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【発明の名称】 親水性、撥水性を有する銅部材およびその製造方法、並びに伝熱管
【発明者】 【氏名】室井 克美
【住所又は居所】茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日立製作所機械研究所内

【氏名】松尾 一也
【住所又は居所】茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日立製作所機械研究所内

【氏名】梅田 知巳
【住所又は居所】茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日立製作所機械研究所内

【要約】 【課題】表面に耐久性のある超親水性もしくは超撥水性を有する銅部材およびその製造方法、並びに伝熱管を提供する。

【解決手段】親水性を有し、外表面と内表面との間に熱を伝える銅部材100において、外表面にアルミニウム水和酸化物層101を形成する。そのために、加熱したアルカリ水溶液中に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を溶解し、この水溶液中に銅部材100を浸せきして銅部材外表面にアルミニウム水和酸化物層を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】親水性を有する銅部材において、外表面にアルミニウム水和酸化物層を形成してなることを特徴とする銅部材。
【請求項2】前記アルミニウム水和酸化物層の厚さを、1μm以上10μm以下とすることを特徴とする請求項1記載の銅部材。
【請求項3】親水性を有する銅部材の製造方法において、加熱したアルカリ水溶液中に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を溶解し、この水溶液中に前記銅部材を浸せきして銅部材外表面にアルミニウム水和酸化物層を形成することを特徴とする銅部材の製造方法。
【請求項4】アルカリ性水溶液を70℃以上の温度に加熱することを特徴とする請求項3記載の銅部材の製造方法。
【請求項5】アルカリ性水溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、蓚酸ナトリウム水溶液、炭酸アンモニウム、アンモニア水のいずれか一種もしくは二種以上を組み合わせて利用することを特徴とする請求項3に記載の銅部材の製造方法。
【請求項6】撥水性を有する銅部材において、前記銅部材内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、さらにこのアルミニウム水和酸化物層の表面にパーフルオロアルキルシラン基もしくはアルキルシラン基の被膜を形成することを特徴とする銅部材。
【請求項7】撥水性を有する銅部材の製造方法において、加熱したアルカリ水溶液中に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を溶解し、この水溶液中に前記銅部材を浸せきして、銅部材内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、このアルミニウム水和酸化物層を形成した銅部材を、パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物の溶液中に浸せきし、加熱処理を行なうことにより、前記アルミニウム水和酸化物層にパーフルオロアルキルシラン基もしくはアルキルシラン基を有する被膜を形成することを特徴とする銅部材の製造方法。
【請求項8】撥水性を有する銅部材の製造方法において、加熱したアルカリ水溶液中に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を溶解し、この水溶液中に前記銅部材を浸せきして、銅部材内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、このアルミニウム水和酸化物層を形成した前記銅部材を、パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物の気相中に暴露することにより、前記アルミニウム水和酸化物層にパーフルオロアルキルシラン基あるいはアルキルシラン基を有する被膜を形成することを特徴とする銅部材の製造方法。
【請求項9】外表面にアルミニウム水和酸化物層を形成するか、もしくは内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、この内表面に形成したアルミニウム水和酸化物層の表面にさらにパーフルオロアルキルシラン基かアルキルシラン基かのいずれかの被膜を形成することを特徴とする伝熱管。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、親水性もしくは撥水性を有し、空調機、吸収冷凍機等の熱交換器の伝熱管に好適な銅部材およびその製造方法、並びに伝熱管に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に銅部材は、優れた伝熱性能を有しているため種々な分野の熱交換器の伝熱管に用いられている。しかし、銅部材は水に対する接触角が約80度であり、水に対する濡れ性は悪く、銅表面が均一に濡れることはない。吸収冷凍機に用いられている蒸発器の銅製伝熱管においては、伝熱管内部に熱源水を流し、伝熱管表面に沿い、上部から液冷媒(水)を滴下・散布させて蒸発させる。この伝熱管の性能を向上させるには、伝熱管外表面の全面が液冷媒で濡れる必要がある。ところが前述したように銅表面は濡れ性が悪いため、伝熱管外表面の全面が濡れず、ドライアウトが発生しやすい。伝熱管外表面の全面が濡れないと蒸発面積が減り、性能低下が生じる。逆に、伝熱管外表面の全面を水との濡れ性を良くすることにより性能は向上する。そしてその濡れ性を改善するために、種々な方法が提案されている。
【0003】特開平11―211376号公報では、銅製伝熱管を高温のアルカリ溶液中に浸せきして酸化銅被膜を形成する方法が提案され、特開平10―253195号公報では、ブラスト処理後に加熱処理を施して酸化銅を形成する方法が提案され、特開平6―82126号公報では、コロナ放電による酸化膜形成方法が提案され、特開平2001―17907号公報では、ゾルゲル法を用いて部材表面に成膜し、さらに温水に浸せきして表面に微細凹凸を形成して表面を親水化する方法が提案されている。
【0004】またパッケージエアコン、ルームエアコン等の空調機においては、室内機と室外機とを結ぶ冷媒用配管として、冷媒がガス化して流れる配管(一般にガス管と言われている)およびガス、液の二相あるいは液が流れる配管(一般に液管と言われている)の2本が配管されている。このうち、蒸発器の出口から圧縮機の入り口に至るまでの配管、いわゆるガス管は管内の圧力損失が大きくならないように液管と比較して管径を大きくしてある。またこれらの配管は銅製の平滑管が使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】銅部材表面の濡れ性改善法として特開2001―17907号公報では、部材表面にゾルゲル法でアモルファスアルミナを成膜し、さらに温水中に浸せきしてアモルファスアルミナ表面に微細凹凸組織を形成させて親水化の改善を図っている。しかしながら、この方法においては、ゾルゲル法によってディッピング、スピンコート、スプレー法等により成膜するため、成膜上で部材の形状に制限される、あるいはアルミニウムアルコキシドを加水分解して使用するため、加水分解後の溶液の長期保存が必ずしも容易でない。さらにこの被膜は、部材と物理的に付着しているので密着性が必ずしも十分とは言えない。
【0006】特開平11―211376号公報記載の酸化銅被膜では、表面の十分な親水化、特に初期値において必ずしも十分でない。
【0007】特開平10―253195号公報記載の方法では、ブラスト処理での微細構造の形成が十分でなく、また加熱処理により軟化して材料強度が低下することに対し十分な配慮がなされていない。
【0008】特開平6―82126d号公報記載のコロナ放電による親水化処理方法では、伝熱管外面に−CO=(ケトン基)の親水基を有する酸化膜を形成して親水性を向上させているが、これを作成する装置が大掛かりになり、製造コストに影響を及ぼす。またケトン基の付着に十分な耐久性はなく、親水性の信頼性に十分に配慮されているとは言い難い。
【0009】また、空調機等に適用されている冷媒中には潤滑を目的に冷凍機油が添加されている。この冷凍機油は冷媒と相溶作用があるものが一般に使用されている。配管内において冷媒が液相状態にあるときは冷凍機油は一緒に流れ、管内の圧力損失は低い。ところが冷媒が気相状態であると冷凍機油が分離して管内表面に付着する現象が生じ、管内圧力損失が高くなる。また管内表面への付着により圧縮機に戻る冷凍機油が減少してしまうため、そのままでは潤滑不良の危険性が高まる。そのため安全性を考慮して、添加する冷凍機油量を増加させている。冷凍機油量の増加のため圧縮機の効率低下、サイクル効率低下等が生じるが、潤滑不良を避けるため、効率をある程度犠牲にしている。添加する冷凍機油量を増加させないでも済むようにするには、伝熱管内表面への冷凍機油が付着しにくいような表面にする必要がある。
【0010】本発明の目的は、表面に耐久性のある超親水性もしくは超撥水性を有する銅部材およびその製造方法、並びに伝熱管を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の親水性を有する銅部材の発明の構成は、親水性を有し、外表面と内表面との間に熱を伝える銅部材において、外表面にアルミニウム水和酸化物層を形成してなるものである。詳しくは、前記アルミニウム水和酸化物層の厚さを、1μm以上10μm以下とするものである。
【0012】また上記目的を達成するために、本発明の親水性を有する銅部材の製造方法の発明の構成は、親水性を有し、外表面と内表面との間に伝熱性を有する銅部材の製造方法において、加熱したアルカリ水溶液中に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を溶解し、この水溶液中に前記銅部材を浸せきして銅部材外表面にアルミニウム水和酸化物層を形成するものである。詳しくは、アルカリ性水溶液を70℃以上の温度に加熱するものである。また、アルカリ性水溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、蓚酸ナトリウム水溶液、炭酸アンモニウム、アンモニア水のいずれか一種もしくは二種以上を組み合わせて利用するものである。
【0013】上記目的を達成するために、本発明の撥水性を有する銅部材の発明の構成は、撥水性を有し、外表面と内表面との間に熱を伝える銅部材において、前記銅部材内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、さらにこのアルミニウム水和酸化物層の表面にパーフルオロアルキルシラン基もしくはアルキルシラン基の被膜を形成するものである。
【0014】上記目的を達成するために、本発明の撥水性を有する銅部材の製造方法の発明の構成は、撥水性を有し、外表面と内表面との間に熱を伝える銅部材の製造方法において、加熱したアルカリ水溶液中に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を溶解し、この水溶液中に前記銅部材を浸せきして銅部材内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、このアルミニウム水和酸化物層を形成した銅部材を、パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物の溶液中に浸せきし、加熱処理を行なうことにより、前記アルミニウム水和酸化物層にパーフルオロアルキルシラン基もしくはアルキルシラン基を有する被膜を形成するものである。
【0015】上記目的を達成するために、本発明の撥水性を有する銅部材の製造方法の他の発明の構成は、撥水性を有し、外表面と内表面との間に熱を伝える銅部材の製造方法において、加熱したアルカリ水溶液中に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を溶解し、この水溶液中に前記銅部材を浸せきして銅部材内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、このアルミニウム水和酸化物層を形成した銅部材を、パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物の気相中に暴露することにより、前記アルミニウム水和酸化物層にパーフルオロアルキルシラン基あるいはアルキルシラン基を有する被膜を形成するものである。
【0016】上記目的を達成するために、本発明の親水性、撥水性を有する伝熱管は、外表面にアルミニウム水和酸化物層を形成するか、もしくは内表面にアルミニウム水和酸化物層を形成し、この内表面に形成したアルミニウム水和酸化物層の表面にさらにパーフルオロアルキルシラン基かアルキルシラン基かのいずれかの被膜を形成するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る親水性、撥水性(撥油性)を有する銅部材およびその製造方法を図を参照して説明する。図1は、本発明の原理を示す被膜模式構造図、図2は、銅部材表面に形成されたアルミニウム水和酸化物の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した写真(図面代用)である。
【0018】まず、親水性を有する銅部材およびその製造方法について説明する。銅部材の表面を親水性で高機能化させるために、銅部材表面にアルミニウム水和酸化物層を形成する。形成条件としては、温度98℃の2%炭酸ナトリウム水溶液中に、アルミニウムを溶解させ、次に無酸素銅の板を30分間浸せきし、その後脱イオン水にて洗浄し、常温乾燥して形成した。
【0019】図2から分かるように、花弁状の微細凹凸構造を有し、表面凹凸の凸部のピーク間の距離がサブミクロンオーダーの微細な凹凸構造である。この微細凹凸構造の表面積をBET法(Brunauer Emmett and Teller法)によって測定すると3.4m/g と極めて大きいことが判明した。またアルミニウム水和酸化物の化学組成式はAlOOHであり、親水基のOH基を有している。この微細凹凸構造と親水基のOH基との相乗効果によって、より親水性となり、銅部材は超親水性を有するようになる。
【0020】アルミニウム水和酸化物層の厚さは、1μm以上10μm以下にすることが望ましい。アルミニウム水和酸化物は、厚いほど表面に凹凸が形成されて面積が増し、親水性と後述する撥水性とに寄与する。しかし、アルミニウム水和酸化物は絶縁物であるため熱伝導性が低下する。このため厚さとしては、10μm以下にすることが好ましい。これ以下の厚さの場合、表面にアルミニウム水和酸化物層が存在しても熱抵抗は無視できるからである。また、アルミニウム水和酸化物層の厚さは、1μm以上であることが好ましい。その理由は、1μm未満の場合、アルミニウム水和酸化物層の表面に凹凸が形成されず、形成されたとしても親水性、撥水性の向上に寄与しないからである。
【0021】次に、銅部材表面にアルミニウム水和酸化物層を形成する方法に関して説明する。
【0022】まず、アルカリ水溶液の温度を70℃以上に加熱し、その水溶液中にアルミニウム(Al050系等:JIS規格表示による、以下同じ)もしくはアルミニウム合金(A1100系、A3003系、A5052系等)を投入して水溶液中にアルミニウムを溶解する。その後、銅部材を所定時間浸せきする。弱アルカリ水溶液中に溶解していたアルミニウムはアルミニウム水和酸化物となり、このアルミニウム水和酸化物が浸せきした銅部材表面に析出して水和酸化物層を形成する。
【0023】弱アルカリ水溶液の温度は、70℃以上にすることが好ましい。温度が70℃未満の弱アルカリ水溶液ではアルミニウムが十分に溶解せず溶解量が少ない。溶解アルミニウム量が少ないと銅部材表面に析出するアルミニウム水和酸化物層の成長が遅くなり、処理に長時間を要してしまう。また、投入されたアルミニウムの表面にも時間の経過とともにアルミニウム水和酸化物層が形成され、アルミニウムの溶出が阻害されてしまう。そのため弱アルカリ水溶液の温度としては70℃以上が好ましい。弱アルカリ性水溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素水溶液、蓚酸ナトリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、アンモニア水のいずれか一種もしくは二種以上を組み合わせて利用する。
【0024】このようにして形成したアルミニウム水和酸化物層の表面に水滴を落下させると、水滴は表面に直ちに拡散して超親水性(一般に水滴の広がりの半径で表示される)を示す。また、銅部材とアルミニウム水和酸化物との密着性は非常に強く、容易に剥離せず耐久性のある被膜が形成される。
【0025】次に、撥水性を有する銅部材およびその製造方法について説明する。上記のようにして製造したアルミニウム水和酸化物層の外表面に、さらに末端基に表面エネルギの小さいCF基やCH基の官能基を有するアルコキシシラン化合物と反応させる。この反応によってアルミニウム水和酸化物は、シロキサン結合してパーフルオロアルキルシラン被膜あるいはアルキルシラン被膜が形成され、前記アルミニウム水和酸化物層の微細凹凸構造との相乗効果により、超撥水性を有するようになる。
【0026】銅部材表面を超撥水化する方法について、さらに詳しく説明する。銅部材表面にアルミニウム水和酸化物層を形成した銅部材を、末端基に表面エネルギの小さいCF基やCH基等の官能基を有するパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物を、イソプロピルアルコールもしくはパーフルオロカーボン溶液に溶解させた溶液中に浸せきし、その後所定温度で加熱する。この加熱によって、アルミニウム水和酸化物とパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物とがシロキサン結合して、最外表面にCF基もしくはCH基の配向した被膜が形成される。
【0027】また、アルミニウム水和酸化物層の表面にアルキルシラン被膜を形成する他の方法として、次の方法がある。パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物を加熱(たとえば180℃)して気化させ、その雰囲気中にアルミニウム水和酸化物層を形成した銅部材を暴露させることによっても形成することができる。この方法によれば、溶媒を使用することなく、また気化したパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物の気体が複雑形状であっても深部まで進入するので、複雑形状の銅部材においても深部まで均一に被膜を形成することができる。
【0028】図3は、銅部材表面にアルミ水和酸化物を析出し、さらにその表面にパーフルオロアルキルシラン被膜を形成した場合の、撥水性銅部材の被膜模式構造図を示す。この被膜は、上述したように表面エネルギの小さなCF基やCH基が最外表面に配向していること、かつアルミニウム水和酸化物層の微細凹凸形態の相乗作用により、水滴を滴下させると表面から水滴は弾かれ超撥水性を示すものである。水滴の接触角は一例として173度が得られ、超撥水性を示す。
【0029】また、パーフルオロアルキルシラン被膜およびアルキルシラン被膜はアルミニウム水和酸化物と化学結合をし、また銅部材表面のアルミニウム水和酸化物は、図1からも明らかなように、微細凹凸構造をしている。このため、さらに水酸基の量も多くなってアルキルシランの密度が増加し、被膜の耐久性が極めて高くなる。
【0030】なお、アルコキシシラン化合物とアルミニウム水和酸化物とを加熱反応させる温度は、概ね150ないし200℃が好ましい。150℃以下であると、アルコキシシラン化合物〔−Si(OR)〕からシロキサン−SiO−への熱分解がおこり難い。また、200℃以上になると、−Si(ORのアルコキシシラン化合物が−Si−と−ORとに分解して反応が起こり難くなる。なお一般に、親水性や撥水性は部材表面との接触角をもって示され、概念として接触角が10度以下の場合は超親水性、150度以上の場合は超撥水性とされている。
【0031】図1に示す構造のアルミニウム水和酸化物被膜を、例えば吸収冷凍機の蒸発器のように、伝熱管内を流れる熱交換媒体と伝熱管の外表面に滴下される熱交換媒体との間で熱交換を行なうものに形成することにより、性能向上を図ることができる。すなわち、蒸発器を構成する伝熱管の外表面に化成処理法により微細凹凸構造を有するアルミニウム水和酸化物を析出させて被膜を形成する。これにより、伝熱管外表面に滴下された水(冷媒)が伝熱管外表面に広く濡れ広がり、濡れ性の改良による伝熱性能の向上を図ることができる。
【0032】また空調機用の前記配管(ガス管、液管)の場合、配管の内面に微細凹凸構造を有するアルミニウム水和酸化物層を形成し、このアルミニウム水和酸化物に疎水性のアルコキシシラン化合物を反応させて撥水性被膜を形成する。この撥水性被膜により、冷媒中の油が配管内面へ付着するのを防ぐことができ、管内圧力損失を減らすことができる。また、配管内面への油付着量が低減されるので、冷凍機油の添加量を減らすことができ、圧縮機性能効率、サイクル性能の効率向上に寄与できる。以下、本発明の実施の形態を具体的実施例によって説明する。
【0033】(実施例1)銅部材表面をアルカリ脱脂剤を用いて洗浄し、さらに水洗を行った。その後、90℃に加熱した2重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液にアルミニウム板(A1050系)を3重量%となるように投入した。5分経過後、銅部材を30分間浸せきした。その後、この銅部材を溶液から取り出し、脱イオン水で表面を洗浄し、乾燥した。銅部材表面には析出物が見られ、この析出物は、X線回折測定結果から、アルミニウム水和酸化物であることが同定された。その表面に、1μリットルの量の水滴を落下させて接触角を測定したところ、水滴は被膜表面を広がり、接触角が測定できない程度に小さくなり、被膜が超親水性であることを観察できた。
【0034】弱アルカリ水溶液をつくる化合物として、上記炭酸ナトリウム〔NaCO〕以外にも、炭酸水素ナトリウム〔NaHCO〕、炭酸アンモニウム〔(NHCO〕、蓚酸ナトリウム〔Na(COO)〕、アンモニア〔NH〕等の水溶液を用いて銅部材に同様の処理を施したところ、親水性の良好な被膜を形成することができた。
【0035】アルミニウム材として、その他にA1100系、A5052系を用いて同様に銅部材の処理を行ったところ、析出時間に若干の差は生じたが、アルミニウム水和酸化物層を形成することができた。上述するように、濡れ性の改善が難しい銅部材表面に微細凹凸構造を有し、かつOH基を有するアルミニウム水和酸化物層を形成することにより、濡れ性を向上することができ、かつ長期間にわたって濡れ性の向上を保持できることが可能である。
【0036】伝熱管に本実施の形態の適用した例を説明する。伝熱管として外形15.9mm、肉厚0.6mmのりん脱酸銅の平滑管を用いて、上記処理条件と同一条件下にて伝熱管外表面に親水性の処理を行なった。表面をSEMで観察したところ、サブミクロンの花弁状の微細凹凸構造が観察された。また上記伝熱管外表面に水滴を落下させたところ、水滴は伝熱管外表面の全面に濡れ広がり高い親水性を示した。本実施例によれば、伝熱管外表面の濡れ性が向上し、蒸発器さらには吸収冷凍機の性能向上、また小型化、コスト低減化が可能になる。
【0037】また、上記アルミニウム水和酸化物層の表面に、末端基に表面エネルギの小さなCF3基を有し、かつアルミニウム水和酸化物のOH基と反応する基を有するパーフロロアルコキシシラン化合物、例えばCF(CF(CHSi(OCHを180℃に加熱し、気化させて反応させて被膜を形成し、その接触角を測定したところ、173度となり超撥水性を示した。
【0038】続いて空調機の配管に本発明を適用した例を示す。図4は、空気調和機のサイクル構成を示したものである。図示の空気調和機は、室外機416と、室外機416とに互いに並列に接続された複数台の室内機417、418で構成されている。室外機416(破線で示す)は、圧縮機401と、圧縮機401の吐出側にAポート、吸い込み側にCポートをそれぞれ接続した四方弁402と、四方弁402のBポートに一端を接続した室外熱交換器403と、室外熱交換器403の他端に一端を接続された阻止弁410と、気液分離機と受液器としての機能を合わせ持つ高圧容器404とから構成されている。
【0039】室内機417(破線で示す)は、室内熱交換器407と、室内熱交換器407に一端を接続された減圧装置405とから構成され、同様に、室内機418(破線で示す)は、室内熱交換器408と、室内熱交換器408に一端を接続された減圧装置406とから構成されている。減圧装置405、406の他端は、前記阻止弁409に接続配管414を介して接続され、室内熱交換器407、408の減圧装置405、406と反対側の他端は、それぞれ接続配管415を介して前記阻止弁410に接続されている。
【0040】上記構成の装置において、冷房運転時の冷媒は、図中の実線矢印の方向に流れる。図では、四方弁402の位置は、冷房運転時の位置にある。一方、暖房運転時では、四方弁402の位置を切り替えて、冷媒を破線矢印の方向に流す。使用する冷媒は、フロンR22はもとよりHFC系冷媒、例えばR407C,R410A、R32,R134a,R404A等の冷媒でも良く、またHC系冷媒や自然系冷媒、例えばプロパン、イソブタン、二酸化炭素、アンモニア等の冷媒でも使用される。
【0041】空調機用の接続配管415には外径15.9mmの無酸素銅管を用いた。この無酸素銅管内表面にアルミニウム水和酸化物を析出させる方法は以下によった。無酸素銅管をアルカリ脱脂処理後、温度98℃以上に加熱した2重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液に、2重量%となるようにアルミニウム板(A1100系)を投入した。5分経過後に、ケミカルポンプにて上記水溶液を銅管内に30分供給し、水洗によって表面に付着している炭酸ナトリウム水溶液を除去した。
【0042】その後パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物の一つであるCF(CF(CHSi(OCHを180℃に加熱し、気化させ、チッソガスをキャリアガスとして同温度に加熱した銅管内部に導入して反応させた。
【0043】空調機用冷媒に用いられている冷凍機油は、冷媒の種類によって異なるが、一般にアルキルベンゼン系、エーテル系、エステル油等が主である。被膜形成後の前記銅管につき、これらの冷凍機油に対する濡れ性を調べた。なお管内表面の接触角測定は難しいので、銅板材を用いて同様の処理を行なって調べた。各種冷凍機油に対する接触角は169度前後の値を示し、撥油性が高い被膜であることが確認できた。
【0044】またCF(CF(CHSi(OCHの代わりに、CH(CHSi(OCHのアルキルアルコキシシラン化合物を用いて同様な処理を行なった。各種冷凍機油に対する接触角は166度前後の値を示しCF(CF(CHSi(OCHを用いた場合と同様、高い撥油性を示した。
【0045】このような高い撥油性を示す配管を用いることにより、冷凍機油の配管への付着が減少する。このため冷媒へ添加する冷凍機油量を低減することが可能となり、配管内の圧力損失の低減化が図れ、圧縮機、及びサイクル効率の向上を図ることができる。
【0046】(実施例2)無酸素銅の銅部材をアルカリ脱脂処理後、98℃に昇温させた2%濃度炭酸ナトリウム水溶液を用いて実施例1と同様な条件下で、浸せき時間を20分として、無酸素銅の試験片表面にアルミニウム水和酸化物層を形成した。その後、アルキルアルコキシシラン化合物の一つとして、CH(CHSi(OCHを3重量%となるようにイソプロピルアルコール溶媒に溶解した溶液に、上記条件下で作成したアルミニウム水和酸化物の形成された無酸素銅板を30分間浸せきし、その後取り出して170℃で20分間加熱した。そして1μリットルの水滴を落下させて接触角を測定したところ、接触角は171度となり、高い撥水性を示した。
【0047】得られた被膜、すなわちアルミニウム水和酸化物およびその上に形成したアルキルシラン被膜の耐久性を、脱イオン水の流水(流量5ml/s)に60日間浸せきした後接触角を測定したところ、被膜の親水性及び撥水性の低下は見られず、耐久性の高い被膜であることを確認できた。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、表面に耐久性のある超親水性被膜、超撥水性被膜(あるいは撥油性)が形成された銅部材およびその製造方法、並びに伝熱管が得られる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
【出願日】 平成13年6月27日(2001.6.27)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男 (外2名)
【公開番号】 特開2003−1746(P2003−1746A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−194189(P2001−194189)