トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金




【発明の名称】 摺動部品とその製造方法
【発明者】 【氏名】清水 輝夫
【住所又は居所】新潟県新潟市小金町3丁目1番1号 三菱マテリアル株式会社新潟製作所内

【氏名】丸山 恒夫
【住所又は居所】新潟県新潟市小金町3丁目1番1号 三菱マテリアル株式会社新潟製作所内

【要約】 【課題】摺動部材において、摩擦抵抗の削減と耐久性の向上を効果的に図る。

【解決手段】鉄系と銅系の原料粉末1,2を成形金型11の充填部16に充填し、この原料粉末1,2を加圧して圧粉体6を成形し、この圧粉体6を焼結して軸受5を製造する。銅系の原料粉末2が鉄系の原料粉末1よりアスペクト比が大きな偏平粉であり、振動により摺動面51側に銅系の原料粉末2を偏析する。得られた軸受5は、摺動面51が銅に覆われ、摺動面51から内部に向って鉄の割合が高くなる。銅に覆われた摺動面51に回転軸が摺動し、回転軸と摺動面51との摩擦係数が低く、円滑な回転が可能となる。同時に鉄により所定の強度と耐久性を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉄系と銅系の原料粉末を成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品において、前記銅系の原料粉末が前記鉄系の原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉であり、表面側に銅が偏析していることを特徴とする摺動部品。
【請求項2】 摺動部の表面銅被覆率が60%以上であることを特徴とする請求項1記載の摺動部品。
【請求項3】 前記偏平粉のアスペクト比が10以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の摺動部品。
【請求項4】 前記銅系の原料粉末の割合が全体の20〜70重量%であることを特徴とする請求項2記載の摺動部品。
【請求項5】 鉄系と銅系の原料粉末とを成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品の製造方法において、前記銅系の原料粉末に前記鉄系の原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉を用い、振動により前記充填部内の銅系の原料粉末を前記圧粉体の表面側に偏析することを特徴とする摺動部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軸受などの摺動部品とその製造方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】この種の摺動部品として、回転軸を支承する軸受があり、この軸受の製法として、金属を主原料とする原料粉末を圧縮して圧粉体を形成した後、この圧粉体を焼結してなる焼結含油軸受が広く用いられている。
【0003】その焼結含油軸受では、鉄系や銅系の原料粉末を用いて成形され、鉄系の原料粉末を用いれば強度的に優れた軸受が得られるものの、一般に回転軸には鋼などの鉄系材料が用いられ、このように軸受及び回転軸に同種の材料を用いると、摩擦抵抗が大となり、溶着摩耗の発生を招き、耐久性が損われる。一方、銅系の原料粉末を用いれば、軸受と回転軸との摩擦抵抗が極めて小さくなるが、軸受側の摩耗が大となり、耐久性を損う。
【0004】このように焼結含浸軸受においても、一般の軸受と同様に、摩擦抵抗の削減と耐久性の向上が可能な製品の開発が進められ、例えば、銅又は銅合金によって鍍金された鉄粉を原料粉末に用いた焼結含油軸受が知られており、この軸受では銅と鉄が混合した構造により、従来に比べて、摩擦抵抗の削減と耐久性の向上とが図られる。
【0005】しかし、軸受等において、近年、摩耗と寿命に関する要求に加えて、さらに、ノイズ発生に対する要求が高まり、例えば、−40度といった低温状態で、始動時にノイズが発生しない性能が要求され、従来のものでは、この要求に対応することが難しかった。
【0006】そこで、本発明は、摩擦抵抗の削減と耐久性の向上を図ることができ、ノイズの発生を防止することができる摺動部品とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の摺動部品は、前記目的を達成するために、鉄系と銅系の原料粉末を成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品において、前記銅系の原料粉末が前記鉄系の原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉であり、表面側に銅が偏析しているものである。
【0008】銅系原料粉末に偏平粉を用い、この偏平粉と鉄系の原料粉末とを充填部に充填して振動を加えることにより、銅系の偏平粉が表面側に偏析し、得られた摺動部品は、表面側が銅に覆われ、表面側から内部に向って銅の割合が低くなると共に鉄の割合が高くなる濃度勾配をなす。
【0009】したがって、この摺動部品により軸受を構成した場合では、銅に覆われた表面側に回転体が摺動し、回転軸と表面側との摩擦係数が低く、円滑な回転が可能となり、同時に鉄により所定の強度と耐久性とが得られる。また、この構造では、回転体が摺動する表面側が摩耗しても、表面側の下には銅が所定の割合で含まれているから、摺動部分の耐久性に優れたものとなる。
【0010】また、請求項2の発明は、請求項1の摺動部材において、摺動部の表面銅被覆率が60%以上である。
【0011】これにより摺動部の摩擦係数を極めて低く抑えることができる。
【0012】また、請求項3の発明は、請求項1又は2の焼結部品において、前記偏平粉のアスペクト比が10以上である。
【0013】偏平紛のアスペクト比を10以上とすることにより、振動を加えると、偏平粉が表面側に良好に偏析し、表面側の銅濃度の高い摺動部品が得られる。
【0014】また、請求項4の発明は、請求項2の焼結部品において、前記銅系の原料粉末の割合が全体の20〜70重量%である。
【0015】銅系の原料粉末の割合が20重量%未満であると、表面側における銅の割合が低下し、摩擦抵抗が大きくなり、70重量%を超えると、全体に示す銅系の割合が多くなり、強度的に不利となる。したがって、上記割合を採用することによって、摩擦抵抗を削減し、かつ強度的に優れた摺動部品を得ることができる。
【0016】請求項5の摺動部品の製造方法は、前記目的を達成するために、鉄系と銅系の原料粉末とを成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品の製造方法において、前記銅系の原料粉末に前記鉄系の原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉を用い、振動により前記充填部内の銅系の原料粉末を前記圧粉体の表面側に偏析する方法である。
【0017】この方法を用いることにより、摩擦係数が低く、耐久性に優れた摺動部品が得られる。
【0018】
【発明の実施形態】以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1〜図7は本発明の一実施形態を示す。
【0019】まず、本発明の製造方法につき説明すると、鉄系の原料粉末1と銅系の原料粉末2とを所定の割合で混合(S1)する。図2に示すように、鉄系の原料粉末1にはアトマイズ粉などの略球状の不規則形状粉を用いる。一方、図3に示すように、銅系の原料粉末2には偏平粉を用い、この偏平粉のアスペクト比(直径D/厚さT)は10以上、好ましくは20〜40とする。また、銅系の原料粉末2には、銅粉末を主体とし、錫粉末を2〜30重量%混合したものを用いることができる。
【0020】図4に示すように、軸受5は略円筒形をなし、その中央には回転体たる回転軸(図示せず)が回転摺動するほぼ円筒状の摺動面51が形成され、この摺動部たる摺動面51の長さ方向両側には平行で平坦な端面52,53が設けられ、その外周面54は円筒状に形成されている。
【0021】混合(S1)した鉄系と銅系の原料粉末1,2を成形金型11の充填部16に充填する。
【0022】図5は成形金型11の一例を示し、この成形金型11は、上下方向を軸方向(プレス上下軸方向)としており、ダイ12、コアロッド13、下パンチ14および上パンチ15を備えている。ダイ12はほぼ円筒形状で、このダイ12内にほぼ円柱形状のコアロッド13が同軸的に位置している。下パンチ14は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に下方から上下動自在に嵌合している。上パンチ15は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に上方から上下動自在にかつ挿脱自在に嵌合するものである。そして、ダイ12とコアロッド13と下パンチ14との間に充填部16が形成され、前記ダイ12の内周面が前記外周面54を形成し、前記下パンチ14の上面が前記端面53を形成し、前記上パンチ15の下面が前記端面52を形成し、コアロッド13の外周面が前記摺動面51を形成する。
【0023】図5に示すように、前記充填部16に、混合した鉄系と銅系の原料粉末1,2を充填し、これら原料粉末1,2に振動(S2)を与える。この場合、充填部16の上部を上パンチ15により塞ぎ、パンチ14,15により加圧することなく、充填部16に加速度0.01〜3G程度の振動を与える。振動を受けると、偏平粉である銅系の原材粉末2が充填部16内の外側に偏析し、厚さ方向に重なり合うと共に、厚さと交叉する方向を表面側の長さ方向に合わせるようにして集まり、この後、上,下パンチ15,14により充填部16内の原料粉末1,2を加圧することにより圧粉体6を成形(S3)する。この圧粉体6は図6に示すように、表面側に偏平粉である銅系の原料粉末2が集まり、内部に向って鉄系の原料粉末1の割合が増加する。その圧粉体を焼結(S4)することにより、焼結品である軸受5が形成される。
【0024】一例として、原料粉末2にアスペクト比20〜40の偏平粉を用い、鉄系の原料粉末1と銅系の原料粉末2との割合を40対60(重量割合)とし、充填部16において、0.05〜0.1G程度の振動を0.5秒間加えた後、加圧して圧粉体6を形成し、これを焼結した軸受5において、表面側から銅の濃度を測定した。図7に示すように、軸受5の摺動面51と外周面54の銅濃度を測定すると共に、それら摺動面51と外周面54との間の等間隔をなす7箇所で銅濃度を測定した。なお、図7では測定箇所に×印を付し、各測定箇所の銅濃度を図示上のグラフに示した。このように銅系の原料粉末2の偏平粉を60重量%以上用いることにより、表面側を銅100%とすることができることが分かった。この場合の摺動面51及び外周面54の表面銅被覆率はほぼ100%となる。
【0025】上記の表面銅被覆率は、表面をカラー写真撮影(倍率×100)し、決められた2mm方眼のトレース用紙のフレームを写真上に重ね合わせ、銅部の面積比率を計算して算出される。
【0026】また、鉄系の原料粉末1と銅系の原料粉末2との割合を変え、50対50では表面銅被覆率が約90%、60対40では表面銅被覆率が80%、70対30では表面銅被覆率が70%、80対20では表面銅被覆率が60%となった。
【0027】摺動面51の表面銅被覆率が100%で、摩擦抵抗が最低となり、−40度の温度下で回転軸を始動する試験において、ノイズの発生は見られず、表面銅被覆率が90%程度までは同様な効果が得られた。一方、表面銅被覆率が100%であっても、銅系の原料粉末2の割合が70重量%を超えると、強度が低下するため、銅系の原材料粉末の割合は原料全体の20〜70重量%とした。
【0028】このように本実施形態では、請求項1に対応して、鉄系と銅系の原料粉末1,2を成形金型11の充填部16に充填し、この原料粉末1,2を加圧して圧粉体6を成形し、この圧粉体6を焼結してなる摺動部品たる軸受5において、銅系の原料粉末2が鉄系の原料粉末1よりアスペクト比が大きな偏平粉であり、表面たる摺動面51側に銅が偏析しているから、この偏平粉である銅系の原料粉末2と鉄系の原料粉末1とを充填部16に充填して振動を加えることにより、銅系の偏平粉が表面側に偏析し、得られた軸受5は、表面側が銅に覆われ、表面側から内部に向って鉄より銅の割合が高くなる濃度勾配なす。
【0029】したがって、銅に覆われた表面たる摺動面51に回転体が摺動し、回転軸と摺動面51との摩擦係数が低く、円滑な回転が可能となり、同時に鉄により所定の強度と耐久性を得ることができる。また、この構造では、回転体が摺動する摺動面51が摩耗しても、摺動面51の下には所定の割合で銅が含まれているから、摺動部分の耐久性に優れたものとなる。
【0030】また、このように本実施形態では、請求項2に対応して、摺動部たる摺動面51の表面銅被覆率が60%以上であるから、摺動面の摩擦係数を極めて低く抑えることができる。
【0031】また、このように本実施形態では、請求項3に対応して、偏平粉のアスペクト比が10以上であるから、振動を加えると、偏平粉が表面側に良好に偏析し、表面側の銅濃度の高い軸受5を得ることができる。
【0032】また、このように本実施形態では、請求項4に対応して、銅系の原料粉末2の割合が全体の20〜70重量%であるから、低い摩擦抵抗と強度とを兼ね備えた軸受5を得ることができる。
【0033】このように本実施形態では、請求項5に対応して、鉄系と銅系の原料粉末1,2とを成形金型11の充填部16に充填し、この原料粉末1,2を加圧して圧粉体6を成形し、この圧粉体6を焼結してなる摺動部品たる軸受5の製造方法において、銅系の原料粉末2に前記鉄系の原料粉末1よりアスペクト比が大きな偏平粉を用い、振動により充填部16内の銅系の原料粉末2を圧粉体51の表面側に偏析するから、その圧粉体51を焼結する軸受5は、摩擦係数が低く、耐久性に優れたものとなる。
【0034】なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、偏平粉には、棒状のものも含まれ、この場合は長さと直径の比がアスペクト比となる。
【0035】
【発明の効果】請求項1の摺動部品は、鉄系と銅系の原料粉末を成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品において、前記銅系の原料粉末が前記鉄系の原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉であり、表面側に銅が偏析しているものであり、摩擦抵抗の削減と耐久性の向上を図ることができ摺動部品を提供することができる。
【0036】また、請求項2の発明は、請求項1の効果に加えて、摺動部の表面銅被覆率が60%以上であり、摺動部の摩擦係数を極めて低く抑えることができる。
【0037】また、請求項3の発明は、請求項1又は2の効果に加えて、前記偏平粉のアスペクト比が10以上であり、振動を加えると、偏平粉が表面側に良好に偏析し、表面側の銅濃度の高い摺動部品が得られる。
【0038】また、請求項4の発明は、請求項2の効果に加えて、前記銅系の原料粉末の割合が全体の20〜70重量%であり、摩擦抵抗を削減し、かつ強度的に優れた摺動部品を得ることができる。
【0039】請求項5の摺動部品の製造方法は、鉄系と銅系の原料粉末とを成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品の製造方法において、前記銅系の原料粉末に前記鉄系の原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉を用い、振動により前記充填部内の銅系の原料粉末を前記圧粉体の表面側に偏析する方法であり、摩擦係数が低く、耐久性に優れた摺動部品が得られる。
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町1丁目5番1号
【出願日】 平成14年1月31日(2002.1.31)
【代理人】 【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
【公開番号】 特開2003−221606(P2003−221606A)
【公開日】 平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願番号】 特願2002−24031(P2002−24031)