トップ :: B 処理操作 運輸 :: B24 研削;研磨




【発明の名称】 磁性流体利用の加工方法およびその装置
【発明者】 【氏名】山口 ひとみ

【氏名】進村 武男

【要約】 【課題】いかなる加工面にも適用可能で、精密毛細管内面等であっても詰まることなく円滑に研磨することが可能な磁性流体利用の加工方法およびその装置を提供することを目的とする。

【解決手段】低表面張力を有する磁性流体2と微細砥粒3とを混合したスラリー1を磁場(N、S磁極6)内にて磁力駆動し、前記スラリー1と該スラリー1内にセットされた非磁性体の工作物5との間に相対運動を発生させて前記工作物5表面を研磨ないし洗浄することを特徴とするもので、磁力駆動によって低い表面張力を生かして微細毛細管内を容易かつ円滑に流動する磁性流体2の助力を受けて、スラリー1中の微細砥粒3が目詰まり等を引き起こすことなく、円滑に微細毛細管内面を研磨ないし洗浄することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 低表面張力を有する磁性流体と微細砥粒とを混合したスラリーを磁場内にて磁力駆動し、前記スラリーと該スラリー内にセットされた非磁性体の工作物との間に相対運動を発生させて前記工作物表面を研磨ないし洗浄することを特徴とする磁性流体利用の加工方法。
【請求項2】 前記微細砥粒は、工作物の加工表面における微細凹凸より大きな粒径で、かつ前記磁性流体に対して沈殿しない程度に小比重のものが選定されることを特徴とする請求項1に記載の磁性流体利用の加工方法。
【請求項3】 前記磁性流体と微細砥粒との混合割合を変更してスラリーの研磨特性ないし洗浄特性を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の磁性流体利用の加工方法。
【請求項4】 低表面張力を有する磁性流体と微細砥粒とを混合したスラリーおよび非磁性体の工作物を収容した容器と、前記容器外に近接設置された少なくとも1個の磁石と、これら容器と磁石との間に相対運動を発生させる駆動装置とを備えたことを特徴とする磁性流体利用の加工装置。
【請求項5】 前記容器を環状に構成するとともに、円板上に少なくとも1個の磁石を設置し、前記容器と磁石との間に回転による相対運動を発生させるように構成したことを特徴とする請求項4に記載の磁性流体利用の加工装置。
【請求項6】 前記少なくとも1個の磁石が設置された円板側をモータ駆動により回転駆動するように構成したことを特徴とする請求項4または5に記載の磁性流体利用の加工装置。
【請求項7】 前記工作物の加工表面を、前記容器と磁石との間の相対運動方向に対して所定の角度で傾斜させてセットすることを可能に構成したことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の磁性流体利用の加工装置。
【請求項8】 前記容器と磁石との間に形成される加工間隙を調整可能に構成したことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の磁性流体利用の加工装置。
【請求項9】 前記磁石が永久磁石あるいは電磁コイルもしくはこれらの組合せから磁場発生源を構成するとともに、それらの磁場の大きさを変動調整可能に構成したことを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載の磁性流体利用の加工装置。
【請求項10】 前記容器と磁石との間の相対運動の大きさを変動させて、磁場変動の大きさを調整可能に構成したことを特徴とする請求項4ないし9のいずれかに記載の磁性流体利用の加工装置。
【請求項11】 前記工作物が精密毛細管であることを特徴とする請求項4ないし10のいずれかに記載の磁性流体利用の加工装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、注射針等の薬液用細管や医療機器および精密機器に組み込まれる流体用ノズル等に多用される精密毛細管の内表面等の表面仕上げやバリ取りあるいは表面洗浄に適する磁性流体利用の加工方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】注射針等の薬液用細管や医療機器および精密機器に組み込まれる流体用ノズル等に使用される内径1mm以下のステンレス鋼等の毛細管は、汚染物等の不純物の滞留、付着により供給流体が詰まらないように、管内壁を精密研磨する必要がある。特に、昨今の医療機器の高機能化、高性能化の急進は目覚ましく、毛細管内壁には更なる高精度仕上げ面が要求されるようになっている。現在、管の内壁を研磨する方法としてはホーニングや電解研磨法等が採用されているが、ホーニング研磨法では管内に研磨工具等を挿入する必要があって、研磨できる管径に限界があった。また、電解研磨法では研磨加工中に溶解物が円滑に流出せずに加工不良が生じる虞れが生じ、これも研磨できる管径に限界があり、いずれの方法も精密毛細管内面の研磨には不向きであった。このようなことから、精密毛細管内面等の研磨は非常に困難とされ、新しい研磨法の開発が望まれていた。
【0003】本件発明者らは、磁気援用研磨法の精密部品への適用について鋭意研究を重ねてきているところであるが、近年、磁性流体を用いた研磨方法が提案された。1例として、特開平11−165268号公報に開示されたものがある。これは、磁性流体を研磨に採用した、特開平11−135466号公報等に開示された研磨装置を改良するものとして、被加工物の加工面の形状に合わせて固化もしくはゲル化された研磨材を用い、該研磨材と被加工物との間で機械的振動等による相対運動を生じさせるように構成したもので、磁界によって砥粒の配列を制御可能な磁性流体に交番磁界を付与することによって相対運動を起こし、また、研磨材がプラスまたはマイナスの電荷を帯電する砥粒を含有する流体であって、電界を与えた状態で固化もしくはゲル化された場合は、交番電界を与えることによって相対運動を行わせ、立体的な3次元の任意の方向における厳密な寸法制度が要求される研磨に利用できることとなった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記磁性流体を用いた研磨方法では、磁性流体が、被加工物における立体的な3次元方向加工面の形状に合わせて固化もしくはゲル化された研磨材として充填されて用いられるものであるため、加工面が限定される他、精密毛細管内面等を円滑に研磨するには依然として不向きであった。
【0005】そこで、本発明では、いかなる加工面にも適用可能で、精密毛細管内面等であっても詰まることなく円滑に研磨することが可能な磁性流体利用の加工方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このため、第1の発明は、低表面張力を有する磁性流体と微細砥粒とを混合したスラリーを磁場内にて磁力駆動し、前記スラリーと該スラリー内にセットされた非磁性体の工作物との間に相対運動を発生させて前記工作物表面を研磨ないし洗浄することを特徴とする磁性流体利用の加工方法にある。また本発明は、前記微細砥粒は、工作物の加工表面における微細凹凸より大きな粒径で、かつ前記磁性流体に対して沈殿しない程度に小比重のものが選定されることを特徴とする。また本発明は、前記磁性流体と微細砥粒との混合割合を変更してスラリーの研磨特性ないし洗浄特性を調整することを特徴とする。また第2の発明は、低表面張力を有する磁性流体と微細砥粒とを混合したスラリーおよび非磁性体の工作物を収容した容器と、前記容器外に近接設置された少なくとも1個の磁石と、これら容器と磁石との間に相対運動を発生させる駆動装置とを備えたことを特徴とする。また本発明は、前記容器を環状に構成するとともに、円板上に少なくとも1個の磁石を設置し、前記容器と磁石との間に回転による相対運動を発生させるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記少なくとも1個の磁石が設置された円板側をモータ駆動により回転駆動するように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記工作物の加工表面を、前記容器と磁石との間の相対運動方向に対して所定の角度で傾斜させてセットすることを可能に構成したことを特徴とする。また本発明は、前記容器と磁石との間に形成される加工間隙を調整可能に構成したことを特徴とする。また本発明は、前記磁石が永久磁石あるいは電磁コイルもしくはこれらの組合せから磁場発生源を構成するとともに、それらの磁場の大きさを変動調整可能に構成したことを特徴とする。また本発明は、前記容器と磁石との間の相対運動の大きさを変動させて、磁場変動の大きさを調整可能に構成したことを特徴とする。また本発明は、前記工作物が精密毛細管であることを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とするものである。
【0007】
【実施の形態】以下、本発明の磁性流体利用の加工方法およびその装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は本発明の磁性流体利用の加工方法およびその装置の1実施の形態を示すもので、図1は本発明の加工方法の3次元模式図および加工原理を示す斜視図、図2は加工部拡大平面図、図3は実験装置の全景写真である。本発明の磁性流体利用の加工方法は、図1(B)に示すように、低表面張力を有する磁性流体2と微細砥粒3とを混合したスラリー(混合液)1を磁場内にて磁力駆動し、前記スラリー1と該スラリー1内にセットされた非磁性体の工作物5との間に相対運動を発生させて前記工作物5表面を研磨ないし洗浄することを特徴とする。
【0008】<加工原理および実験装置>図1(A)は、毛細管の内面研磨実験の前段階として、砥粒の加工痕等の観察がし易い板状工作物を用いて加工実験をした際の実験装置であり、基本的な加工特性の解明を目的として研磨実験を行った。実験装置は、低表面張力を有する磁性流体2と微細砥粒3とを混合したスラリー1および板状で非磁性体の工作物5を収容した容器4と、前記容器4外に近接設置された少なくとも1個の磁極(図示の例では容器4外に対向して設置された少なくとも1組のN極、S極からなる磁石)6と、これら容器4と磁石6との間に相対運動を発生させる駆動装置とを備えたもので、図示の例では、前記容器4を環状に構成するとともに、円板7上に少なくとも1個の磁石6(図示の例ではN極、S極からなる一対の磁石が2組)を設置し、前記容器4と磁石6との間に回転による相対運動を発生させるように構成し、円板7側をモータ8の駆動により回転駆動するように構成した。
【0009】磁性流体は非常に微細なフェライト系の強磁性粒子(マグネタイト粒子等)を水や油等に混入させたものであり、その成分は主に磁性粒子、界面活性剤、溶媒の3つから構成される。磁性粒子は粒径が10nm程度の超微粒子である。界面活性剤の役割について説明すると、近接する強磁性の粒子同士間には磁気力やファン・デル・ワールス力が吸引力として作用するため、粒子の合体、凝集が生じて遂には固体と液体とが分離してしまうため、これを防止するために界面活性剤が用いられて、磁性粒子と溶媒との融合による安定した分散が図られる。
【0010】溶媒中に粒子を混入させると、粒子が重力の作用により沈降したり、非一様磁場中で強磁場の方向に粒子が吸引されて、粒子の数密度分布に偏りが生じる。これを防ぐためにブラウン運動が利用される。ブラウン運動とは、静止流体中を球形粒子が沈降する際、粒子径が小さいと液体分子の乱雑な熱運動によって粒子がランダムな運動を始めるようになる。そして、遂には粒子は全く方向性を持たない複雑な運動を繰り返して沈降しなくなる現象である。また、磁性粒子の粒子径を5〜10nmとしたのは、アインシュタインの関係式より、水中で粒子を分散させた場合、重力場で一様な分散を保つためには、粒子径を10nm、磁場の作用下におかれている場合では、粒子径を5nmのオーダーまで微細化する必要があることが分かっているからである。これらのことから、磁性粒子は流体中で安定な分散を保っている。以上のことにより、磁性流体には、合体や凝集を起こして沈降することなく、流体中で安定な分散を保ち、流体でありながら、磁石の性質を有するというきわめて興味深い現象が生じるものである。
【0011】磁性流体2と微細砥粒3とから構成されるスラリー1を容器4内に供給すると、スラリー1は容器4の外部に設置された永久磁石6により磁化され磁力を発生する。一方、永久磁石6を搭載した回転テーブル(円板)7を駆動装置であるモータ8により高速回転すると、スラリー1は磁場の変動に追従して容器4内を回転流動する。このとき、容器4内に工作物5を固定しておくと、スラリー1は流動しながら工作物表面に対して相対運動を得て、その表面を微細加工する。したがって、本発明による加工方法の加工特性はスラリー1の流動性に依存するものと考えられる。
【0012】前記スラリー1の流動性は、スラリー1に作用する磁力に左右され、該磁力は容器4内の磁場分布によって決められる。本装置の場合、容器4内の磁場分布は、容器4と磁極6との位置関係、磁極配置および磁極6の変動速度を変更することで決定され、それらは、前記容器と磁石との間に形成される加工間隙を調整可能に構成される(例えば、図1(B)におけるヨーク10に長孔を穿設し、該長孔の適宜位置に磁極6を位置調整可能に固定することで、図面の左右方向における容器4に対する磁極6の位置を調整可能にした。また、図2に示すように、容器4内にセットされる工作物5については、スラリー1の流動性を大きく妨げない限りにおいて、工作物5の加工表面を、前記容器4と磁石6との間の相対運動方向に対して所定の角度で傾斜させることによって、スラリー1との衝接を促進して研磨特性を向上させることができる。また、工作物5を容器4内にセットするためのジグ9については、流動特性を低下させて泡等の発生のないような形状が採用される。
【0013】また、前記磁性流体2と微細砥粒3との混合割合を変更してスラリー1の研磨特性ないし洗浄特性を調整することもできる。さらには、前記磁石6が永久磁石から構成される他、電磁コイルもしくは永久磁石と電磁コイルとの組合せから磁場発生源である磁極が構成されるとともに、それらの磁場の大きさを変動調整可能に構成することもできる。そして、モータ8等の駆動装置における回転制御を行うことにより、前記容器4と磁石6との間の相対運動の大きさを変動させて、磁場変動の大きさを調整することもできる。図3はこのようにして構成された実験装置の全景写真である。
【0014】<実験条件および実験方法>前記実験装置により、毛細管内壁面の加工実験の前段階として、板状工作物を対象として加工実験を行い、表面形状の時間的変化を調べ、スラリーの加工挙動を検討した。図4に実験条件を示す。工作物にはC#4000の研磨紙を用いて表面粗さ0.4μmRy程度に仕上げたC3604黄銅板を採用した。磁性流体に混入する微細砥粒には、平均粒径4〜30μmの4種類のWA砥粒を準備した。本加工法による加工量は僅少であり、測定がきわめて困難であったため、図5に示すように、工作物表面形状の3か所における時間的変化を調べ、加工特性を検討することとした。表面形状の測定には表面粗さ測定機を用い、測定方向はスラリーの流動方向に対して垂直方向とした。
【0015】<加工特性に関する実験的検討>図6に、代表的にWA#3000の場合における加工前後のb点(図5)における表面形状を示す。比較のため、磁性流体のみによる実験結果も併記した。図6(a)に示すように、WA#3000の場合には、加工前から存在していた微小凹部が加工により成長し、深くなっている。これは、小径砥粒が表面の微小凹部に進入し、砥粒に作用する遠心力と加工圧として除去加工に関与し、凹部をさらに掘り下げたためと推察される。一方、磁性流体のみの場合には、加工前に存在した極微小凹凸が僅かに除去されたに過ぎず、加工前後の表面形状には殆ど変化が見られていない(図6(b))。以上の実験結果により、本加工法では、磁性流体の流体挙動だけでは加工作用は得られず、磁性流体に混入された砥粒により表面が微細加工されることが明らかとなった。
【0016】なお、図7に示すように、測定箇所によっては凹部の極端な成長も観察された。この事象は別途のWA#1500においても観察されたが、砥粒径が大きいWA#800とWA#400の場合には観察されなかった。また、後者の場合には、表面の凹部だけでなく凸部に対しても積極的に加工が進行したことが観察された。これらの結果より、加工面の創成機構が加工面の微小凹凸形状と砥粒径の関係に大きく左右されることも明らかとなった。また、上記実験結果から工作物表面を平滑化するためには、工作物の表面凹部に砥粒が入らないように砥粒径を大きくする必要があるが、砥粒径を大きくすると加工中に砥粒が容器の底に沈殿してしまう。そこで、WA砥粒に比較して比重が軽くて硬いダイヤモンド砥粒を用いた実験を別途行ったところ、WA砥粒の場合と同様の加工能力があることが確認できた。
【0017】かくして、低表面張力を有する磁性流体と微細砥粒とを混合したスラリーを磁場内にて磁力駆動し、前記スラリーと該スラリー内にセットされた非磁性体の工作物との間に相対運動を発生させる本加工法によれば、新しい微細表面加工技術を提案するとともに、加工原理を解明して実験装置を開発し、板状工作物を用いて加工特性を実験的に検討した結果、加工面の微小凹凸と砥粒径の関係により、加工面の創成機構に差異は生じるものの、微細加工の可能性を示すことができ、精密毛細管の内表面等の表面仕上げやバリ取りあるいは表面洗浄に充分に適用できることが確認された。また、詳述はしないが、砥粒の種類および粒径を選定することで、表面の平滑加工にも適用できることも確認されている。
【0018】以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、磁性流体については磁気感応性を有する種々の種類のもの(コバルト、ニッケル、鉄等の強磁性粒子を水や油等に混入させたもの)が採用可能であり、微細砥粒についても磁性流体に混合、分散できれば種類、粒度および比重に制限はない。また、磁性流体と微細砥粒との混合割合、容器の形状、磁石の形状、形式およびその配列形態ならびに磁場の変動形態、容器と磁石との間の相対運動形態(円運動以外に往復振動等、また、容器側を駆動してもよいし、磁石側を駆動してもよい)、相対運動を生じさせる駆動装置(モータ駆動以外にのみならず油圧、空気圧でもよいし、工具挙動をより活発にするためパルスモータによる非等速回転や回転方向制御がなされてもよい)の形式、傾斜角度を含む容器内における工作物のセット形態、そのためのジグの形状、形式、容器と磁石との間の加工間隙の調整形態、磁場の大きさの変動調整形態(永久磁石および電磁石が設置された円板の回転数制御による周波数変動により磁場を変動制御したり、電磁石が設置された場合は、回転数制御に優先させて電磁石のランダムな電流制御により励磁力を変動させて磁場をランダムに変動制御してもよい。)、精密毛細管等の工作物の種類等については適宜選定できる。
【0019】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明では、低表面張力を有する磁性流体と微細砥粒とを混合したスラリーを磁場内にて磁力駆動し、前記スラリーと該スラリー内にセットされた非磁性体の工作物との間に相対運動を発生させて前記工作物表面を研磨ないし洗浄することにより、磁力駆動によって低い表面張力を生かして微細毛細管内を容易かつ円滑に流動する磁性流体の助力を受けて、スラリー中の微細砥粒が目詰まり等を引き起こすことなく、円滑に微細毛細管内面を研磨ないし洗浄することが可能となる。
【0020】また、前記微細砥粒は、工作物の加工表面における微細凹凸より大きな粒径で、かつ前記磁性流体に対して沈殿しない程度に小比重のものが選定された場合は、工作物の表面平滑化の実現が可能となる。さらに、前記磁性流体と微細砥粒との混合割合を変更してスラリーの研磨特性ないし洗浄特性を調整する場合は、工作物の種類に対応させて最適な研磨等の加工特性を容易に得ることが可能となる。さらにまた、低表面張力を有する磁性流体と微細砥粒とを混合したスラリーおよび非磁性体の工作物を収容した容器と、前記容器外に近接設置された少なくとも1個の磁石と、これら容器と磁石との間に相対運動を発生させる駆動装置とを備えたことにより、工作物とスラリーとの間に相対運動させることで、種々の工作物のあらゆる加工面の研磨ないし洗浄に対応できる汎用性のある磁性流体利用の加工装置が得られる。
【0021】また、前記容器を環状に構成するとともに、円板上に少なくとも1個の磁石を設置し、前記容器と磁石との間に回転による相対運動を発生させるように構成した場合は、回転駆動という単純な相対運動により工作物のあらゆる加工面の研磨ないし洗浄ができる。さらに、前記少なくとも1個の磁石が設置された円板側をモータ駆動により回転駆動するように構成した場合は、工作物がセットされた容器側を静止、固定させたままで加工作業ができるので、加工中での工作物の傾斜角度の変更調整等が容易にできる。さらにまた、前記工作物の加工表面を、前記容器と磁石との間の相対運動方向に対して所定の角度で傾斜させてセットすることを可能に構成した場合は、スラリーとの衝接を促進して研磨特性を向上させることができる。
【0022】また、前記容器と磁石との間に形成される加工間隙を調整可能に構成した場合は、磁石による磁性流体への磁力を微妙に調整することが可能となり、円運動等により生じる充分な周速度が得られる等、容器内におけるきめ細かな大きさの加工力を発生させることができる。さらに、前記磁石が永久磁石あるいは電磁コイルもしくはこれらの組合せから磁場発生源を構成するとともに、それらの磁場の大きさを変動調整可能に構成した場合は、選択する磁石の設計の自由度が向上する他、永久磁石における回転数制御による磁場変動制御に優先させて電磁石の電流制御により励磁力を変動させて磁場を変動制御させる等、より精密な磁場制御も可能となる。さらにまた、前記容器と磁石との間の相対運動の大きさを変動させて、磁場変動の大きさを調整可能に構成した場合は、工作物および工具であるスラリーとの関係に応じて磁場における磁力を制御して研磨力を適正に制御することが可能となる。
【0023】また、前記工作物が精密毛細管である場合は、低い表面張力を生かして微細毛細管内を容易かつ円滑に流動するスラリーにより、目詰まり等を引き起こすことなく、円滑に微細毛細管内面を研磨ないし洗浄することが可能となる。このように本発明によれば、いかなる加工面にも適用可能で、精密毛細管内面等であっても詰まることなく円滑に研磨することが可能な磁性流体利用の加工方法およびその装置が提供される。
【出願人】 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【出願日】 平成13年8月23日(2001.8.23)
【代理人】 【識別番号】100099265
【弁理士】
【氏名又は名称】長瀬 成城
【公開番号】 特開2003−62747(P2003−62747A)
【公開日】 平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願番号】 特願2001−252447(P2001−252447)