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【発明の名称】 二元系合金微粒子及びその製造方法
【発明者】 【氏名】大門 英夫
【住所又は居所】大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マクセル株式会社内

【氏名】黒部 友紀子
【住所又は居所】大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マクセル株式会社内

【氏名】柏野 博志
【住所又は居所】大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マクセル株式会社内

【氏名】長井 龍
【住所又は居所】大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マクセル株式会社内

【要約】 【課題】従来の電極触媒に比べて、更に一層高いメタノール酸化活性を有し、吸着種による被毒を受け難い、すなわち長期的に触媒の活性が持続し得る、メタノール燃料電池のメタノール極用二元系合金微粒子触媒を提供する。

【解決手段】一般式(1)、A (1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1)、A (1)
(式中、AはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、BはFe、Co及びNiからなる群から選択される遷移金属であり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有することを特徴とする二元系合金微粒子。
【請求項2】 一般式(2)、C (2)
(式中、C及びDはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、但し、C≠Dであり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有することを特徴とする二元系合金微粒子。
【請求項3】 粒径が1〜50nmの範囲内であり、メタノール燃料電池のメタノール極に使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の二元系合金微粒子。
【請求項4】 (a)有機保護剤の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させるステップと、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって、一般式(1)、A (1)
(式中、AはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、BはFe、Co及びNiからなる群から選択される遷移金属であり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子を生成するステップとからなる、ことを特徴とする二元系合金微粒子の製造方法。
【請求項5】 前記有機保護剤が、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、アミノペクチン、メチルセルロース及び炭素数6〜18のアルキルカルボン酸とアルキルアミンからなる群から選択される少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】 (a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって、一般式(1)、A (1)
(式中、AはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、BはFe、Co及びNiからなる群から選択される遷移金属であり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子を生成するステップとからなる、ことを特徴とする二元系合金微粒子の製造方法。
【請求項7】 (a)有機保護剤の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される第1の貴金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される、前記第1の貴金属と異なる第2の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって、一般式(2)、C (2)
(式中、C及びDはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、但し、C≠Dであり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子を生成するステップとからなる、ことを特徴とする二元系合金微粒子の製造方法。
【請求項8】 前記有機保護剤が、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、アミノペクチン、メチルセルロース及び炭素数6〜18のアルキルカルボン酸とアルキルアミンからなる群から選択される少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】 (a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される第1の貴金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される、前記第1の貴金属と異なる第2の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって、一般式(2)、C (2)
(式中、C及びDはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、但し、C≠Dであり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子を生成するステップとからなる、ことを特徴とする二元系合金微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はメタノール燃料電池のメタノール極用二元系合金微粒子触媒及びその製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、メタノール酸化活性を向上させた二元系合金微粒子触媒をメタノール極に使用したメタノール燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】液体燃料であるメタノールを直接使用するメタノール燃料電池は、燃料の取り扱い易さに加え、安価な燃料ということで家庭用や産業用の比較的小出力規模の電源として期待されている。
【0003】メタノールー酸素燃料電池の理論出力電圧は、水素燃料のものとほぼ同じ1.2V(25℃)であり、原理的には同様の特性が期待できる。このため、メタノールの陽極酸化反応については数多くの研究がなされているが、充分な活性を有するメタノールの酸化触媒は未だ見いだされていないのが現状である。
【0004】例えば、白金触媒の場合にほ、メタノール燃料電池のメタノール極における陽極酸化反応の過電圧は、かなり大きくなる。そのため、メタノール燃料電池の端子電圧は、空気または酸素極における酸素還元反応の過電圧とあいまって軽負荷状態でも既に低く、さらに出力電流の増加とともに低下し、その値は熱力学的データから期待できる値よのも大幅に小さくなる。
【0005】また、従来は導電性のカーボン担体に白金単独の他に、白金−ルテニウム合金(例えば、特開平2−111440号公報参照)あるいは白金−スズ合金(例えば、特開平2−114452号公報参照)を担持してメタノール酸化活性の向上を図る試みがなされていた。しかし、このような白金系の触媒を大量に使用してもメタノールの酸化反応は遅く、大電流を取り出すことが不可能であり、そのため現在でも、メタノール酸化活性の優れた触媒の開発が強く望まれている。
【0006】さらにまた、従来のメタノール燃料電池においては、供給したメタノールがメタノール極で反応せず、電解質を通ってそのまま空気または酸素極に達する、いわゆるクロスオーバー現象により、電極上で酸素と直接反応して電池性能の低下を引き起こすということが問題となっていた。このようなメタノールのク口スオーバーによる電池性能の低下を補うためにも、メタノール酸化活性に優れた触媒の開発が必要とされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来のメタノール燃料電池用の電極触媒においては、白金を主体とする貴金属元素、又はこれらとの合金系の触媒を比較的比表面積の高い(数十〜数千m/g)導電性のカーボン担体に高分散に担持させることにより、メタノール酸化を向上させようとする研究努力が長くなされてきている。しかし、白金はメタノール酸化に対する活性は比較的高いものの、メタノール酸化過程におけるCO型の吸着種が触媒表面を被毒し、活性低下を引き起こすことが知られている。従って、この白金表面の被毒を緩和するために、ホルマリン還元法や水素還元法で作製された白金−ルテニウム合金や白金−スズ合金または白金と他の貴金属元素との合金化により、メタノール酸化活性の向上が図られているが、必ずしも満足のいくものではなかった。
【0008】従って、本発明の目的は、従来の電極触媒に比べて、更に一層高いメタノール酸化活性を有し、吸着種による被毒を受け難い、すなわち長期的に触媒の活性が持続し得る、メタノール燃料電池のメタノール極用二元系合金微粒子触媒及びその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題は、一般式(1)、A (1)
(式中、AはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、BはFe、Co及びNiからなる群から選択される遷移金属であり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子、又は、一般式(2)、C (2)
(式中、C及びDはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、但し、C≠Dであり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子をメタノール燃料電池のメタノール極に使用することにより解決される。
【0010】前記一般式(1)で示される二元系合金微粒子は、(a)有機保護剤の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。
【0011】別法として、前記一般式(1)で示される二元系合金微粒子は、(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。
【0012】前記一般式(2)で示される二元系合金微粒子は、(a)有機保護剤の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される第1の貴金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される、前記第1の貴金属と異なる第2の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。
【0013】別法として、前記一般式(2)で示される二元系合金微粒子は、(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される第1の貴金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される、前記第1の貴金属と異なる第2の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。
【0014】前記一般式(1)又は一般式(2)で示される組成を有する二元系合金微粒子は粒径が1〜50nmの範囲内の単分散微粒子である。
【0015】
【発明の実施の形態】前記のように、本発明のメタノール電池はメタノール極触媒として、一般式(1)、A (1)
(式中、AはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、BはFe、Co及びNiからなる群から選択される遷移金属であり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子、又は、一般式(2)、C (2)
(式中、C及びDはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、但し、C≠Dであり、20at%≦x≦80at%であり、20at%≦y≦80at%である)で示される組成を有する二元系合金微粒子を使用する。
【0016】前記一般式(1)又は一般式(2)で示される二元系合金微粒子触媒の作用は必ずしも明確ではないが、CO型の吸着種の結合力が弱まり、CO型の吸着種の移動度が増大し、一旦吸着したCO型吸着種が脱着しやすくなるものと推定される。更に、CO型の吸着種を酸化し易くしたものと推定される。
【0017】本発明において、メタノール電極触媒を構成する前記一般式(1)又は一般式(2)で示される二元系合金微粒子の粒子径は、高活性を得るために、1nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜10nmの範囲内が一層好ましく、1nm〜5nmの範囲内であることが特に好ましい。二元系合金微粒子の粒子径が1nm未満では分散性が低下するなどの不都合が生じるので好ましくない。一方、二元系合金微粒子の粒子径が50nm超の場合、メタノール電極触媒として高活性を得ることができない。
【0018】一般式(1)、A (1)
で示される二元系合金微粒子の場合、AはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であり、BはFe、Co及びNiからなる群から選択される遷移金属の組合せからなることが好ましい。この合金微粒子の組成は、貴金属Aが20at%≦x≦80at%の範囲内であり、遷移金属Bが20at%≦y≦80at%の範囲内であることが好ましい。一方、一般式(2)、C (2)
で示される二元系合金微粒子の場合、C及びDはAu、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される貴金属であるが、CとDは同一であってはならない。この合金微粒子の組成は、一方の貴金属Cが20at%≦x≦80at%の範囲内であり、他方の貴金属Dが20at%≦y≦80at%の範囲内であることが好ましい。一般式(1)及び(2)の何れの二元系合金微粒子においても、一方の金属が20at%未満の場合、十分にCO被毒特性を改善させることができないなどの不都合が生じるので好ましくない。また、他方の金属が80at%超の場合、特にA型の触媒においてA(貴金属)の消費量が多く、コスト高になるなどの不都合が生じるので好ましくない。一般式(1)で示される二元系合金微粒子の場合、40at%≦x≦60at%の範囲内であり、60at%≦y≦40at%の範囲内であることが一層好ましい。
【0019】前記一般式(1)又は一般式(2)で示される二元系合金微粒子触媒は担体に担持させてメタノール電極として使用することが好ましい。担体に触媒粒子を担持した担持触媒は、好ましい粒径の触媒粒子を分散性よく得るのに好適である。担持触媒では、触媒量を確保するために、二元系合金微粒子触媒は担体に対して5重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましい。二元系合金微粒子触媒の担持量が5重量%未満の場合、十分な触媒作用が発揮されない。一方、担持量が60重量%超の場合、触媒作用が飽和し不経済となるだけである。
【0020】担持触媒に使用する担体としては、電極触媒の担体として集電体の機能を果たす導電性と、触媒使用条件下での耐食性とを有する炭素材料が好ましい。その中でも特に、導電性力ーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトなどが好適であり、担体の比表面積としては、60〜3000m/gを有するものが好ましい。また、担体上の二元系合金微粒子触媒の粒径と分散状態に依存するが、微粒子を担体に担持させた後、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気下において400℃〜900℃の範囲内の温度で熱処理を行う事が好ましい。
【0021】前記一般式(1)又は一般式(2)で示される二元系合金微粒子触媒を使用する、メタノール燃料電池のアノード用ガス拡散電極は、通常の既知の手法にしたがって製造することができる。すなわち、メタノール極は、上記触媒をポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性樹脂結着材で保持し、多乳質体のシート状のガス拡散電極とする。―方、カソードを構成する空気または酸素極はカーボン担持白金などの触媒をポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性樹脂結着材で保持し、同様のガス拡散電極とすることができる。
【0022】次に、前記一般式(1)又は一般式(2)で示される二元系合金微粒子の製造方法について説明する。まず、一般式(1)で示される二元系合金微粒子の場合、(a)有機保護剤の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。この場合、所望により、反応系内に活性炭を添加してもよい。
【0023】別法として、前記一般式(1)で示される二元系合金微粒子は、(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。
【0024】また、一般式(2)で示される二元系合金微粒子は、(a)有機保護剤の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される第1の貴金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される、前記第1の貴金属と異なる第2の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。この場合、所望により、反応系内に活性炭を添加してもよい。
【0025】別法として、前記一般式(2)で示される二元系合金微粒子は、(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、(i)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される第1の貴金属の塩又は錯体と、(ii)Au、Pt、Pd、Ag、Ir、Ru、Re、Os及びRhからなる群から選択される、前記第1の貴金属と異なる第2の貴金属の塩又は錯体と、を溶解させ、(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことによって製造される。
【0026】要するに、一般式(1)又は一般式(2)で示される二元系合金微粒子は基本的に、アルコール還元法で合成する。アルコール系の溶媒に二元系合金微粒子形成金属の供給源を溶解させ、アルコール系溶媒の沸点近傍の温度で還流する。アルコール(R-OH)が加熱還流中に金属イオンを還元し、自らは酸化されてアルデヒド(R-CHO)に変化する。本発明で使用されるアルコールとしては、沸点の高いアルコールが高温での還流が出来るため還元速度が高まり好ましい。使用に適したアルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n-アミルアルコール、sec-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n-プロピルアルコール、2-エトキシアルコール及び1,2-ヘキサデカンジオールが挙げられる。これらアルコールは1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。通常、アルコール単独では、その酸化還元電位の大きさから遷移金属の還元剤としては十分ではない。しかし、反応過程で触媒作用を有する貴金属(例えば、Ptなど)が存在するため、これらの貴金属と遷移金属イオンを共存させ、且つアルコールの沸点で加熱還流させることによりFe、Co及びNiなどの遷移金属も同時に還元析出し、遷移金属と貴金属から成る金属合金微粒子が生成すると考えられる。また、エチルアルコールの様な沸点の低いアルコールでも加圧下(オートクレープ法)で還流すれば使用する事が出来る。還流の際、微粒子の酸化を防止するため、反応系内を窒素或いはアルゴン等の不活性ガスで置換しながら還流を行うことが好ましい。
【0027】本発明の二元系合金微粒子を製造する際に使用されるFeの塩又は錯体は、例えば、硝酸鉄、酢酸鉄、鉄アンミン錯体、鉄エチレンジアミン錯体、エチレンジアミン四酢酸鉄、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)、乳酸鉄(II)三水和物、シュウ酸鉄(II)二水和物及びクエン酸鉄(III)n水和物などである。これらの鉄化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。このような鉄化合物は二元系合金微粒子の合成過程で有害な一酸化炭素を発生せず、また従来の鉄ペンタカルボニルに比べて安価である。
【0028】本発明の二元系合金微粒子を製造する際に使用されるCoの塩又は錯体は、例えば、硝酸コバルト、酢酸コバルト、コバルトアンミン錯体、コバルトエチレンジアミン錯体、エチレンジアミン四酢酸コバルト、コバルト(II)アセチルアセトナート錯体及びコバルト(III)アセチルアセトナート錯体などである。これらのコバルト化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0029】本発明の二元系合金微粒子を製造する際に使用されるNiの塩又は錯体は、例えば、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルアンミン錯体、ニッケルエチレンジアミン錯体、エチレンジアミン四酢酸ニッケル、及びニッケルアセチルアセトナート錯体などである。これらのニッケル化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0030】本発明の二元系合金微粒子を製造する際に使用されるPtの塩又は錯体は、例えば、酢酸白金、硝酸白金、白金エチレンジアミン錯体、白金トリフェニルホスフィン錯体、白金アンミン錯体及びビス(アセチルアセトナト)白金(II)などである。これらの白金化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0031】本発明の二元系合金微粒子を製造する際に使用されるPdの塩又は錯体は、例えば、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、パラジウムトリフェニルホスフィン錯体、パラジウムアンミン錯体、パラジウムエチレンジアミン錯体及びパラジウムアセチルアセトナート錯体などである。これらのパラジウム化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0032】本発明の二元系合金微粒子を製造する際に使用されるその他の貴金属の塩又は錯体は、例えば、これらの酢酸塩、硝酸塩、リフェニルホスフィン錯体、アンミン錯体、エチレンジアミン錯体及びアセチルアセトナート錯体などである。これらの貴金属化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0033】本発明の二元系合金微粒子を製造する際に使用される有機保護剤は、二元系合金微粒子の粒径を制御し、また微粒子を分散させる重要な作用を有している。有機保護剤分子中には酸素或いは窒素の孤立電子対が存在するため、有機保護剤は高分子多座配位子として反応系内で遷移金属イオンと白金イオンに弱く配位結合する。有機保護剤が配位結合した各イオンは還元剤であるアルコールと接触して金属に還元される。さらに、有機保護剤は還元された二元系合金微粒子表面全体にも弱く配位結合して、その立体障害によって微粒子同志を磁気的に絶縁する。
【0034】本発明による金属微粒子の合成方法における有機保護剤としては、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、アミノペクチン及びメチルセルロース等が適している。この中でもN−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン又は環状アミド構造を持つビニル系ポリマー、特にポリビニルピロリドン、とりわけポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)が最も活性の高い触媒となるので好ましい。これらの水溶性有機保護剤は界面活性剤よりも金属コロイドを保護安定化する能力を有している。また、有機保護剤として炭素数6〜18のアルキルカルボン酸とアルキルアミンを等量ずつ使用しても良い。炭素数が6未満ではその分子立体障害による保護効果が十分に得られず、また18を超えるとその分子立体障害による保護効果が飽和する。
【0035】有機保護剤は、化学的量論的に導き出される量よりも過剰に使用することが好ましい。このような有機保護剤の使用量は一般的に、合金形成金属に対して、1〜15倍の範囲内であることが好ましい。有機保護剤の使用量が1倍未満の場合、所期の保護効果が得られない。一方、有機保護剤の使用量が15倍超の場合、目的とする保護効果が飽和し、不経済となる。
【0036】前記のようにアルコール還元法の場合、通常合成系内に微粒子の凝集を防止するため有機保護剤を添加する。しかし、これらの有機保護剤は合金微粒子に吸着し、触媒活性を低下させることがある。また、有機保護剤を添加した場合でも、合成後に〜500℃の温度で熱処理し、有機保護剤を熱分解させる方法もあるが、この場合、有機保護剤中の炭素と合金微粒子がカーバイドを形成し、触媒周囲を安定な力ーバイドが覆ってしまうため、触媒活性が低下する問題があった。この問題点を解決するため、有機保護剤を使用するアルコール還元法の別法として、反応系内に有機保護剤を添加せず、替わりに活性炭を添加し、さらに貴金属イオン源及び遷移金属イオン源を添加して還流させることからなる二元系合金微粒子の製造方法を発明した。有機保護剤が存在しないため、還元された合金微粒子は有機保護剤と安定な状態を作ることなく活性炭に担持される。また、活性炭表面に合金微粒子が吸着するという反応過程の前に有機保護剤で合金微粒子を保護する反応経路が省略されるため全体的に反応ステップが減少する。有機保護剤が存在しないと微粒子が成長する問題があるが、本発明の場合、活性炭を反応系内に添加しているため、金属イオンが還元されたと同時に金属は活性炭表面と静電的相互作用により吸着するため、微粒子の大きさは50nm以下に保たれる。このように活性炭アルコール還元法により製造された、本発明によるメタノール燃料電池用の二元系合金微粒子触媒はその表面を有機保護剤で覆われることがないため、その表面の触媒活性を十分に発揮できる。活性炭アルコール還元法により製造された、本発明によるメタノール燃料電池用の二元系合金微粒子触媒は既に活性炭で担持されているので、この二元系合金微粒子触媒を更に別の導電性力ーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトなどの炭素材料に担持させる必要はないが、所望により、又は必要に応じて担持させることもできる。
【0037】本発明のアルコール還元法において、有機保護剤の代わりに使用される活性炭は、木炭などの活性化によって作られる炭素質の物質であり、60m/g〜3000m/g程度の比表面積を有する。活性炭の使用量は一般的に、合金形成金属に対して、2〜20倍の範囲内であることが好ましい。活性炭の使用量が2倍未満の場合、所期の効果が得られない。一方、活性炭の使用量が20倍超の場合、目的とする効果が飽和し、不経済となる。
【0038】加熱還流処理における加熱温度及び還流時間は使用するアルコールの種類に応じて変化する。しかし、一般的に、加熱温度は190℃〜300℃の範囲内であり、還流時間は30分間〜6時間の範囲内である。反応の終点は溶液の色が黒色に変化することにより確認できる。出発物質の遷移金属及び貴金属イオンが全て還元されたことが確認されたら加熱還流処理を終了する。
【0039】貴金属の塩又は錯体を溶解するのに適した溶媒としては、水及び水やアルコールと混和性の有機溶剤を挙げる事が出来る。これらの有機溶剤としては、エーテルジオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、アセトンなどが挙げられる。
【0040】Fe,Co,Niの塩又は錯体を溶解するのに適した溶媒としては、水及び第一級アルコール第二級アルコールが好ましい。例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n-アミルアルコール、sec-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n-プロピルアルコール、2-エトキシアルコール及び1,2-ヘキサデカンジオールが挙げられる。Fe,Co,Niの塩又は錯体を溶解するための溶媒としては、加熱還流処理に使用されるアルコールと同種のアルコールを使用することが好ましいが、異なる種類のアルコールも使用できる。
【0041】
【実施例】以下、本発明の具体的な態様を実施例および比較例により説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0042】実施例1比表面積250m/gの導電性力ーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)2gと12.4ミリモルのN−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミンを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)及び0.62ミリモルのPt(acac)をそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。析出したFePt微粒子の組成はFe51Pt49であり、粒径は2〜5nmであった。
【0043】実施例2比表面積250m/gの導電性力ーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)2gと12.4ミリモルのN−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミンを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)及び0.62ミリモルの酢酸パラジウムをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。析出したFePd微粒子の組成はFe49Pd51であり、粒径は2〜5nmであった。
【0044】実施例3比表面積250m/gの導電性力ーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)2gと12.4ミリモルのN−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミンを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルの酢酸パラジウム及び0.62ミリモルのPt(acac)をそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。析出したPtPd微粒子の組成はPt48Pd52であり、粒径は2〜5nmであった。
【0045】実施例4比表面積250m/gの活性炭2gを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)及び0.62ミリモルのPt(acac)をそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。析出したFePt微粒子の組成はFe51Pt49であり、粒径は2〜5nmであった。
【0046】実施例5比表面積250m/gの活性炭2gを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)及び0.62ミリモルの酢酸パラジウムをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。析出したFePd微粒子の組成はFe49Pd51であり、粒径は2〜5nmであった。
【0047】実施例6比表面積250m/gの活性炭2gを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルの酢酸パラジウム及び0.62ミリモルのPt(acac)をそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。析出したPtPd微粒子の組成はPt48Pd52であり、粒径は2〜5nmであった。
【0048】比較例1比表面積250m/gの導電性力ーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)2gに、イオン交換水に白金量として1gを含有する塩化白金酸水溶液と、35%ホルマリン水溶液を加え、−10℃に冷却し撹拌を行った。これに40%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、1時間還流を行った。これを濾過、洗浄した後、140℃で5時間乾燥させ、力ーボンブラック担体に担持されたPt粒子を得た。析出したPt微粒子の粒径は2〜15nmであった。
【0049】比較例2比表面積250m/gの導電性力ーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)2gに、イオン交換水に白金量として1gを含有する塩化白金酸水溶液と、ルテニウム量として0.5gを含有する塩化ルテニウムと、35%ホルマリン水溶液を加え、−10℃に冷却し撹拌を行った。これに40%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、1時間還流を行った。これを濾過、洗浄した後、140℃で5時間乾燥させ、力ーボンブラック担体に担持されたPtRu粒子を得た。析出したPtRu微粒子の組成はPt50Ru50であり、粒径は2〜15nmであった。
【0050】メタノール燃料電池発電出力試験イオン交換膜として厚さ200μmのフレミオン膜(旭硝子社製)を使用し、白金量として0.8mg/cmを含むガス拡散電極(E−TEK社製)を空気極とし、上記の実施例1〜6及び比較例1〜2で製造した触媒粉末と粉末状ポリテトラフルオ口オチレンからなるガス拡散電極をメタノール極とし、温度155℃、圧力10kgf/cmで10秒間の条件でホットプレス法により、接合体を作製した。さらに、上記接合体をメタノール燃料電池測定セルに組み込んで、発電出力試験を実施した。測定結果を下記の表1に示す。下記の表1において、端子電圧は出力電流密度50mA/cmにおける値である。
【0051】
【表1】

【0052】表1に示された結果から明らかなように、従来のホルマリン還元法で得られる白金又は白金合金触媒に比べ、有機保護剤又は活性炭存在下でアルコール還元法により合成した本発明の二元系合金微粒子触媒をメタノール極として使用することにより、メタノール燃料電池の出力を高めることができる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、有機保護剤又は活性炭存在下でアルコール還元法により二元系合金微粒子触媒を合成することにより、メタノール燃料電池のメタノール極における過電圧の低減が達成される。また、出力電圧の向上により大電流を流すことが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
【住所又は居所】大阪府茨木市丑寅1丁目1番88号
【出願日】 平成14年2月5日(2002.2.5)
【代理人】 【識別番号】100079555
【弁理士】
【氏名又は名称】梶山 佶是 (外1名)
【公開番号】 特開2003−226901(P2003−226901A)
【公開日】 平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願番号】 特願2002−27922(P2002−27922)