トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き




【発明の名称】 冷間圧延用ロールおよび高硬度高炭素薄鋼板の製造方法
【発明者】 【氏名】川口 昌之
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内

【要約】 【課題】本発明の目的は、ロール表面に硬度むらがなく、長期間の使用に耐え得る冷間圧延ロールを提供することにある。また、本発明の他の目的は、冷間圧延ロールの磨耗を極力抑制しつつ高硬度高炭素鋼板を効率的に冷間圧延して薄板を製造することができる方法を提供することにある。

【解決手段】ショットピーニング処理を施して硬化させたロール面を有し、該ロール面の硬度がショア硬度で95以上であり、且つロール周方向および軸方向のロール面の中心線平均粗さRaが0.3〜0.5μmであることを特徴とする冷間圧延用ロール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ショットピーニング処理を施して硬化させたロール面を有し、該ロール面の硬度がショア硬度で95以上であり、且つロール周方向および軸方向のロール面の中心線平均粗さRaが0.3〜0.5μmであることを特徴とする冷間圧延用ロール。
【請求項2】 冷間圧延機列の後段スタンドに、請求項1に記載の小径の冷間圧延用ロールを備えた圧延スタンドを設置し、この冷間圧延機列で高硬度高炭素鋼板の圧延を行うことを特徴とする高硬度高炭素薄鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロール表面にショットピーニング処理を施した冷間圧延用ロールおよびこのロールを用いた高硬度高炭素薄鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、SK−5等のC量0.65%以上の高硬度高炭素薄鋼板であって、製品板厚が0.6mm以下の鋼板を冷間圧延により製造するには、ワークロールの一部に小径ロールを用いた圧延が必要となる。これは小径ロールは通常ロールに較べて1ロール当たりの圧下率を高くできるため硬質材の圧延が可能であり、また、通常ロールではロールが扁平して圧延限界に達する場合でも、小径ロールを用いればロールの扁平が小さいため薄い板を圧延することができるからである。
【0003】高硬度高炭素鋼板を薄板に冷間圧延する際、ワークロールとして通常ロールを用いた場合には、ロール組替とロール組替の間を1セットとすると、圧延量が600トン/セット程度でもそれ程磨耗しないが、ワークロールとして小径ロールを用いた場合には、小径ロールは磨耗しやすいため200トン/セット程度の圧延量しか使用できない。このように小径ロールを用いて高硬度高炭素鋼板を薄板に圧延するに際しては、この小径ロールの寿命の短さが製造上のネックとなっている。さらに、ワークロールに小径ロールを用いる場合は、中間ロールが必要となるが、中間ロールも磨耗するため、ロールの研磨はワークロールと中間ロールについて実施する必要がありコストがかかる。
【0004】そこで、高硬度高炭素鋼板などの冷間圧延においてワークロールに小径ロールを用いる場合には、ロールの寿命を延長させる必要がある。ロールの寿命を延長するには圧延用ロールの表面を硬化させる方法が有効であり、これにはロール表面を焼入れ処理する方法やロール表面をCrメッキする方法が一般的に採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の焼入れ処理やCrメッキ方法によるロールの硬化処理では、硬度むらが発生する問題がある。つまり、焼入れ処理では加熱炉内での加熱が均一でないことによる硬度むらが発生し、Crメッキ方法ではロール研磨後にロールにCrメッキを施す方法として、例えばメッキ液槽内の縦方向にロールを配置したメッキ装置を用いる場合には、ロール周方向に電流のむらが発生することがあり、そのときはロール周方向でクロムめっき厚が異なり、その結果クロムめっき後のロール周方向の硬度むらが発生する。ロール周方向に硬度むらがあると、ロールが偏心して鋼板表面に幅方向線状マークが発生したり、板厚変動が発生したりして品質上問題となる。
【0006】したがって本発明の目的は、ロール表面に硬度むらがなく、長期間の使用に耐え得る冷間圧延ロールを提供することにある。また、本発明の他の目的は、冷間圧延ロールの磨耗を極力抑制しつつ高硬度高炭素鋼板を効率的に冷間圧延して薄板を製造することができる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の冷間圧延用ロールおよび高硬度高炭素薄鋼板の圧延方法は、以下のような特徴を有する。
【0008】(1)ショットピーニング処理を施して硬化させたロール面を有し、該ロール面の硬度がショア硬度で95以上であり、且つロール周方向および軸方向のロール面の中心線平均粗さRaが0.3〜0.5μmであることを特徴とする冷間圧延用ロール。
【0009】(2)冷間圧延機列の後段スタンドに、上記(1)に記載の小径の冷間圧延用ロールを備えた圧延スタンドを設置し、この冷間圧延機列で高硬度高炭素鋼板の圧延を行うことを特徴とする高硬度高炭素薄鋼板の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の冷間圧延用ロールは、ショットピーニング処理を施して硬化させたロール面を有し、このロール面は硬度がショア硬度で95以上であり、且つロール周方向および軸方向のロール面の中心線平均粗さRaが0.3〜0.5μmである。
【0011】ショットピーニング処理とは、ロール表面に球状の粒子を衝突してロール表面を硬化する処理のことである。本発明においてショットピーニング処理を行うのは、ロール面の硬度を上げて耐磨耗性を得るためである。
【0012】本発明のロール面の硬度がショア硬度で95以上と規定するのは、耐磨耗性を得るためで、95未満では従来のロール表面硬化方法によるロール表面のショア硬度となって十分な耐磨耗性が得られないからである。
【0013】従来のロールは、ロール周方向と軸方向とでロール表面の中心線平均粗さRaが異なっていたが、本発明ではロール周方向と軸方向の両方向を共に0.3〜0.5μmと規定している。ロール表面の中心線平均粗さRaが0.5μmを超えて粗すぎると圧延負荷が高くなりすぎるし、ロール表面の中心線平均粗さRaが0.3μm未満で粗さが低すぎるとスリップが発生しやすくなるからである。
【0014】スリップ発生なしで圧延できる量(圧延長等)をロール寿命と考えるので、ロール粗さを上げる方がスリップしないでロール寿命を上げることができる。
【0015】上述した構成を有する冷間圧延用小径ロールを、高硬度高炭素鋼板の圧延に用いることは有用である。ここで、冷間圧延用小径ロールの好ましい直径は約150mm〜300mmである。
【0016】上記ロール面の硬度およびロール面の粗さを得るためのショットピーニング処理の好ましい条件は、平均粒径30〜60μmの球状のショット粒子を用い、且つ粒子の衝突速度は100〜200m/秒である。
【0017】次に、上述した構成を有する冷間圧延用小径ロールを用いた本発明の高硬度高炭素薄鋼板の製造方法について説明する。
【0018】この高硬度高炭素薄鋼板の製造方法では、冷間圧延機列の後段スタンドに、上述の小径の冷間圧延用ロールを備えた圧延スタンドを設置し、この冷間圧延機列で高硬度高炭素鋼板の圧延を行う。
【0019】ここで、高硬度高炭素薄鋼板とは通常JIS G 4401炭素工具鋼鋼材およびJIS G 4051機械構造用炭素鋼鋼材に規定された種類に相当する化学成分を有するものを対象とする。
【0020】冷間圧延機列の後段スタンドに、上述の小径の冷間圧延用ロールを備えた圧延スタンドを設置するのは、後段になるほど鋼板が加工硬化して圧延荷重が高くなり、通常ロールだと高荷重でも圧下量がとれないからである。したがって低荷重で高圧下が可能な小径ロールを後段に設置する。
【0021】高硬度高炭素薄鋼板の冷間圧延方法の好ましい条件は以下の通りである。冷間圧延を行う冷間圧延機に特に制限はない。ただし、鋼板が高硬度で薄鋼板に圧延するときの冷間圧延機の好ましい形態としては、以下があげられる。
【0022】複数圧延スタンドであること。好ましくは4スタンド以上である。また、少なくとも最終スタンドまたはこれを含む後段側の複数スタンド(2〜3スタンド)のワークロールが、小径ロールで構成される。それ以外のスタンドのワークロールは通常ロールで構成される。ここで、小径ロールの好ましい直径は約150mm〜300mmであり、通常ロールの好ましい直径は約400mm〜600mmである。
【0023】図1は本発明法の実施に供される冷間圧延機の一実施形態を示すもので、本実施形態の冷間圧延機は4段圧延機(4Hi)で構成される圧延スタンドを5スタンド有しているが、一般に高硬度高炭素鋼板の圧延の時は第4および第5スタンドに小径ロールを用いるので、第4および第5スタンドは6段圧延機(6Hi)となる。この時は、第1〜第3スタンドのワークロール径が例えば550φであるのに対し、第4および第5スタンドはワークロールが小径ロールで構成され、小径ワークロール径は例えば200φである。図1において、1はワークロール、2はバックアップロール、3は中間ロールを示す。
【0024】一般に、C量が0.65%以上の原板厚1.6mmから板厚0.6mm以下まで高圧下率にて冷間圧延する高硬度高炭素薄鋼板を製造するのには、上記の第4および第5スタンドのワークロールに小径ロールが用いられる。
【0025】図3は本発明法と従来の焼入れ処理やCrメッキ方法による従来のロール表面硬化方法における圧延時摩擦係数と圧延長との関係の一例を示すブラフである。
【0026】ここで、スリップ限界摩擦係数とは、図2に定義されるものである。図2において、Tbをロールの後方張力、Tfをロールの前方張力、Pを圧延力の圧延方向に直角の成分、αを摩擦角とするとスリップ限界係数μは下式(1)で表される。
μ=(Tb−Tf)/2P+sin(α/2)…(1)
【0027】図3に示すように、本発明法のショットピーニング処理を施した小径ロールを用いて高硬度高炭素鋼板を圧延することにより、スリップ限界摩擦係数に対して圧延長を延長できる。図3で用いた小径ロールには粒子の平均粒径が60μmであり、且つ粒子の衝突速度が150m/秒であるショットピーニング処理を施している。これにより、従来のロール表面硬化方法によりロール表面を硬化した小径ロールを用いた高硬度高炭素薄鋼板の圧延方法ではスリップ限界摩擦係数により圧延長50kmしか連続圧延できないところを、本発明法では圧延長75kmにまで拡大することができる。これは、ロール表面の耐磨耗性が向上したことで粗さの低下を抑えることができるからである。図3において、本発明法では、圧延が進むにつれて従来法に対して摩擦係数がよりなだらかに減少していくことがわかる。これによりスリップが防止できる。
【0028】
【実施例】図1に示す冷間圧延機において、SK−5材を小径ロールの表面にショットピーニング処理を施したロールを用いて圧延を実施した。
【0029】図1に示す冷間圧延機は、4段圧延機(4Hi)で構成される圧延スタンドを5スタンド有しているが、SK−5材を圧延する時は第4および第5スタンドを6段圧延機(6Hi)に組替えて圧延した。すなわち、第4および第5スタンドの直径198mmの上下のワークロールに対し、粒子の平均粒径が60μmであり、且つ粒子の衝突速度が150m/秒であるショットピーニング処理を施した。その結果、ロール表面中心線平均粗さRaおよびショア硬度HSは上ワークロールがそれぞれRa=0.38μm、HS=95となり、下ワークロールがそれぞれRa=0.41μm、HS=96となった。
【0030】上記のロールを用いて高硬度高炭素薄鋼板の圧延を実施したところ、従来のロール表面硬化方法では圧延トン数が200トンであったものが、本発明法では300トンにまで拡大することができた。また、従来のロール表面硬化方法では圧延長が50kmであったものが、本発明法では75kmにまで拡大することができた。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ショットピーニング処理を施した冷間圧延用小径ロールによりロール寿命を長くすることができて、ロールの原単位の向上が図ることができ、前記ロールを用いて高硬度高炭素薄鋼板を連続的に増産することができる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目1番2号
【出願日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【代理人】 【識別番号】100116230
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 泰光
【公開番号】 特開2003−10908(P2003−10908A)
【公開日】 平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願番号】 特願2001−198912(P2001−198912)