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【発明の名称】 粉末射出成形方法
【発明者】 【氏名】平工 達也
【住所又は居所】静岡県浜松市中沢町10番1号 ヤマハ株式会社内

【要約】 【課題】寸法精度が優れた、かつ製造コストが安価な粉末射出成形方法を得ることにあり、金属粉末等をより微細化した粉末としても、バインダーを増量することなく、寸法精度が優れた品質良好な金属製品あるいはセラミック製品を安価な製造コストで製造可能とする。

【解決手段】金属粉末またはセラミック粉末にバインダーを加えて混練りして混和物とし、この混和物をペレットととし、このペレットを射出成形して射出成形品を得た後、脱バインダーし、焼結して焼結成形品を得る粉末射出成形方法において、前記射出成形時にバインダーを発泡させて射出成形品内に気泡を形成せしめる。この発泡には、プロパン等の揮発性液化ガスからなる発泡剤を用い、この発泡剤をペレットに加圧含浸するか、あるいは二酸化炭素等の不活性ガスからなる発泡剤を用い、これをガス状態又は超臨界ガス状態で射出成形時に、射出成型機内に供給する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属粉末またはセラミック粉末とバインダーとの混和物を射出成形し、ついでこれを焼結して成形品を得る粉末出成形方法において、前記射出成形時に前記混和物を発泡させることを特徴とする粉末射出成形方法。
【請求項2】 発泡がプロパン、ブタン、ヘキサン等の揮発性液化ガスからなる発泡剤を用いるものであって、この発泡剤を混和物に加圧含浸することを特徴とする請求項1に記載の粉末射出成形方法。
【請求項3】 発泡が窒素、二酸化炭素等の不活性ガスからなる発泡剤を用いるものであって、これをガス状態又は超臨界ガス状態で射出成形時に、射出成型機内に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の粉末射出成形方法。
【請求項4】 射出成形後の成形品における気泡の占有率が成形品の体積の1/2以下であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の粉末射出成形方法。
【請求項5】 発泡時の気泡の平均直径が50μm以下であることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の粉末射出成形方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属粉末またはセラミック粉末とバインダ−との混和物を射出成形した後、これを焼結して、所望する形状の金属製品またはセラミック製品を得る粉末射出成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、金属製品あるいはセラミック製品を得る一方法として、粉末射出成型法と称する方法が知られている。この方法は、例えば所定の金属粉末あるいはセラミック粉末と、樹脂又はワックス等のバインダーとを混練機で混合して混和物とした後、これを造粒機にかけてペレットとし、次いでこのペレットを所望する形状の成形型を配した射出成型機に導入して所望形状の成形品を得る。
【0003】次いで、この成形品を加熱炉において加熱してバインダーを除去したのち、さらに加熱、焼結して焼結成形品を得た後、適宜仕上後処理加工を施して、所望する形状の金属製品あるいはセラミック製品を製造するものである。
【0004】ところで、この粉末射出成形方法における金属粉末等に混合するバインダーの量は、混和物全体に対して約30〜70容量%とされている。そのため、焼結成形品の体積は、焼結前の成形品に比べて、大きく減少する。そこで、金属製品等の寸法精度や焼結性を高めるために粒径の小さい金属粉末等を用いることが考えられるが、金属粉末等の粒径を小さくすると、図3に示すごとく金属粉末等の表面積が大きくなるために、バインダーの量が多く必要となる。
【0005】すなわち、図3(A)に図示するように、本来半径rの金属粉末n個で、全容量Wを占める金属粉末1を、図3(B)のように該粉末の半径を1/zの小径にすると、同容量Wの粉末の全表面積は、本来の半径rの金属粉末の表面積のz倍となる。そこで、金属粉末1の粒径を小さくすると、これらを結合せしめるためのバインダー2が多く必要となり、バインダー2の量が少ないと射出成型機での成形の際、金属粉末1が滑らかに流れなくなって、所望する形状を首尾良く出すことが出来なかったり、ショートショットになったり、クラックが発生したりする不都合が起きることとなっていた。
【0006】一方、成形時に使用されるバインダー2の量が増えると、その増加量はそのまま製造コストに影響することとなり、その上、加熱炉での脱バインダー工程時にバインダーの分解物が増加し、その処理装置や回収装置をより大型化する必要が生じることとなる、問題があった。
【0007】さらに、バインダー量が増加すると、バインダーの主成分が樹脂であるので、射出成型機での成形の際、特に厚みがあるものにあっては、樹脂成分の成形収縮によって「ヒケ」が発生する。これは、成形物の厚みが増せば増すほど大きくなり、変形が大きくなったり、平面度を適切に確立することが出来ないという問題が発生することとなっていた。このような不都合は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどのセラミック粉末を原料とする粉末射出成形方法においても同様であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、寸法精度が優れた、かつ製造コストが安価な粉末射出成形方法を得ることにあり、そのために金属粉末等を、より微細化した粉末としても、バインダーを増量せしめることなく、寸法精度が優れた品質良好な金属製品あるいはセラミック製品を安価な製造コストで製造可能とする粉末射出成形方法を提供することを本発明の解決すべき課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、金属粉末またはセラミック粉末とバインダーとの混和物を射出成形し、ついでこれを焼結して成形品を得る粉末射出成形方法において、前記射出成形時に前記混和物を発泡させることを特徴とする粉末射出成形方法である。請求項2にかかる発明は、発泡がプロパン、ブタン、ヘキサン等の揮発性液化ガスからなる発泡剤を用いるものであって、この発泡剤を混和物に加圧含浸することを特徴とする請求項1に記載の粉末射出成形方法である。
【0010】請求項3にかかる発明は、発泡が窒素、二酸化炭素等の不活性ガスからなる発泡剤を用いるものであって、これをガス状態又は超臨界ガス状態で射出成形時に、射出成型機内に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の粉末射出成形方法である。請求項4にかかる発明は、射出成形後の成形品における気泡の占有率が成形品の体積の1/2以下であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の粉末射出成形方法である。請求項5にかかる発明は、発泡時の気泡の平均直径が50μm以下であることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の粉末射出成形方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の粉末射出成形方法の実施の形態について、金属粉末を用いた例により詳しく説明する。本発明の粉末射出成形方法の第一の例は、まず所定の金属粉末と樹脂又はワックス等のバインダーとを混練機に導入してこれらを混練して混和物とする(混練工程)。次いで、この混和物を造粒機にかけてペレットとする(ペレット化工程)。
【0012】その後、このペレット化工程で得られたペレットに発泡剤を含浸せしめる(発泡剤含浸工程)。この発泡剤含浸工程で使用する発泡剤としてはプロパン、ブタン、ヘキサン等の低沸点の炭化水素等の揮発性液化ガスが使用され、例えばオートクレープに前記ペレットを収容して前記発泡剤を加圧液化状態にして導入して、ペレットに液状の発泡剤をバインダー重量に対して5〜20wt%含浸せしめる。この含浸時の揮発性液化ガスの圧力は、5〜20MPaとされ、温度は10〜40℃とされる。
【0013】次いで、この発泡剤を含浸せしめたペレットを、所望形状の成形型を配した射出成型機内に導入して所望する形状の成形品を得る(射出成形工程)。この射出成形工程では、金属粉末のバインダーによる所望形状の形状保持と共に、前記含浸工程で含浸せしめられた発泡剤が射出成型時の熱でペレット内で気化膨張して、図1に図示する射出成形品の構造モデル図のようにバインダー2を壁とした気泡3が生じる。
【0014】この結果、金属粉末間の結合のために必要な実質的なバインダーの量が少なくて済む。しかも、発泡しながら成形せしめるので、バインダーの量が少なくても、金属粉末とバインダーの混和物は、流れが良好に保たれて射出され、成形型への充填は不足することなく充分満足し得る状態で行うことが出来る。
【0015】次いで気泡を有する成形品を加熱炉に収容して、加熱してバインダーを除去するとともに脱気泡する(脱バインダー工程)。その後、さらに水素等の非酸化性雰囲気中で加熱し、金属粉末を焼結せしめて焼結成形品を得る(焼結工程)。そして、該焼結成形品を、適宜必要に応じて仕上後加工を施して、所望する形状の金属製品を製造する。
【0016】そして、上記射出成形工程での発泡による気泡3の形成に当たって、気泡3の平均径を50μm以下、好ましくは30μm以下にすることが好ましく、この気泡3が50μmを越えると、焼結工程での焼結後の金属粉末同士の結合が弱くなり、強度が低下する不都合が生ずる。又、射出成形工程で形成せしめる気泡3の成形品の全体積中に占める割合として、成形品の全体積の1/2以下、好ましくは 〜 にすることが好ましく、1/2を越えると、焼結の際、焼結成形品の密度が上がらず脆弱となる。
【0017】次に、本発明の粉末射出成形方法の第2の例を説明する。この第2の例の粉末射出成形方法における特徴は、上記第1の例での粉末射出成形方法が、発泡剤の添加を、ペレットへの揮発性液化ガスの含浸によって行っていたのに対して、この第2の例では、この含浸工程を省略して、発泡剤をペレット化工程で得られたペレットを射出成形する射出成型機のシリンダー内に直接供給して成形すると同時にバインダーに気泡を形成せしめる点にある。
【0018】この時の発泡剤としては、窒素や二酸化炭素の不活性ガスを用い、これを高圧状態あるいは超臨界状態でシリンダー内に圧入、供給する。この不活性ガスの圧入時の圧力は、成型機の内部圧力よりも1〜5MPa高い値、温度は成型機中の材料温度とほぼ同じ温度とされ、シリンダー内への圧入量はバインダー重量に対して6〜8wt%とされる。具体的な圧入は、不活性ガスの加圧供給装置からの導管を直接射出成型機のシリンダーの中間部に連結し、これを経由してシリンダー内に送り込むことで行われる。
【0019】これにより、射出成型機より導出される射出成形品中に、図1に図示するような気泡3が形成され、気泡3を有する射出成形品が得られる。しかも、この実施の形態で形成される気泡3は、その径がきわめて小さく均一な状態で形成されて、後工程の焼結工程を経て得られる成形金属製品として密度の高い上品質の製品を得ることが出来る。
【0020】この第2の実施の形態においても、上記第1の例と同様に、射出成形工程での発泡による気泡3の形成に当たって、気泡3の平均径を50μm以下、好ましくは30μm以下にすることが好ましく、この気泡3が50μmを越える、焼結工程での焼結後の金属粉末同士の結合が弱くなり、強度が低下する不都合が生ずる。又、射出成形工程で形成せしめる気泡3の成形品の全体積中に占める割合として、成形品の全体積の1/2以下、好ましくは 〜 にすることが好ましく、1/2を越えると、焼結の際、焼結成形品の密度が上がらず脆弱となる。
【0021】本発明の粉末射出成形方法は上記した実施の形態で実施されるが、金属粉末としては、鉄、チタン、ニッケル、ステンレス、コバール等のあらゆる金属材料単独又は複数種混合して用いられ、更にジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア等のセラミック材料の成形にも適用し得る。又、バインダーとして使用できる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系、アクリル系、スチレン系、アセタール系樹脂等の一般的な粉末射出成形に用いられる熱可塑性樹脂が挙げられる。また、バインダーとして、上記樹脂にパラフィンワックス等のワックスを混合して使用することも好ましい。
【0022】
【実施例】本発明の実施例として、図2に図示するコバール合金製の器物を、第1の例による射出成形方法によって製造し(実施例1)、また第2の例の射出成形方法によっても製造した(実施例2)。
<実施例1>実施例1の製造方法の各工程の操作仕様諸元は以下の通りである。
●混練化工程・金属粉末:コバール(KOBAR)合金Fe粉末:平均粒径2μm、54wt%Co粉末:平均粒径2μm、17wt%Ni粉末:平均粒径2μm、29wt%・バインダー:アクリル樹脂+パラフィンワックス金属粉末を66容量%に対してバインダーを34容量%の割合で混合混練して混和物とした。
【0023】●ペレット化工程上記混和物を造粒機にかけて粒径2mmのペレットを得た。
●発泡剤含浸工程このペレットをオートクレープ内に収容して、これに発泡剤として加圧した液化ブタンを導入して、ペレットにバインダー重量に対して10wt%含浸せしめた。
【0024】●射出成形工程発泡剤として液化ブタンを含浸せしめたペレットを射出成型機に導入し、温度180℃に加熱して、成形品中に形成される気泡Vの大きを平均径30μmとし、かつ該気泡3が成形品中に占める割合を25容量%になるよう調整して射出成形した。
【0025】●焼結工程平均径30μmの気泡3が占有容量25容量%で形成されている成形品を加熱炉に収容して、窒素雰囲気中で550℃の温度に加熱してバインダーを除去し脱気泡した後、水素雰囲気に置換し、水素雰囲気下で1400℃の温度に加熱処理して金属材料粉末を焼結せしめて焼結成形品を得た。
●仕上げ後加工工焼結成形品表面を仕上げ修正処理加工して、図2に図示する形状のコバール合金製製品Mを得た。
【0026】以上の実施例1での射出成形方法では、使用した平均粒径2μmの金属粉末で焼結せしめるのに必要とされるバインダーの量より約1/2の使用量で充分目的製品を製造可能であることが確認し得た。又、焼結工程での加熱炉におけるバインダーの除去に使用する有機物吸収フィルターの寿命を2倍に延長せしめることが出来た。その上、バインダーの量が少なくて済むことから焼結成形品のヒケが小さくなり、焼結成形品の底面の平面度を三次元測定器で測定したところ平均7μmの低い値であり、焼結製品の平面度が向上し、形状が安定した状態で得られる効果が得られた。
【0027】<実施例2>実施例2の製造方法の各工程の操作仕様諸元は以下の通りである。
●混練化工程・金属粉末:コバール(KOBAR)合金Fe粉末:平均粒径2μm、54wt%Co粉末:平均粒径2μm、17wt%Ni粉末:平均粒径2μm、29wt%・バインダー:アクリル樹脂+パラフィンワックス金属粉末を66容量%に対してバインダーを34容量%の割合で混合混練して混和物とした。
【0028】●ペレット化工程上記混和物を造粒機にかけて粒径2mmのペレットを得た。
●射出成形工程ペレット化工程で得られたペレットを射出成型機に導入すると共に、発泡剤として、圧力20MPa、温度180℃の超臨界状態の炭酸ガスを射出成型機のシリンダー内に圧入し、射出成形品中に平均径20μmの大きさの気泡Vを形成せしめると共に、該気泡3の成形品中に占める割合を25容量%になるよう調整して射出成形した。
【0029】●焼結工程平均径20μmの気泡Vが占有容量25容量%で形成されている成形品を加熱炉内に収容して、窒素雰囲気中で550℃の温度に加熱してバインダーを除去し脱気泡した後、水素雰囲気に置換し、水素雰囲気下で1400℃の温度に加熱処理して金属粉末を焼結せしめて焼結成形品を得た。
●仕上げ後加工工程焼結成形品の表面を仕上げ修正処理加工して、図2に図示する形状のコバール合金製製品Mを得た。
【0030】以上の実施例2での射出成形方法では、実施例1と同様に、使用した平均粒径2μmの金属粉末を効果的に結合せしめるのに必要とされるバインダーの量より約1/2の使用量で充分目的製品を製造可能であることが確認し得た。又、焼結工程での加熱炉におけるバインダーの除去に使用する有機物吸収フィルターの寿命を2倍に延長せしめることが出来た。その上、バインダーの量が少なくて済むことから焼結成形品のヒケが小さくなり、焼結成形品の底面の平面度を三次元測定器で測定したところ平均5μmの低い値であり、焼結成形品の平面度が向上し、形状が安定した状態で得られる効果が得られた。
【0031】
【発明の効果】本発明の粉末射出成形方法は、射出成形工程において、発泡剤により射出成形品内に気泡を形成せしめるようにしたので、バインダーの使用量を低減せしめることが出来て製造コストを安価にするが出来るばかりでなく、バインダーの使用量が少なくても射出成型機内や、成形金型内で混和物の流動性が良好に保たれて密度の高い成形製品を得ることが出来る。
【0032】また、本発明の成形方法では、射出成形工程で、発泡剤により射出成形品内に気泡空孔を形成せしめるようにしたので、微細な金属粉末等を使用してその表面積が増加しても、バインダーを増量せしめることなく成形製品を得ることが出来る。これにより微細な金属粉末等の使用が可能になり、成形方法寸法精度が優れた、品質良好な成型製品を安価な製造コストで製造可能とすることが出来る。しかもヒケの問題も解決して平面度の高い製品を得ることが出来る効果を奏する。
【0033】さらに、バインダーの使用量の低減により、脱バインダーで発生する有機物質の処理装置や回収装置の使用寿命を延長せしめることが出来るばかりでなく、これら装置の装置規模をコンパクトにすることが出来る。
【出願人】 【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
【住所又は居所】静岡県浜松市中沢町10番1号
【出願日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外1名)
【公開番号】 特開2003−213304(P2003−213304A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−14551(P2002−14551)