トップ :: B 処理操作 運輸 :: B32 積層体

【発明の名称】 微細空隙内蔵体とその製造方法
【発明者】 【氏名】成住 顕
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

【要約】 【課題】貫通孔のある薄板を比較的低温で熱圧着できるようにして素材の選択や製作を容易にし、配管内摩擦抵抗の少ない微細空隙を作る。

【解決手段】微細空隙(A)を構成する貫通孔1a、2a、3aのある極薄板状の複数の積層板1、2、3と、積層板1、2、3の間に形成され、それらの積層板1、2、3より低い融点を有する接合材層4,5とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 積層することにより各層の所定部分に形成された微細空隙を連通して所定の三次元形状の微細空隙を形成する複数の積層部材と、前記各積層部材同士を接合する接合層と、を備える微細空隙内蔵体。
【請求項2】 請求項1に記載の微細空隙内蔵体において、前記接合層は、前記積層部材の接合面に形成され、前記積層部材よりも融点が低いことを特徴とする微細空隙内蔵体。
【請求項3】 複数枚の薄板状の積層部材の所定部分に微細空隙を形成する微細空隙形成工程と、前記各積層部材の接合面に接合材による層を形成する接合層形成工程と、前記各積層部材を積層することにより前記微細空隙を連通させて所定の三次元形状の微細空隙を形成する積層工程と、前記接合層を熱圧着する熱圧着工程と、を備えた微細空隙内蔵体の製造方法。
【請求項4】 複数枚の薄板状の積層部材の接合面に接合材による層を形成する接合層形成工程と、前記各積層部材の所定部分に微細空隙を形成する微細空隙形成工程と、前記各積層部材を積層することにより前記微細空隙を連通させて所定の三次元形状の微細空隙を形成する積層工程と、前記接合層を熱圧着する熱圧着工程と、を備えた微細空隙内蔵体の製造方法。
【請求項5】 請求項3又は請求項4に記載の微細空隙内蔵体の製造方法において、前記接合層形成工程は、前記積層部材より低い融点の接合材を用いること、を特徴とする微細空隙内蔵体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、極小の配管などの微細空隙を内蔵する微細空隙内蔵体とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、インクジェット印刷装置は、その印刷密度を向上させるために、微小ノズルが微小間隔で配置されたノズル部に、微量のインキを送り込む配管を形成した配管部が必要である。しかし、このような極小の配管部は、パイプにより作製したのでは極小化に限度があり、また、他に適当な方法がなかった。したがって、この配管部が装置全体の小型化の妨げとなるだけでなく、印刷密度のさらなる向上を妨げていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来の配管部は、その小型化を一層押し進めるために適当な手法がないために、各種装置の性能向上を妨げているが、この問題を打開するために、熱圧着の手法を採用することが考えられる。例えば、前述したような微量インキ供給のための配管構造を微小化するためには、インキ流路などを構成する部分を除去した薄板を積層し、熱圧着により融着してマニフォールド化することが効果的であると考えられる。
【0004】しかし、この方法は、薄板を密着させるために、金属の溶融温度まで加熱する必要がある。しかも、接合すべき金属同士の溶融温度が異なっている場合には、双方の金属の接合面が融ける前に、溶融温度の低い方の薄板が変形してしまうので、接合すべき金属同士は、同一の溶融温度のものでなければならない。また、薄板の加工による孔の断面形状の粗さがそのまま配管内面の粗さになり、インキなどの流路の摩擦抵抗を大きくする可能性がある。
【0005】本発明の課題は、材料の選択や製作が容易で、配管内摩擦抵抗などによる内蔵微細空隙の性能の劣化がなく、従来の製品に比べ遙に小型化が可能な、微細空隙内蔵体とその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、請求項1の発明は、積層することにより各層の所定部分に形成された微細空隙を連通して所定の三次元形状の微細空隙を形成する複数の積層部材と、前記各積層部材同士を接合する接合層と、を備える微細空隙内蔵体である。
【0007】請求項2の発明は、請求項1に記載の微細空隙内蔵体において、前記接合層は、前記積層部材の接合面に形成され、前記積層部材よりも融点が低いことを特徴とする微細空隙内蔵体である。
【0008】請求項3の発明は、複数枚の薄板状の積層部材の所定部分に微細空隙を形成する微細空隙形成工程と、前記各積層部材の接合面に接合材による層を形成する接合層形成工程と、前記各積層部材を積層することにより前記微細空隙を連通させて所定の三次元形状の微細空隙を形成する積層工程と、前記接合層を熱圧着する熱圧着工程と、を備えた微細空隙内蔵体の製造方法である。
【0009】請求項4の発明は、複数枚の薄板状の積層部材の接合面に接合材による層を形成する接合層形成工程と、前記各積層部材の所定部分に微細空隙を形成する微細空隙形成工程と、前記各積層部材を積層することにより前記微細空隙を連通させて所定の三次元形状の微細空隙を形成する積層工程と、前記接合層を熱圧着する熱圧着工程と、を備えた微細空隙内蔵体の製造方法である。
【0010】請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の微細空隙内蔵体の製造方法において、前記接合層形成工程は、前記積層部材より低い融点の接合材を用いること、を特徴とする微細空隙内蔵体の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面などを参照しながら、本発明の実施の形態をあげて、さらに詳しく説明する。図1は、本発明による微細空隙内蔵体の実施形態を示す斜視図である。この実施形態の微細空隙内蔵体は、微細配管の集合体であるマニフォールドを例にしたものであり、図中左下の楕円形で囲んだ部分は、マニフォールドの一部を拡大したもので、全体の斜視図の楕円形の点線で囲んだ部分に相当する。
【0012】薄板1には、表裏に貫通する貫通孔1a、1a・・・1aが開けられている。同様に、薄板2、3にも、別の形状の貫通孔2a,3aが開けられている。薄板1、2、3は、積層状態に熱圧着されるまえに、銀鍍金やニッケル鍍金などの鍍金、又は、イミド前駆体などの樹脂でコーティングされる。この鍍金又はコーティングされたものが熱圧着されることによって接合材層4、5となる。各薄板の貫通孔1a、2a・・・3aなどがつながって、インクなどを通す微細空隙Aを形成する。
【0013】図2は、図1とは別のマニフォールドを構成する単位配管部品の一つを示した説明図(斜視図)である。図2の微細空隙Bは、インクジェット機構の駆動部にインクを供給するための配管部品の例である。他の同種の部品又は他の類似部品とを組み合わせた集合体として使用するのが一般的である。図2では、配管となる空隙を点線で示し、これに接続されるべき外部の配管の位置を2点鎖線で示してある。
【0014】図2の例では、薄板11、12、13の3枚を重ねて熱圧着してある。それぞれの素材となる薄板11、12、13の厚みは、80μm〜0.2mm程度で、微細空隙Bを構成すべき所定の箇所に、それぞれ表裏に貫通する孔11b、12b、13bが設けてある。薄板11は最上段に、薄板12は中段に、薄板13は最下段になるよう積み重ねられている。
【0015】図3、図4、図5は、それぞれ薄板11、薄板12、薄板13を示す斜視図である。薄板11、12、13は、互いに相対する面に、銅鍍金(又は、ニッケル鍍金、金鍍金など)による表面処理を行った後に、これらを積層し、加熱しながら圧着したときに、貫通孔11b、12b、13bは相互につながって3次元形状のインク供給のための配管部(微細空隙)Bを形成する。
【0016】次に、最も単純な微細空隙Cの場合を例として、貫通孔の製作方法と、微細空隙による流路の配管内摩擦抵抗について述べる。図6は、このような微細空隙Cを有する配管の一部を示す斜視図である。この場合に、微細空隙Cは、薄板21、22、23によって構成される層を真っ直ぐ上下に貫通している。微細空隙Cは、薄板21、22、23に設けられた貫通孔21c、22c、23cがつながって形成される。
【0017】図7〜図10は、図6の配管を作る途中過程の一部を示す説明図(図6の流路の中心線を含む面で切断した断面図)である。ただし、図7、図8は、薄板のうちの一枚のみを示し、薄板21、22、23は、インクジェット印刷装置の構造部材とする。各薄板21、22、23の素材は、SUS304又はSUS430などが好適に用いられる。以下に、微細空隙内蔵体の製造方法の手順を説明する。
【0018】先ず、希望するインク流路Cの3次元形状の断面形状を設計する。ついで、その断面形状にしたがって、非腐食箇所を保護する皮膜Pを、薄板21、22、23のそれぞれの表裏の所定の位置に印刷等によって作製する。図7は、薄板21の表裏面に皮膜Pを設けた状態である。
【0019】次に、図8に示すように、エッチングを行う。ただし、図8では、エッチング途中の状態を示しているので、表裏を貫通させるための孔21cは、未貫通であり、薄くなった部分21fが残っている。エッチングによる腐食は、時間経過とともに進み、最後には表裏からの腐食が繋がって貫通孔となるが、その内側面は、表裏面より離るほど内側に向かって突出する凹凸が残る。さらに、薄板21、22、23の表面処理を行う。表面処理は、銅鍍金やニッケル鍍金又は金鍍金などでもよいが、本実施形態ではニッケル鍍金を行った。
【0020】図9は、薄板21、22、23の表面処理状態を、上下に積層順に並べて示した説明図(断面図)である。図9において、24a、24b、25a、25bは、接合材層24、25を形成すべきニッケル鍍金皮膜である。
【0021】次に、表面処理を行った薄板を図示しない位置決めピンよって位置決めし、アーク溶接などによって仮止めを行う。最後に、仮止めされた薄板を炉に入れ、鍍金溶融温度に加熱し圧力を加えて積層された薄板同士の溶着(接合)を行う。
【0022】図10は、薄板接合後の状態を示す図である。図10の状態では、熱圧着時に融けて薄板と薄板の間から内側にはみ出したニッケル鍍金皮膜が、貫通孔21c、22c、23cの同一内側面の凹凸を埋めて微細空隙Cの内側面を平滑にする。図11図は、本発明の場合と比較するため、仮にニッケル鍍金皮膜などの接合材を使用しないで、薄板同士を直接熱圧着した場合の微細空隙(流路)の内側面の状態を示す説明図(断面図)である。その内側面には、凸部t、t・・・tがあり、配管内の摩擦抵抗を大きくしている。
【0023】例えば、インクジェット印刷装置は、微細配管を必要とする装置の小型化の場合、インキ供給用の配管構造として、インキ流路の一部となる微細空隙を作りこんだ積層板(薄板)を積み重ね、熱圧着により融着したマニフォールドを使用することができる。しかし、この方法では、前述したように、薄板同士の密着接合のために薄板の素材である金属の融点付近まで加熱する必要がある。素材に与える影響を少なくするためと、加工装置の簡単化、省エネルギー化を図るために、薄板接合時の加熱温度はできるだけ低い方がよい。そこで、本実施形態では、より低い温度で加工ができるように、各薄板に融点の低い物性を持つ接合材をコーティングする方法を採用した。
【0024】また、前記薄板のインキ流路の形成のため、流路となる所定部分をエッチングにより表裏から腐食させると、できた貫通孔の内壁面に必ず凹凸を生じる。このようにしてできた薄板の個々の断面形状の粗さが、積層された場合に配管内面の粗さとなってインキ流路などの摩擦抵抗を大きくする。しかし、各薄板を融点の低い素材でコーティングする場合は、熱圧着時にコーティング材が微細配管内に染み出し、積層時の位置ずれやエッチングによる凹凸などを吸収して配管内面を滑らかにするので、配管内流路の摩擦抵抗を減らすことができる。
【0025】(他の実施形態)本発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、種々の変形又は変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。例えば、薄板の表裏を貫通する貫通孔は、上述した説明では、エッチング法により作製しているが、他の穿孔方法によっても行なってもよい。その方法によっては、薄板の表面処理を行った後に、貫通孔を作るための加工を行ってもよい場合もある。
【0026】これらの貫通孔によって構成される空隙は、上述した説明では、一つの入り口に対して、複数の出口のあるマニホールドなどの配管類について述べたが、外部に通じる開放口が一つだけもよく、さらに、熱交換のヒートパイプに使用される部品のように、外部に通じる場所がなく、微細空隙内蔵体の内部に空隙が密封されているものであってもよい。なお、微細空隙の形状が異なるものであっても、本発明の趣旨に沿うものであれば、そのいずれもが本発明に含まれる。
【0027】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、本発明によれば、複数の積層部材を積層することにより、各層の所定部分に形成された微細空隙を連通して所定の三次元形状の微細空隙を形成することができるので、極細の配管などを容易に作製することが可能となった。このとき、各積層部材同士を接合する接合層を形成したので、例えば、接合層として、積層部材よりも融点の低い接合材を用いれば、直接熱圧着する場合に比べ、加工時の加熱温度を低く設定することができ、簡単な加工設備で信頼性の高い製品が容易に得られる、という効果がある。
【0028】また、熱圧着加工時に薄板と薄板の間の接合材が空隙内部に押し出されて、空隙の内壁の凹凸を埋めて滑らかにするので、配管類の場合に、流路の内面を平滑化し、配管内摩擦を減少させる、という効果がある。
【出願人】 【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号
【出願日】 平成13年6月25日(2001.6.25)
【代理人】 【識別番号】100092576
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 久男
【公開番号】 特開2003−1733(P2003−1733A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−190596(P2001−190596)