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【発明の名称】 電着砥石のツルーイング方法及び研削加工方法
【発明者】 【氏名】小林 博人
【住所又は居所】愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド内

【氏名】野田 賢二
【住所又は居所】愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド内

【要約】 【課題】被削材の被削面の面粗度が精密研削のレベルで得られ、且つ、電着砥石の寿命を可及的に向上させる簡便且つ迅速な電着砥石のツルーイング方法及び電着砥石を用いた研削加工方法を開発すること。

【解決手段】本発明によれば、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイングの完了点(適切な切込量)をAE信号強度に基づいて判断することができる為、被削材を試加工してその面粗度を測定するといった煩雑な作業を行う必要なく、簡便に且つ迅速に電着砥石10のツルーイングを行うことができ、被削材の被削面の面粗度が精密研削のレベルで得られ、且つ、電着砥石10の寿命が可及的に向上される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気メッキにより超砥粒を1砥粒層状態で台金上に固着させた電着砥石のツルーイング方法であって、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石の表面にツルーイングを施すことを特徴とする電着砥石のツルーイング方法。
【請求項2】 前記ツルーイングにおける切込量は、前記ツルーイングを施された前記電着砥石を用いて研削された被削材の被削面の面粗度が予め設定された上限値を十分に下回るように予め設定された値である請求項1の電着砥石のツルーイング方法。
【請求項3】 電気メッキにより超砥粒を1砥粒層状態で台金上に固着させた電着砥石を用いた研削加工方法であって、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石の表面にツルーイングを施すことにより研削加工に先立って前記超砥粒の突出量を揃えて切り刃を創成する初期ツルーイング工程と、該初期ツルーイング工程により超砥粒の突出量を揃えられた電着砥石を用いて被削材を研削する研削工程と、該研削工程の実行によって前記被削材の表面粗さが予め設定された上限値に到達した場合に、前記電着砥石の研削面にツルーイングを再び施して切り刃を創成する再ツルーイング工程と、該再ツルーイング工程によるツルーイングが施された電着砥石を用いて被削材を再び研削する再研削工程とを、含むことを特徴とする研削加工方法。
【請求項4】 前記再ツルーイング工程は、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石の表面にツルーイングを施して切り刃を創成するものである請求項3の研削加工方法。
【請求項5】 前記初期ツルーイング工程及び前記再ツルーイング工程の切込量はそれぞれ、前記被削材の表面粗さが予め設定された上限値を十分に下回る値となるように予め設定された値である請求項3または4の研削加工方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気メッキにより超砥粒を1砥粒層状態で台金上に固着させた電着砥石のツルーイング方法及び研削加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】CBN砥粒或いはダイヤモンド砥粒等の超砥粒を電気メッキにより1砥粒層状態で台金上に固着させた電着砥石(電着ホイール)が知られている。このような電着砥石は、通常、台金上に析出されるメッキ金属が超砥粒間の隙間を埋めて成長させられ、そのメッキ金属が超砥粒をしっかりとつかむ厚み状態とされている。このようにして構成された電着砥石では、超砥粒がその先端を十分に露出した理想的状態で固着されていることから、ドレッシング不要で切れ味の良い砥石として、高能率研削や粗研削等に多用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記電着砥石では、超砥粒の姿勢や径のばらつきによってその超砥粒の突出量が揃っておらず、また、超砥粒層の厚みが1砥粒層状態であることから、被削材の面粗度が得られない為に精密研削の分野では用いることができず、また、被削材の面粗度が基準値を超えた時点でその電着砥石の使用限界とする為に、他の種類の砥石に比較して寿命が短いという欠点があった。
【0004】この欠点を解消する為に、例えば、特開平12−233370号公報に開示されているように、電着砥石を用いた研削加工に先立って前記超砥粒の突出量を揃えるように所定の切込量のツルーイング(目立て及び/又は形状直し)を電着砥石に施すこと、及び、被削材の面粗度が所定の上限値を超える場合には更に微小切込量のツルーイングを施すことにより、被削材の面粗度が精密研削レベルで得られる研削を継続させる方法が開発されている。この方法は、従来技術の電着砥石の有する欠点を解消する点で利益のあるものであったが、初期ツルーイングの完了点(使用開始切込量)の判断は、被削材を加工し、その面粗度を測定することによって判断する必要があった為、ツルーイングに手間と時間がかかるという課題を残していた。その為、本発明者等は、更に簡便で効率的な電着砥石のツルーイング方法を開発すべく検討を続けていた。
【0005】ところで、近年AE(Accorstic Emission)と呼ばれる超音波帯域振動の研究が盛んに行われている。これは、固体が変形又は破壊される際に、それに貯えられていた歪みエネルギーが解放されて、弾性波を発生する現象であり、AEにより発生する弾性波はAE波と呼ばれる。このAE波を受信し、AE変換子で電気信号に変換することによりAE信号が得られ、こうして得られたAE信号は、例えば、特開平5−112958号公報に開示された地盤崩壊時期の予測、特開平7−20098号公報に開示された部品損傷箇所の検出等に幅広く利用されている。
【0006】本発明者等は、上記課題を解決する為の手段を検討する過程で、このAE信号に着目した。すなわち、電着砥石のツルーイングにおいて、砥粒が破砕される際に発生するAE波をAE信号に変換して検出し、ツルーイング時に発生するこのAE信号の強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度の対応関係を調査し、解析することによって、ツルーイング時に検出されるAE信号から必要にして十分な切込量を判断することができることを新たに見出した。
【0007】本発明はかかる知見に基づいて為されたものであり、その目的とするところは、被削材の被削面の面粗度が精密研削のレベルで得られ、且つ、電着砥石の寿命を可及的に向上させる簡便且つ迅速な電着砥石のツルーイング方法及び電着砥石を用いた研削加工方法を開発することにある。
【0008】
【課題を解決するための第1の手段】かかる目的を達成する為に本発明者等が為した第1発明の要旨とするところは、電気メッキにより超砥粒を1砥粒層状態で台金上に固着させた電着砥石のツルーイング方法であって、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石の表面にツルーイングを施すことを特徴とするものである。
【0009】
【第1発明の効果】このようにすれば、ツルーイングの完了点(適切な切込量)の判断がAE信号強度に基づいて行われる為、被削材をわずかに加工し、その面粗度を測定することによってツルーイングの完了点を判断するといった煩雑な作業を行う必要がなくなり、ツルーイングにかかる手間と時間が解消され、簡便に且つ迅速に電着砥石のツルーイングを行うことができ、前記超砥粒の突出量が簡便に且つ迅速にほぼ一定となるように揃えられ、続く研削加工において、被削材の面粗度のよい精密研削加工を電着砥石を用いて行うことができる。
【0010】
【第1発明の他の態様】ここで、好適には、前記ツルーイングにおける切込量は、前記ツルーイングを施された前記電着砥石を用いて研削された被削材の被削面の面粗度が予め設定された上限値を十分に下回るように予め設定された値をとるものである。このようにすれば、微小な切込量のツルーイング(マイクロツルーイング)によって、被削材の面粗度が精密研削レベルで得られる研削を行うことが可能とされ、且つ、超砥粒の切れ刃を再生させる為に必要且つ十分な切込量とされるので、前記電着砥石の研削可能な回数が可及的に増加させられる。
【0011】
【課題を解決するための第2の手段】また、前記課題を解決する為に、本発明者等が為した第2発明の要旨とするところは、電気メッキにより超砥粒を1砥粒層状態で台金上に固着させた電着砥石を用いた研削加工方法であって、(a)ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石の表面にツルーイングを施すことにより研削加工に先立って前記超砥粒の突出量を揃えて切り刃を創成する初期ツルーイング工程と、(b)その初期ツルーイング工程により超砥粒の突出量を揃えられた電着砥石を用いて被削材を研削する研削工程と、(c)その研削工程の実行によって前記被削材の表面粗さが予め設定された上限値に到達した場合に、前記電着砥石の研削面にツルーイングを再び施して切り刃を創成する再ツルーイング工程と、(d)その再ツルーイング工程によるツルーイングが施された電着砥石を用いて被削材を再び研削する再研削工程とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
【第2発明の効果】このようにすれば、初期ツルーイング工程において研削加工に先立って、ツルーイング時に発生するAE信号強度に基づき前記電着砥石の表面状態を判断しながら前記超砥粒の突出量が簡便に且つ迅速にほぼ一定となるように揃えられ、続く研削加工において、被削材の面粗度のよい精密研削加工を電着砥石を用いて行うことができ、また、前記被削材の表面粗さが予め設定された上限値に到達した場合には、再ツルーイング工程により、被削材の表面粗さをよくする為のツルーイングが前記電着砥石の研削面に再び施されるので、電着砥石の研削加工の寿命が長くなる。
【0013】
【第2発明の他の態様】ここで、好適には、前記再ツルーイング工程は、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石の表面にツルーイングを施して切り刃を創成するものである。このようにすれば、再ツルーイング時に発生するAE信号強度に基づき前記電着砥石の研削面の表面状態を判断しながら超砥粒の突出量を精密且つ効率的にほぼ一定となるように揃えることができ、簡便に被削材の被削面の面粗度が精密研削レベルで得られる研削を行うことが可能とされると共に、電着砥石の研削加工の寿命を向上させることができるという利点がある。
【0014】また、好適には、前記初期ツルーイング工程及び前記再ツルーイング工程の切込量はそれぞれ、前記被削材の表面粗さが予め設定された上限値を十分に下回る値となるように予め設定された値をとるものである。このようにすれば、微小な切込量のツルーイングによって、被削材の面粗度が精密研削レベルで得られる研削を行うことが可能とされ、且つ、超砥粒の切れ刃を再生させる為に必要且つ十分な切込量とされるので、前記電着砥石の研削可能な回数が可及的に増加させられる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】図1は、本発明の一実施例に用いられる電着砥石10を示す斜視図である。この電着砥石10は、円盤状を成す鋼(スチール)製の台金12と、その台金12の外周面において例えば粒度#80程度のCBN砥粒14が1粒子層の厚みで電気メッキにより固着(電着)された研削面16とを備えている。
【0017】図2は、上記電着砥石10の製造工程を示している。まず、マスキング工程P1においては、マスキングコート剤或いはマスキング粘着剤等のマスキング材料を用いて台金12の表面のうち、研削面として機能する面を除く他の面すなわち非電着面がマスキングされる。次いで、第1ニッケルメッキ工程P2において、前記CBN砥粒14が分散させられているメッキ液内において、台金12の表面のうちのマスキングが施されていない部分に第1ニッケルメッキ層18が電気メッキにより形成される。図3の(a)は、この状態を示している。次いで、洗浄工程P3において、台金12上のCBN砥粒14のうち第1ニッケルメッキ層18により固着されていないものすなわち図3の(a)において波線にて示されているものが洗浄によって除去される。そして、第2ニッケルメッキ工程P4において、上記第1ニッケルメッキ層18に重ねて第2ニッケルメッキ層20が電気メッキにより形成され、第1ニッケルメッキ層18及び第2ニッケルメッキ層20の合計厚みがCBN砥粒14を十分に固着させる値、例えばCBN砥粒14の粒径のほぼ1/2程度の値とされる。図3の(b)は、この状態を示す。そして、マスキング除去工程P5においてマスキングが除去される。
【0018】以上のようにして製造されたままの電着砥石10は、例えば図3の(b)或いは図5の(a)に示すように、CBN砥粒14の突出量が大きく、そのCBN砥粒14はその先端が十分に露出した理想的な状態で固着されていることから、ドレッシング不要で切れ味のよい砥石として、高能率研削や粗研削等に多用される。しかし、CBN砥粒14の姿勢や径のばらつきによってそのCBN砥粒14の突出量が揃っておらず、また、CBN砥粒14から成る砥粒層の厚みが1砥粒層状態であることから、従来では、被削材の面粗度が要求される精密研削の分野では用いることができず、また、被削材の面粗度が基準値を超えた時点でその電着砥石10が使用限界とされる為に、他の種類の砥石に比較して寿命が短いという欠点があった。
【0019】図4は、ホイール周速100m/s以上好ましくは200m/sという高周速、研削能率300mm3/mm・sという高研削能率で、上記電着砥石10を精密研削に使用可能とし且つ砥石寿命を長くする研削加工方法を説明する図である。図4において、初期ツルーイング工程P10では、例えばダイヤモンドロータリドレッサを用いて電着砥石10に所定の切込量でツルーイングを施すことにより、研削加工に先立ってCBN砥粒14の突出量がほぼ一定に揃えられる。この初期ツルーイング工程P10での切込量ΔAは、研削工程P11における被削材の被削面の表面粗さを例えば10μmRy以下、好適には2〜3μmRyとするように設定される。図5(a)は上記初期ツルーイング工程P10を経る前の研削面16の状態を示し、図5(b)は上記初期ツルーイング工程P10を経た後の研削面16の状態を示している。
【0020】ここで、初期ツルーイング工程P10では、CBN砥粒14がツルーイングにより破砕される際に、それに貯えられていた歪みエネルギーが解放されて発生される超音波帯域の弾性波であるAE波をAE変換子で電気信号に変換して得られるAE信号を利用して、前記電着砥石10の表面状態を判断しながら、必要且つ十分な切込量ΔAのツルーイングを施す。すなわち、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石10の表面にツルーイングを施す。
【0021】本発明者等は、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係を調査する為に、粒度#80のCBN砥粒が電着された電着砥石10を使用し、以下に示す条件で電着砥石10のツルーイング及び被削材の試加工を行った。
【0022】[ツルーイング条件]
ドレッサ:ホイールドレッサ SD40Q75MW7(110φ×U1.5)
ドレッサ周速度:20m/s切り込み量:4μmφ/passドレスリード:0.1mm/rev.of wheel【0023】[試加工条件]
研削方式:湿式プランジ研削被削材:SCM435(HRc48)(60φ×t5)
ホイール周速度:200m/s被削材周速度:2m/s(周速度比100)
研削能率:5mm3/mm・s研削油:シンセティックタイプ【0024】図6は、この実験の結果得られたツルーイング切込量と、その切込量のツルーイング段階において発生するAE信号強度と、その切込量のツルーイングが施された電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係を表すグラフである。このグラフからもわかるように、トータルのツルーイング切込量が増加するにつれ、そのツルーイング段階の電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度は徐々に細かくなっていく傾向にあり、また、逆にそのツルーイング段階において発生されるAE信号強度は強くなっていく傾向にある。
【0025】この図6のグラフから、研削により被削材の被削面に所望の表面粗さを与えるツルーイング段階において発生されるAE信号強度の基準値を求めることができる。AE信号は振動する電気信号として得られるので、AE信号強度のピーク値の基準値K1及び平均値の基準値K2の2つの基準値を求める。例えば、研削により被削材の被削面の表面粗さが3.0μmRyとなるツルーイング段階において発生されるAE信号強度(単位:V)は、図6に示すようにピーク値(SAEmax)がK1=21.0V、平均値(SAEave)がK2=9.5Vとなる。尚、本実施例のAE信号強度は、ツルーイング時に発生する超音波振動(dB)をPZT(圧電素子)にて電気信号(V)に変換した後にプリアンプで増幅し、フィルター回路を通じてツルーイング時のAE波のみを電気信号(V)にて表示するものである相対値である。
【0026】図7は、従来技術による初期ツルーイング工程を説明する工程図である。従来技術によれば、この図に示すように初期ツルーイングの完了点(使用開始切込量)の判断は、微少量のツルーイング切込の後被削材を試加工し、その被削面の面粗度を測定することにより判断する必要があった。すなわち、ツルーイング切込及び被削材試加工といった互いに異なる作業を交互に行わねばならず、ツルーイングに手間と時間がかかるという課題があった。
【0027】図8は、本実施例の初期ツルーイング工程P10を説明する工程図である。本実施例の初期ツルーイング工程P10では、この図に示すように、ツルーイング時に発生されるAE信号のピーク値(SAEmax)及び平均値(SAEave)を検出し、それ等に基づいてツルーイングの完了点を判断する。すなわち、初期ツルーイング時に検出されるAE信号のピーク値及び平均値が、研削により被削材の被削面の表面粗さが予め設定された値となるツルーイング段階のAE信号のピーク値及び平均値のそれぞれの基準値を超えた場合はツルーイングを完了し、ピーク値及び平均値のどちらか一方でも基準値を下回る場合にはツルーイングを続行する。例えば、研削により被削材の被削面の表面粗さが3.0μmRyとなるように初期ツルーイングを施す場合には、ピーク値の基準値がK1=21.0V、平均値の基準値がK29.5Vとなり、SAEmax≧K1、且つ、SAEave≧K2、となったとき初期ツルーイングを完了する。このようにすれば、ピーク値又は平均値のみに基準値をとってツルーイングの完了点を判断する方法に比べて誤差が生じにくく、高い精度の初期ツルーイングを行うことができる。
【0028】上記初期ツルーイング工程P10に続く研削工程P11では、初期ツルーイング工程P10によりCBN砥粒14の突出量がほぼ一定に揃えられた電着砥石10を用いて図示しない被削材に対する研削加工が行われる。この研削工程P11では、CBN砥粒14の突出量がほぼ一定に揃えられているので、例えば被削材の表面粗さが3μmRy以下となる精密研削が可能となる。
【0029】上記研削工程P11による複数個の被削材に対する精密研削加工の実行によってその被削材の表面粗さが予め設定された上限値例えば3μmRyに到達した場合には、第1再ツルーイング工程P12において、その被削材の表面粗さを再び低くする為に電着砥石10の研削面16に対して再びツルーイングが施される。この再ツルーイング工程P12のツルーイングは、例えば3〜4μm程度の微小切込量の所謂マイクロツルーイングである。この第1再ツルーイング工程P12の切込量は、被削材の被削面の表面粗さを予め設定された研削加工の上限値例えば3μmRyを十分に下回る値となるようにする為に予め設定された値をとる。
【0030】続く第1再研削工程P13では、上記第1再ツルーイング工程P12によるツルーイングが施された電着砥石10を用いて、被削材が研削工程P11と同様に再び精密研削される。また、この第1再研削工程P13による複数個の被削材に対する精密研削加工の実行によってその被削材の表面粗さが予め設定された上限値例えば3μmRyに到達した場合には、第2再ツルーイング工程P14において、第1再ツルーイング工程P12と同様に、被削材の表面粗さを再び低くする為に電着砥石10の研削面16に対して3〜4μm程度の微小切込量の所謂マイクロツルーイングが施されることにより、図5の(c)に示すようにCBN砥粒14の突き出し量Bがほぼ一定に揃えられる。
【0031】ここで、上記第1再ツルーイング工程P12及びこの第2再ツルーイング工程P14において好適には、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石10の研削面16にツルーイングが施される。このようにすれば、ツルーイング切込量の判断の基準としてAE信号を用いることができるので、精密且つ効率的にCBN砥粒14の突出量を揃えることができる。
【0032】上記第2再ツルーイング工程P14に続く第2再研削工程P15では、第2再ツルーイング工程P14においてツルーイングが施された電着砥石10を用いて、研削工程P11或いは第1再研削工程P13と同様に、複数個の被削材が再び精密研削される。
【0033】このように、本実施例では、初期ツルーイング工程P10において、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石10の表面にツルーイングを施すものであり、初期ツルーイングの完了点(使用開始切込量)の判断がAE信号強度に基づいて行われる為、被削材を加工してその面粗度を測定することによって初期ツルーイングの完了点を判断するといった煩雑な作業を行う必要がなくなり、初期ツルーイングにかかる手間と時間が解消され、簡便に且つ迅速に電着砥石10の初期ツルーイングを行うことができる。
【0034】また、本実施例によれば、前記初期ツルーイング工程P10及び前記再ツルーイング工程P12、P14の切込量はそれぞれ、前記被削材の表面粗さが予め設定された上限値、例えば3μmRyを十分に下回る値となるように予め設定された値をとるものである為、微小切込量のツルーイングによって、被削材の被削面の面粗度が精密研削レベルで得られる研削を行うことが可能とされ、且つ、CBN砥粒14の切れ刃を再生させる為の必要且つ十分な切込量とされるので、前記電着砥石10の研削可能な回数が可及的に増加させられる。
【0035】また、本実施例によれば、初期ツルーイング工程P10において研削加工に先立って、ツルーイング時に発生するAE信号強度に基づき前記電着砥石10の研削面16の表面状態を判断しながらCBN砥粒14の突出量が簡便に且つ迅速にほぼ一定となるように揃えられ、続く研削工程P11において、被削材の面粗度のよい精密研削加工を電着砥石10を用いて行うことができ、また、前記被削材の表面粗さが予め設定された上限値例えば3μmRyに到達した場合には、再ツルーイング工程P12、P14により、被削材の被削面の表面粗さを低くする為のツルーイングが前記電着砥石10の研削面16に再び施されるので、電着砥石10の研削加工の寿命が長くなる。
【0036】また、本実施例によれば、前記再ツルーイング工程P12、P14は、ツルーイング時に発生するAE信号強度と、その強度のAE信号を発生させるツルーイング段階の電着砥石10を用いて研削を施された被削材の被削面の面粗度との対応関係から、ツルーイング時に発生する前記AE信号強度に基づいて前記電着砥石10の研削面16の表面にツルーイングを施して切り刃を創成するものである為、ツルーイング時に発生するAE信号強度に基づいて前記電着砥石10の研削面16の表面状態を判断しながらCBN砥粒14の突出量を精密且つ効率的にほぼ一定となるように揃えることができ、簡便に被削材の被削面の面粗度が精密研削レベルで得られる研削を行うことが可能とされると共に、電着砥石10の研削加工の寿命を向上させることができる。
【0037】以上、本発明の一実施例を図面を用いて説明したが、本発明は他の態様においても適用される。
【0038】例えば、前述の実施例の電着砥石10は、CBN砥粒14が電着された研削面16を備えたものであったが、その研削面16にはダイヤモンド砥粒が電着されていても差し支えない。
【0039】また、前述の実施例の電着砥石10は、図1に示すように、円筒状の台金12の側面(外周面)に研削面16を備えて円盤状に構成されていたが、本発明は、円筒状の台金12の底面(上底面及び/又は下底面)に研削面16を備えた円盤状の電着砥石10に用いられても良いし、また、総型砥石のように複雑な形状の研削面16を備えた電着砥石10にも用いられ得る。
【0040】また、前述の実施例では、ツルーイング時に発生するAE信号のピーク値及び平均値を検出し、その両方をツルーイングの完了点の判断の基準としていたが、これは、ピーク値または平均値のどちらか一方のみを判断の基準とするものであってもよい。すなわち、初期ツルーイング時に検出されるAE信号のピーク値または平均値のどちらか一方が、それぞれの基準値K1またはK2を超えた際にツルーイングを完了するものであってもよい。
【0041】また、前述の実施例では、初期ツルーイング工程P10及び再ツルーイング工程P12、P14の切込量はそれぞれ、研削による被削材の被削面の表面粗さが予め設定された上限値3μmRyを十分に下回る値となるように予め設定された値をとるものであったが、この被削材の被削面の表面粗さの設定値は、例えば10μmRy以下、好適には3〜4μmRyとされるものであり、3μmRyに限定されるものではない。
【0042】また、前述の実施例では、第1再ツルーイング工程P12及び第2再ツルーイング工程P14において2回の再ツルーイングが行われていたが、1回の再ツルーイングであってもよいし、3回以上の再ツルーイングが行われてもよい。
【0043】また、前述の実施例では、ツルーイングの為にドレッサとしてロータリドレッサが用いられていたが、CBN砥粒14の保持力に問題がなければブレード式等の他の形式のドレッサが用いられてもよい。
【0044】その他一々例示はしないが、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が加えられ実施されるものである。
【出願人】 【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
【住所又は居所】愛知県名古屋市西区則武新町3丁目1番36号
【出願日】 平成13年9月10日(2001.9.10)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
【公開番号】 特開2003−80455(P2003−80455A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−273154(P2001−273154)