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【発明の名称】 シクロデキストリン類固定化吸着剤による土壌浄化方法
【発明者】 【氏名】大石 和之
【住所又は居所】山口県新南陽市開成町4560 積水化学工業株式会社内

【氏名】矢内原 昇
【住所又は居所】静岡県富士宮市粟倉2480番地の1 株式会社矢内原研究所内

【氏名】伊佐野 隆
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1号 東洋建設株式会社内

【要約】 【課題】高効率で簡便に汚染土壌を浄化することができ、作業環境にも優れる汚染土壌の浄化方法を提供する。

【解決手段】シクロデキストリン類が担体に固定化されてなるシクロデキストリン類固定化吸着剤を汚染物質を含有する土壌試料に添加して汚染土壌を浄化する汚染土壌の浄化方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シクロデキストリン類が担体に固定化されてなるシクロデキストリン類固定化吸着剤を汚染物質を含有する土壌試料に添加して汚染土壌を浄化することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】 前記担体は、(メタ)アクリル酸エステル重合体であることを特徴とする請求項1記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】 前記汚染物質は、水に対する溶解度が10g/L以下である疎水性物質であることを特徴とする請求項1又は2記載の汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高効率で簡便に汚染土壌を浄化することができ、作業環境にも優れる汚染土壌の浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、様々な疎水性物質による土壌の汚染が問題となっている。例えばダイオキシン類等の疎水性物質は、その疎水性のために土壌粒子に吸着して移動しにくいので、土壌中に蓄積され、環境又は生態系に悪影響を及ぼす。特に近年問題視され始めたホルモン様作用物質(内分泌撹乱化学物質)は微量濃度で生態系への影響が大きいので、これらの物質の浄化は重要である。
【0003】これらの疎水性物質は水に溶けにくく、土壌粒子から脱離しにくいため、これらの除去・浄化には有機溶媒等で洗浄する方法等が開発されている。しかし大量の有機溶媒の使用はかえって汚染を招く恐れがあり、浄化の作業環境上問題も多く、更に浄化済み土壌の再利用等が困難となる。
【0004】一方、疎水性物質を効率的に結合・回収する化合物としてシクロデキストリン類類(以下、CD類ともいう)が知られている。CD類は、その環状構造の内部に疎水環境を有しているので、ある一定の大きさの疎水性物質をその環状構造内に包接することが知られている。その使用形態には、主に以下の(1)及び(2)の2つの方法がある。
【0005】(1)粉体のまま用いられる場合CD類は常温で安定な固体であり、通常は粉体状で入手可能である。粉体のまま、又は、他の添加剤等の固体物質と混練等により混合して用いられる例としては、例えば、特開平10−314698号公報には包接化合物として用いられることが開示されており、特にβ−CD類水溶液による重金属の捕捉剤の例が開示されている。
【0006】(2)水溶液として用いられる場合CD類はある程度水溶性であるため、水溶液として用いられる場合もある。例えば、特開平7−946号公報には、CD類水溶液による汚染土壌からの有機汚染物質の抽出方法が開示されている。この場合CD類は水溶液として用いられるため、対象である疎水性物質が固体又は固体に吸着されて存在する場合でも、用いることができる。
【0007】上記の従来技術(1)は、CD類が粉体であるため取り扱いにくく、また、CD類の溶解度により使用量に限界があるため、吸着効率は低い。特に対象となる疎水性物質が微量である場合には用いることはできない。上記の従来技術(2)は、CD類の水溶性に限界があるため、一定量以下のCD類しか添加することができない。また、対象である疎水性物質を包接した後、再び脱離させて該疎水性物質を回収することが非常に煩雑である。
【0008】以上のように、従来技術におけるCD類包接作用の利用技術は、その適用形態が満足いくものではなく、特に土壌汚染物質がホルモン様作用物質等の疎水性微量物質である場合の汚染土壌の浄化に適用した技術は未だ開示されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に鑑み、高効率で簡便に汚染土壌を浄化することができ、作業環境にも優れる汚染土壌の浄化方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、シクロデキストリン類が担体に固定化されてなるシクロデキストリン類固定化吸着剤を汚染物質を含有する土壌試料に添加して汚染土壌を浄化する汚染土壌の浄化方法である。以下に本発明を詳述する。
【0011】本発明の汚染土壌の浄化方法は、シクロデキストリン類固定化吸着剤(以下、CD類固定化吸着剤ともいう)を用いて汚染土壌を浄化するものである。本発明で用いられるCD類固定化吸着剤は、シクロデキストリン類が担体に固定化されたものである。以下に、上記シクロデキストリン類、担体、及び、その固定化方法を説明する。
【0012】(1−1)シクロデキストリン類上記CD類としては、包接作用を有するCD類又はCD誘導体類であれば特に限定されないが、例えば、α−、β−又はγ−CD類;α−、β−若しくはγ−CDのアルキル、ヒドロキシアルキル、アシル誘導体又はそれらのポリマー誘導体、又は、これらのポリマーのアルキル、ヒドロキシアルキル、アシル誘導体等のCD誘導体類が挙げられる。上記α−、β−又はγ−CDのアルキル、ヒドロキシアルキル、アシル誘導体としては、例えば、α−、β−又はγ−CDのメチル、エチル、ヒドロキシエチル、プロピル、アセチル、サクシニル誘導体等が挙げられる。上記ポリマー誘導体としては、例えば、α−、β−又はγ−CDのアルキル、ヒドロキシアルキル、アシル誘導体をエピクロロヒドリン又はイソシアネートで架橋したもの等が挙げられる。これらのCD類は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0013】(1−2)担体上記担体は、CD類を固定化することが可能であり、土壌試料との混合等の使用環境においてその形態を維持できる物理的強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、シリカ、セラミック類、活性炭等の無機系素材;天然高分子、有機合成高分子等の有機系素材等が好適に用いられる。より好ましくは有機合成高分子である。上記有機合成高分子のなかでも、(メタ)アクリル酸エステル重合体が好ましくは、その架橋重合体がより好ましい。
【0014】(1−3)固定化方法上記CD類を上記担体へ固定化する方法としては特に限定されず、公知の化学反応を用いることができる。すなわち、上記担体が有する官能基と、CD類が有する水酸基又はCD誘導体類が有する各種官能基とを直接反応させる方法;上記担体が有する官能基及びCD類が有する官能基の両者に反応する官能基を有する物質(スペーサ)を反応させ、両者を間接的に結合させる方法等が用いられる。これらの官能基としては、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、スルホン酸基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0015】本発明の汚染土壌の浄化方法は、上記シクロデキストリン類固定化吸着剤を汚染物質を含有する土壌試料に添加して汚染土壌を浄化するものである。
(2)土壌試料上記土壌試料としては特に限定されず、土壌粒子を含む試料全般を含み、例えば、一般表層土、地下土壌、各種底泥、浚渫土壌、各種汚泥等が挙げられる。上記土壌試料は、水分を含有する試料である。上記土壌試料中の水分量は、10〜99重量%であることが好ましい。10重量%未満であると、吸着剤を土壌試料中に均一に分散させるのが難しい。より好ましくは20〜90重量%である。上記土壌試料中の水分の組成は特に限定されず、また該水分は、土壌試料採取時に含まれる水分であってもよいし、採取後、浄化処理前に適宜添加された水分であってもよい。
【0016】(3)汚染物質上記汚染物質としては、CD類に包接される物質であれば特に限定されず、本発明により効率よく除去される。上記汚染物質としては、水への溶解度が10g/L以下の疎水性物質であることが好ましい。10g/Lを超えると、疎水性が弱く、CD類に包接されにくくなる。より好ましくは水への溶解度が1g/L以下の疎水性物質である。
【0017】上記疎水性物質には、内分泌撹乱作用を有する、又は、有すると疑われている、いわゆるホルモン様作用物質や、いわゆる内分泌撹乱化学物質が含まれる。これらは生物由来のステロイドホルモン類、合成ステロイドホルモン類、及び、生体内においてホルモン類似作用が報告されている又はホルモン類似作用が疑われる化学物質を含む。このようなホルモン様作用物質又は内分泌撹乱化学物質としては、例えば、臭素化ダイオキシン、コプラナーPCB類、フラン類を含むダイオキシン類;ポリ塩化ビフェニール類;4−t−ブチルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、ノニルフェノール、4−t−オクチルフェノール等のアルキルフェノール類;ビスフェノールA;2,4−ジクロロフェノール;フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジエチル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル;ベンゾ(a)ピレン、ベンゾフェノン、4−ニトロトルエン、スチレン、スチレン2量体、スチレン3量体等の芳香族化合物;エストラジオール等のエストロジェン類;DDT等の農薬類等が挙げられる。また、第26回日本環境化学会講演会予稿集(p2〜3、1998年)に記載されている物質群等も含まれる。
【0018】本発明は、これらのなかでもアルキルフェノール類、ビスフェノールA、フタル酸エステル類、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニール類、ベンゾ(a)ピレン、エストロジェン類、DDTに対して好適に使用される。
【0019】上記疎水性物質には、また、多環芳香族化合物が含まれる。上記多環芳香族化合物としては特に限定されず、公知の多環芳香族炭化水素類全てを含み、例えば、ピレン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾアントラセン、メチルコラントレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾフルオランテン、1−ピレノール;ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン等の含硫炭化水素類;ナフタレンジニトロピレン、ニトロピレン等のニトロ化炭化水素類等が挙げられる。
【0020】上記疎水性物質には、更に、揮発性有機化合物をも含まれる。上記揮発性有機化合物としては特に限定されず、公知の揮発性有機化合物全てを含み、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、2,4−ジメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、1,3,5−トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;α−ピネン、リモネン等のテルペン類;トリクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。
【0021】(4)試料への添加本発明においては、上記CD類固定化吸着剤を土壌試料に添加して接触させ、該吸着剤のCD類に、土壌粒子を接触させることにより、土壌粒子に吸着している又は土壌試料中に溶け出した疎水性物質を吸着剤に吸着させることができる。上記CD類固定化吸着剤を土壌試料に添加する方法としては特に限定されず、適宜混合すればよい。混合時には撹拌、振とう等の操作をしてもよい。また加温、pH調節剤等の添加処理、超音波照射、電子線照射等の処理を合わせて行ってもよい。
【0022】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0023】(実施例1)
[CD類固定化吸着剤の調製]トリエチレングリコールジメタクリレート300g及びメタクリル酸200gの混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mLに撹拌しながら分散させ、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。80℃で24時間重合した後、反応物をイオン交換水で3回、アセトンで1回、エタノールで4回洗浄した。洗浄後乾燥して架橋重合体である担体を得た。
【0024】得られた担体10gをジオキサン100mLに分散させた後、N,N’−カルボジイミダゾール20gを添加し、60℃で5時間撹拌した。反応後担体を濾別し、ジオキサンにて洗浄した。得られた担体に、β−シクロデキストリン類50gのN,N’−ジメチルホルムアミド溶液150mLを添加し、60℃で15時間撹拌した。反応後担体を濾別し、水、ジメチルホルムアミド、アセトンで順次洗浄して乾燥させ、CD類固定化吸着剤を得た。
【0025】[評価]
(試料の調製)採取した土壌(含水量40重量%)に、ダイオキシン10ng/gを添加し、汚染土壌を調製した。該汚染土壌100gを水1Lで3回洗浄し、洗浄液を集めて濃縮した後、この洗浄液中のダイオキシン濃度を日本工業規格(JIS K 0312)に基づく方法により測定し、土壌に吸着したダイオキシンの比率(A%)を求めた。測定結果を表1に示した。その結果、添加したダイオキシンは、そのほとんどが土壌粒子に吸着されていることが分かった。
【0026】(抽出実験)上記水洗浄済みの汚染土壌試料100gに、吸着剤10gを添加し、室温にて撹拌した。撹拌後静置して、吸着剤を含む上清をデカンテーションにて採取した。上記で採取した吸着剤を含む上清を、ポリプロピレン製カラム(内容量35mL;ポリエチレン製フィルタ付き)に移した。その後、カラムにテトラヒドロフラン(THF)10mLを通液し、吸着剤からダイオキシンを脱離させ、ダイオキシン含有THFを回収した。THFを留去した後、n−デカンに再溶解させ、測定用試料として、上記の測定方法に供した。
【0027】(測定結果)回収率(B%)の測定結果を表1に示した。実施例1の吸着剤は、土壌粒子に吸着していたダイオキシンを効率よく回収し、土壌を浄化できることが分かった。更に他の疎水性物質を添加した汚染土壌についても同様の手法で評価したところ、いずれの疎水性物質の場合においても良好に回収でき、土壌試料の浄化が行われることが分かった。
【0028】(実施例2)ジビニルベンゼン300g及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート200gに、過酸化ベンゾイル(重合開始剤)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mLに撹拌しながら分散させ、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。80℃で10時間重合後、得られた重合物をイオン交換水で3回、アセトンで1回、エタノールで4回洗浄した。洗浄後乾燥して、架橋重合体である担体を得た。
【0029】得られた担体10gを用い、CD類としてカルボキシメチル−β−シクロデキストリン類を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、CD類固定化吸着剤を得た。実施例1と同様に評価をしたところ、良好に浄化が行われた。結果は表1に示した。
【0030】(比較例1、2)比較対照として、吸着剤10gを添加する代わりに、γ−CD粉体10gを添加する(比較例1)か、又は、γ−CD水溶液の10%水溶液1Lを添加する(比較例2)こと以外は、実施例1と同様の操作で行った。結果は、いずれも回収率が70%以下と悪かった。
【0031】
【表1】

【0032】
【発明の効果】本発明は、上述の構成よりなるので、CD類固定化吸着剤を汚染土壌に接触させることにより、従来法に比べて高効率で簡便に汚染土壌を浄化することができる。特に土壌試料と分離後、カラム等により簡便な操作で疎水性物質を回収でき、また吸着剤自体の洗浄が可能なため、その再利用もできる。本発明は、更に有機溶媒の使用量が少ないため、作業環境に優れ、また浄化済み土壌の再利用も可能である。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目4番4号
【識別番号】597096105
【氏名又は名称】株式会社 矢内原研究所
【住所又は居所】静岡県富士宮市粟倉2480番地の1
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1号
【出願日】 平成13年9月12日(2001.9.12)
【代理人】 【識別番号】100086586
【弁理士】
【氏名又は名称】安富 康男
【公開番号】 特開2003−80225(P2003−80225A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−276358(P2001−276358)