トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き




【発明の名称】 連続熱間圧延方法および圧延設備
【発明者】 【氏名】倉橋 隆郎
【住所又は居所】大阪市大正区船町1丁目1番66号 株式会社中山製鋼所内

【氏名】大谷 崇
【住所又は居所】大阪市大正区船町1丁目1番66号 株式会社中山製鋼所内

【氏名】森本 敬治
【住所又は居所】大阪市大正区船町1丁目1番66号 株式会社中山製鋼所内

【氏名】高橋 昌範
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号 川崎重工業株式会社神戸工場内

【氏名】高岡 真司
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号 川崎重工業株式会社神戸工場内

【要約】 【課題】メッキ等の効率的な実施に適した鋼板の生産をきわめて好ましい態様で実施可能にする連続熱間圧延方法および連続熱間圧延設備を提供する。

【解決手段】複数スタンドのミルF1〜F6を用いて鋼板Pを熱間仕上げ圧延し、後段の3スタンドのミルF4〜F6の出側でカーテンウォール冷却装置7を使用して、鋼板Pの圧延終了温度を800℃以下にすることにより、鋼板Pの表面の平均スケール厚さを3μm以下にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数スタンドのミルを用いて鋼板を熱間仕上圧延し、後段の少なくとも2スタンドのミルの出側で冷却手段を使用して鋼板の圧延終了温度を800℃以下にすることにより、冷却後の鋼板表面の平均スケール厚さを3μm以下にすることを特徴とする連続熱間圧延方法。
【請求項2】 後段の3スタンド以上のミルの出側で冷却手段を使用し、圧延終了温度を500℃以上・750℃以下とし、冷却後の鋼板表面の平均スケール厚さを0.5μm以上・3μm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の連続熱間圧延方法。
【請求項3】 上記の各冷却手段により鋼板の表面を20℃/sec以上の速度で温度降下させることを特徴とする請求項1または2に記載の連続熱間圧延方法。
【請求項4】 鋼板の圧延を、後段スタンドにおける累積歪みが0.9以上になるように行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の連続熱間圧延方法。
【請求項5】 炭素含有量が0.1%以下である低炭素鋼鋼板の圧延を、圧延終了温度をAr3変態点以下にすることにより行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の連続熱間圧延方法。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の連続熱間圧延方法を実施するために、後段の少なくとも2スタンドのミルの出側における上記の各冷却手段として、幕状の連なった冷却水を鋼板の上下表面に当てるカーテンウォール冷却装置を備えることを特徴とする圧延設備。
【請求項7】 上記のカーテンウォール冷却装置が、鋼板の幅1mあたりに100m3/h以上の冷却水を当てるものであることを特徴とする請求項6に記載の圧延設備。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】請求項に記載の発明は、鋼板を連続熱間圧延するための方法および設備であって、とくに、製造した鋼板表面のスケールが薄くてメッキ鋼板等の製造上都合のよいものに関する。
【0002】
【従来の技術】鋼板を熱間で仕上圧延する場合、鋼板の表面には、スケールすなわち酸化皮膜が形成される。一般的な仕上圧延ではスケールの厚さが8μm程度になり、鋼板は、そのようなスケールを酸洗等のデスケーリング手段によって取り除いたうえ冷間圧延やメッキ等の工程に送るのが通常である。スケールの除去を行うのは、スケールが付いたままの鋼板に冷間圧延やメッキ等を施す場合には、表面品質のすぐれた冷間圧延鋼板が得られなかったり、鋼板表面に対するメッキの密着性が低下したりするからである。
【0003】ところで、特開平11−57838号公報には、鋼板の製造に関してスケール厚さを均一化することの可能な方法が記載されている。すなわち、同公報によれば、熱間圧延を終了した鋼板をカーテン状の水流で冷却することにより、むらがなくて鋼板への密着性の高いスケールを得ることができるとされている。
【0004】また、特開平10−158802号公報には、粗圧延して得たシートバーに高圧水によるデスケーリングを施したのちすぐに(5秒以内に)熱間仕上圧延を行うことによってスケールの平均厚さが3μm以下の熱延鋼板を製造し、さらに当該鋼板をもとにして、酸洗することなく効率的に溶融メッキ鋼板を製造する技術が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】特開平11−57838号公報には、連続的に熱間仕上圧延する鋼板をどのような方法でどの程度冷却すればスケール厚さが効果的に薄くなるのか、またその厚さをどれだけにするのが好ましいのかについて、具体的な記載がない。本件発明者らの調査では、熱間圧延を終了した段階で鋼板を冷却するだけでは十分な冷却効果が得られず、仕上圧延中に発生したスケールを除去できない。また仮に、圧延速度を遅くするとともに水量を増すことにより冷却効果を高めてスケール厚さをゼロに近づけたとしても、相当のコストがかかるにもかかわらず低速度であるがために生産量が低く、実質的な利益に結び付かないことがある。
【0006】一方、特開平10−158802号公報は、熱延鋼板のスケール厚さを3μm以下にすれば溶融メッキに先立つ酸洗処理が不要になることを示すものではあるが、記載された方法では熱延鋼板を必ずしも容易には製造できない。粗圧延とその後のデスケーリングおよび仕上圧延の各工程間に、厳しい時間的制約が課されるからである。また、本件発明者らの調査では、熱間仕上圧延よりも前または当該圧延のうち前段におけるスケールの除去よりも、仕上圧延の後段におけるスケールの発生防止の方がむしろ重要である。
【0007】請求項に記載の発明は、メッキ等の効率的な実施に適した鋼板の生産を、費用対効果および工程的な実施可能性の面をも含め、きわめて好ましい態様で実施可能にする連続熱間圧延方法および連続熱間圧延設備を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載した連続熱間圧延方法は、・ 複数スタンドのミルを用いて鋼板を熱間仕上圧延し、・ 後段の少なくとも2スタンド(最終段を含む2スタンドまたはそれ以上)のミルの出側で冷却手段を使用して、・ 鋼板の圧延終了温度(つまり最終段スタンドの出側での冷却後の鋼板温度)を800℃以下(望ましくは800℃未満)にすることにより、・ 冷却後の鋼板表面の平均スケール厚さを3μm以下にすることを特徴とする。
【0009】この連続熱間圧延方法には、互いに関連し合う以下のような作用がある。まず、最終段スタンドのみでなく後段における2スタンド以上のミルの出側にて冷却手段を使用するので、鋼板を十分に強く冷却することができる。そしてそれにより圧延終了温度を800℃以下の比較的低い値に保つことから、熱間仕上圧延中(とくに後段の2スタンド以上のミルにおいて)鋼板表面に厚くスケールの発生することを防止し、上記したように平均スケール厚さが3μm以下の鋼板(熱延鋼板)を安定的に得ることができる。
【0010】後段の2スタンド以上で使用する上記の冷却手段により鋼板を強く冷却できるので、800℃以上を圧延終了温度とする従来の通常の熱間圧延と比べて圧延速度(鋼板の送り速度)をさほど遅くすることなく、圧延終了温度を800℃以下に下げることが可能である。したがって、鋼板の生産量を十分に確保することができ、それにともなって鋼板の単価を低いレベルに保つことが可能になる。
【0011】後段の2スタンド以上において冷却手段を使用し前段では鋼板を冷却しないこととしても、熱間圧延終了後の段階でのスケール厚さは効果的に減少させることができる。仕上圧延より前または仕上圧延の前段において鋼板表面上に発生したスケールは、後段等で圧延され薄く延ばされてしまうからである。つまりこの連続熱間圧延方法は、必要不可欠な冷却手段のみを使用することとして冷却に要するコストを抑制するものともいえる。
【0012】冷却後の鋼板表面の平均スケール厚さを3μm以下にするので、前記の公報(特開平10−158802号)に記載されているように、その熱延鋼板は、酸洗ラインを経ることなく、還元熱処理設備をもつメッキラインに直接に通すことによりスケールを還元し、効率的にメッキ鋼板とすることが可能である。メッキ工程において酸洗が不要になれば、酸洗槽やその機能維持のための設備等が不要になって設備コストの合理化がはかれる。熱延鋼板を冷間圧延する場合にも、平均スケール厚さが3μm以下であれば、鋼板に対するスケールの密着性が高いため、酸洗等のデスケーリングを省略しながらも十分な品質の冷延鋼板を得ることができる。
【0013】以上により、この連続熱間圧延方法では、スケール厚さの薄い熱延鋼板の製造およびそれをもとにするメッキ鋼板の製造を、設備コストを抑制するとともに生産量を確保する種々の関連作用により、経済合理性を失うことなく実施することができる。またこの方法は、粗圧延や仕上圧延、メッキ等の各工程間に時間的制約を課すものではないので、実施上、工程的な困難性がともなうこともない。
【0014】請求項2に記載した連続熱間圧延方法は、とくに、・ 後段の3スタンド以上(最終段を含む)のミルの出側で冷却手段を使用し、・ 圧延終了温度を500℃以上・750℃以下とし、・ 冷却後の鋼板表面の平均スケール厚さを0.5μm以上・3μm以下とすることを特徴とする。
【0015】かかる圧延方法によれば、請求項1に記載した方法による生産をとくに効果的かつ安定的に行うことが可能である。発明者らの調査によれば、・ 平均スケール厚さが3μm以下の鋼板を安定的に得るうえでは、最終段を含む後段3スタンド以上のミルの出側にて冷却手段を使用し、かつ圧延終了温度を500℃以上・750℃以下にするのが最も好ましいうえ、・ 平均スケール厚さは、上記のように3μm以下であればメッキ鋼板の製造上十分なメリットが得られ、0.5μm未満にまでスケールを薄くしても、そのための冷却に要するコストや圧延速度(生産量)の点で逆に利益が得られがたいからである。
【0016】請求項3に記載の連続熱間圧延方法は、とくに、上記の各冷却手段により鋼板の表面を20℃/sec以上の速度で温度降下させることを特徴とする。
【0017】各冷却手段にこれだけの冷却能力があれば、それぞれが鋼板を十分に強く冷却できるため、従来の一般的な熱間圧延と比べて圧延速度をほとんど遅くすることなく圧延終了温度を800℃以下にすることができる。したがって、上述のように鋼板の生産量を確保して鋼板を低単価に保つうえで、とくに有利である。なお、その意味では各冷却手段の冷却能力は高い方が望ましいこと、圧延速度や圧下率を高くする際には加工発熱がともなうのでそれを十分に上回る冷却能力が必要であることを考慮すると、たとえば、鋼板の板厚と圧延速度との積が1200mm・mpmであるとき60〜80℃/sec(加工発熱による温度上昇を差し引いて40℃/sec程度以上)の冷却速度が実現されるのが好ましいといえる。
【0018】請求項4に記載の連続熱間圧延方法はとくに、鋼板の圧延を、後段スタンドにおける累積歪みが0.9以上になるように行うことを特徴とする。なお「歪み」とは、各段のスタンドの入り側での鋼板の厚さh0と出側での厚さh1の差を両者の平均厚さで除したε=(h0−h1)/{(h0+h1)/2}
をいう。また「累積歪み」とは、上記スタンドのうち後段3スタンドの各段(それらより上流側のスタンドは影響力が小さいので無視する)での歪みを、金属組織に対する影響の強さを考慮して加重積算したもので、最終段とその前段・前々段での歪みをそれぞれεn、εn-1、εn-2とするとき、εc=εn+εn-1/2+εn-2/4で表されるεcをいうものとする。
【0019】この圧延方法によれば、前記したようにスケールの薄い熱延鋼板の製造およびそれをもとにするメッキ鋼板の製造を合理的に行えるばかりでなく、微細フェライト組織(結晶粒径が4μm程度以下)を有していて機械的性質の高い細粒鋼熱延鋼板を円滑に製造することが可能になる。金属組織に対する影響力の強い後段のスタンドにおいて累積歪みが上記の値になる程度の高圧下を行うことにより、いわゆる大圧下圧延法(特開昭58−123823号公報などを参照)を実施でき、鋼板についてオーステナイト(γ)相からフェライト(α)相への歪誘起変態が促進されて当該鋼板の組織の微細化が実現するからである。複数スタンドの出側で使用する上記の各冷却手段が十分な冷却能力を発揮するなら、大圧下にともなって加工発熱があるにもかかわらず当該鋼板を適切な温度域に保って微細組織の粒成長を抑制できる、という点も、細粒鋼鋼板の製造を可能にする重要な因子である。
【0020】なお、圧延対象としては、たとえば炭素含有量が0.5%以下であり合金元素の含有量が5%以下の鋼板が好ましい。そのような化学的成分を有する細粒鋼熱延鋼板なら、機械的性質のバランス(引張強さや延性等の面で汎用性がある)や溶接性の高さなどから用途が広く、比較的低価であって入手容易であるうえにリサイクル性もあること等から、きわめて需要が高いはずだからである。つまり、そのような成分含有量の鋼板なら、社会的貢献度が高いうえその生産に十分な経済合理性がともなうといえる。圧延中の鋼板の温度は、Ar3変態点の前後に保つのが好ましく、上記の成分の鋼板なら750〜800℃程度にするとよい。また、低い圧延荷重で上記のような高圧下を行えるようにし、かつエッジドロップ等の不都合を回避するためには、少なくとも後段の複数スタンドに直径が550mm程度以下の小径ワークロールを有するミルを用いるのが好適である。
【0021】請求項5に記載した連続熱間圧延方法はとくに、炭素含有量が0.1%以下である低炭素鋼鋼板の圧延を、圧延終了温度(前記)をAr3変態点以下(つまりフェライト域の温度)にすることにより行うことを特徴とする。
【0022】この圧延方法も、前記したとおり後段の複数スタンドの出側にて冷却手段を使用等するものであるから、スケールの薄い熱延鋼板の製造およびメッキ鋼板の合理的な製造を可能にする。しかし、この請求項の方法ではさらに、上記のような低炭素鋼鋼板をAr3変態点以下のフェライト域温度範囲で熱間仕上圧延することから、その後の処理によってはその鋼板の加工性を著しく高めることが可能になる。すなわち、熱間圧延にて鋼板中に{111}集合組織が形成され、その後の焼鈍工程によりその組織が発達して、いわゆるランクフォード値の高い、深絞りなどの加工に適した性質をもつものとなる(前掲した特開平10−158802号公報における段落0021を参照)。なお、鋼種や圧延条件等によっては、圧延中の剪断変形により特定方向の{111}集合組織が不形成になるのを防止すべく、ロール表面と鋼板との間に潤滑剤を使用するのがよい。
【0023】請求項6に記載した圧延設備は、上述の連続熱間圧延方法を実施するために、後段の少なくとも2スタンドのミルの出側における上記の各冷却手段として、幕状の連なった冷却水を鋼板の上下表面に当てるカーテンウォール冷却装置(スリットラミナーとも呼ばれる)を配置したことを特徴とする。
【0024】カーテンウォール冷却装置は、幕のような連なった冷却水を上記のように流すことにより、スプレー水等によるよりも圧延鋼板を強く冷却することができる。圧延する鋼板の全幅にわたって冷却水を当てるため、幅方向にも偏ることなく鋼板を均一に冷却できる。その幕の厚みを増し、鋼板の単位幅あたりの水量を増大させると、冷却能力を一層増強することも可能である。そのようなカーテンウォール冷却装置を、最終段スタンドの出側のみではなく後段の少なくとも2スタンドのミルの出側に配置したので、この圧延設備では、鋼板を十分に冷却して上記した連続熱間圧延方法の適切な実施をはかることができる。なお、カーテンウォール冷却装置は、幕のように連なった冷却水により鋼板の上下表面を全周的に覆うので、高温域にある鋼板表面と空気との接触を防止する作用があり、その作用によっても鋼板表面に生じるスケールの厚さを低減する。
【0025】請求項7に記載した圧延設備はとくに、上記のカーテンウォール冷却装置として、鋼板の幅1mあたりに100m3/h以上の冷却水を当てるものを使用することを特徴とする。
【0026】こうした圧延設備なら、そのまま請求項3の圧延方法を実施することが可能である。一般的な条件で行われる熱間仕上圧延においては、カーテンウォール冷却装置にて上記の量の冷却水が鋼板に当てられると、その表面温度は20℃/sec以上の速度で降下するからである。請求項3の方法が実施されると、前記したように高い圧延速度でスケールの薄い鋼板を製造することができ経済合理性の点で好ましい。なお、カーテンウォール冷却装置の冷却能力を前記したように一層高くして効果を増す意味では、鋼板の幅1mあたりの冷却水量を500m3/h程度にまで増やせるよう構成するのが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】発明の実施に関する一形態を図1および図2等に示す。図1は、鋼板Pの連続熱間仕上圧延設備Aについて全体配置を概念的に示す側面図であり、図2は、その圧延設備Aのうち、鋼板Pの冷却手段であるカーテンウォール冷却装置7(7A〜7H)の配置等を示す側面図である。なお、図1に示す圧延設備Aは仕上圧延機であるため、上流側(図示省略)には加熱炉と粗圧延設備があり、下流側(図示省略)にはランアウトテーブルや巻取り機などが配置されている。
【0028】図1に示すように、圧延設備Aは、それぞれに圧延ロールを備える合計6スタンドのミルF1〜F6をタンデムに配置したものである。これらのうち、前段の3スタンドのミルF1〜F3はいわゆるCVCミルである。たとえば最前段のミルF1は、ワークロール1a・1bとバックアップロール1c・1dとからなる4重の圧延設備として構成し、ワークロール1a・1bに、軸長方向位置によって直径が連続的に変化するクラウン(CVC)を付与している。それらワークロール1a・1bは上下で互いに反対の軸長方向へ同時に移動(シフト)させることができ、それによってロールギャップを調整することが可能である。ワークロール1a・1bの径は700mmと小さめに設定している。他の2段のミルF2・F3にも、ミルF1と同様の構成および機能をもたせている。CVCミルF1・2・3を前段に配置したので、あらかじめ板クラウンを修正し、後段での鋼板Pの中絞り等を軽減して圧延終了後の鋼板Pのクラウン(形状)を好適に保つことができる。
【0029】続く後段3スタンドのミルF4〜F6としては、いわゆる異径ロールミルを配置している。ミルF1から数えて第4スタンドにあたる異径ロールミルF4は、図1のようにワークロール4a・4bとバックアップロール4c・4dとからなる4重の圧延設備として構成し、ワークロール4a・4bとして直径の異なるものを使用している。そしてワークロール4a・4bのうち下部にある大径側のロール4bのみをモータ等(図示せず)にて回転駆動し、上部の小径のロール4aについては、回転自在にして駆動力をかけないこととした。ワークロール4aの径は480mm、ワークロール4bの径は600mmで、両者の平均である等価ロール径は540mmである。このような構成および機能は、後方にある他の2段の異径ロールミルF5・F6においても同様である。これらのミルF4・F5・F6は、等価ロール径が小径であることと、一方のワークロール(4bなど)のみを駆動するため鋼板Pに剪断力が作用することから、比較的低い圧延荷重でも圧下率の高い(たとえば圧下率50%までの)圧延を実施することが可能である。この機能を最大限に利用すれば、鋼板P中に微細なフェライト組織を形成する大圧下圧延等を比較的小さな圧延荷重で行うことができ、しかもその際、圧延荷重が小さいためにロール偏平やエッジドロップによる不都合を回避することもできる。
【0030】後段における上記3スタンドのミルF4・F5・F6の各出側には、カーテンウォール冷却装置7を配置している。図2に示すように、配置した箇所は正確にはミルF4・F5・F6の各出側とミルF5・F6の各入り側である。冷却装置7(7A〜7H)のそれぞれは、上方または下方にヘッダー部分を有し、それより鋼板Pの全幅表面に向けて、層流またはそれに近い状態で幕状(厚さは10mm以上であり最適厚さが16mm)に大量の常温冷却水(ラミナーフロー。たとえば図2中の符号f)を流し当てることにより、鋼板Pを強く冷却する。それぞれにおける冷却水の量は、鋼板Pの単位幅(1m)あたり100〜500m3/hの範囲内で調整可能で、冷却による鋼板Pの温度降下は20℃/sec以上になる。後述する例により大圧下圧延を行う場合等には単位幅あたりに350m3/hまたはそれ以上の冷却水を使用するが、その場合の鋼板Pの温度降下は、板厚と速度との積が1200mm・mpmであるとき60〜80℃/sec(加工発熱による温度上昇を含めて40℃/sec前後)に達する。このような冷却装置7を後段3スタンドのミルF4・F5・F6の各出側で使用することにより、圧延速度を高く保ちながらも鋼板Pを十分に強く冷却することができる。すべての冷却装置7A〜7Hを使用すれば、圧延終了温度(最終段のミルF6より数m下流側に設置した温度計により計測される鋼板Pの表面温度)を500℃前後にすることも可能である。
【0031】発明者らの調査によると、熱間圧延設備A中のとくに後段における広域内で鋼板Pの温度を下げると、当該鋼板Pの表面スケール厚さを効果的に薄くすることができる。そして、後段にある少なくとも2スタンドのミルF5・F6の出側にて図2のカーテンウォール冷却装置7D・7E・7F・7G・7Hを使用し、圧延終了温度が800℃以下になるよう鋼板Pを冷却すれば、その鋼板Pの冷却後の平均スケール厚さが概ね3μm以下になる。そのようにスケール厚さを薄くした鋼板Pは、スケールの密着性が高いためにそのまま(スケールを除去せずに)冷間圧延工程に送っても良好な冷延鋼板にすることができ、またメッキ鋼板とする場合にも、メッキラインにおいてメッキ槽などの上流側にある加熱・還元炉において当該スケールの全量を還元し得るため、酸洗等のデスケーリングを省略することが可能である。
【0032】また、上記のように強力な冷却能力を有するカーテンウォール冷却装置7を活用しながら圧下率の高い大圧下圧延を行う場合には、製造する鋼板Pのスケール厚さを薄くするとともに、微細フェライト組織を有していて機械的性質にすぐれる細粒鋼鋼板を製造することができる。冷却装置7に十分な冷却能力を発揮させれば、単に鋼板Pの温度を低くするだけでなく、大圧下圧延にともなう加工発熱による温度上昇をも抑制して、圧延中および圧延直後の鋼板Pを細粒鋼の製造に適した温度域(Ar3変態点の付近)に保つことが可能だからである。なお、そうして細粒鋼鋼板を製造する場合には、図1の熱間圧延設備Aの下流側にあるランアウトテーブル(前記。図示せず)においても、粒成長を防止すべく冷却水にて10℃/sec以上の速度で鋼板Pを冷却する。
【0033】図1の熱間仕上圧延設備Aでは、以上のほか、最終段スタンドであるミルF6の出側であってカーテンウォール冷却装置7(7G・7H)から数百mm〜1mほど下流側の位置に、水噴射スプレー8を配置している。これは、冷却装置7G・7Hによって鋼板Pの表面に載った冷却水を除去するためのもので、鋼板Pの表面に向けて斜め前方へ加圧水を吹き出すものである。このような水噴射スプレー8を使用すれば、冷却装置7の作用で鋼板P上に載った冷却水を円滑に除去できるので、その下流側にある各種計測器(温度計など)によって、圧延後の鋼板Pに関する種々の値(圧延終了温度など)を適切に計測することができる。
【0034】
【実施例】以上に述べた圧延設備Aを用いて熱間圧延を行った例を以下に示す。C:0.16%、Si:0.22%、Mn:0.82%(他に有意量の成分を含まない)の化学成分を有する鋼について、圧延設備Aを用い、厚さ2.3mm・幅650mmの鋼板を製造した。このとき、後段における3スタンドのミルF4〜F6では、圧下率を40%以上とって累積歪みを0.9以上にするいわゆる大圧下圧延を行った。圧延速度についてはとくに制限を設けず、一般のホットストリップミルで常用されている圧延スピード(たとえば7〜9m/sec)を採用した。そして圧延の際、カーテンウォール冷却装置7(7A〜7H)の使用条件を種々変更し、製造したそれぞれの鋼板Pについて冷却後のスケール厚さを測定した。
【0035】図3は、そのようにして測定した平均スケール厚さ(単位はμm)と圧延終了温度(FDT。単位は℃)および当該冷却装置7の使用状況との関係を示すグラフである。図3中、「CWC」はカーテンウォール冷却装置7を意味し、「CWC 3スタンド」(図中に×にて表したもの)は、当該冷却装置7を3組、すなわち後段3スタンドの各ミルF4〜F6の出側にある冷却装置7A〜7Hをすべて使用する例を示す。同様に、「CWC 2スタンド」(図中に▲にて表したもの)は、冷却装置7を2組、すなわち後段2スタンドの各ミルF5・F6の出側にある冷却装置7D〜7Hを使用する例である。また、「CWC 1スタンド」(図中に●にて表したもの)は、冷却装置7を1組、すなわち最終段スタンドのミルF6の出側にある冷却装置7G・7Hを使用する例であり、「CWC 0スタンド」(図中に◆にて表したもの)は、どの冷却装置7をも使用しない例である。
【0036】図3によると、最終段スタンドを含む後段3スタンドのミルF4〜F6または後段2スタンドのミルF5・F6の出側においてカーテンウォール冷却装置7を使用し、かつ圧延終了温度を800℃以下にするとき、その鋼板Pの冷却後の平均スケール厚さをほぼ確実に3μm以下できることが分かる。とくに、後段3スタンドのミルF4〜F6の出側においてカーテンウォール冷却装置7を使用し、かつ圧延終了温度を650℃以上・750℃以下にすると、鋼板Pの平均スケール厚さをより確実に3μm以下にし、1μm程度にまで薄くし得ることも読み取ることができる。
【0037】後段3スタンドのミルF4〜F6の出側においてカーテンウォール冷却装置7を使用し、かつ圧延終了温度を700℃にした例について、得られた鋼板Pの結晶組織を図4に示す。すなわち図4の(a)・(b)は、その鋼板Pについて上表面付近と下表面付近とにおける結晶組織をそれぞれ示している。表面(上面および下面)のスケール厚さが1〜2μmであること、ならびに、鋼板Pが微細なフェライト組織を有することが分かる。
【0038】なお、この実施例には特定の化学的成分の鋼板Pについて圧下率(累積歪)の高い特定のパススケジュールで圧延する場合のみを示したが、他の鋼種(たとえば低炭素鋼)のものを異なる圧延条件(たとえば各段の圧下率が30%程度以下のもの)で圧延する場合であっても、図3に示す平均スケール厚さと圧延終了温度および冷却装置7の使用状況の関係はほとんど共通である。
【0039】
【発明の効果】請求項1に記載した連続熱間圧延方法によれば、・ 後段における2スタンド以上のミルの出側で使用する冷却手段の作用により鋼板を十分に強く冷却でき、平均スケール厚さが3μm以下の鋼板(熱延鋼板)を安定的に得ることができる、・ 鋼板を強く冷却できるので、圧延速度を遅くする必要がほとんどなく、したがって鋼板の生産量を十分に確保できて鋼板の単価を低くすることが可能である、・ スケール厚さの減少に効果の大きい後段のスタンドのみで冷却手段を使用するので、冷却に要するコストに無駄がない、・ 鋼板表面の平均スケール厚さを3μm以下にするので、酸洗等のデスケーリングを省略して効率的にメッキや冷間圧延の工程を進めることができ、設備費用や生産量の面で合理化を図ることができるといった作用が関連し合い、スケール厚さの薄い熱延鋼板の製造およびそれをもとにするメッキ鋼板の製造が経済合理性をもって実施可能になる。
【0040】請求項2に記載の連続熱間圧延方法によれば、請求項1に記載した方法による生産をとくに効果的かつ安定的に行うことができる。
【0041】請求項3に記載の連続熱間圧延方法は、上述のように鋼板の生産量を確保して鋼板を低単価に保つうえでとくに有利である。
【0042】請求項4に記載の連続熱間圧延方法によれば、スケールの薄い熱延鋼板の製造およびそれを用いるメッキ鋼板の製造を合理的に行えるばかりでなく、微細フェライト組織を有していて機械的性質の高い細粒鋼熱延鋼板を円滑に製造することが可能になる。
【0043】請求項5に記載した連続熱間圧延方法では、深絞りなどの加工に適した性質をもつ鋼板を製造することも可能である。
【0044】請求項6に記載した圧延設備では、鋼板を十分に冷却して上記した連続熱間圧延方法の適切な実施をはかることができる。高温域での鋼板表面と空気との接触が防止されるために鋼板表面のスケールの厚さが一層に低減するという効果もある。
【0045】請求項7に記載した圧延設備なら、そのまま請求項3の圧延方法を実施することが可能であり、したがって、高い圧延速度でスケールの薄い鋼板を製造することができ経済合理性の点で好ましい。
【出願人】 【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号
【識別番号】000150280
【氏名又は名称】株式会社中山製鋼所
【住所又は居所】大阪府大阪市大正区船町1丁目1番66号
【出願日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【代理人】 【識別番号】100107825
【弁理士】
【氏名又は名称】細見 吉生
【公開番号】 特開2003−10905(P2003−10905A)
【公開日】 平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願番号】 特願2001−200179(P2001−200179)