トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金




【発明の名称】 貴金属細孔体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】浅井 道博

【氏名】加納 博文

【氏名】金子 克美

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリカ微粒子の集合体にナノメータオーダで分散吸着させた貴金属化合物を還元して得られた貴金属からなり、前記シリカ微粒子の痕跡としてナノメータオーダの微細孔が内部に形成されていることを特徴とする貴金属細孔体。
【請求項2】 貴金属がPt,Pd,Rhから選ばれた1種又は2種以上である請求項1記載の貴金属細孔体。
【請求項3】 一次粒径がナノメータオーダのシリカ微粒子の集合体に貴金属化合物を分散吸着させ、貴金属化合物を貴金属に還元した後、シリカ微粒子を溶解除去することを特徴とする貴金属細孔体の製造方法。
【請求項4】 Pt,Pd,Rhから選ばれた1種又は2種以上の貴金属の有機酸塩又は無機酸塩を貴金属化合物として使用する請求項3記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い表面活性を活用した高機能の触媒,吸着剤,ガス吸蔵材,選択透過膜等の各種機能材料として有用な貴金属細孔体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】触媒活性がほとんどない炭素でも、細孔構造をもつ活性炭は細孔内に物質を引き込む作用を呈し、酸化窒素の急速還元等を始めとする反応系で触媒能を呈する。これらの機能は活性炭のナノ細孔構造に由来するものであり、炭素に代えて本来触媒活性が非常に高いPt,Pd,Rh等の貴金属でナノ細孔構造にできると、非常に小型で超高性能の機能材料が期待できる。
【0003】比表面積の大きな貴金属材料として白金黒,パラジウム黒等が知られているが、白金黒,パラジウム黒等は活性炭に比較すると比表面積が格段に小さい。たとえば、還元剤の添加により白金溶液から沈殿したPtで作製した白金黒の微粒子は、比表面積が30m2/g程度に留まる。高分子マトリックスに各種化学種(原子,イオン,分子)を分散させ高温焼成することにより化学種/高分子の複合体や化学種の酸化物等を製造する方法も知られているが、当該方法による貴金属細孔体の製造はこれまで報告されていない。
【0004】鋳型として働く無機系又は有機系吸着剤に原子,イオン,分子等の貴金属ソースを吸着させ、高温焼成で吸着剤を消失又は分解することにより貴金属細孔体を製造する方法も知られている(Chemical Communication,12巻(1999)第391〜392頁)。しかし、高温焼成時に貴金属原子間で凝集が進行するため、ナノメータオーダの細孔をもつ貴金属細孔体を製造することは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】貴金属細孔体の機能性向上には、ナノメータオーダの微細な細孔を形成することにより活性を高めることが要求される。たとえば、次世代エネルギーとして有望視されている水素の貯蔵や燃料電池セルを小型高性能化する上で、ナノ細孔構造をもつ貴金属細孔体が望まれている。水素燃料電池のセパレータとしても、ナノ細孔構造によって単位面積当りの水素処理能力が大幅に向上する。また、水素吸蔵材として有用なPd,Pt合金等の素材からナノ細孔構造の貴金属細孔体を作製できると、単位重量当りの表面積が飛躍的に増加するので少量の貴金属で高機能の水素吸蔵材が得られる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような要求に応えるべく案出されたものであり、粒径がナノメータオーダのシリカ微粒子を鋳型(吸着剤)に使用することにより、ナノ細孔構造によって表面活性を著しく向上させ、Pt,Pd,Rh等の貴金属の活性度が効率よく発現される貴金属細孔体を提供することを目的とする。
【0007】本発明の貴金属細孔体は、その目的を達成するため、シリカ微粒子の集合体にナノメータオーダで分散吸着させた貴金属化合物を還元して得られた貴金属からなり、シリカ微粒子の痕跡としてナノメータオーダの微細孔が内部に形成されていることを特徴とする。貴金属としては、Pt,Pd,Rh等の1種又は2種以上がある。
【0008】この貴金属細孔体は、一次粒径がナノメータオーダのシリカ微粒子の集合体に貴金属化合物を分散吸着させ、貴金属化合物を貴金属に還元した後、シリカ微粒子を溶解除去することにより製造される。貴金属化合物としては、Pt,Pd,Rhから選ばれた1種又は2種以上の貴金属の有機酸塩又は無機酸塩が使用される。
【0009】
【作用】本発明においては、比較的細孔の少ないナノシリカ集合体を鋳型に使用し、当該鋳型に貴金属化合物をナノメータオーダで分散吸着させた後、貴金属化合物を金属状態に還元している。ナノシリカ集合体の使用により貴金属化合物分子がナノメータオーダで分散する理由は次のように推察される。ナノシリカ集合体は、多量の−OH基が集合体表面にあるため疎水性,親水性双方の性質を備え、水,有機溶媒が混在している溶媒に接触する系では水を優先的に吸着しようとする。この性質のため、結晶水をもつ貴金属化合物を有機溶媒に溶解し、ナノシリカ集合体に吸着させると、貴金属化合物,水,有機溶媒の三者のうち先ず水がナノシリカ集合体の表面に膜状に吸着される。
【0010】他方、液相には貴金属化合物分子,有機溶媒が存在しているので、水を吸着したナノシリカ集合体の真空乾燥によって有機溶媒を除去すると、ナノシリカ集合体表面直上にある吸着水を介して貴金属化合物が再結晶する。ナノシリカ集合体の表面にのみ存在する吸着水によって貴金属化合物の再結晶が進行するため、ナノシリカ集合体の表面を追従した形状、すなわちナノメータオーダで分散した貴金属化合物薄膜が形成される。このように、ナノシリカ集合体の表面に豊富に存在する−OH基が有機溶媒,結晶水と相互に作用しあって有機溶媒,結晶水が消失し貴金属化合物分子薄膜が形成されるため、貴金属化合物分子をナノメータオーダで分散吸着させることができる。
【0011】ナノシリカ集合体は粒径がナノメータオーダ(具体的には、一次粒径10〜30nm)のシリカ微粒子が集まった粉体材料である。ナノシリカ集合体を構成する個々のシリカ微粒子は、比較的細孔の少ない構造をもち、NaOH等のアルカリを用いた化学処理によって容易に且つマイルドな環境下で溶解除去される。この点でもナノシリカ集合体は鋳型に適しており、他の素材に見られない長所である。しかも、シリカ微粒子の一次粒子がマイクロ孔のない球形に近い形状をもっているのでブロッキング現象が生じることなく、分散吸着によってナノメータオーダで貴金属化合物をナノシリカ集合体の全表面に容易に導入できる。因みに、活性炭素繊維を鋳型に使用するとブロッキング現象によって細孔入口が閉塞され、活性炭素繊維内への貴金属化合物の浸透が阻害される。
【0012】ナノシリカ集合体の表面に吸着しているH,H2O等のガス成分を真空乾燥で除去した後、貴金属化合物を含む溶液とナノシリカ集合体を接触させることにより、貴金属化合物がナノシリカ集合体の表面に分散吸着される。貴金属化合物としては、Pt,Pd,Rh等の有機酸塩,無機酸塩が使用される。たとえば、酢酸パラジウム溶液をナノシリカ集合体に真空含浸させると、ナノシリカ集合体の粒子間隙に酢酸パラジウム溶液が行き渡り、個々のシリカ微粒子表面に酢酸パラジウムが吸着される。
【0013】ナノメータオーダで貴金属化合物を吸着したナノシリカ集合体を加熱すると、貴金属化合物が加熱分解して金属状態に還元される。具体的には、貴金属化合物分子の常圧における分解温度より50℃程度高い温度に真空雰囲気下で加熱することにより、貴金属化合物分子が金属状態に分解還元される。貴金属化合物が金属状態に還元される際、ナノシリカ集合体の表面直上にある吸着水を利用して還元反応が進行するため、ナノシリカ集合体の表面形状に倣ってナノメータオーダで分散した貴金属化合物分子薄膜がその状態を維持して金属状態に還元される。
【0014】貴金属化合物を還元した後、ナノシリカ集合体を化学処理で溶解除去すると、シリカ微粒子が存在していた個所が微細空間になり、ナノ細孔構造をもつ貴金属細孔体が得られる。化学処理には、NaOH,KOH,アンモニア水等のアルカリが使用される。アルカリを用いた比較的マイルドな環境で鋳型(吸着媒)が除去されることも、シリカ微粒子からなるナノシリカ集合体を使用する利点である。ナノシリカ集合体の溶解除去後に得られる貴金属細孔体は、シリカ微粒子に対応するナノメータオーダの微細孔をもち、微粒子内にもより小さな細孔空間が形成される。この貴金属細孔体は、活性度の高いPt,Pd,Rh等の貴金属からなり、特異なナノ細孔構造に起因して高機能の触媒,吸着剤,ガス吸蔵材,選択透過膜等として使用される。
【0015】
【実施例1】平均一次粒子径20μm,純度94.43質量%のシリカ微粒子(ファインシールX−37:株式会社トクヤマ製)184mgを真空容器に入れ、0.133Paの真空雰囲気で150℃に2時間加熱することにより、シリカ微粒子の表面から吸着水やガス成分を除去した。次いで、酢酸パラジウム987mgをアセトン30mlに溶解した酢酸パラジウム溶液を真空容器に導入し、大気圧の雰囲気下で2日間攪拌することにより、シリカ微粒子に酢酸パラジウムを吸着させた。攪拌終了後、室温に48時間静置し、再度真空吸引することによってアセトン(溶媒)を蒸発させた。再度の真空吸引を6時間継続することにより、酢酸パラジウム含浸ナノシリカ集合体を濃縮乾固した。
【0016】乾固した酢酸パラジウム含浸ナノシリカ集合体を真空雰囲気下で加熱することにより、酢酸パラジウムを金属Pdに還元した。このとき、酢酸パラジウムの熱分解温度(200℃)を超える250℃に加熱温度を設定し、酢酸パラジウムを十分に還元させるため2時間に加熱時間を設定した。得られた金属Pd/ナノシリカ複合体をFE−SEMで表面観察したところ、粒径15〜25nm程度の一次粒子構造が集合した塊状が観察され、シリカ微粒子間に微細孔が残ったままで個々のシリカ微粒子の表面に金属Pdが吸着されていることが判った(図1,2)。
【0017】この金属Pd/ナノシリカ複合体を1.0NのNaOH水溶液に浸漬し、7日間攪拌することによりナノシリカ集合体を溶解除去した。次いで、金属Pdを脱イオン水で洗浄し、60℃に24時間保持することにより水を蒸発させ、乾燥サンプル278mg(収率60%)を得た。乾燥サンプルの窒素吸着量を容量法で測定し、窒素吸着等温線を求めた。図3の測定結果にみられるように、低い相対圧で吸着量の急激な立上りが検出された。急激な立上りは、乾燥サンプルがナノサイズの細孔をもっている現れであり、従来のパラジウム黒にない特徴である。BET解析結果では、29.6m2/gの比表面積をもつ細孔体であることが判った。
【0018】乾燥サンプルをXPS測定したところ、340.32eV,335.17eVにピークが検出された(図4)。340.32eV,335.17eVのピークは金属Pdの340eV(3d3/2),335eV(3d5/2)に相当するピークであることから、Pdが金属状態になっていることが判る。また、Siに由来するピークは観察されなかった。以上の結果から、乾燥サンプルは、ナノシリカ集合体のナノ細孔構造を転写したPd細孔体であることが確認される。
【0019】
【実施例2】実施例1と同じシリカ微粒子370mgから同様な真空乾燥で吸着水やガス成分を除去した後、塩化白金酸六水和物4.9gをアセトン30mlに溶解した溶液を真空含浸させ、48時間攪拌することにより塩化白金酸六水和物をシリカ微粒子に吸着させた。吸着後、室温6時間の真空吸引によりアセトンを蒸発させ、塩化白金酸六水和物/ナノシリカ集合体を乾燥させた。乾燥した塩化白金酸六水和物/ナノシリカ集合体を真空雰囲気下450℃に2時間加熱することにより、塩化白金酸六水和物を加熱分解して金属Ptに還元した。得られた金属Pt/ナノシリカ複合体をFE−SEM観察したところ、シリカ微粒子間に細孔空隙が維持されたままで個々のシリカ微粒子に金属Ptが吸着されていた(図5,6)。
【0020】次いで、金属Pt/ナノシリカ複合体を0.1NのNaOH水溶液に7日間浸漬してシリカ微粒子を溶解除去し、蒸留水で洗浄した後、60℃で24時間乾燥させたところ、1.585g(収率86.3%)のPt細孔体が得られた。このPt細孔体は、容量法(−196℃)による窒素吸着測定の結果、150m2/gの比表面積(従来の細孔性白金化合物である白金黒に比較して5.8倍)をもつナノ細孔構造になっていることが判った。
【0021】
【実施例3】実施例1,2で製造した貴金属細孔体について、エチレンの水素添加反応を評価した。実施例1の貴金属細孔体,実施例2の貴金属細孔体及び白金黒をそれぞれ10mg秤量し、石英管に充填して反応管とした。エチレン:水素=1:1.8の混合ガスを流量50ml/分で0℃に保持した反応管に送り込み、反応させた後、反応生成物をガスクロメータで分析した。何れの場合もエチレンからエタンへの水素添加反応が進行したが、反応生成物の量から判定した活性度は、表1にみられるように従来の白金黒に比較して本発明に従った貴金属細孔体の方が格段に高い値を示した。
【0022】

【0023】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の貴金属細孔体は、シリカ微粒子の痕跡が微細孔になったナノ細孔構造をもっているため、もともと活性度の高いPt,Pd,Rh等の貴金属の特性が効率よく発現され、触媒,吸着剤,ガス吸蔵材,選択透過膜等の各種機能材料として使用される。また、Pt,Pd,Rh等の貴金属に特有の電子状態を呈することから、骨格が電気伝導性をもつことを活用した用途の展開も期待できる。しかも、大量合成に適した方法で製造されるため、機能性を著しく高めた機能材料を比較的安価に提供できる。
【出願人】 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【出願日】 平成14年1月31日(2002.1.31)
【代理人】 【識別番号】100092392
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 亘
【公開番号】 特開2003−221601(P2003−221601A)
【公開日】 平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願番号】 特願2002−23966(P2002−23966)