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【発明の名称】 粉末成形体およびその製造方法並びに多孔質焼結体の製造方法
【発明者】 【氏名】馬場 敬明
【住所又は居所】愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会社豊田自動織機内

【氏名】岸 英治
【住所又は居所】愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会社豊田自動織機内

【氏名】谷澤 元治
【住所又は居所】愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会社豊田自動織機内

【要約】 【課題】気孔率の大きな多孔質焼結体を製作する際に必要となる、取扱性に優れた粉末成形体を提供する。

【解決手段】少なくとも金属粉末と低温軟化性のバインダとを混合した混合粉末からなる粉末成形体であって、バインダとして粉末冶金用潤滑剤を2.5質量%以上含み、粉末成形体中で金属粉末の占める金属粉末占有体積率が40〜70体積%であることを特徴とする取扱性に優れた粉末成形体。低温軟化性のバインダを適量用いることにより、金属粉末占有体積率の低い粉末成形体であっても型崩れ等することがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも金属粉末と全体を100質量%としたときに2.5質量%以上の低温軟化性のバインダとを混合した混合粉末を成形型に充填する充填工程と、該成形型に充填された混合粉末中のバインダを軟化または溶融させ該混合粉末を加圧成形して粉末成形体とする成形工程と、該粉末成形体を該成形型から取出す取出工程とを備え、該取出された粉末成形体は、全体を100体積%としたときに前記金属粉末の占める金属粉末占有体積率が40〜70体積%であり取扱性に優れることを特徴とする粉末成形体の製造方法。
【請求項2】前記成形工程は、前記充填工程後の混合粉末を加熱して前記バインダを軟化または溶融させる加熱工程と、該加熱工程で加熱された該混合粉末を加圧する加圧工程とからなる請求項1記載の粉末成形体の製造方法。
【請求項3】前記バインダは、粉末冶金用潤滑剤からなる請求項1記載の粉末成形体の製造方法。
【請求項4】前記粉末冶金用潤滑剤は、ステアリン酸である請求項3記載の粉末成形体の製造方法。
【請求項5】前記金属粉末は、鉄(Fe)を主成分とする鉄系粉末である請求項1記載の粉末成形体の製造方法。
【請求項6】少なくとも金属粉末と低温軟化性のバインダとを混合した混合粉末からなる粉末成形体であって、前記バインダは、前記混合粉末の全体を100質量%としたときに2.5質量%以上含まれ、前記粉末成形体の全体を100体積%としたときに前記金属粉末の占める金属粉末占有体積率が40〜70体積%であり取扱性に優れることを特徴とする粉末成形体。
【請求項7】2〜5mmの肉厚(t)からなる薄肉部を有する請求項6に記載の粉末成形体。
【請求項8】外径(D)に対する肉厚(t)の比である肉厚比(t/D)が0.01〜0.1の円筒状をした請求項6または7に記載の粉末成形体。
【請求項9】少なくとも金属粉末と全体を100質量%としたときに2.5質量%以上の低温軟化性のバインダとを混合した混合粉末を成形型に充填する充填工程と、該成形型に充填された混合粉末中のバインダを軟化または溶融させ該混合粉末を加圧成形して粉末成形体とする成形工程と、該粉末成形体を該成形型から取出す取出工程と、該取出工程で取出された、全体を100体積%としたときに該金属粉末の占める金属粉末占有体積率が40〜70体積%である粉末成形体を加熱し、該バインダを除去すると共に該金属粉末を焼結させて多孔質焼結体とする焼結工程と、を備えることを特徴とする多孔質焼結体の製造方法。
【請求項10】前記金属粉末はFeを主成分とする鉄系粉末であり、前記多孔質焼結体はシリンダブロックに鋳込まれてシリンダライナを形成する鉄基多孔質焼結体である請求項9記載の多孔質焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多孔質焼結体の効率的な生産に有効な粉末成形体とその製造方法並びにその多孔質焼結体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】軽量化、高性能化、リサイクル化等の観点から、各種部材は、例えば、鉄系材料製からアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属製へと移行されつつある。ただ、全体をそれらの合金材料とするのではなく、強度、剛性、摺動性、耐久性等の様々な理由から、複合材料とされたり、部分的に異種材料が鋳込まれたりすることが多い。例えば、エンジンのシリンダブロックの場合、外装部分はアルミニウム合金のダイキャスト成形品であっても、シリンダボアには、鋳鉄製ライナが鋳込まれる。もっとも、このような鋳鉄製ライナは、アルミニウム合金に対して重く、熱伝導性等も劣り、また、アルミニウム合金との間で界面剥離等も生じ得るため、必ずしも好ましいものではない。そこで、シリンダライナ部分にセラミック繊維のプリフォームを鋳込んで金属基複合材料(MMC)とすることが、例えば、特開2000−204454号公報等に開示されている。しかし、セラミック繊維のプリフォームは剛性や強度等の点から、大きな荷重や面圧が作用するシリンダライナには十分ではない。
【0003】次に、鉄系金属粉末を焼結させた多孔質焼結体をそのライナ部分に鋳込むことが考えられている。例えば、特開昭63−312947号公報、特開平3−189063号公報、特開平3−189066号公報、特許第3191665号公報等にそれに関連した開示がある。これらの公報には、気孔率が45〜81%(特開平3−189063号公報)または体積率が30〜88%(特許第3191665号公報)等の多孔質焼結体に関する記載がある。
【0004】しかし、そのような多孔質焼結体を製造するに際して必要となる、粉末成形体やその製造方法に関して、何ら詳細な記載がなされていない。その記載があるとしても、特開平3−189066号公報には「金属粉末を容器に自然充填または加振充填し、特に加圧することなく焼結する」とあるにすぎない。ちなみに、このような自然充填をしただけでは、粉末成形体を単体で取出すことは当然できない。そのため、充填容器ごと加熱し焼結させるしかない。しかし、これでは効率的に焼結工程を行えず、多孔質焼結体の工業的な生産性を確保できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】多孔質焼結体をシリンダライナ等として使用する場合、先ず、気孔率が大きなこと、言換えると、金属部分の占める占有体積率が小さいことがその多孔質焼結体には求められる。これにより、アルミニウム合金等の溶湯が多孔質焼結体に含浸し易くなるからである。特に、ダイキャスト等でシリンダブロックを大量生産する場合、優れた含浸性が要求される。さらに、その含浸性の向上に加え、全体的な軽量化や熱伝導性等を向上させるためにも、多孔質焼結体は薄肉であることが求められる。
【0006】ところが、このような多孔質焼結体を効率的に製造することは従来容易ではなかった。その製造途中で必要となる粉末成形体を得ることが難しかったからである。具体的には、金属粉末の占有体積率を低下させたり薄肉とした粉末成形体は、壊れやすく取扱性が悪くなるからである。勿論、このような事情は多孔質焼結体をシリンダライナとして用いる場合に限ったことではない。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みて為されたものである。つまり、金属粉末の占有体積率が小さくても、また、薄肉であったとしても、取扱性に優れる粉末成形体を提供することを目的とする。また、その粉末成形体の製造方法およびそれを利用した多孔質焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、低温軟化性のバインダを金属粉末に所定量以上混合することを思い付き、本発明を完成させるに至ったものである。
(粉末成形体の製造方法)すなわち、本発明の粉末成形体の製造方法は、少なくとも金属粉末と全体を100質量%としたときに2.5質量%以上の低温軟化性のバインダとを混合した混合粉末を成形型に充填する充填工程と、該成形型に充填された混合粉末中のバインダを軟化または溶融させ該混合粉末を加圧成形して粉末成形体とする成形工程と、該粉末成形体を該成形型から取出す取出工程とを備え、該取出された粉末成形体は、全体を100体積%としたときに前記金属粉末の占める金属粉末占有体積率が40〜70体積%であり取扱性に優れることを特徴とする。
【0009】これにより、単独で持運びできるような、取扱性に優れた粉末成形体が得られた。これは次のように考えることができる。本発明では、低温軟化性のバインダを、混合粉末全体の2.5質量%以上という比較的多く配合している。そして、成形工程中でこのバインダを加熱等すると、このバインダは軟化または溶融する。そして、バインダが金属粉末の各構成粒子をまるで包込むかの如く被覆して、各構成粒子同士を巧く付着させるのではないかと考えられる。そして、その結果、金属粉末占有体積率が40〜70体積%という小さい粉末成形体であったとしても、崩壊等せずに十分な取扱性を発揮するに至ったと思われる。いずれにしても、その優れた取扱性により、気孔率の大きな多孔質焼結体を、工業的に効率よく比較的安価に製作できるようになったのである。
【0010】(粉末成形体)本発明は、上述の製造方法に限らず、その粉末成形体としても把握できる。すなわち、本発明は、少なくとも金属粉末と低温軟化性のバインダとを混合した混合粉末からなる粉末成形体であって、前記バインダは、前記混合粉末の全体を100質量%としたときに2.5質量%以上含まれ、前記粉末成形体の全体を100体積%としたときに前記金属粉末の占める金属粉末占有体積率が40〜70体積%であり取扱性に優れることを特徴とする粉末成形体としても良い。
【0011】(多孔質焼結体の製造方法)さらに、本発明は、上述内容を踏まえて多孔質焼結体の製造方法としても把握することができる。すなわち、本発明は、少なくとも金属粉末と全体を100質量%としたときに2.5質量%以上の低温軟化性のバインダとを混合した混合粉末を成形型に充填する充填工程と、該成形型に充填された混合粉末中のバインダを軟化または溶融させ該混合粉末を加圧成形して粉末成形体とする成形工程と、該粉末成形体を該成形型から取出す取出工程と、該取出工程で取出された、全体を100体積%としたときに該金属粉末の占める金属粉末占有体積率が40〜70体積%である粉末成形体を加熱し、該バインダを除去すると共に該金属粉末を焼結させて多孔質焼結体とする焼結工程とを備えることを特徴とする多孔質焼結体の製造方法としても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。なお、以下に述べる内容は、本発明に係る粉末成形体、その製造方法および多孔質焼結体の製造方法のいずれにも適宜該当するものである。
(1)バインダ低温軟化性のバインダとして、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)等の樹脂や脂肪酸エステル類、オレイン酸系、ポリエチレンワックス、カルナバワックス等のワックスまたは潤滑剤等がある。
【0013】これらの中でも、例えば、ステアリン酸や、ステアリン酸亜鉛等のアマイド系ワックスからなる粉末冶金用潤滑剤をバインダとして用いると好適である。これらは安価であり、使用が容易である。また、それらは焼結工程で容易に除去され、炉体の汚染も抑制、防止できる。
【0014】混合粉末中におけるバインダの配合量は、粉末成形体中の金属粉末占有体積率を考慮して決定すると良い。例えば、その占有体積率をより低くする場合には、より多くのバインダを入れる方が好ましく、バインダを4質量%以上、5質量%以上等とすると良い。
【0015】金属粉末占有体積率が本発明の範囲内である場合、バインダが2.5質量%未満では粉末成形体の取扱性が悪いが、それが3質量%前後になると十分な取扱性が得られることを本発明者は確認している。そして、バインダは焼結工程で除去されることを考えると、上限を4質量%以下、さらには3.5質量%以下にすることが好ましい。
【0016】なお、本発明でいうバインダの「低温」とは、成形工程でバインダが軟化または溶融する程度の温度という意味である。従って、バインダの種類によりその温度域は異なる。もっとも、通常は60〜150℃程度であり、予熱または加熱した成形型中でバインダが軟化または溶融すれば十分である。
【0017】(2)金属粉末金属粉末は、多孔質焼結体を構成する主原料である。この金属粉末は、Fe、Al、Mg等の金属単体からなる純金属粉末でも、合金粉末でも、それらの混合粉末でも良い。また、本発明でいう金属粉末には、炭素(C)、ホウ素(B)等の金属以外の各種合金元素粉末またはそれらの含有粉末、さらにはセラミックス粉末のような各種化合物からなる粉末等を含めて考え得る。なお、金属粉末がFeを主成分とする鉄系粉末であると、入手が容易で低コストである。
【0018】金属粉末は、アトマイズ粉、還元粉等いずれでも良く、粒形状等は問わない。しかし、多孔質焼結体を製造することを考慮すると、あまりにも小さい粒径の微粉は好ましくない。そこで、例えば、粒径が40〜180μm程度のものを使用すると好ましい。
【0019】(3)粉末成形体本発明に係る粉末成形体は、上述のバインダと金属粉末とから主になるが、それら以外の添加剤等を別に含んでも良い。また、粉末成形体中には気孔等も適宜存在しても良い。いずれにしても、粉末成形体中の金属粉末占有体積率が40〜70体積%であると良い。金属粉末占有体積率が40体積%未満では、取扱性が悪いし、一方、70体積%を超えると多孔質焼結体の気孔率が低下して好ましくない。金属粉末占有体積率は、45〜65体積%、45〜60体積%、さらには50体積%を目標に45〜55体積%程度とすると良い。なお、本明細書でいう体積%とは、金属粉末の真密度に対する粉末成形体の嵩密度の割合である。
【0020】本発明は、比較的破壊し易い薄肉の粉末成形体に適用することが特に好ましい。具体的には、例えば、2〜5mmの肉厚(t)からなる薄肉部を有する粉末成形体やその製造方法に、本発明は好適である。また、例えば、外径(D)に対する肉厚(t)の比である肉厚比(t/D)が0.01〜0.1の円筒状をした粉末成形体やその製造方法に、本発明は好適である。
【0021】(4)成形工程成形工程は、低温軟化性のバインダが軟化または溶融する状態で行う。そのために、予め混合粉末を加熱しておいても、成形型(金型)を予熱しておいても、後述の加圧成形と同時にその成形型を加熱して行っても良い(加熱工程)。このときの加熱温度は、前述したように、混合粉末中のバインダが軟化する温度以上となるようにすれば良い。例えば、バインダとしてステアリン酸(融点:60℃)を用いる場合なら、成形型を65〜80℃程度に加熱すれば良い。
【0022】次に、このような温間状態で混合粉末を加圧して成形すると好ましい(加圧工程)。この際、本発明では金属粉末占有体積率を低くしているため、比較的弱い加圧力で十分である。例えば、純鉄粉と3質量%のステアリン酸を混合した混合粉末で金属粉末占有体積率50体積%を狙う場合なら、50MPa程度(0.5ton/cm2)程度で十分である。このように本発明でいう成形工程は、充填工程後の混合粉末を加熱してバインダを軟化または溶融させる加熱工程と、この加熱工程で加熱された混合粉末を加圧する加圧工程とに分けて考えることもできる。
【0023】ところで、上記加圧工程における加圧力は、一般的な粉末成形体を製作する場合の加圧力(数百MPa程度)に較べて著しく低い圧力である。一般的な粉末成形の場合であれば、緻密な粉末成形体が望まれるため、加圧力を大きくするのが通常である。そして、得られた粉末成形体は、それだけで十分な強度を有し、粉末成形体の取扱性が問題となることはそもそもない。勿論、このような加圧成形の場合でも、粉末冶金用潤滑剤は配合される。しかし、それは金属粉末と金型との間のかじり防止や金属粉末粒子間の滑りを良くするために配合され、その量は多くとも1質量%以下である。何故なら、緻密化を図るには潤滑剤が少ない程好ましいからである。また、焼結工程で除去されることを考えても、潤滑剤は少ないほど好ましい。
【0024】このような従来の常識に反して、本発明では、例えば、その粉末冶金用潤滑剤(ステアリン酸等)を3質量%程度も配合して、それをバインダとして有効に活用している。その結果、加圧力を低くして粉末成形した場合であっても、容易に型崩れ等を生じず、取扱性に優れる粉末成形体が得られた。
【0025】(5)用途本発明の粉末成形体は、言うまでもなく多孔質焼結体の製造に使用される。もっとも得られた多孔質焼結体の用途は、種々様々である。例えば、薄肉円筒状の鉄基多孔質焼結体は、前述したシリンダライナとして使用できる。気孔率が多い鉄基多孔質焼結体は、アルミニウム合金等の含浸性がよい。このため、溶湯鍛造等を用いるまでもなく、ダイカストによっても鉄基多孔質焼結体を鋳込んだシリンダブロックを生産性よく製造することができる。そして、本発明を利用することで優れた多孔質焼結体も容易に低コストで製造できる。
【0026】鋳込む場合以外にも、多孔質焼結体は複合材料の基材ともなり得る。例えば、多孔質焼結体の気孔部分に異種材料である軟質材料や摺動性に優れる潤滑材料(固体潤滑剤)を含浸または埋込んで軸受等の摺動部材とすることもできる。さらに、基材として使用する場合の他に、無数に存在する気孔を利用して多孔質焼結体をフィルター等に利用することもできる。
【0027】
【実施例】次に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
(粉末成形体および多孔質焼結体の製造)アルミニウム合金製エンジンブロックのシリンダ部に鋳込むシリンダライナ用多孔質焼結体を以下のようにして製造した。
(1)実施例1先ず、原料として、金属粉末である還元鉄粉(純鉄:川崎製鉄製KIP240M)と、グラファイト(C)と、バインダであるステアリン酸(融点:60℃)からなる粉末冶金用潤滑剤(大日化学ダイワックスW−02)とを用意した。これらをFe:96.5質量%、C:0.5質量%、ステアリン酸:3質量%の割合で混合した(混合工程)。この混合は、ミリング装置を用いて0.5時間行った。
【0028】次に、これを円筒形状のキャビティを有する成形型(金型)に自然充填した(充填工程)。このとき、成形型は予めオーブンで、バインダの融点以上である80℃に加熱しておいた。従って、混合粉末中のバインダは、充填後直ちに軟化を開始した(加熱工程)。
【0029】次に、成形型に充填した混合粉末を、油圧プレスで上下方向から加圧した(加圧工程)。このときの加圧力は50MPaとした。こうして得られた粉末成形体を成形型から取出した(取出工程)。得られた粉末成形体は、外径77mm×高さ130mm×板厚3mmである。この粉末成形体は、素手で十分に取扱える強度を有しており、多少の振動等で崩壊することはなかった。
【0030】この粉末成形体の金属粉末占有体積率を調べたところ、約50体積%であった。なお、本発明者が加圧力を調整して種々の金属粉末占有体積率をもつ同形状の粉末成形体を製作したところ、取扱い可能な金属粉末占有体積率は、40体積%が限界であった。次に、前記粉末成形体を真空炉の中に入れて、真空または窒素ガスの雰囲気で1050℃×0.5時間加熱して焼結させた(焼結工程)。こうして、前記した粉末成形体と同形状で気孔率が約50体積%の多孔質焼結体が得られた。
【0031】(2)実施例2原料として、金属粉末である合金鋼粉(Fe−3%Cr−0.3%V−0.3%Mo−0.1%:川崎製鉄製KIP30CRV)と、グラファイト(C)と、前記ステアリン酸からなる粉末冶金用潤滑剤とを用意した。これらを合金鋼:96.3質量%、C:0.7質量%、ステアリン酸:3質量%の割合で実施例1と同様に混合した(混合工程)。また、以降の工程も実施例1と同様に行い、約50体積%の多孔質焼結体を得た。
【0032】(評価)上記実施例1および実施例2で得られた多孔質焼結体を、アルミニウム合金(JIS ADC12)に鋳込んでエンジンブロックを製作した。このエンジンブロックは、ダイカストにより製造した。ダイカストの条件は、溶融温度680℃、金型温度250℃、加圧力100MPaとした。次に、そのエンジンブロックのシリンダボア部分を切断して、アルミニウム合金の多孔質焼結体への含浸性を調べた。採取した試料は、多孔質焼結体の部分を含む20mm×20mm×5mmである。
【0033】実施例1の試料(エッチングなし)を顕微鏡で観察した写真を図1に示す。この写真から、アルミニウム合金が多孔質焼結体中へ十分に含浸していることが分る。なお、この写真中で、縞模様のある白い部分がアルミニウム合金であり、僅かに点在する黒い斑点はアルミニウム合金の未含浸部分である。
【0034】また、実施例1の試料と実施例2の試料とをそれぞれエッチングして同じく観察した顕微鏡写真を図2(a)および同図(b)にそれぞれ示す。図2(a)では、その成分組成(Fe−C)から、一般的な鋼組織であるフェライトとパーライトの出現が観察された。また、図2(b)では、合金成分が影響して、微細な炭化物(マルテンサイト)の析出が観察された。従って、実施例2の試料の方が硬くて高強度となる。なお、何れの場合にも、含浸させたアルミニウム合金中からはケイ素(Si)が析出していた。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、大きな気孔率の多孔質焼結体の製作に必要となる、金属粉末占有体積率の小さな粉末成形体を安価に製造できる。そして、その得られた粉末成形体は取扱性に優れるため、多孔質焼結体の生産性の向上やそれを利用した部材の低コスト化等を図れる。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
【住所又は居所】愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地
【出願日】 平成13年11月22日(2001.11.22)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開2003−160802(P2003−160802A)
【公開日】 平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願番号】 特願2001−357494(P2001−357494)