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【発明の名称】 負極用水素吸蔵合金の製造方法および電極
【発明者】 【氏名】西川 俊一郎
【住所又は居所】兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地 山陽特殊製鋼株式会社内

【氏名】大井 茂博
【住所又は居所】兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地 山陽特殊製鋼株式会社内

【氏名】中塚 賢一
【住所又は居所】兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地 山陽特殊製鋼株式会社内

【要約】 【課題】水素吸蔵合金粉末、特にニッケル水素電池用負極の製造方法およびこれを負極材料に用いた電池用負極を提供する。

【解決手段】水素吸蔵合金を用いた電池用負極の製造において、ガスアトマイズ法によって製造された複数の粒子が結合することによって、形成された粉末結合体を全体の15質量%以上含む水素吸蔵合金粉末を使用することを特徴とする負極用水素吸蔵合金の製造方法。前記ガスアトマイズ粉末の製造方法において、溶融した水素吸蔵合金をφ4.0〜10.0mmの穴径より噴出させた後、周囲より溶湯に対して10〜50°の角度でガスを吹き付けることにより得ることを特徴とする負極用水素吸蔵合金の製造方法およびニッケル水素電池用負極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水素吸蔵合金を用いた電池用負極の製造において、ガスアトマイズ法によって製造された複数の粒子が結合することによって、形成された粉末結合体を全体の15質量%以上含む水素吸蔵合金粉末を使用することを特徴とする負極用水素吸蔵合金の製造方法。
【請求項2】 請求項1に記載のガスアトマイズ粉末の製造方法において、溶融した水素吸蔵合金をφ4.0〜10.0mmの穴径より噴出させた後、周囲より溶湯に対して10〜50°の角度でガスを吹き付けることにより得ることを特徴とする負極用水素吸蔵合金の製造方法。
【請求項3】 請求項1または2記載の製造方法によって製造したニッケル水素電池用負極。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素吸蔵合金粉末、特にニッケル水素電池用負極の製造方法およびこれを負極材料に用いた電池用負極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ニッケルカドミウム電池に代わる二次電池として、ニッケル水素電池の需要が伸びており、これに用いられている水素吸蔵合金粉末の特性向上の研究が行われているが、中でもAB5 型水素吸蔵合金粉末は電池用の負極材料として優れた特性を備えており、多く利用されている。これは、例えばCe50%、La25%、Nd15%、残りPrなどからなるミッシュメタルMmと、例えばMn,Al,Co等を含むニッケル合金とを混合溶融したもので、例えば、Mm1.0Ni(5−x−y−z)MnxAlyCozのような型の金属間化合物である。これを鋳造材の粉砕や回転ドラムに接触させる急冷凝固薄帯の粉砕、ガスアトマイズなどの諸手法によって粉末化した後、シート状に成形して二次電池用負極として使用する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した水素吸蔵合金粉末を二次電池に使用する場合に要求される性能は、水素の吸蔵密度が大きいことと、水素の吸収・放出が迅速なこと、および吸収・放出の反復による水素吸蔵量の低下が少ないことである。水素吸蔵密度の大小は電池におけるエネルギー密度に関係し、吸収・放出の速度は電池の放電効率や充電の際の電池内圧の上昇に関係し、水素吸蔵量の低下は二次電池としての寿命に関係する。
【0004】上述の水素の吸蔵密度の大きさ、および吸収・放出の速さは、合金粉末の表面状態および充填密度に大きく影響される。粉末の表面が清浄であれば、より迅速に反応を行うことができるのみでなく、全ての合金が有効に活用される。清浄度が低い粉末に水素を吸蔵できる状態にするためには長時間かけて充放電を繰り返し、電池の容量を高めることが必要になり、生産性を著しく妨げる。そこで、電池の特性をより向上させると共に、生産性を上げる方法として、粉末を処理して粉末表面の酸化層を除くことが提案されている。また、個々の合金特性が同等であっても、充填密度が高くなることによって反応に寄与する粉末量が増え、結果的に体積当たりの容量や速度が増加する。シートの充填密度を向上させる方法として金属シート上に粉末を散布した後、ローラによって圧延する方法が用いれている。
【0005】上述の水素吸蔵量の低下は、充放電を繰り返しによって粉末粒子が必要以上に細かく粉砕されることが原因である。このような粉砕は、粒子内部のミクロ的な合金組織の不均一や、製造時の残留歪みなどが原因になって、水素を吸収・放出する際の体積の膨張・収縮が一様に行なわれないことが一因となっている。そして破砕面から酸化が進行して水素吸蔵能力が次第に失われて行くのである。
【0006】従って、電池の寿命を延ばすためには、粉末粒子の合金組織がミクロ的に均一で、かつ歪みが残存していないことが条件になる。そのために、従来では鋳造・粉砕工程の途中に高温で長時間の熱処理が行われている。一方、急冷凝固薄帯やガスアトマイズ粉末の場合は、鋳造材に比べて、合金組織がかなり均一であるため熱処理も鋳造材の場合よりも低い温度、短い時間で良好な組織の粉末になる。
【0007】上述のような理由から、ガスアトマイズ法等の急冷凝固法によって作製し、熱処理後酸処理を施した粉末を理想密度まで圧延することが電池用水素吸蔵合金電池の製造方法として最適である。しかし、一般的なガスアトマイズ粉末は球状を有しているために圧延によって粉末が移動してしまい、結果としてシートが延びるだけで、充填密度が向上しないという問題を生じていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、水素吸蔵合金を用いた電池用負極の製造に用いる粉末において、充填密度の高い球状粉末とこれら球状粉末が複数個溶着した金属生成物を混合した粉末を用い圧延することで、より充填密度の高い電極の製造が可能であることを見出し、発明を完成させたものである。その発明の要旨とするところは、(1)水素吸蔵合金を用いた電池用負極の製造において、ガスアトマイズ法によって製造された複数の粒子が結合することによって、形成された粉末結合体を全体の15質量%以上含む水素吸蔵合金粉末を使用することを特徴とする負極用水素吸蔵合金の製造方法。
【0009】(2)前記(1)に記載のガスアトマイズ粉末の製造方法において、溶融した水素吸蔵合金をφ4.0〜10.0mmの穴径より噴出させた後、周囲より溶湯に対して10〜50°の角度でガスを吹き付けることにより得ることを特徴とする負極用水素吸蔵合金の製造方法。
(3)前記(1)または(2)記載の製造方法によって製造したニッケル水素電池用負極にある。
【0010】以下、本発明について詳細に説明する。電極のシートは圧延によって粉末密度を高くすることができるが、周囲を拘束せずにプレスをした場合、ある領域まで達すると粉末の転がり等によるシートの延びを生じるために密度は上がらなくなる。特に、ガスアトマイズ粉末のような球状粉末では顕著で、圧延の圧力を上げても密度の向上は見られなくなる。しかし、使用する球状水素吸蔵合金粉末に複数の粉末が溶着した粉末を混合させることによって、圧延後のシート密度をより高くすることが可能である。これは、複数個溶着した粉末成型体がくさび的役割によってシートの延びを防止するためと考えられる。
【0011】本発明において、製造された複数の粒子が結合することによって、形成された粉末結合体を全体の15質量%以上含む水素吸蔵合金粉末を用いる理由は、15質量%以下では転がりによって、圧延後のシート密度をより高くすることが出来ないので、その下限を15%とした。また、溶融した水素吸蔵合金をφ4.0〜10.0mmの穴径より噴出させた後、周囲より溶湯に対して10〜50°の角度でガスを吹き付ける理由は、10度未満ではガスの粉砕圧力が低下して、粉末化しない割合が多くなり、また、50°を超える角度ではノズル閉塞が多発することから、その範囲を10〜50°の角度とした。さらに、ノズル径を4.0mm以上としたのは、4.0mm未満では複数粉末を15%以上得ることができず、また、10.0mmを超えると複合粉末の割合は増加するが充填性の良い球状粉末の割合が低下し、充填密度が低下することから、その範囲を4.0〜10.0mmとした。
【0012】図1は、本発明に係るガスアトマイズ粉末による溶着粉末の状態を示す顕微鏡写真である。この図に示すように、粉末表面での凸状を形成し溶着状態のあることが判る。一方、図2は従来のガスアトマイズ粉末による球状粉末の状態を示す顕微鏡写真である。この図からも粉末表面は凸状形成のない球状粉末の状態を示していることが判る。
【0013】以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
【実施例】(実施例1)Mm1.0Ni3.5Co0.7Al0.3(原子比)を構成するように配合した金属原料をアルミナ坩堝中に収納し、高周波誘導によって溶解した後、2.0mmのノズルより噴出させ、この溶湯に対して30°の角度で2.5MpaのArガスを吹き付けることによって粉末化して試料1を得た。この粉末を金網によって180μm以下となるように調整した粉末を顕微鏡によって観察し、複数粉末が溶着した成型体の個数割合を求めた。また、調整後の粉末90gに0.5重量%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液10gをビーカー内で十分に混練してスラリーとする。平らな台に撥水性ビニールを敷き、その上に上記スラリーを散布した後、さらに撥水性シートをかけて、金属ロールによって0.4mmの厚さに引延ばす。出来上がったシートを乾燥させた後、φ20×20mmにカットし、重量および厚さを計測する。計測後のシートを200MPaで圧延した。得られたシートの重量、厚さ、直径を測定し、圧延後のシートの充填密度を算出した。
【0014】(実施例2)上記実施例1と同様に配合した金属原料をアルミナ坩堝中に収納し、高周波誘導によって溶解した後、4.0mmのノズルより噴出させ、この溶湯に対して30°の角度で2.5MpaのArガスを吹き付けることによって粉末化して試料2を得た。この粉末を180μm以下に調整した後、実施例1と同様に圧延前に複数粉末が溶着した成型体の個数割合、圧延後の充填密度を算出した。
【0015】(実施例3)上記実施例1と同様に配合した金属原料をアルミナ坩堝中に収納し、高周波誘導によって溶解した後、7.0mmのノズルより噴出させ、この溶湯に対して30°の角度で2.5MpaのArガスを吹き付けることによって粉末化して試料3を得た。この粉末を180μm以下に調整した後、実施例1と同様に圧延前に複数粉末が溶着した成型体の個数割合、圧延後の充填密度を算出した。
【0016】(実施例4)上記実施例1と同様に配合した金属原料をアルミナ坩堝中に収納し、高周波誘導によって溶解した後、10.0mmのノズルより噴出させ、この溶湯に対して30°の角度で2.5MpaのArガスを吹き付けることによって粉末化して試料4を得た。この粉末を180μm以下に調整した後、実施例1と同様に圧延前に複数粉末が溶着した成型体の個数割合、圧延後の充填密度を算出した。
【0017】(実施例5)上記実施例1と同様に配合した金属原料をアルミナ坩堝中に収納し、高周波誘導によって溶解した後、12.0mmのノズルより噴出させ、この溶湯に対して30°の角度で2.5MpaのArガスを吹き付けることによって粉末化して試料5を得た。この粉末を180μm以下に調整した後、実施例1と同様に圧延前に複数粉末が溶着した成型体の個数割合、圧延後の充填密度を算出した。
【0018】(実施例6)上記実施例1と同様に配合した金属原料をアルミナ坩堝中に収納し、高周波誘導によって溶解した後、7.0mmのノズルより噴出させ、この溶湯に対して30°の角度で2.5MpaのArガスを吹き付けることによって粉末化して試料6を得た。この粉末を180μm以下に調整した後、実施例1と同様に圧延前に複数粉末が溶着した成型体の個数割合、圧延後の充填密度を算出した。
【0019】
【表1】

【0020】(実施例7)上記実施例1と同様に配合した金属原料をアルミナ坩堝中に収納し、高周波誘導によって溶解した後、7.0mmのノズルより噴出させ、この溶湯に対して5、10、30、50、60°の角度でガスを吹き付けることによって粉末化して各条件における粉末回収割合を調査した。その結果を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】ガスアトマイズ時の溶湯を噴出させるノズルの径を大きくする程、複数粉末が溶着した成型体の個数割合が大きくなっていることがわかる。また、その溶着成型体の量が大くなるにつれて、プレス圧延後のシート密度が上昇しており、15%以上で理想的な密度が得られている。また、実施例により複数粉末を15%以上得るには、ノズル径を4.0mm以上にする必要があることも判る。一方でノズル径10.0mm以上にしても複合粉末の割合は増加するものの、本来充填性の良い球状粉末の割合が低下するために、充填密度は低下の傾向を示している。また、凝固前に壁にぶつかり粉末化しない合金が増加するために、必要以上に大きな口径のノズルを使用することは好ましくない。
【0023】表2より、溶湯に対するガスの噴射角度が10°以下になると溶湯が充分に細かくならないために球状化せず、結果的に歩留りが低下してしまった。また、60°以上ではガスにより溶湯ノズルが冷却されることによって、溶湯がノズルから出ずに凝固してしまうため好ましくない。
【0024】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によるガスアトマイズ法によって製造した球状粉末とそれらが二次的に溶着した成型体が15%以上混ざった粉末を用いることによって、圧延後に高い充填密度を持つシートを製造することが出来る。また、この方法により製造した電極は、粉末形状を規定しない通常の製造方法に対して粉末密度が向上、つまりエネルギー密度の高くなるために、より高容量の電池を製造することが出来る極めて優れた効果を奏するものである。
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【住所又は居所】兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地
【出願日】 平成13年6月28日(2001.6.28)
【代理人】 【識別番号】100074790
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊
【公開番号】 特開2003−13114(P2003−13114A)
【公開日】 平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願番号】 特願2001−196842(P2001−196842)