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【発明の名称】 ポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法
【発明者】 【氏名】矢敷 雄一
【住所又は居所】神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロックス株式会社内

【氏名】栗林 将隆
【住所又は居所】神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロックス株式会社内

【要約】 【課題】簡易に且つ低コストで、筒状体内面にポリイミド樹脂層を形成することができる、ポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法を提供すること。

【解決手段】筒状体内部にポリイミド前駆体溶液を充満させ、前記ポリイミド前駆体溶液を筒状体内部から排出させて、前記筒状体内面にポリイミド前駆体溶液を塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成した後、乾燥させ、次いで硬化させて、前記筒状体の内面にポリイミド樹脂層を形成することを特徴とするポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 筒状体内部にポリイミド前駆体溶液を充満させ、前記ポリイミド前駆体溶液を前記筒状体内部から排出させて、前記筒状体内面にポリイミド前駆体溶液を塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成した後、乾燥させ、次いで硬化させて、前記筒状体の内面にポリイミド樹脂層を形成することを特徴とするポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法。
【請求項2】 前記筒状体内部に充満させるポリイミド前駆体溶液の液面に、前記筒状体の内径より小さい外径を有するフロートを浮べ、前記ポリイミド前駆体溶液を筒状体内部から排出することを特徴とする請求項1に記載のポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法。
【請求項3】 前記筒状体内面に形成されたポリイミド前駆体塗膜を、前記ポリイミド前駆体には不溶で、前記ポリイミド前駆体溶液の溶剤には相溶する特定溶剤と接触させた後、乾燥させ、次いで硬化させることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法に関する。当該筒状体は、表面に所望とする機能層を形成することで、例えば、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置において、感光体、帯電体、転写体、定着体等に好適に好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】電子写真機器の小型化、高性能化、及び省電力化のために、定着体の加熱方法として、例えば特開2000−188177等に記載されているように、電磁誘導発熱方式も開発されている。これに用いる定着体は、金属の円筒体であってもよいが、機器の小型化のために、変形可能な柔軟性の金属ベルトであることも好ましい。金属製の円筒体またはベルトは、内面が金属のままでは、駆動あるいは摺動により、傷が付いたり、摩耗を生じやすいので、内面に樹脂層を設けることが有効である。また、電磁誘導発熱方式においては、電気絶縁性のためにも、内面に樹脂層を設けた方がよい。その樹脂材料としては、機械強度や耐熱性等の面でポリイミド樹脂が最も好ましい。膜厚は、傷や摩耗に対する強度を鑑みて、5〜50μmが好ましい。
【0003】金属ベルトの内面に5μm厚のポリイミド樹脂層を設けることについては、例えば、特開平6−222695号公報に開示されている。但し、金属ベルトの内面にポリイミド樹脂層を設ける具体的方法については記載されていない。一般的に、ポリイミド樹脂層は、その前駆体溶液を塗布し、乾燥させ、硬化させることにより形成されるが、ポリイミド前駆体溶液は、濃度が低い割には粘度が極めて高いので、塗布によって5μm以上の膜厚の被膜を均一に形成することは困難である。また、塗布したとしても、後述するように乾燥に問題がある。
【0004】一方、ポリイミド樹脂製の無端ベルトを作製する際の形成方法として、例えば、特開昭57−74131号公報に開示されているように、水平にした円筒体の内面にポリイミド前駆体溶液を注入し、円筒体を1000rpmで回転させて、遠心力によりポリイミド前駆体膜を均一化する遠心成形法もある。この方法によって、円筒体の内面にポリイミド樹脂層を形成することもできるが、円筒体の内径が小さいほど高速回転をする必要があり、製造装置が高価になる。
【0005】他の方法として、特開昭62−19437号公報に開示されているように、円筒体の内面にポリイミド前駆体溶液を付着させた後、弾丸状体または球状体を走行させて塗布する例もある。この方法では、弾丸状体または球状体は繰り返して使用するには、その都度、洗浄しなくてならない問題がある。
【0006】ここで、ポリイミド前駆体溶液の溶剤は、樹脂の性質上、非プロトン系極性溶剤であるが、この非プロトン系極性溶剤は、いずれも沸点が高く、常温では極めて乾燥が遅いという性質を有している。
【0007】そのため、ポリイミド前駆体溶液の塗布後は、溶剤の乾燥に非常に時間がかかり、塗膜が垂れやすいという問題があり、通常、乾燥は円筒体を水平にして回転させながら行われる。遠心成形法では、被膜均一化に連続して円筒体の回転が続けられる。この場合、円筒体の内径が小さいほど円筒体の内部から溶剤を乾燥させることが困難になるので、円筒体を回転させて乾燥する時間が極めて長くなるという問題がある。また、乾燥が遅いために、乾燥までの間に塗膜欠陥の発生や異物の付着が生じやすいといった問題まで生じ、両問題が相まって従来は作製コストが高くなる欠点を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、簡易に且つ低コストで、筒状体内面にポリイミド樹脂層を形成することができる、ポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、<1>筒状体内部にポリイミド前駆体溶液を充満させ、前記ポリイミド前駆体溶液を前記筒状体内部から排出させて、前記筒状体内面にポリイミド前駆体溶液を塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成した後、乾燥させ、次いで硬化させて、前記筒状体の内面にポリイミド樹脂層を形成することを特徴とするポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法である。
【0010】<2>前記筒状体内部に充満させるポリイミド前駆体溶液の液面に、前記筒状体の内径より小さい外径を有するフロートを浮べ、前記ポリイミド前駆体溶液を筒状体内部から排出することを特徴とする前記<1>に記載のポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法である。
【0011】<3>前記筒状体内面に形成されたポリイミド前駆体塗膜を、前記ポリイミド前駆体には不溶で、前記ポリイミド前駆体溶液の溶剤には相溶する特定溶剤と接触させた後、乾燥させ、次いで硬化させることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法である。
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法(以下、本発明の筒状体の製造法という)は、筒状体内部にポリイミド前駆体溶液を充満させ、前記ポリイミド前駆体溶液を筒状体内部から排出させて、前記筒状体内面にポリイミド前駆体溶液を塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成した(以下、「PI前駆体塗膜形成工程」という)後、乾燥させ、次いで硬化させて、前記筒状体の内面にポリイミド樹脂層を形成する(以下、「PI樹脂層形成工程」という)ことを特徴とする。本発明の筒状体の製造方法は、筒状体内部にポリイミド前駆体溶液を充満させ、前記ポリイミド前駆体溶液を筒状体内部から排出することで、簡易に且つ低コストでPI樹脂層を内面に形成することができる。
【0012】本発明の筒状体の製造方法において、前記筒状体内面にPI前駆体溶液を塗布し、均一なPI前駆体塗膜を形成する方法としては、例えば、筒状体内部に充満させるPI前駆体溶液の液面に、筒状体の内径より小さい外径を有するフロートを浮べ、ポリイミド前駆体溶液を筒状体内部から排出する方法(以下、「フロート法」ということがある)が好適に挙げられる。このフロート法では、PI前駆体溶液の液面にフロートを浮かべ、当該溶液を排出する際、筒状体の内径と、フロートの外形との間隙で、膜厚を簡易に制御することができ、特に好ましい方法である。
【0013】本発明の筒状体の製造方法では、筒状体内面に形成されたPI前駆体塗膜を、PI前駆体には不溶で、PI前駆体溶液の溶剤には相溶する特定溶剤と接触させた(以下、「PI析出工程」という)後、乾燥させ、次いで硬化させることが、好ましい。PI析出工程では、PI前駆体塗膜を特定溶剤と接触させることで、PI前駆体塗膜において、溶剤を除去しPI樹脂を析出させることができるため、PI前駆体塗膜の乾燥が速やかに行われ、乾燥時間を短縮することができ、塗膜の垂れ等を防止したり、さらには揮発する溶剤の量を少なくすることが可能であり、環境性をも向上させることができる。
【0014】以下、各工程、材料について詳細に説明する。
−PI前駆体塗膜形成工程−筒状体としては、その形状、材質など目的に応じて適宜選択される。例えば、その形状としては、円筒状、楕円筒状、が挙げられ、また、ベルトも範疇に入る。筒状体の材質としては、アルミニウム、ニッケル、ステレンス鋼などの金属、導電性を付与したプラスチック等が挙げられるが、定着体、転写体、感光体等の電子写真用装置部材として利用する観点から、金属であることが好適である。特に、ニッケルの場合、電鋳法で作製されたシームレスベルトあることが好適である。筒状体の厚さ(肉厚)は、用途に応じて、0.05〜2mm程度である。
【0015】PI前駆体溶液におけるPI前駆体としては、従来公知のものを用いることができる。また、PI前駆体溶液の溶剤としては、非プロトン系極性溶剤が好適に用いられ、当該溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド(以後、DMACと略す)、N−メチルピロリドン(以後、NMPと略す)、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等、が公知である。その中で、DMACは沸点が166℃で非プロトン系極性溶剤の中では最も低く、乾燥しやすい。PI前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択して行われる。
【0016】PI前駆体塗膜形成工程おいて、PI前駆体溶液を筒状体内部に充満させた後、当該溶液を排出して(抜き取って)PI前駆体塗膜を形成するが、その方法としては、筒状体内部にPI前駆体溶液を注入して排出する注入排出法、外面をシール材(パッキン)により覆った筒状体をPI前駆体溶液に浸漬し、引き上げことで筒状体内部にPI前駆体溶液を充填して排出する浸漬塗布法、などの方法が採用できる。なお、本発明における充満とは、筒状体内部に完全に満たなくとも、所望の塗布する範囲でPI前駆体溶液が満たされていればよいことを示す。上記注入排出法においては、筒状体を垂直にして行うのが基本であるが、筒状体を水平にして、ゆっくり回転させながら内部にPI前駆体溶液を注入して排出してもよい。
【0017】PI前駆体塗膜形成工程おいて、PI前駆体塗膜の膜厚をおよそ10μm未満と比較的に薄くする場合には、PI前駆体溶液の濃度を10%程度以下に低くすることにより塗布することが好適であるが、PI前駆体塗膜の膜厚を10μm程度以上と厚くする場合には、PI前駆体溶液の濃度調整を行っても、前述したようにPI前駆体溶液は粘度が非常に高いので、膜厚が所望値より厚くなりすぎることがある。その際は、以下に示すフロート法により膜厚を制御することが非常に効果的である。
【0018】PI前駆体塗膜形成工程において、簡易に膜厚を制御することができるフロート法を、図面を参照して説明する。同様の機能を有する部材には、全図面通して同じ番号を付与し、その説明を省略する。筒状体としては円筒体を用いた例を示す。図面は主要部のみを示し、他の装置は省略する。
【0019】図1は、フロート法の一例を説明するするための説明図である。図1に示すフロート法では、円筒体1を、配管口6を有する槽3に取り付け、円筒体1内部にPI前駆体溶液2を、配管口6から供給して充満させた後、排出する。PI前駆体溶液2の液面には、円筒体1の内径より小さな外径を有するフロート5を浮かべる。フロート5の外径は最大部分を示し、外径は一定でなくてもよい。
【0020】フロート5は、PI前駆体溶液上に浮き、該溶液によって侵されないものであれば材質は任意でよく、例えば種々の金属、プラスチック等が挙げられる。フロートの構造は、中空構造であってもよい。また、フロート5が円筒体の中央部に位置しやすいように、フロートに位置決め手段を設けてもよい。このような位置決め手段として、フロート5に足を設ける方法がある。
【0021】フロート5の外径は、所望の塗布膜厚を鑑みて調整する。即ち、円筒体の内径とフロートの外径との間隙により、塗膜の濡れ膜厚が決まり、乾燥後の膜厚は、濡れ膜厚とPI前駆体溶液2の不揮発分濃度の積から求められる。但し、フロートの外径と円筒体の内径の間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜3倍であるのがよい。1倍〜3倍とするのは、PI前駆体溶液2の粘度及び/又は表面張力などにより、間隙の距離が濡れ膜厚になるとは限らないからである。
【0022】フロートの断面形状は、図1のように、PI前駆体溶液2に浸る上部(重力方向を基準とした上部)が広く、下部(重力方向を基準とした下部)が狭い、側面が斜めの直線状である形状のほか、例えば、図2(a)に示すように、PI前駆体溶液2に浸る上部が広く、下部が狭く、側面が折れ線状である形状、図2(b)に示すように、椀状の形状等が挙げられる。
【0023】図1に示すフロート法では、塗布を行う際、円筒体1内部に、配管口6からPI前駆体溶液2を注入する。PI前駆体溶液2にはフロート5を浮かべてあるので、フロート5は円筒体1の内部に進入する。次いで、PI前駆体溶液2を排出すると、その液面は低下し、それとともに、円筒体1の内部に付着する過剰な塗膜は、円筒体1の内径とフロート5の外径との間隙により掻き落とされ、所望の濡れ膜厚の塗膜4が塗布される。PI前駆体溶液2の注入と排出の流量は、液面の上昇または下降の速度が、0.1〜2m/min程度になるように調整するのが好ましい。この塗布方法に好ましいPI前駆体溶液2の固形分濃度は10〜40%、粘度は1〜100Pa・sである。
【0024】PI前駆体溶液2を排出する際は、円筒体1内面とフロート5との摩擦抵抗が、周方向で一定になるようにフロート5は動くので、フロート5が円筒体1内面と接触することはない。即ち、ある位置でフロート5と円筒体1内面との間隙が狭まった場合、その部分では摩擦抵抗が大きくなる一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなるという、摩擦抵抗の不均一な状態が生じる。しかし、フロート5が自由に動けることから、摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態、すなわちフロート5と円筒体内面との間隔が等しい状態になるようにフロート5は動くこととなる。
【0025】円筒体1内面とフロート5との摩擦抵抗が均一となる状態は、フロート5の中心と、円筒体1内面の中心とが合致する位置にある時である。よって、円筒体1内面が、少し曲がっていたり、あるいは装置の不具合で傾いて取り付けられた場合でも、フロート5はそれに追随するように動き、円筒体1内面に一定の濡れ膜厚の塗膜4を形成することができる。
【0026】なお、塗布装置には、円筒体1を保持する保持手段、並びに、PI前駆体溶液を注入/排出する手段、および他の装置が付随してもよい。
【0027】フロート法の他の例としては、図3に示すように、円柱部材によりPI前駆体溶液2を注入/排出する方法も挙げられる。図3に示すフロート法では、円筒体1を、軸方向に可動可能に円柱部材9を挿入した槽3に取り付け、円筒体1内部に、フロート5を液面に浮かべたPI前駆体溶液2を、円柱部材9を軸方向に移動させることで充満/排出させる。円柱部材9の径は、円筒体1の内径よりも僅かに小さいことが好ましい。また、この円柱部材9外面と円筒体1の内面との間隙からPI前駆体溶液2が漏れないように、槽3における円柱部材9の挿入部分にはシール材10が設けられている。シール10はフッ素樹脂やポリエチレン等の樹脂材料から形成されることが好適である。
【0028】図3に示すフロート法では、図3(a)で示すように、円柱部材9を円筒体1内部に挿入することで、フロート5を浮かべたPI前駆体溶液2を円筒体1内部に充填する。即ち、PI前駆体溶液2の液面はフロート5と共に円筒体1内部を上昇する。次いで、図3(b)に示すように、円柱部材9を円筒体1内部から引き抜くと、液面はフロート5と共に円筒体1内部を下降し、その際に塗膜4が形成される。
【0029】フロート法の他の例としては、図4に示すように、浸漬塗布によりPI前駆体溶液2を注入/排出する方法も挙げられる。図4に示すフロート法では、外面をシール材(パッキン)により覆った円筒体1を、支持部材11により、フロート5を浮かべたPI前駆体溶液で満たされた槽3に、浸漬して充填し、引上げることで排出させる。支持部材11には、円筒体1を浸漬するとき円筒体1内部の空気を排出し、引上げるとき円筒体1内部に空気を注入する空気穴を設けておく。槽3の開口部周縁には、円筒体1外面に付着したPI前駆体溶液2を落とすシール材10が設けられている。
【0030】図4に示すフロート法では、図4(a)に示すように、円筒体1を、その内部にフロート5が入るように、PI前駆体溶液2へ浸漬する。該浸漬後、図3(b)に示すように、円筒体1を引き上げる。PI前駆体溶液2の液面はフロート5と共に円筒体1内部を下降し、その際に塗膜4が形成される。
【0031】以上、説明したように、フロート法を適用することで、高粘度のPI前駆体溶液を用いても、膜厚を均一にして塗布することができる。また、粘度によっては、上記説明したフロート法において、フロートを用いない方法(フロートを用いない以外は全く同じ方法)でも、筒状体内部に、ポリイミド前駆体溶液を充填/排出して、ポリイミド前駆体塗膜を均一に形成することも可能である。なお、フロート法は、上記方法に限定されるわけではない。
【0032】−PI前駆体析出工程−PI前駆体析出工程では、PI前駆体塗膜を、ポリイミド前駆体には不溶で、ポリイミド前駆体溶液の溶剤(非プロトン系極性溶剤)には相溶する特定溶剤と接触させる。これにより、PI前駆体塗膜から非プロトン系極性溶剤が特定溶剤に染み出て、代わりに特定溶剤が浸透する。PI前駆体は特定溶剤には不溶なのでPI前駆体は析出し、固形化されたPI前駆体塗膜が形成される。その結果、後述するPI前駆体塗膜の乾燥が速やかに行われ、乾燥時間を短縮することができる。
【0033】非プロトン系極性溶剤は、前述したように常温では乾燥が遅いため、PI前駆体塗膜はいつまででも濡れたままであり、PI前駆体塗膜は重力の影響を受けて常に下方に垂れやすい。そこで、PI前駆体溶液の塗布を行った直後に、PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触を行い、PI前駆体塗膜を固形化することで、垂れを防止することができる。
【0034】PI前駆体塗膜を特定溶剤と接触させる方法としては、図5に示すように、PI前駆体塗膜4を内面に形成した円筒体1を、特定溶剤12で満たした槽に浸漬する方法が好適である。この方法では、PI前駆体塗膜を特定溶剤に均一に接触させることができる。この浸漬方法では、より効率よくPI前駆体を析出させる観点から、特定溶剤を攪拌して、特定溶剤を円筒体の内部に流通させやすくすることが好ましい。
【0035】PI前駆体塗膜を特定溶剤と接触させる方法としては、その他、PI前駆体塗膜に特定溶剤を流下させたり、吹き付けてもよい。
【0036】PI前駆体析出工程においては、PI前駆体塗膜を特定溶剤に接触させる時間により、PI前駆体塗膜からの非プロトン系極性溶剤の溶出量が変化する。塗膜から非プロトン系極性溶剤が完全になくなると、析出して固形化されたPI前駆体塗膜はもろくなる場合があるので、非プロトン系極性溶剤は5〜50%程度、残留しているのが好ましい。そのための特定溶剤とのPI前駆体塗膜の接触時間は、PI前駆体塗膜の膜厚にもよるが、10秒から10分程度が好ましい。PI前駆体塗膜の膜厚が厚いほど、含まれる非プロトン系極性溶剤が多くなるので、接触時間は長くする必要がある。また、PI前駆体塗膜から特定溶剤への非プロトン系極性溶剤の溶出は、特定溶剤の温度が高いほど速くなるので、特定溶剤との接触時間は、特定溶剤の温度が高いほど短くてよい。後述する特定溶剤からの気泡を防止するためには、気体の溶解度を下げるために、特定溶剤の温度は高いほど好ましい。
【0037】一方、特定溶剤にあらかじめ非プロトン系極性溶剤を混合しておくことにより、PI前駆体塗膜からの非プロトン系極性溶剤の溶出量を調整することもできる。すなわち、PI前駆体塗膜からの非プロトン系極性溶剤の溶出比率は、あらかじめ特定溶剤に非プロトン系極性溶剤を混合した比率より下回ることはない。
【0038】さらに、特定溶剤は、繰り返し使用すると徐々に非プロトン系極性溶剤の濃度が高くなっていくので、ある段階で新鮮なものと交換しなくてはならない。交換された特定溶剤には非プロトン系極性溶剤が混ざっているが、例えば、特定溶剤として水を用いた場合、非プロトン系極性溶剤が水よりは蒸発しにくい性質を利用して、蒸留等により非プロトン系極性溶剤と水を分離し、両者を再利用することもできる。
【0039】PI前駆体塗膜を特定溶剤と接触させると、塗膜から非プロトン系極性溶剤が溶出する代わりに、塗膜中に特定溶剤が浸透するが、後述するPI樹脂層形成工程において、特定溶剤を乾燥させる際に、特定溶剤に気体が溶存していると、固化されたPI前駆体塗膜中に気泡を生じることがある。例えば、特定溶剤として水を用いる場合、20℃の水に対する気体の溶解度は、窒素で約1.19体積%、酸素で約0.64体積%であり、両者が飽和濃度にまで溶解していれば約1.83体積%の空気が水に溶存しており、気体の溶解度は温度と共に低下するので、固化されたPI前駆体塗膜を加熱すると水から溶存空気が気泡となって発生する。そこで、PI前駆体を接触させる特定溶剤は、溶存空気を除去する脱気処理がなされていることが好ましい。
【0040】特定溶剤の脱気処理には、特定溶剤を煮沸する方法、特定溶剤を真空近くまで減圧する方法、特定溶剤に超音波を印加する方法、などの方法がある。脱気処理によって溶存気体を完全になくすことがもちろん好ましいが、気体が溶解度の1/4程度以下に減少すれば実害はほぼなくすことができる。特定溶剤への空気の溶解は、特定溶剤が空気に触れると常に起こりうるので、PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触方法が、PI前駆体塗膜を特定溶剤に浸漬する方法である場合、特定溶剤は脱気処理装置との間で循環させることも好ましい。
【0041】特定溶剤としては、水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール等)、炭化水素類(例えばヘキサン、ヘプタン、トルエン等)、ケトン類(例えばアセトン、ブタノン等)、エステル類(例えば酢酸エチル等)が挙げられ、水が最も扱いが簡便で好ましい。
【0042】なお、PI前駆体塗膜を特定溶剤と接触させた後、固化されたPI前駆体塗膜表面に水滴が付着していることもあるが、水滴はやがてPI前駆体中に吸収されるので、特に問題ではない。但し、乾燥が遅くなることもあるので、水滴は拭き取りにより除去したり、エアによって吹き飛ばしてもよいし、アルコール類やアセトン等の速乾性で水と混和する溶剤に、固化されたPI前駆体塗膜をさっと浸漬してもよい。
【0043】−PI樹脂層形成工程−PI樹脂層形成工程においては、非プロトン系極性溶剤を(上記PI前駆体析出工程を行った場合は、残留する非プロトン系極性溶剤、及び個化されたPI前駆体塗膜中に浸透した特定溶剤)を除去する目的で、乾燥を行う。乾燥条件は、20〜120℃の温度で10〜60分間、行うのが好ましい。筒状体の内部に温風を送ることも効果的である。乾燥温度は、段階的、または一定速度で上昇させてもよく、その方が前述した特定溶剤の溶存気体が気泡になることを低減させるためにも好ましい。
【0044】乾燥においては、PI前駆体塗膜は垂れが生じやすいので、筒状体の長手方向を水平にして回転させてもよい。但し、その状態で乾燥装置に入れるには、筒状体の両端を何らかの方法で支持しなくてはならないので、支持手段も大きくなり、乾燥装置も大きくならざるを得ないことがある。乾燥の前に、PI前駆体析出工程を行った場合には、垂れを生じにくくさせるため、筒状体の長手方向を縦にして乾燥することもできる。その場合は、PI前駆体を析出させた筒状体を所定の台に載せ、小型の乾燥装置に高密度で入れることができる。PI前駆体塗膜形成工程において、筒状体の長手方向が縦である(軸方向と同じである)場合、乾燥工程も筒状体の長手方向を縦にして行うと、筒状体の方向を変換せずにできるので好ましい。なお、特定溶剤と非プロトン系極性溶剤とでは、特定溶剤の方が蒸発しやすいので、固化されたPI前駆体塗膜中では先に特定溶剤が蒸発して非プロトン系極性溶剤が残留した状態が形成される。この状態になることにより、析出したPI前駆体が再び溶液状態になる。但し、非プロトン系極性溶剤は塗布直後よりは大幅に減少しているので、粘度は極めて高くなっており、塗膜が垂れることにはならない。
【0045】PI樹脂層形成工程において、乾燥の後、好ましくは、350℃前後(好ましくは300〜450℃)の温度で、20〜60分間、PI前駆体塗膜を加熱硬化させることで、PI樹脂層を形成することができる。加熱硬化の際、溶剤が残留しているとPI樹脂層に膨れが生じることがあるため、加熱硬化前には、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱硬化前に、200〜250℃の温度で、10〜30分間加熱乾燥することが好ましく、続けて、温度を段階的、または一定速度で上昇させて、加熱硬化することが好ましい。
【0046】本発明の筒状体の製造方法においては、PI樹脂層が導電性を必要とする場合、PI前駆体溶液中に必要に応じて導電性物質を分散させることができる。導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In23複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等が挙げられる。
【0047】本発明の筒状体の製造方法により得られるポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体は、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置における感光体、帯電体、転写体、定着体等に使用することができる。
【0048】例えば、筒状体を定着体として使用する場合には、表面に付着するトナーの剥離性の向上のため、筒状体表面に離型性の樹脂被膜または弾性被膜を形成することが有効である。離型性の樹脂被膜の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂が好ましい。また、離型性の樹脂被膜には、耐久性や静電オフセットの向上のためにカーボン粉末が分散されていてもよい。フッ素樹脂被膜の厚さは4〜40μmの範囲が好ましい。
【0049】フッ素樹脂被膜を形成するには、その水分散液を筒状体の表面に塗布して焼き付け処理する方法が好ましい。また、フッ素樹脂被膜の密着性が不足する場合には、必要に応じて、筒状体表面にプライマー層をあらかじめ塗布形成する方法がある。プライマー層の材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド及びこれらの誘導体挙げられ、さらにフッ素樹脂から選ばれる少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。プライマー層の厚さは0.5〜10μmの範囲が好ましい。
【0050】離型性の弾性被膜は、フッ素ゴムを主体とし、必要に応じてフッ素樹脂粒子やSiC、Al23等の無機粒子を混合した弾性層が挙げられる。フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VdF)を主成分とするVdFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、上記VdF−HFP共重合体とテトラフルオロエチレン(TFE)との3元共重合体、TFEとプロピレンとの交互共重合体等のフッ素系エラストマーが挙げられる。この他、VdF−クロロトリフルオロエチレン共重合体や、例えばシリコーンゴム,フルオロシリコーンゴム等とVdFを主成分とする上記フッ素系エラストマーとの混合物を用いることもできる。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0052】(実施例1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンの等モルを、DMAC中で反応させ、PI前駆体の溶液を作製した。その際、濃度は5重量%、粘度は約1Pa・sに調整した。円筒体として、内径30mm、厚さ50μm、長さ350mmのニッケル製シームレスベルトを用意した。
【0053】図1に示すように(但し、フロート5は用いずに)、円筒体(1)を槽(3)に取り付け、槽(3)における配管口(6)から、PI前駆体溶液(2)を円筒体(1)内部にに(注入)充満させた後、液面がおよそ100mm/minの速さで低下するように、配管口(6)から液を排出し抜き取った。次いで、円筒体を水平にして30rpmで回転させ、内部に80℃の温風を40分間にわたって吹き込んで乾燥を行った。その後は円筒体を垂直にして、内部には空気が流通するようにして、150℃で20分間、200℃で20分間、350℃で30分間と温度を上げながら加熱し、PI前駆体を硬化させた。これにより、円筒体の内面には5μm厚の良好なPI樹脂層が形成された。
【0054】(実施例2)実施例1において、PI前駆体溶液の濃度を10重量%、粘度は約2Pa・sに調整した。一方、フロートとして、図1に示す断面形状で、外径(最大外径)29.8mm、高さ20mmのアルミニウム製の中空体を作製した。
【0055】フロート5として上記中空体をPI前駆体溶液に浮かべ、他は、実施例1と同じようにして(図1で示すようにして)塗布を行った。途中ではフロート5が円筒体に接触することはなく、円筒体には濡れ膜厚が約100μmのPI前駆体塗膜が形成された。
【0056】円筒体を引き上げた後、すぐに図5示すように、円筒体(1)を水(特定溶剤12)浸漬し、4分間放置した。円筒体を引き上げると、PI前駆体は析出物となって、円筒体内面に膜が形成されていた。次いで円筒体をその長手方向を縦にして台に載せ、80℃の乾燥炉に入れ、内部に80℃の温風を30分間にわたって吹き込んで乾燥を行った。次いで、円筒体を台に載せたまま、150℃で20分間、200℃で20分間、350℃で30分間と温度を上げながら加熱し、硬化させた。塗布から硬化までの間、円筒体はその長手方向が常に縦であり、方向を変えずに行った。これにより、円筒体の内面には12μm厚の良好なPI樹脂層が形成された。通常、膜厚が厚いと、膜厚の均一性が得られにくく、乾燥時にはなかなか溶剤の除去ができないが、フロート法により塗布を行うことで、均一な塗膜が得られ、また、PI前駆体析出工程を行うことで、溶剤除去が早くなり、乾燥時間を短縮できることがわかる。
【0057】(実施例3)次に、実施例1および2で作製した円筒体の表面に、プライマー(商品名:EK1909BKN、ダイキン工業(株)製)を2μm厚に浸漬塗布後、PFAのディスパージョン水性塗料(商品名:AW5000、ダイキン工業(株)製)を浸漬塗布した。すなわち、円筒体をその長手方向を垂直にして塗料中に浸漬し、次いで200mm/minの速度で引き上げ、それぞれプライマー層とPFA塗膜を形成した。その際、円筒体の内部には液が侵入しないようにした。続いて室温で5分間の乾燥後、1時間かけて380℃に昇温させ、380℃にて30分間加熱して、30μm厚のPFA塗膜を焼成した。この円筒体は電磁誘導加熱型の定着体として好適に使用することができた。内面には誘導コイルを巻いた部材が摺動したが、PI樹脂層があるので摩耗はわずかであり、実施例1のものは20万回転相当、実施例2のものは40万回転相当までPI樹脂層は存在していた。なお、円筒体の内面にPI樹脂層がない場合は、円筒体を構成する金属の摩耗が生じ、摩耗粉の発生は絶縁不良の原因になるばかりでなく、安全性にも懸念が生じる。
【0058】また、上記作製の際、円筒体内面のPI前駆体は乾燥のみを行い、表面にプライマー層とPFA塗膜を塗布してから、2時間かけて380℃に昇温させ、380℃にて30分間加熱すれば、PI樹脂層の硬化と、PFA塗膜の焼成を同時に行ったが、上記同様な定着体を得ることができた。
【0059】(実施例4)実施例1と同様に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンの等モルを、DMAC中で反応させて、PI前駆体溶液を用意した。但し、濃度は23重量%、粘度は約10Pa・sに調整した。円筒体は、内径68mm、厚さ100μm、長さ350mmのステンレス製シームレスベルトを用意した。一方、フロートとして、図2(a)に示す断面形状で、外径(最大外径)67mm、高さ20mmのアルミニウム製の中空体を作製した。
【0060】図3(a)に示すように、外径66mmのテフロン(R)製の円柱部材(9)、ポリエチレン製のシール材(10)を槽(3)に備え付け、円筒体(1)を槽(3)に取り付けた。次いでフロート(5)として上記アルミニウム製の中空体をPI前駆体溶液(2)に浮かべ、円柱部材(9)を1m/minの速さで上昇させた。PI前駆体溶液(2)が円筒体(1)の上端に達した後、円柱部材(9)を0.7m/minの速さで下降させ、図3(b)に示すように塗布を行った。途中ではフロート(5)が円筒体に接触することはなく、円筒体には濡れ膜厚が約500μmのPI前駆体塗膜が形成された。その後、すぐに水中に浸漬し、8分間放置した。但し、その水は、あらかじめ煮沸により脱気処理をしたものを用いた。円筒体を水から引き上げると、PI前駆体は黄白色の析出物となって、固化された塗膜が形成された。
【0061】次に、円筒体をその長手方向を縦にして、30rpmで回転する台を設けた80℃の温風乾燥炉(温風は円筒体の内部を通る構造)に入れて、50分間乾燥させた。
【0062】乾燥後の塗膜には気泡や筋はなかったが、塗膜を脱気処理していない水に浸漬した場合には、0.5mmほどの大きさの気泡が数個あった。これは、実施例3では、塗膜の膜厚が実施例2の場合よりも厚いので、水中の溶存空気が塗膜に多く取り込まれるためであると考えられる。
【0063】円筒体が室温に冷えた後、その表面に、その表面にシリコーン系プライマー(商品名:ケムロック607、ロード・ファーイースト・インコーポレイテッド社製) を浸漬塗布し、5μm厚のプライマー層を作製した。
【0064】一方、加硫成分及び金属酸化物として酸化マグネシウムと水酸化カルシウムを含むVdF−HFP−TFEの3元系ポリオール加硫型フッ素ゴム(商品名:G−621、ダイキン工業社(株) 製)を、80:20の比率で混合したMIBK+MEK溶剤中に溶解させ、濃度18%のフっ素ゴム溶液を作製した。また、VdF−HFP−TFE(40:20:40)の3元系フッ素樹脂(商品名:THV−200P、3M社製)をケトン系溶剤中に溶解させ、濃度18%のフッ素樹脂溶液を作製した。次いで両溶液を1:1で混ぜ、塗布液とした。粘度は約600mPa・sであった。
【0065】この塗布液を内径100mm、高さ500mmの円筒容器に入れた。一方、外径75mm、内径側は最小内径50.4mmで、高さは12mmのテフロン(R)製リングを作製し、その上面側から内部をくり抜いて浮上するようにしてフロートとした。
【0066】フロートを上記塗布液に浮かべ、円筒体をその中に600mm/minの速度で挿入し、浸漬した。その際、円筒体の内部は密閉し、液が入らないようにした。次いで200mm/minの速度で円筒体を引き上げたところ、円筒体表面には濡れ膜厚が約200μmの被膜が形成された。その後、100℃で30分間加熱して溶剤を乾燥させ、さらに220℃で3時間のオーブン加硫を行って、フッ素ゴムとフッ素樹脂の相溶物からなる離型層を形成した。離型層は膜厚が40μmで均一であり、表面は平滑であった。これにより、表面にフッ素ゴム離型層を有する電磁誘導加熱型の定着体を製造することができた。この定着体は、内面にPI樹脂層を有するので実施例3と同様に良好な性能を示した。
【0067】これら実施例から、PI前駆体溶液を円筒体内部に充填/排出することで、PI前駆体塗膜を簡易に且つ低コストで塗布することができることがわかる。特に、その膜厚が厚い場合には、フロート法を行うことで、膜厚を均一にすることができることがわかる。また、PI前駆体塗膜を特定溶剤に接触させる方法をとれば、PI前駆体塗膜の乾燥を速やかにできることがわかる。そのため、円筒体縦方向で乾燥させても塗膜が乾燥中に垂れることがなくなることもわかる。さらに、PI前駆体塗膜からの非プロトン性極性溶剤の乾燥において、従来はその蒸気を大気中に排出していたのに対し、PI前駆体塗膜を水に接触させれば、大部分を水に溶出させるので大気中への排出を少なくすることができ、大気汚染の防止にも貢献することができることがわかる。
【0068】
【発明の効果】以上、本発明によれば、簡易に且つ低コストで、筒状体内面にポリイミド樹脂層を形成することができる、ポリイミド樹脂層を内面に有する筒状体の製造方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【住所又は居所】東京都港区赤坂二丁目17番22号
【出願日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2003−80165(P2003−80165A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−271980(P2001−271980)