トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き




【発明の名称】 打抜き性に優れた鋼管の製造方法
【発明者】 【氏名】大野 平祐
【住所又は居所】兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地 山陽特殊製鋼株式会社内

【要約】 【課題】打抜き加工用鋼管において必要とされる、打抜き用鋼管の打抜き穴のせん断切口面の平滑性を向上させる鋼管の製造方法を提供する。

【解決手段】図1に示す工程のにおいて機械構造用合金鋼組成からなる熱延鋼管をコールドピルガーにより、リダクションバランスR.B.を[肉厚減少率/外径減少率]とするとき、0.5≦R.B.≦1.0として鋼管に圧延した後、軟化焼きなましを550℃以上650℃以下で行い、鋼管の肉厚中心部の硬さが190HV以上250HV以下で、フェライト組織+パーライト組織の2相組織を呈する鋼管の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 機械構造用合金鋼組成の熱延鋼管をコールドピルガーにより、リダクションバランスR.B.を[肉厚減少率/外径減少率]とするとき、0.5≦R.B.≦1.0として鋼管に圧延した後、焼きなましを550℃以上650℃以下で行い、鋼管の肉厚中心部の硬さが190HV以上250HV以下で、フェライト組織+パーライト組織の2相組織を呈する打抜き性に優れた鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は穴あけ加工が多数なされる鋼管において、特に良好な打抜き性及び打抜き後の寸法安定性に優れる性質を有する鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に自動車や家電製品等に利用される加工用鋼板は、多くの場合において、穴あけ加工が多数なされることが多く、その穴あけは打抜き加工によって施される場合がほとんどである。そのため良好な打抜き加工性が要求される。打抜き加工用鋼板の打抜き加工の際には、打抜き性(すなわち、せん断面積率)あるいは打抜きによるバリ発生などが問題となっている。
【0003】これまで、打抜き加工用鋼板の打抜き性を改善するものとして、例えば特開平3−226526号公報、特開平10−168544公報に開示の技術などがある。これまでの知見では、打抜き加工用鋼板の打抜き性を向上させるためには、材料の延性(120〜170HV程度)が必要であり、それを得るためには焼なましにより炭化物を球状化して材料を軟化させることが効果的であり、打抜き性は球状化組織の場合に良好であることが知られている。
【0004】打抜き加工用鋼管についても、打抜き加工用鋼板と同様に打抜き加工性の向上が求められており、さらに、打抜き穴のせん断切口面の平滑性が特に必要となる場合がある。
【0005】しかし、打抜き加工用鋼管の場合について、上記に示す鋼板の打抜き性を向上させるための条件を適用した場合、打抜き性は改善されるが、鋼管形状が変形するため鋼管の打抜き性を改善するためには有効な方法ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に示すように、打抜き加工用鋼管において必要とされる、打抜き穴のせん断切口面の平滑性を向上させる鋼管の製造方法を提供することであり、さらに、打抜き穴のせん断切口面を平滑にすることで、従来行われてきた打抜き製品鋼管の打抜き穴のせん断切口面の研磨或いは切削加工の省略を可能とし、打抜き加工鋼管製品の加工の省略を可能とすることができる鋼管を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の上記の課題を解決するための手段は、機械構造用合金鋼組成からなる熱延鋼管をコールドピルガーにより、リダクションバランスR.B.を[肉厚減少率/外径減少率]とするとき、0.5≦R.B.≦1.0として鋼管に圧延した後、軟化焼きなましを550℃以上650℃以下で行い、鋼管の肉厚中心部の硬さが190HV以上250HV以下で、フェライト組織+パーライト組織の2相組織を呈する鋼管の製造方法である。図1に模式的に本発明の工程を示す。
【0008】すなわち、打抜き性に優れた鋼管を得るに際し、本発明は以下の手段を用いている。本発明に係わる鋼管の製造方法は、鋼管の肉厚中心部の硬さを190HV以上250HV以下にし、さらにフェライト組織+パーライト組織の2相組織とするものであり、その鋼管を用いることによって打抜き加工による打抜き穴のせん断切口面の平滑性に優れた鋼管打抜き製品を製造できるようになる。
【0009】本発明に係わる鋼管の製造方法においては、鋼管の肉厚中心部の硬さを190HV以上250HV以下としているが、190HV以上とすることにより理想とするせん断面積率を得ることができるとともに、鋼管打抜き製品の打抜き加工による鋼管形状変化を抑制することができる。また鋼管の肉厚中心部の硬さを250HV以下とすることにより、鋼管打抜き製品の打抜き穴のせん断切口面のせん断面割合が高くなり、切口面の平滑性を得ることができる。
【0010】図2に内側から打抜いた打抜き穴のせん断切口面の形状について示す。図2の(a) は鋼管の打抜き穴の概略図、(b)は打抜きは断面の側面図、(c)は(b)の打抜きは断面の正面図を模式的に示し、符号の1はだれ、2はせん断面、3は破断面、4は肉厚、5は打抜き方向を示す。
【0011】さらにフェライト組織+パーライト組織の2相組織とすることにより、鋼管打抜き製品の打抜き穴のせん断切口面のせん断面2の割合が高くなり、切口面の平滑性を得ることができる。焼きなましにより組織の球状化が進行した場合、鋼管打抜き製品の打抜き穴のせん断切口面のせん断面割合が低くなり平滑性が悪化する。
【0012】この場合、コールドピルガー加工におけるリダクションバランスR.B.を[肉厚減少率/外径減少率]とするとき、0.5≦R.B.≦1.0と規定しているが、R.B.が0.5以下の場合、加工率が低いため加工後に焼きなましを行った際に所定の硬さを下回ってしまう。またR.B.が1.0以上の場合、加工率が高く所定の硬さを超えてしまう。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の形態における工程図である。機械構造用合金鋼組成の圧延素材に対して、ユージン・セジュルネ熱間押出法またはアッセル圧延にて母管を形成し、焼なましを施し、コールドピルガー加工により所定の寸法の鋼管を得る。この時のコールドピルガー加工前と加工後の鋼管のリダクションバランスR.B.を[肉厚減少率/外径減少率]とするとき、0.5≦R.B.≦1.0の範囲とする。
【0014】さらにコールドピルガー加工後、焼きなましを550℃以上650℃以下にて施し硬さが190HV以上250HV以下で、かつフェライト+パーライトの2相組織のミクロ組織をもつ所定の鋼管を製造する。
【0015】
【実施例】代表的な組成として、C:0.10〜0.60%、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下を含有し、必要に応じてCr、Moを含み、残部Feからなる機械構造用合金鋼組成の圧延素材に対して、アッセル圧延にてφ60mm×φ35mmの寸法をもつ母管を製造し、650℃の軟化焼きなましを施した。その後母管をコールドピルガー加工によりφ38.7mm×φ30.4mmの寸法に加工した。この場合のリダクションバランスR.B.は0.51である。その鋼管に対し600℃の焼きなましを施すことにより所定の鋼管を得た。上記の製造方法によって得られた鋼管について下記の方法により打抜き性及び寸法安定性の評価を行う。打抜き性の評価方法としては、鋼管の側面に10mm×5mmの穴打抜き加工を円周方向に対して連続的に等間隔に行い、それぞれの打抜き穴のについて、せん断切口面のせん断面割合にて打抜き性を評価した。
【0016】それらの鋼管の打抜き性試験結果を表1に示す。打抜き性評価はせん断面率50%以上を○とし、50%未満を×とした。表1に示すようにフェライト+パーライト組織を呈し、硬さ190HV以上250HV以下の場合においてのみ、打抜き切口のせん断面率が高く打ちぬき性が良好となった。
【0017】
【表1】

【0018】
【発明の効果】以上説明したとおり、本名発明は、機械構造用合金鋼組成の鋼管に対してコールドピルガー加工におけるリダクションバランスおよびその後の軟化焼きなまし条件を選択することにより、優れた打抜き性を有する機械構造用合金鋼組成の鋼管の製造を可能にしたものであり、これにより工業上優れた効果がもたらされる。
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【住所又は居所】兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地
【出願日】 平成13年8月28日(2001.8.28)
【代理人】 【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
【公開番号】 特開2003−62604(P2003−62604A)
【公開日】 平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願番号】 特願2001−258354(P2001−258354)