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【発明の名称】 三次元形状造形物製造用の粉末材料、三次元形状造形物の製造方法、および、三次元形状造形物
【発明者】 【氏名】不破 勲
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工株式会社内

【氏名】草野 昇
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工株式会社内

【氏名】待田 精造
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工株式会社内

【氏名】阿部 諭
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工株式会社内

【氏名】武南 正孝
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工株式会社内

【要約】 【課題】粉末材料に光ビームを照射して硬化層を形成し、この硬化層を積み重ねて所望の三次元形状を有する造形物を製造する方法において、緻密で精度の高い造形品を容易かつ能率的に得られるようにすることである。

【解決手段】粉末材料30に光ビーム50を照射して硬化層32を形成し、この硬化層32を積み重ねて所望の三次元形状を有する造形物Mを製造する方法で、50重量%以上の鉄系粉末と、ニッケル、ニッケル系合金、銅および銅系合金からなる群から選ばれる1種類以上の非鉄系粉末とを含む粉末材料を用い、作製された造形物に、造形物よりも融点の低い金属からなる含浸材料を含浸させることで、表面粗さが小さく、硬度が高く、強度に優れ、成形金型などに適した造形物を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】粉末材料に光ビームを照射して硬化層を形成し、この硬化層を積み重ねて所望の三次元形状を有する造形物を製造する方法に用いられる粉末材料であって、50重量%以上の鉄系粉末と、ニッケル、ニッケル系合金、銅および銅系合金からなる群から選ばれる1種類以上の非鉄系粉末とを含む三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項2】前記粉末材料が、球状もしくは略球状をなし、平均粒径が0.1〜200μmである請求項1に記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項3】前記鉄系粉末を70〜95重量%含む請求項1または2に記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項4】前記鉄系粉末が、焼入したときの硬さがビッカース硬さ400以上またはロックウェル硬さ40以上になる良焼入性材料である請求項1〜3の何れかに記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項5】前記鉄系粉末が、合金工具鋼材料である請求項1〜4の何れかに記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項6】前記非鉄系粉末として、銅とリンまたはマンガンとの合金からなる銅系合金を含む請求項1〜5の何れかに記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項7】前記非鉄系粉末として、ニッケルとクロム、リン、シリコンからなる群から選ばれる1種類以上の材料との合金からなるニッケル系合金を含む請求項1〜6の何れかに記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項8】前記鉄系粉末が、クロムモリブデン鋼を含み、前記非鉄系粉末が、リン銅またはマンガン銅の何れかとニッケルとを含む請求項1〜6の何れかに記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項9】前記粉末材料が、クロムモリブデン鋼70〜90重量%、リン銅またはマンガン銅5〜30重量%、ニッケル0〜10重量%を含む請求項8に記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項10】前記粉末材料の凝集防止剤をさらに含む請求項1〜9の何れかに記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項11】前記凝集防止剤が、前記粉末材料の表面にコーティングされている請求項10に記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項12】前記凝集防止剤が、脂肪酸である請求項10または11に記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項13】前記粉末材料が、平均粒径1〜20μmである請求項10〜12の何れかに記載の三次元形状造形物製造用の粉末材料。
【請求項14】粉末材料に光ビームを照射して硬化層を形成し、この硬化層を積み重ねて所望の三次元形状を有する造形物を製造する方法であって、前記粉末材料が請求項1〜13の何れかに記載の粉末材料であり、前記粉末材料から製造された造形物に、造形物よりも融点の低い金属からなる含浸材料を含浸させる工程(a) を含む三次元形状造形物の製造方法。
【請求項15】前記含浸材料が、銅もしくは銅合金である請求項14に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項16】前記工程(a) が、不活性または還元性の雰囲気中で減圧下で、前記含浸材料の粉末を前記造形物と接触させて含浸材料を造形物に含浸させる請求項14または15に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項17】前記含浸材料が、ブロンズである請求項15に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項18】前記含浸材料が、銅とすず、リン、マンガンとの合金である請求項15に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項19】前記工程(a) のあとで、造形物に放電加工を施す工程(b) をさらに含む請求項14〜18の何れかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項20】請求項14〜19の何れかの方法で製造され、プラスチック射出成形用金型である三次元形状造形物。
【請求項21】請求項14〜19の何れかの方法で製造され、放電加工用電極である三次元形状造形物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、三次元形状造形物の製造技術に関し、詳しくは、光ビームを利用して粉末材料を層状に連続的に硬化させて三次元形状造形物を製造する技術において、造形に用いる金属を主体とする粉末材料と、このような粉末材料を用いて造形物を製造する方法と、このような方法で製造された造形物とを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】金属粉末材料に光ビーム(指向性エネルギービーム、例えばレーザ)を照射して硬化層を形成し、この硬化層を積み重ねて三次元形状を有する造形物を製造する技術が知られている。通常、このような方法で得られる造形物は、造形密度(焼結密度)が70%程度であり、造形物の表面には隙間(空孔)が非常に多く存在している。成形金型のように、表面特性が重要で、例えば表面粗さRy =1μm程度が要求される用途には、前記方法で得られた造形物をそのまま使用することは出来ない。造形物の表面に存在する隙間を埋めたり、隙間を埋めた後の表面を仕上げたりすることが必要になる。
【0003】特許文献1には、粉体の堆積層を圧粉したり粉体の堆積層にレーザ光を照射したあと全体を圧縮したりして中間成形体を造形し、この中間成形体をさらに焼結して、緻密な造形物を得る技術が示されている。特許文献2には、単一の高密度エネルギー線では溶融不可能な金属の混合粉体に、複数の高密度エネルギー線を同時に照射して溶融させることで造形物を得る技術が示されている。特許文献3には、銅合金を主成分として鉄族金属なども含む混合粉末をレーザ光の照射によって焼結させて造形物を製造する際に、鉄族金属化合物を含むガス雰囲気中で焼結を行わせることで、混合粉末からなる焼結材料の孔を鉄族金属化合物に由来する強化相で埋めて、空隙率を小さくし密度を高くする技術が示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−88201号公報【0005】
【特許文献2】特開平8−39275号公報【0006】
【特許文献3】特表平10−506151号公報【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した何れの先行技術でも、成形金型などに利用できるほど表面粗さの小さな造形物を得ることは困難である。特許文献1の先行技術では、堆積層の圧粉や全体の圧縮を行っても、隙間や空孔がある程度は小さくなるだけで、完全に無くすことはできない。特許文献2の先行技術では、金属の混合粉体を完全に溶融させるには、複数の高密度エネルギー線を同時に照射する装置が必要であり、複数の高密度エネルギー線を焦点を合わせて同時に照射しながら走査するには高度な技術が必要となり、製造装置が複雑で高価なものとなり、生産性も低くなる。金属を完全に溶融させたあとで固化させると、熱変形にって反りやクラックが発生し易く、造形物の寸法精度が低下してしまう。
【0008】特許文献3の先行技術では、鉄族金属化合物は1種の化学蒸着によって焼結材料の表面に堆積するので、焼結材料の表面から内部までの全体の隙間を完全に埋めるには時間がかかり、造形作業の能率が低下する。レーザ光を照射する領域を特定のガス雰囲気に維持する装置などが必要であり、装置構造が複雑で高価になる。造形物の隙間や空孔を埋める方法として、金属や樹脂を溶融させて含浸させる方法が考えられる。但し、樹脂では強度や耐久性などに問題があり、前記した成形金型などには適用できない。金属を用いる場合、溶融した高温の金属が造形物と接触すると、造形物の一部が溶けたり熱変形を起こしたりする可能性がある。
【0009】本発明が解決しようとする課題は、前記した粉末の光レーザ硬化層を積層して三次元形状造形物を製造する技術において、従来技術が有する問題点を解消し、緻密で精度の高い造形品を容易かつ能率的に得られるようにすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる三次元形状造形物製造用の粉末材料は、粉末材料に光ビームを照射して硬化層を形成し、この硬化層を積み重ねて所望の三次元形状を有する造形物を製造する方法に用いられる粉末材料であって、50重量%以上の鉄系粉末と、ニッケル、ニッケル系合金、銅および銅系合金からなる群から選ばれる1種類以上の非鉄系粉末とを含む。
〔その他の発明〕前記粉末材料が、球状もしくは略球状をなし、平均粒径が0.1〜200μmであることができる。好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは5〜50μmであることができる。
【0011】前記鉄系粉末を70〜95重量%含むことができる。前記鉄系粉末が、焼入したときの硬さがビッカース硬さ400以上またはロックウェル硬さ40以上になる良焼入性材料であることができる。前記鉄系粉末が、合金工具鋼材料であることができる。前記非鉄系粉末として、銅とリンまたはマンガンとの合金からなる銅系合金を含むことができる。前記非鉄系粉末として、ニッケルとクロム、リン、シリコンからなる群から選ばれる1種類以上の材料との合金からなるニッケル系合金を含むことができる。
【0012】前記鉄系粉末が、クロムモリブデン鋼を含み、前記非鉄系粉末が、リン銅またはマンガン銅の何れかとニッケルとを含むことができる。前記粉末材料が、クロムモリブデン鋼70〜90重量%、リン銅またはマンガン銅5〜30重量%、ニッケル0〜10重量%を含むことができる。前記粉末材料の凝集防止剤をさらに含むことができる。前記凝集防止剤が、前記粉末材料の表面にコーティングされていることができる。前記凝集防止剤が、脂肪酸であることができる。
【0013】前記粉末材料が、平均粒径1〜20μmであることができる。
〔三次元形状造形物の製造方法〕粉末材料に光ビームを照射して硬化層を形成し、この硬化層を積み重ねて所望の三次元形状を有する造形物を製造する方法であって、前記粉末材料から製造された造形物に、造形物よりも融点の低い金属からなる含浸材料を含浸させる工程(a) を含む。前記含浸材料が、銅もしくは銅合金であることができる。前記工程(a) が、不活性または還元性の雰囲気中で減圧下で、前記含浸材料の粉末を前記造形物と接触させて含浸材料を造形物に含浸させることができる。
【0014】前記含浸材料が、ブロンズであることができる。前記含浸材料が、銅とすず、リン、マンガンとの合金であることができる。前記工程(a) のあとで、造形物に放電加工を施す工程(b) をさらに含むことができる。
〔三次元形状造形物〕前記製造方法で製造され、プラスチック射出成形用金型、あるいは、放電加工用電極であることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】〔基本的製造工程〕図1に、基本的な製造工程を示している。図1(a) に示すように、周囲が囲まれた造形枠10の内部に、昇降自在な造形台12を備えている。造形台12の上には、造形物を載せて取り扱うための載置板14が配置される。造形枠10の内部で載置板14の上には、既に作製された硬化層32が複数層積み重ねられている。硬化層32の周囲には未硬化の粉末材料30が存在している。
【0016】造形台12の上下位置を調整することで、硬化層32および未硬化の粉末材料30の表面が、造形枠10の上端よりも少し低い位置になるように配置する。造形枠10と硬化層32の表面との間隔が、次に作製される硬化層32の厚みを決める。先に形成された硬化層32および未硬化の粉末材料30の上に、新たな粉末材料30を供給し、造形枠10を横断する幅板状の規制部材16を造形枠10よりも少し高い位置で水平方向に移動させて、粉末材料30の高さ位置を規制し、全体が一定の厚みを有する粉末材料30の層を形成する。
【0017】図1(b) に示すように、造形枠10の内側の粉末材料30表面にビーム状のレーザ光50を照射すると、その部分の粉末材料の全体あるいは一部が溶融して粉末材料同士が一体的に接合され、新たな硬化層32が形成される。粉末材料が溶融硬化する際には、先に形成された硬化層32とも接合一体化されるので、新たに形成された硬化層32は下方に積層された硬化層32…と一体化することになる。レーザ光50を水平方向に走査することで、所定のパターン形状を有する硬化層32が得られる。
【0018】上記のような工程を繰り返すことで、所定のパターン形状を有する硬化層32が複数層積層された三次元形状を有する造形物が得られる。硬化層32すなわち造形物の周囲には未硬化の粉末材料30が残留している。図1(c) に示すように、造形枠10の内部から、載置板14とともに造形物Mを取り出せば、三次元形状を有する造形物Mが得られる。
〔粉末材料〕粉末材料は、造形物の基本的構造や特性を決めるベースになる材料と、このベース材料を接合するバインダになる材料とを組み合わせる。
【0019】ベース材料として、硬度の高い材料が好ましい。造形物を成形用金型や放電加工用電極のような耐久性を要求される用途に使用する場合には、製品寿命などを考慮すれば、造形物には高い硬度が要求され、ベース材料にも高い硬度の材料を用いることが望ましい。ベース材料として、焼入れ性の良い材料を用いると、光照射によって焼結およひ造形が行われる際に、光照射時の加熱とその後の急冷によって焼入れが行われて、硬度などの特性が向上する。ベース材料に適した材料として鉄系粉末が用いられる。上記した硬度および焼入れ性の点で、合金工具鋼の材料が好ましいものとなる。具体的には、クロムモリブデン鋼(例えば、SCM440)などがある。
【0020】バインダ材料はベース材料との相性が良く(合金を作りやすく)、溶融時に流動性の良い材料が好ましい。具体的には、鉄系材料と相性の良いニッケルやニッケル系合金があげられ、靱性、強度、耐食性などを向上させて、線膨張係数を低下させるという機能もある。ニッケル系合金として、クロム、リン、シリコンなどとの合金を用いることができる。Ni−P系合金は、鉄系材料(SCM鋼)に比べて融点が500℃以上も低いので、バインダとしての機能に優れている。銅や銅系合金も鉄系材料と相性が良く、流動性や濡れ性も良く、鉄系材料に比べて融点が300℃以上も低いので、鉄系材料を光照射で焼結させて造形する際のバインダ機能が高い。銅系合金として、銅とリンやマンガンとの合金を用いると、鉄系材料に比べて融点が500℃以上も低くなり、前記機能に優れたものとなる。
【0021】粉末材料に占めるバインダ材料の割合が多いほど、低エネルギーの光ビームでも焼結できるので、光照射による焼結性が良くなる。しかし、バインダ材料の割合が多いと、造形物の融点が低下する。そのため、造形物に金属を含浸させるのが困難になる。これらの条件を考慮して、バインダ材料の割合が決められる。造形物を製造後に金属などを含浸させる場合、造形物の融点は含浸材料よりも高く設定しておく必要がある。含浸材料がブロンズや銅合金の場合、造形物を製造する粉末材料は、融点の高い鉄系粉末を70〜95重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0022】具体的には、下記組成の粉末材料が使用できる。
【0023】
【表1】

【0024】上記表において、マンガン鋼(SCM440)は、JIS規格に規定される材料であり、以下の組成を有する。
【0025】
【表2】

【0026】また、リン銅としては、リン(P)を6.5重量%含むものを用いた。以下の組成配合からなる粉末材料も使用できる。
【0027】
【表3】

【0028】ここで、Ni−P系合金は、C:0.09重量%およびP:11.0重量%、残部Niからなる合金である。
〔粉末材料の粒径〕粉末材料の粒径は小さいほうが、堆積させたときの粉末材料層の厚みを薄くでき、造形物の寸法精度を向上させることができる。しかし、粒径の小さな粉末は、表面積が大きくなって凝集を起こし易くなり、粉末を散布しても転がって一様に拡がることが行われ難くなり、粉末材料層における粉末材料の充填密度が低下する。厚みの薄い粉末材料層が形成でき難くなる。小さな粉末が多く存在するほど、上記問題が顕著になる。
【0029】これらの条件を考慮して、粉末材料の平均粒径は0.1〜200μmが好ましい。また、種々の条件で実験を繰り返した結果、実用的に最も好ましい粒径範囲は、平均粒径5〜50μmであった。
〔造形条件〕光ビーム50として、パルスYAGレーザが用いられる。照射エネルギー0.1J/ショット、ショット数150pps 、レーザ走査速度50mm/sec、走査間隔0.2mmに設定する。光ビームとして、CW(連続波)YAGレーザ、パルス炭酸レーザ、CW炭酸ガスレーザを用いることもできる。
【0030】造形雰囲気は、窒素ガスによる不活性ガス雰囲気とする。積層硬化させる粉末材料層30の厚みを、0.05mmに設定する。積層厚さを、0.1mmあるいは0.2mmに設定することもできるが、造形物の寸法精度を向上させるには出来るだけ薄いほうが好ましい。また、粉末材料の粒径よりも薄い積層厚さは形成できない。硬化層32を形成する載置板14として、ダイス鋼、ハイス鋼、超硬合金など、造形物よりも硬度の大きな材料からなるものが用いられる。前記した粉末材料(1)(2)を用いて、上記処理条件で造形を行ったところ、何れの組成でも良好な造形物が得られた。粉末材料(1)を用いて製造された造形物の融点は1150℃以上であった。
【0031】〔凝集防止剤〕凝集防止剤を使用することで、粉末材料の凝集を防止して、粉末材料層の形成を容易にし、粉末充填密度を向上させることができる。凝集防止剤としては、微粉末の凝集を防ぐ機能のある材料であれば、一般的に凝集防止剤として利用されている各種の材料が使用できる。具体的には、ステアリン酸などの脂肪酸を含む化合物が使用できる。粉末状あるいはフレーク状のステアリン酸亜鉛が使用できる。粉末材料に混合されたステアリン酸亜鉛は、光照射による焼結の際に大部分が蒸発する。ステアリン酸亜鉛の一部は鉄系材料と反応して浸炭機能を発揮し、硬度を向上させる効果がある。この浸炭機能は、凝集防止剤を含まれる脂肪酸中の炭素が、光照射によって鉄系粉末と反応して生じるものであると推定できる。
【0032】但し、凝集防止剤には、粉末材料の焼結すなわち結合を阻害する作用があるので、配合量が多すぎると、造形密度が小さくなり、造形強度が低下し、造形物に金属を含浸させる際に形状が崩れる問題が生じる。これらの条件を考慮して、凝集防止剤の添加量が決定される。具体的には、0.5〜1.0重量%程度を配合しておくことができる。凝集防止剤が配合された粉末材料の具体的組成を以下に示す。
【0033】
【表4】

【0034】上記粉末材料(3)は、粉末材料(1)(2)に比べて平均粒径が小さいが、凝集防止剤を配合していることで、粉末材料層の形成に問題が生じることはない。粒径の小さな粉末を使用することで、厚みの薄い粉末材料層すなわち硬化層を形成することが可能になる。この場合、例えば、厚み0.03mm程度の粉末材料層が形成できる。凝集防止剤は、粉末材料を構成する鉄系粉末および非鉄系粉末の表面にコーティングしておくこともできる。凝集防止剤がコーティングされた粉末材料の具体例を以下に示す。
【0035】
【表5】

【0036】凝集防止剤は、粉末材料に混合しておくよりもコーティングしておくほうが、凝集防止機能が高くなり、粉末材料層の形成がより良好に行える。
〔造形物への含浸処理〕含浸材料としては、造形物の表面に接触させた状態で溶融させて、造形物に存在する微細な隙間あるいは空孔を埋めて含浸させることができる材料が用いられる。含浸材料として、造形物よりも低い融点を有する材料を用いる。溶融時に流動性の良い材料が好ましい。
【0037】含浸材料は造形物の機械的特性に影響を与える。造形物の用途や要求性能に合わせて、含浸材料を選択する。通常は、粉末材料に用いられるのと同様の金属の中から選んで使用される。含浸材料の具体例として、銅や銅合金が使用できる。銅合金として、銅とすず、リン、マンガンなどとの合金が使用できる。より具体的には、ブロンズ(青銅)が使用できる。例えば、前記した粉末材料(1)を用いて製造された造形物は、融点が1150℃以上になるので、融点が1084℃程度の銅が好適に使用できる。
【0038】含浸処理は、造形物の表面に含浸材料を接触させた状態で、含浸材料を溶融させることで造形物に含浸させる。減圧下で含浸処理を行えば、毛細管現象などの作用で、造形物への含浸材料の浸透が効率的に行われる。処理雰囲気を不活性雰囲気で行えば、造形物あるいは含浸材料の酸化が生じ難い。処理雰囲気が還元性雰囲気であれば、造形時あるいは造形後にある程度の酸化が生じていても、含浸処理と同時に表面が還元されて活性化し、含浸材料の内部への浸透が良好に行われる。粉末状の含浸材料を用いれば、造形物の形状に合わせて表面に配置する作業が行い易い。含浸処理に用いる量を容易に変更できる。含浸処理時の溶融も容易である。造形物の隙間に容易に浸透することができる。
【0039】含浸処理の具体的処理条件を以下に示す。
処理装置:真空炉含浸材料:銅粉末。造形物に表面に接触するように配置。
処理温度:1150℃処理圧力:133Pa(1Torr)
処理雰囲気:水素(還元性ガス)を約5リットル/min で供給。
前記した各種の粉末材料(1)〜(4)を用いて造形物を製造し、上記条件で含浸処理を行ったところ、何れの場合も、表面粗さが小さく、強度に優れ、熱伝導率の高い製品を得ることができた。
【0040】含浸材料を、ブロンズ(70Cu−30Sn)に代え、粉末材料(1)から造形された造形物に、上記と同じ含浸処理を行ったところ、上記同様に品質性能に優れた処理製品が得られた。この場合、造形物の融点は1150℃であり、含浸材料の融点は800℃以下である。したがって、粉末材料(1)の鉄系粉末の配合割合を少なくしバインダ材料の非鉄系粉末を増やして、融点をもう少し下げても、十分に含浸処理は可能である。含浸材料を、リン銅(P=6.5重量%)に代えて同様の処理を行ったところ、前記同様に優れた性能が発揮できた。なお、リン銅の融点は850℃以下である。したがって、この場合も、粉末材料(1)の鉄系粉末の配合割合を少なくすることができる。
【0041】以上に説明した含浸処理によって、造形物の表面粗さが良好に(小さく)なる。造形物の隙間や空孔が含浸材料で埋められることで熱伝導率が高くなる。強度も向上する。
〔放電加工処理〕上記のようにして造形され含浸処理を施した造形物に、放電加工による仕上げ加工を行うことができる。放電加工に使用する装置および処理条件は、通常の金属材料に対する加工処理と同様の装置や処理条件を適用することができる。
【0042】放電加工には、加工形状に対応する形状の電極を用いて、電極の形状通りに加工を行う方法がある。この場合は、加工速度が遅くなり、電極製造に手間がかかることになる。予め三次元形状に作製された造形物に対して、表面の形状を整形したり、小さな凹凸形状を形成したりするだけで良い場合には、次の方法が採用できる。図2に示すように、角棒状をなす電極60の先端を造形物Mの表面に沿って移動させることで、造形物Mの表面を削り取って、造形物Mの表面形状を仕上げることができる。造形物Mの表面に付着している金属粉末の残留物を除去したり、光照射による造形では作製が困難な形状部分を形成したり、造形物Mの表面に部分的に孔や溝、凹みなどを作製する場合に有効である。
【0043】電極60としては、角棒状のもののほか、円棒状その他の比較的に単純な棒状その他の立体形状のものが使用できる。上記方法は、造形物Mの一部を削り取るだけなので、加工能率が高く、短時間で仕上げることができる。また、放電加工の長所である高アスペクトの加工が可能である点も活かすことができる。特に、粉末材料を用いた造形方法では、造形物Mの表面に不要な金属粉末が付着したままになり易いので、放電加工による不要金属粉末の除去加工によって、表面が平滑で表面粗さの小さな造形物を効率的に得ることができる。
【0044】〔三次元形状造形物〕本発明の粉末材料を用いて、本発明の製造方法で製造された造形物は、硬度が高く、機械的強度に優れ、表面粗さが小さいことなどの利点により、プラスチック射出成形用金型や放電加工用電極として優れたものとなる。これらの用途では、複雑な三次元形状を高い寸法精度で備えていることが要求されたり、設計変更に迅速に対応することが要求されたりするため、光照射の走査パターンを変更するだけで造形物の形状が変更でき、造形物が高速できる前記方法が極めて有効である。
【0045】
【発明の効果】本発明にかかる三次元形状造形物製造用の粉末材料は、鉄系粉末をベースにして、バインダになる非鉄系粉末を組み合わせていることで、硬度が高く機械的強度や耐久性にも優れた造形物を提供することができる。しかも、造形物に含浸材料を含浸させることで、造形物の表面に生じる隙間や空孔を埋めて、表面粗さの小さな造形物を得ることができる。含浸処理の際には、含浸させる金属に比べて、はるかに融点が高い鉄系粉末をベースにした造形物は、部分的に溶融したり熱変形を起こしたりすることがなく、造形された三次元形状を正確に維持することができる。含浸させる金属として、比較的に融点が高い材料を用いることができ、使用時における耐久性や機械的特性を向上させることができる。含浸材料の流動性が良くなる高温で含浸処理を行うことが可能になり、造形物の内部の隙間や空孔までに迅速かつ十分に含浸材料を浸透させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地
【出願日】 平成11年11月25日(1999.11.25)
【代理人】 【識別番号】100073461
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 武彦
【公開番号】 特開2003−301202(P2003−301202A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2003−98424(P2003−98424)