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【発明の名称】 撥水性高輝度透明材
【発明者】 【氏名】武田 宏二
【住所又は居所】福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1号 東陶機器株式会社内

【氏名】中島 章
【住所又は居所】神奈川県茅ヶ崎市本村2丁目8番1号 株式会社先端技術インキュベーションシステムズ内

【要約】 【課題】透明材の表面を、輝度向上機能と優れた撥水性とを併せ持った構造に形成した、新規な撥水性高輝度透明材を提供する。

【解決手段】透明材の表面に、背面からの光の輝度を高める第1の凹凸形状が形成され、該第1の凹凸形状が形成された表面上に、撥水性を有する低表面エネルギー物質からなる薄層が積層され、該薄層の表面に、前記第1の凹凸形状よりも小さい表面粗さの第2の凹凸形状が形成されていることを特徴とする撥水性高輝度透明材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明材の表面に、背面からの光の輝度を高める第1の凹凸形状が形成され、該第1の凹凸形状が形成された表面上に、撥水性を有する低表面エネルギー物質からなる薄層が積層され、該薄層の表面に、前記第1の凹凸形状よりも小さい表面粗さの第2の凹凸形状が形成されていることを特徴とする撥水性高輝度透明材。
【請求項2】 透明材が透明プラスチックフィルムからなる、請求項1の撥水性高輝度透明材。
【請求項3】 第1の凹凸形状が、断面形状が三角山形の凸条またはV溝からなる凹条が連接された形状に形成されている、請求項1または2の撥水性高輝度透明材。
【請求項4】 薄層を構成する低表面エネルギー物質が、フッ素系またはシリコーン系の化合物あるいは樹脂若しくはその誘導体からなる、請求項1ないし3のいずれかに記載の撥水性高輝度透明材。
【請求項5】 薄層がコーティングにより積層されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の撥水性高輝度透明材。
【請求項6】 第2の凹凸形状が、薄層に含有された微粒子によって形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の撥水性高輝度透明材。
【請求項7】 微粒子がコロイダルシリカ粒子からなる、請求項6の撥水性高輝度透明材。
【請求項8】 第2の凹凸形状が、研削またはエッチングによって形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の撥水性高輝度透明材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撥水性を有するとともに背面からの光の輝度を高める性能を有する透明材に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、固体表面をフッ素やシリコーンなどを主成分とする低い表面エネルギーの物質で形成すれば優れた撥水性を持たせることができることが知られており、かつ、その表面に、適切な粗さが付与されることによって撥水性がより強調されることが知られている。
【0003】一方、透明材において、背面からの光の輝度を高めるようにした表面構造が知られている。例えば、市販されている3M社製の輝度上昇フィルム(BrightnessEnhanced Film、以下、「BEフィルム」と略称する。)では、透明なプラスチックフィルムの表面に、三角山形あるいはV溝形の凹凸条を連接した特異的な表面構造を形成し、背面からの光を集光して正面側での輝度が向上するようにしている。この輝度上昇フィルムを例えば液晶ディスプレイパネルの表面に貼れば、液晶表面での輝度が向上される。
【0004】このように、撥水性付与および撥水性向上のための表面粗さ付与構造と、輝度向上機能を有する透明材の表面構造とは、それぞれ個々の技術としては知られているが、これらを組み合わせた技術は知られていない。
【0005】ところが、種々の分野においては、高い撥水性、例えば水との接触角が100度以上、また120度以上の高い撥水性、さらには150度以上の超撥水性と、輝度向上機能とを、両方とも同時に備えていれば極めて望ましいと考えられる用途が多数ある。
【0006】例えば、浴室や洗面所等の水周りの壁材や照明表面材の用途、噴水やプール等における照明機器、自動車のヘッドランプ、街灯、ネオンサイン、街頭テレビ、看板、標識、自動販売機等の自発光するものの基材や表面材、意匠面形成材などには、上記両性能がともに求められることが多く、両性能があれば、輝度向上機能により照明や表示性能が高められるとともに、撥水性により機器や部材への着滴防止が達成可能となる。
【0007】また、寒冷地においては、自動車のテールやヘッドランプ、街灯、ネオンサイン、屋外照明、街頭テレビ、看板、標識、自動販売機など自発光するものの基材や表面材、意匠面形成材などに、輝度向上機能に加え、特に着雪防止性能が備わっていれば望ましいと考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の課題は、上記のような要望を満たすべく、透明材の表面を、輝度向上機能と優れた撥水性とを併せ持った構造に形成した、新規な撥水性高輝度透明材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る撥水性高輝度透明材は、透明材の表面に、背面からの光の輝度を高める第1の凹凸形状が形成され、該第1の凹凸形状が形成された表面上に、撥水性を有する低表面エネルギー物質からなる薄層が積層され、該薄層の表面に、前記第1の凹凸形状よりも小さい表面粗さの第2の凹凸形状が形成されていることを特徴とするものからなる。
【0010】透明材としては、上記のような表面形態を有するものであれば特に限定されず、例えば透明プラスチックフィルムを用いることができ、透明プラスチックフィルムとしては、例えば前述の3M社製のBEフィルムを使用できる。
【0011】第1の凹凸形状は、例えば、断面形状が三角山形の凸条またはV溝からなる凹条が連接された形状に形成することができ、凸条の高さあるいは凹条の深さとしては、10〜100μm、特に50μm程度に設定できる。三角山形やV溝の側面の角度としては、30〜60度、特に45度程度に設定できる。
【0012】薄層は、自身でも材料的に撥水性を有し、この薄層を構成する低表面エネルギー物質としては、フッ素系またはシリコーン系の化合物あるいは樹脂若しくはその誘導体が好ましい。この薄層は、例えばコーティングにより透明材表面に積層される。
【0013】第2の凹凸形状は、第1の凹凸形状による輝度向上機能を実質的に損なうことなく、上記薄層によって形成された表面の撥水性をさらに高めるものである。すなわち、上述の第1の凹凸形状は、透明材の表面における輝度を高めるとともに、表面粗さを付与することにより撥水性(水との接触角)を高めるが、この第1の凹凸形状による表面粗さよりも小さい表面粗さの第2の凹凸形状を形成することにより、いわゆるフラクタル構造(拡大ごとに実質的に相似形が現れる構造、この場合には、二重粗さ構造)となり、一段の表面粗さだけで得られる撥水性に比べ、格段に優れた撥水性が得られるようになる。また、この第2の凹凸形状は、第1の凹凸形状よりも小さい表面粗さ構造とされるため、摩耗が予測されるような部位では、摩耗による消滅が生じるかも知れないが、たとえ摩耗によって消滅したとしても、第1の凹凸形状は残るため、第1の凹凸形状による撥水性および薄層の材料自身による撥水性は最低限確保されることになり、併せて第1の凹凸形状による輝度向上性能も確保されることになる。したがって、たとえこのような部位に適用されたとしても、結果的に、耐久性に優れた表面構造となる。
【0014】このような第2の凹凸形状は、例えば、薄層に含有された微粒子によって形成することができる。微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ粒子を用いることができ、特に撥水処理されたコロイダルシリカが好ましい。このような撥水処理されたコロイダルシリカは市販されている(例えば、日本アエロジル社のコロイダルシリカ”RX200”)。あるいは、第2の凹凸形状は、研削やエッチングによって形成することも可能である。
【0015】上記のような本発明に係る撥水性高輝度透明材においては、第1の凹凸形状によって、表面における、背面からの光の集光機能により該光の輝度が高められ、その第1の凹凸形状が形成された表面上に積層された低表面エネルギー物質からなる薄層の材料特性により該薄層表面に撥水性が付与されるとともに、該薄層の表面に形成された、第1の凹凸形状よりも小さい表面粗さの第2の凹凸形状により、撥水性が格段に(例えば、超撥水性の領域にまで)高められる。したがって、輝度向上性能と、優れた撥水性とを併せ持った、望ましい撥水性高輝度透明材が得られることになる。そして、この撥水性高輝度透明材においては、前述の如く、第2の凹凸形状が摩耗等により、たとえ消滅あるいは低減したとしても、第1の凹凸形状はそのまま残るから、第1の凹凸形状による輝度向上機能および撥水性付与機能、および薄層の材料特性による撥水性は確保され、あるレベル以上の輝度と撥水性を確保する上で、結果的に高い耐久性が維持されることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明の一実施態様に係る撥水性高輝度透明材1を示している。この撥水性高輝度透明材1の基材には、例えば前述の3M社製のBEフィルムが用いられる。このBEフィルムは、例えば、透明なベースフィルム層2と、その表面に透明な接着剤層3を介して接着された透明な表面樹脂層4とからなり、表面樹脂層4の表面に、第1の凹凸形状5が形成されている。第1の凹凸形状5は、断面形状が、例えば45度程度の傾斜角を有する三角山形の凸条またはV溝からなる凹条が連接された形状に形成されている。凸条または凹条のピッチは、50μm程度に設定されており、凸条の高さあるいは凹条の深さも50μm程度に設定されている。このようなBEフィルムは、それ単独で、たとえば自発光する機器や画面に貼り付けられることにより、背面からの光を第1の凹凸形状5部分で集光でき、輝度を高めることができるようになっている。
【0017】なお、この第1の凹凸形状5は、基本的には輝度向上機能を付与するために形成されたものであるが、数十ミクロンオーダーの微細な凹凸形状であるから、材料の表面の撥水性を向上する効果も同時に奏する。
【0018】上記第1の凹凸形状5が形成された表面上に、撥水性を有する低表面エネルギー物質からなる薄層6が積層されている。低表面エネルギー物質としては、前述の如く、フッ素系またはシリコーン系の化合物あるいは樹脂若しくはその誘導体を用いることができる。この薄層6も実質的に透明な層からなり、実質的に均一な厚みの薄い層として積層されるものであるから、第1の凹凸形状5はそのまま維持され、上記輝度向上機能がそのまま維持されるとともに、部材全体の透明性も維持される。そして、積層された薄層6自身の材料特性により、薄層6の表面は優れた撥水性を有する。
【0019】この薄層6の表面に、第1の凹凸形状5よりも小さい表面粗さの第2の凹凸形状7が形成されている。この第2の凹凸形状7は、実質的に透明性を損なわずに、つまり、可視光の減衰をほとんど伴わずに、かつ、第1の凹凸形状5による輝度向上機能を損なわずに、薄層6の表面の撥水性をさらに格段に高めるものである。このような可視光の減衰をほとんど伴わない程度の適当な微細凹凸としては、一般的には、中心線平均表面粗さ(Ra)にて100nm以下のものである。
【0020】上記のような第2の凹凸形状7は、研削やエッチングによって物理的にあるいは化学的に形成することも可能であるが、本実施態様では、薄層6内に含有された微粒子8によって形成されている。微粒子8としては、例えば粒径が比較的均一にコントロールされたコロイダルシリカを用いることができる。コロイダルシリカとしては、撥水処理されたものがより好ましい。
【0021】このように構成された撥水性高輝度透明材1においては、第1の凹凸形状5により、背面からの光の輝度向上性能が付与され、同時に、数十ミクロン程度の凹凸構造により、ある程度の撥水性が付与される。また、薄層6が低表面エネルギー物質から構成されることにより、薄層6自身の材料特性によって高い撥水性が付与されるとともに、薄層6の表面に第2の凹凸形状7が形成されることにより、薄層6の表面の撥水性が格段に高められ、水との接触角が150度以上の超撥水性さえ達成可能となる。したがって、高輝度特性と優れた撥水性を同時に達成できる。
【0022】また、第1の凹凸形状5と第2の凹凸形状7との二重粗さ構造のうち、たとえ第2の凹凸形状7が摩耗等により消滅したとしても、第1の凹凸形状5と薄層6とは残るから、第1の凹凸形状5による輝度向上性能と、第1の凹凸形状5および薄層6自身の材料特性による撥水性とは実質的にそのまま維持されることになる。したがって、摩耗等に対する高耐久性が確保されることになる。
【0023】
【実施例】以下に、実施例に基づいて説明する。
実施例1三菱レーヨン社製フッ素樹脂”フロロナール”FL6002と日本アエロジル社製撥水性コロイダルシリカRX200を、適量の硬化剤(日本ポリウレタン社製”コロネート”)とともに、キシレン:酢酸ブチル=4:1の混合溶剤中で超音波分散させ、総固形分濃度1%、フッ素樹脂固形分:コロイダルシリカ=1:1の塗布液を作製した。これを3M社製輝度増加フィルム(BEフィルム)に1500rpmでスピンコートし、室温で乾燥して膜を作製した。得られた膜は透明で水接触角160.8°、7mgの水滴の転落角は7°であり、本来BEフィルムが有していた輝度向上性能を維持していた。つまり、目標とする輝度向上性能と超撥水性とを併せ持つ透明材が得られた。また、この膜は12.5g/cm3 荷重下での濡れたスポンジでの耐摩耗試験を2000回行っても接触角が130°までしか下がらなかった。したがって、優れた耐久性も併せ持つものであった。
【0024】比較例1実施例1と同じコーティングを通常の表面が平滑なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに対して行った。その結果、得られた膜は透明で水接触角127.1°、水滴の転落角は40mgの水滴を用いても90°以上であり、輝度向上性能は全くなかった。この膜は実施例1と同一条件下で濡れたスポンジでの耐摩耗試験を行ったところ接触角が70°まで低下した。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る撥水性高輝度透明材によれば、高い輝度向上機能と優れた撥水性とを併せ持った表面構造を有する、従来にない新規な透明材を実現できる。
【0026】この本発明に係る撥水性高輝度透明材は、例えば、浴室や洗面所等の水周りの壁材や照明表面材の用途、噴水やプール等における照明機器、自動車のヘッドランプ、街灯、ネオンサイン、街頭テレビ、看板、標識、自動販売機等の自発光するものの基材や表面材、意匠面形成材などに用いて極めて好適なものであり、輝度向上機能により照明や表示性能を高めることができるとともに、優れた撥水性により機器や部材への着滴防止を達成することができる。
【0027】また、寒冷地においては、自動車のテールやヘッドランプ、街灯、ネオンサイン、屋外照明、街頭テレビ、看板、標識、自動販売機など自発光するものの基材や表面材、意匠面形成材などに、輝度向上機能に加え、特に着雪防止性能を付与することができる。
【出願人】 【識別番号】000010087
【氏名又は名称】東陶機器株式会社
【住所又は居所】福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1号
【識別番号】501257509
【氏名又は名称】株式会社先端技術インキュベーションシステムズ
【住所又は居所】神奈川県茅ヶ崎市本村2丁目8番1号
【出願日】 平成13年6月27日(2001.6.27)
【代理人】 【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
【公開番号】 特開2003−1736(P2003−1736A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−194229(P2001−194229)