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【発明の名称】 研磨フィルム
【発明者】 【氏名】堀 弥一郎
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

【氏名】小口 清
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

【氏名】井沢 秀樹
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

【要約】 【課題】粗研磨から仕上げ研磨までの複数の研磨工程において、複数の研磨フィルムを用いることなく、一枚の研磨フィルムで複数の研磨工程を行うことができ、研磨工程ごとに研磨フィルムを交換する煩わしさがない研磨フィルムを提供すること。

【解決手段】基材フィルム2と、複数の研磨層が積層されてなる研磨体3と、からなることに特徴を有する研磨フィルムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材フィルムと、複数の研磨層が積層されてなる研磨体と、からなることを特徴とする研磨フィルム。
【請求項2】 前記研磨体は、それぞれ研磨レートの異なる研磨層から構成され、研磨レートの小さい研磨層から順番に、基材フィルム側から研磨フィルムの表面へ向かって積層されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨フィルム。
【請求項3】 光ファイバコネクタの端面研磨に使用されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨フィルム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバコネクタの端面研磨などに使用される研磨フィルムに関し、さらに具体的には、複数の研磨層が積層されてなる研磨体が設けられた研磨フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバコネクタの端面や、FD(フレキシブルディスク)、HD(ハードディスク)、半導体ウエハ、磁気ヘッド、感光ドラム等の研磨に使用される研磨フィルムとしては、基材フィルムと、その基材フィルム上に少なくとも研磨材粒子およびバインダーから形成されてなる研磨層とを有した研磨フィルムが広く知られ、使用されている。
【0003】そして、例えば、光ファイバコネクタの端面を研磨する際にあっては、粗研磨から仕上げ研磨に至るまで、数回の研磨工程を行うのが普通である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、粗研磨から仕上げ研磨に至るまでに数回の研磨工程を行う場合においては、それぞれの研磨工程に応じた研磨レートを有する複数の研磨フィルムを用いる必要があり、研磨フィルムの交換が煩わしかった。
【0005】特に、光ファイバコネクタの端面を研磨する場合においては、研磨の精度が重要であり、また品質を安定させるために研磨レートの異なる研磨工程を複数回行う必要があるため、研磨フィルムの交換の煩わしさが特に問題となっており、光ファイバコネクタの生産効率にも悪影響を及ぼしていた。
【0006】本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、粗研磨から仕上げ研磨までの複数の研磨工程において、複数の研磨フィルムを用いることなく、一枚の研磨フィルムで複数の研磨工程を行うことができる研磨フィルムを提供することを主目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の研磨フィルムは、基材フィルムと、複数の研磨層が積層されてなる研磨体と、からなることに特徴を有する。
【0008】この発明によれば、研磨フィルムは、基材フィルムと、複数の研磨層が積層されてなる研磨体とから構成されているので、積層されているそれぞれの研磨層に応じた研磨を行うことができる。その結果、研磨フィルムを交換する手間を省略することができる。
【0009】請求項2に記載の研磨フィルムは、前記研磨体が、それぞれ研磨レートの異なる研磨層から構成され、研磨レートの小さい研磨層から順番に、基材フィルム側から研磨フィルムの表面へ向かって積層されていることに特徴を有する。
【0010】この発明によれば、研磨フィルムにおける研磨体は、それぞれ研磨レートの異なる研磨層から構成されているので、一枚の研磨フィルムで異なった研磨レートによる研磨を実現することができる。さらに、この発明の研磨体は、研磨レートの小さい研磨層から順番に、基材フィルム側から研磨フィルムの表面へ向かって積層されているので、一枚の研磨フィルムを、複数の研磨工程における研磨フィルムとして用いることができる。したがって、例えば、粗研磨から仕上げ研磨までの一連の研磨作業を、研磨フィルムを交換することなく、本発明の研磨フィルム一枚で行うことができる。
【0011】請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の研磨フィルムにおいて、光ファイバコネクタの端面研磨に使用されることに特徴を有する。
【0012】この発明によれば、複数の研磨層が積層されてなる研磨体を有する研磨フィルムが、光ファイバコネクタの端面研磨に使用されるので、数種類の研磨フィルムを用いて研磨される光ファイバコネクタの端面研磨工程において使用する研磨フィルムの枚数を減少させることができる。これにより、研磨フィルムの交換の煩わしさを解消することができるとともに、光ファイバコネクタの生産効率を向上させることもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の研磨フィルムについて図面を参照しつつ説明する。
【0014】図1は、本発明の研磨フィルムの構成を説明するための概略断面図である。図1に示すように、本発明の研磨フィルム1は、基材フィルム2と、複数の研磨層3a、3bが積層されてなる研磨体3とから形成されるものであり、特に、本発明の研磨フィルム1の特徴とするところは、被研磨材を研磨するための研磨体3を複数の研磨層3a、3bから形成したところにある。
【0015】こうした特徴を有する本発明の研磨フィルム1を使用することによって、異なる研磨レートの研磨を一枚の研磨フィルムで行うことができる。その結果、粗研磨工程から仕上げ研磨工程に至るまでに使用する研磨フィルムの枚数を減少させることができるため、研磨フィルムの交換の煩わしさを解消することができるとともに、研磨工程の効率化を図ることができる。
【0016】研磨フィルム1の適用対象としては、図2に示すように、光ファイバ12及びフェルール13からなる光ファイバコネクタ11を特に好ましく挙げることができる。なお、光ファイバコネクタ11に限らず、半導体ウエハ、金属、セラミックス、カラーフィルター(液晶表示用等)、プラズマディスプレイ、光学レンズ、磁気ディスクあるいは光ディスク基板、磁気ヘッド、光学読取ヘッド等の精密部品等に対しても好ましく適用できる。また、これらに限定されず、一般部品等に適用してもよい。
【0017】ここで、本発明の研磨フィルム1が光ファイバコネクタ11等の端面、または表面の研磨に好ましく使用される理由は、従来から光ファイバコネクタ端面を研磨する際には、粗研磨工程から仕上げ研磨工程に至るまで多くの研磨工程があり、それぞれ研磨レートの異なる研磨フィルムを用いる必要があるため、これらを適宜交換することが煩わしいといった問題が特に生じていたからである。
【0018】以下、本発明の研磨フィルム1の構成について詳しく説明する。
【0019】研磨フィルム1は、幅が広い長尺シート状、幅が狭い長尺帯状、四角形状、円形状等、どのような形状であってもよい。こうした研磨フィルム1の具体的な使用態様については、適用される対象および研磨装置に応じて適宜形状を特定して使用することができる。特に、光ファイバコネクタ11を研磨する場合には、回転円盤式の研磨装置が通常使用されるので、円形状に加工された研磨フィルム1が好ましく使用される。
【0020】基材フィルム2には、機械的強度、寸法安定性、耐熱性等が要求される。基材フィルム用の材料としては、合成紙やプラスチックフィルムが適用される。例えば、ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリプロピレン、ポリカーボネート、アセチルセルロースジエステル、アセチルセルローストリエステル、延伸ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。基材フィルム2の厚さとしては、10〜188μm程度のものが好適である。
【0021】プライマー層は、本発明の研磨フィルム1においては必須の層ではなく、主に研磨体3と基材フィルム2との接着性を考慮して必要に応じて設けられるものである。こうしたプライマー層は、研磨体3の隣接層として基材フィルム2側に設けられる。プライマー層を形成することにより、被研磨材を研磨した際の研磨体3の剥離を防止することができる。プライマー層としては、従来公知の構成からなるプライマー層を適用可能であり、例えば、易接着プライマー層、シランカップリング剤等の表面改質剤層(界面活性剤層)、蒸着層等とすることができる。なお、蒸着層としては、アルミニウム等の金属蒸着層、SiO2、Al23、TiO2等の金属酸化物蒸着層、ポリ尿素等の高分子薄膜蒸着層等を挙げることができる。
【0022】塗布、印刷または蒸着等によって形成できるプライマー層用の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系もしくはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ−プラスト系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂等からなる樹脂を構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーの一種ないしそれ以上をビヒクルの主成分とする組成物を挙げることができる。プライマー層は、そうしたプライマー層用材料からなる塗工液や印刷インキ等を調製し、基材フィルム2上に所定の厚さで塗布、印刷または蒸着して形成することができる。さらに、接着性を向上させるために、イソシアネート等の硬化剤を入れてもよい。
【0023】研磨体3は、基材フィルム2上に設けられるものであって、複数の研磨層3a、3bを積層することにより形成されるものである。以下に研磨体3を構成する研磨層(例えば、3a)について説明する。
【0024】研磨体3を構成する研磨層は、少なくとも研磨材粒子5および研磨層用バインダー6から形成されてなるものである。
【0025】ここで、研磨材粒子5については、固定砥粒作用に基づいた研磨を行うものでも、遊離砥粒作用に基づいた研磨を行うものであってもよい。
【0026】固定砥粒作用に基づいた研磨を行うものである場合には、その研磨剤粒子の種類は、特に限定されない。通常、被研磨材の種類や研磨の程度に応じて、研磨材粒子5の種類や粒子径が設定される。なお、粒子径は、通常、平均粒径で取り扱っている。使用される研磨材粒子5としては、例えば、ダイヤモンド、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化チタン、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、リチウムシリケート、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化鉄、酸化クロム、シリカ(酸化ケイ素)、酸化アンチモン等の無機固体粒子を挙げることができる。一般には、ダイヤモンドやアルミナ等が好ましく使用される。また、本発明の研磨フィルム1が特に好ましく適用される光ファイバコネクタ11に対しては、ダイヤモンドが特に好ましく使用される。
【0027】また、遊離砥粒作用に基づいた研磨を行うものである場合にも、その種類には特に限定されない。使用される研磨材粒子としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、ジルコニア、チタニア、セリア、炭酸カルシウム等の無機固体粒子を挙げることができる。これらの粒子は、ダイヤモンド粒子に比べて安価であるので、研磨フィルム1のコスト削減を達成することもできる。
【0028】固定砥粒作用に基づいた研磨を行う研磨材粒子5を用いた場合の研磨層用バインダー6は、研磨材粒子5を研磨層3中に固着させる役割を有するものである。このバインダー6としては、そうした作用を有するものであれば特に限定されず、一般的な研磨フィルムのバインダーとして採用されている各種のものを選択して適用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系またはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ−プラスト系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、その他の樹脂を構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマー、またはそれらのブレンド物、あるいは反応変性物等を使用することができる。そうした樹脂には、UV硬化性樹脂、EB硬化性樹脂も含まれる。本発明においては、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、UV硬化性樹脂、EB硬化性樹脂を特に好ましく使用できる。
【0029】また、遊離砥粒作用に基づいた研磨を行う研磨材粒子5を用いた場合の研磨層用バインダー6としては、シリコーン樹脂やシリコーン系樹脂のように、その構造中にシロキサン結合(Si−O結合)を有するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマー等を使用することができ、例えば、ポリシロキサンやその誘導体、その変性物、あるいはそのブレンド物、更にはそのモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマー等を使用することができる。具体的には、例えば、ポリシロキサンを構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーはもちろんのこと、そのポリシロキサンを構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーと、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系またはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ−プラスト系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、その他の樹脂を構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーとを混合してなるブレンド物、あるいは反応変性物等を使用することができる。そうした樹脂には、UV硬化性樹脂、EB硬化性樹脂も含まれる。
【0030】特に、本発明においては、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等のプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーと、ポリシロキサンのプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーとを混合してなるブレンド物あるいは反応変性物を使用することが好ましい。さらに詳しく説明すると、本発明においては、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等のプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーを主鎖とし、その側鎖にポリシロキサンのプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーを、例えばグラフト重合等によって反応させ、主鎖部分を有機性で構成し、側鎖部分をシロキサン結合からなる無機性で構成してなる有機無機複合ポリマー、そのプレポリマーもしくはオリゴマー等を使用することが望ましい。
【0031】本発明の研磨フィルムは、上記で説明してきた研磨材粒子5および研磨層用バインダー6とから少なくとも形成される研磨層が複数にわたり積層されてなる研磨体3を有することに特徴を有している。以下に、本発明の特徴である研磨体3について、および当該研磨体3を構成する各研磨層(例えば、3a、3b)同士の関係について説明する。
【0032】本発明の研磨フィルム1における研磨体3は、上記で説明した研磨層が複数積層されて構成されていればよく、これを構成する研磨層同士の関係を特に限定するものではない。従って、被研磨材の材質や研磨後の仕上げ程度等により、積層する研磨層同士の関係(例えば、積層する研磨層の数、研磨層中の研磨材粒子の種類や大きさ、バインダー樹脂の種類、及び研磨レート等の関係)を任意に決定することができる。
【0033】しかしながら、本発明の研磨体3を構成するそれぞれの研磨層(例えば、3a、3b)においては、それらの研磨レートは互いに異なっていることが好ましい。研磨レートの異なる研磨層を積層して研磨体3を構成することにより、本発明の研磨フィルム1は様々な研磨レートによる研磨を行うことができ、その結果、研磨レートごとに研磨フィルムを交換する煩わしさを解決することができる。
【0034】なお、研磨レートとは、研磨層が被研磨材を研磨することができる割合、または能力のことをいう。従って、研磨レートが大きい研磨層は、被研磨材の研磨面を効率よく研磨できるが、その分研磨面は粗くなるため粗研磨に適している。一方研磨レートが小さい研磨層は、研磨効率は悪いが被研磨材における研磨面を微細に研磨することが可能であるため仕上げ研磨に適している。
【0035】本発明の研磨フィルム1においては、それぞれの研磨層(例えば、3a、3b)は、研磨レートの小さい研磨層から順番に、基材フィルム側から研磨フィルムの表面へ向かって積層されていることが好ましい。つまり、図1に示す本発明の研磨フィルム1においては、研磨層3aの研磨レートは、研磨層3bの研磨レートよりも小さいことが好ましい。この理由は、以下に示す通りである。
【0036】すなわち、このように積層することにより、被研磨材を研磨する際には、まず研磨レートの大きい研磨層3bにより粗研磨を行うことが可能である。そして、研磨層3bにより被研磨材を研磨し続けることにより、当該研磨層3bは摩耗し、消滅することとなる。しかしながら、本発明の研磨フィルム1においては研磨層3bが摩耗により消滅した段階で、研磨層3bの下に積層されている研磨層3aが表面へ現れるため、当該研磨層3aにより被研磨材は、引き続き研磨されることとなる。この場合において、研磨層3aの研磨レートは研磨層3bの研磨レートよりも小さいため、研磨層3bにより粗研磨された被研磨材の研磨面を研磨層3aにより仕上げ研磨をすることができる。このように、本発明の研磨フィルム1における研磨体3を構成する研磨層を、研磨レートの小さい研磨層から順番に、基材フィルム側から研磨フィルムの表面へ向かって積層することにより、1枚の研磨フィルムにおいて粗研磨から仕上げ研磨までを行うことが可能となる。
【0037】次に、各研磨層(研磨層3a、3b)の研磨レートの調整について説明する。本発明の研磨フィルムにおいては、前記で説明したように、研磨レートの小さい研磨層から順番に、基材フィルム側から研磨フィルムの表面へ向かって積層するのがよいため、各研磨層(研磨層3a、3b)の研磨レートを調整する必要がある。
【0038】研磨層の研磨レートを調整する方法については、(1)研磨層中の研磨材粒子の種類、形状、粒径による調整、(2)研磨層用バインダーへの研磨材粒子の混合割合による調整、等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0039】(1)研磨層中の研磨材粒子の種類、形状、粒径による調整研磨体を構成するそれぞれの研磨層の研磨レートを調整する方法の1つとして、各研磨層中の研磨材粒子の種類を調整する方法がある。
【0040】例えば、図1に示すように、研磨層3aと3bとを積層してなる研磨体3を形成する場合には、被研磨材を粗研磨するために用いられるのが研磨層3bであり、仕上げ研磨をするために用いられるのが3aとなるので、粗研磨用の研磨層3bに含有される研磨材粒子を例えばアルミナとし、そのアルミナに比べて硬度の小さいシリカを仕上げ研磨用の研磨層3aに含有させることにより、アルミナとシリカの硬度は相違しているため、研磨層の研磨レートを調整することができる。このように、それぞれ硬度の異なる研磨材粒子を含有する研磨層を積層することにより、研磨体を構成するそれぞれの研磨層の研磨レートを調整することができる。
【0041】図1に示すように、研磨層を2層積層することにより研磨体を形成する場合におけるそれぞれの研磨材粒子の組み合わせとしては、前述したアルミナとシリカの他にも、粗研磨用の研磨層に含有される研磨材粒子を炭化ケイ素とし、仕上げ用の研磨層に含有される研磨材粒子をシリカとする組み合わせや、粗研磨用の研磨層に含有される研磨材粒子をアルミナとし、仕上げ用の研磨層に含有される研磨材粒子を酸化セリウムとする組み合わせが好ましい。
【0042】また、研磨材粒子の種類に関わらず、各研磨層に含有される研磨材粒子の形状により研磨レートを調整することも可能である。例えば、図1に示す粗研磨用の研磨層3bに含有する研磨材粒子の形状を多角形体とし、一方、仕上げ研磨用の研磨層3aに含有する研磨材粒子の形状を略球形とすることにより、それぞれの研磨材粒子が含有される研磨層の研磨レートを調整することができる。
【0043】さらに、各研磨層に含有される研磨材粒子の粒径により研磨レートを調整することも可能である。それは、研磨層に含有される研磨材粒子の粒径を大きくすることにより、被研磨材の研磨端面と研磨材粒子との接触確率が大きくなるため、研磨レートもその分だけ大きくなるからである。
【0044】例えば、図1に示すように、研磨層を2層積層することにより研磨体を形成する場合において、研磨層3aに含有される研磨材粒子の粒径を0.01〜1.0μmとし、研磨層3bに含有される研磨材粒子の粒径を前記研磨層3aに含有される研磨材粒子の粒径より大きく、かつ0.05〜10μmとすることで、研磨層3bを粗研磨用の研磨層として用いることができ、研磨層3aを仕上げ研磨用の研磨層として用いることができる。
【0045】本発明の研磨フィルムにおいては、研磨体を構成するそれぞれの研磨層に含有される研磨材粒子の粒径について特に限定することはなく、所望の研磨レートとなるように任意に決定することができる。
【0046】しかしながら、固定砥粒として作用する研磨材粒子を用いる場合には、その粒径は、0.01〜20μmの範囲内であることが好ましく、遊離砥流として作用する研磨材粒子を用いる場合には、その粒径は、0.01〜10μmの範囲内であることが好ましい。また、この範囲内においても、特に仕上げ研磨用の研磨層に含有される場合おいては、固定砥流として作用する研磨材粒子の粒径は0.01〜3.0μmとすることが好ましく、遊離砥流として作用する研磨材粒子の粒径は、0.01〜1.0μmとすることが好ましい。
【0047】(2)研磨層用バインダーへの研磨材粒子の混合割合による調整研磨体を構成するそれぞれの研磨層の研磨レートを調整する方法として、各研磨層中に含有される研磨剤粒子の混合割合を調整する方法がある。
【0048】例えば、図1に示す本発明の研磨フィルム1における粗研磨用の研磨層3bと仕上げ研磨用の研磨層3aにおいては、粗研磨用の研磨層3bに含有される研磨材粒子の含有割合を、仕上げ研磨用の研磨層3aに含有される研磨材粒子の含有割合よりも大きくすることにより、研磨層3bの研磨レートを研磨層3aの研磨レートよりも大きくすることができる。
【0049】それぞれの研磨層における具体的な混合割合については、特に限定されるものではなく研磨層用バインダー内に含有することができる範囲内で、目的とする研磨レートとなるように任意に選択することができる。例えば、研磨材粒子と研磨層用バインダーとの混合割合は、研磨材粒子:バインダー=20:80〜95:5の配合割合(重量%比)の範囲で、任意に選択することができ、粗研磨用の研磨層3bとする場合には、研磨材粒子:バインダー=40:60〜90:10とすることが好ましく、この研磨層3bの下層に設けられる仕上げ研磨用の研磨層3aは、上記研磨層3bの配合割合より小さい任意の配合割合とすることができる。
【0050】次に、研磨体を構成する研磨層の厚さについて説明する。
【0051】本発明の研磨フィルムにおいては、それぞれの研磨層の厚さは、その研磨層を用いて被研磨材を研磨する時間に対応して決定することが必要である。本発明の研磨フィルムは、積層された研磨層が研磨工程の際に摩耗消滅することにより、その直下に設けられた研磨層が表面へ現れることを利用して、一枚の研磨フィルムで研磨レートの異なる研磨を行うことを目的としている。従って、それぞれの研磨層の厚さは、その研磨層を用いる時間に対応しており、被研磨材の材質や研磨の程度に合わせて設定することが必要となる。
【0052】具体的には、例えば、図1に示す研磨フィルム1を光ファイバコネクタ端面の研磨の際に用いる研磨フィルムとすると、粗研磨用の研磨層3b(研磨材粒子としてアルミナを使用)の厚さを2μmとし、仕上げ研磨用の研磨層3a(研磨材粒子としてシリカを使用)の厚さを4μmとするのがよい。
【0053】それぞれの研磨層の厚さについては、研磨材粒子の種類や大きさ、それぞれの研磨層により研磨する時間、等を考慮して任意に決定することができるが、研磨層を積層してなる研磨体全体の厚さは10〜200μmとするのがよい。研磨体の厚さが10μmより薄い場合には、これを構成する各研磨層の厚さが非常に薄くなってしまい、実用性に乏しい場合があり、また研磨体の厚さが200μmよりも厚い場合には、研磨体としての強度が低下する場合があり、研磨中に研磨層が剥離したり脱落したりすることが生じやすくなる。
【0054】図1に示す研磨フィルム1の研磨体は、研磨層3aおよび研磨層3bの2つの研磨層から構成されているが、本発明の研磨フィルムは積層される研磨層の数は特に限定されず、2以上の研磨層を積層することも可能である。
【0055】このように、2以上の研磨層を積層することで、積層した分の研磨レートで研磨することができる研磨フィルムを形成することができる。その結果、粗研磨工程から仕上げ研磨工程の一連の研磨作業において、研磨フィルムの交換回数を減少できるため便利であり、研磨作業の効率を向上することもできる。
【0056】
【実施例】以下に、本発明の研磨フィルムついて、実施例と比較例を挙げて更に詳しく説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0057】(実施例1)図3に示すような本発明の研磨フィルム31を作成した。
【0058】厚さが75μmでその片面にはプライマー層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルム32として用いた。
【0059】研磨層用バインダー36として有機無機複合ポリマーの一種であるポリアルキルシロキサン樹脂溶液(メチルアルコール溶媒、固形分30重量%)20重量部に、研磨材粒子35として平均粒径0.010〜0.015μmのコロイダルシリカゾル80重量部を添加して、これらを混合、超音波分散した。その後、濾過精度1μmのフィルターで濾過して研磨層用塗工液(a)を作製した。
【0060】この塗工液(a)を、基材フィルム32のプライマー層が形成されている面(以下、プライマーコート面とする。)にグラビアリバースコート法により、乾燥時の厚さが4μmとなるように均一に塗布し、加熱乾燥して、さらに100℃、20分間の条件で加熱硬化させることで、基材フィルム上に研磨層34を形成した。
【0061】さらに、研磨層用バインダー39として有機無機複合ポリマーのポリアルキルシロキサン樹脂溶液(メチルアルコール溶媒、固形分30重量%)20重量部を用い、研磨材粒子38として平均粒径0.050〜0.100μmのコロイダルシリカゾル80重量部を添加して、これらを混合、超音波分散した。その後、濾過精度2μmのフィルターで濾過して研磨層用塗工液(b)を作製した。
【0062】この塗工液(b)を、すでに形成されている研磨層34上にグラビアリバースコート法により、乾燥時の厚さが1μmとなるように均一に塗布し、加熱乾燥して、さらに100℃、20分間の条件で加熱硬化させることで、基材フィルム2上に研磨層37を形成した。
【0063】このようにして研磨層34と37とが積層されてなる研磨体33を有する研磨フィルムを形成し、これを実施例1とした。
【0064】(実施例2)以下に示すような方法で実施例2を製造した。
【0065】厚さが75μmでその片面にはプライマー層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルムとして用いた。
【0066】研磨層用バインダーとして有機無機複合ポリマーのポリアルキルシロキサン樹脂溶液(メチルアルコール溶媒、固形分30重量%)20重量部を用い、研磨材粒子として平均粒径0.010〜0.015μmのコロイダルシリカゾル80重量部を添加して、これらを混合、超音波分散した。その後、濾過精度1μmのフィルターで濾過して研磨層用塗工液(c)を作製した。
【0067】この塗工液(c)を、基材フィルム2のプライマー層が形成されている面(以下、プライマーコート面とする。)にグラビアリバースコート法により、乾燥時の厚さが4μmとなるように均一に塗布し、加熱乾燥して、さらに100℃、20分間の条件で加熱硬化させることで、基材フィルム上に研磨層を形成した。
【0068】さらに、研磨層用バインダーとして有機無機複合ポリマーのポリアルキルシロキサン樹脂溶液(メチルアルコール溶媒、固形分30重量%)10重量部を用い、研磨材粒子として平均粒径0.050〜0.100μmのアルミナゾル90重量部を添加して、これらを混合、超音波分散した。その後、濾過精度1μmのフィルターで濾過して研磨層用塗工液(d)を作製した。
【0069】この塗工液(d)を、すでに形成されている研磨層上にグラビアリバースコート法により、乾燥時の厚さが1μmとなるように均一に塗布し、加熱乾燥して、さらに100℃、20分間の条件で加熱硬化させることで、基材フィルム上に研磨層を形成した。
【0070】このようにして研磨層とが積層されてなる研磨体を有する研磨フィルムを形成し、これを実施例2とした。
【0071】(実施例3)以下に示すような方法で実施例3を製造した。
【0072】厚さが75μmでその片面にはプライマー層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルムとして用いた。
【0073】研磨層用バインダーとして有機無機複合ポリマーのポリアルキルシロキサン樹脂溶液(メチルアルコール溶媒、固形分30重量%)30重量部を用い、研磨材粒子として平均粒径0.020〜0.030μmの酸化セリウム70重量部を添加して、これらを混合、超音波分散した。その後、濾過精度1μmのフィルターで濾過して研磨層用塗工液(e)を作製した。
【0074】この塗工液(e)を、基材フィルム2のプライマー層が形成されている面(以下、プライマーコート面とする。)にグラビアリバースコート法により、乾燥時の厚さが4μmとなるように均一に塗布し、加熱乾燥して、さらに100℃、20分間の条件で加熱硬化させることで、基材フィルム上に研磨層を形成した。
【0075】さらに、研磨層用バインダーとして有機無機複合ポリマーのポリアルキルシロキサン樹脂溶液(メチルアルコール溶媒、固形分30重量%)30重量部を用い、研磨材粒子として平均粒径0.050〜0.100μmのアルミナゾル70重量部を添加して、これらを混合、超音波分散した。その後、濾過精度1μmのフィルターで濾過して研磨層用塗工液(f)を作製した。
【0076】この塗工液(f)を、すでに形成されている研磨層(塗工液(e)による研磨層)上にグラビアリバースコート法により、乾燥時の厚さが1μmとなるように均一に塗布し、加熱乾燥して、さらに100℃、20分間の条件で加熱硬化させることで、基材フィルム上に研磨層を形成した。
【0077】このようにして研磨層とが積層されてなる研磨体を有する研磨フィルムを形成し、これを実施例3とした。
【0078】(比較例1)厚さが75μmでその片面にはプライマー層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを基材フィルムとして用いた。
【0079】研磨層用バインダーとして有機無機複合ポリマーのポリアルキルシロキサン樹脂溶液(メチルアルコール溶媒、固形分30重量%)30重量部を用い、研磨材粒子として平均粒径0.010〜0.015μmのコロイダルシリカゾル70重量部を添加して、これらを混合、超音波分散した。その後、濾過精度1μmのフィルターで濾過して研磨層用塗工液(g)を作製した。
【0080】この塗工液(g)を、基材フィルム2のプライマー層が形成されている面(以下、プライマーコート面とする。)にグラビアリバースコート法により、乾燥時の厚さが4μmとなるように均一に塗布し、加熱乾燥して、さらに100℃、20分間の条件で加熱硬化させることで、基材フィルム上に研磨層を形成し、これを比較例1とした。
【0081】(実験および結果)上記で作成した実施例1〜3及び比較例1の研磨フィルムをそれぞれ直径127mmの円形に打ち抜き、これらを用いて、光ファイバコネクタの端面の最終研磨を行った。ただし、評価に用いる光ファイバコネクタは、予め接着剤除去を施し、更に、平均粒子径9μm相当のダイヤモンド研磨フィルムによる研磨により球面研磨を施したものである。光ファイバコネクタ研磨機としては、精工技研製SFP−120Aを用いた。
【0082】結果を以下の表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】表1からも明らかなように、本発明の研磨フィルム(実施例1〜3)においては、研磨レートの異なる研磨層が積層されてなる研磨体を有しているため、これを用いて光ファイバコネクタの端面を研磨する際において、一枚で研磨層二枚分の研磨が可能であり、その結果、端面状態を良好なものとすることができた。また、コネクタ形状を調べるため、引込み量と曲率半径について調べたが、いずれも良好なものであった。さらに、反射減衰量についても測定したがいずれも良好なものであった。
【0085】一方、比較例1の研磨フィルムにおいては、複数の研磨層が積層されてなる研磨体を有していないため、光ファイバコネクタ端面を異なった研磨レートで研磨することができない。その結果、研磨後の端面には除去しきれない傷が残ってしまった。コネクタ形状や反射減衰量については、本発明の研磨フィルムと同様であった。
【0086】なお、光ファイバコネクタの端面状態は、光学顕微鏡(800倍)を用いて測定した。また、コネクタ形状については、ACCIS NC3000−TN(NTT−AT製)を用い、反射減衰量の測定には、JDS FITEL RM3750Bを用いた。
【0087】また、従来から行われる研磨工程(接着剤除去、球面形成工程、1次研磨工程、2次研磨工程、仕上げ研磨工程)と、実施例1〜3の研磨フィルムを使用した場合の研磨工程(1次研磨工程と2次研磨工程を省略することが可能)に要する時間を以下の表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】表2からも明らかなように、本発明の研磨フィルム(実施例1〜3)を用いた場合、従来からの工程において必要とされてきた1次研磨工程と2次研磨工程を省略することが可能であるため、大幅な工程時間の短縮が実現された。また、1次研磨工程と2次研磨工程においては、ダイヤモンド研磨フィルムを使用するのが従来からの工程であったため、これらの工程を省略することにより大幅なコストダウンをも実現できた。
【0090】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の研磨フィルムによれば、複数の研磨層が積層されてなる研磨体を有しているので、積層される各研磨層の研磨レートをそれぞれ異なった研磨レートとすることにより、一枚の研磨フィルムで研磨レートの異なる研磨をすることができる。その結果、研磨レートごとに研磨フィルムを交換する必要がなく、粗研磨工程から仕上げ研磨工程に至るまでの一連の研磨工程を一枚の研磨フィルムで行うことが可能となる。
【0091】このような研磨フィルムは、光ファイバ及びフェルールからなる光ファイバコネクタの端面研磨に特に好ましく適用されると共に、半導体ウエハ、金属、セラミックス、カラーフィルター(液晶表示用等)、プラズマディスプレイ、光学レンズ、磁気ディスクあるいは光ディスク基板、磁気ヘッド、光学読取ヘッド等の精密部品の表面、端面等に対する仕上げ研磨もしくは中間研磨または一般研磨を行う研磨フィルムに好適に適用できる。
【出願人】 【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号
【出願日】 平成13年8月29日(2001.8.29)
【代理人】 【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男 (外1名)
【公開番号】 特開2003−71729(P2003−71729A)
【公開日】 平成15年3月12日(2003.3.12)
【出願番号】 特願2001−259742(P2001−259742)