| 【発明の名称】 |
有機ハロゲン分解用金属粉およびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】友口 勝 【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目8番1号 同和鉱業株式会社内
【氏名】上原 大志 【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目8番1号 同和鉱業株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】土壌および地下水等の汚染浄化において、従来の分解、浄化手段では分解困難な有機ハロゲン化合物を含む、広範囲な有機ハロゲン化合物を分解、浄化可能な金属粉を提供する。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも2種以上の金属元素を含有し、前記各々の金属元素は、各々の金属元素を主成分とする相を形成し、前記相を含有する金属粉であって、前記金属元素のいずれか2種の標準酸化還元電位の差の絶対値が778mV以上であることを特長とする有機ハロゲン分解用金属粉。 【請求項2】 前記相のうち、少なくとも2種の相が前記金属粉の表面に露出していることを特長とする請求項1に記載の有機ハロゲン分解用金属粉。 【請求項3】 前記相のうち、少なくとも1つの相の表面に、他の相が付着した構造を有することを特長とする請求項1または2に記載の有機ハロゲン分解用金属粉。 【請求項4】 前記相のうち、少なくとも1つの相が、CoまたはAlを主成分とすることを特長とする請求項1から3のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉。 【請求項5】 前記金属粉の表面に露出している相の主成分である金属元素のいずれか2種の標準酸化還元電位の差の絶対値が778mV以上であることを特長とする請求項2から4のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉。 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法であって、前記相のうちの一の相と、他の相とのイオン化傾向の差を用いて、前記一の相に前記他の相を付着させることを特長とする有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法。 【請求項7】 請求項1から5のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法であって、前記相のうちの一の相と、他の相とを接触させて、前記一の相に前記他の相を付着させることを特長とする有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法。 【請求項8】 請求項1から5のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉を用いることを特長とする、土壌および/または地下水および/または地表水の浄化方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、土壌、河川水、地下水、大気、ガス等の環境を汚染している有機ハロゲン化合物を高速度で分解する有機ハロゲン分解用金属粉に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、テトラクロロエチレン(以下、PCEと記載する。)、トリクロロエチレン(以下、TCEと記載する。)、ジクロロエチレン(以下、DCEと記載する。)等の有機塩素化合物に代表される、有機ハロゲン化合物による土壌および地下水等の汚染が顕在化し、一つの社会問題としても取り上げられている。一方、これらの有機ハロゲン化合物浄化方法については種々のものが考案されている。例えば、特開平7−178395号公報には微生物による好気または嫌気分解処理の方法が記載されている。また例えば、特開平7−144137号公報には光触媒による酸化分解処理の方法が記載されている。さらに例えば、前記特開平11−235577号公報には、海綿状を有する特殊鉄粉(以下、特殊鉄粉と記載する。)による還元的分解処理の方法が記載されている。 【0003】さらに加えて、例えば、特開2000−5740号公報には、金属鉄粉表面に金属銅を0.2〜20wt%付着させた銅含有鉄粉(以下、銅含有鉄粉と記載する。)を調製し、金属鉄粉の有機ハロゲン化合物への分解活性を高めることが可能になったことが開示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】有機ハロゲン化合物による土壌および地下水等の汚染を浄化するため、上述のような技術が開示、提案されているが、有機ハロゲン化合物は多様であるためこれらの技術では浄化が困難なものがある。すなわち、現在、有機ハロゲン化合物の分解、浄化手段として有望と考えられている特殊鉄粉や銅含有鉄粉を用いても、後述するような、分解困難な有機ハロゲン化合物が存在するのである。本発明は以上のような状況を背景としてなされたものであり、従来の分解、浄化手段では分解困難な有機ハロゲン化合物を含む、広範囲な有機ハロゲン化合物を高速度で分解、浄化可能な金属粉を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、まず、種々の鉄粉試料を準備し、標準的な有機ハロゲン化合物としてTCEを選択して、鉄粉試料によるTCEの分解速度測定をおこなった。その結果、前記特殊鉄粉や前記銅含有鉄粉は、比較的大きな分解速度を有していることが判明した。しかし、これら特殊鉄粉や銅含有鉄粉であっても、モノクロロベンゼン(以下、MCBと記載する。)等の、分解浄化が困難な有機ハロゲン化合物を高速度で分解、浄化することは、やはり困難であることも判明した。 【0006】ここで本発明者らは、前記特殊鉄粉および銅含有鉄粉の粒子の構造解析、および電気化学的解析をおこない、その結果を基に試行錯誤を重ねた結果、遂にMCB等の分解浄化困難な有機ハロゲン化合物をも高速度で分解、浄化が可能な金属粉に想到し本発明を完成したものである。 【0007】すなわち第1の発明は、少なくとも2種以上の金属元素を含有し、前記各々の金属元素は、各々の金属元素を主成分とする相を形成し、前記相を含有する金属粉であって、前記金属元素のいずれか2種の標準酸化還元電位の差の絶対値が778mV以上であることを特長とする有機ハロゲン分解用金属粉である。この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、前記標準酸化還元電位の差の絶対値が777mV以下の特殊鉄粉や銅含有鉄粉では分解が困難な、難分解性の有機ハロゲン化合物であっても分解浄化が可能である。この結果、この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、前記難分解性の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌、地下水等の浄化に大きな効果を発揮する。 【0008】第2の発明は、前記相のうち、少なくとも2種の相が前記金属粉の表面に露出していることを特長とする第1の発明に記載の有機ハロゲン分解用金属粉である。この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、金属粉の周囲にある有機ハロゲン化合物を効率的に分解できる。この結果、この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、前記難分解性の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水等の浄化の際における、工期短縮、金属粉使用量の削減、等を実現し、作業コストの削減に効果を発揮する。 【0009】第3の発明は、前記相のうち、少なくとも1つの相の表面に、他の相が付着した構造を有することを特長とする第1または第2の発明に記載の有機ハロゲン分解用金属粉である。この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、前記少なくとも1つの相の主成分である金属元素と、他の相の主成分である金属元素との標準酸化還元電位の差の絶対値を維持したまま、金属粉中の、前記他の相の主成分である金属元素の含有比率を下げることができる。この結果、この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、前記他の相の主成分に高コストな金属元素を用いた場合でも、難分解性の有機ハロゲン化合物を分解浄化する能力を落とすことなく、金属粉製造コストの上昇を抑制できる。 【0010】第4の発明は、前記相のうち、少なくとも1つの相が、CoまたはAlを主成分とすることを特長とする第1から第3発明のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉である。この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、金属粉としての安定性が高く、取り扱いや保管が容易である。この結果、この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、前記難分解性の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水等の浄化の際における、作業コストの削減に効果を発揮する。 【0011】第5の発明は、前記金属粉の表面に露出している相の主成分である金属元素のいずれか2種の標準酸化還元電位の差の絶対値が778mV以上であることを特長とする第2から第4の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉である。この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、金属粉の周囲にある有機ハロゲン化合物を効率的に分解できることに加え、金属粉の製造コストを下げることが可能になる。この結果、この構成を有する有機ハロゲン分解用金属粉は、前記難分解性の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水等の浄化の際における、作業コストの削減に効果を発揮する。 【0012】第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法であって、前記相のうちの一の相と、他の相とのイオン化傾向の差を用いて、前記一の相に前記他の相を付着させることを特長とする有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法である。この製造方法によれば、付着金属の溶解液濃度および浸せき時間等を制御することで、前記一の相と記載した母材となる金属を主成分とする相へ、前記他の相と記載した付着する金属を主成分とする相が付着する際の、状態や膜厚を制御することができる。その結果、均一な特性を有する有機ハロゲン分解用金属粉を容易に調製できる製造方法である。 【0013】第7の発明は、第1から第5の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法であって、前記相のうちの一の相と、他の相とを接触させて、前記一の相に前記他の相を付着させることを特長とする有機ハロゲン分解用金属粉の製造方法である。この製造方法によれば、前記他の相の主成分である金属の、酸への溶解の容易性やイオン化傾向の差違を考慮する必要がない。その結果、母材金属と付着金属として、広い範囲での金属の組み合わせを考慮する際に好ましい方法である。 【0014】第8の発明は、第1から第5の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン分解用金属粉を用いることを特長とする、土壌および/または地下水および/または地表水の浄化方法である。 【0015】 【発明の実施の形態】本発明者等は、まず種々の鉄粉試料を用いてTCEの分解速度定数を調査したところ、特開平11−235577に開示された特殊鉄粉試料が最も大きい値を有していることを見出した。そこで、この調査した種々の鉄粉試料の比表面積を測定したところ、前記特殊鉄粉試料が最も大きな値を有していた。さらに、この特殊鉄粉試料の粒子形態を調査したところ、この粒子は純粋なる金属鉄なのではなく、粒子内部および表面に局所的にFeOを主成分とする相(以下、FeO相と記載する。)が生成しており、このFeO相と、母材である金属鉄を主成分とする相(以下、母材鉄相と記載する。)とがともに粒子表面に露出した構造を有していることが判明した。以上のことより本発明者等は、前記特殊鉄粉のTCE分解速度定数の大きい理由は、鉄粉粒子の比表面積が大きいこと、およびFeO相と母材鉄相とが粒子表面で局所電池を形作り、この局所電池の電流による電解効果によること等、にあるのではないかと推定した。 【0016】次に本発明者等は、前記特殊鉄粉と、特開2000−5740に開示された銅含有鉄粉であって銅含有量20wt%のものを試料として、TCE、cis−1,2−DCE、ジクロロメタン(以下、DCMと記載する。)、MCBの分解速度を調査した。その結果、特殊鉄粉による分解試験においては、(TCE)>>(cis−1,2−DEC)>>(DCM)=(MCB) 「但し、DCM、MCBは殆ど分解せず。」の結果となった。また、銅含有鉄粉による分解試験においては、(TCE)=(cis−1,2−DEC)=(DCM)>>(MCB) 「但し、MCBは殆ど分解せず。」の結果となった。 【0017】さらに、特殊鉄粉と、銅含有鉄粉との分解速度定数の比較結果は、全ての有機塩素化合物において、特殊鉄粉<<銅含有鉄粉であった。以上のことより、特殊鉄粉においてFeO相と母材鉄相とが粒子表面で形成した局所電池と、銅含有鉄粉において銅を主成分とする相(以下、銅相と記載する。)と母材鉄相とが粒子表面で形成した局所電池とにおいて、標準酸化還元電位差が大きい程、分解速度定数の値は大きく且つ分解可能な化合物の範囲も拡大するものと推察された。因みに、特殊鉄粉のFe2+/Fe電池反応における標準酸化還元電位差は440mV、銅含有鉄粉のFe−Cu界面におけるFe2+/Fe電池反応とCu2+/Cu電池反応との組み合わせによる標準酸化還元電位差は777mVであった。さらに加えて、前記銅含有鉄粉を用いても、分解不可能または殆ど分解の進行しない有機塩素化合物が存在することも判明した。 【0018】ここで、本発明者等は、前記銅含有鉄粉において、銅含有量を0.1〜60wt%とした各種試料を調製し、DCMの分解速度定数を測定した。この結果、分解速度定数は、銅含有量が約20wt%のとき極大値を示した。この各種試料の粒子において、母材鉄相への銅相の付着状態を観察したところ、銅含有量が増加するに従い、銅相が母材鉄相を被覆する領域が増加していき、含有量約60wt%において、母材鉄相は、ほぼ完全に銅相により被覆されることが判明した。 【0019】以上の測定結果および観察結果より、本発明者等は、母材となる金属を主成分とする相(以下、母材金属相と記載する。)と、この母材金属相に付着した金属を主成分とする金属相(以下、付着金属相と記載する。)とにおいて、母材金属相の主成分の金属元素と、付着金属相の主成分の金属元素との標準酸化還元電位の電位差を778mV以上にとり、且つ付着金属相による母材金属相への被覆状態を適宜に制御することで、難分解性の有機ハロゲン化合物であっても分解が可能な、有機ハロゲン分解用金属粉の製造が可能になるのではないかということに想到した。 【0020】すなわち、本発明者等は、前記銅含有鉄粉において母材金属相の主成分であった鉄と、付着金属相の主成分であった銅との標準酸化還元電位の差の絶対値である777mVより高い778mV以上、より好ましくは900mV以上の電位差を得ることのできる金属元素を組み合わせ、この金属元素の組み合わせのうち、一の金属元素を主成分とする母材金属相へ、他の金属元素を主成分とする付着金属相を付着させて調製した金属粉は、難分解性の有機ハロゲン化合物であっても、分解浄化が可能な有機ハロゲン分解用金属粉となることに想到したものである。 【0021】さらに、母材金属相に2種以上の付着金属相を付着させたり、2種以上の母材金属相に少なくとも1種以上の付着金属相を付着させた金属粉を調製して、前記有機ハロゲン化合物の分解浄化速度を上昇させたり、金属粉の製造コストを下げることも好ましい。この場合、母材金属相または付着金属相の主成分である金属元素のいずれか2種の標準酸化還元電位の差の絶対値が778mV以上より好ましくは900mV以上であればよい。 【0022】尚、本発明に係る有機ハロゲン分解用金属粉の粒径は、1〜500μmが好ましい。何となれば、粒径が1μm以下の場合、土壌への分散性は優れるが、例えば地下水流などとともに、土壌粒子間隙を通過してより下層の方へ流失してしまう可能性があるからであり、一方、500μmを超える場合は、土壌中での位置は安定するものの、単位土壌面積当たりの有機ハロゲン分解用金属粉の使用量が増えるので、コストの点を考えると500μm以下の粒径が好ましいからである。但し、例えば海綿状粒子のような比表面積の大きな金属粉を用いる場合はこの限りではではない。比表面積の大きな金属粉の場合、粉体の単位重量あたりの有効反応サイトが増えるので、単位土壌面積当たりの使用量を低減することができ、粒径が500μmを超える金属粉であっても好ましく使用できる。 【0023】試料の形状は、どの様なものでも良いが、単位重量当たりの比表面積が大きく、母材金属相上において付着金属相が連続することなく、独立して分散し、点在する形態も好ましい。すなわち、試料を構成する少なくとも2つの相が試料金属粉の表面に露出していることが好ましい。この構成を有することで試料は、周囲にある有機ハロゲン化合物を効率的に分解できるからであると考えられる。また同様の理由により、前記試料金属粉の表面に露出している少なくともいずれか2つの相の主成分の金属元素が有する電位差は778mV以上より好ましくは900mV以上であることが好ましい。さらに、母材金属相と、付着金属相とはその界面において十分な電位差が発生するように、金属状態同士で接触していることが好ましい。しかし、この母材金属相と付着金属相との界面内に、例えば、母材金属の酸化物等の化合物形態の部分が一部存在したとしても、特性に大きな悪影響を与えることはない。 【0024】付着金属相の付着膜厚に特に制限はないが、付着金属として高価な金属を用いる場合はコストの観点より、できる限り薄くすることが好ましい。 【0025】ここで、母材金属相へ、付着金属相を付着させる方法として化学的な方法と、物理的な方法とが可能である。化学的な方法とは、付着金属を酸等で溶解した溶液中へ母材金属粉を浸せきし、両金属のイオン化傾向の差を利用して母材金属相へ付着金属相を付着させる方法である。このとき、付着金属の溶解液濃度および浸せき時間等を制御することで、付着金属相の母材金属相への付着状態、付着膜厚等を制御することができる。この方法は、均一な特性を有する有機ハロゲン分解用金属粉を容易に調製できる点で好ましい方法である。 【0026】物理的な方法とは、予め粒状化した母材金属相を含む粒子と、付着金属相を含む粒子とをミキサー等で混合し、その混合時に生じる粒子同士の接触に伴う衝突圧力を利用して付着金属相を母材金属相へ付着させる方法である。この方法で調製した金属粉を電子顕微鏡で観察した結果、母材金属相と付着金属相との界面に両者の合金層が存在せず、界面を境に互いの金属相が直接接合されていることが判明した。さらに付着金属相は、圧力を受けたように変形していることが観察されたことより、母材金属相に圧着しているものと考えられる。この方法によれば、酸による溶解の容易性やイオン化傾向の差違を考慮する必要がない。そこで、母材金属と、付着金属として、広い範囲での金属の組み合わせを考慮する際に好ましい方法である。ここで、例えば付着金属が高コストな金属等である場合は、母材金属相を含む粒子と付着金属を含む粒子との混合割合において、母材金属相を含む粒子の比率を高くすることで、有機ハロゲン分解用金属粉の殆どを母材金属相を含む粒子が占め、付着金属相を含む粒子は、母材金属相を含む粒子の表面に点在して付着している構造とするのも好ましい構成である。 【0027】ここで本発明者等は、母材金属相と、この母材金属相に付着させる付着金属相との組み合わせの例として、銅付着亜鉛粉、銅付着マンガン粉、コバルト付着マンガン粉、銅付着マグネシウム粉、コバルト付着マグネシウム粉、鉄付着マグネシウム粉、アルミニウム付着鉄粉、等の有機ハロゲン分解用の金属粉試料を調製した。因みに、銅付着亜鉛粉、銅付着マンガン粉、コバルト付着マンガン粉、銅付着マグネシウム粉、コバルト付着マグネシウム粉、鉄付着マグネシウム粉の各試料は化学的方法で調製し、アルミニウム付着鉄粉試料は物理的方法で調製した。尚、各試料表面で形成される局部電池の標準酸化還元電位差は、いずれの試料も778mV以上である。さらに、CoまたはAlを金属相の主成分とした試料は、金属粉としての安定性が高く、取り扱いや保管が容易で好ましい試料であった。 【0028】上述した金属粉試料はいずれも、PCE、TCE、cis−1,2−DCE、trans−1,2−DCEはもとより、MCBを始めとする各種の難分解性有機ハロゲン化合物、例えば、1,2−ジクロロベンゼン(以下、1,2−DCBと記載する。)、1,3−ジクロロベンゼン(以下、1,3−DCBと記載する。)、DCM、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,3−ジクロロプロペン、トリハロメタン、PCB、ダイオキシン等の分解に適用可能であり、なかでも、特に塩素系有機化合物の分解に適している。さらに、上述した金属粉試料により、重金属と有機ハロゲン化合物とに混合汚染された土壌、地下水、および地表水の浄化も可能である。 【0029】上述のような方法で調製した金属粉試料の粒子表面に、上述のような難分解性有機ハロゲン化合物が接触する際、その難分解性有機ハロゲン化合物が揮発性であればガス吸着という形態で、不揮発性であれば流動または混合に伴う接触という形態で接触すると考えられる。この金属粉試料の粒子表面に、ガス吸着または接触した難分解性有機ハロゲン化合物は、金属粉試料の組成・表面状態等と、有機ハロゲン化合物の構成元素・立体構造との相互作用により分解される。この相互作用とは、金属粉試料が有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素に与える直接作用や、二重結合部への作用や、各種の錯体的な構造を形成する作用等であるが、金属粉試料と有機ハロゲン化合物の組み合わせにより、これら作用の組み合わせも異なり、分解効果に違いが表れるものと考えられる。 【0030】上述した有機ハロゲン分解用金属粉を用いて、各種の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌、地下水、ガス等の浄化処理を行う場合、例えば次のような方法が好ましい。まず、土壌の浄化処理をおこなう場合には、掘削された土壌へ土壌改良機やバックホー等の重機を用いて有機ハロゲン分解用金属粉を混合する方法がある。次には振動ミル、回転ミル等の設備に掘削された土壌と、有機ハロゲン分解用金属粉と、粉砕メディアとを投入し攪拌混合処理を行う方法がある。さらには、汚染された土壌へ、有機ハロゲン分解用金属粉を局所的に混合した箇所を適宜、配置し、揮発性の有機ハロゲン化合物を拡散移動させながら分解処理していく方法等が適用できる。 【0031】また、地下水の浄化処理をおこなう場合には、地中において、地下水が透過するような有機ハロゲン分解用金属粉を含む反応壁を造成するのが好ましい。このとき地中に造成される反応壁は、地下水が有機ハロゲン分解用金属粉が接するように配置するが、そのためには汚染土壌深部の地下水の易透過層をカバーするように、そして易透過層下方に位置する難透過層にまで反応壁下端部を配置させるか、または埋設されるように反応壁を設けることが好ましい。さらに反応壁の透水係数が回りの土質と比較して、同レベルであるか、またはそれより高くなるように反応壁の透水性を良好な状態に調節することが好ましい。そこで例えば、高砂質土壌等に有機ハロゲン分解用金属粉を0.1〜50重量%程度の範囲で均一または不均一に分散させた材料で反応壁を造成するのが好ましい。 【0032】以下、図を参照しながら、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。 (実施例1) (金属粉試料の調製)まず、硫酸銅の1M水溶液を300mL調製し、平均粒径50μmの亜鉛粉を20wt%投入しスラリーとし5分間攪拌した。攪拌後のスラリーを、吸引ろ過して残渣をエタノール洗浄した後、真空中にて常温乾燥し、銅付着亜鉛粉試料を調製した。以下、前記銅付着亜鉛粉試料と同様の製法により、硫酸銅水溶液とマンガン粉とより銅付着マンガン粉試料を、硫酸コバルト水溶液とマンガン粉とよりコバルト付着マンガン粉試料を、硫酸銅水溶液とマグネシウム粉とより銅付着マグネシウム粉試料を、硫酸コバルト水溶液とマグネシウム粉とよりコバルト付着マグネシウム粉試料を、硫酸鉄水溶液とマグネシウム粉とより鉄付着マグネシウム粉試料を、それぞれ調製した。 【0033】(調製試料の観察)得られた試料の構造を観察したところ、いずれも平均粒径50μmの母材金属相上に、付着金属相が、サブミクロンから最大3μm程度の膜厚を有して点在しているのが観察された。このため付着金属相の付着前後では、金属粉試料の粒径はほとんど変化していなかった。尚、各金属粉試料表面で形成される局部電池の標準酸化還元電位差は、銅付着亜鉛粉試料1,100mV、銅付着マンガン粉試料1,517mV、コバルト付着マンガン粉試料903mV、銅付着マグネシウム粉試料2,707mV、コバルト付着マグネシウム粉試料2,107mV、鉄付着マグネシウム粉試料1,930mVである。 【0034】(調製試料による有機ハロゲン化合物の分解試験)次に、調製した金属粉試料より、コバルト付着マンガン粉試料を用いて有機ハロゲン化合物の分解試験を実施した。まずイオン交換水に、難分解性有機ハロゲン化合物として、MCB、1,2−DCBおよび1,3−DCBの有機塩素化合物を溶解して試験用汚染物質溶液を調製した。調製した試験用汚染物質溶液の濃度は、MCB:22.13mg/L、1,2−DCB:26.13mg/L、1,3−DCB:25.94mg/Lである。尚、有機塩素化合物として、1,2−DCBおよび1,3−DCBを用いた水溶液へは、内部標準物質としてトルエンを一定量加えた。一方、100mlのバイアル瓶にコバルト付着マンガン粉試料を0.5g投入し、そこへ、前記試験用汚染物質溶液を50mlを注ぎ、シリコンライニング処理されたブチルゴムセプタムとアルミシールとで密封した。このバイアル瓶を25℃の条件下で300回/minの攪拌震盪し、この処理を継続した。そして一定時間毎にバイアル瓶のヘッドスペース部のガス100μlをサンプリングして、このガスをGC−MS(ガスクロマト−質量分析装置)装置にて定性・定量分析し、ヘッドスペース部ガス中の有機塩素化合物濃度と前記攪拌震盪処理時間との相関を測定した。 【0035】測定結果を、図1〜3を用いて説明する。図1〜3は、上述したように、実施例1で調製したコバルト付着マンガン粉試料が、有機塩素化合物を溶解して調製した試験用汚染物質を分解していく過程を、GC−MS装置を用いて測定した際のグラフチャート図である。図1は、試験用汚染物質としてMCBを用いた場合であり、図2は、同じく1,2−DCBを用いた場合であり、図3は、同じく1,3−DCBを用いた場合である。また図1〜3において、Aは攪拌震盪処理開始時であり、Bは攪拌震盪処理時間3日であり、Cは攪拌震盪処理時間50日である。各グラフチャート図において、縦軸は有機塩素化合物の検出強度(アバンダンス)、横軸はガスクロマトによる成分分離の結果としての検出時間を示している。 【0036】図1〜3に示す、いずれの有機塩素化合物においても、金属粉試料の脱塩素効果による生成物であるベンゼンの生成を示すピークが確認できた。一方、1,2−DCBおよび1,3−DCBと、内部標準物質とのピーク強度比較をおこなったところ、試験期間3日目までは有機塩素化合物の検出ピークが強まることが判明した。これは金属粉試料への、有機塩素化合物と内部標準物質との吸着性の違いによるものと考えられる。そして3日目以降は有機塩素化合物の分解が進行し、有機塩素化合物のピークが低下していくことが確認できた。 【0037】(実施例2) (金属粉試料の調製)母材金属相の主成分として鉄、付着金属相の主成分としてアルミニウムを選択したアルミニウム付着鉄粉試料を、物理的方法であるところの乾式共粉砕(メカノケミカル)法を用いて次のように調製した。 【0038】まず、母材となる金属粒子として平均粒径50μmの鉄粉、付着させる金属として平均粒径30μmのアルミニウム粉を準備した。この、鉄粉を80wt%、アルミニウム粉を20wt%となるように配合し、混合の後、500g秤量し、容量2Lの粉砕ポットに投入する。粉砕ポットにはさらに粉砕メディアとして20mm径のZrO2ボールを5Kg投入し、回転ミルに設置した。そしてミルの回転数を100rpmとし5分間粉砕処理をおこなって、アルミニウム付着鉄粉試料を調製した。 【0039】(調製試料の観察)前記調製された試料を電子顕微鏡で観察したところ、母材金属相の表面に付着金属相が直接接合された形態にて点在しており、境となる界面に合金相が存在していないことも判明した。尚、各金属粉試料表面で形成される局部電池の標準酸化還元電位差は、1,220mVである。 【0040】(調製試料による有機ハロゲン化合物の分解試験)次に、前記調製された試料を用いて、有機ハロゲン化合物の分解試験を実施した。実施例1と同様に、まずイオン交換水に、有機ハロゲン化合物として、cis−1,2−DCEを25.6mg/Lの濃度で含有させた試験用汚染物質溶液を調製した。一方、実施例1と同様に、100mlのバイアル瓶に試料を0.5g投入し、そこへ前記試験用汚染物質溶液を50ml注ぎ、密封後、攪拌震盪し、一定時間毎にバイアル瓶のヘッドスペース部のガスをサンプリングして、このガスをGC−MS(ガスクロマト−質量分析装置)装置にて定性・定量分析し、ヘッドスペース部ガス中の有機塩素化合物濃度と前記攪拌震盪処理時間とより、試験用汚染物質の分解の半減期を測定した。 【0041】この測定結果より、アルミニウム付着鉄粉試料のcis−1,2−DCEの分解の半減期は1.9日であることが判明した。 【0042】(比較例)特殊鉄粉と、銅含有鉄粉とを比較例試料として準備した。特殊鉄粉試料は、鉄粉内部および表面に局所的にFeO相が生成しており、このFeO相と、母材鉄相とがともに粒子表面に露出した構造を有しているもので、局部電池の標準酸化還元電位差は440mVであった。銅含有鉄粉試料は、硫酸銅の1M水溶液を300mL調製し、平均粒径50μmの鉄粉を20wt%投入しスラリーとし5分間攪拌し、実施例1の試料と同様に調製した。銅含有鉄粉の表面で形成される局部電池の標準酸化還元電位差は777mVであった。 【0043】この比較例試料を用いて、有機ハロゲン化合物の分解試験を実施した。実施例1と同様に、まずイオン交換水に、試験用汚染物質としてcis−1,2−DCE:25.6mg/L、MCB:22.2mg/L、1,2−DCB:26.12mg/L、1,3−DCB:26.12mg/L、DCM:26.6mg/Lの濃度で含有させた水溶液をそれぞれ調製した。一方、実施例1と同様に、100mlのバイアル瓶に試料を0.5g投入し、そこへ前記試験用汚染物質溶液を50ml注ぎ、密封後、攪拌震盪し、一定時間毎にバイアル瓶のヘッドスペース部のガスをサンプリングして、このガスをGC−MS(ガスクロマト−質量分析装置)装置にて定性・定量分析し、ヘッドスペース部ガス中の有機塩素化合物濃度と前記攪拌震盪処理時間とより、試験用汚染物質の分解の半減期を測定した。 【0044】測定結果を、図4を用いて説明する。図4は、前記試験用汚染物質である有機塩素化合物を、前記特殊鉄粉試料および銅含有鉄粉試料が分解する際の、半減期の測定結果を示した表である。図4の結果より、前記特殊鉄粉試料および銅含有鉄粉試料が、cis−1,2−DCE、MCB、1,2−DCB、1,3−DCB、DCMを分解する際の半減期は3日以上、または殆ど分解が進行しないことが判明した。 【0045】 【発明の効果】以上、説明したように本発明は、従来の分解、浄化手段では分解困難な有機ハロゲン化合物を含む、広範囲な有機ハロゲン化合物を分解、浄化するため、少なくとも2種以上の金属元素を含有し、前記各々の金属元素は、各々の金属元素を主成分とする相を形成し、前記相を含有する金属粉であって、前記金属元素のいずれか2種の標準酸化還元電位の差の絶対値が778mV以上であることを特長とする有機ハロゲン分解用金属粉を発明したものである。この有機ハロゲン分解用金属粉を用いることで、前記分解困難な有機ハロゲン化合物を含む有機ハロゲン化合物を分解、浄化することが可能となった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000224798 【氏名又は名称】同和鉱業株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区丸の内1丁目8番2号
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| 【出願日】 |
平成13年9月10日(2001.9.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091362 【弁理士】 【氏名又は名称】阿仁屋 節雄 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−80220(P2003−80220A) |
| 【公開日】 |
平成15年3月18日(2003.3.18) |
| 【出願番号】 |
特願2001−273561(P2001−273561) |
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