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【発明の名称】 粉末冶金用鉄基混合粉
【発明者】 【氏名】太田 純一
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株式会社千葉製鉄所内

【氏名】園部 秋夫
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株式会社千葉製鉄所内

【氏名】上ノ薗 聡
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株式会社技術研究所内

【要約】 【課題】焼結体の機械的特性劣化を生じることなく被削性を向上できる鉄基混合粉を提供する。

【解決手段】鉄基粉末に、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合しするに際し、切削性改善用粉末としてヒドロキシアパタイト粉末、あるいはさらにフッ化カルシウム粉末を、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有する。ヒドロキシアパタイト粉末は、結晶子サイズが200 Å超え、好ましくは400 Å超え、より好ましくは600 Å以上と、結晶子サイズを制御された結晶子からなるヒドロキシアパタイト粉末とすることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉であって、前記切削性改善用粉末をヒドロキシアパタイト粉末とし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項2】 前記ヒドロキシアパタイト粉末が、結晶子サイズが200 Å超えの結晶子からなるヒドロキシアパタイト粉末であることを特徴とする請求項 1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項3】 前記切削性改善用粉末が、前記ヒドロキシアパタイト粉末に加えてさらにフッ化カルシウム粉末を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
【請求項4】 前記鉄基粉末の一部またはすべてが、表面に合金用粉末および/または切削性改善用粉末を固着してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉末冶金用鉄基混合粉に係り、とくにSによって焼結炉の発熱体、搬送ベルト等が汚染されるのを防止でき、かつ焼結体の切削性改善を可能とする粉末冶金用鉄基混合粉に関する。
【0002】
【従来の技術】粉末冶金技術の進歩により、高寸法精度の複雑な形状の部品をニアネット形状に製造することが可能となっている。鉄系粉末冶金製品は、鉄基粉末に、銅粉、黒鉛粉などの合金用粉末と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の潤滑剤とを混合した鉄基混合粉を金型に充填したのち、加圧成形し、ついで焼結処理を施され焼結体とされたのち、必要に応じ切削加工されて、製品とされる。このようにして製造された焼結体は、空孔の含有比率が高く、溶解法による金属材料にくらべ、切削抵抗が高い。そのため、従来から、焼結体の切削性を向上する目的で、Pb、Se、Te、MnS 、S等、種々の粉末が鉄基混合粉に添加、あるいは鉄粉に合金化して添加することが行われてきた。しかしながら、Pbは融点が330 ℃と低いため焼結過程で溶融し、しかも鉄中に固溶せず基地中に均一に分散させることが難しいという問題があり、Se、Teは焼結体を脆化させるため、焼結体の機械的特性の劣化が著しいという問題があった。これらの粉末以外にも、切削性改善用粉末として、種々の粉末を用いることが提案されている。
【0003】例えば、特公昭46-39564号公報には、鉄または鉄基合金に、BaSO4 、BaS を単独、あるいは複合して添加した粉末冶金法で製造された快削性金属材料が開示されている。この技術ではBaSO4 、BaS を単独、あるいは複合して添加することにより切削などの機械加工性が向上するとしている。また、特公昭52-16684号公報には、鉄系原料粉に硫化カルシウムCaS あるいは硫酸カルシウムCaSO4 を添加した混合粉を圧縮成形したのち、焼結する快削焼結鋼の製造方法が提案されている。
【0004】しかしながら、切削性改善用粉末として、SあるいはMnS 等のSを含む化合物を混合すると、焼結時に発生するH2S が焼結炉の耐火物、搬送用のメッシュベルト、発熱体等を汚染し、それら部品の寿命を短くするという問題があった。さらに加えて、焼結体の外観不良という問題もあり、Sを含む化合物粉を切削性改善用粉末として鉄基混合粉に混合することは敬遠されている。また、BaS 、CaS 等が焼結体中に残留すると、BaS 、CaS の吸湿性に起因して焼結体が錆びやすいという問題もある。
【0005】このような問題に対し、例えば、特開昭57-198201 号公報には、Ca:0.001 〜0.10%、O:0.05〜1.0 %含有する被削性の良好な焼結体を与える焼結用鋼粉末が開示されている。しかしながら、特開昭57-198201 号公報に記載された焼結用粉末で製造された焼結体では、Sを含まないため焼結炉の汚染という問題はないが、カルシウム酸化物は吸湿性を有するため、粉体の流動性が劣化し、成形が不安定になるという問題があった。
【0006】また、特表平7-507358号公報には、鉄基粉末組成物中に0.1 〜0.6 重量%のフッ化カルシウムCaF2を含有し切削性を改善する粉末組成物が提案されている。しかしながら、フッ化カルシウムCaF2の不純物は、寸法変化や機械的特性に影響をおよぼす。そのため、純度の高いフッ化カルシウムを使用する必要がありコスト的に問題があった。
【0007】また、特開平9-279204号公報には、鉄粉を主体とし、アノールサイト相および/またはゲーレナイト相を有する平均粒径50μm 以下のCaO-Al2O3-SiO2系複合酸化物の粉末を0.02〜0.3 重量%含有する粉末冶金用鉄系混合粉末が開示されている。しかしながら、不純物が少なく、かつ粒度を制限したCaO-Al2O3-SiO2系複合酸化物の粉末を使用しないと、粉体特性、焼結体特性が低下するという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、焼結体の機械的特性の劣化を生じることなく切削性を向上できる鉄基混合粉を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、焼結体の機械的特性の劣化を生じることなく切削性を向上できる切削性改善用粉末について、鋭意研究した。その結果、このような目的にはヒドロキシアパタイトが有効であることを見いだした。まず、本発明者らが行った基礎的な実験結果について説明する。
【0010】鉄基粉末として還元鉄粉に、合金用粉末として平均粒径5μm の黒鉛粉末と粒径45μm以下の粒子を70質量%程度含有する水アトマイズ銅粉を、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛と、さらに切削性改善用粉末として、ヒドロキシアパタイト粉末(Ca10(PO4)6(OH)2 )を、混合機に装入し均一となるように混合し、鉄基混合粉とした。配合量は、鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末との合計量に対し、銅粉末を 1.5質量%、黒鉛粉末を0.7 質量%、切削性改善用粉末を0〜1.3 質量%とした。また、潤滑剤の配合量は鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し、0.75重量部とした。なお、ヒドロキシアパタイト粉末は、結晶子の大きさ(結晶子サイズ)を、190 〜880 Åの範囲に調整したものを使用した。なお、ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズは、X線回折でヒドロオキシアパタイト(002 )面からの回折ピークをもとめ、その半価幅Bを測定して、次(1)式B=0.9 λ/(tcos θ) ………(1)
(ここで、B:半価幅、λ:入射X線の波長(Å)、t:結晶子サイズ(Å)、2θ:25.8(deg))により結晶子サイズtを算出した。測定には、CuKα線(λ:1.5417Å)を使用した。
【0011】これら鉄基混合粉を金型に挿入し、圧粉密度が6.8Mg/m3となるように圧縮成形し、外径35mm×内径14mm×高さ10mmの圧壊試験用リング状試験片、および外径60mm×高さ10mmのドリル穿孔試験用円盤状試験片とした。ついで、これら試験片をRXガス雰囲気中でメッシュベルト炉を使用し1130℃×20min 焼結した。これら焼結体試験片を用いて、JIS Z 2507の規定に準拠した圧壊試験を実施し、圧壊強さを求めた。また、回転数10000rpm、送り:0.012mm/rev の条件でドリル穿孔試験を実施して穿孔数を求め、切削性を評価した。なお、穿孔数は、ドリル(ハイス製1.2mm φ) が折損するまでに開いた孔の数とし、穿孔数 100以上を切削性良好な範囲とした。
【0012】ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズが 880Åのものについて、鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイト粉末含有量と穿孔数との関係を図1に、鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイト粉末含有量と圧壊強さとの関係を図2に示す。また、鉄基混合粉中のヒドロオキシアパタイト粉末の含有量が 0.3質量%の場合の、ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズと穿孔数との関係を図3に示す。
【0013】図1から、鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイト粉末の含有量の増加に従い、穿孔数はほぼ直線的に増加することがわかる。また図2から、鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイト粉末の含有量が1.0 質量%を超えると、急激に圧壊強さが低下する。これらのことから、鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイト粉末の含有量を0.05〜1.0 質量%の範囲とすることにより、優れた切削性と高い圧壊強さを併せ有することができることになるという知見を得た。なお、この鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイト粉末の含有量は、Ca量で換算すると、0.02〜0.40質量%となる。
【0014】また、図3から、ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズが、200 Åを超えて大きくなるにしたがい穿孔数はなだらかに増加し、切削性が向上することがわかる。とくに、結晶子サイズが400 Å超え、好ましくは600 Å以上の場合に切削性の向上が顕著となる。さらに、本発明者らは、切削性改善用粉末として、ヒドロキシアパタイトとフッ化カルシウムの複合について検討した。その結果、焼結体の機械的特性を劣化させることなく切削性を向上させる効果は、上記化学種のCa換算による添加量に依存するとの知見を得た。すなわち、前記ヒドロキシアパタイトにおける鉄基混合粉中の添加量範囲0.05〜1.0 質量%は、上記化学種のCa換算による添加量の0.02〜0.40質量%としても同様の効果があることを見出した。
【0015】本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明は鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉末であって、前記切削性改善用粉末をヒドロキシアパタイト粉末とし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉である。
【0016】また、本発明は鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉末であって、前記切削性改善用粉末を、結晶子サイズが200Å超え、好ましくは400 Å超え、より好ましくは600 Å以上の結晶子からなるヒドロキシアパタイト粉末とし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉である。
【0017】また、本発明では、前記切削性改善用粉末を、前記ヒドロキシアパタイト粉末に加えてさらにフッ化カルシウム粉末を含むことが好ましい。また、本発明では、合金用粉末の含有量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し5質量%以下とするのが好ましい。また、本発明では、前記潤滑剤の含有量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量100 重量部に対し0.2 〜1.5 重量部とすることが好ましい。
【0018】また、本発明では、前記鉄基粉末の一部またはすべてが、表面に合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材により固着してなることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の粉末冶金用鉄基混合粉は、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉であり、切削性改善用粉末をヒドロキシアパタイト粉末とし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有する。
【0020】本発明の鉄基混合粉は、切削性改善用粉末としてヒドロキシアパタイト粉末、とくに200 Å超え、好ましくは400 Å超え、より好ましくは600 Å以上の結晶子からなる、制御された結晶子サイズの結晶子からなるヒドロキシアパタイト粉末を用いることに特徴がある。切削性改善用粉末としてヒドロキシアパタイト粉末を用いることにより、機械的特性の劣化が少なくて切削性の改善が得られるが、とくに結晶子サイズを200 Å超え、好ましくは400 Å超え、より好ましくは600Å以上に制御した結晶子からなるヒドロキシアパタイト粉末を用いることにより、切削性が顕著に向上する。結晶子サイズが200 Å以下のヒドロキシアパタイト粉末では切削性の改善効果はそれほど大きくない。ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズは、市販の粉末に加熱処理を施して調整することができる。大きな結晶子サイズとする場合には、加熱処理の加熱温度を高く、小さな結晶子サイズとする場合には、加熱処理の加熱温度を低くする。
【0021】また、ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズの測定は、X線回折を利用して行う。本発明では、粉末にX線を照射して、ヒドロキシアパタイト(002 )面の回折ピークをもとめ、その半価幅Bを測定して、次(1)式B=0.9 λ/(tcos θ) ………(1)
(ここで、B:半価幅、λ:入射X線の波長(Å)、t:結晶子サイズ(Å)、2θ:25.8(deg ))に用いて算出した値tを、結晶子サイズとする。
【0022】鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイトの含有量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%とする。ヒドロキシアパタイトの含有量がCa換算で0.02質量%未満では、切削性の向上が顕著に認められない。一方、Ca換算で0.40質量%を超えると、寸法変化率が大きくなったり、圧壊強さの低下等機械的特性が低下する。このため、鉄基混合粉中のヒドロキシアパタイトの含有量はCa換算で合計0.02〜0.40質量%とした。
【0023】また、切削性改善用粉末の最大粒径は、200 μm 以下とすることが好ましい。粗大粒子は焼結体の脱落・欠け等の原因となり、外観不良率が高くなるため、粒子の最大粒径はできるだけ低下することが好ましいが、経済性を考慮して200 μm以下とすることが好ましい。なお、本発明では、粒径はレーザーを用いたマイクロトラック法で測定した値を用いるものとする。
【0024】なお、切削性改善用粉末は、上記したヒドロキシアパタイトに加えて、フッ化カルシウムCaF2を含有してもよい。この場合、切削性改善用粉の含有量、すなわち、ヒドロキシアパタイトならびにフッ化カルシウムの含有量(合計)は鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し、Ca換算で合計0.02〜0.40質量%とすることが好ましい。なお、フッ化カルシウムCaF2の含有量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で0.05〜0.15質量%の範囲内とするのが好ましい。フッ化カルシウムを、ヒドロキシアパタイトと複合して含有することにより、フッ化カルシウム単独で含有する時よりも加工性が向上する。
【0025】また、鉄基混合粉に含有される合金用粉末としては、黒鉛粉、銅粉等を、所望の製品特性に要求される特性に応じ選定し含有される。本発明では、鉄基粉末としては、アトマイズ鉄粉、還元粉等の純鉄粉、あるいは鉄粉に代えて合金元素を予め合金した鋼粉(予合金鋼粉)、あるいは合金元素が部分合金化された鋼粉(部分合金化鋼粉)がいずれも好適に用いることができる。また、これらを混合して使用してもよいことはいうまでもない。
【0026】鉄基混合粉に含有される潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸、あるいはワックスが好ましい。なお、潤滑剤の配合量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量100 重量部に対し0.2 〜1.5 重量部とするのが好ましい。潤滑剤の配合量が0.2 重量部未満では、金型との摩擦が著しく増加し抜出力が増大するため金型寿命が低下する。一方、1.5 重量部を超えると、成形体密度の低下が著しくなり、焼結体密度が低下する。
【0027】本発明の鉄基混合粉は、上記した鉄基粉末に、上記した合金用粉末、切削性改善用粉末、さらに潤滑剤を添加して、Vブレンダ、ダブルコーンブレンダ等の通常公知の混合機を用いる方法で、一度に混合し、あるいは2回以上に分けて混合し鉄基混合粉とするか、あるいは合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材により鉄基粉末の表面に固着する偏析防止処理を施した鉄基混合粉としてもよい。このような鉄基粉末を用いることにより、より偏析が少なく、流動性に優れた鉄基混合粉とすることができる。
【0028】偏析防止処理としては、例えば、特許第3004800 号公報に示されるように、鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末を、結合材の作用を有する特定の有機化合物とともに混合し、ついで少なくとも該特定の有機化合物のうちの最低融点+10℃以上に加熱して、該有機化合物のうちの1種を溶融させたのち冷却固化して、合金用粉末および/または切削性改善用粉末を鉄基粉末の表面に固着させる方法が好ましい。特定の有機化合物としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ワックスが好ましい。高級脂肪酸もしくは高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドの溶融混合物、等が例示できる。
【0029】
【実施例】(実施例1)鉄基粉末としてミルスケール還元鉄粉(商品名:川崎製鉄製KIP 255 M )を用い、該鉄基粉末100 kgに、合金用粉末として黒鉛粉末(平均粒径5μm )と水アトマイズ銅粉(粒径45μm以下を70質量%以上含む)と、を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対し表1に示す量(質量%)、さらに切削性改善用粉末として、表1に示す配合量(質量%)の各種のヒドロキシアパタイト粉末、フッ化カルシウム粉末と、さらに潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(平均粒径:20μm )を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し表1に示す量(重量部)、をVブレンダに装入し、均一混合して、鉄基混合粉とした。なお、切削性改善用粉末として、MnS を用い、従来例とした。
【0030】なお、ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズは、X線回折により測定した(002) 面ピークの半価幅Bから(1)式を用いて算出した。測定条件は、加速電圧:55kV、加速電流:250mA として発生させたCuKα線を使用し、発散スリット:1.0 °、散乱スリット:1.0 °、受光スリット:0.15mmとし、scan speed を0.5 °/min とした。
【0031】これら鉄基混合粉を金型に挿入し、成形体密度が6.8Mg/mm3 となるように、面圧:624 〜655MPaで圧縮成形し、外径35mm×内径14mm×高さ10mmの圧壊試験用および外径寸法変化率測定用のリング状試験片成形体、および外径60mm×高さ10mmのドリル穿孔試験用円盤状試験片成形体、10×10×55mmの直方体の成形体とした。直方体の成形体について、アルキメデス法を用いて、密度を測定した。アルキメデス法とは、被測定物である成形体を水中に浸漬して体積を測定することにより密度を測定する方法である。
【0032】ついで、これら試験片成形体をRXガス雰囲気中でメッシュベルト炉を使用し1130℃×20min で焼結し、焼結体とした。これら焼結体(試験片)について、JIS Z 2507の規定に準拠した圧壊試験、外径寸法変化率測定試験、および回転数10000rpm、送り:0.012mm/rev の条件でドリル穿孔試験を、それぞれ実施し、圧壊強さ(N/mm2 )、外径寸法変化率(%)および穿孔数(個)を求めた。なお、圧壊強さ(N/mm2 )は、JIS Z 2507の規定に準拠して求めた。外径寸法変化率は、金型の外径を基準として焼結後のリング状試験片外径を測定し、金型外径に対する変化率(={(焼結後のリング状試験片の平均外径−金型外径)/(金型外径)}×100 %)を求め、外径寸法変化率とした。また、穿孔数(個)はドリル(ハイス製1.2mm φ) が折損するまでに開いた穴の数とした。なお、焼結体について、目視による外観検査を実施した。
【0033】それらの結果を、表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】本発明例はいずれも、焼結体の圧壊強さも高く、また外径寸法変化率も小さいうえ、穿孔数も大きく切削性に優れた焼結体を形成でき、粉末冶金用鉄基混合粉として優れた特性を有している。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例、従来例は、いずれも圧壊強さが低いか、外径寸法変化率が大きいか、あるいは切削性が低下していた。また、Sを含む切削性改善用粉末を含む鉄基混合粉(従来例)では、焼結体における外観不良が見られた。
(実施例2)鉄基粉末として水アトマイズ鉄粉(商品名:川崎製鉄製KIP 301A)を用い、該鉄基粉末100 kgに、合金用粉末として天然黒鉛粉末(平均粒径5μm )、あるいはさらに電解銅粉(平均粒径41μm )を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対し表2に示す量(質量%)と、さらに切削性改善用粉末として、表2に示す配合量(質量%)のヒドロキシアパタイト粉末、フッ化カルシウム粉末と、さらに結合材としてステアリン酸亜鉛(融点:120 ℃)を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し0.4 重量部添加して、一次混合したのち、120 ℃に加熱し結合材を加熱溶融しながら混合し冷却して、合金用粉末および/または切削性改善用粉末を鉄基粉末表面に固着させた偏析防止処理を施した鉄基粉末とした。ついで、このような偏析防止処理を施した鉄基粉末に、さらに潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛(平均粒径:20μm )を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し表2に示す量(重量部)添加して均一混合して、鉄基混合粉とした。なお、切削性改善用粉末として、MnS を用い、従来例とした。また、ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズの測定は実施例1と同様とした。
【0036】これら鉄基混合粉を、実施例1と同様に、金型に挿入し、面圧:590MPaで圧縮成形し、外径35mm×内径14mm×高さ10mmの圧壊試験用および外径寸法変化率測定用のリング状試験片成形体、および外径60mm×高さ10mmのドリル穿孔試験用円盤状試験片成形体とした。ついで、これら試験片成形体をRXガス雰囲気中でメッシュベルト炉を使用し1120℃×15min で焼結し、焼結体とした。
【0037】これら焼結体(試験片)について、実施例1と同様な方法で、圧壊試験、外径寸法変化率測定試験、およびドリル穿孔試験を、それぞれ実施し、圧壊強さ(N/mm2 )、外径寸法変化率および穿孔数(個)を求めた。なお、焼結体について、目視による外観検査も実施した。それらの結果を、表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】本発明例はいずれも、焼結体の圧壊強さが高く、また外径寸法変化率も小さいうえ、穿孔数も大きく切削性に優れた焼結体を形成でき、粉末冶金用鉄基混合粉として優れた特性を有している。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、切削性が低下していた。
【0040】
【発明の効果】以上の説明のように、本発明によれば、焼結体の機械的特性劣化を生じることなく切削性を向上できる。さらに、本発明によれば、切削性改善用粉末をSを含有しない粉末とすることができ、Sによる焼結時の炉内汚染や焼結体への悪影響もなく、焼結製品の製造ができ、産業上格段の効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号
【出願日】 平成14年1月31日(2002.1.31)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
【公開番号】 特開2003−221602(P2003−221602A)
【公開日】 平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願番号】 特願2002−24391(P2002−24391)