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【発明の名称】 脆性材料製工作物の加工方法及び装置
【発明者】 【氏名】飯田 亘
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工機株式会社内

【氏名】村上 敏夫
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工機株式会社内

【氏名】大阪 哲嗣
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工機株式会社内

【氏名】阿部 守年
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工機株式会社内

【要約】 【課題】仕上加工完了後に導電性砥石を直流電源の陰極に、電極を陽極に接続して導電性砥石に水素ガスを発生させて超微細シリカ砥粒の凝集層を導電性砥石から剥離させ、工作物毎に導電性砥石をツルーイング・ドレッシングしなくてもよくする。

【解決手段】導電性砥石17により脆性材料製工作物Wを粗研削加工し、超微細シリカ砥粒32を分散したアルカリ性の加工液25に前記導電性砥石17と電極27とを対向させて浸漬した状態で、導電性砥石17を直流電源30の陽極に、電極27を陰極に接続して、導電性砥石17に超微細シリカ砥粒32の凝集層を電気泳動現象により形成して工作物Wを仕上加工し、仕上加工完了後に導電性砥石17を直流電源30の陰極に、電極27を陽極に接続して導電性砥石17に水素ガスを発生させて凝集層を導電性砥石17から剥離する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性砥石により脆性材料製工作物を粗研削加工し、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液に前記導電性砥石と電極とを対向させて浸漬した状態で、前記導電性砥石を直流電源の陽極に、前記電極を陰極に接続して、前記導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成して前記工作物を仕上加工し、仕上加工完了後に前記導電性砥石を直流電源の陰極に、前記電極を陽極に接続して前記導電性砥石に水素ガスを発生させて前記凝集層を前記導電性砥石から剥離することを特徴とする脆性材料製工作物の加工方法。
【請求項2】 脆性材料製工作物が着脱可能に装着されて回転駆動される回転部材と導電性砥石が取り付けられて回転駆動される砥石軸とを相対移動させて前記工作物を前記導電性砥石により研削加工する加工装置において、前記導電性砥石に対向して配設された電極と、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液を滞溜させて前記砥石と電極とを該加工液に浸漬させる加工液滞溜装置と、前記導電性砥石を直流電源の陽極に、前記電極を陰極に接続して、前記導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成する凝集層形成装置と、前記導電性砥石を直流電源の陰極に、前記電極を陽極に接続して前記導電性砥石に水素ガスを発生させて前記凝集層を前記導電性砥石から剥離する凝集層剥離装置とを備えたことを特徴とする脆性材料製工作物の加工装置。
【請求項3】 請求項2に記載の脆性材料製工作物の加工装置において、前記導電性砥石をカップ型砥石とし、該カップ型砥石の端面により加工角度範囲で前記工作物を加工し、加工角度範囲と重ならない回転角度範囲で前記端面を前記電極と対向させ、前記加工液滞溜装置は、前記加工液を貯溜して前記カップ型砥石の端面部分、前記工作物及び前記電極を浸漬させる液槽であることを特徴とする脆性材料製工作物の加工装置
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコン等の脆性材料で形成された工作物をチッピングの発生を防止して高能率に加工する加工方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】回転駆動される脆性材料製工作物に対して回転駆動される導電性砥石を相対的に送り移動して工作物を導電性砥石により荒研削加工し、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液に導電性砥石と電極とを対向させて浸漬した状態で、導電性砥石を直流電源の陽極に、電極を陰極に接続して、導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成して脆性材料製工作物を仕上加工することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の脆性材料製工作物の加工方法では、導電性砥石の砥粒により工作物を粗研削加工し、導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成して工作物を仕上加工するようにしているので、仕上加工後、次の工作物の粗加工前に砥石をツルーイング・ドレッシングして凝集層を除去する必要がある。工作物毎に砥石をツルーイング・ドレッシングすることは、砥石寿命が短くなり、且つ加工時間が長くなり、加工コストが高くなる不具合があった。
【0004】本発明は、係る従来の不具合を解消するためになされたもので、仕上加工完了後に導電性砥石を直流電源の陰極に、電極を陽極に接続して導電性砥石に水素ガスを発生させて超微細シリカ砥粒の凝集層を導電性砥石から剥離させることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、導電性砥石により脆性材料製の工作物を粗研削加工し、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液に前記導電性砥石と電極とを対向させて浸漬した状態で、前記導電性砥石を直流電源の陽極に、前記電極を陰極に接続して、前記導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成して前記工作物を仕上加工し、仕上加工完了後に前記導電性砥石を直流電源の陰極に、前記電極を陽極に接続して前記導電性砥石に水素ガスを発生させて前記凝集層を前記導電性砥石から剥離することである。
【0006】請求項2に係る発明の構成上の特徴は、脆性材料製工作物が着脱可能に装着されて回転駆動される回転部材と導電性砥石が取り付けられて回転駆動される砥石軸とを相対移動させて前記工作物を前記導電性砥石により研削加工する加工装置において、前記導電性砥石に対向して配設された電極と、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液を滞溜させて前記砥石と電極とを該加工液に浸漬させる加工液滞溜装置と、前記導電性砥石を直流電源の陽極に、前記電極を陰極に接続して、前記導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成する凝集層形成装置と、前記導電性砥石を直流電源の陰極に、前記電極を陽極に接続して前記導電性砥石に水素ガスを発生させて前記凝集層を前記導電性砥石から剥離する凝集層剥離装置とを備えたことである。
【0007】請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2に記載の脆性材料製工作物の加工装置において、前記導電性砥石をカップ型砥石とし、該カップ型砥石の端面により加工角度範囲で前記工作物を加工し、加工角度範囲と重ならない回転角度範囲で前記端面を前記電極と対向させ、前記加工液滞溜装置は、前記加工液を貯溜して前記カップ型砥石の端面部分、前記工作物及び前記電極を浸漬させる液槽であることである。
【0008】
【発明の作用・効果】上記のように構成した請求項1に係る発明においては、導電性砥石により脆性材料製工作物を粗研削加工し、前記導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成して前記工作物を仕上加工し、仕上加工完了後に導電性砥石を直流電源の陰極に、電極を陽極に接続して導電性砥石に水素ガスを発生させて凝集層を導電性砥石から剥離するようにしたので、工作物毎に粗研削加工前に砥石をツルーイング・ドレッシングして凝集層を除去する必要がなく、砥石寿命が長くなり、加工コストを低減することができる。
【0009】上記のように構成した請求項2に係る発明においては、回転部材に脆性材料製工作物を装着して回転駆動し、回転駆動される導電性砥石を工作物に対して相対移動して工作物を粗研削加工し、砥石と電極とを超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液に浸漬し、導電性砥石に超微細シリカ砥粒の凝集層を電気泳動現象により形成して仕上加工し、導電性砥石を直流電源の陰極に、電極を陽極に接続して導電性砥石に水素ガスを発生させて凝集層を導電性砥石から剥離するので、工作物毎に粗研削加工前に砥石をツルーイング・ドレッシングして凝集層を除去する必要がなく、砥石寿命が長くなり、加工時間の短縮、加工コストの低減が可能な加工装置を提供することができる。
【0010】上記のように構成した請求項3に係る発明においては、導電性カップ型砥石の端面により加工角度範囲で工作物を粗研削加工し、加工角度範囲と重ならない回転角度範囲で端面を電極と対向させ、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液を液槽に貯溜してカップ型砥石の端面部分、工作物及び電極を加工液に浸漬させるようにしたので、カップ型砥石の端面部分、工作物及び電極を簡単な構成で、加工及び凝集層の形成に適した配置で良好に加工液に浸漬させることができ、砥石端面に電極と対向する回転角度範囲で超微細シリカ砥粒の凝集層を形成させ、カップ型砥石の端面により加工度範囲で工作物を良好に仕上加工することができる。
【0011】
【実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1において、ベッド10上にはコラム11がY軸方向に移動可能に装架され、図略のボールネジ機構を介してサーボモータにより前後方向に移動され、コラム11には砥石台12がZ軸方向に移動可能に装架され、ボールネジ機構13を介してサーボモータ14により上下方向に移動されるようになっている。砥石台12には砥石軸15が垂直軸線回りに回転可能に軸承され、モータ16によりプーリ、ベルトを介して回転駆動される。砥石軸15の下端にはカップ型砥石17が固定されている。カップ型砥石17は、アルミ等の軽量金属製カップ型基体の端面にダイヤモンド又は立方晶窒化硼素等の砥粒をメタルボンド結合した導電性のチップを固着した導電性のもの、或いは金属製カップ型基体の端面にダイヤモンド又は立方晶窒化硼素等の砥粒を金属フィラーを混入したレジンで結合した導電性のチップを固着した導電性のものを使用する。
【0012】ベッド10にはテーブル18がX軸方向に移動可能に装架され、ボールネジ機構19を介してサーボモータ20により左右方向に移動され、テーブル18上には回転部材としての回転テーブル21が砥石台12と対向して垂直軸線回りに回転可能に軸承され、モータ22により減速機構を介して回転駆動されるようになっている。回転テーブル21の上面には、シリコン等の脆性材料で形成された工作物Wが真空チャックなどで着脱自在に装着される。回転テーブル21の外周には、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液25を貯溜した液槽26が液密的に固定され、加工液25に、回転テーブル21上に取り付けられた工作物W及び加工位置に下降したカップ型砥石17の端面チップ部分が浸漬される。超微細シリカ砥粒(SiO2)の粒径は10〜100nmであり、アルカリ液中で負に帯電する特性を有している。カップ型砥石17は、加工角度範囲で工作物Wを加工し、加工液25に浸漬して液槽26内に取り付けられた電極27と加工角度範囲と重ならない角度範囲で例えば電極間距離3mmで対向するようになっている。カップ型砥石17のチップ端面は、加工角度範囲で回転テーブル21上の工作物Wと対向し、この加工角度範囲と重ならない砥石軸15の反対側の角度範囲でチップ端面は電極27と対向している。液槽26は、超微細シリカ砥粒を分散したアルカリ性の加工液25を滞溜させて砥石と電極とを該加工液に浸漬させる加工液滞溜装置を構成している。
【0013】30は電圧30Vの直流電源で、陽極及び陰極が切替スイッチ31を介して導電性のカップ型砥石17及び電極27に接続される。切替スイッチ31はブラシ28により砥石軸15延いてはカップ型砥石17に電気接続されている。切替スイッチ31を第1状態に切り替えてカップ型砥石17を直流電源30の陽極に、電極27を陰極に接続すると、図3に示すように、負に帯電した超微細シリカ砥粒32が加工液中で陽極となるカップ型砥石17のチップ端面に向けて電気泳動し、電気的に吸着されて凝集層33を形成する。切替スイッチ31を第2状態に切り替えてカップ型砥石17を直流電源の陰極に、電極27を陽極に接続すると、図4に示すように、加工液中で陰極となるカップ型砥石17のチップに向けて水素イオンが集まって端面から水素ガスが発生し、チップ端面に形成された凝集層33が剥離される。直流電源30及び第1状態に切り替えられた切替スイッチ31等により、導電性砥石であるカップ型砥石17を直流電源30の陽極に、電極27を陰極に接続して、導電性砥石に超微細シリカ砥粒32の凝集層33を電気泳動現象により形成する凝集層形成装置34が構成されている。そして、直流電源30及び第2状態に切り替えられた切替スイッチ31等により、導電性砥石を直流電源30の陰極に、電極27を陽極に接続して導電性砥石に水素ガスを発生させて凝集層33を導電性砥石から剥離する凝集層剥離装置35が構成されている。
【0014】次に、本発明に係る脆性材料製工作物の加工装置の作動を加工方法とともに説明する。砥石軸15をモータ16により例えば300min-1で回転駆動し、回転テーブル21上に工作物Wを装着してモータ22により例えば20min-1で回転駆動する。砥石台12をサ−ボモータ14を駆動して所定位置まで下降し、カップ型砥石17のチップを加工液25に浸漬する。切替スイッチ31を第2状態に切り替えてカップ型砥石17を直流電源30の陰極に、電極27を陽極に接続してチップ端面から水素ガスを発生させて前の工作物Wを仕上加工するためにチップ端面に形成した凝集層33を剥離する。凝集層33を剥離した後に砥石台12を下降してカップ型砥石17を工作物Wに対して切り込み、コラム11及びテーブル18を各サーボモータによりX,Y軸方向に移動して工作物Wをカップ型砥石17のチップにより粗研削加工する。
【0015】次に、切替スイッチ31を第1状態に切り替えてカップ型砥石17を直流電源30の陽極に、電極27を陰極に接続して、負に帯電した超微細シリカ砥粒32をカップ型砥石17のチップに吸着させて凝集層33を形成する。この状態で砥石台12をZ軸方向に移動してカップ型砥石17を工作物Wに対して微細量切り込み、コラム11及びテーブル18をX,Y軸方向に移動して、工作物Wをカップ型砥石17のチップ端面に形成された超微細シリカ砥粒32の凝集層33によりチッピングを生ずることなく仕上加工する。このとき、加工抵抗により超微細シリカ砥粒32がカップ型砥石17のチップ端面から離脱しても別の超微細シリカ砥粒32が新たに吸着されて凝集層33を形成する。仕上加工が完了すると砥石台12は上方端に後退され、回転テーブル21の回転が停止され、工作物Wがワークテーブル21から取り外される。
【0016】上記実施形態においては、縦軸平面研削盤の砥石軸にカップ型砥石を装着し、テーブル上に工作物を着脱可能に装着する回転テーブルを装備しているが、円筒研削盤において、砥石台に水平軸線回りに回転可能に軸承された砥石軸に導電性の平砥石を装着し、主軸台に水平軸線回りに回転可能に軸承された主軸に脆性材料製工作物を装着し、平砥石の下方部分が浸漬するように加工液25を貯溜した液槽を砥石台に取り付け、平砥石の下方部分の外周面を電極と対向させ、導電性平砥石を直流電源の陰極に、電極を陽極に接続して導電性平砥石の下方外周面に水素ガスを発生させて凝集層33を回転する導電性平砥石の外周面から剥離して工作物を粗研削加工し、導電性平砥石を直流電源の陽極に、電極を陰極に接続して、回転する導電性平砥石の外周面に超微細シリカ砥粒32の凝集層33を電気泳動現象により形成して工作物を仕上加工するようにしてもよい。
【出願人】 【識別番号】000003470
【氏名又は名称】豊田工機株式会社
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地
【出願日】 平成13年8月31日(2001.8.31)
【代理人】 【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
【公開番号】 特開2003−71716(P2003−71716A)
【公開日】 平成15年3月12日(2003.3.12)
【出願番号】 特願2001−264046(P2001−264046)