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【発明の名称】 遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法
【発明者】 【氏名】石川 勝
【住所又は居所】東京都千代田区内神田一丁目8番1号 日本鋳鉄管株式会社内

【氏名】清野 邦夫
【住所又は居所】東京都千代田区内神田一丁目8番1号 日本鋳鉄管株式会社内

【氏名】高杉 英登
【住所又は居所】東京都千代田区内神田一丁目8番1号 日本鋳鉄管株式会社内

【氏名】笠原 信一
【住所又は居所】東京都千代田区内神田一丁目8番1号 日本鋳鉄管株式会社内

【要約】 【課題】遠心鋳造設備を用いて鋳鉄管を製造する際に、管長手方向で管厚の均一な鋳鉄管を安定して製造する。

【解決手段】鋳込み用取鍋3から注入用樋4,5を介して鋳造台車7に搭載された金型2内に溶湯10を供給すると共に、金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋の反対側に移動させ、金型内で溶湯を凝固させて鋳鉄管11を製造する遠心鋳造設備1における鋳鉄管の製造方法において、注入用樋への溶湯の注入量が実質的に一定になるように鋳込み用取鍋から溶湯を注入しつつ、金型を搭載する鋳造台車の移動速度を鋳込み時期に応じて調整することにより製造される鋳鉄管の管厚を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳込み用取鍋から注入用樋を介して鋳造台車に搭載された金型内に溶湯を供給すると共に、金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋の反対側に移動させ、金型内で溶湯を凝固させて鋳鉄管を製造する遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法において、注入用樋への溶湯の注入量が実質的に一定になるように鋳込み用取鍋から溶湯を注入しつつ、金型を搭載する鋳造台車の移動速度を鋳込み時期に応じて調整することにより製造される鋳鉄管の管厚を制御することを特徴とする、遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【請求項2】 鋳込み用取鍋から注入用樋を介して鋳造台車に搭載された金型内に溶湯を供給すると共に、金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋の反対側に移動させ、金型内で溶湯を凝固させて鋳鉄管を製造する遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法において、金型を搭載する鋳造台車が鋳込み用取鍋の反対側に移動する期間を鋳込み時期に応じて複数の領域に分割し、分割した各領域で鋳造台車の移動速度を変更させながら、鋳込み用取鍋から注入用樋への溶湯の注入量が実質的に一定となるように鋳込み用取鍋から溶湯を注入することを特徴とする、遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【請求項3】 少なくとも鋳込み中期には、鋳込み初期及び鋳込み末期に比較して高速度である一定の速度で鋳造台車を移動させると共に、鋳込み初期から鋳込み中期への増速域及び鋳込み中期から鋳込み末期への減速域では、移動速度が次第に変化するように、正又は負の加速度を持たせて鋳造台車を移動させることを特徴とする、請求項2に記載の遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【請求項4】 前記増速域は2以上の領域に分割され、それぞれの領域における加速度が異なることを特徴とする、請求項3に記載の遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【請求項5】 前記減速域は2以上の領域に分割され、それぞれの領域における加速度が異なることを特徴とする、請求項3に記載の遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【請求項6】 前記鋳込み用取鍋から金型内に供給される溶湯の温度を連続的に測定し、溶湯温度に基づき金型を搭載する鋳造台車の移動速度を、予め溶湯温度別に設定した速度となるように調整することを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1つに記載の遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【請求項7】 鋳込み用取鍋から注入用樋を介して鋳造台車に搭載された金型内に溶湯を供給すると共に、金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋の反対側に移動させ、金型内で溶湯を凝固させて鋳鉄管を製造する遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法において、鋳込み用取鍋から金型内に供給される溶湯の温度を連続的に測定し、溶湯温度に基づき金型を搭載する鋳造台車の移動速度を、予め溶湯温度別に設定した速度となるように調整することを特徴とする、遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【請求項8】 前記鋳造台車は、油圧シリンダーによる駆動力により移動することを特徴とする、請求項1ないし請求項7の何れか1つに記載の遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遠心鋳造設備におけるダクタイル鋳鉄管等の鋳鉄管の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ダクタイル鋳鉄管等の鋳鉄管を製造する遠心鋳造設備は、その軸芯を回転軸として回転する金型と、この金型を搭載する鋳造台車と、溶湯を収容し、傾動することによって金型内に該溶湯を供給する鋳込み用取鍋と、鋳込み用取鍋から流出される溶湯を金型内に中継供給する注入用樋とを備えており、回転している金型内の奥まで挿入された注入用樋先端から溶湯を注入しながら金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋と反対側に移動させることにより、注入した溶湯を順次凝固させて、溶湯から直接鋳鉄管を製造している。注入用樋は、鋳込み用取鍋から溶湯を受けるため、その平面図形状が略扇形となっている部位をシュートと呼び、シュートに接続され、金型内に挿入される部位をトラフと呼んでいる。
【0003】鋳込み用取鍋は、傾動時の鋳込み用取鍋内の溶湯表面積が略一定となるべく、その出湯口を通る縦断面形状が扇形となる所謂「三角取鍋」が用いられており、傾動速度を一定にすることにより鋳込み用取鍋からの溶湯注入量は略一定に制御されている。そして、金型を一定速度で鋳込み用取鍋と反対側に移動させることにより、金型内各部位に一定量の溶湯が供給され、製造される鋳鉄管の管厚が管長手方向で所定値に制御されるようになっている。
【0004】しかし、鋳込み開始の段階と鋳込み終了の段階とで溶湯温度に差がある場合にはトラフ上の湯流れに差が生じ、溶湯供給量が一定にならず、鋳造される鋳鉄管の管厚に差が生ずることがある。管厚のばらつきが規格内であれば問題はないが、規格範囲を越えた場合には屑化して再溶解せざるを得ない。そのため、鋳造される鋳鉄管の管厚を均一にする手段が幾つか提案されている。
【0005】例えば、特開平11−179512号公報には、鋳込み用取鍋を傾動させるシリンダー装置への作動油の供給量を調整することにより、鋳込み用取鍋の傾動速度を変更することの可能な遠心鋳造設備が開示されている。同号公報によれば、鋳込み取鍋の傾動速度を変更可能であるので、鋳込み取鍋からの溶湯注入量を鋳込みの各段階において任意に変更することができ、管厚の均一な鋳鉄管を製造することができるとしている。
【0006】又、特開2000−94107公報には、鋳込み開始時の溶湯の温度に対応して鋳込み初期、鋳込み中期、鋳込み末期での最適溶湯注入量を予め決めておき、注入開始時に溶湯温度を測定し、この測温値に基づき、溶湯注入量を定めて注入する遠心鋳造方法が開示されている。同号公報によれば溶湯温度に見合った注入速度で注入するので、管厚の均一な鋳鉄管を得ることができるとしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の特開平11−179512号公報及び特開2000−94107号公報では、鋳込み用取鍋からの注入量を調整することができるが、注入開始前における溶湯温度の絶対値の差のみならず、注入中の溶湯温度の変化もあることから、試行錯誤に基づき最適注入量を追求するとしても、注入量をどのように調整すれば管厚の均一な鋳鉄管を製造することができるかを見出すことが極めて困難であり、精通・熟練した技術者及び作業者といえども管厚の均一な鋳鉄管を安定して製造することはできない。これは、鋳込み用取鍋からの注入量を制御しても、トラフ内に滞留する溶湯量の差やトラフ自体の熱変形による溶湯流路勾配の変化等々により、トラフ先端から金型内に注入される溶湯量が変化してしまうことも原因しているものと思われる。
【0008】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、遠心鋳造設備を用いて鋳鉄管を製造するに際し、管長手方向で管厚の均一な鋳鉄管を安定して製造することができる鋳鉄管の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討・研究を行った。その結果、鋳込み用取鍋からの注入量を調整する方法よりも、鋳込み用取鍋からの注入量は一定とし、金型の移動速度即ち金型を搭載する鋳造台車の移動速度を鋳込み時期に応じて調整する方法の方が、鋳鉄管管厚の制御が容易であり、且つ、精度良く制御することができるとの知見を得た。
【0010】本発明は上記知見に基づきなされたもので、第1の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、鋳込み用取鍋から注入用樋を介して鋳造台車に搭載された金型内に溶湯を供給すると共に、金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋の反対側に移動させ、金型内で溶湯を凝固させて鋳鉄管を製造する遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法において、注入用樋への溶湯の注入量が実質的に一定になるように鋳込み用取鍋から溶湯を注入しつつ、金型を搭載する鋳造台車の移動速度を鋳込み時期に応じて調整することにより製造される鋳鉄管の管厚を制御することを特徴とするものである。
【0011】第2の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、鋳込み用取鍋から注入用樋を介して鋳造台車に搭載された金型内に溶湯を供給すると共に、金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋の反対側に移動させ、金型内で溶湯を凝固させて鋳鉄管を製造する遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法において、金型を搭載する鋳造台車が鋳込み用取鍋の反対側に移動する期間を鋳込み時期に応じて複数の領域に分割し、分割した各領域で鋳造台車の移動速度を変更させながら、鋳込み用取鍋から注入用樋への溶湯の注入量が実質的に一定となるように鋳込み用取鍋から溶湯を注入することを特徴とするものである。
【0012】第3の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、第2の発明において、少なくとも鋳込み中期には、鋳込み初期及び鋳込み末期に比較して高速度である一定の速度で鋳造台車を移動させると共に、鋳込み初期から鋳込み中期への増速域及び鋳込み中期から鋳込み末期への減速域では、移動速度が次第に変化するように、正又は負の加速度を持たせて鋳造台車を移動させることを特徴とするものである。
【0013】第4の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、第3の発明において、前記増速域は2以上の領域に分割され、それぞれの領域における加速度が異なることを特徴とするものである。
【0014】第5の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、第3の発明において、前記減速域は2以上の領域に分割され、それぞれの領域における加速度が異なることを特徴とするものである。
【0015】第6の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、第1の発明ないし第5の発明の何れかにおいて、前記鋳込み用取鍋から金型内に供給される溶湯の温度を連続的に測定し、溶湯温度に基づき金型を搭載する鋳造台車の移動速度を、予め溶湯温度別に設定した速度となるように調整することを特徴とするものである。
【0016】第7の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、鋳込み用取鍋から注入用樋を介して鋳造台車に搭載された金型内に溶湯を供給すると共に、金型を鋳造台車と共に鋳込み用取鍋の反対側に移動させ、金型内で溶湯を凝固させて鋳鉄管を製造する遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法において、鋳込み用取鍋から金型内に供給される溶湯の温度を連続的に測定し、溶湯温度に基づき金型を搭載する鋳造台車の移動速度を、予め溶湯温度別に設定した速度となるように調整することを特徴とするものである。
【0017】第8の発明による遠心鋳造設備における鋳鉄管の製造方法は、第1の発明ないし第7の発明の何れかにおいて、前記鋳造台車は、油圧シリンダーによる駆動力により移動することを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明による鋳鉄管製造方法を実施する際に用いた遠心鋳造設備の1例を示す概略図で、その一部を断面図で示している。
【0019】図1に示すように、遠心鋳造設備1は、鋳造台車7に搭載され、略水平に設置された金型2と、溶湯10を収容し、鋳込み用取鍋として使用される三角取鍋3と、三角取鍋3から注入される溶湯10を金型2内に中継供給するための注入用樋として使用されるシュート4及びトラフ5とを備えている。シュート4とトラフ5とは、その繋ぎ目で溶湯10が漏洩しないように密着して連結されており、シュート4及びトラフ5は溶湯10を通すための溝状の流路(図示せず)を有している。金型2は、その内部に溶湯10を受け、凝固させるための水冷構造の金属製モールド(図示せず)を有しており、トラフ5はこのモールド内に挿入されている。又、モールドの他端には中子6が嵌め込まれており、中子6により製造される鋳鉄管11の端面形状が形成され、又、中子6によりトラフ5から供給される溶湯10の漏洩が防止されている。尚、溶湯10とは溶融鋳鉄である。
【0020】鋳造台車7には電動機9が搭載されており、金型2は、電動機9によりベルト13を介して、その軸芯を回転軸として鋳造台車7に搭載されたまま回転可能な構造となっている。又、鋳造台車7は、鋳造台車7に設けられた連結金具7aを介して油圧シリンダー8のシリンダーロッド8aと連結されており、油圧シリンダー8の作動によってレール12上を車輪14により移動可能な構造となっている。油圧シリンダー8は、シリンダーロッド8aの移動速度が任意の値を選択することができるように、油圧シリンダー8へ供給される作動油が制御される油圧回路(図示せず)と接続している。
【0021】図1では、油圧シリンダー8により鋳造台車7を移動させているが、油圧シリンダーに限ることなく、例えば水圧シリンダー若しくは電動機とチェーンの組み合わせ等により移動させることができる。但し、本発明による鋳鉄管製造方法においては鋳造台車7の移動を精度良く制御する必要があり、この観点から鋳造台車7の駆動源としては油圧シリンダーを用いることが好ましい。
【0022】以下、このような構成の遠心鋳造設備1を用いて、管厚の均一な鋳鉄管11を製造する方法を説明する。
【0023】先ず、所定の組成に溶製された溶湯10を三角取鍋3に注入し、これに前後して、トラフ5の先端位置が金型2内の所定の位置となるように鋳造台車7を油圧シリンダー8により移動させ、次いで、三角取鍋3を傾動装置(図示せず)により傾動させ、回転している金型2内への溶湯10の注入を開始する。
【0024】三角取鍋3からの溶湯注入量は一定であればあるほど好ましく、従って、三角取鍋3を傾動させる傾動装置は三角取鍋3の傾動角度を精度良く制御することが可能な装置であることが好ましく、具体的には、油圧シリンダーからなる傾動装置や、電動機等の駆動手段と三角取鍋3の背面に取り付けたセクタ歯車及びこれに噛合する駆動歯車とからなる傾動装置等を用いることができる。
【0025】尚、上記の溶湯注入量が一定であるという意味は、三角取鍋3等の鋳込み用取鍋から溶湯10の注入を開始した時点から注入を終了する時点までの期間における注入量を一定にするという意味であり、製造される鋳鉄管11のサイズが変更される場合には、当然ながら、単位時間当たりの注入量の絶対量は変更することができる。この場合、鋳込み中の溶湯温度の低下に起因して生ずる注入量の変化までは調整しなくても良い。又、上記では注入量の制御が容易であることから、鋳込み用取鍋として三角取鍋3を用いているが、円筒状取鍋でも溶湯注入量を一定に制御することは十分可能であり、従って、鋳込み用取鍋は三角取鍋3に限るものではない。
【0026】溶湯10がトラフ5の先端から金型2内に供給され、中子6と金型2との間に鋳鉄管11の端面部形状を形成するに十分な量の溶湯10が供給されたなら、三角取鍋3が設置されている方向とは反対側の方向に、回転する金型2を搭載した鋳造台車7を油圧シリンダー8により移動させ、金型2の内面全域に溶湯10を供給し、溶湯10を凝固させて鋳鉄管11を製造する。その際に、金型2即ち鋳造台車7の移動速度を鋳込み時期に応じて調整することにより、製造される鋳鉄管11の管厚を制御する。
【0027】この場合、予め鋳造台車7の移動速度パターンを設定しておき、その移動速度パターンに沿って移動させることが好ましい。図2に、鋳造台車7の移動速度パターンの1例を示す。図2は、横軸に三角取鍋3から溶湯10が注入されてからの経過時間を示し、縦軸に鋳造台車7が三角取鍋3の反対側へ移動する移動速度を示した図であり、鋳造台車7は注入開始時から時刻t0 までの期間は前進限に位置し、時刻t12の時点で後退限に位置する。即ち、鋳造台車7は、時刻t0 で移動を開始し、時刻t12で移動を完了し、この期間に1本の鋳鉄管11が鋳造台車7に搭載された金型2内で製造されることになる。
【0028】図2に示す速度パターンは、鋳込み初期の鋳込み開始直後は速度V1 の一定速度で移動を開始し、その後、時刻t1 で加速を開始して、時刻t2 で速度V2 、時刻t3 で速度V3 、時刻t4 で速度V4 となるように各領域で異なる正の加速度で加速し、鋳込み中期の大部分は速度V4 の一定速度で移動させ、三角取鍋3からの溶湯10の注入が終了(時刻t5 )して所定の時間が経過した時刻t6 で減速を開始して、時刻t7 で速度V5 、時刻t8 で速度V6 、時刻t9 で速度V7 となるように各領域で異なる負の加速度で減速し、鋳込み末期の時刻t9 から時刻t10までは速度V7 の一定速度で移動させ、時刻t10から時刻t11までは停止し、時刻t11から時刻t12までは速度V8 の一定速度で移動させる速度パターンである。
【0029】この速度パターンは、当然のことながら製造する鋳鉄管11のサイズや溶湯10の温度により、移動速度(V1 〜V8 )の絶対値や移動時刻(t0 〜t12)を変更するものであり、又、鋳造台車7の移動する期間を鋳造時期に応じて更に細かく分割しても若しくは分割数を少なくしても良い。
【0030】この移動速度の最適パターンは机上計算では見出すことは困難であり、実機での試行錯誤により最適な速度パターンを採用することが好ましい。又、製造した鋳鉄管11の管厚をフィードバックさせ、その都度、速度パターンを変更するようにしても良い。
【0031】図3は、図2に示す速度パターンにより鋳造台車7を移動させて製造した鋳鉄管11における管長手方向の管厚測定結果の1例である。この鋳鉄管11の管厚の規格値は7.5mmであり、図3から明らかなように、管厚は0.5mm以内の狭い範囲に制御されていることが分かる。
【0032】これは、三角取鍋3からの溶湯注入量は一定であっても、溶湯温度が低下する鋳込み中期以降はトラフ5における溶湯10の流速が低下するため、金型2内に実際に供給される溶湯量は減少し、又、三角取鍋3からの注入が終了した以降はトラフ5には新たに溶湯10が供給されないので、トラフ5に滞在する溶湯10の流速は低下し、従来これらにより鋳鉄管11の管厚がばらついていたが、本発明方法を採用すること、即ち、鋳造台車7の移動速度を鋳込み時期に応じて細かく分割して変更することにより、溶湯10の金型2内への実質的な供給速度に対応して金型2を移動させることが可能となり、鋳鉄管11の管厚が極めて狭い範囲に制御されたものである。この場合、鋳造台車7の移動速度が次第に変化するように各領域の加速度を変更していることも、管厚のばらつきを少なくしている一因である。
【0033】溶湯10の流動性は、その温度によって微妙に変化する。従って、金型2の搭載された鋳造台車7の移動速度をより的確に制御するためには、金型2内に注入される溶湯温度が重要な制御因子となる。そこで、金型2内に溶湯10を供給する際に、鋳込み用取鍋3からシュート4に流下する溶湯10の温度を例えば放射温度計によって連続的に測定し、その測定値に基づいて、鋳造台車7の移動速度を制御することが好ましい。
【0034】即ち、図4に示すように、鋳込み用取鍋3の出湯口3aに近接するシュート4の近傍に、水冷ボックス16内に収納された放射温度計15を設置し、放射温度計15によって、鋳込み用取鍋3の出湯口3aから流下する溶湯10の斜め前方から、溶湯10の温度を連続的に測定する。
【0035】予め、図2に示す鋳造台車7の移動速度を溶湯10の温度別に設定しておく。例えば、図2に示す速度V4 を溶湯温度に応じて幾つかの値に予め設定しておき、溶湯温度の測定値に基づき、その温度測定値に該当する速度となるように、鋳造台車7の移動速度を制御する。
【0036】即ち、鋳込み用取鍋3の出湯口3aから流下する溶湯10から所定間隔例えば約2.5m程度隔てた位置に設置されている放射温度計15によって、溶湯10の斜め前方からその温度を連続的に測定し、溶湯温度の測定値に対応する速度となるように鋳造台車7の移動速度を調整することによって、鋳造される鋳鉄管11の管厚をより一層均一化することができる。
【0037】溶湯10の流動性は、溶湯温度の他にその成分値(例えば炭素濃度や珪素濃度)によっても変化する。即ち、溶湯10の炭素濃度や珪素濃度が変化すると、溶湯10の流動性が変化する。従って、上述した放射温度計の15による溶湯温度の連続測定に加えて、溶湯10の成分値を測定し、その測定値を鋳造台車7の移動速度の制御因子に加えれば、更に均一な管厚の鋳鉄管11を製造することができる。
【0038】従来、鋳鉄管の管厚の下限値を確保するために管厚の規格値よりもかなり大きい値を管厚の目標値として製造していたが、本発明方法を採用することにより管厚のばらつきが少なくなり、管厚の規格値を目標値として製造しても管厚の下限値を確保することができ、省資源及び省エネルギーの観点からも多大な効果を得ることができる。
【0039】又、本発明方法は、三角取鍋3等の鋳込み用取鍋からの溶湯注入量を鋳込み時期に応じて変更することにより管厚を制御する従来方法に比較して、極めて容易に管厚を制御することができる。これは、従来方法では、鋳込み用取鍋の傾斜速度や当該取鍋内の溶湯表面積のみならず鋳込み中の溶湯温度の変化にも起因して変動する、制御が極めて困難な溶湯10の注入量を制御対象としていることに対して、本発明方法では、金型2即ち鋳造台車7の移動という極めて制御が容易な事項を制御対象としているためである。
【0040】
【実施例】次に、本発明方法を実施例によって比較例と共に説明する。
【0041】鋳鉄管5本分の溶湯を収容し得る鋳込み用取鍋を使用し、鋳込み用取鍋から注入用樋を経て金型内に溶湯を供給する際に、鋳込み用取鍋から注入用樋への溶湯注入量を実質的に一定とした上で、注入用樋に注入されている溶湯の温度を放射温度計により連続的に測定し、その測定値に基づき鋳造台車の移動速度を制御して、長さ5m、内径150mmの鋳鉄管を遠心鋳造設備により製造した。溶湯温度別に設定した鋳造台車の移動速度及び保持時間、並びに、鋳造した鋳鉄管の管厚測定結果を表1に示す。尚、表1に示す鋳造台車速度及び保持時間は前述の図2に示す各符号に対応するものである。
【0042】
【表1】

【0043】比較のために、同じ寸法の鋳鉄管を、特開2000−94107公報に開示されている従来の方法、即ち、鋳込み開始時の溶湯温度に対応して最適溶湯注入量を予め定め、注入開始時に溶湯温度を測定し、その測定値に基づき溶湯注入量を定めて注入する方法により鋳鉄管を製造した。溶湯温度別に設定した溶湯注入量(注湯速度)、並びに、鋳造した鋳鉄管の管厚測定結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】表1と表2とを対比すれば明らかなように、本発明の方法により極めて均一な管厚の鋳鉄管を鋳造することができた。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、鋳込み用取鍋からの溶湯注入量をほぼ一定に保ちながら、鋳造台車の移動速度を鋳込み時期に応じて変更することにより鋳鉄管の管厚を制御するので、管長手方向で管厚の均一な鋳鉄管を容易に且つ安定して製造することが可能となり、その結果、省資源及び省エネルギー等々の工業上有益な効果がもたらされる。
【出願人】 【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内神田1丁目8番1号
【出願日】 平成14年4月26日(2002.4.26)
【代理人】 【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
【公開番号】 特開2003−236651(P2003−236651A)
【公開日】 平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願番号】 特願2002−126367(P2002−126367)