| 【発明の名称】 |
高分子溶液膜の塗布・乾燥方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】鏡 裕行
【氏名】北野 高広
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| 【要約】 |
【課題】高分子溶液膜の塗布・乾燥方法に関し、レジスト膜の端の部分にできる特異な凹凸が形成される機構を解析して、レジスト膜の端付近の特異な形状の影響を低減する。
【解決手段】ラングミュアの蒸発速度の式と溶液の蒸気圧降下の関係式とから得た関係式、溶液の拡散方程式、及び、溶質の拡散方程式とを組み合わせることによって、乾燥後の高分子膜の膜厚をシミュレーションし、シミュレーション結果と実験結果との差が小さくなるようにフィッティングを行って、各パラメータの数値を特定したデータベースを構築し、このデータベースを用いて高分子溶液膜の乾燥条件を決定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラングミュアの蒸発速度の式と溶液の蒸気圧降下の関係式とから得た下記の関係式(1)、溶液の拡散方程式(2)、及び、溶質の拡散方程式(3)とを組み合わせることによって、乾燥後の高分子膜の膜厚をシミュレーションし、シミュレーション結果と実験結果との差が小さくなるようにフィッティングを行って、各パラメータの数値を特定したデータベースを構築し、このデータベースを用いて高分子溶液膜の乾燥条件を決定することを特徴とする高分子溶液膜の塗布・乾燥方法。 【数1】
【請求項2】 上記データベースを用いて、上記高分子溶液膜における溶液及び溶質の拡散係数の組合せを選択することを特徴とする請求項1記載の高分子溶液膜の塗布・乾燥方法。 【請求項3】 ラングミュアの蒸発速度の式と溶液の蒸気圧降下の関係式とから得た下記の関係式(1)、溶液の拡散方程式(2)、及び、溶質の拡散方程式(3)とを組み合わせることによって、乾燥後の高分子膜の膜厚をシミュレーションし、シミュレーション結果の最適値を実験における初期値として実験を繰り返すことによって高分子溶液膜の乾燥条件を決定することを特徴とする高分子溶液膜の塗布・乾燥方法。 【数2】
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は高分子溶液膜の塗布・乾燥方法に関するものであり、特に、平坦な基板上に高分子溶液を塗布し、乾燥させて、平坦な高分子薄膜を形成する際に、端部の隆起を低減するための手法に特徴のある高分子溶液膜の塗布・乾燥方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】半導体デバイス製造工程において、電極パターンや半導体領域を微細加工するためにリソグラフィー工程が用いられているが、この様なリソグラフィー工程においては、半導体基板やフォトマスク基板等の被処理基板上に高分子溶液を利用したレジスト塗布工程が必須の工程となる。 【0003】このレジスト塗布工程においては、パターン形成精度を高めるために高分子レジスト薄膜を基板上に均一な厚さで形成させることが要求されるが、この高分子レジスト薄膜の形成のため、高分子レジスト溶液を被処理基板上に塗布し、溶剤のみを揮発させることが行われる。 【0004】近年、フォトマスク基板等の矩形の被処理基板上にレジストを塗布する手法として、スキャン塗布・減圧乾燥法が開発されたが(必要ならば、特開2001−170546号公報参照)、このスキャン塗布・減圧乾燥法においては、被処理基板上にノズルからレジスト溶液を吐出しながらスキャンして塗布することにより被処理基板上にほぼ一様な厚さのレジスト溶液の液膜を形成させた後、減圧雰囲気中で溶剤の揮発を促進させ乾燥を行うものである。 【0005】この様な、スキャン塗布・減圧乾燥法は、アクティブマトリクス型液晶表示装置を構成するTFT基板の製造工程にも適用されるので、液晶パネルの大画像化の流れのなかで期待されている塗布法になっている。 【0006】しかし、このスキャン塗布・減圧乾燥法でレジスト薄膜を形成した場合、膜の端付近の領域に特異な凹凸の形状が現れることが知られているので、この事情を図5を参照して説明する。 【0007】図5参照図5は、スキャン塗布・減圧乾燥法でレジスト膜を形成した場合のレジスト膜の膜厚分布図であり、このレジスト膜の膜厚分布から明らかなように、レジスト膜の端の部分が大きく隆起し、その内側にはやや窪みがあり、そこから膜の中央方向にいくに従い、次第に平均的膜厚に回復していくという形状の特徴がみられる。なお、図においては、隆起部の高さをa、窪みの深さをb、平均膜厚に回復するまでの距離をcで表している。 【0008】この様なレジスト膜の端付近の特異な形状は、その後に続く描画・現像工程からみても好ましいものではなく、これを取り除く、あるいはこの特異な形状の影響を低減すべく、精力的に研究が行われている。 【0009】これまでは、この特異な形状ができあがる機構が分かっていなかったため、様々な予想に基づいて試行錯誤的に実験を繰り返すことで、特異な形状の影響を少なくすることが試みられてきた。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかし、このような経験に基づいた実験の繰り返しから、いつも特異な形状の影響を少なくする方法を見出していたのでは、時間的にも、資源的にもコストがかかりすぎるという問題がある。 【0011】したがって、本発明は、レジスト膜の端の部分にできる特異な凹凸が形成される機構を解析して、レジスト膜の端付近の特異な形状の影響を低減することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】ここで、本発明における課題を解決するための手段を説明する。 図1参照(1)本発明は、高分子溶液膜の塗布・乾燥方法において、ラングミュアの蒸発速度の式と溶液の蒸気圧降下の関係式とから得た下記の関係式(1)、溶液の拡散方程式(2)、及び、溶質の拡散方程式(3)とを組み合わせることによって、乾燥後の高分子膜の膜厚をシミュレーションし、シミュレーション結果と実験結果との差が小さくなるようにフィッティングを行って、各パラメータの数値を特定したデータベースを構築し、このデータベースを用いて高分子溶液膜の乾燥条件を決定することを特徴とする。 【数3】
【0013】この様に、シミュレーションを行うことによって、上記の図5に示した膜厚分布を良好に再現することができ、その結果を乾燥工程にフィードバックすることによって、時間的にも、資源的にも低コストで隆起部が低く、平均膜厚に回復するまでの距離が短い膜厚分布を有する高分子膜を得ることが可能になる。なお、本願明細書においては、溶液中における溶媒の拡散が溶質を一緒に引きずって動くことを表すために「溶液の拡散係数k2 」という用語を用いている。 【0014】(2)また、本発明は、上記(1)において、データベースを用いて、高分子溶液膜における溶液及び溶質の拡散係数の組合せを選択することを特徴とする。 【0015】また、乾燥条件だけでは、充分良好な膜厚分布が得られない場合には、膜厚分布の影響を与える溶液及び溶質の拡散係数の組合せを選択することによって、より所期の膜厚分布に近い分布を得ることが可能になる。 【0016】(3)また、本発明は、高分子溶液膜の塗布・乾燥方法において、ラングミュアの蒸発速度の式と溶液の蒸気圧降下の関係式とから得た上記の関係式(1)、溶液の拡散方程式(2)、及び、溶質の拡散方程式(3)とを組み合わせることによって、乾燥後の高分子膜の膜厚をシミュレーションし、シミュレーション結果の最適値を実験における初期値として実験を繰り返すことによって高分子溶液膜の乾燥条件を決定することを特徴とする。 【0017】この様に、乾燥条件を決定する実験の前にシミュレーションを行うことによって、大凡の目処を立てることができ、それによって、実験に要する時間的及び資源的コストを大幅に低減することが可能になる。 【0018】 【発明の実施の形態】ここで、図1乃至図4を参照して、本発明の実施の形態の高分子溶液膜の乾燥方法を説明する。まず、高分子溶液が乾燥していく機構のモデルを作るため、まず、下記の式(1)で表される蒸発モデルを考案した。 G=γ(1−βC) ・・・(1) 但し、Gは蒸発速度、Cは高分子溶液の濃度、γ及びβは定数である。 【0019】この蒸発モデルは、Langmuir(ラングミュア)の蒸発速度の式と、溶液の蒸気圧降下の関係式を根拠にして考案したものである。即ち、Langmuirの蒸発速度の式は、下記の式(4)で表される。 G=K・P×〔M/(2πRT)〕1/2 ・・・(4) 但し、Pは蒸気圧、Mは分子量、Rは気体定数、Tは温度、Kは定数である。 【0020】一方、溶液の蒸気圧降下の関係式は、下記の式(5)で表される。 (P0 −P)/P=n/n0 ・・・(5) 但し、P0 は溶媒のみの時の蒸気圧、Pは溶液の蒸気圧、nは溶質のモル数、n0 は溶媒のモル数である。 【0021】ここで、高分子溶液の濃度をCとすると、この濃度Cは、単純な近似では、 C=α〔n/(n+n0 )〕 =α〔1−n0 /(n+n0 )〕 ・・・(6) と仮定できる。但し、αは定数である。 【0022】したがって、式(6)を式(5)に代入して、Pを求めると、 P=P0 (1−C/α) ・・・(7) となり、この式(7)を式(4)に代入すると、 G=K・P×〔M/(2πRT)〕-1/2 =K・P0 (1−C/α)×〔M/(2πRT)〕1/2 ・・・(8) となり、K・P0 ×〔M/(2πRT)〕1/2 =γ、1/α=βで置き換えたものが、本発明者の考案した上記の式(1)の蒸発モデル式である。 【0023】このモデルにおいては、高分子溶液膜表面から溶剤が蒸発すると、蒸発が起きている液膜表面付近は、単位空間当りの溶液の量が減少し、液膜全体として単位空間当りの溶液の量が一定になろうとして、拡散方程式にしたがって液膜表面付近への溶液全体の拡散が起こり、その後、高分子溶液の濃度が一定になろうとして、溶質の高分子の拡散が起こるとする。 【0024】以上の事項を前提として二次元シミュレーションを行うが、この場合には、平坦な基板上に薄く盛られた高分子溶液の液膜について、高分子溶液膜の上部の空間を減圧して高分子溶液膜中の溶剤のみを揮発させ、最終的に高分子から成る薄膜を形成させるプロセスを考えている。 【0025】図1(a)参照まず、一辺の長さが150mmの基板11上に厚さが100μmの高分子溶液膜12を表面が平坦になるように塗布したと仮定する。 【0026】図1(b)参照次いで、高分子溶液膜12の表面のみから溶剤が蒸発すると仮定すると、蒸発が起きている高分子溶液膜12の表面付近は、単位空間当りの溶液の量が減少し、高分子溶液膜12全体として単位空間当りの溶液の量が一定になろうとして、高分子溶液膜12の表面付近への溶質13と溶媒14からなる溶液全体の拡散が起こり、その後、高分子溶液の濃度が一定になろうとして、溶質13の高分子の拡散が起こるとする。 【0027】図1(c)参照この高分子溶液膜12の溶剤のみを揮発させた後は、実験例通りに端部に隆起部16とその内側の近傍に窪み17のある形状、即ち、膜の端の部分が大きく隆起し、その内側にはやや窪みがあり、そこから膜の中央方向にいくに従い、次第に平均的膜厚に回復していくという形状の高分子薄膜15が通常形成されると仮定する。 【0028】この様な状態を想定して数値シミュレーションを行うが、初期条件としては、高分子溶液膜内の溶液の液体分子の数は一様分布とし、溶質である高分子の数密度も表面からの厚さが、後述する正方格子の一辺の長さに相当する0.025mm(=25μm)の上表面を除いて一定であると仮定して計算を行う。なお、25μm厚の上表面における溶質の数密度C〔=n/(n+n0 )〕を10%の一様乱数を振ってばらつかせた。 【0029】次に、上記の蒸発モデル式(1)におけるパラメータγとβ、単位空間当りの溶液の量が一定になろうとして溶液が空間に拡散するときの溶液の拡散の強さk2 、及び、溶質の拡散係数k1 の値を色々与え、実験結果が忠実に再現できるようにフィッテイングを繰り返すものである。 【0030】この場合、上記の蒸発モデル式(1)は3次元空間での蒸発速度であるので、本発明の2次元のシミュレーションにはそのまま用いることができない。また、3次元空間での蒸発速度の単位は〔kg/m2 /s〕であるが、質量を二次元に取り込むことは困難であるので、質量に対応するものを体積とし、それを二次元で表す場合に面積を用い〔m/s〕をγの単位とした。 【0031】この蒸発速度のパラメータとなるγは、実験で乾燥するまでの時間を実測し、実測値に基づいて蒸発速度を予想し、パラメータとしてシミュレーションに投入する。 【0032】また、単位空間当たりの溶液の量が一定になろうとして溶液が空間に拡散する時の溶液の拡散は、下記の式(2)で記述されるものとする。 【数4】
ここでは、Vは、単位空間当たりの溶液の量であり、〔m-2〕の次元を有するものであり、また、k2 は溶液の拡散係数である。 【0033】溶質である高分子の溶媒に対する拡散は、下記の式(3)で記述されるものとする。 【数5】
ここでは、Cは高分子の数密度、即ち、溶液の濃度であり、上記の式(6)で表され、〔m-2〕の次元を有するものであり、また、k1 は溶質の拡散係数である。 【0034】以上の式(1)乃至(3)を用い、高分子溶液膜を格子状に分割し、例えば、一辺が25μmの正方格子に分割し、各格子点(i,j)において、上記拡散方程式を解いて単位空間当たりの液体の体積Vijと、単位空間当たりの高分子の数密度Cijを求める。 【0035】この場合、溶液の濃度Cと、溶質である高分子の濃度Nと、溶液の体積Vとの間には、C=N/V ・・・(9) の関係があるので、単位空間当たりの液体の体積Vijと単位空間当たりの高分子の数密度Cijとの積Vij×Cijを、その場所iにおける高さ方向の数で足し合わせて高分子の数Ni を求め、それを膜厚として評価する。この場合、高分子溶液膜を正方格子で縦方向にm分割した場合、場所iにおける高分子の数Ni は、下記の式(10)で表される。 【数6】
【0036】以上を前提として、本発明の実施の形態におけるシミュレーションの具体的手法を説明するが、本発明は方程式から解析的に解くのではなく、微小時間経過後の濃度変化及び溶液量変化を用いて上記の拡散方程式(2)及び(3)を差分化し、それを所定時間分順次繰り返して行うものであり、高分子溶液膜中の溶媒の量が一定値以下になった場合に充分に乾燥したとみなし、それ以上の溶質の移動が起こらないものとして計算を終了する。 【0037】まず、時間tn から時間tn+1 だけ微小時間Δt経過した場合に、格子点(i,j)における溶液の量V及び濃度CもΔV及びΔCだけ変化する。溶液量については、蒸発速度Gにおいて微小時間Δtだけ経過した後の変化であるので、G=ΔV/Δt ・・・(11) で表され、上記(1)を用いると、ΔV=γ(1−βC)Δt ・・・(12) となる。 【0038】次いで、上記(2)の拡散方程式を差分化すると、夫々の項を下記の式(13)乃至(15)で表される。 【数7】
【0039】なお、上記の式(14)は、正方格子を構成する格子点(i,j)のx方向に隣接する格子点(i+1,j)と格子点(i−1,j)からの流入分の寄与と、格子点(i,j)から格子点(i+1,j)と格子点(i−1,j)への流出分の寄与を考慮した式となっている。また、上記の式(15)は、正方格子を構成する格子点(i,j)のy方向に隣接する格子点(i,j+1)と格子点(i,j−1)からの流入分の寄与と、格子点(i,j)から格子点(i,j+1)と格子点(i,j−1)への流出の寄与を考慮した式となっている。 【0040】次いで、式(2)から、式(13)と、式(14)と式(15)の和は等しく、また、本発明の実施の形態においては正方格子で考えているので、Δx=Δyとなり、したがって、下記の式(16)が導かれる。 【数8】
【0041】一方、高分子の濃度Cについては、変化後の濃度をC′とすると、式(9)から、C′=N/(V−ΔV) ・・・(17) で表され、式(17)は、式(12)及び式(11)を用いることによって、 C′=N/〔V−γ(1−βC)Δt〕 =CV/〔V−γ(1−βC)Δt〕 ・・・(18) となる。但し、式(17),(18)におけるC,Vは微小時間Δtだけ前の濃度及び溶液量を用いる。 【0042】次いで、上記(3)の拡散方程式を差分化すると、夫々の項を下記の式(19)乃至(21)で表される。 【数9】
この場合も、隣接する格子点からの寄与は溶液量Vと全く同じに考える。 【0043】次いで、式(3)から、式(19)と、式(20)と式(21)の和は等しく、且つ、上述のようにΔx=Δyであるので、下記の式(22)が導かれる。 【数10】
【0044】そこで、実際の数値計算を行う際には、まず、第1に、高分子溶液膜の表面におけるγに依存する蒸発による高分子濃度の変化C′を式(18)を用いて評価し、第2に、表面の高分子濃度の変化に伴う高分子溶液膜全体における高分子の拡散を式(22)で評価し、第3に、蒸発による表面の溶液量の変化に伴う溶液の拡散による溶液量Vの変化を式(16)で評価する。この手順を乾燥が終了したと見なされる時間だけ繰り返して行うものである。なお、この第1乃至第3の手順は互いに入れ換えてもシミュレーション結果に影響を与えるものではない。 【0045】この様な式(16)乃至式(22)についての数値計算をγ,k1 ,k2 の各パラメータを変動させて計算した結果が図2乃至図4である。なお、数値計算においては、ΔxとΔyは正方格子の一辺となるので25μmの数値を代入し、Δtとしては、例えば、1m秒を用いる。 【0046】また、γとしては、実測値に基づいて予想した蒸発速度を用い、また、βは適当な値を定数として代入し、さらに、濃度Cは、そのままでは非常に大きな数値になるので、モル(mol)値等に換算して数値計算を行う。 【0047】次に、図2乃至図4を参照して、乾燥モデルの数値シミュレーション結果を示す。 図2参照図2は、高分子膜厚分布の蒸発速度依存性のシミュレーション結果を示す図であり、ここで蒸発速度の指標となるパラメータとしては上述のγを用いている。一方、縦軸には、正方格子の一辺に相当する高分子膜の長さ0.025mm(=25μm)当りの高分子の個数をとってあり、この個数により、高分子膜の膜厚を表現している。 【0048】図から、明らかなように、γを小さくしていくにしたがって、即ち、蒸発速度を小さくしていくにしたがって、高分子膜の端の部分の隆起の高さa及び高分子膜の端の部分の隆起のすぐ内側の窪みの深さbを小さくすることができるが、高分子膜の端の部分の凹凸部分の幅、即ち、端から凸凹部分を経て平均的膜厚に回復する部分までの長さcが増大するという結果が得られ、また、局所的に見れば高分子膜の平坦性が増す結果が得られた。 【0049】これは、自然乾燥を減圧乾燥と比較した場合の実験結果を定性的に反映しており、蒸発速度が小さいと乾燥するまでの時間が長くなるため、溶液の拡散の影響がより内部まで及ぶためであると考えられる。 【0050】一方、本発明の蒸発モデルにおいては、蒸発により濃度分布が非一様になる効果により、拡散により濃度が一様になる効果の方が大きいため、局所的に見れば高分子膜の平坦性が増す結果が得られたものと考えられる。これは、自然乾燥の結果とも定性的に一致するものである。 【0051】図3参照図3は、溶液の拡散係数k2 を一定とした場合の高分子膜の膜厚分布の溶質の拡散係数k1 依存性をシミュレーション結果を示した図であり、ここでは、k2=5.3125×10-8m2 /sとしている。 【0052】図から明らかなように、溶質の拡散係数k1 が大きくなるほど、即ち、k2 −k1 が小さくなるほど、高分子膜の端の部分の隆起の高さa及び高分子膜の端の部分の隆起のすぐ内側の窪みの深さbが小さくなる傾向が見られる。 【0053】図4参照図4は、溶質の拡散係数k1 を一定とした場合の高分子膜の膜厚分布の溶液の拡散係数k2 依存性をシミュレーション結果を示した図であり、ここでは、k1=1.875×10-8m2 /sとしている。 【0054】図から明らかなように、溶液の拡散係数k2 が小さくなるほど、即ち、k2 −k1 が小さくなるほど、高分子膜の端の部分の隆起の高さa及び高分子膜の端の部分の隆起のすぐ内側の窪みの深さbが小さくなるとともに、端の部分の凹凸部分の幅cが小さくなる傾向が見られる。 【0055】以上のように高分子溶液が乾燥していく機構のモデルについて、数値シミュレーションを行ったところ、図2乃至図4から明らかなように、実際の塗布・乾燥工程において見られる高分子膜の端の部分の膜厚分布の特異な形状、即ち、膜厚分布は、膜の端の部分の大きな隆起、その内側にの小さな窪み、そこから膜の中央方向にいくに従い次第に平均的膜厚に回復していく平坦部からなる形状が再現された。 【0056】即ち、レジスト膜の端の部分の隆起の高さa、レジスト膜の端の部分の隆起のすぐ内側の窪みの深さb、レジスト膜の端の部分の凹凸部分の幅、即ち、端から凸凹部分を経て平均的膜厚に回復する部分までの長さcは、蒸発速度G、単位空間当りの溶液の量が一定になろうとして溶液が空間に拡散するときの溶液の拡散の強さk2 、及び、溶質である高分子の拡散係数k1 の各パラメータの大きさで表されることが判明した。 【0057】即ち、蒸発速度の制御では、高分子膜の端の部分の隆起の高さa及び高分子膜の端の部分の隆起のすぐ内側の窪みの深さbと、高分子膜の端の部分の凹凸部分の幅cとはトレードオフの関係にあるが、溶液の拡散係数k2 と溶質の拡散係数k1 との差は高分子膜の端の部分の隆起の高さa及び高分子膜の端の部分の隆起のすぐ内側の窪みの深さbと、高分子膜の端の部分の凹凸部分の幅cとの関係が両立する傾向がある。 【0058】このことを用いて、高分子膜の端の部分の凹凸の形状に関して、望む形状を想定してある程度あらかじめ蒸発速度G(或いはγ)、溶質である高分子の拡散係数k1 、溶液の拡散の強さk2 をパラメータとして指定することが可能になり、望む膜の端の部分の凹凸の形状を実現させる場合に、時間的、資源的なコストの削減につながる。 【0059】但し、このモデルによれば、高分子膜の端の部分の凹凸に関しては、何らかの特別な装置の工夫でもしない限り、上述のパラメータを適当に選ぶだけでは、完全になくすことは難しいので、例えば、半導体リソグラフィー工程においては、レジスト膜の端の部分の凹凸の形状がなるべくその後の工程に悪い影響を及ぼさないようなものになるように一連の製造工程を工夫しなければならない。 【0060】例えば、端の凹凸の部分はその後の工程では使わないようにし、それ以外の平坦な部分だけ使用するようにすることが考えられるが、その場合には、できるだけ端の凹凸の部分の幅cを小さくし、それ以外の平坦な部分の面積をなるべく大きく取れるような膜を形成するようにすれば良いことになり、端の凹凸の部分の幅cが少しでも小さくなれば、次の工程で描画が行える領域が大きくなり、コスト削減につながる。 【0061】具体的には、端の部分の凹凸部分の幅cを小さくするには、蒸発速度Gを大きくし、溶液の拡散係数k2 と高分子の拡散係数k1 の差を小さくすれば良いことが、このモデルから明らかになった。 【0062】次に、このシミュレーション法を実際のレジストの塗布工程に反映する方法を説明する。まず、実際のレジスト塗布後の乾燥条件を実験的に設定する前に、本発明のシミュレーションを行い、ある程度の目処を立ててから実験を行うことによって、実験に要する時間或いは人間を少なくすることができ、それによって、生産ラインの立ち上げをより早くすることが可能になる。 【0063】また、蒸発速度γ、溶質の拡散係数k1 、及び、溶液の拡散係数k2 を色々変えたシミュレーションと実験とを併せて行い、シミュレーション結果と実験結果との差が最小になるようにフィッティングを行って、各条件によりα,K等の付属係数含めた各パラメータを決定したデータベースを構築し、実際に実験しなかった各種条件に対しては、このデータベースを利用して補間法によって各パラメータ各付属係数を取得して、乾燥後のレジスト膜の膜厚分布を事前に高精度に評価することが可能になる。 【0064】また、上述のように突起部の高さaと凹凸から平坦性が回復するまでの距離cは、トレードオフの傾向にあるが、この様な評価を利用して、所期の膜厚分布が得られる乾燥条件、或いは、溶媒の選択等を行うことが可能になる。 【0065】以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明は実施の形態に記載された構成・条件に限られるものではなく、各種の変更が可能である。例えば、上記の実施の形態においては、半導体装置の製造工程におけるレジスト膜の塗布・乾燥工程として示しているが、本発明は半導体装置の製造工程に限られるものではなく、各種の微細加工工程に用いるフォトマスクの形成工程にも適用されるものである。 【0066】さらに、本発明が前提としているスキャン塗布法は、矩形の被処理基板に対して特に好適であり、大面積に亘るレジスト膜の平坦性が必要なアクティブマトリクス型液晶表示装置の製造工程にも適用されるものである。 【0067】また、上記の実施の形態においては、溶質の拡散係数k1 及び溶液の拡散係数k2 が一定であると仮定してシミュレーションを行っており、それでも比較的良い結果を得ているが、より精度の高いシミュレーションを行うためには、溶質の拡散係数k1 及び溶液の拡散係数k2 の変化を取り入れたシミュレーションを行えば良い。 【0068】即ち、一般に、溶液の濃度が変化すれば、当然粘度も変化し、アインシュタインの関係により、拡散係数も変化すると考えられるので、溶液の濃度に依存して変化する拡散係数をモデルに導入すれば良い。 【0069】また、より精密なシミュレーションを行うためには、高分子溶液膜中の溶質である高分子の形状或いは大きさをパラメータとして導入すれば良い。 【0070】また、上記の実施の形態においては、シミュレーションに際して一辺が25μmの正方格子を用いているが、一辺の長さは任意であり、25μmに限られるものではなく、さらに、正方格子である必要はなく、Δx≠Δyの長方格子を用いても良いものである。その場合には、上記式(16)及び式(22)は、夫々(Δx)2 の項と(Δy)2 の項に分かれた形となる。 【0071】 【発明の効果】本発明によれば、レジスト膜等の高分子溶液膜の乾燥過程をシミュレーションによって解析して乾燥後の高分子膜の膜厚分布を評価しているので、半導体装置等の製造工程における各パラメータを決定する際に、予め目処を立ててから塗布・乾燥試験を行えば良いので、時間的、資源的なコストの削減につながり、ひいては、半導体フォトリソグラフィー工程におけるスループットの向上、或いは、半導体集積回路装置等の低コスト化に寄与するところが大きい。
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| 【出願人】 |
【識別番号】396020800 【氏名又は名称】科学技術振興事業団 【識別番号】000219967 【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年11月30日(2001.11.30) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100105337 【弁理士】 【氏名又は名称】眞鍋 潔
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| 【公開番号】 |
特開2003−164797(P2003−164797A) |
| 【公開日】 |
平成15年6月10日(2003.6.10) |
| 【出願番号】 |
特願2001−367201(P2001−367201) |
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