| 【発明の名称】 |
銅粉の製造方法及びその方法で得られた銅粉 |
| 【発明者】 |
【氏名】坂上 貴彦 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号 三井金属鉱業株式会社機能材料事業本部機能粉事業部内
【氏名】中村 芳信 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号 三井金属鉱業株式会社機能材料事業本部機能粉事業部内
【氏名】青木 晃 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号 三井金属鉱業株式会社機能材料事業本部機能粉事業部内
【氏名】安成 邦彦 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号 三井金属鉱業株式会社機能材料事業本部機能粉事業部内
【氏名】佐々木 卓也 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号 三井金属鉱業株式会社機能材料事業本部機能粉事業部内
【氏名】吉丸 克彦 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号 三井金属鉱業株式会社機能材料事業本部機能粉事業部内
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| 【要約】 |
【課題】銅粉製造方法を改良することにより、微細な粒子で、その粒度分布も非常にシャープな銅粉を容易に製造できる技術を提供し、粘度や膜密度などの銅ペースト特性に関し、従来の銅粉では実現できなかった特性を満足する銅粉を提供する。
【解決手段】二価の銅イオンを有する銅塩水溶液に水酸化アルカリを混合して酸化第二銅を生成し、還元糖を加えることで酸化第二銅を酸化第一銅に還元し、さらにヒドラジン系還元剤を加えることで酸化第一銅を還元することにより金属銅を生成する銅粉の製造方法において、銅塩水溶液に錯化剤を予め投入した後、反応当量で1.10〜1.60に相当する水酸化アルカリを混合して、黒色の酸化第二銅を生成するように熟成反応させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 二価の銅イオンを有する銅塩水溶液に水酸化アルカリを混合して酸化第二銅を生成し、還元糖を加えることで酸化第二銅を酸化第一銅に還元し、さらにヒドラジン系還元剤を加えることで酸化第一銅を還元することにより金属銅を生成する銅粉の製造方法において、銅塩水溶液に錯化剤を予め投入した後、反応当量で1.10〜1.60に相当する水酸化アルカリを混合して、黒色の酸化第二銅を生成するように熟成反応させることを特徴とする銅粉の製造方法。 【請求項2】 錯化剤はアミノ酢酸であり、水酸化アルカリは水酸化ナトリウムである請求項1に記載の銅粉の製造方法。 【請求項3】 酸化第一銅を還元して生成した金属銅を脂肪酸含有溶液に所定時間接触させ、有機溶媒を用いて少なくとも1回の洗浄処理を行った後乾燥することで、金属銅表面に脂肪酸の金属塩による表面処理層を形成するものである請求項1又は請求項2に記載の銅粉の製造方法。 【請求項4】 請求項1〜請求項3に記載する銅箔の製造方法により得られた銅粉であって、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50が0.05〜4.0μmで、且つ重量累積分布径D50とその粒度分布の標準偏差SDとによるSD/D50が0.2〜0.5である銅粉。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、微細で且つ粒度分布が非常にシャープな銅粉の製造方法に関するものであり、特に、電子回路用の導電体形成に適した銅ペースト用の銅粉の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、電子産業の分野、特にプリント配線板製造の分野では、スクリーン印刷技術を応用して、銅ペーストにより回路を形成することが一般的に行われている。すなわち、銅粉により形成した銅ペーストを樹脂基板若しくは樹脂シート上にスクリーン印刷技術を用いて塗布して回路を描き、その後銅ペーストを焼成して回路を形成するのである。 【0003】近年、プリント配線板製造では、銅箔などの導電性材料からなる電子回路を有する多層プリント配線板が用いられており、例えば、ノートブックパソコン、携帯電話、AV機器等のいわゆる高級家電では、4層以上の多層プリント配線板が用いられている。そして、このような多層プリント配線板における配線板相互間の層間導電性を確保する手段として、スルーホールメッキ法、バイアホール形成法等が注目されている。従来から行われているスルーホールメッキ法、バイアホール形成法等のプリント配線板の層間導通手段は、配線板に形成されたスルーホールやバイアホール(ビアホール)などと称される穴の内壁に、層間回路の電気的導通を確保するための銅層を、メッキ法を用いて形成するという手法が一般的である。しかし、このメッキ法では、無電解銅メッキ、電解銅メッキの2段の処理が必要であり、その工程が複雑化し長くなり、プリント配線板の製造コストを上昇させる要因となっていた。 【0004】我国の電子電気業界は厳しい国際価格競争に晒されており、小型化、高機能化を求められる一方、プリント配線板業界に対するコストダウンの要求が一層厳しさを増している。このようなことから、多層プリント配線板の層間導通を確保するための別の手段が求められていたところ、銅ペーストを用いて銅張積層板製造時に層間導通を確保する方法が開発されている。 【0005】ところで、銅ペーストは、銅粉にエポキシ樹脂などの樹脂とその硬化剤等を加え、これらを混錬したものであり、導電性を有するものである。このような銅ペーストに用いられる銅粉の製造方法としては、水酸化銅を含む水溶液をヒドラジン等の還元剤で処理して溶液中の銅成分を還元する方法、銅塩や銅酸化物を還元性雰囲気中で加熱還元する方法、銅の塩化物蒸気を還元性ガスで処理して銅の塩化物を還元する方法等が従来から知られている。 【0006】これらの銅粉製造方法のうち、いわゆるヒドラジン還元法は、大気圧下で処理できる等の点で非常に生産性に優れた方法であり、例えば、特開平4−116109号公報には、銅塩水溶液から水酸化銅を析出し、その水酸化銅を亜酸化銅に還元し、さらにヒドラジン系還元剤により亜酸化銅を金属銅にまで還元する技術が開示されている。また、特開平2−294414号公報にも、アミノ酢酸、アンモニア、有機アミン類などの化合物存在下、銅塩水溶液に水酸化アルカリを加え水酸化銅を析出し、還元糖を加えて亜酸化銅を水溶液中に析出させ、これにヒドラジンを加えて亜酸化銅を還元して銅粉末を得る技術が開示されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】これらの従来から知られているヒドラジン還元法では、銅塩水溶液から水酸化銅を析出させて、それを順次還元することで金属銅を生成するものであり、比較的微細な銅粉を得ることが可能である。ところが、これら従来のヒドラジン還元法では、得られる銅粉を微細にできるものの、それを銅ぺーストにした際の粘度や膜密度などの特性に関しては十分に満足できるものといえず、更なる改善をすべきとの要望がある。 【0008】また、本出願人も、このヒドラジン還元法に関する銅粉製造技術を提案しており(特開平10−330801号公報、特開平11−256208号公報参照)、その技術は、二価の銅イオンを有する銅塩水溶液に水酸化アルカリを添加して酸化第二銅を生成し、還元糖を加えることで酸化第二銅を酸化第一銅に還元する。その後濾過洗浄して、所定のpH値となるようにpH緩衝剤を添加し、ヒドラジン系還元剤を加えることで酸化第一銅を還元することにより金属銅を生成するものである。 【0009】本出願人が提案したこの製造方法によれば、従来よりも、粉体状態での電気抵抗が著しく低く、充填性に優れ、粒度分布がシャープな銅粉を得ることができる。しかしながら、本出願人の提案したヒドラジン還元法によって得られる銅粉は、その銅粉粒子の平均粒径が、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50で4〜7μmと比較的大きく、より微細な銅粉を得ることが困難であった。 【0010】本発明は、以上のような背景のもとになされたものであり、いわゆるヒドラジン還元法の銅粉製造方法を改良することにより、微細な粒子で、その粒度分布も非常にシャープな銅粉を容易に製造できる技術を提供するものであり、粘度や膜密度などの銅ペースト特性に関し、従来の銅粉では実現できなかった特性を満足する銅粉を提供せんとするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来のヒドラジン還元法について鋭意研究を重ねた結果、特定の還元条件に設定して銅粉を製造すると、従来よりも微細で、粒度分布が非常にシャープな銅粉が得られることを見出した。 【0012】具体的には、二価の銅イオンを有する銅塩水溶液に水酸化アルカリを添加して酸化第二銅を生成し、還元糖を加えることで酸化第二銅を酸化第一銅に還元し、ヒドラジン系還元剤を加えることで酸化第一銅を還元することにより金属銅を生成するものである銅粉の製造方法において、該銅塩水溶液に錯化剤を予め投入した後、反応当量で1.10〜1.60に相当する水酸化アルカリを加え、黒色の酸化第二銅を生成するように熟成反応させるものとした。 【0013】本発明者らの研究によると、特開平10−330801号公報で提案したヒドラジン還元法では分散性が高いものの、平均粒径が5μm以下の銅粉を生成することが難しかった。そこで、このヒドラジン還元法について、その還元条件を綿密に検討したところ、錯化剤の投入時期と水酸化アルカリの添加量、及び反応条件を制御すると、得られる銅粉粒径とその粒度分布状態とを変化させることができるのを突き止めたのである。 【0014】即ち、二価の銅イオンを有する銅塩水溶液に水酸化アルカリを添加して酸化第二銅を生成する際、まず、該銅塩水溶液に錯化剤を投入し、反応当量で1.10〜1.60に相当する水酸化アルカリを加える。そして、熟成反応をすることで黒色の酸化第二銅を生成する。このような酸化第二銅を還元することで得られる金属銅は、従来の銅粉よりも微細で、非常に均一性の高い銅粉となるのである。具体的には、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50で0.05〜4.0μmの平均粒径を有し、重量累積分布径D50とその粒度分布の標準偏差SDとによるSD/D50、即ち粒度分布状態を示す変動係数であるSD/D50の値が0.2〜0.5となる銅粉を製造できるのである。この熟成反応とは、水酸化銅を析出させないようにして、溶液中に析出するその全てが酸化第二銅となるようにする反応であり、具体的には、錯化剤、水酸化アルカリを加えた後に、60〜80℃の液温に保持して、30〜90分間反応させて、液色が完全に黒色になるまで反応させるものである。 【0015】本発明に係る銅粉製造方法によると、微細で且つ粒度分布のシャープな銅粉が得られる現象に関しての理論は不明であるが、基本的には次のような反応を経るためではないかと推測している。本発明では、まず銅塩水溶液に錯化剤を投入しているが、これは本出願人が従来提案したヒドラジン還元法の場合(特開平10−330801号公報、特開平11−256208号公報)と異なる。この予め投入する錯化剤は、銅塩水溶液のpH緩衝する作用を有しており、水酸化アルカリを混合した際に生成される酸化第二銅の粒子を微細化、均一化する作用に寄与するものと考えている。そして、予め錯化剤を投入した銅塩水溶液に、反応当量で1.10〜1.60に相当する水酸化アルカリを添加し、水酸化銅を析出しないように熟成させて黒色の酸化第二銅を生成すると、この時に生成される酸化第二銅の粒子が、微細で且つ粒の揃った状態となっていると考えられる。 【0016】このようにして生成された、微細且つ粒の揃った状態の酸化第二銅を、還元糖により酸化第一銅に還元し、続いてヒドラジン還元して金属銅を生成すると、従来のヒドラジン還元法では得られなかった銅粉、即ち、微細且つ粒度分布のシャープな銅粉を製造できるのである。錯化剤、水酸化アルカリの投入時期が異なったり、或いは、添加する水酸化アルカリが反応当量で、1.10〜1.60の範囲を外れても、最終的に生成される金属銅粒子が粗大となったり、或いは、微細な銅粉を製造することができてもその粒度分布はブロードとなるのである。従って、本発明のヒドラジン還元法のように、錯化剤の投入時期と水酸化アルカリの添加量とを制御し、熟成反応させて酸化第二銅を生成すると、重量累積粒径D50で4.0μm以下の平均粒径を有し、粒度分布の状態を示す変動係数であるSD/D50値が0.2〜0.5となる銅粉を製造することができるのである。尚、本発明の製造方法において、その反応温度やヒドラジンの添加速度等を制御することにより重量累積粒径D50が4.0μm以上の銅粉を製造することも可能であり、その際に得られる銅粉のSD/D50値が0.2〜0.5とすることができる。 【0017】本発明における二価の銅イオンを有する銅塩水溶液は、二価の銅塩として硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅等を用いることができ、錯化剤としてはアミノ酢酸、アラニン、グルタミン酸等を用いることができる。そして、水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を用いることができる。また、還元糖としては、グルコース、フルクトース、ラクトース等を用いることができ、ヒドラジン系還元剤としては、ヒドラジン、水和ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジンなどを用いることができる。本発明者らの研究では、硫酸銅溶液から銅粉を製造する場合では、特に錯化剤にアミノ酢酸を、水酸化アルカリに水酸化ナトリウムを用いることが望ましいことを確認している。 【0018】次に、本発明は、上記した本発明に係るヒドラジン還元法によって得られた金属銅を、脂肪酸含有溶液に所定時間接触させ、有機溶媒を用いて少なくとも1回の洗浄処理を行った後、乾燥することで金属銅の表面に脂肪酸の金属塩による表面処理層を形成するようにした。一般的に銅ペーストでは、作製初期時のペースト粘度が高く、そのペースト粘度が経時変化を起こして増粘する傾向が知られており、銅ペーストに加工して以降の長期保管の問題が指摘されるものである。そのため、このように脂肪酸の金属塩で表面処理層を形成した銅粉にすると、非常に良好な耐酸化性を有し、銅ペーストに加工したときの初期粘度を低くし、且つ、銅ペースト粘度の経時的変化を極めて有効に抑制することができるのである。 【0019】本発明の銅粉の製造方法における表面処理は、脂肪酸で銅粉を処理し、一旦銅粉の表面に吸着残留した脂肪酸及び脂肪酸の金属塩を含んだ表面処理層を形成し、その後、有機溶媒を用いて洗浄することで、脂肪酸の金属塩のみを銅粉の表面に残すのである。ここでいう「脂肪酸の金属塩」とは、脂肪酸を用いて銅粉を表面処理する際に、銅粉の銅成分と脂肪酸とが反応して形成される金属塩のことである。そして、「吸着残留した脂肪酸」とは、銅成分と反応せず、脂肪酸を溶解させた溶媒中においてもイオン状態に解離することのなかった脂肪酸が表面に吸着したものである。 【0020】本発明に係る脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を用いることができる。より具体的には、飽和脂肪酸として、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸等、不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等のいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0021】また、本発明の銅粉の製造方法に係る表面処理では、有機溶媒で洗浄する方法は、当該表面処理銅粉に直接有機溶媒をかけることで洗浄する方法、有機溶媒中に入れ攪拌しつつ洗浄する方法等、有機溶媒と表面処理した銅粉とが万遍なく接触し、効率よく洗浄できる方法であれば、どのような手法を用いても構わない。そして、この有機溶媒による洗浄は、吸着残留した脂肪酸を確実に除去できるように、1回洗浄よりも複数回の洗浄を行った方が好ましい。繰り返し洗浄の適正回数の上限は、脂肪酸の種類によっても僅かながらの差異あるが、処理効率などを考慮すれば3回を越えない範囲での繰り返し洗浄が好ましい。 【0022】上記した洗浄用の有機溶媒としては、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、プロパノールなどを用いることができる。また、最終的に行う乾燥は、表面処理する銅粉の表面酸化を防止する観点から可能な限り低温領域を採用することが望まれるので、乾燥温度50〜100℃、乾燥時間2〜8時間の条件で行うことが好ましい。乾燥温度が50℃未満では、銅粉に吸着した水分を十分に除去する事ができず、しかも、脂肪酸の金属塩を強固に固着できない。一方、乾燥温度が100℃を越えると、表面処理層の損傷が起こり易くなる。この乾燥温度範囲を採用した場合、その加熱温度に合わせて、表面処理層が損傷を起こすことなく、且つ表面処理銅粉の吸着水分の除去が完全できる加熱時間を採用すべきものである。 【0023】上記した本発明に係る銅粉の製造方法により得られた銅粉は、平均粒径がD50で0.05〜4.0μmとなり、且つSD/D50が0.2〜0.5となる。このような銅粉は、銅ペーストにした際の粘度が低く、その充填性も非常に良好となため、ぺースト膜の膜密度を高くできるというペースト特性を実現できる。 【0024】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態について、実施例及び比較例に基づき説明する。 【0025】実施例:酸銅(五水塩)4kg及びアミノ酢酸120gを水に溶解させて、液温60℃の8L(リットル)の銅塩水溶液を作製した。そして、この水溶液を撹拌しながら、表1に示す各量の25wt%水酸化ナトリウム溶液を約5分間かけて定量的に添加し、液温60℃で60分間の撹拌を行い、液色が完全に黒色になるまで熟成させて酸化第二銅を生成した。その後30分間放置し、グルコース1.5kg添加して、1時間熟成することで酸化第二銅を酸化第一銅に還元した。さらに、水和ヒドラジン1kgを5分間かけて定量的に添加して酸化第一銅を還元することで金属銅にして、銅粉スラリーを生成した。得られた銅粉スラリーを濾過し、純水で十分に洗浄し、再度濾過した後、乾燥して表1に示す実施例1〜4の銅粉を得た。また、水酸化ナトリウム溶液を反応当量で1.0と2.0となる添加量にした比較例1、2も作製した。 【0026】また、従来例として、特開平10−330801号公報に開示されたヒドラジン還元法による銅粉を作製した。これは、硫酸銅(五水塩)4kgを温水に溶解させて8L(リットル)の水溶液とし、これを60℃に維持した。この水溶液に25重量%水酸化ナトリウム溶液6.25kgを添加し、60℃に維持しながら1時間撹拌して反応させ、酸化第二銅を生成した。そして、反応により得られたものを60℃に維持した状態で、これに450g/Lのグルコース水溶液3.2Lを1時間かけて定量的に添加して酸化第二銅を酸化第一銅に還元した。スラリー状になった溶液を一旦濾過し、洗浄した後、温水を加えて再度スラリー化し、12.8Lの酸化第一銅スラリーを得た。この酸化第一銅スラリーにアミノ酢酸60gおよびアラビアゴム28gを添加し、撹拌して50℃に保持した。この状態で、さらに20重量%水和ヒドラジン2Lを1時間かけて定量的に添加して酸化第一銅を還元し、銅粉スラリーを生成した。得られた銅粉スラリーを濾過し、純水で十分に洗浄し、再度濾過した後、乾燥して、従来例の銅粉を得た。 【0027】 【表1】
【0028】表1には、各銅粉を作製した際の水酸化ナトリウムの添加量と、その反応当量値を示している。また、各銅粉の重量累積粒径D50を測定し、変動係数であるSD/D50も併記している。この重量累積粒径D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した重量累積50%のときの粒径値を示すもので、SD/D50はレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDとD50とから算出できる変動係数である。このSD/D50の数値が小さいほど粒度分布がシャープで、粒が揃った銅粉であることに対応する。 【0029】表1を見ると判るように、本実施例の銅粉は平均粒径(D50)が1.0μm以下となっており、粒度分布状態を示すSD/D50も比較例1、2に比べ小さな値となっており、非常にシャープな粒度分布となっていることが判明した。一方、従来例のヒドラジン還元法ではシャープな粒度分布の銅粉が得られるものの、その平均粒径(D50)は、本実施例に比べ大きな粒径の銅粉しか得ることが出来なかった。 【0030】表1で示した実施例1〜4、比較例1、2のデータにより、反応当量数に対する平均粒径(D50)と、反応当量数に対するSD/D50との相関について検討を行った。その結果、水酸化ナトリウムの反応当量が1.0或いは2.0になると、平均粒径(D50)とSD/D50との両方の値が急激に大きくなり、水酸化ナトリウムの添加量が反応当量で1.10付近から、D50及びSD/D50の値が急激に大きくなっていた。これは、合成される酸化第二銅が不均一となり、最終的に得られる銅粉もそれに合わせて不均一になるためと考えられた。また、2.0の反応当量に相当する水酸化ナトリウムを添加すると、金属銅への還元時の反応が激しくなり凝集し易くなるため、D50及びSD/D50の値が急激に大きくなるものと考えられた。従って、所定の平均粒径(D50)に対して、そのSD/D50値を0.5以下となるような銅粉を製造するには、水酸化ナトリウムの添加量を反応当量でおおよそ1.10〜1.60の範囲にコントロールすればよいと推測された。 【0031】また、上記実施例1の銅粉を製造した条件で、そのヒドラジン添加時間を変化させた際の銅粉粒径を調査した。その結果を表2に示す。表2に見ると判るように、ヒドラジンの添加を長時間かけて行うほど、得られる銅粉の平均粒径(D50)は大きくなったが、その粒度分布状態は非常にシャープで、SD/D50値が0.5以下になることも判明した。 【0032】 【表2】
【0033】続いて、銅ペーストにした際の特性を調査した結果について説明する。特性調査に用いた銅ペーストは、エチルセルロース7部をターピネオール93部で十分に溶解した溶媒50gと、銅粉50gとを混合した後、3本ロールにて混練して作製した。そして、作製した銅ペーストの粘度は、粘度計(RE−105U型、東機産業社製)を用い、0.5rpmで測定した。また、作製した銅ペーストを塗工機により、フィルム上に厚さ30μmで塗布し、乾燥した後、その乾燥塗膜により膜密度を測定した。膜密度は、所定形状の乾燥塗膜の重量を計測して求めた。その結果を表3に示す。 【0034】 【表3】
【0035】表3に示すように、実施例の銅ペーストは、粘度が小さいので取り扱い性に優れていることが判明した。膜密度に関しても、非常に高密度であることが判明した。 【0036】続いて、本発明に係る表面処理銅粉について説明する。ここでは実施例1の銅粉に、脂肪酸としてオレイン酸を用いて表面処理銅粉を製造した場合を例にする。ここでの評価は、表面処理銅粉を用いて銅ペーストを製造し、その銅ペーストの粘度の変化率を測定した。更に、従来のオレイン酸処理した表面処理銅粉との比較を行った。 【0037】まず、銅粉表面にオレイン酸を用いた表面処理層を形成した条件について説明する。実施例1の銅粉5kgをヌッチェに入れ、5gのオレイン酸を加えて分散させた5リットルのメタノール溶液を滴下して、銅粉表面に表面処理層を形成した。そして、吸引濾過することで、表面処理銅粉と溶液とを濾別した。 【0038】そして、得られた表面処理銅粉に2リットルのメタノール液を滴下することで、表面処理銅粉の洗浄を行い、吸引濾過して銅粉の表面処理層にオレイン酸の金属塩のみが残留するようにした(以下実施例1Sとする)。吸引濾過で分取した表面処理銅粉を、70℃の温度で5時間の乾燥を行った。この段階の表面処理銅粉をFT−IR分析した結果、脂肪酸の金属塩のピークのみが検出されていることが判明した。 【0039】続いて、この表面処理銅粉を用いて、エポキシ系銅ペーストを製造した。表面処理銅粉80重量部、第1のエポキシ樹脂(油化シェル社製のエピコート828)4重量部、第2のエポキシ樹脂(東都化成株式会社製のYD−171)12重量部、エポキシ樹脂硬化剤(味の素株式会社製アミキュアMY−24)4重量部、これらを混合して30分の混錬を行ってエポキシ系銅ペーストを得た。 【0040】以上のようにして得られたエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると300Pa・s、一週間経過後の粘度は450Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると50%であるという結果が得られた。なお、この粘度測定には、RE−105U粘度計(東機産業社製)を用い、0.1rpmの回転数で測定した結果である。 【0041】比較として、オレイン酸で処理して、銅粉表面に吸着残留した脂肪酸、脂肪酸の金属塩のそれぞれが存在する表面処理銅粉を作製してFT−IR分析をし、上述と同様のエポキシ系銅ペーストを製造し、その粘度変化を調査した。銅粉表面に吸着残留した脂肪酸、脂肪酸の金属塩のそれぞれが存在する表面処理銅粉をFT−IR分析した結果、当然ながら、脂肪酸の金属塩のピーク及び脂肪酸に起因するピークが検出された。 【0042】そして、この銅粉表面に吸着残留した脂肪酸、脂肪酸の金属塩のそれぞれが存在する表面処理銅粉を銅ペースとにした際の粘度及び粘度の変化率を測定した。その結果、エポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると430Pa・s、一週間経過後の粘度は1120Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると260%であった。以上の結果より、本実施例の表面処理銅粉は初期粘度が低く、しかも、粘度の経時変化が非常に少ないことが判明した。 【0043】さらに上記実施例2〜4の銅粉を上述した表面処理を行い表面処理銅粉(実施例2S〜4S)とし、銅ペーストにした際の特性を調査した結果について説明する。銅ペーストの製法、特性測定は上記した方法と同様であるので省略する。表3に各表面処理銅粉のペースト特性調査結果を示す。 【0044】 【表4】
【0045】表4を見ると判るように、表3に示した表面処理を行っていない銅粉に比べ、粘度も低くなり、表面処理銅粉にすると膜密度が0.1〜0.2程度向上していることが確認された。 【0046】最後に、上記実施例1で説明した製造過程において生成される酸化第二銅をX線回折した結果について説明する。ここでは、硫酸銅(五水塩)及びアミノ酢酸を水に溶解させた銅塩水溶液に、反応当量1.15に相当する水酸化ナトリウム溶液を添加することで生成される酸化第二銅をX線回折分析した。その結果を図1に示す。 【0047】図1にはX線回折パターンには、比較として反応当量1.08に相当する水酸化ナトリウム溶液を添加し、熟成反応をさせることなく、溶液色がやや青色を呈している状態で生成された析出物を分析した結果(比較例3)を一緒に示している。この図1のX線回折パターンを見ると判るように、実施例1で得られる酸化第二銅では、酸化第二銅のピークのみが明確に検出された。一方、比較例3の析出物では、酸化第二銅に相当するピークが若干見受けられたものの、水酸化銅のピークの方が明確に現れていた。そのため、比較例3の場合において、熟成処理をすることなく銅塩水溶液から生成されたものは、水酸化銅と酸化第二銅との混合物であると考えられた。 【0048】また、この比較例3についても還元処理をして銅粉を製造し、比較例1及び2と同様に銅ペーストにして、その粘度、膜密度を測定した。その結果を実施例1と一緒に表5に示す。 【0049】 【表5】
【0050】この表5に示す結果とX線回折パターンの結果とを合わせて考えると、比較例3(比較例1又は2も同様)の銅粉のように、硫酸銅の銅塩水溶液から熟成処理されることなく生成された析出物(水酸化銅と酸化銅の混合物)を還元して得られたものでは、微細な粒径であるが、銅ペーストにした際の粘度、膜密度の特性は十分に満足できるものではなかった。一方、本実施例は、硫酸銅の銅塩水溶液から熟成処理を経て完全に酸化第二銅として生成されたものを還元して得られ、微細且つ粒度分布が非常にシャープな銅粉であるために、銅ペーストにした際の粘度や膜密度の特性向上が図られたと考えられる。 【0051】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、微細な銅粉で、粒度分布も非常にシャープな銅粉を容易に製造できる。そして、本発明の製法により得られた銅粉で銅ペーストを形成すると、従来の銅粉では実現できなかった低粘度特性を有し、充填性に優れ、電子回路用の導電体形成に好適なものとなる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006183 【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号
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| 【出願日】 |
平成14年5月27日(2002.5.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100111774 【弁理士】 【氏名又は名称】田中 大輔
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| 【公開番号】 |
特開2003−342621(P2003−342621A) |
| 【公開日】 |
平成15年12月3日(2003.12.3) |
| 【出願番号】 |
特願2002−152593(P2002−152593) |
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