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【発明の名称】 ニッケル粉の製造方法
【発明者】 【氏名】長瀬 範幸
【住所又は居所】愛媛県新居浜市磯浦町17−5 住友金属鉱山株式会社新居浜研究所

【氏名】久保田美津儀
【住所又は居所】愛媛県新居浜市磯浦町17−5 住友金属鉱山株式会社新居浜研究所

【要約】 【課題】積層セラミックコンデンサー内部電極用ペーストに適したニッケル粉の製造方法の提供を課題とする。

【解決手段】攪拌され、かつ40〜80℃の範囲で可能な限り一定温度に保持された反応槽内のスラリーに、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等を用いた含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、該スラリーが所定のpH値を8.0〜9.5の範囲で可能な限り一定に保持するように、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成させ、該水酸化ニッケルを含むスラリーを連続的に槽外に払い出し、該スラリーを濾過し、水洗し、乾燥して水酸化ニッケルを得、これを還元剤として水素を用い、還元温度を400〜550℃として加熱還元することによりニッケル粉を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】攪拌され、かつ温度が40〜80℃の範囲で可能な限り一定となるように保持された反応槽内のスラリーに、含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、該スラリーのpH値が8.0〜9.5の範囲で可能な限り一定となるようにアルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成させ、該水酸化ニッケルを含むスラリーを連続的に槽外に払い出し、該スラリーを濾過し、水洗し、乾燥して水酸化ニッケルを得、これを加熱還元することによりニッケル粉を得ることを特徴とするニッケル粉の製造方法。
【請求項2】含ニッケル溶液を作成するのに使用しうるニッケル源が塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等の内の少なくとも一種であり、アルカリ溶液を作成するためのアルカリ源が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の内の少なくとも一種である請求項1記載の方法。
【請求項3】水酸化ニッケルを加熱還元するに際して、還元剤として水素を用い、還元温度を400〜550℃とする請求項1〜3記載のいずれかの方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層セラミックコンデンサー内部電極材料に適したニッケルペースト用ニッケル粉の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、電子機器の小型化に伴い電子部品の小型化が急速に進行している。このような状況において、小型でかつ高容量である積層セラミックコンデンサーが多用されつつある。
【0003】積層セラミックコンデンサーは、パラジウム、白金などの貴金属粉を有機バインダーと混練りし、ペーストとし、このペーストをセラミックのグリンシートに印刷し、これを所望枚数積層して焼結させて得ている。すなわち、貴金属粉が焼結されて生成した膜が内部電極となっている。
【0004】したがって、積層セラミックコンデンサーの高容量化は積層数を増加させることにより図られることになるが、その分貴金属粉を多用することとなり、高容量化はコストの上昇をもたらすことになる。このため、貴金属ペーストの代わりに安価なニッケル粉を用いたニッケルペーストが使用されるようになってきた。
【0005】こうした積層セラミックコンデンサー用ニッケルペーストに使用すべく開発されたニッケル粉としては、例えば特公昭58−35242号、および特開平5−43921号公報に開示されている。こうした公報に開示されたニッケル粉は、その製法により粒度分布の幅が広く、また有機バインダーに対する分散性が悪く、必ずしも十分なものとなってはいない。このようなものを使用したニッケルペーストを高積層セラミックコンデンサー内部電極用として用いた場合、内部欠損や電気特性の劣化を招くという問題がある。加えて、ニッケル粉作成時に高価な錯化剤を使用するため、また還元剤として用いるヒドラジンやヒドラジン化合物の過剰分を廃水処理で無害化しなければならないことから必ずしも十分なコスト低減にならないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点を有さない積層セラミックコンデンサー内部電極用ペーストに適したニッケル粉の製造方法の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明は、攪拌され、かつ所定温度に保持された反応槽内のスラリーに、含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、該スラリーが所定のpH値を保持するように、アルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成させ、該水酸化ニッケルを含むスラリーを連続的に槽外に払い出し、該スラリーを濾過し、水洗し、乾燥して水酸化ニッケルを得、これを加熱還元することによりニッケル粉を得るものであり、反応温度は40〜80℃の範囲で可能な限り一定温度とし、pHは8.0〜9.5の範囲で可能な限り一定とする。
【0008】本発明において、含ニッケル溶液を作成するのに使用しうるニッケル源としては塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等があり、アルカリ溶液を作成するためのアルカリ源としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がある。
【0009】本発明において、水酸化ニッケルを加熱還元するに際して、還元剤として水素を用い、還元温度を400〜550℃とすることが望ましい。
【0010】本発明の条件で得られるニッケル粉は粒径が0.1〜10μm、比表面積1〜11m2/gで粒度分布幅の狭い積層コンデンサー用ペーストに適したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明において、含ニッケル溶液を一定量づつ反応槽内のスラリーに添加し、アルカリ溶液を添加して該スラリーのpHを一定にするのは、こうすることにより液中のニッケルイオンが水酸化ニッケルとして析出してくる速度を一定化して、安定して均一な粒度の水酸化ニッケルを得、もって粒度分布の狭いニッケル粉を得るためである。本発明のように連続化せず、回分式で水酸化ニッケルを得ると、得られる水酸化ニッケルの粒度分布は広くなり、これを還元して得られるニッケル粉も粒度分布が広くなり、積層コンデンサー用ペーストを作成するのに適さないものとなる。
【0012】また、反応スラリーへの含ニッケル液の供給量は、反応槽の形状、容量、pH、反応温度等により異なるが、反応槽内での滞留時間が2〜10時間とするとよい結果が得られるので好ましい。
【0013】本発明において反応温度を40〜80℃とするのは、これより温度が低下すると得られるニッケル粉の粒度が大きくなり、積層コンデンサー用ペーストに用いるのに適さなくなるからである。また、これより温度が高くなると、得られるニッケル粉の性状に変化はないものの、エネルギーコストがかさみ、経済性を損なうことになるからである。また、安全上、作業環境上からも80℃を超えることは好ましくない。また、可能な限り一定温度とするのは、液中のニッケルイオンが水酸化ニッケルとして析出してくる速度を一定化し、得られる水酸化ニッケルの粒径を安定化させるためである。反応温度の大きな変動は水酸化ニッケルの粒径の安定化を阻むからである。
【0014】本発明において、pHを8.0〜9.5とするのは、これより酸性側ではスラリー内のニッケルイオンが水酸化ニッケルとして完全に析出せず、系外に払い出されてしまい、経済性を損なうことになるからである。また、9.5を越えると、析出した水酸化ニッケルが微細となり、後工程の濾過等の効率が悪化し、経済性を損なうからである。pHを可能な限り一定とするのは水酸化ニッケルの析出速度を一定とすることにより、生成する水酸化ニッケルの粒径の安定化を図るためである。
【0015】水酸化ニッケルの還元温度を400〜550℃とするのは、この温度範囲より低い温度で還元すると、還元不十分となりニッケル粉としての収率が低下し、高い場合には生成したニッケル粉同士が融着したり、焼結を起こしたりするからである。
【0016】なお、本発明の方法で得られる水酸化ニッケルは、含水率が65〜75質量%と高く、体積密度も低く、凝集しがたいため、乾燥後の粉砕は、通常不要である。
【0017】
【実施例】次に実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【0018】以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
(実施例1)図1に示した有効容積1.7リットルのジャケット付き反応槽に濃度1mol/lの塩化ニッケル溶液を、攪拌しつつ反応槽内の滞留時間が10時間となるような流量で定量ポンプを用いて供給した。この際、反応槽内のスラリー温度は60℃、pHは9.0に保つようにした。なお、アルカリ溶液としては濃度3.8mol/lの水酸化ナトリウム溶液を用いた。
【0019】生成した水酸化ニッケルスラリーを連続的に反応槽外に取り出し、濾過し、水洗して水酸化ニッケルを得た。そして、これを乾燥して水酸化ニッケル粉末を得た。
【0020】得た水酸化ニッケル粉を還元炉に入れ、窒素パージし、450℃まで昇温し、30分間保持した。その後、窒素と水素とを入れ替え、水素気流中で2時間保持し、水酸化ニッケルを還元した。その後放冷した。
【0021】得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径0.40μm、比表面積9.20m2/gであった。なお、本例で発生した排水としては塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0022】(実施例2)反応槽内での滞留時間を5時間、pHを8.5、反応温度を40℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径0.80μm、比表面積3.40m2/gであった。なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0023】(実施例3)反応槽内での滞留時間を2時間、pHを8.5、反応温度を60℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径6.20μm、比表面積5.07m2/gであった。なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0024】(実施例4)反応槽内での滞留時間を5時間、pHを9.0、反応温度を40℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径5.05μm、比表面積1.50m2/gであった。なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0025】(実施例5)反応槽内での滞留時間を2時間、pHを9.5、反応温度を40℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径2.14μm、比表面積1.56m2/gであった。なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0026】(実施例6)反応槽内での滞留時間を5時間、pHを9.5、反応温度を60℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径0.65μm、比表面積8.95m2/gであった。なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0027】(実施例7)反応槽内での滞留時間を2.5時間、pHを8.8、反応温度を55℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径0.82μm、比表面積3.79m2/gであった。なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0028】(実施例8)反応槽内での滞留時間を2時間、pHを8.8、反応温度を80℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径0.4μm、比表面積6.40m2/gであった。なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0029】(比較例1)反応槽内での滞留時間を2時間、pHを9.0、反応温度を20℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径11.2μm、比表面積1.48m2/gであった。しかし、このニッケル粉は粒度分布が広く、ニッケル粉の中に溶融焼結状態の粒子がみられ、積層セラミックコンデンサー内部電極用ペースト原料として用いるには不適当なものであることがわかった。
【0030】なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0031】(比較例2)反応槽内での滞留時間を10時間、pHを8.5、反応温度を20℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径8.12μm、比表面積2.85m2/gであった。しかし、このニッケル粉は粒度分布が広く、ニッケル粉の中に溶融焼結状態の粒子がみられ、積層セラミックコンデンサー内部電極用ペースト原料として用いるには不適当なものであることがわかった。
【0032】なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0033】(比較例3)反応槽内での滞留時間を5時間、pHを9.5、反応温度を20℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の性状を測定したところ、平均粒径9.63μm、比表面積1.84m2/gであった。しかし、このニッケル粉は粒度分布が広く、ニッケル粉の中に溶融焼結状態の粒子がみられ、積層セラミックコンデンサー内部電極用ペースト原料として用いるには不適当なものであることがわかった。
【0034】なお、本例で発生した排水も塩化ナトリウム溶液であり、中和処理後の処理水中のニッケル濃度は0.1mg/l以下であった。
【0035】
【発明の効果】本発明では、各種条件を限定することによりニッケルイオンが水酸化ニッケルとして析出する速度を一定化するため、得られるニッケル粉は、その粒度が0.1〜11.0μmとすることが出来、かつ粒度分布の狭いものとなる。また、有機バインダーに対する分散性もよく、良好な積層セラミックコンデンサー内部電極用ペーストの作成を可能とする。また、錯化剤やヒドラジン等を用いないため、発生する廃水の処理は中和処理のみでよく、簡便、且つ安価となる。
【出願人】 【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
【住所又は居所】東京都港区新橋5丁目11番3号
【出願日】 平成14年1月16日(2002.1.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−213310(P2003−213310A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−7490(P2002−7490)