について述べる。本発明の積層体は導体層が高分子フィルムと金属箔とを接着剤層を介して接着することにより接合している。また、上述のように接着剤層1、2はともに半硬化状態であることが好ましい。よって本発明の積層体の好ましい製造方法は、高分子フィルムの片面に接着剤を塗布、乾燥し、片面の接着剤を半硬化状態にした後、金属箔を仮止めし、さらに金属箔と反対の面に、両面の接着剤層が半硬化状態を維持し得る条件で接着剤を塗布、乾燥する方法、若しくは高分子フィルムの両面または片面ずつに接着剤を塗布、乾燥し、両面の接着剤を半硬化状態にした後、片面にのみ金属箔を積層するにあたり、両面の接着剤層が半硬化状態を維持し得る条件で一方の面に金属箔を仮止めする方法である。
【0051】接着剤の塗布方法としては、ナイフコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーターなど、当業者が実施しうる範囲内のいずれの方法も可能である。
【0052】接着剤層の乾燥条件としては、両面の接着剤層が半硬化状態を維持し得る条件で且つ接着剤2の積層加工時の熱流動性が1〜100%となる条件であればよいが、用いる樹脂や樹脂の組成比、硬化剤の種類等により最適な乾燥条件は異なる場合があるので注意を要する。上記のポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を用いた場合、乾燥温度は好ましくは、120〜250℃である。乾燥時間は好ましくは、1〜30分程度である。
【0053】金属箔の仮止めは接着剤層が半硬化状態を維持し得る条件で行わなければならない。金属箔の仮止めの方法としては、加熱プレス、ロール加熱など当業者が実施しうる範囲内のいずれの方法も可能である。金属箔の仮止めは高分子フィルムの両面に接着剤層が既に存在する状態で行ってもよいし、接着剤層1のみが存在する状態で行ってもよい。
【0054】また本発明の積層体には表面を保護する目的で保護フィルムを用いることも可能である。
【0055】次に本発明の積層体を用いた多層配線板の製造例を示す。■両面に第1層回路を形成したポリイミドフィルムの両面に■本発明の積層体を熱ラミネートまたは加熱プレスにより貼り合わせる。この際の条件は接着層の種類により適切な条件を設定するが、導体層が銅箔の場合は酸化劣化を抑える為に300℃以下であるのが好ましい。また、表面平滑性の点から剥離用キャリアを備えたまま貼り合わせるのが好ましい。■次に剥離用キャリアを剥離し、金属箔の第1層回路のランドの直上の導体層上にヴィアホールを形成する。形成の方法としては各種レーザー、プラズマエッチング、化学エッチング等の方法が挙げられる。■ヴィアホールの形成後必要に応じて、デスミア処理によりヴィア形状を整える。■次に導電性ペースト埋め込み、メッキ等の方法によりヴィアホールの導通をとる。■続いて、本発明の積層体の導体層をパターニング後エッチング処理して、新たな回路を形成する。■〜■までの工程を繰り返すことにより多層配線板を得ることができる。
【0056】以上、本発明の積層体及び該積層体を用いた多層配線板の製造方法について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できる。
【0057】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これら実施例は、本発明を説明するものであり、限定するためのものではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行い得る。
【0058】(実施例1)容量2000mlのガラス製フラスコに、ジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)と0.95当量の1,3−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、APBという。)および0.05当量の3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(和歌山精化社製)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌溶解した。さらにフラスコ内を窒素置換雰囲気下、溶液を氷水で冷却しつつ撹拌し、1当量の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジべンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(以下、ESDAという。)を添加した。以上のようにして、ポリアミド酸重合体溶液を得た。なお、DMFの使用量は、APB、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルおよびESDAのモノマー仕込濃度が30重量%となるようにした。
【0059】このポリアミド酸溶液300gを、テフロン(R)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃180分、665Paで減圧加熱し、80gの水酸基を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を得た。
【0060】上記で得たポリイミド樹脂粉末、ノボラック型のエポキシ樹脂(エピコート1032H60:油化シェル社製)、および硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(以下、4,4’−DDSとする)をそれぞれジオキソランに溶解し、濃度が10重量%の溶液を得た。得られたそれぞれの溶液をポリイミド、エポキシ樹脂、4,4’−DDSの重量比が70:30:9になるように混合し、接着剤溶液を得た。
【0061】次に容量2000mlのガラス製フラスコにDMFと4、4’−ジアミノベンズアニリドを3当量、及び4、4’−ジアミノジフェニルエーテルを1当量とり、ジアミン化合物が完全に溶解するまで室温でよく攪拌し、その後氷で冷却した。次にp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)を4当量加え、1時間冷却攪拌し、ポリアミド酸のDMF溶液を得た。なおDMFの使用量はジアミン化合物及び芳香族テトラカルボン酸化合物のモノマー仕込濃度が18重量%となるようにした。上記ポリアミド酸100gに対して無水酢酸10gとイソキノリン8gを添加し均一に攪拌した後、脱泡を行い、ガラス板上に流延塗布し、約110℃で約5分間乾燥後、ポリアミド酸塗膜をガラス板より剥がし、揮発成分含量40重量%、イミド化率85%の自己支持性を持つゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをフレームに固定して、その後約200℃で約10分間、約300℃で約10分間、約400℃で約10分間、約500℃で約10分間加熱し、脱水閉環乾燥し、厚み約12μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの引張弾性率は10GPa、線膨張係数は4.0×10-6/℃、吸水率は1.1%であった。上記接着剤溶液を上記ポリイミドフィルムの片面にグラビアコーターにて塗布、温度170℃で1分30秒乾燥し、厚みが5μmである接着剤層を形成した。得られた片面接着剤層付きポリイミドフィルムの接着剤層の面と35μmキャリア銅箔付き5μm電解銅箔のマット面が接するように200℃の熱ロールラミネーターで積層した。さらに銅箔と反対の面に上述の接着剤をグラビアコーターにて塗布、温度170℃で1分30秒乾燥し、接着剤層の厚みが9μmである接着層を形成し、積層体を得た。接着剤層の熱流動性は61%であった。この積層体の導体層と反対の面の接着剤層に18μmの厚延銅箔のマット面を温度200℃、圧力3MPaで60分加熱圧着し、接着剤層を硬化させ、この銅箔と積層体との引き剥し強度を測定したところ、9.2N/cmであった。また、FR−4基板の銅箔にパターニングを施し、導体層厚み9μm、ライン アンド スペースが100μmアンド100μmの回路パターンを有する内層回路基板を作製した。この内層回路基板のパターン面と上述の積層体の接着剤層とが接するように、キャリア銅箔の付いた状態で温度200℃、圧力3MPaで60分加熱圧着し、積層板を作製した。キャリア銅箔を剥離し、触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの回路パターン上の表面凹凸を測定したところ1μm以下であった。また平坦化率は90%であった。
【0062】(実施例2)エポキシ樹脂のエピコート1032H60を1032H60とウレタン変性エポキシ樹脂(EPU-73:旭電化社製)とし、ポリイミド、エピコート1032H60、EPU-73、4,4’−DDSの重量比が50:30:20:15になるように混合した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。接着剤層の熱流動性は95%であった。実施例1と同様にして18μmの厚延銅箔と前記積層体との引き剥し強度を測定したところ、8.7N/cmであった。また、実施例1と同様にして積層板を作製し、触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの回路パターン上の表面凹凸を測定したところ1μm以下であった。また平坦化率は90%であった。
【0063】(実施例3)実施例1で得た積層板の両面の銅にパターニングを施し、ライン アンドスペースが100μmアンド100μmの回路を形成した。再び実施例1で得た積層体の接着剤層と積層板の両パターン面が接するようにキャリア銅箔が付いた状態で積層し、温度200℃、圧力3MPaで60分加熱圧着して配線板を作製した。この配線板の内層回路のランドの直上にUVレーザーにてヴィアホールを形成し、デスミア処理によりヴィアホール形状を整え、さらに無電解銅めっき及び電解銅めっきによりヴィアホールの導通をとった。さらに上記配線板の両面にパターニングを施し回路形成して、多層配線板を作製した。触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの内層回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、1μm以下で、平坦化率は90%であった。また、多層配線板の内層回路は短絡や断線がなく、さらに積層体と内層回路基板、また積層体同士の密着性は高かった。
【0064】(実施例4)実施例2で得た積層体および積層板を用いて実施例3と同様にして多層配線板を作製した。触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの内層回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、1μm以下で、平坦化率は90%であった。また、多層配線板の内層回路は短絡や断線がなく、さらに積層体と内層回路基板、また積層体同士の密着性は高かった。
【0065】(実施例5)積層体の銅箔と反対の接着剤層厚みを12μm、内層回路基板の導体層厚みを12μmとした以外は実施例1と同様にして積層板を作製し、触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、1μm以下であった。また平坦化率は92%であった。
【0066】(実施例6)積層体の銅箔と反対の接着剤層厚みを18μm、内層回路基板の導体層厚みを18μmとした以外は実施例1と同様にして積層板を作製し、触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、1μm以下であった。また平坦化率は95%であった。
【0067】(実施例7)積層体の銅箔と反対の接着剤層厚みを5μm、内層回路基板の導体層厚みを9μmとした以外は実施例2と同様にして積層板を作製し、触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、1μm以下であった。また平坦化率は90%であった。
【0068】(比較例1)ジアミン成分のAPB(0.95当量)および3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(0.05当量)を3、3’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン(1当量)とした以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸重合体溶液を得、ポリイミド樹脂粉末を得た。
【0069】上記で得たポリイミド樹脂粉末から、実施例1と同様にして、接着剤溶液を得た。
【0070】上記で得た接着剤溶液を用い、実施例1と同様にして積層体を得た。接着剤層の熱流動性は1%未満であった。実施例1と同様にして18μmの厚延銅箔と前記積層体との引き剥し強度を測定したところ、6.1N/cmであった。また、実施例1と同様にして積層板を作製し、触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、3μmであった。また平坦化率は67%であった。
【0071】(比較例2)比較例1で得た積層体および積層板を用いて実施例3と同様にして多層配線板を作製したところ、得られた多層配線板の内層回路は短絡や断線はなかった。一方、触針式表面粗さ計にてライン アンド スペースが100μmアンド100μmの内層回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、3μmで、平坦化率は67%であった。また、多層配線板の内層回路は短絡や断線がなかったが、積層体と内層回路基板、また積層体同士の密着性は低かった。
【0072】(比較例3)キャリア銅箔の付いた状態をキャリア銅箔を外した状態とした以外は実施例1と同様にして2層プリント配線板配線板を作製した。触針式表面粗さ計にてライン アンド スペース = 100μmアンド100μmの回路パターン上の表面凹凸を測定したところ、3μmであった。また平坦化率は67%であった。
【0073】なお、引張弾性率はASTM D882の方法によった。線膨張係数は10℃/minの昇降速度にて室温〜400℃の加熱と冷却とを窒素気流下で繰り返し、2回目の昇時の100℃〜200℃での平均線膨張係数を測定した。測定機器は理学電気製TMA8140を使用した。
【0074】吸水率はASTM D−570の方法に準じて測定した。具体的には、フィルムを150℃で30分間乾燥させたものの重量をW1とし、24時間蒸留水に浸した後表面を拭き取ったものの重重をW2とし、下記式により算出した。
吸水率(%)=(W2−W1)÷W1×100引き剥がし強度の測定は、JISC 6481に準拠した。
【0075】接着剤層の熱流動性は、縦横とも50mmで、直径1mmのパンチ穴を5箇所に空けた片面接着剤付きポリイミドフィルム(塗布、熱風オーブンにて170℃で5分間乾燥し半硬化状態に保った厚さ9μmの接着剤付きポリイミドフィルム)の接着剤層と縦横とも100mmの圧延銅箔のシャイン面とが接するように、温度200℃、圧力3MPaで1時間プレスした後、直径1mmのパンチ穴内に流出した接着剤層の面積の5点平均値をa、直径1mmのパンチ穴の面積の5点平均値をbとするとき、次式によって算出した。
接着剤層の熱流動性(%)= (a/b)×100平坦化率は、内層回路の凹凸の段差をc、本発明の積層体と該内層回路を有する内層回路基板とを積層した後、該内層回路の凹凸に対応する該積層体の表面凹凸をdとするとき、次式によって算出した。
【0076】平坦化率(%)=(1−d/c)×100【0077】
【発明の効果】本発明の積層体は、多層配線板の製造に広く用いられることが可能であり、高信頼性と耐熱性及び優れた表面平滑性を要求するエレクトロニクス用材料として工業的に極めて利用価値が高いという利点を有する。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−1752(P2003−1752A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−192742(P2001−192742)