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【発明の名称】 クランクシャフト加工機のレスト方法及びそのレスト装置
【発明者】 【氏名】下村 真素美
【住所又は居所】石川県小松市符津町ツ23 コマツ工機株式会社粟津工場内

【要約】 【課題】黒皮のまま精度良く加工でき、黒皮を剥がす前加工が不要となるクランクシャフト加工機のレスト方法及びレスト装置を提供する。

【解決手段】クランクシャフト(1)のメインジャーナル軸心に略垂直な面内で開閉自在に設けられた1対のレストアーム(12,12)と、メインジャーナル軸心に垂直方向に伸縮自在に、かつ未加工のメインジャーナル(2a)又はカウンタウエイト(3)を少なくとも3方向から囲むように、レストアーム(12,12)に設けられ、そのピストンロッド(19)先端部にクランプパッド(19b)を装着した複数の液圧クランプ手段(18a〜18e)と、液圧クランプ手段の各加圧側液室(17)からの油を絞るように前記液室(17)に連通した絞り弁(21a〜21e)と、該絞り弁と液圧発生源(20)の間に設けられ、圧力液を連通又は遮断する電磁方向切換弁(22)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 クランクシャフト(1)の加工時に加工部近傍をレストするクランクシャフト加工機のレスト方法において、レスト装置(10)に設けられた複数の液圧クランプ手段(18a〜18e)の加圧側液室(17)の液圧力を所定圧力に制御した状態で、該複数の液圧クランプ手段(18a〜18e)のピストンロッド(19)をクランクシャフト(1)のメインジャーナル部の軸心に対して垂直方向に移動させて、ピストンロッド(19)の先端部に装着したクランプパッド(19b)を未加工のメインジャーナル(2a)又はカウンタウエイト(3)の外周面に互いに異なる少なくとも3方向から囲むように当接させてクランプする工程と、前記メインジャーナル(2a)又はカウンタウエイト(3)の外周面を前記液圧クランプ手段(18a〜18e)でクランプした後、該液圧クランプ手段(18a〜18e)のクランプ力に、それぞれの加圧側液室(17)に連通した絞り弁(21a〜21e)により切削負荷に対抗して圧油の絞り抵抗として発生する、切削負荷反力をクランプ力として付加して用いることにより、クランクシャフト(1)の安定した切削加工を行う工程とを有することを特徴とするクランクシャフト加工機のレスト方法。
【請求項2】 クランクシャフト(1)の加工時に加工部近傍をレストするクランクシャフト加工機のレスト装置(10)において、クランクシャフト(1)のメインジャーナル部の軸心に略垂直な面内で開閉自在に設けられた1対のレストアーム(12,12)と、クランクシャフト(1)のメインジャーナル部の軸心に対して垂直方向に伸縮自在に、かつ未加工のメインジャーナル(2a)又はカウンタウエイト(3)の外周面を互いに異なる少なくとも3方向から囲むように、前記1対のレストアーム(12,12)に設けられ、そのピストンロッド(19)の先端部にクランクシャフト(1)と当接するクランプパッド(19b)を装着した複数の液圧クランプ手段(18a〜18e)と、該液圧クランプ手段(18a〜18e)のそれぞれの加圧側液室(17)からの圧油を絞るように前記液室(17)に連通した絞り弁(21a〜21e)と、前記絞り弁(21a〜21e)と液圧発生源(20)との間に設けられ、液圧発生源(20)からの圧力液を連通又は遮断する電磁方向切換弁(22)とを備えたことを特徴とするクランクシャフト加工機のレスト装置。
【請求項3】 クランクシャフト(1)の加工時に加工部近傍をレストするクランクシャフト加工機のレスト装置(10)において、クランクシャフト(1)のメインジャーナル部の軸心に略垂直な面内で開閉自在に設けられた1対のレストアーム(12,12)と、クランクシャフト(1)のメインジャーナル部の軸心に対して垂直方向に伸縮自在に、かつ未加工のメインジャーナル(2a)又はカウンタウエイト(3)の外周面を互いに異なる少なくとも3方向から囲むように、前記1対のレストアーム(12,12)に設けられ、そのピストンロッド(19)の先端部にクランクシャフト(1)と当接するクランプパッド(19b)を装着した複数の液圧クランプ手段(18a〜18e)と、該液圧クランプ手段(18a〜18e)のそれぞれの加圧側液室(17)からの圧油を絞るように前記液室(17)に連通した絞り弁(21a〜21e)と、前記絞り弁(21a〜21e)と液圧発生源(20)との間に設けられ、前記絞り弁(21a〜21e)からの圧油を遮断するチェック弁(23)と、前記絞り弁(21a〜21e)と前記チェック弁(23)との間に設けられ、前記絞り弁(21a〜21e)からの圧油が所定の油圧力を超えた場合に、この圧油を逃がすリリーフ弁(26)とを備えたことを特徴とするクランクシャフト加工機のレスト装置。
【請求項4】 請求項2又は請求項3記載のクランクシャフト加工機のレスト装置において、前記1対のレストアーム(12,12)は揺動開閉式であることを特徴とするクランクシャフト加工機のレスト装置。
【請求項5】 請求項2又は請求項3記載のクランクシャフト加工機のレスト装置において、前記1対のレストアーム(12,12)は直動開閉式であることを特徴とするクランクシャフト加工機のレスト装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クランクシャフトミラー等のクランクシャフト加工機で切削するワークを支持するためのレスト方法及びそのレスト装置に関する。
【0002】
【従来の技術】クランクシャフトのメインジャーナルやピンジャーナルを切削加工するとき、切削抵抗でワークが動かないように加工部近傍をクランプする(通常レストと呼ばれており、以後レストと言う)必要があり、従来から、このためのレスト装置(補助クランプ装置)が多く提案されている。例えば特開平6−320319号公報に記載されたクランクシャフトミラーのレスト装置が知られており、図8及び図9を参照して同公報に示された従来技術を説明する。図8は同公報に記載されたクランクシャフトミラーのレスト装置の説明図であり、図9は従来の切削加工工程の説明図である。
【0003】図8において、レスト装置10Aは、それぞれピン14a,14bの回りに揺動自在に設けられ、かつアームシリンダ11により開閉自在とされた上下1対のレストアーム12,12を有している。また、これらの1対のレストアーム12,12の対向面に設けた略半円形状の切欠部には複数(通常2個)のクランプパッド12aを備えており、該複数のクランプパッド12aによりクランクシャフト1のメインジャーナル1aを求心してクランプするようになっている。前記1対のレストアーム12,12のピン14a,14bと反対側端部には、クランクシャフト1の加工時に該レストアーム12,12が開放しないようにロックするロック機構13が設けられている。
【0004】加工の手順としては、従来は、例えば図9に示すように、左右にそれぞれメインジャーナル加工用カッタとピンジャーナル加工用カッタを備えた、クランクシャフトミラーで、4気筒エンジンのクランクシャフト1を加工する場合、第1工程でクランクシャフト1をレストしない状態で、まず第2メインジャーナルJ2を加工し、次に第2工程では第1工程で加工した第2メインジャーナルJ2をレスト装置10Aによりレストした状態で、第3メインジャーナルJ3と第1ピンジャーナルP1を同時に加工する。第3工程では、第2工程で加工した第3メインジャーナルJ3をレストした状態で、第4メインジャーナルJ4と第2ピンジャーナルP2を同時に加工する。以後同様にして第4工程から第5工程まで加工を繰り返し、第5メインジャーナルJ5、第3ピンジャーナルP3及び第4ピンジャーナルP4を順次加工するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特開平6−320319号公報に記載の従来技術においては、以下のような問題がある。即ち、従来のレスト装置10Aは求心タイプとなっているので、レストする基準面(ジャーナル部)が鋳物や鍛造素材の黒皮のように偏心していたり円筒状でない場合、レスト時にクランクシャフト1を曲げてクランプして加工することになる。このため、加工後クランクシャフト1をアンクランプすると前記の曲がりが元に戻って加工精度を確保できないということが生じる。この理由から、従来は前述のように、クランクシャフトミラーでの一連の加工工程において、前工程で加工した部位を基準面とし、この基準面をレストして次の部位を加工するようにしているものの、第1工程では切削部近傍をレストしない状態で加工するので加工精度を充分に高めることが困難である。また、あるいは、クランクシャフト加工機での加工工程以前に旋盤等の別機械で前加工することもあり、このため加工工程が増え、加工時間が長くかかり、製造コストが嵩むという問題もある。
【0006】本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、黒皮のまま精度良く加工でき、黒皮を剥がすための前加工が不要となるクランクシャフト加工機のレスト装置及びそのレスト方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】上記の目的を達成するために、第1発明は、クランクシャフトの加工時に加工部近傍をレストするクランクシャフト加工機のレスト方法において、レスト装置に設けられた複数の液圧クランプ手段の加圧側液室での液圧力を所定圧力に制御した状態で、該複数の液圧クランプ手段のピストンロッドをクランクシャフトのメインジャーナル部の軸心に対して垂直方向に移動させて、ピストンロッドの先端部に装着したクランプパッドを未加工のメインジャーナル又はカウンタウエイトの外周面に互いに異なる少なくとも3方向から囲むように当接させてクランプする工程と、前記メインジャーナル又はカウンタウエイトの外周面を前記液圧クランプ手段でクランプした後、該液圧クランプ手段のクランプ力に、それぞれの加圧側液室に連通した絞り弁により切削負荷に対抗して圧油の絞り抵抗として発生する、切削負荷反力をクランプ力として付加して用いることにより、クランクシャフトの安定した切削加工を行う工程とを有するクランクシャフト加工機のレスト方法としている。
【0008】この第1発明によると、鋳物や鍛造素材の黒皮のように偏心していたり円筒状でないクランクシャフトのメインジャーナル部を基準面としてレストできる。したがって、従来、黒皮部がレストできないため、第1工程では切削部近傍をレストしない状態で加工せざるを得ず、充分な加工精度を得ることが困難であったが、第1工程においても切削部近傍をレストし満足できる加工精度が得られるようになる。また、従来はクランクシャフト加工機での加工工程以前に旋盤等の別機械でレストする部位を前加工することもあり、このため加工工程が増え、加工時間が長くかかり、製造コストが嵩んでいたが、黒皮部をレスト可能とし前加工を不要としたことからこの問題も無くなる。また、所定圧を液圧クランプ手段の加圧側液室に発生させてクランプを行う際に、クランクシャフトを複数の液圧クランプ手段により、ジャーナル軸を中心に対向して複数の半径方向から均等な所定圧でクランプするので、クランプ個所であるメインジャーナル部が黒皮状態でその面粗度や円筒度が悪い、又は偏芯している場合においても、クランクシャフトを曲げることなくクランプすることができる。そして、このクランクシャフトを曲げない状態でのクランプ後、続いて行われる切削加工時には、切削負荷が変動しても、この変動切削負荷に対応する液圧クランプ手段に連通した絞り弁により、変動切削負荷に対抗して圧油の絞り抵抗が発生し、この絞り抵抗が切削負荷反力となって、クランプ力として付加されることにより、クランクシャフトを安定して(びびりの発生なく)精度良く加工できる。さらに、油圧シリンダの伸縮によりレストクランプするので、メインジャーナルの径が変わっても、クランプパッドを交換(厚さを変更する)必要がなく、ワーク径の異なるクランクシャフトに対しても汎用的に本レストを適用できる。
【0009】また第2発明は、クランクシャフトの加工時に加工部近傍をレストするクランクシャフト加工機のレスト装置において、クランクシャフトのメインジャーナル部の軸心に略垂直な面内で開閉自在に設けられた1対のレストアームと、クランクシャフトのメインジャーナル部の軸心に対して垂直方向に伸縮自在に、かつ未加工のメインジャーナル又はカウンタウエイトの外周面を互いに異なる少なくとも3方向から囲むように、前記1対のレストアームに設けられ、そのピストンロッドの先端部にクランクシャフトと当接するクランプパッドを装着した複数の液圧クランプ手段と、該液圧クランプ手段のそれぞれの加圧側液室からの圧油を絞るように前記液室に連通した絞り弁と、前記絞り弁と液圧発生源との間に設けられ、液圧発生源からの圧力液を連通又は、遮断する電磁方向切換弁とを備えた構成としている。
【0010】第2発明によると、前述した第1発明による効果に加えて、電磁方向切換弁を切換えることにより、液圧クランプ手段の加圧側液室を油圧タンクへ連通させた状態(加圧側液室の油圧は0)にするので、レストア−ムを閉操作させて、複数の液圧クランプ手段のクランプパッドを、クランクシャフトのメインジャーナル又はカウンタウエイトの外周面などの所定クランプ個所に当接させ位置決め操作を行う際に、クランプ個所とピストンロッドとの干渉ストローク分、液圧クランプ手段の液室から余分な圧力液が、絞り弁および電磁方向切換弁を経由して急速に外部に排出可能となり、液圧クランプ手段のピストンロッドは迅速に収縮される。よって、クランプパッドをクランクシャフトの所定クランプ個所へ当接させる操作が極めて短時間に行える。
【0011】また第3発明は、クランクシャフトの加工時に加工部近傍をレストするクランクシャフト加工機のレスト装置において、クランクシャフトのメインジャーナル部の軸心に略垂直な面内で開閉自在に設けられた1対のレストアームと、クランクシャフトのメインジャーナル部の軸心に対して垂直方向に伸縮自在に、かつ未加工のメインジャーナル又はカウンタウエイトの外周面を互いに異なる少なくとも3方向から囲むように、前記1対のレストアームに設けられ、そのピストンロッドの先端部にクランクシャフトと当接するクランプパッドを装着した複数の液圧クランプ手段と、該液圧クランプ手段のそれぞれの加圧側液室からの圧油を絞るように前記液室に連通した絞り弁と、前記絞り弁と液圧発生源との間に設けられ、前記絞り弁からの圧油を遮断するチェック弁と、前記絞り弁と前記チェック弁との間に設けられ、前記絞り弁からの圧油が所定の油圧力を超えた場合に、この圧油を逃がすリリーフ弁とを備えたことを特徴とするクランクシャフト加工機のレスト装置の構成としている。
【0012】第3発明によると、前述した第1発明による効果に加えて、レストア−ムを閉操作させて、複数の液圧クランプ手段のクランプパッドを、クランクシャフトのメインジャーナル又はカウンタウエイトの外周面などの所定クランプ個所に当接させ位置決め操作を行う際に、レストア−ムを閉操作させるだけで、液圧クランプ手段のピストンロッドは、液圧クランプ手段の液室から余分な圧力液が絞り弁およびリリーフ弁を経由して外部に排出されることにより、クランプ個所との干渉ストローク分、収縮される。しかも、クランプパッドをクランクシャフトの所定クランプ個所へ所定のクランプ圧力を付加したまま当接させることができるので、レスト操作完了後即座に切削加工工程へ移行可能となり加工サイクルタイムの短縮に寄与する。
【0013】また第4発明は、第2発明又は第3発明において、前記1対のレストアームは揺動開閉式である構成としている。また第5発明は、第2発明又は第3発明において、前記1対のレストアームは直動開閉式である構成としている。
【0014】第4発明又は第5発明によると、揺動開閉式や直動開閉式のレストアームに対して容易に適用可能であり、カッタ交換の容易性やワーク搬出入の容易性を満たした汎用性の高いレスト装置が構成できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。先ず、図1〜図3により第1実施形態を説明する。図1はクランクシャフト加工機の斜視図で、図2は本実施形態のレスト装置の要部側面図で、図3はその油圧回路図である。尚、図8(従来技術)においても同一の構成要素に同一符号を付して以下の説明を省き、以後も同様とする。
【0016】図1により、本発明に係るレスト装置が適用されるクランクシャフトミラーを概略説明する。ベッド41上の左右端部に、加工すべきワーク(クランクシャフト1)の両端部を支持する2基のワークヘッド42,42が設けられており、両ワークヘッド42,42の対向面にはワークをクランプするチャック44,44がそれぞれ設けられている。両ワークヘッド42,42の間に2基のカッタユニット45a,45bが設置されており、2基のカッタユニット45a,45bはベッド41の長手方向(V軸)に移動自在なサドル49,49をそれぞれ有していて、これらサドル49,49上に、V軸と直交するY軸方向に移動自在にスライド46,46がそれぞれ設けられている。また、両スライド46,46の対向面には、一端側が支軸47によりサドル49側に支承されたスイングヘッド48,48がそれぞれ設けられていると共に、各スイングヘッド48の他端側は前記スライド46上に設置された揺動機構50に接続されていて、この揺動機構50によりスイングヘッド48の他端側が支軸47を中心に上下方向(X軸)に揺動されるようになっている。
【0017】また、上記両スイングヘッド48,48内には、カッタドラムモータ51により回転されるカッタドラム52がそれぞれ設けられており、一方例えば左側のカッタユニット45aに設けられたカッタドラム52の内周面にはメインジャーナル加工用カッタ52aが、また例えば右側のカッタユニット45bに設けられたカッタドラム52の内周面にはピンジャーナル加工用カッタ52b(図示せず)が取付けられている。
【0018】また、各カッタユニット45a,45bのサドル49には、互いに対向する位置にそれぞれレスト装置10a,10bが設置されている。両レスト装置10a,10bの構成は同じなので、以下ではレスト装置10aのみを説明する。
【0019】図2に示すように、レスト装置10aは、ピン14a,14bの回りに揺動自在に設けられた上下1対のレストアーム12,12を備えており、この揺動面はクランクシャフト1のメインジャーナル2aの軸心に略垂直面内に設けられている。上下1対のレストアーム12,12の互いに対向する面に設けた略半円形状の切欠部12b,12bと、レストアーム12,12の外面との間には、4個の貫通孔16がそれぞれ形成されており、該貫通孔16の前記外面近傍端部には貫通孔16よりも大径の液室(本例では油室)17がそれぞれ形成されている。それぞれの貫通孔16内には、ピストンロッド19がその先端部を切欠部12b,12bから突出させて嵌挿されており、ピストンロッド19のピストン19aは油室17に嵌挿されている。ピストンロッド19の先端部には、クランプパッド19bが装着されている。また、各油室17の前記外面端部には油給排口部17aが取付けられており、外部から油給排口部17aを経由して圧油が給排されるようになっている。また、ピストン19aと油給排口部17aの間には、ピストンロッド19側へピストン19aを付勢させるためにスプリング19cが設けられている。これらにより、油圧シリンダ18a〜18dからなる液圧クランプ手段が構成されている。各油圧シリンダ18a〜18dの軸心は、前記切欠部12b,12b内でクランプされるクランクシャフト1のメインジャーナル2aの軸心に略垂直となるように設けられている。
【0020】また、上下1対のレストアーム12,12の揺動中心となるピン14a,14bには互いに噛合うギア15,15がそれぞれ装着されており、1対のレストアーム12,12の一方(図示では下側)の端部に設けた突出部に取付けたアームシリンダ11の伸縮により前記ギア15,15を介して両レストアーム12,12が開閉するようになっている。
【0021】図3に示すように、前記4個の油圧シリンダ18a〜18dは、それぞれ絞り弁21a〜21dを経由して共通の管路26に接続されており、管路26は電磁方向切換弁22、チェック弁23、減圧弁24及び油圧源20を順に接続している。また、管路26は、電磁方向切換弁22を経由してタンク25に接続されている。電磁方向切換弁22の操作ソレノイド部は図示しない制御器に接続されており、該制御器からの開閉指令により開閉するようになっている。
【0022】減圧弁24の設定圧は、クランクシャフト1の切削加工時の反力に打ち勝つ圧力に設定され、例えば1〜7MPa程度である。
【0023】本実施形態の構成によるクランクシャフト加工機の作動を説明する。
(1)先ず、ワーク(クランクシャフト1)の両端部をクランクシャフト加工機の両側のチャック44,44で把持してワークを位置決めすると、1対のレストアーム12,12を開状態のまま、本レスト装置10は長手方向(V軸)に移動され、クランプすべきメインジャーナル2aの所定位置に割り出されて停止する。
(2)次に、電磁方向切換弁22をa位置(図3参照)に切り換えて油圧を遮断すると共に、油圧シリンダ18a〜18dの各油室17を油圧タンク25へ連通させ、各ピストンロッド19をスプリング19cの弾性力により伸張させておいた状態で、アームシリンダ11によりレスト装置10の1対のレストアーム12,12を閉じた後、ロック機構13により1対のレストアーム12,12を閉状態でロックする。このとき、油圧シリンダ18a〜18dのそれぞれのクランプパッド19bがワーク(ここでは、クランクシャフト1の黒皮を被ったままのメインジャーナル2a)に当たった後、クランプ完了までのピストンロッド19の収縮ストローク分の圧油が、各油室17から押し出され、この余分な圧油は電磁方向切換弁22を経由してタンク25へ排出される。
【0024】(3)次に、電磁方向切換弁22をb位置(図3参照)に切換え、油圧シリンダ18a〜18dの各油室17内の圧油を減圧弁24で設定した所定圧に加圧する。このクランプの際には、複数の液圧クランプ手段18a〜18dにより、ジャーナル軸を中心に対向して複数の半径方向から均等な所定圧でクランプしている。よって、クランプ個所であるメインジャーナル部が黒皮状態でその面粗度や円筒度が悪い、又は偏芯している場合においても、クランクシャフト1は曲がることなくクランプされる。
【0025】(4)また次に、このクランクシャフト1を曲げることなく複数の液圧クランプ手段18a〜18dによりクランプされた状態で、メインジャーナル加工用カッタ52a又はピンジャーナル加工用カッタ52bにより所定のメインジャーナル又はピンジャーナルの切削が行われる。この際、切削負荷が変動しても、この変動切削負荷に対応する液圧クランプ手段18a〜18dにそれぞれ連通した絞り弁21a〜21dにより、変動切削負荷に対抗した圧油の絞り抵抗が発生し、この絞り抵抗が切削負荷反力となって、液圧クランプ手段18a〜18dにクランプ力として付加されることになり、クランクシャフト1を安定して(びびりの発生がなく)精度良く加工する。
(5)次に、クランクシャフト1の所定のメインジャーナル又はピンジャーナル加工完了後、ロック機構13をアンロックさせ、油圧シリンダ11の収縮によって1対のレストアーム12,12を開とし、本レスト装置10を長手方向(V軸)に移動させ、次にクランプすべきメインジャーナル2aの所定位置に割り出し、停止する。
(6)以下順に(1)〜(5)の動作を繰り返し、目的とするクランクシャフトのメインジャーナル又はピンジャーナルの加工を完了する。
【0026】以上による本第1実施形態の作用効果を説明する。
(1)電磁方向切換弁22をa位置として油圧シリンダ18a〜18dからのリターン油を油圧タンク25へ連通させた状態で油圧シリンダ18a〜18dのスプリング19cの付勢力によりクランクシャフト1のメインジャーナル2aの外周部をレストするようにしたため、黒皮を被ったままのメインジャーナル2aをクランプしてもクランクシャフト1の反力により油圧シリンダ18a〜18d内の各油室17から余分な圧油が迅速に排出されるので、クランクシャフト1が曲がってクランプされることがない。そして、この後、電磁方向切換弁22をb位置に切り換えて前記リターン油を遮断した状態で切削加工を行なうので、加工中にクランクシャフト1に切削反力が加わっても絞り弁21a〜21dの絞り抵抗によりクランクシャフト1を強固にレスト支持し、クランクシャフト1の位置を保持できる。従って、レスト部位が黒皮状態の第1加工工程であっても、レスト装置によりレストしない状態で加工する必要がなく、確実に、かつ強固に本レスト装置10でレストした状態で加工できるので、加工精度を向上できる。また、旋盤等で前加工する必要がないので、前加工のためのコスト及び加工時間を無くすことができると共に、黒皮加工するための旋盤等が不要となる。
(2)メインジャーナル2aの径が変わっても、クランプパッド19bを交換する(厚さを変更する)必要が無く、油圧シリンダ18a〜18dの伸縮により対応できるので、ワーク径の異なるものに対しても汎用的に本レスト装置10を適用できる。
【0027】次に、第2実施形態を、第2実施形態のレスト装置の油圧回路図である図4により説明する。図3、図4に見られるように、それぞれの油圧回路において、第1実施形態の電磁方向切換弁22に対し、第2実施形態では管路26の油をリリーフ弁26を経由して油タンク25に排出させ、かつ第1実施形態の油圧シリンダ18a〜18dのスプリング19cを取り除いた構成としている。
【0028】減圧弁24の設定圧は、クランクシャフト1の切削加工時の反力に打ち勝つ圧力に設定され、例えば1〜7MPa程度である。またリリーフ弁26のリリーフ圧は上記減圧弁24の設定圧よりもやや高い圧力に設定される。
【0029】第2実施形態の構成によるクランクシャフト加工機の作動を説明する。
(1)先ず、クランクシャフト1の両端部をクランクシャフト加工機の両側のチャック44,44で把持してワークを位置決めすると、1対のレストアーム12,12を開状態のまま、本レスト装置10は長手方向(V軸)に移動され、クランプすべきメインジャーナル2aの所定位置に割り出されて停止する。
(2)次に、各ピストンロッド19を減圧弁24で設定した油圧により伸張させておいた状態で、アームシリンダ11によりレスト装置10の1対のレストアーム12,12を閉じた後、ロック機構13により1対のレストアーム12,12を閉状態でロックする。このとき、油圧シリンダ18a〜18dのそれぞれのクランプパッド19bがワーク(ここでは、クランクシャフト1の黒皮を被ったままのメインジャーナル2a)に当たった後、クランプ完了までのピストンロッド19の収縮ストローク分の圧油が各油室17から押し出され、所定の油圧力を超えたときこの余分な圧油はリリーフ弁26を経由してタンク25へ排出される。この段階で、ワークは、複数の液圧クランプ手段18a〜18dにより、ジャーナル軸を中心に対向して複数の半径方向から均等な所定圧でクランプされている。よって、クランプ個所であるメインジャーナル部が黒皮状態でその面粗度や円筒度が悪い、又は偏芯している場合においても、クランクシャフト1は曲がることなくクランプされる。
【0030】(3)また次に、このワークを曲げることなく複数の液圧クランプ手段18a〜18dによりクランプされた状態で、メインジャーナル加工用カッタ52a又はピンジャーナル加工用カッタ52bにより所定のメインジャーナル又はピンジャーナルの切削が行われる。この際、切削負荷が変動しても、この変動切削負荷に対応する液圧クランプ手段18a〜18dに連通した絞り弁21a〜21dにより、変動切削負荷に対抗した圧油の絞り抵抗が発生し、この絞り抵抗が切削負荷反力となって、液圧クランプ手段18a〜18dにクランプ力として付加されることになり、クランクシャフト1を安定して(びびりの発生なく)精度良く加工する。
(4)次に、クランクシャフト1の所定のメインジャーナル又はピンジャーナル加工完了後、ロック機構13をアンロックさせ、油圧シリンダ11の収縮によって1対のレストアーム12,12を開とし、本レスト装置10を長手方向(V軸)に移動させ、次にクランプすべきメインジャーナル2aの所定位置に割り出し、停止する。
(5)以下順に(1)〜(4)の動作を繰り返し、目的とするクランクシャフトのメインジャーナル又はピンジャーナルの加工を完了する。
【0031】以上による本第2実施形態の作用効果を説明する。
(1)油圧シリンダ18a〜18dからのリターン油を、リリーフ弁26を介し、油圧タンク25へ連通させた状態で、油圧シリンダ18a〜18dによりクランクシャフト1のメインジャーナル2aの外周部をレストするようにしたため、黒皮を被ったままのメインジャーナル2aをクランプしてもクランクシャフト1の反力により油圧シリンダ18a〜18d内の油室17から余分な圧油が排出されるので、クランクシャフト1が曲がってクランプされることがない。そして、この後続いて切削加工を行なうが、加工中にクランクシャフト1に切削反力が加わっても、絞り弁21a〜21dの絞り抵抗によりクランクシャフト1を強固にレスト支持し、クランクシャフト1の位置を保持できる。従って、レスト部位が黒皮状態の第1加工工程であっても、レスト装置によりレストしない状態で加工する必要がなく、確実に、かつ強固に本レスト装置10でレストした状態で加工できるので、加工精度を向上できる。また、旋盤等で前加工する必要がないので、前加工のためのコスト及び加工時間を無くすことができると共に、黒皮加工するための旋盤等が不要となる。
(2)メインジャーナル2aの径が変わっても、クランプパッド19bを交換する(厚さを変更する)必要が無く、油圧シリンダ18a〜18dの伸縮により対応できるので、ワーク径の異なるものに対しても汎用的に本レスト装置10を適用できる。
【0032】次に、図5により第1実施形態および第2実施形態の他の実施形態を説明する。即ち、前記油圧シリンダ18a〜18dの数は4個に限定されず、少なくとも3個以上あればよい。3個以上の油圧シリンダ18a〜18cがあれば、クランクシャフト1のメインジャーナル2aの外周面を安定的にクランプできる。
【0033】次に、図6により第3実施形態を説明する。本実施形態では、ジャーナル部以外のカウンタウエイト部をクランプするレスト装置10a,10bを示している。ここでは、前実施形態と異なる構成を説明する。図6において、1対のレストアーム12,12の互いに対向する部位には、角状の切欠部12cと、半円形状の切欠部12dとが形成されており、前記角状の切欠部12cには3個の油圧シリンダ18a〜18cが、また前記半円形状の切欠部12dには2個の油圧シリンダ18d,18eがそれぞれのピストンロッド19の先端部を突出させて設けられている。3個の油圧シリンダ18a〜18cの軸心はクランクシャフト1のカウンタウエイト3の外周側面に略垂直になるように、また2個の油圧シリンダ18d,18eの軸心はクランクシャフト1のピンジャーナル2bの外周面に略垂直になるように設けられている。尚、油圧シリンダ18a〜18e(図示では18a〜18d)の油圧回路は図3又は図4と同様に構成される。
【0034】第3実施形態によると、第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、さらに次の作用効果が得られる。
(1)黒皮の被ったメインジャーナル2aのみでなく、黒皮の被ったカウンタウエイト3やピンジャーナル2bも押圧してクランプできるので、加工手順の制約が少なくなり、しかも強固にクランプができるようになる。
(2)任意形状のクランクシャフトにも対応でき、汎用性が高い。
【0035】次に、図7により第4実施形態を説明する。これまでの実施形態では、1対のレストアーム12,12がピン回りに揺動自在に設けられた揺動開閉式の構成で示したが、本本実施形態では、例えば図7に示すように直動開閉式のレストアーム12,12を備えている。図7において、左右1対のレストアーム12,12は左右方向に開閉自在に装置フレーム33,33に支承されて設けられており、互いに反対のネジ方向を有する左右のボールスクリュウ31a,31bがナット部32a,32bに係合している。さらに、ボールスクリュウ31a,31bはギアを介してモータ34に連結されており、該モータ34によりレストアーム12,12は開閉するようになっている。このような直動開閉式のレストアーム12,12に、前記第1〜第3実施形態で示した油圧シリンダ18a〜18e(図示では18a〜18d)を設ける。尚、油圧回路は前記図3又は図4と同様である。これにより、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0036】以上説明したように、本発明によると次のような効果を奏する。
(1)鋳物や鍛造素材の黒皮のように偏心していたり円筒状でないクランクシャフトのメインジャーナル部を基準面としてレストできるので、従来、黒皮部がレストできないため、第1工程では切削部近傍をレストしない状態で加工せざるを得ず、充分な加工精度を得ることが困難であったが、この第1工程においても切削部近傍をレストして満足できる加工精度が得られる。また、クランクシャフト加工機での加工工程以前に旋盤等の別機械でレストする部位を前加工することもあり、このため加工工程が増え、加工時間が長くかかり、製造コストが嵩んでいたが、黒皮部をレスト可能とし前加工を不要としたことからこの問題も無くなる。
(2)またレストクランプは、メインジャーナル部だけでなくカウンタウエイトやピンジャーナル部も黒皮のままクランプして加工できるので、種々のクランクシャフトの加工が可能となり、汎用性の高いレスト装置が構成できる。さらに、レスト本体としては、揺動開閉式、直動開閉式又は固定式等種々のものに容易に適用が可能なので、より汎用性を高めることができる。
【0037】(3)また、クランプの際には、複数の液圧クランプ手段により、ジャーナル軸を中心に対向して複数の半径方向から均等な所定圧でクランプするので、クランプ個所が粗悪形状の黒皮状態であっても、クランクシャフトを曲げることなくクランプすることができる。
(4)このクランクシャフトを曲げない状態でのクランプ後、続いて行われる切削加工時には、切削負荷が変動しても、この変動切削負荷に対応する液圧クランプ手段に連通した絞り弁により、変動切削負荷に対抗して圧油の絞り抵抗が発生し、この絞り抵抗が切削負荷反力となって、クランプ力として付加されることにより、クランクシャフトを安定して(びびりの発生なく)精度良く加工できる。
(5)液圧シリンダの伸縮によりレストクランプするので、メインジャーナルの径が変わっても、クランプパッドを交換(厚さの変更)する必要がなく、ワーク径の異なるクランクシャフトに対しても汎用的に本レストを適用できる。
【0038】(6)液圧クランプ手段の加圧側液室に連通する電磁方向切換弁でこの液室内の圧油を油圧タンクに排出可能としたため、クランプの際に、前記方向切換弁を切換えて、前記加圧側液室を油圧タンクへ連通させた状態(加圧側液室の油圧は0)にすることにより、ピストンロッドの収縮ストローク分、液圧クランプ手段の液室から余分な圧力液が、絞り弁及び電磁方向切換弁を経由して急速に外部に排出されるので、レストのクランプ操作が極めて短時間に行える。
【0039】(7)液圧発生源からの圧油をチェック弁及び絞り弁を経由して液圧クランプ手段の加圧側液室に供給し、レストクランプのときには、前記液室及び絞り弁からの戻り圧油を前記チェック弁で遮断すると共に、該戻り圧油が所定の油圧力を超えた場合にリリーフ弁を経由して油圧タンクにドレンするようにしたので、レストクランプの際に、レストア−ムを閉操作させるだけで、液圧クランプ手段の液室から余分な圧力液が絞り弁及びリリーフ弁を経由して外部に排出されることにより、液圧クランプ手段のピストンロッドはクランプ個所との干渉ストローク分だけ収縮される。しかも、クランプパッドをクランクシャフトの所定クランプ個所へ所定のクランプ圧力を付加したまま当接させることができるので、レスト操作完了後即座に切削加工工程へ移行可能となり、加工サイクルタイムの短縮に寄与できる。
【出願人】 【識別番号】394018524
【氏名又は名称】コマツ工機株式会社
【住所又は居所】石川県小松市八日市町地方5番地
【出願日】 平成13年12月7日(2001.12.7)
【代理人】 【識別番号】100073863
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 統
【公開番号】 特開2003−175430(P2003−175430A)
【公開日】 平成15年6月24日(2003.6.24)
【出願番号】 特願2001−373934(P2001−373934)