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【発明の名称】 重金属汚染透水性固体の処理方法
【発明者】 【氏名】伊藤 一郎
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田工業株式会社内

【要約】 【課題】焼却施設等の解体時に排出される煉瓦等の透水性で内部まで重金属の汚染が進行した廃棄物を、重金属固定化剤で効率的に処理して、重金属の溶出を防止する。

【解決手段】重金属で汚染された透水性固体を、重金属固定化剤含有液に浸漬して重金属固定化処理を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重金属で汚染された透水性の固体を重金属固定化剤で重金属固定化処理する方法において、重金属固定化剤含有液中に該透水性固体を浸漬して重金属の固定化処理を行うことを特徴とする重金属汚染透水性固体の処理方法。
【請求項2】 請求項1において、該重金属固定化剤含有液への浸漬に先立ち、該透水性固体の吸水率Bと、重金属固定化処理に必要な該重金属固定化剤の該透水性固体(乾燥重量)に対する添加率Cを求め、(C/B)×100の演算結果から浸漬処理に用いる重金属固定化剤含有液の重金属固定化剤濃度Aを決定し、前記重金属固定化剤含有液の濃度を該濃度A以上とすることを特徴とする重金属汚染透水性固体の処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は重金属汚染透水性固体の処理方法に係り、特に焼却炉等の重金属で汚染された施設の解体時等に排出される煉瓦等の透水性の固体廃棄物を重金属固定化剤で効率的に処理して重金属の溶出を防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】清掃工場や各種製造工場などは、長年に亘り構造物や設備が重金属に汚染されているため、これらの施設の解体時に排出される解体物には、有害な重金属が多く含有されている。従って、これら解体物を廃棄する際には、有害な重金属等が溶出しないように重金属の固定化を行う必要がある。具体的な処理方法としては、混練機などを用いて重金属固定化剤と混合する方法や水で希釈した重金属固定化剤を解体物に散布する方法などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】重金属で汚染された施設の解体時に排出される解体物のうち、特に透水性の解体物、例えば、清掃工場の焼却炉設備の解体時に排出される煉瓦等の透水性ブロックは、その透水性のために、内部まで重金属汚染が進行しているが、従来においては、このように内部まで重金属汚染が進行した塊状の解体物の重金属固定化処理方法として有効な方法が提供されていなかった。
【0004】即ち、混練機等を用いて重金属固定化剤と混合する方法は、清掃工場の焼却炉から発生する煤塵等の粉体状のものであれば、重金属固定化剤と効率的に混合することができ、十分な重金属固定化効果を得ることができるが、この方法は煉瓦のようにある程度の強度を有するブロック状の解体物に対しては、適用することができない。この方法を適用するために、ブロック状の解体物を粉砕することは、粉砕のための設備、作業が必要になり、コスト、作業効率等の面で不利である。また、粉砕による二次汚染の問題もある。
【0005】また、解体物に水で希釈した重金属固定化剤を散布する方法では、解体物の内部まで重金属固定化剤が十分に浸透し難いため、十分な重金属固定化効果を得ることができない。
【0006】本発明は上記従来の問題点を解決し、焼却施設等の解体時に排出される煉瓦等の透水性で内部まで重金属の汚染が進行した廃棄物を、重金属固定化剤で効率的に処理して、重金属の溶出を防止する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の重金属汚染透水性固体の処理方法は、重金属で汚染された透水性の固体を重金属固定化剤で重金属固定化処理する方法において、重金属固定化剤含有液中に該透水性固体を浸漬して重金属の固定化処理を行うことを特徴とする。
【0008】透水性固体を重金属固定化剤含有液に浸漬することにより、透水性固体の内部にまで重金属固定化剤が浸透し、透水性固体に含有される重金属を有効に固定化してその溶出を確実に防止することができる。
【0009】本発明においては、該重金属固定化剤含有液への浸漬に先立ち、該透水性固体の吸水率Bと、重金属固定化処理に必要な該重金属固定化剤の該透水性固体(乾燥重量)に対する添加率Cを求め、(C/B)×100の演算結果から浸漬処理に用いる重金属固定化剤含有液の重金属固定化剤濃度Aを決定し、前記重金属固定化剤含有液の濃度を該濃度A以上とすることが、重金属固定化剤使用量、重金属固定化剤含有液量を抑えて確実な重金属固定化効果を得る上で好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の重金属汚染透水性固体の処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】本発明で処理対象となる透水性固体は、焼却炉を構成する耐火煉瓦や、モルタルコンクリート構造物、集塵機濾布等の重金属で汚染された施設の解体時等に排出される解体物であり、その透水性の程度には特に制限はないが、後述のJISR2205に基いて測定された吸水率で1重量%以上であることが好ましい。この吸水率が1重量%未満では浸漬による内部への重金属固定化剤の浸漬が十分ではなく、また、このように吸水率の小さいものでは、内部まで重金属汚染が進行している可能性が低く、本発明による効果を十分に得ることができない場合がある。
【0012】本発明においては、このような透水性固体を、浸漬槽内の重金属固定化剤含有液に浸漬して重金属固定化処理を行う。
【0013】重金属固定化剤としては、特に制限はなく、従来一般的に用いられているものを用いることができる。具体的には、正リン酸(オルソリン酸)、ポリリン酸、メタリン酸、次リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、過リン酸、第一リン酸ソーダ、第二リン酸ソーダ、第三リン酸ソーダ、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第一リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、過リン酸石灰、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等のリン酸化合物;焼き石膏、ポルトランドセメント、早強セメント、ジェットセメント、高炉セメント、アルミナセメント等のセメント類;各種活性白土、合成珪酸、天然珪酸加工物等の無機吸着剤;汎用の珪酸ソーダ、珪酸カリウム等の水溶性珪酸塩等の水ガラス;ジチオカルバミン酸化合物系のキレート系重金属固定化剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】重金属固定化剤含有液の重金属固定化剤濃度は、過度に低いと十分な重金属固定化効果を得ることができず、過度に高いと不経済であるため、透水性固体の重金属固定化処理に必要な重金属固定化剤が透水性固体に十分に浸透するように、即ち、浸漬後乾燥した透水性固体に必要量の重金属固定化剤が保持されているように、透水性固体の吸水率と乾燥重量当たりの重金属固定化剤の必要量を予め求め、次のようにして算出した結果に基いて決定することが好ましい。
【0015】即ち、重金属固定化剤含有液の重金属固定化剤濃度は、透水性固体中に吸水された重金属固定化剤含有液中の重金属固定化剤量が当該透水性固体の重金属の固定化に必要な重金属固定化剤量となることが望ましい。この重金属固定化剤濃度A(重量%)は、透水性固体の吸水率B(重量%)と透水性固体の乾燥重量に対する重金属固定化剤の必要添加率C(重量%)とから下記(I)式により算出される。
A=(C/B)×100 …(I)
ここで、透水性固体の吸水率の測定はJIS R2205「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率及び比重の測定方法」に基いて行うことができる。
【0016】また、乾燥した透水性固体に対する重金属固定化剤の必要添加率は、例えば、次のようにして求めることができる。まず、透水性固体を105〜120℃の恒温槽中で恒量に達するまで乾燥後、ボールミル等により細かく粉砕する。粉砕物を50gポリビーカーに採り、水と重金属固定化剤を所定量添加しスパーテルでよく混練して試料とし、公定法に基づく溶出試験を行って溶出液の分析を行う。この結果から、各有害重金属の埋立基準値等を満たす重金属固定化剤添加率を、乾燥した透水性固体に対する重金属固定化剤の必要添加率とする。
【0017】重金属固定化剤含有液の重金属固定化剤濃度は、このようにして算出された重金属固定化剤濃度A(重量%)以上であれば、十分な重金属固定化効果を得ることができる。経済性を損なうことなく、重金属固定化効果を確実に得るために、用いる重金属固定化剤含有液の重金属固定化剤濃度は、上記(I)式で算出された重金属固定化剤濃度A(重量%)の1〜5倍、特に1〜2倍であることが好ましい。
【0018】浸漬処理に用いる重金属固定化剤含有液量は、透水性固体が十分に浸漬できる液量であれば良く、この重金属固定化剤含有液量が重金属固定化効果に大きな影響を及ぼすことはないが、経済性、浸漬槽の容積、廃水処理の負荷等を考慮した場合、重金属固定化剤含有液量は透水性固体100重量部に対して200〜500重量部とするのが望ましい。
【0019】また、浸漬時間には特に制限はなく、透水性固体の透水性、大きさ、重金属含有量、用いる重金属固定化剤の種類、処理温度等の浸漬条件によっても異なるため、これらの条件に応じて、十分な重金属固定化効果が得られる浸漬時間を予め予備実験を行うなどして決定しておくことが好ましい。一般的には浸漬時間は2〜6時間で十分な処理効果を得ることができる。
【0020】なお、浸漬に当たり、透水性固体は必ずしも破砕する必要はなく、解体工事で発生した塊状のまま浸漬処理に供することができるが、この透水性固体が過度に大きいと、取り扱いに不便であり、また、大きな浸漬槽を必要とする上に重金属固定化のための浸漬時間を長く要する場合があり、処理効率の面で好ましくないことから、最も長い部分が50cm以下、体積として0.1m以下に必要に応じて破砕しておくことが好ましい。ただし、十分に大きな浸漬槽を備え、浸漬時間を十分に確保できる場合には、これよりも大きな塊状で処理しても良い。
【0021】また、浸漬処理に先立ち、必要に応じて透水性固体を乾燥させておくことは浸漬処理中の吸水効率を高める上で有利であり、透水性固体が解体時の散水等で吸水している場合には、吸水率の1/10以下程度の含水率となるように乾燥しても良い。
【0022】なお、本発明の方法は、透水性固体を常温、常圧で浸漬処理するのみで良く、煩雑な条件管理等を行うことなく容易に実施することができるが、必要に応じて減圧、加熱等の処理を行っても良い。
【0023】浸漬処理後の透水性固体は、乾燥後、重金属の固定化効果を確認した後、廃棄処分される。
【0024】浸漬処理後の重金属固定化剤含有液は、重金属固定化剤及び水等の溶媒を補充して次の浸漬処理に再利用しても良く、また、廃水処理に供しても良い。
【0025】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0026】なお、以下の実施例においては、重金属固定化剤としてリン酸塩及びキレート剤系重金属固定化剤の栗田工業(株)製「アッシュナイト R703」を用いた。
【0027】また、材料として用いた某清掃工場の解体工事で発生した焼却炉耐火煉瓦の組成及び重金属含有量は下記の通りである。
【0028】
【表1】

【0029】実施例1まず、焼却炉耐火煉瓦をハンマーで砕いた後、105℃に調整した恒温槽に入れて乾燥し、その後、ボールミルで細かく粉砕した。この粉砕物に前述した方法で水と重金属固定化剤を添加して混練し、混練物について環境庁告示13号に基く溶出試験を行うことにより、重金属固定化剤の必要添加量を求めた。この結果、重金属固定化剤の必要添加量は煉瓦に対して1重量%であった。
【0030】また、ハンマーで砕いた後乾燥した煉瓦についてJIS R2205に基き吸水率を測定したところ、煉瓦の吸水率は10重量%であった。
【0031】これらの結果から、前述の(I)式に基いて、浸漬水の重金属固定化剤濃度は10重量%であった。
【0032】煉瓦(50mm角)を表2に示す濃度の重金属固定化剤水溶液(ただし、No.1では水のみ)を入れた容量1000mLのポリビーカーに入れ1時間浸漬した。なお、このときの重金属固定化剤水溶液量は煉瓦100重量部に対して200重量部とした。
【0033】浸漬後、煉瓦を取り出し、ハンマーで砕いた後ボールミルで細かく粉砕した後、環境庁告示13号に基く溶出試験を行い、溶出液の分析結果を表2に示した。
【0034】
【表2】

【0035】表2より、重金属固定化剤水溶液に浸漬することにより、煉瓦に含有される重金属を固定化することができ、特に煉瓦の吸水率と重金属固定化剤の必要添加量とから予め求めた重金属固定化剤濃度(本実施例では10重量%)以上の浸漬水中に浸漬することにより、重金属を確実に固定化することができることがわかる。
【0036】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の重金属汚染透水性固体の処理方法によれば、焼却施設等の解体時に排出される煉瓦等の透水性で内部まで重金属の汚染が進行した廃棄物を、重金属固定化剤で効率的に処理して、重金属の溶出を効果的に防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿3丁目4番7号
【出願日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【代理人】 【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
【公開番号】 特開2003−80196(P2003−80196A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−272131(P2001−272131)