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【発明の名称】 研磨用パッド
【発明者】 【氏名】日紫喜 誠吾
【住所又は居所】愛知県名古屋市熱田区神野町2丁目70番地 株式会社ロジャースイノアック内

【要約】 【課題】例えば半導体ウェハ等の化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing: CMP)に好適に使用され、研磨中の研磨条件変化に影響を受けず、優れた研磨レート、段差解消性および面内均一性を達成し得る高品質な研磨用パッドを提供する。

【解決手段】ポリウレタンまたはポリウレアの主原料と各種副原料とを混合し、これに不活性ガスを加圧下で溶解させてなるガス溶存原料を反応射出成形法により成形することで得られ、半導体材料等の研磨に適した微細かつ均一なセル20を有しているポリウレタン系発泡体12を使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリウレタンまたはポリウレアの主原料と各種副原料とを混合し、これに不活性ガスを加圧下で溶解させてなるガス溶存原料を、反応射出成形法により反応射出成形型内(58)に射出することで得た所要形状のポリウレタン系発泡体(12)であって、前記ポリウレタン系発泡体(12)は、前記射出成形型(58)内で反応して半導体材料等の研磨に適した微細かつ均一なセル(20)を有していることを特徴とする研磨用パッド。
【請求項2】 前記セル(20)の平均径は、1〜50μm、好ましくは15〜30μmの範囲に設定される請求項1記載の研磨用パッド。
【請求項3】 前記ポリウレタン系発泡体(12)は、その嵩密度が0.6〜1.0g/cm3、好ましくは0.7〜1.0g/cm3の範囲に設定される請求項1または2記載の研磨用パッド。
【請求項4】 前記ポリウレタン系発泡体(12)は、そのショアーD硬度(ASTM D 2240に規定)が40〜80、好ましくは55〜75の範囲に設定される請求項1〜3の何れかに記載の研磨用パッド。
【請求項5】 前記副原料の一つとして、例えば芳香族ジアミンを使用して得られる発泡体の結晶性を向上させ、これにより10〜90℃における貯蔵弾性率(G')および損失正接(tanδ=損失弾性率(G'')/貯蔵弾性率(G'))の最大値は最小値の3倍以内である請求項1〜4の何れかに記載の研磨用パッド。
【請求項6】 前記反応射出成形型(58)には、所定のパターンが施され、これにより該パターンが前記ポリウレタン系発泡体(12)の表面に転写される請求項1〜5の何れかに記載の研磨用パッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、研磨用パッドに関し、更に詳細には、半導体ウェハ等の高い精度でその表面の平担化が要求される部材を研磨し得る化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)に好適に使用し得る研磨用パッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近の飛躍的な技術進歩を支える重要なテクノロジーとして、コンピュータ等の情報技術機器の高度化が挙げられる。前記情報技術の高度化は、使用される情報機器のCPU(中央演算装置)、すなわち該CPUを構成する超LSIデバイスの高性能化・高集積化により達成されているといっても過言ではない。この高性能化・高集積化を大きく向上させ得る方法の1つとして、前記超LSIの水平方向の高集積化、すなわち素子の微細化を追求する一方で、垂直方向の高集積化も、すなわち配線の多重化が実施されつつある。
【0003】前記配線の多重化において最も重要なファクターは、後述する層間絶縁膜や配線金属膜等の金属配線の配線パターンを露光する際の光リソグラフィーの焦点深度(DOF)を確保する、すなわち表面の凸凹段差が該パターン露光の焦点深度より小さいことであり、そのため高精度な平坦化が必要とされる。これは配線が多重化された多層配線を形成するプロセスにおいては、層間絶縁膜や配線金属膜等に一定以上の凸凹段差が存在すると、焦点合わせが充分に行なえなかったり、または微細配線構造の形成が不可能となってしまうからである。
【0004】前述の高精度な平坦化の達成は、従来のSOG(Spin on Glass)またはエッチバックでは困難であり、これらに代わる方法としてCMP(化学機械研磨)等の超精密ポリシングが一般的となりつつある。前記CMPによる平坦化は、半導体ウェハ等の被平坦化物の被研磨表面に、シリカやアルミナ等の微粒子をアルカリ性または酸性の化学的浸食性のある水溶液中に混合・分散させた研磨剤(一般的にスラリーと呼称されるので、本発明においても以下、この用語を使用する)と、弾性研磨材(以下、研磨用パッドと云う)とを使用することで実施されるものである。
【0005】前記研磨用パッドとしては、不織布やポリウレタン等の弾性発泡体が使用され、殊にリント等が研磨時に排出されず、かつ前記スラリーを保持し得る表面気泡構造を制御下に製造し得るポリウレタン発泡体が殊に好適であった。前記ポリウレタン発泡体を材質とする研磨用パッドは、所定の硬度および弾性等の物性を有するように原料および成形条件を設定して大きなブロック状ポリウレタン発泡体(以下、ケーキと云う)を化学的発泡法により作製し、スライス加工等することで該ケーキを所定の厚さのシート状物として、最終的に打ち抜き等を施すことで円盤上等の研磨に好適な形状に加工することで製造されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、化学的発泡法により製造される前記研磨用パッドは、内部に形成され最終的に得られる製品の平坦度を左右するスラリーの保持度合い等に大きな影響を与えるセルの大きさおよび分散が、充分に制御できず不均一となってしまい、その結果充分な平坦度を達成するたけの精密な研磨が困難となってしまう問題を内在している。
【0007】また前記ケーキから別の切り出し工程でスライスすることで、所定厚さの研磨用パッドの基となるシート状物を得ているので、最終的に得られる研磨用パッドの表面平坦性は該切り出し工程の精度によるが、この精度は充分に高いとはいえず該研磨用パッドの材質の段階で被平坦化物の平坦化精度が決定されてしまう。一般にポリウレタン発泡体の如き高分子素材にスライスや切削・研削を施す場合には、該高分子素材が有する粘弾性により切削部分で刃物等の切りしろの変位、所謂逃げが生じてしまうため10μm以下の制御は困難であると知られている。
【0008】一方、前記CMPにおける平坦化向上の手段としては、研磨条件の改善(低圧・高相対速度研磨)または研磨用パッドの高硬度化が考えられる。しかし、前者は研磨用パッドの材質が有する研磨時における物性の変化、すなわち粘弾性の変化により達成が困難であり、後者の場合は、硬度化の設定が難しく、該硬度が高すぎれば該研磨用パッドによる被研磨表面へのスクラッチ(傷付き)が懸念される。後者の高硬度化については高密度化を進めることによってもある程度達成可能だが、前記研磨用パッド表面におけるスラリーの保持性(ウェハ面内でのスラリー供給量の定量化)を考慮すると、一般的な化学的発泡法や物理的発泡法のような微細なセルを形成できない製法では、高密度化に比例してセル分布に不具合が生じ、該セルの均一分布性を達成し得ない。更に最近では、前者の研磨条件の改善方法の一つとして、周長が長いリニア研磨方式の研磨用パッドの使用が提案されているが、新たな研磨機の購入等の大幅な設備投資に係る資金投資が必要となり、問題の根本的な解決方となり得るが、容易には導入し得ない。
【0009】殊にトレンチ分離(Shallow Trench Isolation;STI)と称される素子分離法に利用されるCMPにおいては、素子分離パターンに対する依存性を軽減する工夫として高硬度パッドによる低圧高線速度研磨が提案されている。しかしポリウレタン発泡体の研磨用パッドの場合、研磨中に該パッド表面の温度が被研磨表面との摩擦によって瞬時に上昇してしまう。その結果、前記研磨用パッド表面の粘弾性が変化してしまい、研磨レート、すなわち単位時間当りの研磨作業量が不安定となってしまう欠点も指摘される。
【0010】
【発明の目的】この発明は、従来の技術に係る研磨用パッドに内在していた問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、例えば半導体ウェハ等の化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing: CMP)に好適に使用され、研磨中の研磨条件変化に影響を受けず、優れた研磨レート、段差解消性および面内均一性を達成し得る高品質な研磨用パッドを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明に係る研磨用パッドは、ポリウレタンまたはポリウレアの主原料と各種副原料とを混合し、これに不活性ガスを加圧下で溶解させてなるガス溶存原料を、反応射出成形法により反応射出成形型内に射出することで得た所要形状のポリウレタン系発泡体であって、前記ポリウレタン系発泡体は、前記射出成形型内で反応して半導体材料等の研磨に適した微細かつ均一なセルを有していることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】次に本発明の好適な実施例に係る研磨用パッドにつき、好適な実施例を挙げて、以下説明する。本願発明者は、ポリウレタン系原料に不活性ガスを溶存させたガス溶存原料を反応射出成形法により成形すると共に、硬度、セル径および密度等の物性を任意に制御することにより、研磨条件の変動に強く、優れた研磨レートおよび段差解消性を維持し得る研磨用パッドに好適に採用し得るポリウレタン系発泡体が得られることを知見したものである。また架橋剤として、例えば芳香族ジアミンを採用することでポリウレタン系発泡体が有する温度による粘弾性変化を抑制し得ることも併せて知見した。
【0013】本実施例に係る研磨用パッド10は、図1に示す如く、円形シート状に成形され、研磨面10aを構成するポリウレタン系発泡体12と、この発泡体12の片面側略全体に一体的に積層された緩衝パッド14とから基本的に構成される。また前記研磨用パッド10の一部には、該パッド10の厚さ方向の全長に亘って備えられると共に、透光性を有して該パッドの使用時において、研磨される被平坦化物の被研磨表面の様子を常時確認し得る研磨終点検出用小窓16が備えられている。なお前記研磨終点検出用小窓16としては、前記ポリウレタン系発泡体12と同材質であり、かつソリッドな樹脂体等が好適に使用される。前記研磨用パッド10の研磨面10aを構成するポリウレタン系発泡体12と同材質とすれば、反応射出成形により成形される該ポリウレタン系発泡体12との馴染みが良好となり、研磨中に分離してしまうような事態を回避し得るためである。
【0014】前記研磨終点検出用小窓16を備える研磨用パッド10については、図2に示すような所要の発光部および感光部を備えた研磨用定盤を使用することで、被平坦化物における被研磨面の研磨度を逐次確認しつつ、研磨作業を実施し得る。このため研磨に必要とされる加工マージンを最小限とすることができ、その結果研磨時間の低減および効率的な研磨を達成し得る。
【0015】また前記研磨用パッド10の研磨面10aには、研磨のためのスラリーおよび研磨時に被平坦化物から発生する、所謂研磨くずを効率的に系外に排出するための所定深さの排出溝18が格子状に形成されている。この排出溝18の深さは、前記被平坦化物の材質や研磨レートによって最適値が変化するものであるが、一般的には0.1〜0.5mm程度に設定される。また前記排出溝18が形成される形状パターンとしては、前述の格子状の他に、前記研磨用パッド10と同じ中心の同心円状、渦巻き状または放射線状等或いは所要径の穿孔を多数穿設するような形状が採用されるが、これらの形状に限定されるものではなく、研磨時の該研磨用パッド10の研磨に伴う回転等の運動により、前記研磨くずを効率的に排出し得る形状であれば如何なる形状であっても採用可能である。
【0016】前記研磨用パッド10を製造する反応射出成形法による製造装置について以後の説明の理解に資するため、ポリウレタン発泡体を材質とする該研磨用パッド10の製造装置および反応射出成形法の概略について説明する。
【0017】前記製造装置50は、図3に示す如く、ポリオール(ポリアミン)成分を貯蔵する第1原料タンク52、イソシアネート成分を貯蔵する第2原料タンク54、ミキシングヘッド56および反応射出成形型58から基本的に構成され、該第1原料タンク52とミキシングヘッド56、該第2原料タンク54とミキシングヘッド56とは夫々供給管路61,62で接続されている。前記第1および第2原料タンク52,54には、夫々ミキサ52a,54aが配設されており、各原料タンク52,54内に貯留される各原料を制御下に攪拌するようになっており、また前記ミキシングヘッド56に至る経路上には夫々ストレーナ、メタリングポンプ等の送出ポンプおよび高圧フィルタ等の付帯設備S1が設けられている。
【0018】そして前記ミキシングヘッド56からは、射出に供されなかった各原料を前記原料タンク52,54に送り戻すための返送管路63,64が夫々設けられており、前記ポリオール成分については前記第1原料タンク52、ミキシングヘッド56、第1原料タンク52の経路で、イソシアネート成分については前記第2原料タンク54、ミキシングヘッド56、第2原料タンク54の経路で夫々常時0.1〜50MPa程度の圧力で循環されるようになっている。また前記返送管路63,64の経路途中には、必要に応じて熱交換機等の付帯設備S2が設置される。
【0019】反応射出成形法を前記製造装置50でポリウレタン系発泡体を製造する工程を使用して説明すると、前記第1原料タンク52と第2原料タンク54内は、何れも空気または乾燥窒素ガス等の不活性ガスによって、送出ポンプに支障をきたさない0.1〜50MPaの範囲の一定圧力に加圧されており、また各原料タンク52,54内の各原料はミキサ52a,54aにより夫々一定速度で攪拌され所定温度に保持されている。また前記両原料タンク52,54の上層部は不活性ガスで覆われており、前記ミキサ52a,54aによる各原料の攪拌で該原料が対流し、その結果バブリング作用により該原料中に所定容量の不活性ガスが溶存することになる。実際にはポリオール成分およびイソシアネート成分の双方に不活性ガスを溶存させる必要はなく、化学的に安定性の高い該ボリオール成分中に、触媒、鎖延長剤および/または架橋剤等の所定の副原料を添加・混合し、ここに該不活性ガスを溶存させたガス溶存原料とすればよい。
【0020】なお本発明で云うポリウレタン系発泡体のポリウレタンとは、有機イソシアネートと活性水素化合物との重付加反応によって生成するウレタン(ウレア)結合を有するポリマーの総称であり、実際に使用されているポリウレタンはポリイソシアネートおよびポリオールとを基材とし、これに前述の副原料が適宜添加されることで合成され、これらの組み合わせによって様々な物性を持ったポリマーが得られる。また前記不活性ガスとしては、拡散係数の大きいCO2や、他入手が比較的容易なN2、Ar、ドライエアー(高湿空気の場合、含まれる水分がイソシアネートと反応してガスを発生させてしまい、発泡体の発泡状態に影響するため通常使用されない)等の前述のポリウレタン合成の重付加反応等に影響を与えないものであれば採用し得る。
【0021】前記ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールまたはポリジエン系ポリオール等が使用され、これらのポリオールは単独でまたは2種類以上を併用した形で使用される。また前記ポリアミン成分としては、前記ポリオール成分が有する水酸基が、アミノ基に置換されている各種物質が好適に使用される。
【0022】前記イソシアネート成分としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、TDIプレポリマー、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、クルードMDI、ポリメリックMDI、ウレトジオン変性MDIまたはカルボジイミド変性MD1等が使用される。またこれらのプレポリマーを用いてもよく、更に本発明に使用し得る物質は、ここに記載の各物質だけに限定されるものではない【0023】そして2つの前記各原料は、前記ミキシングヘッド56内で衝突混合され、直ぐに製造すべき前記研磨用パッド10の外部輪郭形状のキャビティ58aを有し、所定の型内圧に設定された反応射出成形型58内へ所定時間射出されることで、混合された該原料の反応・硬化が進行すると共に、該原料内に溶存している不活性ガスを放出させ、該不活性ガスの膨張を利用して該原料を発泡させて前記キャビティ58aを外部輪郭形状とした発泡体を成形するものである。従って、前記緩衝パッド14および研磨終点検出用小窓16については、予め対応部材を前記反応射出成形型58内の所定位置に設置することで、前記排出溝18は前記キャビティ58aを対応する形状とすることで容易に取付または形成し得る。
【0024】発泡については前記不活性ガスをガス飽和圧力下から、より低いまたは高い圧力状態にある反応射出成形型58内に射出することで、減圧等の圧力変化の作用により該不活性ガスを該混合原料中に放出させることでなされる。この際、前記不活性ガスの放出については、該ガスが溶存している同一平衡系の混合原料中であれば、部位を問わず同一の確率でなされるものであり、また放出ガスの膨張速度も略同一となるので、部位による不均一性を発現することなく、すなわち均一かつランダムに放出され、また略同一径を有するセルとなる。また前述のように同一平衡系であるため、略真球形状となり、発泡体の押圧力が均一になるといった効果が期待される。
【0025】また前記セルの膨張は、基本的には混合されて反応・硬化が進行する速度により決定され、これは前記反応の速度を制御することで、前記セルの膨張の度合い、すなわちセル径が制御可能であることを示しており、前記反応射出成形法を用いた場合には、2相の原料を混合した直後に成形型58に射出されるので、反応・硬化速度が速く他の成形方法では成形不可能な原料組成であっても使用可能であると共に、より小さなセル径状態の発泡体を製造し得る。
【0026】なお前記反応射出成形は、従来自動車の内装品などの成形方法として使用される製造方法であり、発泡方法として前述した不活性ガス溶存利用の方法の他、低温度にて揮発する、例えば低分子量クロルフルオロ炭化水素、塩化メチレン、ペンタン等の液体が使用され硬化前の液状反応混合物より揮発してセルを形成する、所謂物理的発泡法、発泡剤としての水をポリオール成分に添加し、これをイソシアネート成分と混合した後にイソシアネートとの反応により二酸化炭素を発泡ガスとして遊離させてセルを形成する、所謂化学的発泡法、または反応混合物または一方の原料中に前記不活性ガスを吹き込み、攪拌時に剪断させることでセルを形成する、所謂機械的発泡法が適宜採用可能であるが、得られるセルの均一分散性やセル径の同一性については悪化する場合があるので留意が必要である。
【0027】また通常、前記反応射出成形により得られる発泡体の表面には、スキン層と呼ばれる数μm程度の高密度層が形成されるが、このスキン層は研磨用パッドのコンディショニング、すなわち使用前の準備において容易に除去することができるので、殊に研磨用パッドとしての使用用途には問題を生じない。更に不活性ガスの溶解速度を向上させると共に、ガス飽和濃度を著しく増大させた超臨界流体を使用する方法も参考となる。
【0028】前記研磨用パッド10の研磨面10aを拡大してみると、前述の作用により放出された不活性ガスが元となり略同一径を有する多数のセル20が図4に示す如く、全体に均一に分散している。前記セル20のセル径は、後述する反応射出成形条件である反応射出成形型内圧力、ガス飽和圧力(原料タンク内圧力)およびキュア条件(温度・時間)並びにゲル化時間、すなわち反応射出成形時に原料が射出されて硬化するまでの時間および密度等により影響を受ける。
【0029】前記セル径は、成形型内圧力等が高ければ反比例的に小さくなり、キュア温度が低くなる等の条件によりゲル化時間等が長くなれば比例的に大きくなる。前記成形型内圧力およびキュア温度は設定により、ゲル化時間は触媒等による原料反応性の調整により、夫々任意に制御が可能である、また前記セル径は得られる発泡体の嵩密度によっても、制御可能である(後述)。なお原料の粘度を上げることでもセル径を制御し得るが、ミキシングの完全化および成形型内の流動性等が悪化することが考えられるため、好適な利用はなされない。
【0030】前記セル径の平均は、1〜50μm、好ましくは15〜30μmの範囲に設定される。殊に前記セル径を〜30μm程度と微細な大きさとした場合、前記研磨面10aのセル深度が小さくなるため、コンディショニング(ドレッシング)量を小さくすることができる。このドレッシングの簡易化は、研磨用パッドの摩耗量を抑制し、結果的に研磨パッド10の寿命向上の効果を奏する。
【0031】なお前記セルの平均径が1μm未満の場合、製造される研磨用パッド10における断面のエッジ垂れや、研磨くず等によるセルの目詰まりが比較的容易に発生してしまい研磨状態が不安定となり、ドレッシング回数を増加させて頻繁に行なわなければならなくなる。また50μmを越える場合、セル径にバラつきが生じ易く、スラリーの均一保持性が低下して、その結果研磨用パッド10の品質が安定化しなくなる。更にこのバラつきが顕著な場合、研磨用パッド10に部分的に密度差が生じてしまい、研磨状態にも支障を与えることが考えられる。
【0032】前記嵩(見かけ)密度については、前述した如くセル径にも影響を与えるが、それ以上に研磨レートに大きな影響を与えるものである。すなわち図5に示す如く、前記セル径が同一の場合、密度により研磨面10a上の平坦部分(研磨可能部分):セル部分(スラリーおよび研磨くず保持部分)の比率が変化することになるためであり、その嵩密度が0.6〜1.0g/cm3、好ましくは0.7〜1.0g/cm3の範囲に設定され、一般的には前記不活性ガスが溶存させたガス溶存混合原料を用いて反応射出成形により発泡体を得る場合には、該嵩密度は該混合原料の反応射出成形型58への射出の注入スピード、すなわち注入時間を変更することにより容易に調整可能である。また予め原料中に溶存させる不活性ガスの量を調整してもよい。
【0033】前記嵩密度が0.6g/cm3未満の場合、後述する硬度が充分であっても前記研磨面10aにおける微細セルが占める割合、すなわちセル部分(スラリーおよび研磨くず保持部分)が多くなる一方で平坦部分(研磨可能部分)が減少してしまう(図5(a)参照)。これによりスラリーが前記研磨面10aの平坦部分上に存在し、被研磨面を研磨する時間が短くなり(図5(b)参照)、その結果研磨レートが悪化してしまう。また1.0g/cm3を越える場合、前記研磨面10aがソリッド状態に近づき(図5(c)参照)、発泡体としてスラリーを保持する能力が著しく落ちてしまい(図5(d)参照)、効率よくスラリーを消費できなくなり研磨自体のランニングコストが増大してしまう。更には研磨用パッド10における研磨面10aでのスラリーの乾きは、研磨粒子の凝集を引き起こしスクラッチの原因にもなる。
【0034】また前記研磨用パッド10をなすポリウレタン系発泡体12の材料硬度も研磨性能を考えた場合には重要な指標の1つであり、本発明においては、そのショアーD硬度が40〜80、好ましくは55〜75の範囲に設定されるものである。前記ショアーD硬度が40未満の場合、柔らか過ぎてウェハ等の被平坦化物の凸凹表面に馴染んで凸部からの積極的な研磨がなされず、大きな加工マージンが必要とされ無駄が多くなる。一方、ショアーD硬度が80を越える場合、研磨時に削れてしまう研磨用パッド10自体の小片くずにより、被研磨面にスクラッチが発生してしまう。従って前述のスクラッチを発生させず、かつ段差解消性に優れる研磨用パッドのショアーD硬度としては、55〜75のが好適である。
【0035】また前記緩衝パッド14の如き、研磨面10aを構成するポリウレタン系発泡体12より柔らかい物質を多層化することによって、被平坦化物の面内均一性を向上させ得る。更にショアーD硬度が前述の如く、55〜75の範囲となる研磨用パッドは、従来のメタルCMPで見られたディッシングまたはエロージョン等の構造的な加工欠陥の防止の観点でも有利である。
【0036】前記ショアーD硬度は、一般的に前述したポリオール成分等のトータルOH価(個々の原料のOH価を配合比率で総和したもの)が大きいほど高くなるものである。これはポリウレタン系発泡体12を形成するハードセグメント(有機イソシアネート、鎖延長剤または架橋剤)を選択・増量させることにより、該発泡体12を構成するポリマーの剛直化が進むためであり、例えば、イソシアネートINDEX(イソシアネート基/水酸基またはアミノ基で表される比で、後出する表等では単にINDEXと記載される)を増大させることで容易に制御可能である。
【0037】前述したような物性を有するポリウレタン系発泡体12を使用することで、殊に段差解消性に優れると共に、研磨レートを向上させた研磨用パッド10を得ることができる。そして更に、前記ポリウレタン系発泡体12が有する粘弾性の温度変化に伴う硬度変化による研磨レートの不安定化については、前記副原料の1つである架橋剤として、例えば芳香族ジアミン等の重合可能な凝集力の高いハードセグメントとなる物質を使用することで回避が可能である。
【0038】一般に粘弾性の変動については、物体に周期的に変化する歪みまたは応力を加えたときに観測される粘弾性である動的粘弾性を使うことで評価され、貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G'')およびこれら2つの弾性率から算出される損失正接(tanδ=G''/G')の3つの要素が使用される。本発明においては、物質の弾性要素である前記貯蔵弾性率と、弾性要素と粘性要素とのバランスを表す損失正接を使用し、該貯蔵弾性率および損失正接の10〜90℃の変化範囲、ここでは最大値/最小値が3以下、すなわち該最大値は最小値の3倍以内となるように設定される。例えば前記架橋剤または主原料に芳香族ジアミン等を任意量添加することで達成される。
【0039】なお前記架橋剤の添加は、前記貯蔵弾性率および損失正接だけでなく、硬度についても向上させる作用があるので、該架橋剤の添加量については充分な考慮が必要である。
【0040】
【実験例】次に、反応射出成形法により実施例1〜7および比較例1〜3に係る研磨用パッドを、その発泡条件、成形条件並びにイソシアネートINDEXおよび架橋剤量等の組成を各種変動させた内容で製造した。なお本発明に係る研磨用パッドは、この実験例に限定されるものではない。
【0041】(実験条件)以下の原料を使用して、厚さが1.27mmで、溝幅2mm、ピッチ15mmおよび溝深さ0.6mmの格子状排出溝を有する研磨用パッドを製造して、各種測定を行なった。
【0042】(使用原料)・ポリオール:商品名 SBUポリオール M−372(172KOH mg/g);住化バイエルウレタン製・イソシアネート:商品名 SBUイソシアネート M−390(NCO%=23.0%);住化バイエルウレタン製・触媒:商品名 DABCO 33LV;三共エアプロダクト製・架橋剤A:商品名 Crosslinker0644(630KOH mg/g);住化バイエルウレタン製・架橋剤B:商品名 SumifenVB(630KOH mg/g);住化バイエルウレタン製【0043】(組成および各種条件)下記の表1に記す。
【0044】
【表1】

【0045】(評価項目および評価方法)■物性値A:密度JIS K 6401の規定に準拠した方法により測定。
B:硬度ASTM D 2240に規定されるShore D硬度計を使用し、温度22℃,湿度55%RHの条件で測定。
C:平均セル径走査型電子顕微鏡(SEM)像より任意の10mm四方×5ヶ所について最大に開口している5点のセル(球形のセルであるため断面によって開口径が異なる。真球と仮定しセル開口部の最大距離=球形セルの開口直径とした)を選出し、その最大直径の平均値を平均セル径とした。
D、E:貯蔵弾性率および損失正接の最大値/最小値動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて測定した。測定には小さな正弦波歪をかけ、そして粘性成分と弾性成分の応答の違いを測定する方法が採用されている。測定条件は温度範囲10〜90℃に亘って、1Hzの周波数で引張りモードによってデータ収集し、得られたデータにおける最大値を最小値で除算して得られた数値を評価値とした。前記温度範囲(10〜90℃)は研磨時に使用するスラリーの状態を考慮した上での設定である。
■研磨特性評価:研磨機として、6インチ仕様の1プラテン(定盤)/1ヘッドの枚葉式CMP装置(ブラテン径:500mm)を使用し、以下の条件で、各評価項目毎に最適な被平坦化物を夫々研磨して、F:研磨レート、G:段差解消性、H:傷付き性およびI:面内均一性並びにJ:これらから得られる研磨用バッドとしての総合評価を確認した。ここでF:研磨レートは数値で、H:傷付き性は○:OKまたは×:NGで、G:段差解消性およびI:面内均一性は、◎:非常によい、○:よい、△:少し劣るまたは×:悪いで、J:総合評価は、○:好適に使用し得る、△:使用可または×:使用不可で夫々評価した。
・条件定盤およびヘッド回転数:100回転/分(ppm)研磨圧力:34kPa研磨剤:汎用の酸化膜用SiO2スラリー研磨剤流量:150ml/minなお参考値として、CMPとして現在標準的に使用されている研磨用パッド(商品名 IC-1000;ロデール・ニッタ製)に係る前述の各評価も併せて実施した。
【0046】(結果)下記の表2に記す。すなわち本発明に係る研磨用パッドの場合(実施例1〜7)、総合評価から分かる通り、何れも半導体ウェハ等の各種半導体材料の研磨に使用し得ることが確認された。殊に本実験例における実施例1および実施例2については、参考例として挙げた研磨用パッドに較べても遜色がないばかりか、段差緩和性については更に良好な結果が得られた。
【0047】
【表2】

【0048】温度依存性についても、結果における貯蔵弾性率における最大値/最小値が小さい研磨用パッドは、温度上昇時にも素材剛性が温度に関係なく保持されるものであり、また素材の転移点を表す各温度におけるtanδの最大値/最小値(変化幅)が小さい程、すなわち温度を軸として表したtanδ曲線を考えた場合のピークがブロードとなる程、相対的に弾性率変化の小さい素材物質と云え、何れも研磨用パッドの素材として好ましいといえる。
【0049】
【発明の効果】以上に説明した如く、本発明に係る研磨用パッドによれば、ポリウレタン系原料に不活性ガスを溶存させたガス溶存原料を反応射出成形法により成形すると共に、硬度、セル径および密度等の物性を任意に制御することで、研磨条件の変動に強く、優れた研磨レート、段差解消性および面内均一性等を達成し得る研磨用パッドに好適に採用し得るポリウレタン系発泡体が得られる。また芳香族ジアミン等の物質を前記ポリウレタン系原料に添加することで、粘弾性の温度変化を抑制する効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
【住所又は居所】愛知県名古屋市中村区名駅南2丁目13番4号
【識別番号】593139123
【氏名又は名称】株式会社ロジャースイノアック
【住所又は居所】東京都中央区銀座二丁目4番14号
【出願日】 平成13年8月24日(2001.8.24)
【代理人】 【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
【公開番号】 特開2003−62748(P2003−62748A)
【公開日】 平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願番号】 特願2001−254971(P2001−254971)