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【発明の名称】 耐熱金属層付銀粉及びその耐熱金属層付銀粉を用いた銀ペースト並びにその銀ペーストを用いて得られた配線板
【発明者】 【氏名】坂上 貴彦
【住所又は居所】山口県下関市彦島西山町1丁目1番1号 彦島製錬株式会社機能粉工場内

【氏名】古本 啓太
【住所又は居所】山口県下関市彦島西山町1丁目1番1号 彦島製錬株式会社機能粉工場内

【要約】 【課題】配線板、特に低温焼成セラミック基板の製造での、銀ペーストよりも焼成可能温度が高く、且つ、銀−パラジウムペーストよりも安価な金属ペーストの供給が可能となるような配線導体回路形成用の金属粉及び金属ペースト等を提供する。

【解決手段】粉粒の表面に耐熱金属層を備えた銀粉であって、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が0.05μm〜10μmである銀粉の粉粒の表面に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のいずれかの前記耐熱金属層を備えたことを特徴とする配線板上の導体回路形成用の耐熱金属層付銀粉等による。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 粉粒の表面に耐熱金属層を備えた銀粉であって、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が0.05μm〜10μmである銀粉の粉粒の表面に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のいずれかの前記耐熱金属層を備えたことを特徴とする配線板の導体回路形成用の耐熱金属層付銀粉。
【請求項2】 前記耐熱金属層の重量厚さは、耐熱金属層付銀粉の重量の0.01wt%〜7.0wt%であることを特徴とする請求項1に記載の配線板の導体回路形成用の耐熱金属層付銀粉。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の耐熱金属層付銀粉を用いて製造した耐熱金属層付銀粉ペースト。
【請求項4】 請求項3に記載の耐熱金属層付銀粉ペーストを用いて回路形成を行った配線板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】耐熱金属層付銀粉及びその耐熱金属層付銀粉を用いた銀ペースト並びにその銀ペーストを用いて得られた配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の電子デバイスの小型化、軽量化、高密度配線化の要求は、益々増加してきている。これらの要求の最も顕著な物として、携帯電話等に代表される移動体通信機器があり、この要求に応えるため、種々の配線板が用いられてきており、その中には導体回路を銀粉を分散させた銀ペーストを用いて回路形成を行う配線板も多く存在している。その中でも、銀ペーストを用いて導体回路の形成を行う配線板としては、特にセラミック基板が広く知られている。
【0003】かかる場合のセラミック基板は、この基板上の回路を形成するために、銀−パラジウム合金粉を含有した銀−パラジウムペーストを用いるのが一般的であった。このような基板を本件明細書においては、以下、「銀パラジウム系セラミック基板」と称することとする。ところが、この銀パラジウム系セラミック基板は、銀のマイグレーションは起こり難いものの、導体抵抗が高くなり、回路の配線設計の制約となり、基板の小型化要求に応えることは困難であり、しかも高価であることから製品価格を押し上げる原因ともなっていた。
【0004】これに対し、導体抵抗が低く、且つ、安価な原料である銅厚膜を用いたセラミック基板が登場してきた。以下、「銅厚膜セラミック基板」と称することとする。この銅厚膜セラミック基板は、上述した長所を有するものの、銅厚膜の薄膜化には限界があり、配線密度の向上、部品実装密度の向上には一定の限界があり、現在の小型化要求レベルに追随出来ないと言う欠点があった。即ち、高集積化された基板では、信号の高速化によりノイズシグナルが発生しやすくなるが、従来の銅厚膜セラミック基板では、このノイズに対する有効な対策を施すことができなかったのである。基板の場合のノイズ対策の基本は、基板の3次元構造を利用するもの、例えば、コイルやキャパシタを基板の内部に内蔵させるというものであり、基板を多層化することにより行われるものである。銅厚膜セラミック基板の場合には、この多層化が極めて困難なものである。
【0005】そこで、セラミック基板の配線密度と部品実装密度とを、現行の市場要求レベルにまで高めることを目標に、コストを度外視して、やはり銀パラジウム系セラミック基板に帰結し、セラミック基板の多層化による小型化が研究されてきた。銀パラジウム系セラミック基板の小型化を達成するための解決手段としては、当該セラミック基板の内外部の配線材料を銀や銅の低抵抗導体に変更して、当該セラミック基板を多層化するため、従来のアルミナ主体のセラミック材料から、半導体シリコンチップとの熱膨張の整合性を確保しやすいガラスセラミック材料に変更し、低温焼成の可能なものとして用いられるようになってきた。この低温焼成セラミック基板は、導体を形成する金属ペーストで引き回した配線導体回路とセラミック基板となるグリーンシートとを同時に焼成することにより得られるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、やはり市場の要求は、銀−パラジウム粉をより安価な粉体に置き換えコストダウンを図りたいという要求が趨勢を占めるようになってきた。そこで、従来の銀粉を用いた、低温焼成セラミック基板の製造に種々の工夫を凝らして研究がなされてきた。解決すべき問題点は、回路を引き回した銀ペーストと、セラミックグリーンシートの焼成温度が異なる点であり、セラミックグリーンシートを十分に焼成しようとすると、銀ペースト中の銀粉が溶融するため配線導体回路の焼成がうまくいかないと言う現象が発生していた。
【0007】即ち、セラミック基板上の銀ペーストを焼成して得られる配線導体回路は、銀粉の粉粒が、当初の粉粒形状を維持したまま、粉粒同士が相互に接触したスケルトン状態で、回路の全体形状を維持して焼成が完了することが望ましい。ところが、例え低温焼成と称しても900℃前後の温度でのセラミックグリーンシートの焼成加熱が必要であり、銀ペーストのバインダー樹脂の消失後には、銀粉粒の溶融が始まることになる。
【0008】銀粉粒の溶融が始まると、やがて銀粉粒がセラミック基板上で液滴となり、液滴となった状態では表面張力により液滴がアイランド上に分散し、配線導体回路が分断されるため、結果として導体抵抗が上昇し、場合によっては導通不能となるなど、配線導体回路形状を維持できなくなることがある。また、焼成が完了したセラミック基板は、一般に多孔質体であり、その孔内に溶融した銀が毛細管現象で引き込まれ、回路形状を設計通りに維持できないばかりか、層間絶縁抵抗を劣化させたり、マイグレーション現象を助長する可能性が高いものとなっていた。
【0009】これらのことから、低温焼成セラミック基板の回路形成に、銀粉を分散させた銀ペーストよりも焼成可能温度が高く、且つ、銀−パラジウム粉を分散させた銀−パラジウムペーストよりも安価であると同時に大気焼成可能な金属ペーストの供給を可能とするような配線導体回路形成用の金属粉及び金属ペーストが望まれてきたのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで、本件発明者等が、鋭意研究した結果、回路を引き回した金属ペーストとセラミックグリーンシートとを同時焼成することで製造する低温焼成セラミック基板を歩留まりよく効率的に生産するためには、回路を引き回した金属ペーストの焼成温度と、セラミックグリーンシートの焼成温度とを、より近い温度にする以外に有効な方法は、やはり存在しないと考えた。
【0011】そして、そのような目的を達成するためには、金属ペーストの原料となる金属粉が、セラミックグリーンシートの焼成温度で溶融しないか、若しくは、銀粉と比較してより高い温度での焼成の可能な金属粉を用いた金属ペーストを採用するものでなければならない。このように考える限り、セラミックグリーンシートの焼成温度で溶融しないという点を満足する金属粉としては、ニッケル粉、タングステン粉等が考えられるが、所謂高融点金属の粉体は、同時に高抵抗体であることから、高速の信号を伝達するための配線導体回路の形成には適さない事になる。
【0012】そこで、本件発明者等は、請求項に記載したように、「粉粒の表面に耐熱金属層を備えた銀粉であって、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が0.05μm〜10μmである銀粉の粉粒の表面に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のいずれかの前記耐熱金属層を備えたことを特徴とする配線板の導体回路形成用の耐熱金属層付銀粉。」に想到したのである。
【0013】即ち、この耐熱金属層付銀粉の持つ構造を、構成要素的に捉えれば、芯材が銀粉であり、その銀粉の表面が耐熱金属層で被覆されているのである。この耐熱合金層とは、一般的に言う高融点金属で構成した層を意味するのではない。回路を引き回した金属ペーストとセラミックグリーンシートとの同時焼成が、一般的に知られた条件下で終了した時点で、芯材である銀粉の銀成分と耐熱金属層を構成する金属成分とが適度に相互拡散が起こり、耐熱金属層内に銀を分散させ耐熱金属層の存在が、形成する配線導体回路の抵抗を上昇させないものとなる高融点金属を採用しなければならない。
【0014】そして、まず焼成後の粉粒のスケルトン構造の維持能力を考慮すると、融点として1300℃以上1500℃以下の範囲にある高融点金属を採用することが望ましいことが判明してきた。更に、銀成分の拡散容易性及びパラジウムと対比したときの価格を考慮して、ニッケル、コバルトを用いることが好ましいことが判明した。又、ニッケル−リン、ニッケル−銅−リン、ニッケル−ホウ素等のニッケル基合金、コバルト−リン、コバルト−ニッケル−リン、コバルト−錫−リン等のコバルト基合金を用いて、同時焼成条件に応じて、耐熱金属層の融点調整を図ることも可能である。
【0015】次に、芯材である銀粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が0.05μm〜10μmであることが好ましい。上述した同時焼成で用いることの出来る粉体であるためには、少なくとも900℃の温度で、スケルトン構造を維持したままの焼成ができなければならないが、平均粒径D50が0.05μm未満の場合には、900℃での良好なスケルトン構造の維持が困難となるのである。また、ペーストに加工するときの、バインダー樹脂との均一な混合も困難となるのである。一方、平均粒径D50が10μmを超えると、ペーストに加工して、セラミックグリーンシート上に描いた配線回路の端部形状の直線性が阻害され、しかも、焼成完了後にできる配線導体回路の導体抵抗が高くなるのである。
【0016】本件明細書における「レーザー回折散乱式粒度分布測定法」による平均粒径の測定は、耐熱金属層付銀粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置Micro Trac HRA 9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて行った。
【0017】そして、上述したように回路を引き回した金属ペーストとセラミックグリーンシートとの同時焼成が、一般的に知られた条件下で終了した時点で、芯材である銀粉の銀成分と耐熱金属層を構成する金属成分とが適度に相互拡散が起こるようにするためには、耐熱金属層にも自ずと適正な厚さが存在する。粉体の場合の、1つの粉粒の表面に形成した膜厚をゲージ厚さとしてμm単位で表示することは困難であり、通常は換算重量厚さの如き指標を用いざるを得ない。
【0018】従って、本件明細書では、芯材に用いる銀粉の平均粒径が明確であることから、請求項に「前記耐熱金属層の重量厚さは、耐熱金属層付銀粉の重量の0.01wt%〜7.0wt%であるセラミック基板上の回路形成用の耐熱金属層付銀粉。」と記載したように、製品である耐熱金属層付銀粉の重量を100wt%としたときの、耐熱金属層を構成する元素の占める重量割合を、重量厚さとして用いて示している。ここで、耐熱金属層の重量厚さが重量の0.01wt%未満の場合には、耐熱金属層が薄すぎて、十分に溶融開始時間を遅らせることができなくなるのである。一方、耐熱金属層の重量厚さが重量の7.0wt%を超えた場合には、一般的に知られた同時焼成条件下で、芯材である銀粉の銀成分と耐熱金属層を構成する金属成分との相互拡散が不十分になり、焼成後の配線導体回路の導体抵抗が大きくなるのである。
【0019】ここで、本件発明に係る耐熱金属層付銀粉が、通常の、銀粉よりも高温焼成が可能であることの根拠として、熱膨張率の変化を調べた。熱膨張率の測定により、熱膨張率が低くなり出すと、金属粉体の軟化が開始していることを意味しており、熱膨張率が低くなり定常値になった時点で、金属粉の完全溶融が起こった事になるのである。図1には、縦軸に熱膨張率を採り、横軸に加熱温度を採ったときの、加熱過程における熱膨張率の変化を示している。本件明細書における熱膨張率の測定は、次のとおりである。0.5gの耐熱金属層付銀粉又は銀粉に、98MPaの圧力を加えて直径5mm、高さ約5mmのペレットに成形した。そして、熱機械分析(TMA)装置(セイコー電子工業製 TMA/SS6000)を用いて、当該ペレットを大気雰囲気中で、室温から10℃/分の昇温速度で1000℃まで加熱して収縮率を測定したのである。
【0020】図1の中で、実線が平均粒径D50=0.853の銀粉の表面に0.8wt%の重量厚さのニッケル層を備えた耐熱金属層付銀粉の熱膨張率を測定したものであり、破線が平均粒径D50=0.837の銀粉の熱膨張率を測定したものである。この図1から分かるように、破線の熱膨張率が下がり始める軟化温度が230℃付近であり、完全に溶融したと考えられる溶融温度が560℃付近であるのに対して、実線で表した耐熱金属層付銀粉の熱膨張率が下がり始める軟化温度は780℃付近となり、溶融温度は950℃と大幅に溶融開始温度を上昇させることが可能となるのである。
【0021】ここで述べてきた、耐熱金属層付銀粉は、銀粉の上に、無電解メッキ法でニッケル、コバルト又はこれらの合金層が形成されたものである。例えば、無電解ニッケルメッキに用いる浴は、硫酸ニッケル、ホスフィン酸ナトリウム、乳酸、プロピオン酸を含むものを基本としニッケル被膜を形成し、ここに合金元素を添加することで、ニッケル基合金被膜の形成が可能となる。また、無電解コバルトメッキに用いる浴の例としては、いわゆる標準浴組成A−T−10浴、A−C−10浴、C−T−9浴、C−C−7浴のいずれかを基本としコバルト被膜を形成することができ、ここに合金元素を添加することでコバルト基合金被膜の形成が可能となる。以上に述べた無電解メッキを行う場合には、無電解メッキ前に、銀粉の表面に、前処理として錫若しくはパラジウムを用いた触媒化処理、ストライクメッキ処理等を施すことで、密着性に優れた無電解メッキ層の形成が可能となる。
【0022】以上に述べてきた耐熱金属層付銀粉を用いて、まず耐熱金属層付銀粉ペーストを製造するのである。このとき用いるペーストのバインダー樹脂には、特段の限定はないが、ペースト粘度を下げ、回路形状への印刷精度を向上させるためにも、結果として得られるペーストの粘度を低くすることが求められる。ペースト粘度の低減には、粉粒の比表面積(SSA)を小さなものとすることが最も有効である。
【0023】そこで、本件発明者等が鋭意研究した結果、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が0.05μm〜10μmである場合に、実測した比表面積(SSA)と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50を用いてSSA=6/(D50×[真密度])で算出される比表面積(SSA)との関係式であるSSA/SSAの値が5.0以下である場合に、セラミックグリーンシート上に良好な回路を描けることが判明した。
【0024】ここに述べた比表面積(SSA)は、SSA=6/(D50×[真密度])で算出されるものとしている。即ち、粒子体積基準の比表面積Sは、補正係数Ψを代表径Dで除した、S=Ψ/Dの関係にある。そこで、本件発明では、補正係数であるΨの値を6として、代表径に重量累積粒径D50を用いた。そして、銀の真密度を10.49g/cm、ニッケル及びコバルトの真密度を8.9g/cmとしたときに耐熱金属層付銀粉の耐熱層を構成するニッケル若しくはコバルトがXwt%である場合の、当該耐熱金属層付銀粉の真密度を、10.49×(1−X/100)+8.9×X/100(g/cm)として算出して、理論上の比表面積(SSA)を求めているのである。これに対して、実測した比表面積(SSA)は、銀粉試料2.00gを75℃で10分間の脱気処理を行った後、モノソーブ(カンタクロム社製)を用いてBET1点法で測定した結果として得られる比表面積のことである。
【0025】従って、理論上の比表面積(SSA)は、その表面が理想的に滑らかなものと仮定して導かれたものであるため、その値は、現実にある表面凹凸の存在を反映させたSSAの値に比べ小さなものとなるのが当然である。従って、SSA/SSAの値は、1以上の値となるのが当然であり、このSSA/SSAの値が大きくなるほど表面の凹凸の大きな粉粒であることを意味するものである。
【0026】以上のように耐熱金属層付銀粉ペーストを用いて回路を引き回した金属ペーストとセラミックグリーンシートとを同時焼成して製造した低温焼成セラミック基板は、配線導体回路の回路形状の保持能力に優れ、形成された配線導体回路の導体抵抗も低く、非常に歩留まりよく効率的に生産することが可能となるのである。
【0027】低温焼成セラミック基板での導体回路形成に用いることの出来る耐熱金属層付銀粉及び耐熱金属層付銀粉ペーストであれば、その他のおよそ全ての樹脂製基材上の導体回路形成に関しては、一般的に回路を引き回した金属ペーストの焼成温度が300℃以下の低温領域であるため、何ら問題が生じることは考えられない。まして、本件発明に係る耐熱金属層付銀粉のように、優れた高温領域での粉粒の形状保持能力を備えていれば、焼成後の樹脂製基材上の導体回路形状は非常に美麗なものとなる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本件発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、耐熱金属層付銀粉を製造し、これを耐熱金属層付銀粉ペーストに加工し、この耐熱金属層付銀粉ペーストを用いて、セラミックグリーンシート上に回路形状を印刷して描いた。その後、回路形状の耐熱金属層付銀粉ペーストとセラミックグリーンシートとを、900℃の温度で試験的に同時焼成した。このときの、焼成後の耐熱金属層付銀粉の焼成状態を観察した。
【0029】第1実施形態: 最初に耐熱金属層付銀粉の製造について説明することにする。耐熱金属層付銀粉の芯材として用いた銀粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が1.125μm、SSA/SSA=1.8という粉体特性を備えていた。
【0030】以上に述べた銀粉に無電解ニッケルメッキを施して、耐熱金属層としてのニッケル層を銀粉の表面に形成したのであるが、銀自体は触媒活性の非常に微弱なものであるため、前処理に相当する浴にて短時間処理を行った後に、無電解ニッケルメッキ浴にて、ニッケル層を形成した。
【0031】耐熱金属層付銀粉1000gを、10リットルの水に分散させてスラリー状に調整し、ここで前処理に相当する処理を行うため、メルテックス社製のアクチベーター352を5ml添加して、5分間の攪拌を行った。
【0032】一方で、ニッケル無電解メッキ液として、メルテックス社製のNi−426の溶液6.5リットルを用意した。そして、上述した前処理の終了したスラリーとニッケル無電解メッキ液とを混合し、10分間攪拌し、その後溶液温度を70℃になるまで昇温し、銀粉の表面にニッケル層を形成した。さらに、粉体を濾別採取して、水洗し、乾燥することでニッケル層付銀粉を得た。このときの、ニッケル層の重量厚さは、0.80wt%であった。
【0033】次に、このニッケル層付銀粉を用いて、テルピネオール系のニッケル層付銀粉ペーストを製造した。ここで製造したテルピネオール系ニッケル層付銀粉ペーストは、ニッケル層付銀粉を50重量部、バインダー樹脂を50質量部の組成として、これらを混合して混錬を行ってテルピネオール系ニッケル層付銀粉ペーストを得たのである。このときのバインダー樹脂は、テルピネオール95質量部、エチルセルロース5質量部の組成を持つものとした。このテルピネオール系ニッケル層付銀粉ペーストの製造直後の粘度を測定すると16.5Pa・sであり、良好な粘度を保っていた。なお、本件明細書における粘度の測定には、東機産業社製の粘度計であるRE−105Uを用いて、1.0rpmの回転数で測定したものである。
【0034】一方で、35wt%アルミナ、25wt%ホルステライト、40wt%ボロシリケートガラスの組成のセラミックグリーンシートを作成した。このときのグリーンシート形成用スラリーは、ポリブチルアルコール樹脂系バインダ、可塑剤を酢酸メチルアミルを用いてスラリー状にしたものである。そして、このセラミックグリーンシート上に、上述したニッケル層付銀粉ペーストを用いてスクリーン印刷法でテスト回路パターンを描いた。
【0035】そして、ニッケル層付銀粉ペーストを用いてテスト回路パターンを描いたセラミックグリーンシートを、大気中で900℃の温度で30分間の焼成を行った。その結果、セラミック基板上に形成されたストリップラインである配線導体回路は、図2(a)に示すように拡大観察すると一部の粉粒がアイランドを形成しかけているが、殆どの粉粒が溶融することなく当初の粉粒形状を維持していた。また、このときに形成された配線導体回路の導体抵抗を測定すると2.5mΩ/□であり、単なる銀粉を用いた場合と遜色のない低抵抗が得られていた。
【0036】第2実施形態: 最初に耐熱金属層付銀粉の製造について説明することにする。耐熱金属層付銀粉の芯材として用いた銀粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであり、当該銀粉に無電解コバルトメッキを施して、耐熱金属層としてのコバルト層を銀粉の表面に形成したのであるが、コバルト層の形成を除き、第1実施形態と変わるところはないため、銀粉の表面へのコバルト層の形成に関してのみ説明し、重複した部分の記載は省略する。
【0037】耐熱金属層付銀粉1000gを、溶液温度80℃とした8.0リットルの無電解コバルトメッキ浴に添加し、10分間の攪拌を行い、粉体を濾別採取して、水洗し、乾燥することでコバルト層付銀粉を得た。このときの、コバルト層の重量厚さは、0.76wt%であった。このときに用いた無電解コバルトメッキ浴は、硫酸コバルト0.05mol/dm、燐酸水素ナトリウム0.2mol/dm、Na−citrate0.2mol/dm、硫酸アンモニウム0.5mol/dm、ホウ酸0.5mol/dmの組成で、pH調整剤に水酸化アンモニウムを用いてpH10とした、これは光沢コバルト無電解メッキを得るための所謂A−C−10無電解コバルト標準浴組成を用いたのである。
【0038】そして、このコバルト層付銀粉を用いて、第1実施形態と同様の方法でテルピネオール系のコバルト層付銀粉ペーストを製造した。そして、この粘度を測定した。その結果、製造直後の粘度で18.7Pa・sであり、良好な低粘度が達成できていた。
【0039】そして、第1実施形態と同様の手法でコバルト層付銀粉ペーストを用いてテスト回路パターンを描いたセラミックグリーンシートを、大気中で900℃の温度で3時間の焼成を行った。その結果、セラミック基板上に形成されたストリップラインである配線導体回路は、拡大観察すると粉粒が溶融することなく残留していた。なお、この場合の粉粒の見え方は、第1実施形態の図2(a)と同様であるため省略する。また、このときに形成された配線導体回路の導体抵抗を測定すると3.0mΩ/□であり、単なる銀粉を用いた場合と遜色のない低抵抗が得られていた。
【0040】比較例: 更に、本件発明者等は、上述した本実施形態の効果を確認するため、比較に用いる実施形態として、以下の内容を実施した。比較例として、第1実施形態の芯材となる銀粉を、そのまま用いて、第1実施形態と同様の試験を行ったのである。従って、実施手順を詳細に説明しても、第1実施形態のニッケル層の形成を省くだけであり、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0041】当該銀粉を用いて、テルピネオール系銀ペーストを製造した。これらの製造方法は、第1実施形態で記載したと全く同様であるため、ここでの説明は省略する。そして、この粘度を測定した。その結果、製造直後の粘度で20Pa・sであり、前述の実施形態と比較するとやや高めの値となっている。
【0042】そして、第1実施形態と同様の手法で銀ペーストを用いてテスト回路パターンを描いたセラミックグリーンシートを、大気中で900℃の温度で30分間の焼成を行った。その結果、セラミック基板上に形成されたストリップラインである配線導体回路は、拡大観察すると粉粒が完全に溶融しており、図2(b)に示すようなアイランドを形成していた。従って、このときに形成された配線導体回路の導体抵抗の測定自体が不可能であった。
【0043】
【発明の効果】本件発明に係る耐熱金属層付銀粉は、その溶融開始温度が、従来の銀粉に比べ非常に高くなるため、回路を引き回した金属ペーストの焼成温度と、セラミックグリーンシートの焼成温度とを、より近い温度にすることが可能となる。この耐熱金属層付銀粉を用いて金属ペーストを製造し、その金属ペーストで回路を引き回して、配線導体回路とセラミックグリーンシートとを同時焼成することで製造する低温焼成セラミック基板を歩留まりよく効率的に生産ことができることになるのである。従って、高品質の低温焼成セラミック基板の生産コストを大幅に低減させての市場供給が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号
【出願日】 平成14年4月19日(2002.4.19)
【代理人】 【識別番号】100111774
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 大輔
【公開番号】 特開2003−306701(P2003−306701A)
【公開日】 平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願番号】 特願2002−117795(P2002−117795)