トップ :: B 処理操作 運輸 :: B24 研削;研磨




【発明の名称】 板状ワークの表面処理装置
【発明者】 【氏名】松原 亨
【住所又は居所】新潟県長岡市石動町字金輪525番地 マコー株式会社内

【要約】 【課題】板状ワークの並べ替えが不要で吹き飛びや落下を防止できる板状ワークの表面処理装置を提供する。

【解決手段】上方に複数の回動自在なローラ11−1,11−2,11−3……を配置したコンベア10上に板状ワーク1−1,1−2,1−3を載置し、常時1つ以上のローラで板状ワークをコンベア上に押圧しながら送り、送られている板状ワークにノズル13−1,13−2から砥粒を含むスラリーを噴射して表面処理をする。常時1以上のローラ11で保持されているので、ウェットブラスト中に板状ワーク1が飛ばされたり、落下したり、重なったり、向きを変えることを防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上方に配置した複数の回動自在なローラと、該ローラが常時1つ以上で板状ワークを押圧しながら送るコンベアと、送られている板状ワークに砥粒を含むスラリーを噴射して表面処理を行う砥粒投射手段と、を有することを特徴とする板状ワークの表面処理装置。
【請求項2】上記コンベアが、スラリーの通過が可能な網状であることを特徴とする請求項1記載の板状ワークの表面処理装置。
【請求項3】 板状ワークを常時2対以上のローラ対で挟みながら送る複数対の回転するローラ対と、送られている板状ワークに砥粒を含むスラリーを噴射して表面処理をする砥粒投射手段と、を有することを特徴とする板状ワークの表面処理装置。
【請求項4】 上記砥粒投射手段が複数で、スラリーを複数の方向から噴射し、板状ワークの表裏両面及び側面を処理可能であることを特徴とする請求項3記載の板状ワークの表面処理装置。
【請求項5】 上記ローラの少なくとも表面が、ウレタンゴム製又はNBR製であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の板状ワークの表面処理装置。
【請求項6】 上記板状ワークの表面処理装置の後に1以上の別の処理装置を有し、上記複数のローラ対の最後のローラ対が板状ワークを次装置のコンベア上へ渡すことを特徴とする請求項3記載の板状ワークの表面処理装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、板状をしたワークの表面処理に関するもので、特に、自動車のブレーキやクラッチなどに使用される摩擦部材のバックプレートの表面処理に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車のディスクブレーキパッド、ブレーキシュー、クラッチプレート等に使用される摩擦部材は、一般に、摩擦材に鉄系金属からなるバックプレートを一体に接着して形成されている。
【0003】これらの摩擦部材は、ディスクロータや相手側のクラッチプレートとの間に押しつけられた状態で相対的な移動が加えられ、その際の摩擦力で自動車を制動したり、エンジンの駆動力を車輪に伝達したりする。そのため、摩擦材とバックプレートとの間には、大きな剪断力が加わる。したがって、摩擦材とバックプレートとの間には、この剪断力に耐えることができるような強い接着力が必要である。
【0004】この目的に合った強い接着力を得るために、従来から、バックプレートの接着面を面粗度(中心線平均粗さ)Ra=1〜7μm程度に粗面化して接着面積を増加し、接着力を増大させることが行われている。また、バックプレートの接着面に錆や酸化膜等があると、接着力が低下する原因となることから、錆や酸化膜等の除去と防錆の双方の対策も重要である。
【0005】このような観点から、従来は、上記粗面化され、錆や酸化膜等が除去されたバックプレートに、3〜5μm程度の膜厚のリン酸亜鉛等の化成被膜を形成し、その上にプライマー剤を塗布・焼き付け、厚さ15〜25μm程度にプライマー層を形成していた。つまり、これら化成被膜とプライマー層とに防錆の役目を担わせていたのである。一方、摩擦材との接着は、上記プライマー層の上に新たな接着剤を塗布し、プライマー層と新たに追加された接着剤とで接着することになる。
【0006】ところで、バックプレートの面粗度が大きすぎると、プライマー層を形成したとき、プライマー層を突き抜ける部分ができ、ここから錆が発生して内部に達してしまう。反対に、面粗度が小さすぎると、接着力の向上が期待できない。そのためプライマー層を突き破るおそれのない範囲で最大の面粗度を得たい。この範囲が上述したRa=1〜7μm程度である。したがって、上記の各工程中、バックプレートの粗面化の工程は非常に重要である。そこで、この粗面化の従来方法を以下にさらに説明する。
【0007】バックプレートは鋼板などからプレスの打ち抜き加工などによって成形されるが、成形加工される前の鋼板の表面には、錆や酸化膜等が形成されている。また、打ち抜き加工等の際に、多量の潤滑油や防錆油が付着する。これら油分や酸化膜の存在は、接着力低下の原因となるので取り除きたい。
【0008】そこで、成形加工されたバックプレートは、まず、塩素系溶剤で脱脂処理され、防錆油等の油分が取り除かれる。そして、ドライグリッドブラスト法により、鋳鉄のグリッド粒子をロータ等でバックプレートにたたき付けて表面を上記のRa=1〜7μmの範囲に粗面化し、それと同時に酸化膜等を除去する。その後防錆のためのリン酸亜鉛等の化成被膜を形成し、その上にプライマー剤を塗布・焼き付けした後、接着剤により摩擦材を接着していた。
【0009】しかし、この方法は、粉塵の発生が非常に多いこと、及び、塩素系溶剤を用いているのでその廃液の処理の問題があった。そこで、ウェットブラスト法を用いる方法が採用されてきた。この方法は、ブラスト工程と脱脂工程とを一緒に行うことができる点でも有利である。
【0010】通常のウェットブラストは、水にアルミナ砥粒を混入したスラリーを用い、さらに、アルカリ脱脂剤を数%含有させている。一方、板状ワークはタンブラ内に投入し、タンブラを回転しつつスラリーを噴射する。ウェット法なので、粉塵は発生しない。それに、アルミナ砥粒は研削力が強く、短時間で所定の面粗度が得られ、かつ、アルカリ脱脂剤を混入しているので、脱脂もできるという優れた方法であった。
【0011】また、このタンブリングブラスト法は、板状ワークであるバックプレートの表裏両面は勿論、全側面や取付孔があればその内面までも処理することができるという利点も有している。
【0012】しかし、タンブラ内の板状ワークの向きはバラバラになり、次工程に送る場合に、人手によって1つ1つの板状ワークの向きを揃えてコンベアに載せかえなければならないので、省力化できず、能率が悪かった。
【0013】そこで、出願人等は、特開平11−286787号に記載の表面処理方法を提案している。これは、板状ワークをコンベアの上に向きを揃えて配置し、コンベアの上方からスラリーを噴射する方法である。このスラリーには、アルミナ砥粒ではなく、ステンレススチール又はチタンの粒子を用いている。
【0014】この方法によれば、板状ワークの並べ替えは不要となり、かつ、脆くて破損し易いアルミナ砥粒の代わりにステンレススチール等の粒子を用いるので、スラリーの寿命も大幅に長くなる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方法では、コンベア上に整列された板状ワークが、ブラストの圧力により、飛ばされたり、重なったり、落下したりするという問題があった。また、板状ワークの片面しかブラスト処理できない。また、コンベア上に載せるので、下側の面の脱脂にムラが生じる。という問題もあった。
【0016】本発明は、このような問題の解決を図ったもので、板状ワークの並べ替えが不要で吹き飛びや落下を防止できる板状ワークの表面処理装置を提供することを第1の目的としている。また、本発明は、第1の目的に加えて、板状ワークの全面をムラ無く処理できる板状ワークの表面処理装置を提供することを第2の目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の第1の目的を達成するために本発明の板状ワークの表面処理装置は、上方に配置した複数の回動自在なローラと、該ローラが常時1つ以上で板状ワークを押圧しながら送るコンベアと、送られている板状ワークに砥粒を含むスラリーを噴射して表面処理を行う砥粒投射手段と、を有することを特徴としている。上記コンベアが、スラリーの通過が可能な網状とすることが望ましい。
【0018】又は、板状ワークを常時2対以上のローラ対で挟みながら送る複数対の回転するローラ対と、送られている板状ワークに砥粒を含むスラリーを噴射して表面処理をする砥粒投射手段と、を有することを特徴としている。
【0019】また、上記第2の目的を達成するために、本発明の板状ワークの表面処理装置は、上記砥粒投射手段が複数で、スラリーを複数の方向から噴射し、板状ワークの表裏両面及び側面を処理可能であることを特徴としている。
【0020】上記ローラの少なくとも表面が、ウレタンゴム製又はNBR製である構成としたり、上記板状ワークの表面処理装置の後に1以上の別の処理装置を有し、上記複数のローラ対の最後のローラ対が板状ワークを次装置のコンベア上へ渡す構成とすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を図面によって説明する。図1は、本発明における板状ワークの表面処理装置の第1実施例を説明する図である。
【0022】プレス機により鋼板から打ち抜かれたバックプレートからなる板状ワーク1(1−1,1−2……)は、コンベア10に載って搬送されてくる。コンベア10の上には、複数のローラ11(11−1,11−2,………11−n)が、搬送方向に沿ってほぼ等間隔に配置されている。ローラ11は、図示しないバネ等により図の上下方向に変位可能であり、バネの付勢力で板状ワーク1をコンベア10に押しつけている。隣接するローラ11の間隔は、板状ワーク1の長さより長くない間隔で、少なくとも1つのローラ11が常に板状ワーク1に接触していて、板状ワーク1を常時コンベア10に押圧しているようになっている。
【0023】コンベア10は、スラリーの噴射を受けても摩耗したり、スラリーが溜まることのないように、ウレタンゴムで被覆された網状になっている。ウレタンゴム以外としては、NBRを用いることもできる。
【0024】ローラ11とローラ11との間には、スラリーを噴射するノズル13(13−1,13−2)が設けられている。そして、ここから下方のコンベア10に向かって砥粒の含まれたスラリーを噴射させ、コンベア10上の板状ワーク1の表面を所望の粗さに処理する。
【0025】板状ワーク1は常にローラ11とコンベア10との間で把持された状態になるので、スラリーの噴射圧で動いたり、コンベア10から落下したり、板状ワーク1同士で重なったりすることを確実に防止することができる。表面処理がされた板状ワーク1は、コンベア10上を移動し、次の、水洗や化成皮膜の形成といった処理がされる。
【0026】図2は本発明における板状ワークの表面処理装置の第2実施例を説明する図である。板状ワーク1は、前工程のコンベア20に載せられ、ウェットブラスト工程へと搬送されてくる。ウェットブラスト工程には、上下各1つのローラで1対となる複数のローラ対21(21−1,21−2………21−n)が設けられ、最後のローラ対21−nの右側には、次工程のコンベア22が配置されている。各ローラ対21は、上下のローラの間の距離が狭くなる方向にバネ付勢されており、ローラ対21間にバネの弾性で把持した板状ワーク1(1−1,1−2……)を図の左から右に向かって移動するような回転をしている。
【0027】図2では、板状ワーク1を3つの態様で表している。すなわち、前工程のコンベア20から最初のローラ対21−1に移動する状態のものを1−1として、複数のローラ対21−2,21−3,21−4間を移動中のものを1−2として、最後のローラ対21−nから次工程のコンベア22に移動中のものを1−3として示している。
【0028】板状ワーク1は、ウェットブラスト処理の後、水洗、化成皮膜処理、水洗、湯洗浄、乾燥、プライマー塗布、乾燥、焼き付け、接着剤の塗布、乾燥と、多くの工程で連続して処理されるが、これらの工程は、図2の次工程のコンベア22上で連続して行われる。
【0029】前工程のコンベア20上を図の左から右へと搬送されてきた板状ワーク1−1は、前工程のコンベア20の端部から突出すると間もなく最初のローラ対21−1に挟まれ、ウェットブラスト処理工程に入ってくる。そして、最後のローラ対21−nに至るまで、常時少なくとも2対のローラ対に挟まれながら、図の右方向に進み、次工程のコンベア22上へと移動していく。
【0030】ウェットブラスト処理工程には、複数のノズル23が設けられている。ローラ対21−2とローラ対21−3の間の上方には、ノズル23−1があり、ここから下方に向けて高圧のエアーとともに砥粒を含んだスラリーが噴射され、板状ワーク1−2の主として上面が表面処理される。また、次のローラ対21−3と21−4との間では、ノズル23−2により下方から上方に向けてスラリーが噴射され、板状ワーク1−2の主として下面が表面処理される。
【0031】板状ワーク1の左右両側面は、上記2つのノズル23−1,23−2によっても表面処理がされる。しかし、これでは不十分となる場合には、必要に応じて、板状ワーク1の両側部にノズルを配置して、これらのノズルから水平方向に噴射されるスラリーにより表面処理することになる。
【0032】板状ワーク1がスラリーの噴射を受けるとき、たとえば、板状ワーク1―2が、少なくともローラ対21−2と21−3の2対のローラに挟持されているように、常に2対以上のローラ対で挟持しているので、スラリーの噴射圧で板状ワーク1が吹き飛ばされたり、落下したり、向きが変わったりすることを確実に防止することができる。勿論、板状ワーク1同士が重なることもない。
【0033】以上の説明におけるノズル13,23の配置は、単なる一例に過ぎず、多様な配置が可能である。たとえば、図1の実施例では、斜め方向から噴射するノズル13を設けて板状ワーク1の側面を処理するようにしたり、図2の実施例では、1カ所に上下左右4方向のノズル23を配置して、板状ワーク1の全面を一度に処理するようにすることができる。或いは、同じ面を処理するノズルを複数箇所に配置してもよい。
【0034】板状ワーク1を把持するローラ11やローラ対21は、スラリーの噴射圧に耐えて鋼製の板状ワーク1をしっかりと把持する必要がある。また、各ローラにもスラリーの砥粒が噴射されるので、研磨作用を受けることになる。そこで、各ローラ対を構成するローラをウレタンゴム製又はNBR製とするか、あるいは、これらの厚い層で被覆したものを使用している。これらの素材は、適当な弾性があるので、スラリーで濡れた板状ワーク1でもしっかりと把持することができる。また、砥粒が衝突してもいわゆる「柳に風」のように衝突部分が弾性変形することで衝撃を吸収でき、砥粒による摩耗をほとんど受けないようにすることができる。
【0035】また、前工程のコンベア20から最初のローラ対21―1へと、また、最後のローラ対21−nから次工程のコンベア22へと前後の工程との間で連続的に受け渡していくが、板状ワーク1は、その間、向きを全く変更することなく、一定の向きを保って移動することができるので、各種の処理がし易くなる。
【0036】上記の実施例において、ノズル13,23としては、特開2000−263443号に記載されたようなフラットタイプのノズルを使用することができる。このフラットタイプのノズルは、直線的に伸びるスリット状の噴射口を有する。すなわち、このノズルによれば、スラリーが平らな膜状に噴射される。
【0037】噴射口の長さを板状ワーク1の幅より大きくし、かつ、板状ワーク1の送り方向と直交するように配置すれば、フラットノズルの前面を通過する板状ワーク1は、一方の端部から他方の端部まで万遍なくスラリーが吹き付けられ、均一な表面処理を受けることができる。また、スラリーが吹き付けられる部分が限定されるので、ローラなど周辺部をスラリーで研削することを防止できる。
【0038】板状ワーク1の幅方向ではどの位置も均等な噴射圧を受けるので、スラリーと垂直に当たる面の表面処理は勿論、スラリーと平行なワーク側面や垂直面に開けられた孔の内側面についても十分な表面処理を受けることができる。したがって、フラットノズルを使用すれば、水平方向に噴射するノズルは不要で、上下2つのノズルのみで十分となる。
【0039】
【発明の効果】以上に説明したように本発明の板状ワークの表面処理装置によれば、上方に配置した複数の回動自在なローラと、該ローラが常時1つ以上で板状ワークを押圧しながら送るコンベアと、送られている板状ワークに砥粒を含むスラリーを噴射して表面処理を行う砥粒投射手段と、を有するので、板状ワークがスラリーの噴射圧で移動したり、コンベアから落下したり、ワーク同士が重なったりすることを防止することができる。
【0040】板状ワークを常時2対以上のローラ対で挟みながら送る複数対の回転するローラ対と、送られている板状ワークに砥粒を含むスラリーを噴射して表面処理をする砥粒投射手段と、を有する構成としても、同様の効果を奏することができる。
【0041】上記コンベアが、スラリーの通過が可能な網状とすれば、スラリーがコンベア上に溜まることがなくなる。板状ワークを常時2対以上のローラ対で挟みながら送り、上記スラリーを複数の方向から噴射すれば、板状ワークの表裏両面及び側面を一工程で処理することができる。上記ローラの少なくとも表面が、ウレタンゴム製又はNBR製である構成とすれば、板状ワークの把持を確実にでき、スラリーの噴射による摩耗にも強いローラを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】591205732
【氏名又は名称】マコー株式会社
【住所又は居所】新潟県長岡市石動町字金輪525番地
【出願日】 平成13年9月10日(2001.9.10)
【代理人】 【識別番号】100099863
【弁理士】
【氏名又は名称】中倉 和彦
【公開番号】 特開2003−80458(P2003−80458A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−273230(P2001−273230)