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【発明の名称】 二軸配向ポリエステルフィルム
【発明者】 【氏名】目黒 義男
【住所又は居所】滋賀県坂田郡山東町井之口347番地 三菱化学ポリエステルフィルム株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】磁気記録媒体としての巻き特性、走行性および電気変換特性を高度に満足でき、フィルム製造時および磁気記録媒体製造時において、耐突出変形性、耐摩耗性、ドロップアウト発生防止の点で優れており、擦り傷や摩耗粉の発性が極めて少なく、しかも、生産性およびコスト面で優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。

【解決手段】平均粒径が0.01〜0.30μmの酸化アルミニウム粒子0.1〜1.0重量%、平均粒径が0.10〜0.50μm、粒径分布値(r)が1.3以下、粒径比(走査型電子顕微鏡で観察される粒子の最大径と最小径の比)が1.0〜1.2の架橋高分子粒子0.1〜0.3重量%を含有して成る二軸配向ポリエステルフィルムであって、特定の表面粗度およびF5値(MPa)を同時に満足する二軸配向ポリエステルフィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 平均粒径が0.01〜0.30μmの酸化アルミニウム粒子0.1〜1.0重量%、平均粒径が0.10〜0.50μm、粒径分布値(r)が1.3以下、粒径比(走査型電子顕微鏡で観察される粒子の最大径と最小径の比)が1.0〜1.2の架橋高分子粒子0.1〜0.3重量%を含有して成る二軸配向ポリエステルフィルムであって、下記式(1)〜(5)を同時に満足することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
0.005≦RMS≦0.010μm (1)
0.005≦Ra≦0.010μm (2)
0.100≦P−V≦0.140μm (3)
F5MD−F5TD≧40 (4)
140≦F5MD≦160 (5)
(上記式中、RMSはフィルム表面の自乗平均平方根粗度(μm)、Raはフィルム表面の平均粗度(μm)、P−Vはフィルム表面の最大粗度(μm)、F5MDは縦方向のF5値(MPa)、F5TDは横方向のF5値(MPa)を表す。)
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、表面が平坦であり、易滑性、耐摩耗性および高強度に優れ、高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとして好適な二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフテレートフィルムは、物理的および化学的性質に優れ、特に、平坦性、機械的強度および寸法安定性に優れ、磁気記録媒体用ベースフィルムとして不可欠である。近年、ビデオテープやデータストレージ用を中心とした磁気記録媒体は、小型化、高密度化へと急速なテンポで進行している。
【0003】高密度記録は短波長でなされるため、磁性層厚さの出力損失を低減すべく磁性層の薄膜化が進んでいる。例えば、汎用のビデオテープの磁性層厚さは通常5μm程度であるが、純鉄を主成分とするメタルパウダーテープの磁性層厚さは2μm前後である。磁性層の薄膜化に伴い、ベースフィルムの表面性状がビデオテープの電磁気特性へ与える影響は大きくなり、ベースフィルムの表面は可能な限り平坦なものが望まれる。
【0004】しかしながら、従来の技術では、フィルム表面が平坦になるに従って、フィルムの滑り性、耐摩耗性、耐擦り傷性などが悪化して重大な支障を来す。例えば、フィルム製造工程でフィルムと各種ロール間での摩擦摩耗で生じた白粉が発生した場合、磁性層の塗布抜けや磁性面のへの白粉の転着によりドロップアウトの原因となる。また、磁気テープ化工程、特に、磁性層表面の平坦化を主目的で行うカレンダー処理工程で摩耗粉が生じた場合、カレンダーロール表面に白粉となって付着し、磁性層表面を粗面化して電磁変換特性の低下を招く。
【0005】上記の様な摩耗粉の抑制方法として、フィルム中に不活性な微粒子を配合する方法が知られている。しかしながら、従来の方法で十分満足する耐摩耗性を得るためにはフィルムの平坦性を犠牲にせざるを得ず、要求される電磁変換特性と両立するフィルムは得られていないのが実情である。
【0006】一方、ベースフィルムの製造工程で要求される主要な特性の1つにいわゆる耐突出変形性がある。この突出変形という現象は、張力を掛けてフィルムを巻き上げ際、ゴミ等の異物の混入、または、高速巻き上げのために生ずる随伴空気の抱き込みにより、フィルムが盛り上がる現象である。通常、突出変形部は、フィルムが円形突起状に変形し、磁性層を形成した際にドロップアウトの原因となる。
【0007】上記の耐突出変形性を向上させる方法として、滑り性改良に有効な粒子の配合によりフィルムを粗面化する方法が知られているが、従来の方法では表面平坦性を損なわずに改良することは困難である。
【0008】更に、近年の磁気記録システムの小型化に伴い、一定の容積に蓄えられる情報量を増やすため、高密度記録化と共にテープの薄膜化が進行している。テープすなわちベースフィルムの薄膜化に従って力学的強度が不足するため、一般には、フィルムの縦方向または縦横両方向に高強度化した、所謂テンシライズドフィルム又はタテヨコテンシライズドフィルムが使用される。ところが、高強度化フィルムは、その製造工程において擦り傷が発生し易く、特に、フィルム表面が平坦になるに従って傷の発生が増加する。斯かる傷は、磁気テープとした際の出力低下を招き、大きな傷はドロップアウトとなる。
【0009】また、耐摩耗性の点においても高強度化の方向は好ましくなく、高強度化フィルムを得るため、縦方向および/または横方向に高倍率の延伸を行うが、斯かる高倍率の延伸は、フィルム中に配合した粒子の界面で大きな空隙を形成する。その結果、粒子が脱落し易くなり、前述のカレンダー処理工程での白粉の付着などを引き起こす。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その目的は、磁気記録媒体としての巻き特性、走行性および電気変換特性を高度に満足でき、フィルム製造時および磁気記録媒体製造時において、耐突出変形性、耐摩耗性、ドロップアウト発生防止の点で優れており、擦り傷や摩耗粉の発性が極めて少なく、しかも、生産性およびコスト面で優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ある特定の添加粒子の併用により、平坦易滑性、耐摩耗性および高強度のフィルムが得られるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明の要旨は、平均粒径が0.01〜0.30μmの酸化アルミニウム粒子0.1〜1.0重量%、平均粒径が0.10〜0.50μm、粒径分布値(r)が1.3以下、粒径比(走査型電子顕微鏡で観察される粒子の最大径と最小径の比)が1.0〜1.2の架橋高分子粒子0.1〜0.3重量%を含有して成る二軸配向ポリエステルフィルムであって、下記式(1)〜(5)を同時に満足することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
【0013】
【数1】
0.005≦RMS≦0.010μm (1)
0.005≦Ra≦0.010μm (2)
0.100≦P−V≦0.140μm (3)
F5MD−F5TD≧40 (4)
140≦F5MD≦160 (5)
(上記式中、RMSはフィルム表面の自乗平均平方根粗度(μm)、Raはフィルム表面の平均粗度(μm)、P−Vはフィルム表面の最大粗度(μm)、F5MDは縦方向のF5値(MPa)、F5TDは横方向のF5値(MPa)を表す。)
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルム(以下、単にフィルムと略記する)を構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルであり、繰り返し構造単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位を有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲内であれば、他の第三成分を含有してもよい。
【0015】芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等を使用することが出来る。グリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を使用することが出来る。
【0016】また、上記のポリエステルには、任意の添加剤、例えば、熱安定剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを含有させてもよい。
【0017】本発明のフィルムとは、上記のポリエステルを出発原料とする二軸に配向されたフィルムを指すが、その製造方法としては基本的には公知の方法を採り得る。例えば、通常270〜330℃でシート状に溶融押し出しした後、40〜80℃で冷却固化して無定形シートとし、次いで、80〜170℃で縦、横方向に面積倍率で4〜20倍となる様に逐次または同時に二軸延伸し、その後、170〜240℃で熱処理する方法を利用することが出来る。縦および横方向に延伸するに際しては、各々一段で延伸してもよいし、また、必要に応じ、多段で延伸したり多段延伸の間に配向緩和のための熱処理区間を設けたりすることも出来る。更に、フィルムの極限粘度は、通常0.52〜0.62、好ましく0.54〜0.59である。斯かる極限粘度を満足することによりフィルムの裁断性および生産性が向上する。
【0018】本発明の最大の特徴は、フィルムに配合する粒子として、次の二種類の粒子を使用する点にある。
【0019】第一の粒子は酸化アルミニウム粒子である。酸化アルミニウム粒子の製法としては、例えば、(1)無水塩化アルミニウムを火焔加水分解させる方法(熱分解法)、(2)水酸化アルミニウムを硫酸と反応させて硫酸アルミニウムとし、次いで、硫酸アンモニウムと反応させてアンモニウム明礬とした後に焼成する方法などを挙げることが出来る。酸化アルミニウム粒子の結晶形態は、耐擦り傷性の観点から、δ型またはγ型が好ましく、特にδ型が好ましい。
【0020】本発明で使用する酸化アルミニウムの平均粒径は0.01〜0.30μmである。酸化アルミニウム粒子の平均粒径が0.01μm未満の場合は、耐摩耗性、耐擦り傷性、耐突出変形性が劣り、0.30μmを超える場合は、表面平坦性や耐摩耗性が不十分となる。耐摩耗性が不十分となる理由は、粒径の大きい粒子がフィルム表面から脱落し易くなるためである。酸化アルミニウムの平均粒径は、好ましくは0.05〜0.25μm、更に好ましくは0.10〜0.20μmである。
【0021】酸化アルミニウム粒子のフィルム中の含有量は0.1〜1.0重量%である。含有量が0.1重量%未満の場合は、フィルムの耐擦り傷性、耐突出変形性が不十分となり、1.0重量%を超える場合は、フィルムの表面平坦性や耐摩耗性が不十分となる。耐摩耗性が不十分となる理由は、粒子のフィルム表面からの脱落量が増えるためである。酸化アルミニウム粒子のフィルム中の含有量は、好ましくは0.2〜0.5重量%、更に好ましくは0.3〜0.5重量%である。
【0022】第二の粒子は架橋高分子粒子である。架橋高分子粒子としては、分子中に唯1個の脂肪族の不飽和結合を有するモノビニル化合物(A)の一種以上と、架橋剤として分子中に2個以上の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(B)の一種以上とを乳化重合して得られる架橋高分子粒子が好適である。ここで言う乳化重合法とは、ソープフリー乳化重合、シード乳化重合なども包括した広義の乳化重合を指す。
【0023】上記のモノビニル化合物(A)としては、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらのアルキル又はグリシジルエステル、無水マレイン酸およびそのアルキル誘導体、ビニルグリシジルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、アルキル置換スチレン等を挙げることが出来る。また、上記の化合物(B)としては、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、エチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジアクリレート等を挙げることが出来る。モノビニル化合物(A)及び化合物(B)の他、窒素原子を有する化合物やエチレンを共重合させてもよい。その場合、重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸カリウム−チオ硫酸ナトリウム等を使用することが出来る。
【0024】重合の際に使用する分散剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルキルアリル硫酸エステル塩などの陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、アルキルベタイン、アミンオキサイド等の両性界面活性剤が挙げられる。特にアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩で代表される陰イオン性界面活性剤が好適に使用される。上記の分散剤(界面活性剤)は、ポリエステルに架橋高分子粒子を配合する際、架橋高分子粒子の凝集を防ぎ分散性を良好とするので好ましい。
【0025】分散剤の使用量は、得られる架橋高分子粒子に対し、通常0.001〜0.2重量%、好ましくは0.005〜0.015重量%である。分散剤の使用量が0.001重量%未満の場合はポリエステル中での分散性が劣ることがあり、また、0.2重量%を超える場合は分散剤に起因する粗大異物が生成することがある。
【0026】本発明で使用する架橋高分子粒子は、ポリエステルの製造または成型時の高温においても実質的に不溶・不融の耐熱性を有する。具体的には、窒素ガス流通下300℃で30分間加熱処理した後の重量減少率は、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0027】本発明で使用する架橋高分子粒子の平均粒径は0.10〜0.50μmである。平均粒径が0.10μm未満の場合はフィルムの走行性や耐摩耗性が不十分であり、平均粒径が0.50μmを超える場合はフィルムの平坦性を損なうため磁気テープの出力低下を招く。架橋高分子粒子の平均粒径は、好ましくは0.20〜0.40μmである。
【0028】本発明で使用する架橋高分子粒子の粒径分布値(r)は1.3以下である。粒径分布値が1.3を超える場合は均一なフィルム表面が得られない。架橋高分子粒子の粒径分布値(r)は、好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下である。また、架橋高分子粒子は、多孔質または非多孔質の何れでもよいが、多孔質の方がポリエステルとの親和性により優れているので好ましい。
【0029】本発明で使用する架橋高分子粒子のポリエステ中に配合されて延伸前の粒径比(走査型電子顕微鏡で観察される粒子の最大径と最小径の比)は、1.0〜1.2、好ましくは1.0〜1.1である。粒径比が1.2を超える場合は、フィルムの易滑性や耐摩耗性が不十分となる。
【0030】本発明で使用する架橋高分子粒子の延伸後の粒径比(フィルム中の粒子の最大径と最小径の比)は、通常1.1〜3.0、好ましくは1.1〜2.0、更に好ましくは1.15〜1.5である。特に、延伸応力の作用による変形度(延伸後の粒径比−延伸前の粒径比)が、通常0.1〜3.0、好ましくは0.1〜2.0、更に好ましくは0.1〜1.5である架橋高分子粒子が好ましい。変形度が1.1未満の場合は、延伸時の強い応力で架橋高分子粒子とポリエステルの界面でボイドが生成し、架橋高分子粒子が脱落し易くなり、また、変形度が3.0を超える場合は、架橋高分子粒子が変形し過ぎ、フィルム表面にシャープな突起を形成することが出来なくなる。
【0031】本発明で使用する架橋高分子粒子は、易変形性が得られる様に、その組成を選定するのが好ましい。すなわち、架橋高分子粒子のガラス転移温度が通常95℃以下、好ましくは85℃となる様に、共重合成分、特に化合物(A)を選定するのが好ましい。具体的には、その共重合成分のみで得られたホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である共重合成分を導入する。斯かる化合物としては、例えば、アクリル酸の炭素数が2〜4のアルキルエステル、メタクリル酸の炭素数が6〜12のアルキルエステルが挙げられる。
【0032】また、架橋高分子粒子の架橋度は、易変形性に大きな影響を与えるが、耐熱性が許容される範囲で低くするのが好ましい。具体的には、共重合対中の(B)成分の重量比は、通常0.5〜20%、好ましくは1〜15%とするのがよい。
【0033】架橋高分子粒子のポリエステル中における含有量は0.1〜0.3重量%である。含有量が0.1重量%未満の場合はフィルムの滑り性や耐摩耗性が不十分でり、0.3重量%を超える場合はフィルムの表面粗度が大きくなり過ぎて電磁変換特性が低下する。架橋高分子粒子のポリエステル中における含有量は、好ましくは0.15〜0.2量%である。
【0034】本発明のフィルムは、自乗平方根粗度(RMS)、平均粗度(Ra)、最大粗度(P−V)の3つの物性について、下記式(1)〜(3)を同時に満足する必要がある。
【0035】
【数2】
0.005≦RMS≦0.010μm (1)
0.005≦Ra≦0.010μm (2)
0.100≦P−V≦0.140μm (3)
【0036】自乗平方根粗度(RMS)、平均粗度(Ra)、最大粗度(P−V)の何れかが上記の下限未満の場合は、フィルムの取り扱い性、巻き特性、磁気テープとした際の走行性が不十分となる。一方、自乗平方根粗度(RMS)、平均粗度(Ra)、最大粗度(P−V)の何れかが上記の上限を超える場合は、磁気テープの電磁変換特性が悪化する。
【0037】本発明のフィルムは、縦方向のF5値(F5MD)と横方向のF5値(F5TD)について、下記式(4)又は(5)同時にを満足する必要がある。F5値の単位はMPaである。
【0038】
F5MD−F5TD≧40 (4)
140≦F5MD≦160 (5)
【0039】上記の条件を満足することにより、特に薄膜化した際のフィルム特性が良好となる。すなわち、例えば長時間磁気テープ用のベースフィルムにおいてフィルムの強度が不足する場合は、磁気テープを多数回繰り返し走行させるとテープの走行性および電気特性が劣化し、テープの耐久性が劣る。
【0040】縦方向または縦および横の両方に高強度なフィルムを得るためには、二軸延伸後、次工程の熱処理工程に共する前に再度延伸するという処方が採られる。この再延伸は、縦横いずれかの一方向に行うことも出来るし、また、両方向に行ってもよい。例えば、二軸延伸後に更に110〜120℃の温度で縦方向または縦横の両方向に1.05〜4.0倍の再延伸を行った後、熱処理する方法が採られる。この際、再延伸前熱固定、再延伸後弛緩、再延伸前後の微小倍率延伸などの手法を適宜採用することが出来る。
【0041】磁気記録媒体用ベースフィルムとして本発明のフィルムを使用する場合、磁性層との接着性を高めるため、フィルム表面に塗布層を設けてもよい。塗布層は、フィルム製造工程内で設けてもよいし、フィルム製造後に塗布してもよい。特に塗布厚さの均一性や生産効率の点で、フィルム製造工程内の縦方向延伸後、横延伸工程の前に塗布する方法が好ましい。
【0042】塗布剤としては、磁性層との接着性に優れるとの観点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の樹脂およびこれらの樹脂の共重合体や混合体などが好適である。これらの中では、ポリエステル系樹脂が特に好ましい。また、ブロッキングによるフィルムの取り扱い性低下を防止するため、塗布層中に架橋成分を配合することが好ましい。架橋成分としては、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、アジリジン系、オキサゾリン系等の架橋剤が挙げられる。
【0043】本発明で使用する塗布剤は、水を媒体とする塗布剤であることが好ましい。水を媒体とする塗布剤は、界面活性剤などによって強制分散化した塗布剤であってもよいが、好ましくは、ポリエーテル類の様な親水性のノニオン成分や四級アンモニウム塩の様なカチオン性基を有する自己分散型塗布剤であり、更に好ましくは、アニオン性基を有する水溶性または水分散型樹脂塗布剤である。特に高速ダビング装置に使用されるビデオパンケーキ用の磁気記録媒体ベースフィルムの場合は、上記の塗布剤による易接着処理を施して磁性層の剥離を防止することが品質を高めるのに有効である。
【0044】なお、本発明においては、製膜に供するポリエステル全量に対し、10重量%程度以下の他のポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリイミド等)を配合させることが出来る。また、必要に応じ、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等の添加剤を配合してもよい。
【0045】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における種々の物性および特性の測定法、定義は下記の通りである。実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0046】(1)酸化アルミニウムの平均粒径:島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)で測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径とした。
【0047】(2)架橋高分子粒子の平均粒径および粒径分布値(r):電子顕微鏡にて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径とした。なお粒径分布値(r)は下記式から算出した。
【0048】
【数3】粒径分布値(r)=d25/d75(上記式中、d25、d75、は粒子群の積算体積を大粒子側から計測し、それぞれ総体積の25%、75%に相当する粒径(μm)を示す。)
【0049】(3)重量減少率:島津製作所製熱分析装置(DT−20Bs)を使用し、窒素ガス流下(200ml/分)室温から10℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し、300℃−30分間保持した後の重量減少率を求めた。
【0050】(4)ガラス転移温度:示差走査熱量測定装置(デュポン製 DSC-Thermal Analyst 200型)を使用し、16℃/分の昇温速度で昇温したときのDSC曲線の熱量変化開始点をガラス転移温度とした。
【0051】(5)粒径比(走査型電子顕微鏡で観察される粒子の最大径と最小径の比):走査型電子顕微鏡にてポリエステルに配合する前の粒子を観察し、粒子の最大径と最小径を求めその比を算出した。少なくとも100個の粒子についてこの値を求め、その相加平均を粒径比とした。
【0052】(6)延伸後の粒径比(フィルム中の粒子の最大径と最小径の比):透過型電子顕微鏡(TEM)によるフィルム断面の観察にて行った。すなわち、硬化剤と硬化促進剤を配合したエポキシ樹脂にフィルムサンプルの小片を包埋処理し、ウルトラミクロトームにて200nmの切片を作成し、観察用サンプルとした。日立(株)製透過型電子顕微鏡(H−9000)を使用し、観察用サンプルについてのフィルム長手方向の断面顕微鏡写真を撮影し、粒子毎の最大径と最小径を求め、その比を算出した。少なくとも100個の粒子についての値を求め、相加平均して粒径比を求め、粒子変形度とした。
【0053】(7)フィルムの極限粘度:フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100ml中にフィルム1gを溶解し、30℃で測定した。
【0054】(8)フィルムの表面粗度:直接位相検出干渉法(いわゆるマイケルソンの干渉を利用した2光束干渉法)を使用した非接触表面形状計測システム(マイクロマップ社製 Micromap512)により、自乗平方根粗度(RMS)、平均粗度(Ra)、最大粗度(P−V)を計測した。なお、測定波長は554nmとし、対物レンズの倍率は20倍として20視野計測し、平均値を求めた。
【0055】(9)フィルムのF5値:引張試験機((株)インテスコ製「デル2001型」)を使用し、引張速度50mm/min.の条件下、長さ50mm、幅15mmのサンプル片を引っ張り、得られたS−S曲線から5%伸長時の荷重を読み採り、次式に従ってF5値を算出した。
【0056】
【数4】F5(MPa)=5%伸長時の荷重/試験片の断面積【0057】(10)フィルムの滑り性:フィルムの滑り性により評価した。滑り性は、固定した硬質クロムメッキ金属ロール(直径6mm)に巻き付け角(θ)135°でフィルムを接触させ、53gの荷重を一端に掛け、1m/min.の速度でフィルムを走行させ、他端の抵抗力(T1、g)を測定し、次式により走行中の摩擦係数(μd)を求めた。
【0058】
【数5】μd=0.424・ln(T1/53)
【0059】(11)耐摩耗性(白粉発生量により評価):固定した直径6mmの硬質クロム製固定ピンに巻き付け角135°でフィルムを接触させ、速度10m/min.、張力200gでフィルムを1000mに亘って走行させ、ピンに付着した摩耗白粉量を目視評価し、下に示すランク別に評価を行った。
【0060】
【表1】
ランクA:白粉が全く付着しない。
ランクB:白粉が微量付着する。
ランクC:少量(ランクBよりは多い)白粉が付着する。
ランクD:極めて多く白粉が付着する。
【0061】(12)カレンダー汚れ:以下の方法で調製した磁性塗料をフィルムに塗布した後、塗料が十分乾燥固化する前に磁気配向させた後に乾燥し、膜厚2μmの磁性層を形成して磁気テープを得た。次いで、鏡面仕上げの金属ロールとポリエステル系複合樹脂ロールとから構成されている5段の小型テストカレンダーを使用し、ロール温度80℃、線圧250Kg/cm、走行速度80m/min.の条件下、5000mの磁気テープを7回繰り返し走行させ、樹脂ロールに付着する白粉量を目視評価し、以下に示すランク別に評価を行った。
【0062】<磁性塗料の調製>磁性微粉末100重量部、ポリウレタン樹脂15重量部、ニトロセルロース樹脂5重量部、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体5重量部、酸化アルミ粉末3重量部、カーボンブラック1重量部、レシチン2重量部、メチルエチルケトン100重量部、メチルイソブチルケトン100重量部、トルエン100重量部、ステアリン酸2重量部をボールミルにて48時間混合分散した後、ポリイソシアネート6重量部を添加して調製した。
【0063】
【表2】
○‥‥樹脂ロールに白粉の付着はほとんど見られない。
△‥‥極僅かな白粉の付着が見られる。
×‥‥明らかに白粉の付着が見られる。
【0064】(13)電磁変換特性(VTRヘッド出力):上記のカレンダー処理テープを8mm幅にスリットした後、市販のHi−8用VTR(SONY社製EV−BS3000)を使用し、次の要領で電磁変換特性を評価した。すなわち、シンクロスコープにより測定周波数7メガヘルツにおけるVTRヘッド出力を測定し、基準テープと比較して以下に示すランク別に評価を行った。
【0065】
【表3】
◎‥‥基準テープより非常に優れる。
○‥‥基準テープと同等である。
△‥‥基準テープより劣る。
×‥‥明らかに基準テープより劣り、実用に耐えない。
【0066】(14)ドロップアウト数:上記のカレンダー処理テープを8mm幅にスリットした後、市販のHi−8用VTR(SONY社製EV−BS3000)を使用し、次の要領でドロップアウト数を評価した。すなわち、7メガヘルツの信号を記録したビデオテープを再生し、大倉インダストリー(株)ドロップアウトカウンターでドロップアウト数を20分間測定し、良好なものを「A」、不良であり実用に耐えないものを「C」、「A」及び「C」の中間的なものを「B」とした。
【0067】(15)耐久性:ビデオデッキに前記の磁気テープをかけて400回繰り返し走行試験を行い、その際のテープの走行状態とテープの変形状態を評価し、良好なものを「○」、やや不良なものを「△」、不良なものを「×」とした。
【0068】(16)耐擦り傷性:幅8mmにスリットした磁気テープを直径6mmの硬質クロムメッキ金属ピン(仕上げ3S)に巻き付け角135°で接触させ、走行速度4m/sec.、張力50gで磁気テープのベースフィルム面を1回擦過させた。その後、擦過面にアルミニウムを約500Å厚となる様に真空蒸着し、傷の量を目視により観察し、以下に示すランク別に評価を行った。
【0069】
【表4】
ランク1:傷の量が極めて多い。
ランク2:傷の量が多い。
ランク3:傷の量が2と4の中間である。
ランク4:傷の量が少ない。
ランク5:傷が着かない。
【0070】実施例1<架橋高分子粒子の製造>脱塩水1500重量部に水溶性重合開始剤として過硫酸カリウム3.2重量部と分散安定剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社「エマールO」)0.004重量部を添加して均一に溶解させた後、エチレングリコールモノメタクリレート65重量部、メチルメタクリレート5重量部およびジビニルベンゼン30重量部の混合溶液を加えた。次いで、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら70℃−8時間重合反応を行った。反応率は98%であり、得られた架橋高分子粒子の平均粒径は0.28μm、粒径分布値は1.05、重量減少率は5.1%、ガラス転移温度は110℃、粒径比は1.03であった。得られた架橋高分子粒子の水スラリーにエチレングリコール2000重量部を加え、加熱減圧下で水を留去し、エチレングリコールスラリーとした。
【0071】<酸化アルミニウム粒子の製造>無水塩化アルミニウムを火焔加水分解し、平均粒径0.18μmのδ型酸化アルミニウム粒子を得た。エチレングリコール600重量部に酸化アルミニウム粒子30重量部を加えてエチレングリコールスラリーとした。
【0072】<ポリエステルフィルムの製造>ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール60重量部および酢酸マグネシウム四水塩0.09重量部を反応器に採り、加熱昇温すると共にメタノールを留去してエステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃まで昇温し、実質的にエステル交換反応を終了させた。次いで、架橋高分子粒子0.15重量部および酸化アルミニウム粒子0.4重量部をエチレングリコールスラリーとして添加し、更に、リン酸0.03重量部、三酸化アンチモン0.01重量部を加えて重縮合反応を行い、極限粘度0.61のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0073】上記のポリエステルを乾燥後、285℃で押出機よりシート状に押し出し、静電印加冷却法を使用して無定形シートを得た。次いで、縦方向に90℃で4倍延伸した後、テンターで横方向に100℃で3.5倍延伸した後、再度、130℃で縦方向に1.3倍延伸し、最終的に200℃で熱固定し、厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを得、その特性を評価した。更に、得られたフィルムに磁性層を塗布して磁気テープを得、特性を評価した。結果を表5に示す。
【0074】実施例2実施例1において、製膜条件を変更したこと以外は、実施例1の方法と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム及び磁気テープを得、それぞれの特性を評価した。製膜は次の様に行った。すなわち、85℃で縦方向に2.3倍、更に、同一方向に110℃で1.3倍延伸した後、テンターで横方向に140℃で3.5倍延伸し、150℃で熱固定した、次いで、再度、130℃で縦方向に1.3倍、140℃で横方向に1.2倍延伸し、最終的に200℃で熱固定し、厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。結果を表5に示す。
【0075】実施例3実施例1において、過硫酸カリウム量を2.5部とし、合成重合時間を8.5時間とすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径0.30μm、粒径比1.04、粒度分布値1.06の架橋高分子粒子を得た。そして、架橋高分子粒子0.15重量部、酸化アルミニウム粒子0.4重量部をそれぞれエチレングリコールスラリーとして添加すること以外は、実施例1方法と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム及び磁気テープを得、それぞれの特性を評価した。結果を表5に示す。
【0076】比較例1実施例1において、平均粒径0.28μm、粒径分布値1.05,粒径比1.03の架橋高分子粒子0.15重量部のエチレングリコールスラリーのみを添加すること以外は、実施例1方法と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム及び磁気テープを得、それぞれの特性を評価した。結果を表6に示す。
【0077】比較例2実施例1において、平均粒径0.18μmのδ型酸化アルミニウム粒子0.4重量部のエチレングリコールスラリーのみを添加すること以外は、実施例1方法と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム及び磁気テープを得、それぞれの特性を評価した。結果を表6に示す。
【0078】比較例3実施例1において、過硫酸カリウムの使用量を1.5重量部とし、合成重合時間を9時間とすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径0.55μm、粒径分布値1.04、粒径比1.05の架橋高分子粒子を得た。そして、架橋高分子粒子0.15重量部、平均粒径0.18μmの酸化アルミニウム粒子0.4重量部をそれぞれエチレングリコールスラリーとして添加すること以外は、実施例1方法と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム及び磁気テープを得、それぞれの特性を評価した。結果を表6に示す。
【0079】比較例4実施例1において、製膜条件を変更したこと以外は、実施例1の方法と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム及び磁気テープを得、それぞれの特性を評価した。製膜は次の様に行った。すなわち、縦方向に90℃で3.8倍延伸した後、テンターで横方向に100℃で3.8倍延伸し、最終的に200℃で熱固定し、厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。結果を表6に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、磁気記録媒体としての巻き特性、走行性および電気変換特性を高度に満足でき、フィルム製造時および磁気記録媒体製造時において、耐突出変形性、耐摩耗性、ドロップアウト発生防止の点で優れており、擦り傷や摩耗粉の発性が極めて少なく、しかも、生産性およびコスト面で優れた二軸配向ポリエステルフィルムが提供され、本発明の工業的価値は大きい。
【出願人】 【識別番号】000108856
【氏名又は名称】三菱化学ポリエステルフィルム株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝四丁目2番3号
【出願日】 平成13年6月19日(2001.6.19)
【代理人】 【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
【公開番号】 特開2003−11216(P2003−11216A)
【公開日】 平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願番号】 特願2001−184853(P2001−184853)