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【発明の名称】 ロッド塗布装置及びロッド塗布方法
【発明者】 【氏名】小南 秀彰
【住所又は居所】静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写真フイルム株式会社内

【要約】 【課題】ロッドがウェブに接触した後は、短時間でウェブの走行速度とロッドの回転速度を一致させ、ウェブの擦り傷の発生を防止することを課題とする。

【解決手段】ウェブ12にロッド14を接触させて、ロッド14を従動回転させることにより、ロッド14とウェブ12との間に形成される液溜まりの塗布液をウェブ12に塗布する。ロッド14は、駆動モータ46で強制回転され、ウェブ12に接触したときにウェブ12に擦り傷をつけないように、駆動軸48に設けられたワンウエイクラッチ32によって駆動モータ46の回転力がロッド14に伝達され或は遮断される。このため、従来の塗布装置と比較すると、リアルタイムで駆動モータ46からの回転力が遮断されるので、短時間でウェブ12の走行速度とロッド14の回転速度が一致する。従って、ウェブ12を高速で走行させても、ロッド14による塗布中にウェブ12に擦り傷を発生させることがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塗工用ロッドを前記ウェブに対して接離させる昇降手段を有し、走行するウェブに塗工用ロッドを接触させて従動回転させ、塗工用ロッドとウェブとの間に形成される液溜まりの塗布液をウェブに塗布するロッド塗布装置において、回転力を発生する駆動手段と、前記駆動手段の回転力を前記塗工用ロッドに伝達・遮断する伝達部に設けられ、塗工用ロッドがウェブに接触して回転すると空転して駆動手段からの回転力を遮断するクラッチと、を有することを特徴とするロッド塗布装置。
【請求項2】 前記クラッチが、前記駆動手段の回転力が伝達される軸部と、前記軸部の周面に配置され前記塗工用ロッドと連結される外輪と、前記軸部と前記外輪との間に配置され、軸部の回転力を外輪へ伝達すると共に、外輪が軸部より速い回転速度になると外輪を空転させるコロ手段と、で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロッド塗布装置。
【請求項3】 走行するウェブに塗工用ロッドを接触させて従動回転させ、塗工用ロッドとウェブとの間に形成される液溜まりの塗布液をウェブに塗布するロッド塗布方法において、塗工用ロッドをウェブの走行方向へ回転させた状態でウェブに接触させ、駆動手段の回転力を塗工用ロッドに伝達・遮断するクラッチを空転させることで、駆動手段の回転力を遮断して、塗工用ロッドをウェブの走行速度に従動回転させることを特徴とするロッド塗布方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロッド塗布装置に係り、特に、塗工用ロッドを用いてウェブ、例えば帯状金属板に塗布液を転移させて塗布するロッド塗布装置及びロッド塗布方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ウェブ面上に塗布液を塗布するロッド塗布装置として、塗工用ロッドを走行するウェブに接触させ、該塗工用ロッドにより塗布量を調節した塗布液をウェブに塗布する方法がある。このロッド塗布方法は、極めて簡単な構成で、しかも高速で薄い塗布層を形成することができるという特徴を有するため、広く用いられている。
【0003】このロッド塗布方法は、例えば特開昭53─22543号公報や特開昭59─123568号公報に記載されるように、塗工用ロッド(以下、単に「ロッド」という)を走行するウェブに接触させると共に、ウェブとロッドの接触部の直前に塗布液溜まりを形成し、強制的にウェブの搬送方向へ回転させたロッドで塗布液溜まりの塗布液を掻き上げてウェブに転移させて塗布するものである。
【0004】しかし、ロッドを強制的に回転させてウェブと接触させても、ロッドの回転速度とウェブの走行速度がうまく一致しないとウェブに擦り傷ができるという欠点がある。
【0005】そこで、本出願人は、塗布時(従動回転時)の10%以上の回転速度でロッドを強制的に回転させ、ロッドがウェブと接触した後は、強制的な回転力の伝達を遮断してロッドをウェブに対して従動回転させる塗布装置を提案している(特開2000−107665号参照)。
【0006】しかしながら、現実的には、コントローラから回転力遮断解除の指令が出て、実際に伝達遮断が完了するまで一定の時間が掛かる。従って、ロッドがウェブに接触して従動し始めるまでに時間が掛かり、ウェブの走行速度とロッドの回転速度が一致しない時間が長くなり、生産効率があるレベル以上には向上しない。
【0007】また、ロッド従動回転中に、外乱によりロッド回転抵抗が増大し、ロッドが回転停止すると、ウェブに擦り傷が発生し続ける。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事情を考慮して、ロッドがウェブに接触した後は、短時間でウェブの走行速度とロッドの回転速度を一致させ、ウェブの擦り傷が発生しないようにし、これにより生産効率を向上させることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、塗工用ロッドを前記ウェブに対して接離させる昇降手段を有し、走行するウェブに塗工用ロッドを接触させて従動回転させ、塗工用ロッドとウェブとの間に形成される液溜まりの塗布液をウェブに塗布するロッド塗布装置において、回転力を発生する駆動手段と、前記駆動手段の回転力を前記塗工用ロッドに伝達・遮断する伝達部に設けられ、塗工用ロッドがウェブに接触して回転すると空転して駆動手段の回転力を遮断するクラッチと、を有することを特徴としている。
【0010】上記構成では、走行するウェブに塗工用ロッドを接触させて、塗工用ロッドを従動回転させることにより、塗工用ロッドとウェブとの間に形成される液溜まりの塗布液をウェブに塗布する。
【0011】この塗工用ロッドは、駆動手段によってウェブに接触する前にウェブの走行方向に強制回転され、ウェブに接触したときにウェブに擦り傷をつけないように、伝達部に設けられたクラッチによって駆動手段の回転力が塗工用ロッドに伝達され或は遮断される。
【0012】このクラッチは、塗工用ロッドがウェブに接触して回転速度が大きくなると(従動)、メカ的に空転して駆動手段の回転力を遮断する。このため、従来の塗布装置と比較すると、リアルタイムで駆動手段からの回転力が遮断されるので、短時間でウェブの走行速度と塗工用ロッドの回転速度が一致する。
【0013】従って、ウェブを高速で走行させても、塗工用ロッドによる塗布中にウェブに擦り傷を発生させることがない。
【0014】また、昇降手段が、塗工用ロッドをウェブに接触させ、或は塗工用ロッドをウェブから離す。このため、ウェブの接合部が塗工用ロッドを通過する前に塗工用ロッドをウェブから離し、接合部が通過したら塗工用ロッドをウェブに接触させることができる。
【0015】これにより、ウェブの接合部が塗工用ロッドに衝突して、塗工用ロッドに微振動等の外乱が発生して塗布液に泡の巻き込みが生じたり、泡がウェブの塗膜面に転写されたり塗布液溜まりに泡が滞留してウェブの塗膜面にスジが発生したりする塗布不良が発生しない。
【0016】請求項2に記載の発明は、前記クラッチが、前記駆動手段の回転力が伝達される軸部と、前記軸部の周面に配置され前記塗工用ロッドと連結される外輪と、前記軸部と前記外輪との間に配置され、軸部の回転力を外輪へ伝達すると共に、外輪が軸部より速い回転速度になると外輪を空転させるコロ手段と、で構成されていることを特徴としている。
【0017】上記構成では、塗工用ロッドがウェブに接触し、軸部より速い回転速度となると、コロ手段によって軸部の周面に配置された外輪が空転して、軸部からコロ手段を通じて塗工用ロッドに伝達される回転力が遮断され、塗工用ロッドがウェブと瞬時に従動回転する。
【0018】請求項3に記載の発明は、走行するウェブに塗工用ロッドを接触させて従動回転させ、塗工用ロッドとウェブとの間に形成される液溜まりの塗布液をウェブに塗布するロッド塗布方法において、塗工用ロッドをウェブの走行方向へ回転させた状態でウェブに接触させ、駆動手段の回転力を塗工用ロッドに伝達・解除するクラッチを空転させることで、駆動手段の回転力を遮断して、塗工用ロッドをウェブの走行速度に従動回転させることを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面に従って本実施の形態に係るロッド塗布装置について説明する。
【0020】図1〜図5に示すように、ロッド塗布装置10は、走行するウェブ12の幅方向(ウェブ12に直交する方向)に配設される円柱状のロッド14(一例として、ワイヤが外周面に巻かれている)を備えている。このロッド14は、中央部にV字状の溝16が形成された支持ブロック18に全長に亘って回転可能に支持されている。これにより、ロッド14は自重による撓みが防止されている。
【0021】また、ロッド14の両端部は、軸受け20によって回転自在に軸支されており、ウェブ12と接触することにより従動回転できるようになっている。
【0022】そして、ロッド14の回転によりワイヤで形成された隙間が、後述する液溜まり24から所定量の塗布液を持ち出して、ウェブ12に塗布液を塗布して塗布層28を形成する構成である。
【0023】なお、ワイヤの材質は、金属であれば問題はないが、特にステンレス鋼が優れている。ロッド14の直径は、6〜25mmがよく、更に好ましくは6〜15mmであり、ロッド14の表面にワイヤーを巻いたもの、ロッド14の表面に溝を刻設したもの、ロッド14の表面が平滑なもの等を用いることができる。
【0024】一方、支持ブロック18は、リフター22の上に載せられている。このリフター22が図3〜図5に示す所定のタイミングで昇降して、ロッド14をウェブ12に対して接離させる。また、リフター22には、支持ブロック18と協働して液溜まり24を構成するL型の堰部材26が配置されている。堰部材26の頂部とウェブ12との間には、メニスカスが形成されている。
【0025】堰部材26の下方には、液溜まり24へ塗布液を送液する送液管が接続されている。堰部材26の左側には、液溜まり24からオーバーフローした塗布液を受けるオーバーフロー槽30が設けられている。
【0026】一方、軸受け20から突出したロッド14の端部には、図6及び図7に示すワンウエイクラッチ32の外輪34が接続されている。外輪34には浸炭焼入れが行われており、その内径面には、コロ36が食い込む傾斜したカム面38が形成されている。
【0027】一方、コロ36とコロ36の間には、ケージ40が設けられており、このケージ40に設けられた板ばね42によって、コロ36が個々に支えられている。これによって、全てのコロ36が常に同時に外輪34のカム面38に食い込むようになっている。
【0028】また、外輪34の内側には、軸部44が配置されており、コロ36が軸部44と外輪34に保持される構成である。この軸部44は駆動モータ46の駆動軸48と連結されており、駆動モータ46の回転力は、軸部44、コロ36、及び外輪34を通じて、ロッド14に伝達される。
【0029】さらに、駆動モータ46は、信号ケーブルを介してコントローラ50に接続されている。このコントローラ50は、リフター22の昇降タイミングを制御すると共に、駆動モータ46をON─OFF制御する。
【0030】ここで、ワンウエイクラッチの機能を説明する。
【0031】図6に示すように、軸部44が反時計回りに回転すると、ケージ40に設けられた板ばね42の付勢力でコロ36は軸部44側へ押出される。コロ36は、外輪34のカム面38の噛み合い位置に進み、軸部44と一体となって外輪34が回転する。
【0032】次に、外輪34が軸部44より速く、反時計回りに回転すると、図7に示すように、軸部44は外輪34から見ると相対的に時計回りに回転することになる。このため、コロ36が、軸部44から離れて外輪34は軸部44に対して空回りする。
【0033】次に、本形態のロッド塗布装置10の作用について説明する。
【0034】コントローラー50は、ロッド塗布装置10の運転を開始する前は、リフター22のピストン54を縮めて支持ブロック18を下降させ、ロッド14をウェブ12から離間させている。
【0035】そして、駆動モータ46を駆動して、ワンウエイクラッチ32を介してロッド14を強制的に回転させる。ここで、コントローラ50は、エンコーダ52からの信号により回転数が所定値まで上がったことを確認したら、リフター22のピストン54を伸長して支持ブロック18を上昇させ、走行するウェブ12にロッド14を接触させる。
【0036】これにより、ロッド14とウェブ12との間に形成される液溜まり24の塗布液がウェブ12に塗布される。
【0037】また、ロッド14がウェブ12に接触すると、ロッド14の回転速度が上がり、ワンウエイクラッチ32が空転すると共に、短時間でロッド14はウェブ12に従動回転する。このため、ウェブ12を高速で走行させても、塗布中にロッド14によってウェブ12に擦り傷を発生させることがない。
【0038】また、図4に示すように、ウェブ12同士を接合する接合部12Aがロッド14を通過する時には、コントローラ50によりリフター22を制御して、支持ブロック18を下降させて、接合部12Aがロッド14を通過する前にロッド14をウェブ12から離間する。
【0039】これにより、ウェブ12の接合部12Aがロッド14に衝突して、ロッド14に微振動等の外乱が発生して塗布液に泡の巻き込みが生じたり、泡がウェブ12の塗膜面に転写されたり塗布液溜まりに泡が滞留してウェブ12の塗膜面にスジが発生したりする塗布不良が発生しない。
【0040】そして、図5に示すように、ウェブ12の接合部12Aが通過したらロッド14をウェブ12に再接触させると共に、再接触させる前にはロッド14を強制的に回転させてウェブ12に接触させるが、ロッド14がウェブ12に接触すると、ワンウエイクラッチ32が空転するため、ロッド14はウェブ12に対して従動回転する。
【0041】なお、ウェブ12の接合部12Aの通過後にロッド14の強制回転を中止せず、次の接合部が通過するまで強制回転させても構わない。
【0042】このように、本形態のロッド塗布装置10は、ロッド14がウェブ12に接触した後は、ワンウエイクラッチ32の働きにより直ちにロッド14が従動回転し始めるので、従来装置のように、コントローラーから強制的な駆動伝達の遮断指令が出でロッドの強制的な回転が解除されるタイプに比べて、ウェブに悪影響を与える時間を短縮できる。
【0043】なお、本発明に使用される塗布液は特に限定されないが、高分子化合物の水溶液または有機溶媒液、顔料分散液、コロイド溶液等を使用することができる。また、塗布液の粘度も特に限定されないが、粘度が低い方が適しており、100cp以下、好ましくは50cp以下がよい。本発明に使用されるウェブ12とは、金属、紙、プラスチックフイルム、レジンコーティッド紙、合成紙等が含まれる。プラスチック材質は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6、6ナイロン、6ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2、6ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロールダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。また、レジンコーティッド紙に用いる樹脂としては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、必ずしもこれに限定されない。また、金属ウェブとしては、例えばアルミニウム板がある。
【0044】
【実施例】実施例として本形態のロッド塗布装置を用い、比較例として従来のロッド塗布装置を用い、表面粗さの小さなウェブ12について塗布試験を行った。
【0045】また、稼動条件として、ロッド14を走行するウェブ12に接触させる前に、駆動モータ46でロッド14を強制的に順回転し、接触後は駆動モータ46による強制回転を解除して、ロッドをウェブに従動回転させた。
【0046】さらに、使用したウェブは、表面処理後の表面粗さRa=0.50μmのアルミニウム支持体を用い、ウェブの走行速度(ライン速度)を100m/分とした。また、ウェブへの塗布液の塗布量が10cc/m2 になるようにロッドの表面に巻いたワイヤ径、及びウェブとロッドのラップ角度を調節した。
【0047】また、ロッドの直径は15mmのものを使用した。すなわち、ロッドがウェブに従動回転するときの回転数は、2123rpmとなる。なお、ウェブに接触させる前のロッドの回転数は、600rpmに設定した。
【0048】この結果、実施例の場合、図8の表に示すように、ロッドがウェブに接触して2123rpmの回転数で従動回転するまでの時間は1秒であり、ロッドがウェブに接触した個所からロッドがウェブに従動回転するまので間のウェブの塗布面に擦り傷の発生は確認されなかった。
【0049】一方、比較例の場合、図9の表に示すように、ロッドがウェブに接触して、駆動モータの回転力を遮断するまでに3秒かかり、ロッドが2123rpmの回転数で従動回転するまでの時間はトータルで4秒を要した。そして、ロッドがウェブに接触した個所からロッドがウェブに従動回転するまので間のウェブの塗布面に擦り傷の発生が確認された。
【0050】なお、図8及び図9の下方欄には、コントローラの動作態様が示されており、比較すれば判るように、本実施例では、比較例のように、駆動伝達指令を出す必要がなく、また、駆動遮断を確認する駆動伝達遮断信号を出す必要もない。
【0051】さらに、本実施例では、比較例と同じように、約3秒後ロッドの強制回転を停止しているが、次にロッド接触指令がくるまで、回転させても構わない。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の構成によれば、表面粗さの小さなウェブの場合にもウェブを高速走行させて塗布を行うことができ、しかも塗布中にウェブに擦り傷を発生させることがない。従って、今まで不良品として扱われていた部分が製品として出荷できるようになり、生産性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地
【出願日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2003−80140(P2003−80140A)
【公開日】 平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願番号】 特願2001−271474(P2001−271474)