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【発明の名称】 複合サーメット粉末およびその製造方法
【発明者】 【氏名】谷 和美

【氏名】小林 圭史

【氏名】北秋 廣幸

【要約】 【課題】基材上に金属窒化物を主成分とする材料を被覆し、そして、この被覆層を最表面層とするか、あるいは他の被覆層を形成するための下地層として形成するのに好適に用いられる粉末材料と、その製造技術を提案すること。

【解決手段】金属と、その金属の窒化物およびその金属の酸化物の混合粉末からなる複合サーメット粉末であり、該金属がSi、Al、TiおよびZrのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、その金属に対応する窒化物がそれぞれ、Si3N4、AlN、TiNおよびZrNのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、かつ、その金属に対応する酸化物がそれぞれSiO2、Al2O3、TiO2およびZrO2のうちから選ばれるいずれか1種以上の組合せからなること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属と、その金属の窒化物およびその金属の酸化物の混合粉末からなることを特徴とする複合サーメット粉末。
【請求項2】 前記金属がSi、Al、TiおよびZrのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、その金属に対応する窒化物がそれぞれ、Si3N4、AlN、TiNおよびZrNのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、かつ、その金属に対応する酸化物がそれぞれSiO2、Al2O3、TiO2およびZrO2のうちから選ばれるいずれか1種以上の組合せからなることを特徴とする、請求項1に記載の複合サーメット粉末。
【請求項3】 金属、金属酸化物および金属窒化物の混合割合が、容積分率で金属:金属酸化物:金属窒化物=20〜50:5〜15:75〜35であることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合サーメット粉末。
【請求項4】 前記混合粉末粒子の大きさが5〜120μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合サーメット粉末。
【請求項5】 金属、その金属の酸化物およびその金属の窒化物の混合粉末を造粒し、その後、噴霧乾燥することを特徴とする複合サーメット粉末の製造方法。
【請求項6】 金属、その金属の酸化物およびその金属の窒化物の混合粉末を造粒し、その後、焼結してから粉砕することを特徴とする複合サーメット粉末の製造方法。
【請求項7】 前記金属がSi、Al、TiおよびZrのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、その金属に対応する窒化物がそれぞれ、Si3N4、AlN、TiNおよびZrNのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、かつ、その金属に対応する酸化物がそれぞれSiO2、Al2O3、TiO2およびZrO2のうちから選ばれるいずれか1種以上の組合せからなることを特徴とする、請求項5または6に記載の複合サーメット粉末の製造方法。
【請求項8】 噴霧乾燥後または焼結粉砕後の粉末粒子の大きさを5〜120μmの範囲に調整することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の複合サーメット粉末の製造方法。
【請求項9】 金属、金属酸化物および金属窒化物の混合割合が、容積分率で金属:金属酸化物:金属窒化物=20〜50:5〜15:75〜35であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の複合サーメット粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属−金属酸化物−金属窒化物系からなる複合サーメット粉末とその製造方法に関するものである。本発明にかかるこの複合サーメット粉末は、溶射用粉末材料、焼結用粉末材料あるいは物理的蒸着用粉末材料等として用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】金属窒化物は、非酸化物系無機質材料の一つであり、耐熱性および耐食性に優れるとともに、高硬度で卓越した耐摩耗性を有することから、各種の産業分野で用いられる基本的な材料の1つである。この金属窒化物を主成分とする部材(製品)を工業的に製造する方法としては、金属窒化物原料粉末を成形したのち焼結する方法や、PVDやCVDなどの気相成長法によって別の基材表面に数μm厚の薄膜を形成する方法などが採用されている。その他、バルク体以外の基材表面に50μmを超えるような厚いコーティングを形成する技術として、有機接着剤を含むスラリーを噴霧、塗布あるいは浸漬する方法によってコーティングしたり、複合めっきプロセスである窒化物分散型化学めっき法などによって、皮膜形成する方法がある。
【0003】発明者らは、非酸化物系無機質材料(以下、「セラミックス」の例で述べる。)のもつ優れた特性を利用した溶射用粉末材料の開発とその実用化について鋭意研究を行なってきた。例えば、特開平7−62516号公報(特許第3224166号)では、耐溶融金属用皮膜として、TiN、HfN、NbN、TaN、VN、ZrN、CrN、Si3N4およびAlNなどの窒化物のみを溶射する技術を提案した。この皮膜は、溶融亜鉛中では優れた耐食性を発揮するが、皮膜を構成する窒化物粒子の相互結合力が比較的弱く、耐摩耗性皮膜としては改善の余地を残していた。
【0004】また、Cr3C3、WC、TiCなどの炭化物系セラミックスおよびCrB2、TiB2、ZrB2などのほう化物系セラミックスに対しては、Al、NiおよびCoなどの金属成分を添加したサーメット材料を開発し、例えば、特開平4−358055号公報(特許第2986590号)として提案した。しかし、このサーメットを用いた皮膜の特徴は、金属成分に由来する特性に支配され、酸やアルカリ環境中では十分な性能を発揮することができないという点で、改善の余地があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述したとおり、金属窒化物系部材は、一般に、■ 原料粉末を成形したのち焼結する方法、■ PVDやCVDなどの気相成長法、■化学めっき法、などによって別の基材表面に被覆形成させる方法などによって製造されている。しかしながら、上記の方法にはそれぞれ以下のような問題点があった。
【0006】■の方法は、金属窒化物が難焼結性であるため、これを基材表面に被覆したり、各種被覆層の下層とすることは基本的に困難である。しかも焼結の際には、焼結助剤などの添加が不可欠となって、コスト高になることに加え、特定の形状を付与し、実用レベルの機械的強度を持たせるためには、ホットプレスやHIPなど、限定された条件を用いて成形・焼結を行なうことが必要である。従って、比較的形状の大きい部材に対し、このようなプロセスを適用することは、経済的な損失が大きいという問題点がある。■の方法は、30〜50μm以上の厚さの層を経済的に得ることが困難で、実用的でないという問題点がある。■ 化学めっき方法により、複合めっき皮膜を形成する方法は、窒化物が単に金属めっき膜中に分散混合した状態になっていて、化合物としての窒化物皮膜になっている訳ではないから、金属窒化物としての本来の特性が得られないという問題点があった。
【0007】そこで、本発明は、上述した焼結法、気相成長法あるいは化学めっき法によらず、窒化物の被覆層を形成する方法として、溶射法や塗布法などに着目して検討した。たとえば、平均粒径が10〜40μm程度の金属窒化物粉末材料を、溶射法や圧縮気体による噴霧法などの吹き付け手段、塗布法あるいは浸漬法などを用いて成膜させることを考えた。そして、これらの手段を用いて成膜するのに好適な複合サーメット粉末材料およびその製造方法について検討することにしたのである。
【0008】すなわち、本発明の目的は、基材上に金属窒化物を主成分とする材料を被覆し、そして、この被覆層を最表面層とするか、あるいは他の被覆層を形成するための下地層として形成するのに好適に用いられる粉末材料と、その製造技術を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した知見の下で、前記目的を実現するために本発明では、以下のような手段を採用する。すなわち、本発明は、金属と、その金属の窒化物およびその金属の酸化物の混合粉末であることを特徴とする複合サーメット粉末を提案する。
【0010】また、本発明は、金属(合金を含む、以下、「金属・合金」を含めて単に金属という)、その金属の酸化物およびその金属の窒化物の混合粉末を造粒し、その後、噴霧乾燥することを特徴とする複合サーメット粉末の製造方法を提案する。
【0011】さらに、本発明は、金属、その金属の酸化物およびその金属の窒化物の混合粉末を造粒し、その後、焼結してから粉砕することを特徴とする複合サーメット粉末の製造方法を提案する。
【0012】なお、本発明においては、前記金属がSi、Al、TiおよびZrのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、その金属に対応する窒化物がそれぞれ、Si3N4、AlN、TiNおよびZrNのうちから選ばれるいずれか1種以上であり、かつ、その金属に対応する酸化物がそれぞれSiO2、Al2O3、TiO2およびZrO2のうちから選ばれるいずれか1種以上の組合せからなること、金属、金属酸化物および金属窒化物の混合割合が、容積分率で金属:金属酸化物:金属窒化物=20〜50:5〜15:75〜35であること、および噴霧乾燥後または焼結粉砕後の粉末粒子の大きさを、5〜120μmの範囲に調整することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】始めに、本発明に係る金属−金属窒化物−金属酸化物系の複合サーメット粉末について説明する。ところで、金属窒化物というのは一般に、密度が比較的小さいため、溶射法などにおいて溶射火炎中に投入することが難しく、また、高温下では、金属窒化物の生成自由エネルギーが、金属酸化物の生成自由エネルギーと比較して小さいため不安定になるという問題点がある。そのため、発明者らは、このような金属窒化物の粉末について種々実験的に検討を重ねた結果、金属窒化物を構成している金属を結合材として利用すれば、望ましい粉末を得ることができるのではないかと考えた。
【0014】このような結合材として添加する金属として、本発明では、Si、Al、TiおよびZrのうちから選ばれるいずれか1種以上の金属もしくは、それらの合金(以下、単に金属という)を用いることが好ましい。これらの金属・合金窒化物の焼結体は、構造用セラミックスとして実用化されており、その化学的安定性や高靭性、高熱伝導率などの特性から工業的な利用が期待されている。つまり、これらの金属・合金およびその金属の窒化物を構成成分とする被覆層を提供できれば、工業的な価値が非常に高いのである。
【0015】また、上述した結合材として用いる金属に対し、その金属に対応する窒化物として、本発明は、前記金属のうちから選択した金属の窒化物、すなわちSi3N4、AlN、TiNまたはZrN等のうちのいずれか1種以上を用いる。これらの金属窒化物は、主として粉末冶金焼結プロセスで得られ、前述のとおり新しいセラミックス材料として、バルク材等に実用されている。Si3N4は、比重が約3.2g/cm3と小さく、軽量で室温および高温強度に優れ、耐熱衝撃性および耐薬品性にも富んでいる。また、AlNは、高熱伝導性を有した構造用セラミックスであり、TiNおよびZrNは高硬度で耐摩耗性に優れた特性を有し、これらの工業的な利用が大いに期待されている。
【0016】本発明では、かかる金属窒化物の例として、表1に示すように、Si3N4、AlN、TiNおよびZrNのうちのいずれか1種以上を用いて、ポリビニルアルコール(PVA)を接着剤として種々の成分組成(No.1〜20)のサーメットのスラリーを作製し、これを噴霧乾燥法により5〜120μmの粉末とした後、さらに15〜53μmの粒度範囲に分級した。なお、各材料の配合比率は容積比である。得られた複合粉末について、50MPaの圧力をかけたときの粒子形態を観察した結果ならびに粉末顆粒強度を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】表1の結果から、例示のすべての粉末(No.1〜20)が50MPa程度までの加圧により簡単に粉末粒子が破壊され、実用レベルの強度が得られていないことがわかった。つまり、単に接着剤を介して金属窒化物と金属を複合化させただけでは、実用強度の複合粉末を製造することはできないことがわかった。なお、各構成材料の密度は、それぞれSi3N4:3.18g/cm3、AlN:3.26g/cm3、TiN:5.43g/cm3、ZrN:7.35g/cm3であった。
【0019】発明者らは、前記複合サーメット粉末の顆粒強度が十分でない要因について検討した。その結果、窒化物は難反応材であるため、窒化物と金属との固溶挙動がほとんど生じないことに原因があると考えた。そこで、窒化物の焼結体製造において、焼結助剤としての金属酸化物に着目し、これを金属窒化物−金属混合粉末に複合させれば、酸化物による焼結性の向上が期待でき、強度の向上が図れるのではないかと考えたのである。
【0020】なお、焼結助剤として作用させる金属酸化物としては、前記金属(Si、Al、TiおよびZrのうちから選ばれるいずれか1種以上の金属)の酸化物、すなわちSiO2、Al2O3、TiO2またはZrO2のうちのいずれか1種以上を使用する。セラミックスの圧粉体を常圧下で高温加熱し焼結する場合、一般にセラミックスの原料粉末に酸化物を主体とした焼結助剤を添加し、緻密化の促進を図る方法がとられている。本発明では、この基本プロセスを採用した。
【0021】さて、発明者らは、まず、金属窒化物の例としてSi3N4、金属の例としてSi、金属酸化物の例としてSiO2を使用して所定の組成に調整し、こうして得られた原料粉末を、大気中の直流プラズマジェット中に投入して溶射し、これらを水中に噴霧して粒子のまま捕捉した。そして、得られた各複合粉末粒子を顕微鏡による外観観察およびレーザー回折法による粉末の粒度分布測定によって顆粒の状態を調査した。その結果を表2に示す。なお、この表2中のAは、水中へのプラズマ溶射後の粉末顆粒の状態で、出発粉末の粒度分布形態がほぼ残存していること、Bは、粒度分布中粗粒側がほぼ1/2細粒化していること、Cは、出発粉末の粒度分布形態がほとんど消滅していることを表す。
【0022】
【表2】

【0023】同様にして、金属としてAl、金属窒化物としてAlNおよび金属酸化物としてAl2O3を用いて複合サーメット粉末を作製し、得られた顆粒の状態を調査した結果を表3に示す。また、表4には、金属としてTi、金属窒化物としてTiNおよび金属酸化物としてTiO2を用いた場合の顆粒の状態を調査した結果を、そして、表5には金属としてZr、金属窒化物としてZrNおよび金属酸化物としてZrO2を用いた場合の粉末の形態を示す。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】表2〜5に示す結果から、金属−金属窒化物−金属酸化物を適切な割合で混合させれば、プラズマ溶射による皮膜形成の出発原料として有効な複合サーメット粉末を提供することができることがわかった。すなわち、本発明に係る複合サーメット粉末は、金属、金属酸化物および金属窒化物の混合割合が、容積比で金属:金属酸化物:金属窒化物=20〜50:5〜15:75〜35であることが好ましい。金属の容積比が20未満では、サーメットの結合材としての効果が減殺され、粉末顆粒強度が低下してしまう。一方、その値が50を超えると金属の特性が強くなり、金属窒化物および金属酸化物の特性が減殺されて好ましくない。また、金属酸化物は、表2に示す結果から明らかなように、容積比が5未満または15を超える場合には、粉末顆粒強度が低く、実際に利用することができない。また、金属窒化物は、金属と金属酸化物の量を最適化することで決定される。
【0028】なお、本発明の複合サーメット粉末の構成成分の成膜における役割は、下記のとおりである。
(1)金属:溶射熱源中で溶融し、一部は酸化するものの、大部分は窒化物や酸化物粒子の接合作用および基材への付着力の向上に大きな役割を果たす。
(2)金属酸化物:溶射熱原中で溶融し(酸化物は溶融しても質的変化は少ない)、窒化物粒子の分散と接合を助け自らがマトリックスとしての機能を発揮する。
(3)金属窒化物:熱源中で一部が分解したり、ガス化するが、大部分は微細な粒子として溶融金属や酸化物をバインダーとして分散し、皮膜を形成する。
【0029】すなわち、本発明に係る複合サーメット粉末において、金属は一部が酸化するものの、その大部分がマトリックスを形造ると共に結合材として作用することで、金属窒化物および金属酸化物の均一分散の下に繋ぎ止めて一体化した状態で層を形成するのに寄与している。
【0030】また、本発明に係る40vol%Si−50vol%Si3N4−10vol%SiO2複合サーメット粉末粒子の形態を示す顕微鏡写真を図1に示す。
【0031】なお、本発明に係る複合サーメット粉末は、図2に示すフロー図に従って製造する。すなわち、上記の粉末原料を混合し、造粒したのち、噴霧乾燥もしくは焼結してから粉砕する。
■ 噴霧乾燥法は、複合材を構成する個々の成分粒子(一次粒子)と接着機能を有する有機物バインダー溶媒とを混合し、得られたスラリーをノズルから噴出させると共に、窒素などの不活性ガスの熱流体で急速乾燥させて粉末化するという方法であり、この方法は、多成分の複合粉体を簡便に製造できる。
■ 一方、焼結粉砕法は、複数の一次粒子粉末からなる複合材を混合した後、真空あるいは水素雰囲気で一旦、焼結結合させ、続いてこれを粉砕して粉末化するという方法であり、この方法で得られた粉末は、個々の粉末が優れた機械的強度を有し、炭化物サーメット材に適用した場合には、耐摩耗性に優れた特性を発揮することができる。
【0032】また、前記噴霧乾燥あるいは焼結粉砕により得た複合サーメット粉末材料の粒度は、5〜120μmの範囲内に調整することが望ましい。粒度を5〜120μmの範囲内に限定する理由は、粒度が120μm以上では、溶射時に熱源フレーム中で加熱した場合、粉末中心方向への熱伝達が不充分となり、加熱効率が低下して好ましくなく、一方、5μm未満では、粒子質量の熱源フレームへの移行が不充分となり、最終的には皮膜化せず、付着歩留りが低下して好ましくないためである。
【0033】
【実施例】(実施例1)この実施例では、Si−Si3N4−SiO2複合サーメット粉末を作製し、該粉末をプラズマ溶射法で内径100mm、深さ500mmのSS400鋼製るつぼ内壁に厚さ100μmに被覆した。このるつぼ内に鋼板めっき用のZn-0.2%Al合金を入れ、溶解後500℃で50時間保持した。この間、溶湯を攪拌器を用いて、るつぼ壁に対し周速3m/minの速さで強制攪拌した。
【0034】比較例としては、窒化珪素粉末をポリビニルアルコールを溶媒としてスラリー状とし、内径100mm、深さ500mmのSS400鋼製るつぼ内壁に、はけ塗りで塗布して200μm厚さに被覆した後、300℃で焼結処理した。このるつぼ内に鋼板めっき用のZn-0.2%Al合金を入れ、溶解後500℃で50時間保持した。この間、溶湯を攪拌器を用いて、るつぼ壁に対し周速3m/minの速さで強制攪拌した。
【0035】50時間保持後、溶湯を冷却し、インゴットを回収した。るつぼの内壁の皮膜を観察したところ、本発明では、皮膜の溶湯によるエロージョン損耗はほとんど認められなかったが、比較例では、ほとんどの皮膜が剥離し、SS400鋼基材が露呈していた。これらの結果から、本発明の粉末を用いて形成した皮膜は、十分な機械的強度を有し、窒化珪素単体を有機バインダーを用いて混合し焼結して形成した皮膜に比べて高耐久性を有することが明らかになった。
【0036】(実施例2)この実施例では、本発明に適合する40vol%Si−50vol%Si3N4−10vol%SiO2の混合粉末を、プラズマ溶射法により基材上に成膜させ、皮膜の耐エロージョン性を評価した。
【0037】<本発明>寸法:100×50×6mmのSS400鋼製基材の表面に、本発明に適合する40vol%Si−50vol%Si3N4−10vol%SiO2の混合粉末をプラズマ溶射法により、150μm厚さに溶射して被覆形成した。
【0038】<比較例>本発明と同寸法の基材に、Si3N4粉末を水とポリビニルアルコールで得たスラリーを、はけ塗りおよび焼成からなる処理を複数回繰返して300μm厚さの塗膜を形成した。なお、焼成条件は、電気炉中で250℃で1時間保持とした。
【0039】前記のとおり皮膜形成させた基板に対し、アルミナ粒#220を空気圧10kPaで吹き付け、基材が露出するまでの時間を測定した。その結果、比較例では、5秒で基板が露出し始めたが、本発明の複合サーメット粉末を用いた溶射皮膜では、30秒間、耐エロージョン性を示した。これは、本発明の複合サーメット粉末を構成する金属窒化物が、金属および金属酸化物との共存によって安定した粒子間結合を発現していることによるものと考えられる。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、金属窒化物を含む複合サーメットの粉末が得られ、これを溶射法などによる厚膜形成用の原料として利用することができる。また、気相成長法などによる方法と比較して、厚さの大きな金属窒化物を主体としたサーメット皮膜を、有意に高速度で形成することができる。
【出願人】 【識別番号】000109875
【氏名又は名称】トーカロ株式会社
【出願日】 平成14年4月12日(2002.4.12)
【代理人】 【識別番号】100080687
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 順三 (外1名)
【公開番号】 特開2003−301201(P2003−301201A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−110645(P2002−110645)