| 【発明の名称】 |
ワイヤ工具 |
| 【発明者】 |
【氏名】島崎 裕
【氏名】榎本 俊之
【氏名】谷 泰弘
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| 【要約】 |
【課題】切削加工の高精度化・高能率化が可能で、しかも長尺で安価な長寿命のワイヤ工具を提供する。
【解決手段】ワイヤ本体(11a)表面上にプライマ層(11b)が設けられ、そのプライマ層(11b)上に樹脂(22a)を主成分とする混合被覆層(11d)が形成されており、また混合被覆層(11c)は光硬化性樹脂(22a)、添加物(22b)及び砥粒(22c)を含んでいる。そしてプライマ層(11b)に砥粒(22c)の一部が埋まることにより固定されるワイヤ工具である。本発明では光硬化性樹脂として迅速に光化学反応を起こして数秒以下で重合硬化し得るものを用いる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】ワイヤ本体表面上にプライマ層が設けられ、該プライマ層上に樹脂を主成分とする混合被覆層が形成されてなること、該混合被覆層が光硬化性樹脂、添加物及び砥粒を含み、しかも該プライマ層に該砥粒の一部が埋設されて固定されていること、及び該光硬化性樹脂は光化学反応を起こして数秒単位若しくはそれ以下の短時間で重合硬化し得るものであることを特徴とするワイヤ工具。 【請求項2】砥粒が30〜40マイクロメートル(μm)の直径を有する粒状物である請求項1に記載のワイヤ工具。 【請求項3】混合被覆層に添加する添加物が平均粒径0.1〜15マイクロメートル(μm)の金属粒子及び/又は平均粒径0.1〜15マイクロメートル(μm)の無機粉末であり、その添加量が5〜90wt%であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ工具。 【請求項4】ワイヤ本体上に樹脂を主成分とする混合被覆材により砥粒を固定したワイヤ工具において、該混合被覆材に添加した添加物は針状乃至繊維状であって、その短径が0.1〜15マイクロメートル(μm)、長径が1〜200マイクロメートル(μm)の金属ファイバ及び/又は無機ファイバを5〜90wt%添加したことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ工具。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えばシリコンインゴット、水晶、石英などの硬脆材料や金属材料を切断加工するための、樹脂を主な結合材としたワイヤ工具に係わり、特に切断加工の高精度化・高能率化を行うことができるワイヤ工具およびその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、シリコンインゴット、水晶、石英等の硬脆材料や金属材料の切断手段としてワイヤ工具が用いられているが、特に近年のシリコンウェハの大口径化にともない、シリコンウェハのインゴットからの切断手段として注目されている。シリコンインゴットの切断加工には、従来は内周刃による切断方式が適用されてきた。そして近年、半導体デバイスの生産コストの低減、適正化を図るために、シリコンウェハは大口径化の一途を辿っているが、そうしたウェハの大口径化に対しては、内周刃の大径化で対応してきた。しかし、特に8インチ以上のシリコンインゴットに対しては、スループットの向上に限界がある、カーフロス(Kerf-loss;切断ロス)が大きい、切断ジグへの内周刃のセッティングが困難である等の理由により、切断方法は内周刃切断方式からマルチワイヤ切断方式に置き換わりつつある。 【0003】従来行われてきたワイヤによるシリコンインゴットの切断加工は、図3(「電子材料」Vol.35,No.7,1996年7月号、第29頁)に示されるように、ピアノ線等のワイヤ1の新線リール2から巻取りローラ5までの所定経路中に、ダンサローラ3および複数のメインローラ4等を設けて、インゴット6に近接する所定ピッチのワイヤ列を形成するもので、スラリーノズル7から高粘度の研磨剤スラリーを供給するとともに、インゴット6をそのワイヤ列に押し付けることにより、インゴット6の切断を行う、という遊離砥粒加工である。しかしながら、遊離砥粒加工法ゆえに、多量の産業廃棄物(廃液)を生じる、作業環境が極めて悪い、ランニングコストが高い、切断後のウェハ洗浄が難しい、加工能率の向上が望めない、さらには切断精度が悪いなどの欠点があった。 【0004】これらの問題を解決するものとして、ワイヤに砥粒を固着させたワイヤ工具、すなわち固定砥粒ワイヤ工具があり、すでに電着ワイヤ工具(特開昭63−22275号公報、特公平4−4105号公報、特開平7−227767号公報あるいは特開平9−150314号公報等参照)やピアノ線自体に砥粒を機械的に埋め込む製造法によるもの(商品名ワイヤモンド、住友電気報昭和63年3月第132号、P.118−122)が開発されている。これらは、いずれも砥粒を固着する結合材としては金属を用いている。 【0005】ところが、金属を結合材として用いたワイヤ工具では、結合材層が硬いため、ワイヤ工具の破断ねじり強度や曲げ強度が低く、加工時に断線し易い、また、電着ワイヤ工具においては、電着に長時間要するため製造コストが高い、さらにマルチワイヤ切断方式に必要なワイヤ工具自体の長尺化が困難であるなどの品質上かつ経済上の問題があった。またワイヤの製造コストが高く、長尺化が困難であるという問題を回避するために、短尺ワイヤ工具の両端を接合したエンドレスタイプのワイヤ工具も試作されているが、接合部の破断ねじり強度、曲げ強度が極めて低いという問題がある。 【0006】そこで、これらの問題を解決するために、最近、樹脂を結合材に用いたワイヤ工具が開発されるに至っている。こうしたワイヤに砥粒を固着する結合材に樹脂を用いたワイヤ工具およびその製造方法としては、大阪ダイヤモンド工業が開発した固定砥粒ダイヤモンドワイヤソー(1997年度砥粒加工学会学術講演会講演論文集、P.369〜370)、特開平8−126953号公報、特開平9−155631号公報や特開平10−138114号公報、特開平10−151560号公報、特開平10−315049号公報、特開平10−328932号公報、特開平10−337612号公報に記載のものが知られている。これらのワイヤ工具では、樹脂の種類については特に限定はしていないが、発表内容、実施例などからわかるように、実際には研削砥石において従来使用されてきたフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように改善されたワイヤ工具にあっても、熱硬化性樹脂を結合材に用いていることから、溶媒を除去するための乾燥工程と結合材を硬化させるための焼成工程を必要とし、また焼成に要する時間も全てのワイヤ工具箇所において数分ずつ要してしまう。したがってワイヤ工具の高速な製造、例えば毎分数百メートル〜数キロメートルの速度での製造は難しく、マルチ切断方式に必要な10キロメートル以上の長尺なワイヤ工具を安価に製造することは極めて困難である。 【0008】さらに、金属を結合材として用いたワイヤ工具に比較して、樹脂を結合材としたワイヤ工具は、結合材の耐磨耗性、機械的強度、耐熱性が低く、切断能率が劣るという問題がある。 【0009】本発明は、これらに着目してなされたもので、高寿命で切断加工の高精度化・高能率化が可能で、かつ長尺で安価なワイヤ工具およびその製造方法を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1の発明は、ワイヤ本体(11a)表面上にプライマ層(11b)が設けられ、該プライマ層(11b)上に樹脂(22a)を主成分とする混合被覆層(11d)が形成されてなること、該混合被覆層(11c、11d)が光硬化性樹脂(22a)、添加物(22b)及び砥粒(22c)を含み、しかも該プライマ層(11b)に該砥粒(22c)の一部が埋設されて固定されていること、及び、該光硬化性樹脂(22a)は光化学反応を起こして数秒単位若しくはそれ以下の短時間で重合硬化し得るものであること、を特徴とするワイヤ工具(11T)である。本発明に供する光硬化性樹脂は、紫外線や可視光線などの光が照射されると光化学反応を起こし、数秒単位あるいはそれ以下で重合硬化するもので、光ファイバの被覆などに用いられているものである。この光硬化性樹脂を結合材として用いた場合、光ファイバでの製造スピードである毎分数百メートル〜数キロメートルでの製造が可能であり、安価で長尺なワイヤ工具の提供が可能となる。 【0011】ワイヤの素材としては、特に限定されるものではなく、ピアノ線、黄銅被覆ピアノ線、ステンレス鋼線といった金属線や非金属であるガラス繊維のような無機化合物による線状物、ナイロンの如き有機化合物による繊維(線)またはそれらの撚糸 (紐、コード)などが挙げられる。プライマ層にはワイヤ本体と混合被覆層との接着力を高める材料が選択される。例えばシランカップリング剤等の化学的プライマである。また、本発明では、金属粒子と無機粉末粒子のうち少なくとも一方を添加物として、該添加物を光硬化性樹脂からなる結合材に所定重量%だけ添加している。 【0012】請求項2の発明は、請求項1記載ワイヤ工具において、砥粒のサイズを特定したものであって、例えば、ダイヤモンド砥粒では、集中度20に該当する30〜40マイクロメートル(μm)のものを微量のエチルアルコールで湿潤して用いる。砥粒としては、ダイヤモンド以外に、立方晶型窒化硼素、アルミナ、炭化珪素などの硬質砥粒を用いることができる。 【0013】請求項3の発明は、例えば、ワイヤ軸線方向に走行させながら、平均粒径が0.1〜15マイクロメートル(μm)の金属粒子および/または平均粒径が0.1〜15マイクロメートル(μm)の無機粉末を5〜90wt%含有する光硬化樹脂(但し、この光硬化性樹脂は紫外線又は可視光線が照射されると光化学反応を起こし、数秒単位若しくはそれ以下で重合硬化し得るものである。)と砥粒との混合溶液をワイヤ表面に塗布することにより達成できる。通常、塗布後に混合溶液を乾燥させて、光硬化処理を経て所定の膜厚とワイヤ工具の寸法・形状を調整する。 【0014】ワイヤ工具において、樹脂単体で結合材を構成した場合、特に熱硬化性樹脂よりも一般に耐熱性や機械的強度が劣ると考えられる光硬化性樹脂単体で結合材を構成した場合、切断時に結合材被膜の磨耗・破断、砥粒の脱落が考えられるが、この発明のように、金属粒子や無機粉末、金属ファイバや無機フアイバを樹脂中に添加することにより、工具の機械的強度、耐熱性を向上させることが可能となる。また、添加した粒子、ファイバ等での光の透過、吸収、反射により、硬化速度が低下あるいは未硬化状態に陥ることが予測されるが、添加粒子の種類、大きさ、添加量を特定することで、これらの問題を解決し得る。 【0015】また、請求項4の発明は、添加物として金属粒子又は無機粉末に替えて、前記樹脂中に、短径が0.1〜15マイクロメートル(μm)、長径が1〜200マイクロメートル(μm)の金属ファイバおよび/または無機ファイバを、添加物として5〜90wt%添加することを特徴とする。この場合も、ワイヤをその軸線方向に走行させながら、金属ファイバおよび/または無機ファイバを光硬化樹脂と砥粒との混合溶液に混合したものを塗布剤として使用する。その結果、ワイヤを所定の径、あるいはワイヤ上に塗布された前記混合溶液を所定の膜厚にすることができる。 【0016】ワイヤ工具の寿命は工具の磨耗あるいは断線により決まり、工具磨耗としては、砥粒の脱落、砥粒の埋没、砥粒自体の磨耗、さらに結合材被膜のワイヤからの剥離が考えられるが、この発明のようにワイヤ表面に化学的プライマ処理を行うことで、結合材被膜とワイヤ面との癒着力を高めることでき、結合材被膜の剥離による工具寿命の低下を抑えることができる。 【0017】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、光硬化性樹脂に種々の金属粒子や無機粉末、金属フアイバ、無機ファイバを含む結合材を用いて砥粒をワイヤに固着して性能に優れたワイヤ工具を獲ることが可能となる。 【0018】まず、本発明のワイヤ工具の横断面図を図1に示す。ワイヤ本体(11a)表面上にプライマ層(11b)が設けられ、そのプライマ層(11b)上に樹脂(22a)を主成分とする混合被覆層(11d)が形成されており、また混合被覆層(11c、11d)には光硬化性樹脂(22a)、添加物(22b)及び砥粒(22c)が含まれている。そして、プライマ層(11b)には砥粒(22c)の一部が埋設され、ワイヤ本体(11a)に固定されている特徴がある。本発明では、光硬化性樹脂として、光化学反応を起こして数秒単位若しくはそれ以下の短時間で瞬時に重合硬化し得るものを使用する点も特徴である。 【0019】つぎに、図2により本発明のワイヤ工具の製造方法を説明すると、送出しロール10に巻かれたワイヤ11は、複数の送りローラ12,13,14およびダンサローラ15により搬送され、巻取りロール20に引張られて巻取られるようになっている。ワイヤ11の素材としては特に限定されるものではなく、ピアノ線、黄銅被覆ピアノ線、ステンレス鋼線のような金属線やガラス繊維の如き無機化合物による線、ナイロンのような有機化合物による繊維(線)またはそれらの撚糸などが挙げられる。 【0020】張力変動による断線等を防止するために、張力制御機構としてダンサローラ15を設けているが、他にはシーソー方式やキャプスタン方式による張力制御法があげられる。図示の例では、制御系16によって送出しロール10の送出しの速度と巻取りロール20の巻取り速度が制御されるとともに、ダンサローラ15の位置が制御され、ワイヤ11の張力が所定値に制御される。 【0021】また、詳細を図示していないが、送出しロール10から引出されたワイヤ11は、後述する混合被覆との密着性を向上させるために溶剤蒸気脱脂槽で脱脂処理された後に、プライマ処理槽に導かれ、そこで化学的プライマ処理が施される。このようにワイヤ11の表面を予めプライマ処理しておくことにより、ワイヤ表面での混合被膜の硬化を促進するとともに、ワイヤ11と混合被膜との密着性を高めることができる。化学的プライマ処理としては、光重合促進剤やカップリング剤(例えば、シランカップリング剤)の表面塗布が挙げられる。なお、特開平10−328932号公報に記載されるように、ワイヤ表面に微少な凹凸を設け、ワイヤ11と混合被覆との密着性を高める方法も考案されているが、この方法ではワイヤ11の機械的強度を損なう懼れがある。 【0022】ローラ12を通過し、上述のようなプライマ処理によってワイヤ本体11aの表面にプライマ層11bが形成されたワイヤ11は、次いで、ロート状の樹脂塗布槽21に収容された混合溶液22中を通過する。このとき、図1に示すように、ワイヤ11のプライマ層11b上に混合液22が層状に付着して未硬化の混合被覆が形成される。 【0023】ここで、樹脂塗布槽21に収容された混合溶液22は、光硬化性樹脂22aに所定の添加物22bを添加、混合した液状樹脂に、所定の砥粒22cを混合した流動性混合物である。具体的には、混合溶液22は、液状樹脂すなわち光硬化性樹脂22aに、0.1〜15マイクロメートルの金属粒子および/または平均粒径が0.1〜15マイクロメートルの無機粉末を、あるいは短径が0.1〜15マイクロメートル、長径が1〜200マイクロメートルの金属ファイバおよび/または無機ファイバ5〜90wt%を添加物22bとして添加、混合した添加物混合液樹脂を作製し、その添加物混合液樹脂と所定粒径の砥粒22cとを均一に混和した混合溶液となっている。砥粒22cとしては、特に限定されるものではなく、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素)、アルミナ、炭化珪素などの硬質砥粒などが挙げられる。但し、その中でも加工能力に優れるダイヤモンド砥粒が通常望ましい。 【0024】一方、樹脂塗布槽21の出口には、線径ジグ23が移動可能に設けられており、ワイヤ11に付着している余分な混合液22をこの線径ジグ23によりかき落として、未硬化の混合被覆11cを所定の厚みに整え、あるいは、混合被覆11cが形成されたワイヤ外径を所定の直径に整えるようになっている。 【0025】線径ジグ23を通過したワイヤ11は、次いで、光照射装置24によって所定の光を照射される。これにより、混合被覆11cが硬化した硬化層(以下、混合被膜11dという)が形成され、ワイヤ工具11Tが順次できあがっていく。 【0026】光照射装置24より下流側でワイヤ工具11Tの外径寸法を測定する線径測定器17により、その測定情報を制御系16にフィードバックすることができる。この線径測定器17は、例えばワイヤ搬送方向の所定位置で、ワイヤ工具11Tを取り囲んで等角度間隔に離間する3つの非接触の変位センサを有しており、ワイヤ11の線径測定のみならず、ワイヤ本体11aに対する混合被膜11dの芯ずれ(周方向三位置での混合被膜11dの膜厚のばらつき)をも検出可能になっている。制御系16は、その測定情報を基にワイヤ11と線径ジグ23との芯ずれを検出し、常にワイヤ11が線径ジグ23の中心を走行し、混合被膜11dがワイヤの長さ方向においても周方向においても一定の厚さになるよう、ワイヤ11と線径ジグ23の相対位置の制御を行う。その位置制御は、線径ジグ23を変位させることにより、あるいは、図示しないワイヤ位置調整用のローラを変位させることにより、達成できる。混合被膜11dが外周面に形成されたワイヤ工具11は、ローラ14、15を通過した後、巻取りロール20に巻取られる。 【0027】本実施形態に係るワイヤ工具は、上述のように、ワイヤ本体11a上に樹脂を主成分とする結合材で砥粒22cを固定したものであり、その結合材に用いる樹脂として、紫外線や可視光線などの光が照射されると光化学反応を起こし、数秒単位あるいはそれ以下で重合硬化する光硬化性樹脂を用いたものである。したがって、光ファイバの被覆などに用いられている光硬化性樹脂を使用することで、光ファイバでの製造スピード程度(毎分数百メートル〜数キロメートル)での製造が可能となり、安価で長尺なワイヤ工具を提供することができる。 【0028】また、その光硬化性樹脂中に、平均粒径0.1〜15マイクロメートル(μm)を有する、金属粒子と無機粉末のうち少なくとも一方を添加物として、あるいは、短径が0.1〜15マイクロメートル(μm)で、長径が1〜200マイクロメートル(μm)であるところの、金属ファイバと無機ファイバのうち少なくとも一方を添加物として、その添加物を5〜90wt%添加しているので、ワイヤ工具の機械的強度および耐熱性を高めることができる。なお、添加物の粒子部やファイバ部での光の透過、吸収、反射により、光硬化性樹脂の硬化速度が低下したり、未硬化状態に陥ったりすることが考えられるが、添加物粒子の種類、大きさ、添加量を所定範囲に特定することで、これらの問題を解決することができる。 【0029】さらに、本実施形態に係る製造方法は、ワイヤをその軸線方向に走行させながら、上述した添加物を5〜90wt%含有する光硬化樹脂と砥粒との混合溶液22をワイヤ本体11a上に塗布する工程と、混合溶液22の塗布されたワイヤ11を所定の径、あるいはワイヤ11上に塗布された混合溶液の被覆11cを所定の膜厚に整形して光硬化する工程とを含むので、均一な被覆層11cを形成して、高品質のワイヤ工具を連続的に製造することができる。 【0030】また、光硬化後に混合被膜11dが形成されたワイヤ工具11Tの外径寸法を計測し、その計測結果を基に混合被膜11dの形成されたワイヤ工具11Tの外径寸法を所定の値にするように、線径ジグ23や調整用ローラを制御することにより、線径のバラツキを最小限に抑えることができる。その結果、切断時のカーフロスや切断品の反りが小さく、安定した切断面品位を有するシリコンウェハを得ることができる。 【0031】また、混合溶液の塗布されたワイヤ11を所定の径に整形し、あるいはワイヤ11上に塗布された混合溶液の被覆層11cを所定の膜厚にして光硬化する工程を、窒素雰囲気中で行い、その雰囲気中でワイヤ11に光を照射することで、重合硬化反応を安定かつ確実に生じさせることができる。さらに、添加物混合樹脂の塗布工程の前工程で、ワイヤ表面に化学的プライマ処理を行うことにより、結合材被膜とワイヤ面との癒着力を高めることでき、結合材被膜の剥離による工具寿命の低下を抑えることができる。 【0032】 【実施例】アクリレート系プレポリマ(オリゴマあるいはモノマ)およびアセトフェノン誘導体系の光重合開始剤1wt%からなるラジカル重合型光硬化樹脂溶液中に、平均粒径2マイクロメートル(μm)の銅微粒子を30wt%添加し、ホモジェナイザにて約10分間混和する。次に、集中度20に該当する30/40マイクロメートル(μm)のダイヤモンド砥粒を微量のエチルアルコールで湿潤し、上記液状樹脂に入れ、ホモジェナイザにて10分間混ぜ合わせる。ワイヤ11として直径0.20mmのピアノ線を用い、樹脂塗布槽21に銅徹粒子を添加した液状樹脂とダイヤモンド砥粒との混合溶液22を入れ、前記した製造方法により、ワイヤ11を樹脂塗布槽21内に導き、整形する開口直径が約0.27mmの線径ジグ23を通過させ、波長354nm付近に大きなピークを有する高圧水銀ランプを用いて紫外線硬化させた。これにより、直径0.25〜0.26mmのワイヤ工具を得た。 【0033】樹脂硬化に用いる光は、用いる樹脂の特性に依存するが、例えば紫外線硬化樹脂の場合、波長200〜400nmの遠紫外から可視光域内に波長を有する紫外線で、発光源(光照射装置)としては高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、He−CdレーザあるいはArレーザが考えられる。また可視光線硬化樹脂の場合は、波長400〜800nm内にピークを有する光源を用いることができる。 【0034】本実施例に用いた光硬化樹脂は、紫外線照射により光重合開始剤がフリーラジカルを発生し、これがオリゴマ、モノマのラジカル重合を誘発するラジカル重合型の樹脂であったが、樹脂成分である、オリゴマ、モノマ、重合開始剤は本実施例記載の成分に限定されるものではない。ラジカル重合型の樹脂成分として、不飽和ポリエステル樹脂をオリゴマに、スチレンをモノマとすることもできる。 【0035】オリゴマとして用いることができるのは他に、(ポリ)メチルアクリレートの如き(ポリ)エステルアクリレート、(ポリ)エーテルアクリレート、アクリルオリゴマ系アクリレート、エポキシアクリレート、(ポリ)ブタジェンアクリレート、シリコーンアクリレートを例示できる。モノマとしては、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、一官能アクリレート、二官能アクリレート及び三官能アクリレート類が挙げられる。また重合開始剤としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘電体以外にベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、キサントン類などがある。更に、光硬化性樹脂として、ラジカル重合型以外に、光付加重合型、光カチオン重合型、酸硬化型の樹脂を用いることも可能である。 【0036】上記実施例では、樹脂中への添加剤として銅微粒子を用いたが、添加剤がこれに限定されるものでないことは云うまでもない。添加剤としては、所定の時間内で樹脂硬化を完了し、光硬化後の結合材の機械的強度を向上でき、工具の耐磨耗性などの特性を向上できるものであればよい。添加剤としては、金属微粒子、金属塩化物、金属酸化物、金属炭化物、半導体材料に代表される非金属(半金属と云われることもある)材料の酸化物、炭化物等、あるいは粒子以外に針状のもの、ファイバ状のものでもよい。 【0037】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ワイヤ工具の結合材に、極めて短時間で硬化することの可能な光硬化性樹脂を用いることで、ワイヤ工具の製造時間を短縮することができ、シリコンインゴットのマルチワイヤ切断等に好適な長尺かつ安価なワイヤ工具を提供することができる。 【0038】また、結合材樹脂に、金属粒子や無機粉末、金属ファイバや無機ファイバを添加するようにすれば、無添加の場合に比べ、工具の機械的強度、耐熱性を向上することができる。さらに、ワイヤ上に結合材樹脂を塗布するに先立ち、ワイヤのプライマ処理を施すようにすれば、結合材被膜とワイヤ面との癒着力を高めることでき、結合材被膜剥離による工具寿命の低下を抑えることができる。 【0039】一方、製造工程においても、ワイヤを走行させて添加物混合液状樹脂と砥粒との混合溶液中を通過させ、ワイヤ表面に混合液を付着させて混合被覆を形成しながら、ワイヤに付着した余分な混合液を取除くようにすれば、混合被膜の均一なワイヤ工具を連続的に製造することができる。 【0040】また、製造工程中で混合被膜形成後のワイヤ工具の線径を測定し、線径制御や芯ずれ抑制の制御を実行することにより、線径バラツキを最小限に抑えることが可能となり、品質の安定したワイヤ工具を製造することができる。さらに、光照射を窒素雰囲気中で行うようにすれば、重合硬化反応を安定かつ確実に実現することができる。このように本発明によれば、高寿命で切断加工の高精度化・高能率化が可能であり、かつ長尺で安価なワイヤ工具を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006747 【氏名又は名称】株式会社リコー 【識別番号】000209278 【氏名又は名称】谷 泰弘
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| 【出願日】 |
平成11年2月4日(1999.2.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072604 【弁理士】 【氏名又は名称】有我 軍一郎
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| 【公開番号】 |
特開2003−117798(P2003−117798A) |
| 【公開日】 |
平成15年4月23日(2003.4.23) |
| 【出願番号】 |
特願2002−260814(P2002−260814) |
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