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【発明の名称】 高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材およびその製造方法
【発明者】 【氏名】渡辺 宗明
【住所又は居所】埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテリアル株式会社総合研究所内

【氏名】中山 亮治
【住所又は居所】埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテリアル株式会社総合研究所内

【要約】 【課題】高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材およびその製造方法を提供する。

【解決手段】(1)Fe−Co系合金粒子の間に、Yを含む希土類元素の水素化物、Zrの水素化物、Tiの水素化物、Hfの水素化物、Vの水素化物、Taの水素化物またはPdの水素化物(以下、これらを金属水素化物という)が介在した燒結組織を有する高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材、(2)平均粒径:10〜150μmのFe−Co系合金粉末に、平均粒径:1〜10μmを有する金属水素化物粉末を0.05〜5.0質量%添加し混合粉砕し得られた混合粉末を圧粉成形し、非酸化性雰囲気中、温度:900〜1200℃で焼結したのち、水素雰囲気中、温度:150〜800℃で加熱することにより水素化処理する複合軟磁性焼結材の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】Fe−Co系合金粒子の間に、Yを含む希土類元素の水素化物、Zrの水素化物、Tiの水素化物、Hfの水素化物、Vの水素化物、Taの水素化物またはPdの水素化物(以下、これらを金属水素化物という)が介在した燒結組織を有することを特徴とする高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材。
【請求項2】Fe−Co系合金粒子の間に金属水素化物が介在し、Fe−Co系合金粒子が水素化物により被覆されてFe−Co系合金粒子同士が金属水素化物により隔離されている燒結組織を有することを特徴とする高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材。
【請求項3】平均粒径:10〜150μmのFe−Co系合金粉末に、平均粒径:1〜10μmを有する金属水素化物粉末を0.05〜5.0質量%添加し混合粉砕して混合粉砕粉末を作製し得られた混合粉砕粉末を圧密成形し、圧密成形体を非酸化性雰囲気中、温度:900〜1300℃で焼結したのち、水素雰囲気中、温度:150〜800℃で加熱することにより水素化処理することを特徴とする高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材の製造方法。
【請求項4】平均粒径:10〜150μmのFe−Co系合金粉末に、平均粒径:1〜10μmを有する金属水素化物粉末を0.05〜5.0質量%添加し混合粉砕して混合粉砕粉末を作製し得られた混合粉砕粉末を圧密成形し、圧密成形体を非酸化性雰囲気中、温度:900〜1300℃で焼結し、焼結後冷却途中の温度範囲:150〜800℃における雰囲気を水素雰囲気とすることを特徴とする高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】Fe−Co系合金は軟磁性材料の一つとして知られており、このFe−Co系合金粉末を燒結して得られた軟磁性燒結材料は高磁束密度を有しているが、固有抵抗が低く、これを磁心として用いると、渦電流損失が発生して実効透磁率が低下するために、高周波用としては使用できない。これを避けるために、Fe−Co系合金粉末の表面にシリカ酸化チタン、アルミナ、酸化ホウ素鉄酸化物、スピネル構造を有するフェライトなどの固有抵抗の大きい物質を被覆した複合軟磁性粉末を作製しこの複合軟磁性粉末を燒結してFe−Co系合金粒子の間に固有抵抗の大きいシリカ酸化チタン、アルミナ、酸化ホウ素鉄酸化物などの酸化物やフェライトなどを介在させた組織を有する複合軟磁性焼結材がすでに提供されておりこの複合軟磁性焼結材はFe−Co系合金粉末の間に固有抵抗の大きな物質が介在しているために、抵抗値が大きくなり、渦電流損失の発生は大幅に低下するところから高周波用として使用できるようになった。
【0003】このFe−Co系合金粒子の間に固有抵抗の大きい物質が介在している組織を有する複合軟磁性焼結材は、Fe−Co系合金粉末にシリカ酸化チタン、アルミナ、酸化ホウ素鉄酸化物、フェライト等のコロイドを混合して複合軟磁性粉末を作製しこの複合軟磁性粉末を焼結することにより作られるこれら複合軟磁性粉末を焼結することにより得られた金属軟磁性焼結材料のうちでも、Fe−Co系合金粉末の表面にスピネル構造を有するフェライト層を被覆してなる複合軟磁性粉末を焼結して得られたFe−Co系合金粒子同士をフェライト層により隔離した組織を有する複合軟磁性焼結材が最も注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのFe−Co系合金粒子同士をフェライト層により隔離した組織を有する前記複合軟磁性燒結材は高温で燒結して密度を上げようとすると、フェライト層は分解または破壊されるために十分な抵抗値が得られなくなり、実際の燒結は900℃未満で行なわなければならず、かかる低温で燒結すると、Fe−Co系合金粉末の表面に形成されているフェライトの層は分解または破壊が極めて少なくなって高抵抗の複合軟磁性燒結材がえられるが、反面焼結温度が低いために得られた複合軟磁性燒結材の密度が低下し、したがって機械的強度、特に抗折力が低下するという欠点があった。一方、シリカ酸化チタン、アルミナ、酸化ホウ素などの耐熱性に優れ高抵抗物質からなる層をFe−Co系合金粒子の粒間に形成してFe−Co系合金粒子同士を隔離した組織を有する複合軟磁性燒結材はシリカ酸化チタン、アルミナ、酸化ホウ素などの高抵抗物質は熱に対して安定している所から高温で燒結しても燒結時に高抵抗物質粉末は分解または破壊されることが無いが、Fe−Co系合金粉末とシリカ酸化チタン、アルミナ、酸化ホウ素などの高抵抗物質粉末とは燒結時に拡散し固溶することが少なく、したがって、これら高抵抗物質粉末はFe−Co系合金粒子同士の接合を妨げるために、十分な機械的強度を有する複合軟磁性焼結材は得られないという欠点がある。ところが近年これら複合軟磁性燒結材は、電話機振動板、ドットプリンターのヘッド、電磁弁プランジャーなどの振動または衝撃を受ける部品にも使用されようとしており前記従来の複合軟磁性燒結材では機械的強度が不十分であってかかる振動または衝撃を受ける部品に使用することのできる高強度で磁気特性に優れた複合軟磁性燒結材が求められている【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、高強度高密度を有しかつ高抵抗を有する複合軟磁性焼結材を得るべく研究を行った。その結果(イ)平均粒径:10〜150μmのFe−Co系合金粉末に、いずれも平均粒径:1〜10μmを有するYを含む希土類元素(以下、Rで示す)の水素化物粉末、Zrの水素化物粉末、Tiの水素化物粉末、Hfの水素化物粉末、Vの水素化物粉末、Taの水素化物粉末またはPdの水素化物粉末などを添加し混合粉砕して混合粉砕粉末を作製しこの混合粉砕粉末を燒結すると、燒結時に金属水素化物粉末は脱水素されてR、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdの一部はFe−Co系合金粒子の表面に拡散し固溶してFe−Co系合金粒子同士の結合を強め、燒結終了後水素雰囲気中で熱処理すると、Fe−Co系合金粒子の粒界に存在するR、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdは水素を吸収してFe−Co系合金粒子の表面にR、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdの水素化物を形成し、Fe−Co系合金粒子がR、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdなどの水素化物により被覆されてFe−Co系合金粒子とFe−Co系合金粒子の間にR、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdなどの水素化物が介在した組織を有する複合軟磁性焼結材が得られこのR、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdなどの水素化物被膜は固有抵抗値が高いところから高抵抗を有する複合軟磁性焼結材が得られ、この複合軟磁性焼結材は高温で燒結されるところから鉄酸化物またはフェライト層を有する複合軟磁性焼結材と比較して高密度および高強度を有し、またシリカ酸化チタン、アルミナ、酸化ホウ素などの耐熱性に優れ高抵抗物質からなる層をFe−Co系合金粒子の粒界に形成した従来の複合軟磁性燒結材に比べて機械的強度が向上する、(ロ)前記燒結終了後水素雰囲気中で熱処理する熱処理工程において、水素雰囲気に含まれる水素量を調節することによりYを含む希土類元素、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdなどの水素化の程度を調節することができそれによって、Fe−Co系合金粒子とFe−Co系合金粒子との間に介在するR、Zr、Ti、Hf、V、TaまたはPdなどの水素化物の量を調節することができそれによって複合軟磁性焼結材の抵抗値を調節することができるので低周波から高周波にわたる広範囲な周波数帯域において使用可能な複合軟磁性燒結材が得られるなどの研究結果が得られたのである。
【0006】この発明はかかる研究結果に基づいてなされたものであって(1)Fe−Co系合金粒子の間にRの水素化物、Zrの水素化物、Tiの水素化物、Hfの水素化物、Vの水素化物、Taの水素化物またはPdの水素化物(以下これら水素化物を金属水素化物と総称する)が介在している燒結組織を有する高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材、に特徴を有するものである。
【0007】Fe−Co系合金粒子とFe−Co系合金粒子の間に介在する水素化物は、Fe−Co系合金粒子が水素化物により被覆されてFe−Co系合金粒子同士が金属水素化物により完全に隔離されている燒結組織を有することが一層の高抵抗をもたらし渦電流損失の発生を一層抑制することができる従ってこの発明は(2)Fe−Co系合金粒子の間に金属水素化物が介在し、Fe−Co系合金粒子が水素化物により被覆されてFe−Co系合金粒子同士が金属水素化物により隔離されている燒結組織を有する高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材、に特徴を有するものである。
【0008】この発明の複合軟磁性焼結材を製造するにはまず、平均粒径:10〜150μmを有する市販のFe−Co系合金粉末を用意し、さらに、いずれも平均粒径:1〜10μmを有する市販のRの水素化物粉末、Zrの水素化物粉末、Tiの水素化物粉末、Hfの水素化物粉末、Vの水素化物粉末、Taの水素化物粉末、Pdの水素化物粉末(以下これら水素化物粉末を金属水素化物粉末という)を用意し、前記Fe−Co系合金粉末に対して前記金属水素化物粉末を0.05〜5.0質量%添加し混合粉砕して混合粉砕粉末を作製し得られた混合粉砕粉末を圧粉成形し、非酸化性雰囲気中、温度:900〜1300℃で焼結したのち、水素雰囲気中、温度:150〜800℃で加熱することにより水素化処理することにより得られる。この場合、水素雰囲気中、温度:150〜800℃で加熱することにより水素化処理する工程を、焼結後冷却する途中の工程において雰囲気を水素雰囲気とすることにより代替することができる。
【0009】したがって、この発明は、(3)平均粒径:10〜150μmのFe−Co系合金粉末に、平均粒径:1〜10μmを有する金属水素化物粉末を0.05〜5.0質量%添加し混合粉砕して混合粉砕粉末を作製し得られた混合粉砕粉末を圧密成形し、圧密成形体を非酸化性雰囲気中、温度:900〜1300℃で焼結したのち、水素雰囲気中、温度:150〜800℃で加熱することにより水素化処理する高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、(4)平均粒径:10〜150μmのFe−Co系合金粉末に、平均粒径:1〜10μmを有する金属水素化物粉末を0.05〜5.0質量%添加し混合粉砕して混合粉砕粉末を作製し得られた混合粉砕粉末を圧密成形し、圧密成形体を非酸化性雰囲気中、温度:900〜1300℃で焼結し、焼結後冷却途中の温度範囲:150〜800℃における雰囲気を水素雰囲気とする高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、に特徴を有するものである。
【0010】この発明において前記Rは、Y,Ce,La,Pr,Nd,Sm,Gd,Ho,Er,Yb,Luの内の1種以上である。また、この発明の高強度、高密度および高抵抗を有する複合軟磁性焼結材を製造するためのFe−Co系合金粉末は、アトマイズ法、電解法、還元法のいずれかの方法で作製したFe−Co系合金粉末を使用することができる。さらに、この発明の複合軟磁性焼結材を製造する際に使用するFe−Co系合金粉末は、質量%で、Co:25〜60%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成のFe−Co系合金(例えば、50%Co−Fe)粉末、Co:25〜60%を含み、V:0.5〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成のFe−Co系合金(例えば、49%Co−2%V−Fe)粉末が好ましいが、この成分組成の粉末に限定されるものではなく、その他一般に知られているFe−Co系合金粉末はいかなる成分組成のFe−Co系合金粉末であっても使用することができる【0011】平均粒径:1〜10μmの金属水素化物粉末の添加量を0.05質量%以上にした理由は平均粒径:1〜10μmの金属水素化物粉末が0.05質量%未満含まれていても抵抗値に大きく影響を及ぼすことはないからであり、一方5.0質量%を越えて含有すると非磁性相の割合が多くなり比透磁率の低下をもたらすので好ましくないことによるものである。金属水素化物粉末はFe−Co系合金粉末に比べて粉砕されやすいため、ボールミル等により混合粉砕することにより金属水素化物粉末はさらに微細化され、Fe−Co系合金粉末の表面に金属水素化物粉末が均一に付着し、金属水素化物粉末が均一に分散した混合粉末が得られ、この混合粉末を圧密成形すると、金属水素化物粉末が一層均一に分散した圧密成形体が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】実施例原料粉末として、平均粒径:60μmを有し、成分組成がCo:50%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Co系合金のアトマイズ粉末を用意しさらに、いずれも平均粒径:3μmを有するYの水素化物粉末、Laの水素化物粉末、Ceの水素化物粉末、Ndの水素化物粉末、Smの水素化物粉末、Zrの水素化物粉末、Tiの水素化物粉末、Hfの水素化物粉末、Vの水素化物粉末、Taの水素化物粉末またはPdの水素化物粉末を用意した。前記Yの水素化物粉末、Laの水素化物粉末、Ceの水素化物粉末、Ndの水素化物粉末、Smの水素化物粉末、Zrの水素化物粉末、Tiの水素化物粉末、Hfの水素化物粉末、Vの水素化物粉末、Taの水素化物粉末またはPdの水素化物粉末を表1に示される配合組成となるように前記Fe−Co系合金アトマイズ粉末に添加し混合粉砕して混合粉砕粉末を作製し、得られた混合粉砕粉末を6ton/cm2の成形圧をかけることにより縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する圧密体を成形し、得られた圧密体を不活性ガス雰囲気中1150℃の温度で焼結し、焼結後の冷却工程において800℃まで冷却した時点で雰囲気が水素雰囲気となるように水素を供給しこの水素雰囲気は少なくとも150℃に冷却するまで保持することにより水素化処理して本発明複合軟磁性焼結材1〜11、比較複合軟磁性焼結材1〜2を作製した。
【0013】従来例比較のために、Fe−Co系合金アトマイズ粉末の表面に(Mn17Zn16Fe6734を被覆した複合粉末を用意し、この複合粉末を800℃で燒結することにより粒界にフェライト相を有する従来複合軟磁性焼結材を作製した。
【0014】このようにして得られた本発明複合軟磁性焼結材1〜11、比較複合軟磁性焼結材1〜2および従来複合軟磁性焼結材の組織をSEMで観察した結果本発明複合軟磁性焼結材1〜11および比較複合軟磁性焼結材1〜2にはいずれもFe結晶粒の粒界に水素化金属が介在している組織を有していた。さらに本発明複合軟磁性焼結材1〜11、比較複合軟磁性焼結材1〜2および従来複合軟磁性焼結材について相対密度および抗折力を測定しその結果を表1に示し、さらに本発明複合軟磁性焼結材1〜11、比較複合軟磁性焼結材1〜2および従来複合軟磁性焼結材について、磁束密度、抵抗値および周波数:100KHzの高周波における比透磁率を測定し、その結果を表1に示した。
【0015】
【表1】

【0016】表1に示される結果から本発明複合軟磁性焼結材1〜11は、粒界にフェライト相を有する従来複合軟磁性焼結材に比べて磁気特性および抵抗値については遜色が無いが、本発明複合軟磁性焼結材1〜11は従来複合軟磁性焼結材に比べて一層高密度を有すると共に一層機械的強度が高いことが分かる。しかし比較複合軟磁性焼結材1〜2は機械的特性または磁気特性の内の少なくともいずれかが劣るので好ましくないことが分かる。
【0017】
【発明の効果】この発明は、高密度で機械的強度が優れさらに高周波の比透磁率の高い複合軟磁性焼結材を提供することができ、電気および電子産業において優れた効果をもたらすものである。
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町1丁目5番1号
【出願日】 平成14年2月1日(2002.2.1)
【代理人】 【識別番号】100076679
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 和夫 (外1名)
【公開番号】 特開2003−226903(P2003−226903A)
【公開日】 平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願番号】 特願2002−25815(P2002−25815)