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【発明の名称】 土壌中ダイオキシン類の分解除去方法
【発明者】 【氏名】古市 徹

【氏名】中宮 邦近

【要約】 【課題】微生物を利用した土壌中のダイオキシン類の効果的な分解除去方法、特に、ダイオキシン類により汚染された土壌のダイオキシン類の簡便で、効果的な分解除去方法の提供。

【解決手段】アクレモニウム属に属するダイオキシン類分解能を有する微生物を土壌中から分離し、該微生物が、特にダイオキシン類で汚染された土壌中のダイオキシン類の分解に有効であることを見い出した。更に、ダイオキシン類分解能を有する微生物を用いて、土壌等のダイオキシン類汚染物質を分解処理する際の種々の処理条件について調査研究を行った結果、土壌の水分、温度の管理及び微生物の添加方法がその分解に重大な影響を及ぼすことを見い出し、その効果的な処理方法を構築した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクレモニウム属に属し、ダイオキシン類分解能を有する微生物を、ダイオキシン類で汚染されている土壌に接触させ、分解することを特徴とする土壌中ダイオキシン類の分解除去方法。
【請求項2】 アクレモニウム属に属し、ダイオキシン類分解能を有する微生物が、アクレモニウム・エスピー(FERM P−17988)であることを特徴とする請求項1記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法。
【請求項3】 ダイオキシン類分解能を有する微生物を、リアクター内でダイオキシン類で汚染されている土壌に接種し、攪拌培養により該土壌と接触させることを特徴とする請求項1又は2記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法。
【請求項4】 ダイオキシン類分解能を有する微生物を、炭素源、窒素源及び無機塩類から選択される1又は2以上の栄養成分と共に、汚染されている土壌に接種し、ダイオキシン類を分解することを特徴とする請求項1又は2記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法。
【請求項5】 ダイオキシン類汚染土壌の水分含量を、微生物によるダイオキシン類の分解に適した水分含量に調整することを特徴とする請求項4記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法。
【請求項6】 汚染土壌の温度を、微生物によるダイオキシン類の分解に適した温度条件に調整する手段を施したことを特徴とする請求項4又は5記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法。
【請求項7】 微生物の汚染土壌への接種を、1回以上の逐次添加により行うことを特徴とする請求項4〜6記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法。
【請求項8】 微生物の汚染土壌への1回以上の逐次添加において、初期菌体接種濃度を増加させたことを特徴とする請求項7記載の土壌のダイオキシン類の分解除去方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物を利用したダイオキシン類の分解除去方法、特に、アクレモニウム属に属する微生物を利用した汚染土壌等のダイオキシン類の分解除去方法に関する。更には、微生物を利用した土壌のダイオキシン類の分解除去における微生物の土壌への接種、分解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイオキシン類により汚染された土壌の修復方法として、物理化学的な熱処理や、金属ナトリウムを使った分解処理法が提案されてきた。これらの方法は多くのエネルギーを使い特殊な反応装置を用いて行うため、ダイオキシン類の一種であるPCB等の高濃度かつ狭い範囲が汚染されたサイトへの応用には有効であったが、ごく微量な汚染が広範囲に広がっているダイオキシンによる汚染に適用するには、エネルギー浪費の上からも問題があった。したがって、これらの熱処理や金属ナトリウムを使った分解処理法は、高濃度のダイオキシン類に汚染された特殊な場所に制限されてきた。
【0003】そこで、広範囲にわたるダイオキシン類汚染土壌を低エネルギーで処理する方法として、微生物を用いた多くの分解処理方法が提案されている。例えば、特開平11−319786号公報には、白色腐朽菌の増殖過程で発生する酵素をダイオキシン類等の有機塩素化合物により汚染された土壌の有機塩素化合物の分解処理方法に用いることについて、及び特開2000−107742号公報には、担子菌によって木材をコンポスト化したものを、ダイオキシン汚染土壌の浄化に用いることについて、それぞれ開示されている。しかし、これらの微生物を用いた系は、本来これらの微生物の生息しない土壌中のダイオキシン類を処理するため、予め木材に菌体を増殖させる必用がある等の手間のかかる前処理を必要とする。
【0004】更に、微生物によるダイオキシン類の処理について、多くの提案がなされている。例えば、特開平11−341978号公報には、フザリウム属やカワタケ属に属する微生物を用いて、ダイオキシンを分解することについて、特開2001−137833号公報及び特開2001−162263号公報には、シゾフィラム属、トラメテス属、プレウロタス属又はアスペルギルス属を用いて、塩素化ダイオキシンを分解することについて、特開2001−157576号公報には、レンチナス属、リゾクトニア属、フナリア属等のラッカーゼを生産する微生物を用いて、ダイオキシン類等を分解することについて、特開2001−161349号公報には、ヒラタケ科ヒラタケ属、タコウキン科シュタケ属に属する微生物を用いて、ダイオキシンを分解することについて、特開2001−224357号公報には、モルチエレラ属、ペニシリウム属の菌を用いて、ダイオキシン類を分解することについて、特開2001−507567号公報には、ハロアルクラ属、ハロバクテリウム属、ハロコッカス属、ハロフェラックス属などの微生物を用いて、ダイオキシン等のハロゲン化有機化合物を分解することについて、それぞれ開示されている。
【0005】また、遺伝子組換え微生物を用いてダイオキシンを除去する方法として、特開平10−257895号公報には、シュードモナス属の微生物に由来するヘテロ多環芳香族炭化水素化合物酸化酵素遺伝子を組み込んだ大腸菌を用いて、ダイオキシンで汚染された土壌等の浄化を図る方法が、開示されている。しかしながら、この方法も、分解可能な異性体が3塩素置換体までで、最も毒性の高い4塩素置換体から8塩素置換体までを分解できないという問題を有している。したがって、特に、ダイオキシンで汚染された土壌等の浄化を図るために、有効に利用できる微生物の探索、及びその土壌等の浄化の方法の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、微生物を利用した土壌中ダイオキシン類の効果的な分解除去方法、特に、ダイオキシン類により汚染された土壌中のダイオキシン類の簡便で、効果的な分解除去方法を提供することにある。更には、微生物を利用したダイオキシン類汚染土壌の分解除去のための有効な処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、アクレモニウム属に属するダイオキシン類分解能を有する微生物を土壌中から分離し、該微生物が、特にダイオキシン類で汚染された土壌中のダイオキシン類の分解に有効であることを見い出し、本発明をなした。更に、本発明においては、ダイオキシン類分解能を有する微生物を用いて、土壌等のダイオキシン類汚染物質を分解処理する際の種々の処理条件について調査研究を行った結果、土壌の水分、温度の管理及び微生物の添加方法がその分解に重大な影響を及ぼすことを見い出し、その効果的な処理方法を構築した。
【0008】すなわち本発明は、アクレモニウム属に属し、ダイオキシン類分解能を有する微生物を、ダイオキシン類で汚染されている土壌に接触させ、分解することを特徴とする土壌中ダイオキシン類の分解除去方法(請求項1)や、アクレモニウム属に属し、ダイオキシン類分解能を有する微生物が、アクレモニウム・エスピー(FERM P−17988)であることを特徴とする請求項1記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法(請求項2)や、ダイオキシン類分解能を有する微生物を、リアクター内でダイオキシン類で汚染されている土壌に接種し、攪拌培養により該土壌と接触させることを特徴とする請求項1又は2記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法(請求項3)や、ダイオキシン類分解能を有する微生物を、炭素源、窒素源及び無機塩類から選択される1又は2以上の栄養成分と共に、汚染されている土壌に接種し、ダイオキシン類を分解することを特徴とする請求項1又は2記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法(請求項4)からなる。
【0009】また本発明は、ダイオキシン類汚染土壌の水分含量を、微生物によるダイオキシン類の分解に適した水分含量に調整することを特徴とする請求項4記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法(請求項5)や、汚染土壌の温度を、微生物によるダイオキシン類の分解に適した温度条件に調整する手段を施したことを特徴とする請求項4又は5記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法(請求項6)や、微生物の汚染土壌への接種を、1回以上の逐次添加により行うことを特徴とする請求項4〜6記載の土壌中ダイオキシン類の分解除去方法(請求項7)や、微生物の汚染土壌への1回以上の逐次添加において、初期菌体接種濃度を増加させたことを特徴とする請求項7記載の土壌のダイオキシン類の分解除去方法(請求項8)からなる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、アクレモニウム属に属し、ダイオキシン類分解能を有する微生物を、ダイオキシン類で汚染されている土壌に接触させ、ダイオキシン類を分解除去することよりなる。本発明において、分解の対象とするダイオキシン類とは、ジベンゾ−p−ジオキシンとジベンゾフランを基本骨格に持ち、そのベンゼン環上に塩素が置換されたダイオキシン類異性体のすべてである。
【0011】(使用する微生物)本発明において使用する微生物として、本発明者は土壌中よりアクレモニウム属に属する菌株を単離し、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)と同定した。この菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、寄託番号FERM P−17988として寄託されている。本発明において使用するアクレモニウム属の微生物は、土壌等に広く分布するカビであり直接土壌中で菌体を培養することが可能であるため、汚染土壌中のダイオキシン類を分解するのに特に適した微生物である。
<菌株の同定>本発明者は、ダイオキシン分解菌の採取のために、北海道大学近辺の土壌及び汚泥を探索した結果、リグニンを脱色する活性を持つ微生物菌株を分離した。この菌株は、寒天培地中のリグニンを脱色し、ハローを形成するカビであり、その顕微鏡写真を、図1に示す。このカビの同定を行ったところ、分生子を形成する無性世代であり、長期間貧栄養培地で培養を行っても完全世代が明かにならなかった。隔壁(Septum)を形成し、分生子(Conidia)を形成し、胞子(Spore)を形成せず、クランプコネクションの形成がない等の形態的な特徴から、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)と同定した。
【0012】(汚染土壌におけるダイオキシン類の分解)本発明におけるダイオキシン類の分解処理は、汚染されている土壌に微生物を炭素源、窒素源及び無機塩類等の栄養成分(培地)と共に接種することにより、行うことが出来る。炭素源としては、グルコース、デンプン等の糖類、或いはそれらを含む農産廃棄物等を用いることが出来る。窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸塩などの無機塩が使用できる。その他の無機塩類として、リン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、カルシウム塩、マンガン塩等の無機塩類が必要となる。肥沃な土壌に対しては、適宜これらの栄養成分の添加を省くことができる。
【0013】本発明において、汚染土壌のダイオキシン類の分解処理には、上記のような微生物菌体を栄養成分(培地)と共に、リアクター内でダイオキシン類で汚染されている土壌に接種し、攪拌培養により該土壌と接触させ分解処理するか、或いは培養した微生物菌体を、新たな培地に懸濁し、これを直接汚染土壌に撒いて、適宜耕す操作を行うことにより実施することが出来る。リアクター内で微生物菌体を汚染土壌と接触させ、攪拌培養により土壌中のダイオキシン類を分解処理する場合には、通常培養温度、20℃〜40℃で、pHは7前後(培地中の炭酸カルシウムにより容易に調整される)、好気的条件下で行うことができる。微生物菌体を、直接汚染土壌に撒いて分解処理を行う場合には、水分含量が土壌によって相違するが、40%前後が、温度条件が約20〜40℃が、好ましい。したがって、土壌の条件がこれらの条件を保持するための手段をとることが重要である。これらの条件を整えるためには、季節及び気温の日格差、或いは降雨等の状況に応じて、潅水やシート等をかぶせる等の手段を施すことが必用である。
【0014】また、土壌には、既に微生物が繁殖していることから、これらの土壌の常在菌と、接種した菌との競合の問題を解消するために、菌体の汚染土壌への接種を、1回以上の逐次添加により行ったり、或いは初期菌体接種濃度を増加させたりすることが効果的である。リアクター内で微生物菌体を汚染土壌と接触させ、攪拌培養により分解する系では、アクレモニウム属の菌の増殖速度が十分に速いため、多くの場合問題とはならないが、この場合も菌体接種濃度を多くすることにより、克服することが出来る。本発明は、上記方法により、特にダイオキシン類により汚染された土壌のダイオキシン類の分解除去を効果的に行うことができる。
【0015】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(本発明の実施例に用いた実験方法、材料、装置及び評価測定)汚染染土壌として、大阪府能勢町の焼却処理施設周辺の土壌(ダイオキシン類濃度約8,000 pg-TEQ/g)を用いた。また、汚染土壌を用いない実験行ったが、そのときはダイオキシン類として組成が既知である環境分析時の廃液を使用した。汚染土壌は、使用前に乾燥(110℃、20時間以上)し、2mmメッシュのふるいで夾雑物を取り除いてから使用した。培地は、リグニン:0.1g、グルコース:1g、K2HPO4:0.1g、(NH4)2SO4:0.2g、MgSO47H2O:0.1g、NaCl:0.2g、CaCO3:0.2g、FeSO47H2O:0.1mg、MnCl24H2O:0.1mg、ZnSO47H2O:0.1mgを蒸留水100mLに調整したものを用いた。分解試験では、振とう実験・静置実験において、50mL容の三角フラスコを用い、培地、微生物、土壌を全量で20mL入れて実験を行った。また、振とう実験では図2の攪拌装置を用いた。
【0016】培養後の培地及び土壌は凍結乾燥器によって乾燥し、次に300mLのトルエンを用いてソックスレー抽出を20時間行った。なお前処理におけるロスを分析後に換算するために、環境分析に準じて、13Cにラベルした2,3,7,8-TCDD、ISOTOPE LABELED CHLORODIOXIN STANDARDS ED-900 (2,3,7,8-TCDD (13C12, 99%) CambridgeIstope Laboratories社製)を内部標準物質として抽出後に10ng添加した。前処理は、ソックスレー抽出したトルエン相を10mLの容量まで減圧濃縮し、次に有機化合物の分配処理を行うために硫酸を用い、トルエン相を洗浄した。この洗浄は、硫酸相の黄色の着色が肉眼で確認出来なくなるまで行った。硫酸処理後のトルエン相は、蒸留水で2度洗浄し、残留する硫酸を除き、さらに無水硫酸ナトリウムでトルエン相を乾燥させ、約1mLに濃縮した。次に色素成分の除去を行うためにシリカゲル3gを内径10mm、長さ300mmのカラムクロマト管にヘキサンで湿式充填し、その上に無水硫酸ナトリウムを約10mm積層したカラムクロマトグラフィーを作成した。これに試料液1mLを静かに移し入れ、ヘキサン150mLで滴下速度約2.5mL/min(毎秒1滴程度)の速度でゆっくり流し溶出した。溶出液は最終的に100μLとし、そのうち1μLを分析に用いた。
【0017】ダイオキシン類の分析に用いたGC-MSには、TRACE GC 2000, GCQ Plus(ThermoQuest社製)を用いた。カラムにはJ&W社製DB-5(0.25mm×30m)を用いた。GCの条件は100℃で1minの保持の後、250℃まで30℃/minで昇温し、続いて310℃まで5℃/minで昇温した後310℃で5分間保持した。またインジェクションの条件は、温度270℃(Splitless)で、キャリアーガスとしてヘリウムを用い、その流速は1.0mL/min(constant flow)とした。MS条件はイオン源温度を200℃とし、トランスファーライン温度を310℃とした。本試験によってスパイクしたダイオキシンはほぼ100%回収された。定量にはGC-MS用ダイオキシン類スタンダード、PCDD/PCDFSTANDARD MIXTURES EDF-4931(Cambridge Isotope Laboratoeis社製)を用いた。
【0018】(ダイオキシン類分解の最適培養条件の検討)まずダイオキシン類分解の最適培養条件の検討を行った。振とう培養について実験をおこなうため、培養の経時的変化の検討を行った。培養条件は、温度35℃、含水率100%(土壌が含まれていないことを意味する)、振とう速度54回転/min、微生物添加量8mg(乾燥菌体重量)で行った。この実験ではダイオキシン廃液をダイオキシン類総量で50ngになるように培地に添加した。この結果、培養24時間でダイオキシン類分解率は80%を上回った。今後は、汚染土壌を扱うために、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)(FERM P−17988)の増殖に時間がかかると考えられるため、培養時間を36時間とし、土壌での最適分解率の目標値を80%と設定した。結果を、図3に示す。
【0019】(土壌中のダイオキシン分解に及ぼす土壌と培地の比の影響)次に実際の土壌を用い、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)による土壌中のダイオキシン分解に及ぼす土壌と培地の比の影響について検討した。培養条件は、温度35℃、浸とう時間36時間、振とう速度54回転/min、微生物添加量8mg(乾燥菌体重量)で行った。そして、土壌と培地の比(含水率)を変化させて培養を行ったところ、含水率の低下とともにダイオキシン分解率も低下した。含水率の低い条件でダイオキシン類の分解率が高いことが望ましいが、含水率40%から60%までの値ではさらなる分解率の向上がこの時点では期待できないと考え、含水率を70%として次の実験を行った。結果を、図4に示す。
【0020】(土壌中のダイオキシン分解に及ぼす攪拌速度の影響)次に、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)による土壌中のダイオキシン分解に及ぼす攪拌速度の影響について検討した。培養条件は、温度35℃、振とう時間36時間、含水率70%、微生物添加量8mg(乾燥菌体重量)で行った。そして、振とう速度を変化させて培養を行ったところ、30回転/minで最も分解率が高く65%に達した。そこで回転速度を30回転/minとして次の実験を行った。結果を、図5に示す。
【0021】(土壌中のダイオキシン類分解に及ぼす初期菌体接種濃度の影響)次に、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)による土壌中のダイオキシン類分解に及ぼす初期菌体接種濃度の影響について検討した。培養条件は、温度35℃、振とう時間36時間、含水率70%、振とう速度30回転/minで行った。そして微生物添加量を変化させて培養を行ったところ、無菌条件、競合条件ともに25mg以上の初期微生物添加量で最も分解率が高く、それぞれ80%と65%に達した。この時、競合条件下におけるダイオキシン分解率は微生物添加濃度によって改善を見せず、無菌条件下と比べて一律に低い値であった。このことは、競合条件における分解率の低下が競合菌の有無によるのではなく、何か物理化学的な要因、例えば無菌条件を作るための施したオートクレーブにより土壌中のダイオキシンが微生物に利用されやすい形態になったため、無菌条件下での分解率が向上したと示唆された。結果を、図6に示す。以上の実験によって、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)を用いてダイオキシン汚染土壌を36時間で、オートクレーブ処理した場合は80%以上、オートクレーブ処理しない場合は約65%分解処理できた。
【0022】(静置条件における培養の経時的変化の検討)次に、静置条件における培養の経時的変化の検討を行った。培養条件は、温度35℃、含水率100%(土壌が含まれていないことを意味する)、微生物添加量8mg(乾燥菌体重量)で行った。この実験では振とう実験同様ダイオキシン類廃液を総量で50ngになるように培地に添加した。この結果、8日間でダイオキシン類分解率は40%程度であった。今度は、汚染土壌を扱うために、アクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)の増殖に時間がかかると考えられたので、培養時間を14日間として実験を行った。結果を、図7に示す。
【0023】(土壌中のダイオキシン分解に及ぼす含水率の変化に対する影響)次に、含水率の変化に対する影響の検討を行った。培養条件は、温度35℃、培養時間14日、微生物添加量8mg(乾燥菌体重量)で行った。実際の汚染土壌を用いて実験を行ったところ、含水率40%〜80%までほぼかわらず30%程の分解率であり、それ以下の濃度では分解率は著しく低下する傾向にあった。やはり含水率が低い条件で処理することが望ましいので水率を40%として次た。結果を、図8に示す。
【0024】(土壌中のダイオキシン分解に及ぼす初期菌体接種濃度の影響)次に、土壌中のダイオキシン分解に及ぼす初期菌体接種濃度の影響について検討した。培養条件は、温度35℃、培養時間14日、含水率40%で行った。無菌条件、競合条件共に30mg以上の初期微生物添加量で最も分解率が高く、40%とほぼ一致した値になった。このとき、微生物添加濃度が低い条件下においては、競合条件下の方で分解率が低く、添加濃度の増加に伴って改善される傾向にあり、明らかに土壌菌体による分解阻害があり、それが初期添加濃度を増やすことによって改善されたことが示唆された。結果を、図9に示す。
【0025】(土壌中のダイオキシン分解に及ぼす逐次添加の影響)以上の実験によって、Acremonium sp.を用いてダイオキシン類汚染土壌を14日間でオートクレーブの有無に関わらず、50%近く分解できた。ところで、この結果は分解率の面で振とう培養に劣っており、何らかの改善が必要であると思われる。そこで、菌体を6時間間隔で逐次添加することによる分解率の向上の可能性を検討した。この結果、培養6日後のわずか一回の逐次添加によって、ダイオキシン類の分解率は飛躍的に向上し、その分解率は80%近くに達した。またこのとき、2回目の逐次添加により分解率の増加がほとんどなかったことから、微生物によって処理できるダイオキシン類はこの一回の逐次添加によって処理しつくされたものと思われた。この操作を繰り返すことによってさらなるダイオキシン類の分解率の向上が期待される。結果を、図10に示す。
【0026】
【発明の効果】本発明の方法は、土壌等に広く分布するカビであるアクレモニウム属の微生物を使用することにより、直接土壌中で菌体を培養することが可能であるため、直接汚染土壌中に接種して、土壌中のダイオキシン類を分解するのに特に適した方法である。更に、本発明においては、汚染土壌に微生物菌体を接種し、ダイオキシン類を分解する場合に影響を及ぼす諸要因についても解明した結果、具体的には、上記実施例に示されるごとく、アクレモニウム属のカビを用い、直接土壌を処理することにより、難分解性の毒物ダイオキシン類に汚染された実汚染土壌を想定した系で36時間という短期間に60〜80%近い分解率が得られた。本発明の方法により、ダイオキシン類に汚染された土壌に本発明の菌体を接種して、効果的に作用させることが可能であり、これによって、ダイオキシン類を簡便かつ安全に分解することができ、自然界にダイオキシン類が蓄積され、人体を害するといった問題を解決することができる。
【出願人】 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【識別番号】500391796
【氏名又は名称】古市 徹
【出願日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【代理人】 【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
【公開番号】 特開2003−80230(P2003−80230A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−272747(P2001−272747)