| 【発明の名称】 |
焼結体の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】丸山 正男 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】柴田 彰彦 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】松本 義範 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
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| 【要約】 |
【課題】より短時間にて高品質の焼結体を得ることができる焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】有機物系バインダーを含有する原料粉末を圧粉体に成型する工程と、常温から600℃以下の範囲において全圧を60Pa以下に制御して前記圧粉体を加熱する工程とを含む。600℃以下の昇温速度はもちろん、600℃超の昇温速度を上昇しても割れや遊離炭素の残留を抑えられる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機物系バインダーを含有する原料粉末を圧粉体に成型する工程と、常温から600℃以下の範囲において全圧を60Pa以下に制御して前記圧粉体を加熱する工程とを含むことを特徴とする焼結体の製造方法。 【請求項2】 常温から600℃以下における昇温速度が0.1〜5.0℃/分であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体の製造方法。 【請求項3】 600℃超から焼結温度までの昇温速度が3.0〜10.0℃/分であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体の製造方法。 【請求項4】 原料粉末には、WCからなる硬質相粉末と鉄族金属からなる結合相粉末とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の焼結体の製造方法。 【請求項5】 結合相粉末の含有量が1重量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の焼結体の製造方法。 【請求項6】 原料粉末には、周期率表4a、5a、6a族元素の炭化物、窒化物、炭窒化物および硼化物よりなる群から選択された少なくとも1種の硬質相粉末と、鉄族金属からなる結合相粉末とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の焼結体の製造方法。 【請求項7】 有機物系バインダーがパラフィン系炭化水素を含むことを特徴とする請求項1に記載の焼結体の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、超硬合金やサーメットなどの焼結体の製造方法に関するものである。特に、短時間で高品質の焼結体を得ることができる焼結体の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、超硬合金やサーメットの焼結は、所定の原料粉末を十分に混合し、圧粉体に成形した後、圧粉体を焼結炉に導入して加熱することで行われている。さらに、圧粉体成形と本焼結との間に予備焼結を行って予備焼結体を成形する場合もある。 【0003】ここで、原料粉末には、潤滑性を付与して粉末間および粉末と金型間の摩擦を減少して寸法精度の向上を図るため、有機物系バインダーが含有されている。例えば、パラフィン系炭化水素がバインダーに用いられている。このようなバインダーは、圧粉体の加熱時、適切な加熱が行われると熱分解して圧粉体から蒸発する。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の焼結方法ではバインダーを適切に蒸発させる熱処理条件が明確にわかっておらず、次のような問題があった。 【0005】■圧粉体内のバインダが急激に熱分解し、得られた焼結体に割れや歪が生じることがある。これは、製品の品質に影響を与える化学反応が焼結サイクルのどのステージでどのように起こるかが明確にわかっていないからである。そのため、1)昇温速度が過大になったり、2)圧粉体、圧粉体を載せるトレー、炉内断熱材などから生じるガス成分により炉内真空度が悪化して、焼結体の不良品を生じさせる原因になっていた。 【0006】■焼結体内に遊離炭素が残留する。昇温速度が過大になったり炉内真空度が悪化すると、バインダが熱分解して炭素が遊離し、これが遊離炭素として焼結体内に残留する。遊離炭素はそれ自体弱く、破壊の起点になり得る。 【0007】■圧粉体から焼結体を得るのに長時間を要する。適切な加熱条件がわかっていないため、焼結体の割れや歪を回避しようとして昇温速度が遅くなりすぎると、焼結全体のサイクルタイムが必要以上に長くなってしまう。 【0008】従って、本発明の主目的は、より短時間にて高品質の焼結体を得ることができる焼結体の製造方法を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、常温から所定温度までの加熱工程において、雰囲気圧力を限定することで上記の目的を達成する。 【0010】すなわち、本発明焼結体の製造方法は、有機物系バインダーを含有する原料粉末を圧粉体に成型する工程と、常温から600℃以下の範囲において全圧を60Pa以下に制御して前記圧粉体を加熱する工程とを含むことを特徴とする。 【0011】既に述べたように、有機系バインダーを加熱により除去することが従来から行われている。この除去における好適な条件を種々検討した結果、常温から600℃以下の昇温過程において雰囲気の全圧を60Pa以下に制御すれば、600℃以下の昇温速度はもちろん、600℃超の昇温速度を上昇しても割れや遊離炭素の残留を抑えられるとの知見を得た。そのため、従来よりも短時間で高品質の焼結体を得ることができる。雰囲気全圧のより好ましい値は50Pa以下である。 【0012】常温から600℃以下における昇温速度は0.1〜5.0℃/分であることが好ましい。この下限を下回ると、焼結時間短縮効果が小さく、上限を超えると焼結体の割れや歪の発生あるいは遊離炭素の残留が問題となりやすい。より好ましい昇温速度は0.2〜3.0℃/分である。 【0013】また、600℃超から焼結温度までの昇温速度は3.0〜10.0℃/分であることが好適である。この下限を下回ると、焼結時間短縮効果が小さく、上限を超えると焼結体の割れや歪の発生あるいは遊離炭素の残留が問題となりやすい。より好ましい昇温速度は4.0〜8.0℃/分である。 【0014】本発明の製造方法は、原料粉末を圧粉体に成型して本焼結を行う方法はもちろん、原料粉末を圧粉体に成型して予備焼結し、この予備焼結体を成形加工してから本焼結を行う方法のいずれの場合にも適用できる。原料粉末から圧粉体への成形はプレスや押出しが利用できる。 【0015】この製造方法により得られる焼結体としては、WCを硬質相とする超硬合金や、TiC、TiNあるいはTiCNを硬質相とするサーメット、あるいはアルミナを主成分とするセラミックスなどが挙げられる。 【0016】超硬合金及びサーメットを得る場合、原料粉末には、周期率表4a、5a、6a族元素の炭化物、窒化物、炭窒化物および硼化物よりなる群から選択された少なくとも1種の硬質相粉末と、鉄族金属からなる結合相粉末とが含まれる。 【0017】例えば、特殊な耐摩耗性に優れた超硬合金を得る場合、原料粉末には、WCからなる硬質相粉末と鉄族金属からなる結合相粉末とが含まれる。その場合、結合相粉末の含有量が1重量%以下であることが好ましい。結合相粉末が実質的に含まれない超硬合金とすることで、非常に硬度に優れた焼結体を得ることができる。鉄族金属には、Co、Ni、Feなどが挙げられる。 【0018】有機物系バインダーには、パラフィン系炭化水素、ワックスなどが利用できる。パラフィン系炭化水素は、CnH2n+2の一般式を持つ飽和鎖式炭化水素である。通常、焼結体の原料粉末に混合するパラフィン系炭化水素はn=10〜40の材料が利用される。特に、n=10〜40の個々の物質単独ではなく、複数種が混合されたものが利用される。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。 (予備試験例1)まず、焼結体を得るに先だって、バインダとして用いられるパラフィンワックス(mp130°F)、マイクロワックス(mp200°F)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)について昇温速度10℃/hの加熱時にどの程度減量が生じるかを熱天秤により調べた。 【0020】その結果、図1のグラフに示すよう、パラフィンワックスでは、200〜300℃程度、マイクロワックスでは300〜450℃程度、EVAでは400〜450℃程度の範囲で急激な減量が生じ、この温度域で熱分解が急速に進行することがわかった。常温から450℃以下程度の加熱において、圧粉体からバインダの熱分解ガスが発生すると考えられ、その際の炉内真空度を適切に維持できれば好適な焼結が行えることが予測される。 【0021】(試験例1)次に、焼結体を作製して、昇温−雰囲気条件が製品サイズに及ぼす影響を実験で確認した。平均粒径2.0μmのWC、平均粒径1.3μmのCo:10重量%と不可避的不純物からなる原料粉末にパラフィンワックス3重量%を加えて十分に混合する。混合原料を圧縮プレスして圧粉体に成形する。ここでは、焼結後の製品寸法が■幅10mm、奥行き10mm、高さ2mm、■幅10mm、奥行き10mm、高さ5mm、■幅10mm、奥行き10mm、高さ10mmとなるように3通りの圧粉体を用意した。 【0022】得られた圧粉体は、特公昭58-9806号公報に示す焼結炉を用いて焼結する。この焼結炉は、内部を所定の真空度に保持できる炉本体と、炉本体内に設けられた加熱室と、加熱室へ圧粉体を出し入れするコンベアと、炉本体外に設けられて炉内の冷却を行う冷却手段とを具える。 【0023】炉本体は、内部を10-3Paの真空に到達できる排気系を具えている。加熱室は断熱材で囲まれており、開閉式の扉を具える。また、加熱室内にはヒータが設けられると共に熱電対が設置されて加熱室内を所定の温度に制御することができる。加熱室の下面は開放しており、コンベアの駆動により移動テーブルを加熱室の下面に嵌め込むことができる。焼結後に焼結体の冷却を行う冷却手段は、送風機と熱交換器を具えている。 【0024】焼結を行う際、まず炉内における加熱室の外側に圧粉体をセットする。圧粉体は移動テーブル上にトレーに載せてセットされる。次に、加熱室の扉を開いてコンベアで移動テーブルを加熱室下面に移送する。その後、扉を閉じ、炉本体内を真空に保持してヒータで加熱する。圧粉体が所定温度に昇温されると、内部のパラフィンの一部は液状になって流出し、一部は蒸発する。流出したパラフィンは炉本体に接続されるタンクに回収される。 【0025】パラフィンの除去が完了した後も引き続き昇温を行い、焼結温度に加熱して焼結体を得る。焼結が完了すると、加熱室の扉を開けて焼結体を加熱室外に移送しする。そして、送風機で炉内にガスを循環させて焼結体の冷却を行う。 【0026】このような焼結炉を用いて、常温から600℃以下の昇温における炉内全圧を種々の条件に制御して焼結を行った。焼結条件は次の通りである。 【0027】炉内最高全圧:条件A:20Pa条件B:50Pa条件C:65Pa600℃までの昇温速度:約2時間で600℃昇温(4.8℃/分) 600℃から焼結温度(1450℃)までの昇温速度条件1:約2時間で850℃昇温(7℃/分) 条件2:約2時間30分で850℃昇温(5.7℃/分) 条件3:約4時間で850℃昇温(3.5℃/分) 焼結温度での保持時間:30分加熱室寸法:300mm×300mm×300mm【0028】その結果、条件A、条件Bと条件1〜3の組合せによる焼結では、いずれの場合でも全サンプルにおいてサイズは良好であった。一方、条件Cと条件1の組合せでは厚み10mmのテストピースに微小クラックが発生して不良であった。また、条件Cと条件2の組合せでは、クラックは発生しないものの、100個中3個が浸炭により不良であった。 【0029】(試験例2)次に、昇温−雰囲気条件が押出し製品のサイズに及ぼす影響を実験で確認した。平均粒径0.5μmのWC、平均粒径1.0μmのCo:8重量%、平均粒径1.2μmのTaC:2重量%と不可避的不純物からなる原料粉末にパラフィンワックス10重量%を加えて十分に混合する。この混合原料を押し出し成形して棒状の圧粉体を得る。ここでは、焼結後の製品寸法が直径4mm、長さ400となるように圧粉体を用意した。この圧粉体を試験例1と同様の焼結炉に導入して焼結した。加熱室の寸法は500mm×1000mm×500mmである。焼結条件は次の通りとした。 【0030】 炉内最高全圧:試験例1と同じ条件A〜条件C600℃までの昇温速度:約20時間で600℃昇温(0.48℃/分) 600℃から焼結温度(1400℃)までの昇温速度条件4:約2時間で800℃昇温(6.7℃/分) 条件5:約2時間30分で800℃昇温(5.3℃/分) 条件6:約4時間で800℃昇温(3.3℃/分) 焼結温度での保持時間:30分【0031】その結果、条件A、条件Bと条件4〜6の組合せによる焼結では、いずれの場合でも全サンプルにおいてサイズは良好であった。これに対して、条件Cを選択した加熱条件では、焼結体に浸炭が見られ不良であった。 【0032】(試験例3)さらに、サーメットについても昇温−雰囲気条件が製品に及ぼす影響を調べた。平均粒径1.0μmのTiCN:50重量%、平均粒径1.0μmのWC:20重量%、平均粒径1.5μmのNi:8重量%、平均粒径1.0μmのCo:12重量%、平均粒径1.2μmのMo2C:10重量%と不可避的不純物からなる原料粉末にパラフィンワックス4重量%を加えて十分に混合する。得られた混合粉末を1トン/cm2の圧縮プレスで圧粉体に成形した。この圧粉体を試験例1と同様の焼結炉及び加熱室に導入して焼結した。焼結条件は次の通りとした。 【0033】 炉内最高全圧:試験例1と同じ条件A〜条件C600℃までの昇温速度:約2.5時間で600℃昇温(3.8℃/分) 600℃から焼結温度(1400℃)までの昇温速度条件7:約2時間強で800℃昇温(6.5℃/分) 条件8:約2時間40分で800℃昇温(5.0℃/分) 条件9:約4時間20分で800℃昇温(3.1℃/分) 焼結温度での保持時間:30分【0034】その結果、条件A、条件Bと条件7〜9の組合せによる焼結では、いずれの場合でも全サンプルにおいてサイズは良好であった。一方、条件Cを選択した加熱条件では浸炭により不良が見られた。 【0035】(試験例4)試験例1の圧粉体を用い、炉内真空度を変えて常温から約2時間で400℃、600℃、800℃まで昇温し、その後、試験例1の条件2により焼結を行って、得られた焼結体中の遊離炭素生成量を調べた。その結果を図2のグラフに示す。 【0036】このグラフから明らかなように、400℃までの昇温時に炉内真空度が60Paを超えると遊離炭素量が顕著に増加することがわかる。 【0037】 【発明の効果】以上説明したように、本発明方法によれば、常温から600℃以下の昇温過程において雰囲気の全圧を60Pa以下に制御すれば、特に600℃超の昇温速度を上昇しても割れや遊離炭素の残留を抑えられる。そのため、従来よりも短時間で高品質の焼結体を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002130 【氏名又は名称】住友電気工業株式会社 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号
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| 【出願日】 |
平成13年11月20日(2001.11.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100100147 【弁理士】 【氏名又は名称】山野 宏 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−155502(P2003−155502A) |
| 【公開日】 |
平成15年5月30日(2003.5.30) |
| 【出願番号】 |
特願2001−354531(P2001−354531) |
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