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【発明の名称】 セラミック触媒体とその製造方法
【発明者】 【氏名】小池 和彦
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【氏名】田中 政一
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【氏名】中西 友彦
【住所又は居所】愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式会社日本自動車部品総合研究所内

【氏名】伊藤 みほ
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【要約】 【課題】直接担持担体を用いたセラミック触媒体において、触媒担持時の触媒成分の凝集による粒成長を抑制し、微粒化により浄化性能を向上させる。

【解決手段】構成元素の一部を置換したコーディエライトを基材とし、導入した置換元素上に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、Pt等の触媒成分を担持させる際に、Pt等の前駆体を担持させ、還元雰囲気で焼き付けする。還元雰囲気とすると、金属化温度が400℃程度に低くなるので、熱振動を小さくして凝集を抑制し、触媒の平均粒径を約100nm以下とする効果が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミック担体に触媒成分を担持してなるセラミック触媒体であって、上記セラミック担体が、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体であるとともに、上記触媒成分が、上記触媒成分の前駆体を還元雰囲気で焼き付けることにより触媒化されていることを特徴とするセラミック触媒体。
【請求項2】 基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、触媒成分を担持してセラミック触媒体を製造する方法であって、上記触媒成分の前駆体を上記セラミック担体に担持させ、還元雰囲気で焼き付けることを特徴とするセラミック触媒体の製造方法。
【請求項3】 担持された触媒粒子の平均粒径が100nm以下である請求項1または2記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項4】 焼き付け炉中に還元性ガスを供給することにより還元雰囲気とする請求項2または3記載のセラミック触媒体の製造方法。
【請求項5】 上記還元性ガスが、H2 ガス、COガスまたは可燃性ガスを含むガスである請求項4記載のセラミック触媒体の製造方法。
【請求項6】 上記触媒成分の前駆体を担持させた後、上記触媒成分の前駆体に還元剤を塗布して焼き付けることにより、少なくとも上記触媒成分の前駆体近傍を還元雰囲気とする請求項2または3記載のセラミック触媒体の製造方法。
【請求項7】 焼き付け温度が600℃より低い請求項2ないし6のいずれか記載のセラミック触媒体の製造方法。
【請求項8】 上記触媒成分の前駆体が上記触媒成分を含む塩である請求項1ないし7のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項9】 上記触媒成分が触媒貴金属である請求項1ないし8のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項10】 上記触媒成分の前駆体が、塩化白金酸、硝酸白金、ジニトロジアンミン白金、テトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金塩化物塩、アセチルアセトナト白金、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム、アセチルアセトナトロジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、およびテトラアンミンパラジウム塩化物塩から選ばれる少なくとも一種である請求項9記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項11】 セラミック担体に触媒成分を担持してなるセラミック触媒体であって、上記セラミック担体が、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体であるとともに、上記触媒成分が、上記触媒成分の前駆体として強酸、強塩基以外の原料を焼き付けることにより触媒化されていることを特徴とするセラミック触媒体。
【請求項12】 基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、触媒成分を担持してセラミック触媒体を製造する方法であって、上記触媒成分の前駆体として強酸、強塩基以外の原料を上記セラミック担体に担持させ、大気雰囲気で焼き付けることを特徴とするセラミック触媒体の製造方法。
【請求項13】 担持された触媒粒子の平均粒径が100nm以下である請求項11または12記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項14】 焼き付け温度が600℃より低い請求項12または13記載のセラミック触媒体の製造方法。
【請求項15】 上記触媒成分の前駆体は弱酸、中性、弱塩基の原料である請求項11ないし14のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項16】 上記触媒成分の前駆体は、触媒金属の濃度が0.01mol/Lの場合の溶液のpHが4〜10である請求項15記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項17】 上記触媒成分が触媒貴金属である請求項11ないし16のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項18】 上記触媒成分の前駆体が、テトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金塩化物塩、アセチルアセトナト白金、酢酸ロジウム、アセチルアセトナトロジウム、酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、およびテトラアンミンパラジウム塩化物塩から選ばれる少なくとも一種である請求項17記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項19】 上記触媒粒子の平均粒径が50nm以下である請求項1ないし18のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項20】 上記セラミック担体は、基材セラミック表面に触媒を直接担持可能な多数の細孔を有しており、この細孔に対して触媒金属を直接担持可能であることを特徴とする請求項1ないし19のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項21】 上記細孔が、セラミック結晶格子中の欠陥、セラミック表面の微細なクラック、およびセラミックを構成する元素の欠損のうち、少なくとも1種類からなる請求項20記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項22】 上記微細なクラックの幅が100nm以下である請求項21記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項23】 上記細孔が、担持する触媒イオンの直径の1000倍以下の直径あるいは幅を有し、上記細孔の数が、1×1011個/L以上である請求項21記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項24】 上記セラミック担体は、上記基材セラミックを構成する元素のうち少なくとも1種類またはそれ以上の元素が、構成元素以外の元素と置換されており、この置換元素に対して上記触媒成分を直接担持可能である請求項1ないし19のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項25】 上記置換元素上に上記触媒成分が化学的結合により担持されている請求項24記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項26】 上記置換元素はその電子軌道にdまたはf軌道を有する少なくとも1種類またはそれ以上の元素である請求項24または25記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【請求項27】 上記基材セラミックがコーディエライトを成分として含む請求項1ないし26のいずれか記載のセラミック触媒体またはその製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車エンジンの排ガス浄化用触媒等に適用されるセラミック触媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンから排出される有害物質を浄化するために、従来より、種々の触媒が提案されている。排ガス浄化用触媒は、一般に、高耐熱衝撃性のコーディエライトハニカム構造体を担体として用い、その表面にγ−アルミナ等の高比表面積材料からなるコート層を形成した後、Pt等の触媒貴金属を担持している。コート層を形成するのは、コーディエライトの比表面積が小さいためで、γ−アルミナ等を用いて担体の表面積を増加させて、必要な量の触媒成分を担持させている。
【0003】ところが、コート層の形成は、担体の熱容量増加をまねくため早期活性化に不利であり、開口面積が小さくなって圧損が増加する不具合がある。しかも、γ−アルミナ自身の耐熱性が低いことから、触媒成分が凝集して浄化性能が大きく低下する問題があった。そこで、近年、コーディエライト自体の比表面積を向上させる方法が検討されている。例えば、特許文献1には、酸処理した後、熱処理してコーディエライト構成成分の一部を溶出させ、形成される空孔に触媒成分を担持させることが記載されている。しかしながら、この方法では、酸処理や熱処理によりコーディエライトの結晶格子が破壊されて強度が低下する問題があり、実用的ではなかった。
【0004】これに対し、本発明者等は、先に、比表面積を向上させるためのコート層を形成することなく、かつ強度を維持しながら、必要量の触媒成分を直接担持可能なセラミック担体を提案した(特許文献2)。この直接担持セラミック担体は、基材セラミックの構成元素の少なくとも1種類を価数の異なる元素と置換することによって、基材セラミック表面に結晶格子中の格子欠陥等からなる多数の細孔を形成したものである。これら細孔は極めて小さいため比表面積にはほとんど変化がなく、従来のような強度低下の問題を生じさせずに、必要量の触媒成分を直接担持可能である。
【0005】
【特許文献1】特公平5−50338号公報【特許文献2】特開2001−310128号公報【0006】
【発明が解決しようとする課題】この触媒成分を直接担持可能なセラミック担体は、細孔が微細であるため、触媒粒子の移動、凝集による劣化を阻止するには、触媒粒径を小さくして細孔内に触媒粒子を確実に保持することが望ましい。また、触媒を微粒化するほど、触媒成分が担体表面に高分散するので、少ない触媒担持量で高い触媒性能を得ることができる。しかしながら、通常の方法で、上記直接担持セラミック担体に、触媒成分を担持させたところ、触媒成分の担持、焼き付けの過程で、高温にさらされることにより、触媒粒子が移動、凝集して粒子が大きくなってしまうことが判明した。触媒粒子の熱振動を抑制するには、焼き付けの温度を低くするのがよいが、Pt等の触媒貴金属を金属化するには、通常、600℃以上の温度が必要であり、このため、触媒粒子の微粒化には限界があった。
【0007】そこで、本発明は、直接担持セラミック担体を用いたセラミック触媒体において、触媒粒子を微粒化することにより、熱劣化しにくく、しかも高い触媒性能を有するセラミック触媒体を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の発明は、セラミック担体に触媒成分を担持してなるセラミック触媒体であり、上記セラミック担体は、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体であるとともに、上記触媒成分が、上記触媒成分の前駆体を還元雰囲気で焼き付けることにより触媒化されていることを特徴とする。
【0009】上記触媒成分の前駆体、例えば、塩化白金酸は金属化温度が高いため、従来は焼き付けに600℃以上の温度が必要で、高温による触媒粒子の凝集で粒径を十分小さくすることができなかった。本発明では、還元雰囲気で上記触媒成分を焼き付けることにより、金属化温度を低くすることができるため、触媒粒子の凝集を抑制して平均粒径を、例えば100nm以下に微粒化することができる。よって、触媒粒子の微粒化により熱劣化しにくく、高い触媒性能を有するセラミック触媒体を得ることができる。
【0010】請求項2の発明は、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、触媒成分を担持してセラミック触媒体を製造する方法であって、上記触媒成分の前駆体を上記セラミック担体に担持させ、還元雰囲気で焼き付けることを特徴とする。この方法により、上述したように、金属化温度を低くすることができ、焼き付けの際の触媒粒子の凝集を抑制して、平均粒径が100nm以下のセラミック触媒体を製造することができる。
【0011】請求項3では、担持された触媒粒子の平均粒径を100nm以下とする。請求項1、2のように還元雰囲気で焼き付けられた触媒粒子は、平均粒径が100nm以下の微粒子となるので、担体表面に高分散させることができ、高い浄化性能が得られる。
【0012】還元雰囲気とするために、請求項4の方法では、焼き付け炉中に還元性ガスを供給する方法を採用する。この時、請求項5のように、上記還元性ガスとして、H2 ガス、COガスまたは可燃性ガスを含むガスを用いることができる。
【0013】あるいは、請求項6のように、上記触媒成分の前駆体を担持させた後、上記触媒成分の前駆体に還元剤を塗布して焼き付けることにより、少なくとも上記触媒成分の前駆体近傍を還元雰囲気としても、同様の効果が得られる。
【0014】請求項7のように、焼き付け温度を600℃より低くすると、高温による触媒粒子の凝集を抑制して、触媒粒径を小さくする効果が得られる。
【0015】請求項8のように、上記触媒成分の前駆体は、上記触媒成分を含む塩を用いるとができる。
【0016】請求項9のように、上記各請求項の発明において、上記触媒成分には触媒貴金属が好適に用いられ、微粒化されて高い浄化性能を発揮する。
【0017】請求項10のように、上記触媒成分の前駆体として、具体的には、塩化白金酸、硝酸白金、ジニトロジアンミン白金、テトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金塩化物塩、アセチルアセトナト白金、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム、アセチルアセトナトロジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、およびテトラアンミンパラジウム塩化物塩から選ばれる少なくとも一種を使用することができる。
【0018】請求項11は、上記課題を解決するための他の発明で、セラミック担体に触媒成分を担持してなるセラミック触媒体において、上記セラミック担体を、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体とする。上記触媒成分は、上記触媒成分の前駆体として強酸、強塩基以外の原料を焼き付けることにより触媒化されていることを特徴とする。
【0019】焼き付け雰囲気を変更する代わりに、請求項9の発明では、上記触媒成分の前駆体を強酸、強塩基以外の原料とする。これら原料を用いることによっても、金属化温度を低くすることができ、触媒粒子の凝集を抑制して、例えば100nm以下に微粒化することができる。よって、触媒粒子の微粒化により熱劣化しにくく、高い触媒性能を有するセラミック触媒体を得ることができる。
【0020】請求項12は、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、触媒成分を担持してセラミック触媒体を製造する方法であって、上記触媒成分の前駆体として強酸、強塩基以外の原料を上記セラミック担体に担持させ、大気雰囲気で焼き付けることを特徴とする。この方法により、上述したように、金属化温度を低くすることができ、焼き付けの際の触媒粒子の凝集を抑制して、平均粒径が100nm以下のセラミック触媒体を製造することができる。
【0021】請求項13では、担持された触媒粒子の平均粒径を100nm以下とする。請求項11、12のように還元雰囲気で焼き付けられた触媒粒子は、平均粒径が100nm以下の微粒子となるので、担体表面に高分散させることができ、高い浄化性能が得られる。
【0022】この方法においても、請求項14のように、焼き付け温度を600℃より低くすることで、高温による触媒粒子の凝集を抑制して、触媒粒径を小さくする効果が得られる。
【0023】請求項15のように、好適には、上記触媒成分の前駆体として、弱酸、中性、弱塩基の原料を使用すると、より効果的である。
【0024】請求項16のように、具体的には、上記触媒成分の前駆体は、触媒金属の濃度が0.01mol/Lの場合の溶液のpHが4〜10である原料を使用すると、上記効果が得やすい。
【0025】請求項17のように、上記請求項11ないし16の発明においても、上記触媒成分には触媒貴金属が好適に用いられ、微粒化されて高い浄化性能を発揮する。
【0026】請求項18のように、具体的には、上記触媒成分の前駆体として、テトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金塩化物塩、アセチルアセトナト白金、酢酸ロジウム、アセチルアセトナトロジウム、酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、およびテトラアンミンパラジウム塩化物塩から選ばれる少なくとも一種を使用することができる。
【0027】請求項19のように、上記触媒粒子の平均粒径が50nm以下であると、より好ましく、少ない触媒担持量でより高い触媒性能を実現できる。
【0028】請求項20のように、上記セラミック担体は、基材セラミック表面に触媒を直接担持可能な多数の細孔を有しており、この細孔に対して触媒成分を直接担持可能であるものを用いることができる。これにより、コート層を用いることなくセラミック担体に触媒成分を直接担持させた触媒体が得られる。
【0029】請求項21のように、上記細孔は、具体的には、セラミック結晶格子中の欠陥、セラミック表面の微細なクラック、およびセラミックを構成する元素の欠損のうち、少なくとも1種類からなる。
【0030】請求項22のように、上記微細なクラックの幅が100nm以下であると、担体強度を確保する上で好ましい。
【0031】請求項23のように、触媒成分を担持可能とするには、上記細孔が、担持する触媒イオンの直径の1000倍以下の直径あるいは幅を有するとよく、この時、上記細孔の数が、1×1011個/L以上であると、従来と同等な量の触媒成分を担持可能となる。
【0032】請求項24のように、上記セラミック担体として、基材セラミックを構成する元素のうち少なくとも1種類またはそれ以上の元素が構成元素以外の元素と置換されており、この置換元素に対して触媒成分を直接担持可能であるものを用いるいこともできる。
【0033】この場合、請求項25のように、上記置換元素上に上記触媒成分が化学的結合により担持されることが好ましい。触媒成分が化学的に結合されることにより、保持性が向上し、また、触媒成分が担体に均一分散して、凝集しにくくなるので、長期使用による劣化をより小さくすることができる。
【0034】請求項26のように、上記置換元素には、その電子軌道にdまたはf軌道を有する少なくとも1種類またはそれ以上の元素と用いることができる。電子軌道にdまたはf軌道を有する元素は、触媒成分と結合しやすいため、好ましい。
【0035】請求項27のように、上記セラミック担体は、コーディエライトを成分として含むものが好適に用いられる。コーディエライトを用いることで耐熱衝撃性が向上する。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明のセラミック触媒体は、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体を用い、該セラミック担体に、触媒成分として、例えばPt、Rh、Pd等の触媒貴金属を直接担持してなる。触媒貴金属の粒子は、上記セラミック担体に、コート層を介さずに直接担持されている。本発明のセラミック触媒体は、例えば、自動車用の排ガス浄化触媒等に好適に用いられ、コート層が不要であるため、熱容量や圧損の低減に効果があり、また、コート層の劣化による触媒性能の低下が生じない。
【0037】セラミック担体の基材セラミックとしては、例えば、理論組成が2MgO・2Al2 3 ・5SiO2 で表されるコーディエライトを主成分とするものが好適に用いられる。自動車用触媒に用いる場合には、通常、基材セラミックをガス流れ方向に多数の流路を有するハニカム構造に成形し、焼成してセラミック担体とする。コーディエライトは、耐熱性に優れるため、高温条件で使用される自動車用触媒に好適であるが、コーディエライト以外のセラミック、例えば、アルミナ、スピネル、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、ムライト、シリカ−アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、窒化珪素、リン酸ジルコニウム等を、基材セラミックとして用いることができる。また、担体形状は、ハニカム状に限らず、ペレット状、粉体状、フォーム体状、中空繊維状、繊維状等、他の形状とすることもできる。
【0038】触媒成分を直接担持可能とするために、本発明のセラミック担体は、基材セラミック表面に、触媒成分を直接担持可能な多数の細孔を有するか、または触媒成分を直接担持可能な置換元素を多数有している。触媒成分を直接担持可能な細孔は、具体的には、セラミック結晶格子中の欠陥(酸素欠陥または格子欠陥)、セラミック表面の微細なクラック、およびセラミックを構成する元素の欠損のうち、少なくとも1種類からなり、複数種類を組み合わせて形成することもできる。触媒成分を直接担持可能な元素は、基材セラミックを構成する元素のうち少なくとも1種類またはそれ以上の元素を、構成元素以外の元素を置換することにより導入される元素である。セラミック担体は、このような細孔または置換元素に対して触媒成分を直接担持することにより、γ−アルミナ等の高比表面積のコート層を形成することなく、かつ強度を維持しながら触媒成分の担持を可能とする。
【0039】まず、基材セラミックの表面に、触媒成分を直接担持可能な多数の細孔を有するセラミック担体について説明する。担持される触媒成分イオンの直径は、通常、0.1nm程度であるので、コーディエライトの表面に形成される細孔は、直径あるいは幅が、0.1nm以上であれば、触媒成分イオンを担持可能であり、セラミックの強度を確保するには、細孔の直径あるいは幅が触媒成分イオンの直径の1000倍(100nm)以下で、できるだけ小さい方が好ましい。好ましくは、1〜1000倍(0.1〜100nm)とする。細孔の深さは、触媒成分イオンを保持するために、その直径の1/2倍(0.05nm)以上とすることが好ましい。この大きさで、従来と同等な量の触媒成分(1.5g/L)を担持可能とするには、細孔の数が、1×1011個/L以上、好ましくは1×1016個/L以上、より好ましくは1×1017個/L以上であるとよい。
【0040】セラミック表面に形成される細孔のうち、結晶格子の欠陥には、酸素欠陥と格子欠陥(金属空格子点と格子歪)がある。酸素欠陥は、セラミック結晶格子を構成するための酸素が不足することにより生ずる欠陥で、酸素が抜けたことにより形成される細孔に触媒成分を担持できる。格子欠陥は、セラミック結晶格子を構成するために必要な量以上の酸素を取り込むことにより生じる格子欠陥で、結晶格子の歪みや金属空格子点によって形成される細孔に触媒成分を担持することが可能となる。
【0041】具体的には、コーディエライトハニカム構造体が、酸素欠陥あるいは格子欠陥の少なくとも1種類を単位結晶格子に1個以上有するコーディエライト結晶を4×10-6%以上、好ましくは、4×10-5%以上含有する、あるいは、酸素欠陥あるいは格子欠陥の少なくとも1種類をコーディエライトの単位結晶格子当たり4×10-8個以上、好ましくは、4×10-7個以上含有すると、セラミック担体の細孔の数が上記所定数以上となる。次にこの細孔の詳細と形成方法について説明する。
【0042】結晶格子に酸素欠陥を形成するには、特願2000−104994に記載されるように、Si源、Al源、Mg源を含むコーディエライト化原料を成形、脱脂した後、焼成する工程において、■焼成雰囲気を減圧または還元雰囲気とする、■原料の少なくとも一部に酸素を含まない化合物を用い、低酸素濃度雰囲気で焼成することにより、焼成雰囲気または出発原料中の酸素を不足させるか、■酸素以外のセラミックの構成元素の少なくとも1種類について、その一部を該元素より価数の小さな元素で置換する方法が採用できる。コーディエライトの場合、構成元素は、Si(4+)、Al(3+)、Mg(2+)と正の電荷を有するので、これらを価数の小さな元素で置換すると、置換した元素との価数の差と置換量に相当する正の電荷が不足し、結晶格子としての電気的中性を維持するため、負の電荷を有するO(2−)を放出し、酸素欠陥が形成される。
【0043】また、格子欠陥については、■酸素以外のセラミック構成元素の一部を該元素より価数の大きな元素で置換することにより形成できる。コーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgの少なくとも一部を、その元素より価数の大きい元素で置換すると、置換した元素との価数の差と置換量に相当する正の電荷が過剰となり、結晶格子としての電気的中性を維持するため、負の電荷を有するO(2−)を必要量取り込む。取り込まれた酸素が障害となって、コーディエライト結晶格子が整然と並ぶことができなくなり、格子歪が形成される。この場合の焼成雰囲気は、大気雰囲気として、酸素が十分に供給されるようにする。あるいは、電気的中性を維持するために、Si、Al、Mgの一部を放出し、空孔が形成される。なお、これら欠陥の大きさは数オングストーム以下と考えられるため、窒素分子を用いたBET法のような通常の比表面積の測定方法では、比表面積として測定できない。
【0044】酸素欠陥および格子欠陥の数は、コーディエライト中に含まれる酸素量と相関があり、上記した必要量の触媒成分の担持を可能とするには、酸素量が47重量%未満(酸素欠陥)または48重量%より多く(格子欠陥)なるようにするのがよい。酸素欠陥の形成により、酸素量が47重量%未満になると、コーディエライト単位結晶格子中に含まれる酸素数は17.2より少なくなり、コーディエライトの結晶軸のbo 軸の格子定数は16.99より小さくなる。また、格子欠陥の形成により、酸素量が48重量%より多くなると、コーディエライト単位結晶格子中に含まれる酸素数は17.6より多くなり、コーディエライトの結晶軸のbo 軸の格子定数は16.99より大きくまたは小さくなる。
【0045】次に、元素置換によって、基材セラミック表面に触媒担持能を有する元素を多数配置したセラミック担体について説明する。この場合、セラミックの構成元素と置換される元素、例えば、コーディエライトであれば、酸素を除く構成元素であるSi、Al、Mgと置換される元素は、これら構成元素よりも担持される触媒成分との結合力が大きく、触媒成分を化学的結合により担持可能な元素がよい。具体的には、これら構成元素と異なる元素で、その電子軌道にdまたはf軌道を有する元素が挙げられ、好ましくはdまたはf軌道に空軌道を有するか、または酸素状態を2つ以上持つ元素が用いられる。dまたはf軌道に空軌道を有する元素は、担持される触媒成分とエネルギー準位が近く、電子の授与が行われやすいため、触媒成分と結合しやすい。また、酸化状態を2つ持つ元素も、電子の授与が行われやすく、同様の作用が期待できる。
【0046】dまたはf軌道に空軌道を有する元素の具体例には、W、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Mo、Ru、Rh、Ce、Ir、Pt等が挙げられ、これら元素のうちの少なくとも1種類またはそれ以上を用いることができる。これら元素のうち、W、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Ce、Ir、Ptは、酸素状態を2つ以上持つ元素であり。酸素状態を2つ以上持つ元素の具体例としては、その他、Cu、Ga、Ge、Se、Pd、Ag、Au等が挙げられる。
【0047】これら置換元素で、セラミックの構成元素を置換する場合には、予め、置換される構成元素の原料の一部を置換量に応じて減らしておいたセラミック原料中に、置換元素の原料を添加、混練する方法を採用することができる。これを、通常の方法で、例えばハニカム状に成形し、乾燥させた後、大気雰囲気中で脱脂、焼成する。セラミック担体のセル壁の厚さは、通常、150μm以下とし、壁厚が薄いほど熱容量が小さくなるため、好ましい。あるいは、予め、置換される構成元素の原料の一部を置換量に応じて減らしておき、通常の方法で、混練、成形、乾燥させた後、置換元素を含む溶液に含浸させる方法によってもよい。これを溶液から取り出した後、同様にして、乾燥、大気雰囲気中で脱脂、焼成する。このように成形体に溶液を含浸させる方法を用いると、成形体表面に置換元素を多く存在させることができ、その結果、焼成時に表面で元素置換がおきて固溶体を生じやすくなるので、好ましい。
【0048】置換元素の量は、総置換量が、置換される構成元素の原子数の0.01%以上50%以下、好ましくは5〜20%の範囲となるようにするのがよい。なお、置換元素が、セラミックの構成元素と価数の異なる元素である場合には、価数の差に応じて格子欠陥または酸素欠陥が同時に生じるが、置換元素を複数使用し、置換元素の酸化数の和と、置換される構成元素の酸化数の和と等しくなるようにすれば、欠陥は生成しない。このように、全体として価数の変化がないようにすると、触媒成分を置換元素との結合によってのみ担持させることができる。
【0049】このように、基材セラミックの構成元素の一部を触媒成分との結合強度が強い元素で置換させたセラミック担体を用いると、触媒成分をコート層なしで直接担持させ、かつ基材セラミックとの結合をより強固にすることができるので、有利である。
【0050】本発明のセラミック触媒体は、上記セラミック担体に、Pt等の触媒成分を直接担持させることにより得られる。触媒成分の担持は、各触媒成分の前駆体をセラミック担体に担持させた後、焼き付けする方法で行うことができる。本発明の特徴は、上記セラミック担体に、Pt等の触媒成分を直接担持させる際に、(1)還元雰囲気で焼き付けるか、または(2)触媒成分の前駆体を適切に選択することにより、触媒化する際の触媒の粒成長を抑制することにある。これにより、担持される触媒金属粒子を微粒化して、平均粒径が100nm以下となるようにすることができる。これら(1)、(2)の担持方法の詳細を以下に示す。
【0051】(1)の担持方法の場合には、通常、担持させる触媒成分の前駆体として、触媒成分を含む塩を用いることができる。具体的には、Pt、Rh、Pd等を含む塩化物、硫酸塩、硝酸塩等、例えば、Ptの前駆体として塩化白金酸、硝酸白金、ジニトロジアンミン白金等が、Rhの前駆体として塩化ロジウム、硝酸ロジウム等が、Pdの前駆体として塩化パラジウム、硝酸パラジウムが挙げられる。これら強酸、強塩基の原料以外にも弱酸、中性、弱塩基の原料、例えば、Ptの前駆体としてテトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金塩化物塩、アセチルアセトナト白金等が、Rhの前駆体として酢酸ロジウム、アセチルアセトナトロジウム等が、Pdの前駆体として酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、テトラアンミンパラジウム塩化物塩等が挙げられ、これら原料から選ばれる少なくとも一種を使用すればよい。
【0052】図1は、触媒成分をPtとした場合で、Ptを含む塩の溶液、例えば、塩化白金酸の水溶液にセラミック担体を浸漬し、エアブロー等で余剰の溶液を取り除いた後、乾燥器で乾燥させる。この状態では、図1(a)のように、PtがClと結合した状態で担体表面に担持されており、次いで、還元雰囲気で焼き付けを行って、Ptを金属化する。
【0053】還元雰囲気とするには、焼き付け炉中に還元性ガスを供給する方法が採用できる。還元性ガスは、H2 ガス、COガスまたは可燃性ガス等を0.1%以上の濃度で含み、その他の成分がN2 等の不活性ガスであるガスが用いられる。焼き付け温度は、通常、600℃より低い温度、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下であり、温度が低いほど凝集を抑制して触媒粒径を小さくする効果が高い。
【0054】上記の方法では、炉内全体が還元雰囲気となるが、触媒成分を担持させた後、還元剤を塗布して、触媒近傍のみを還元雰囲気としてもよい。還元剤としては、ハニカム構造体の成形に使用される有機バインダや潤滑剤等、具体的には、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、グリセリン等を用いることができ、例えば、グリセリンと水を容積比で10:1とした溶液に、セラミック担体をごく短時間浸漬して取り出し、余剰の溶液を取り除いて触媒成分の表面に還元剤を含む被膜を形成する。これを、乾燥させた後、大気雰囲気で焼き付けると、触媒近傍のみを還元雰囲気とすることができる。焼き付け温度は、同様に、通常、600℃より低い温度、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下とする。
【0055】図2(a)、(b)に示すように、従来は触媒成分を大気雰囲気で焼き付けていたが、大気雰囲気では触媒の金属化温度が高く、例えば、塩化白金酸を用いた場合、600℃程度の温度が必要となる。これは、PtとClの結合が強固で、分解に大きな熱エネルギーを要するからであるが、Ptが金属化した時に、雰囲気温度が約600℃と高いため、Pt粒子の熱振動が大きくなる。このため、金属化すると同時に触媒が凝集して粒成長してしまい、微粒化が困難であった。一方、図1(a)、(b)に示すように、本発明では焼き付け雰囲気をH2 等の還元雰囲気とすることで、Ptと結合しているClの解離を促進させることができ、400℃程度と低い温度での金属化が可能となる。つまり、Ptが金属化した時に、雰囲気温度が約400℃と低いので、Pt粒子の熱振動が小さくなり、凝集が抑制されて、触媒粒子が微粒な状態で存在できる。
【0056】還元剤を塗布した場合にも、還元剤が加熱されることにより気化され、触媒の前駆体近傍に到達する。従って、焼き付け時に触媒成分近傍のみを還元雰囲気とすることにより、触媒成分の金属化を促進し、同様の効果を得ることができる。
【0057】(2)の担持方法の場合には、担持させる触媒成分の前駆体として、強酸、強塩基以外の原料を用いる。具体的には、触媒成分であるPt、Rh、Pd等の貴金属を含む弱酸、中性、弱塩基の原料、例えば、Ptの前駆体としてテトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金塩化物塩、アセチルアセトナト白金等が、Rhの前駆体として酢酸ロジウム、アセチルアセトナトロジウム等が、Pdの前駆体として酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、テトラアンミンパラジウム塩化物塩等が挙げられ、これら原料から選ばれる少なくとも一種を使用すればよい。これら原料のうち、酢酸ロジウム、酢酸パラジウムは弱酸、アセチルアセトナト白金、アセチルアセトナトロジウム、アセチルアセトナトパラジウムは中性、テトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金塩化物塩、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、テトラアンミンパラジウム塩化物塩は弱塩基の原料である。
【0058】また、上述したもの以外の弱酸、中性、弱塩基の原料を用いることももちろんできる。一般に、触媒成分の前駆体となる弱酸、中性、弱塩基の原料とは、触媒貴金属の濃度が0.01mol/Lの場合の溶液のpHが4〜10である原料である。上述した弱酸、中性、弱塩基の原料のpHと強酸、強塩基の原料のpHの一例を以下に示す。
Pt系 テトラアンミン白金硝酸塩 :pH=7.59 (ジニトロジアンミン白金硝酸塩:pH=1.36)
Rh系 酢酸ロジウム :pH=4.00 (硝酸ロジウム :pH=2.00)
Pd系 テトラアンミンパラジウム :pH=7.09【0059】図3では、例えば、Ptの前駆体となるテトラアンミン白金硝酸塩の水溶液を用い、セラミック担体を浸漬してエアブロー等で余剰の溶液を取り除いた後、乾燥器で乾燥させる。この状態では、図3(a)のように、PtがNH3 と結合した状態で担体表面に担持されているので、次いで、焼き付けを行って、Ptを金属化する。焼き付け雰囲気は、大気雰囲気とし、焼き付け温度は、通常、600℃より低い温度、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下で、温度が低いほど凝集を抑制して触媒粒径を小さくする効果が高い。
【0060】図4(a)、(b)に示すように、Ptの前駆体として、強酸の塩化白金酸を用い大気雰囲気で焼き付けると、触媒の金属化温度が高く(例えば、600℃)、Ptの熱振動が大きくなる。このため、金属化と同時に触媒が粒成長してしまい、微粒化が困難であった。一方、本発明では、図3のような弱塩基の原料や、弱酸、中性の原料を用いており、強酸や強塩基に比べて触媒金属成分と他の部分との結合強度が弱い。そのため、分解に必要とされる熱エネルギーが少なくなり、低温での焼き付けで金属化が可能である(例えば、300℃)。これにより、Ptの熱振動による凝集が抑制され、触媒粒子の微粒化が可能である。
【0061】上記(1)、(2)の担持方法を採用することにより、触媒金属の粒成長が抑制できる。このようにして金属化された触媒粒子の平均粒径は、焼き付け温度等によっても変動するが、通常、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは25nm以下であり、同一の触媒担持量で総表面積が増加することにより、浄化性能が向上する。
【0062】上記実施の形態では、触媒成分としてPt、Rh、Pd等の触媒貴金属を用いる場合について説明したが、貴金属以外の金属であってもよく、焼き付けにより金属化する際の凝集を抑制する同様の効果が得られる。複数の触媒成分を使用する場合には、担持、焼き付けを触媒成分毎に繰り返し行っても、同時に、担持、焼き付けを行ってもよい。また、本発明のセラミック触媒体に、さらに用途に応じてCeO2 等の助触媒成分を添加してももちろんよい。
【0063】
【実施例】(実施例1、比較例1)還元雰囲気で焼き付ける方法により本発明のセラミック触媒体を製作し、その効果を確認した。コーディエライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウムと、コーディエライト構成元素であるSiの5%に相当するWO3 、同じくSiの5%に相当するCoOを使用し、コーディエライトの理論組成点付近となるように調合した。この原料に、バインダ、潤滑剤および保湿剤、水分を適量添加し、混練して粘土化させたものを、セル壁厚100μm、セル密度400cpsi、直径50mmのハニカム形状に成形した。このハニカム構造体を乾燥させてから、大気雰囲気で1390℃で焼成して、置換元素(W、Co)に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体とした。
【0064】得られたセラミック担体に、触媒成分としてPtおよびRhを担持させるため、塩化白金酸0.035mol/L、塩化ロジウム0.025mol/Lを溶解させたエタノール溶液を用意した。この溶液にセラミック担体を5分間浸漬し、余剰な溶液をエアブローで取り除いた後、110℃の乾燥器で1時間乾燥させた。これを、還元ガスとしてH2 ガスを用いた還元雰囲気にて、400℃で焼き付けることでPtおよびRhを金属化させ、本発明のセラミック触媒体とした(実施例1)。また、比較のため、同様の方法で製作したコーディエライトセラミック担体を用い、同濃度の塩化白金酸と、塩化ロジウムのエタノール溶液に浸漬、乾燥させた後、大気雰囲気、600℃で焼き付けることでセラミック触媒体とした(比較例1)。
【0065】得られた実施例1と比較例1のセラミック触媒体の浄化性能を評価するために、C3 6 を含むモデルガスを導入して、C3 6 の50%浄化温度を測定した。評価条件は、下記の通りとし、50%浄化温度は初期、および熱耐久後(大気雰囲気、1000℃、24時間)についてそれぞれ調べた。

【0066】その結果、実施例1の50%浄化温度は157℃であった。また、触媒粒径をCO吸着法で測定したところ、平均で10nmであった。また、比較例1の50%浄化温度は210℃、触媒の平均粒径は55nmであった。以上より、還元雰囲気で焼き付けることで金属化温度を低温にすることができ、触媒の平均粒径を小さくすることができること、これにより、50%浄化温度を低くし、浄化性能を大きく向上できることが確認された。
【0067】(実施例2)還元剤を塗布して焼き付ける方法により本発明のセラミック触媒体を製作し、その効果を確認した。コーディエライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウムと、コーディエライト構成元素であるSiの5%に相当するWO3 、同じくSiの5%に相当するCoOを使用し、コーディエライトの理論組成点付近となるように調合した。この原料に、バインダ、潤滑剤および保湿剤、水分を適量添加し、混練して粘土化させたものを、セル壁厚100μm、セル密度400cpsi、直径50mmのハニカム形状に成形した。このハニカム構造体を乾燥させてから、大気雰囲気で1390℃で焼成して、置換元素(W、Co)に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体とした。
【0068】得られたセラミック担体に、触媒成分としてPtおよびRhを担持させるため、塩化白金酸0.035mol/L、塩化ロジウム0.025mol/Lを溶解させたエタノール溶液を用意した。この溶液にセラミック担体を5分間浸漬し、余剰な溶液をエアブローで取り除いた後、110℃の乾燥器で1時間乾燥させた。次に、還元剤としてハニカム成形用の潤滑剤(商品名ユニルーブ:日産化学(株)製)を用い、潤滑剤と水を重量比で1:1で混合させた溶液を調製した。この溶液に、触媒成分を担持させたセラミック担体を10秒間浸漬し、余剰な溶液を取り除いて乾燥させた後、大気雰囲気にて、300℃で焼き付けてPtおよびRhを金属化させ、本発明のセラミック触媒体とした(実施例2)。
【0069】得られた実施例2のセラミック触媒体の浄化性能を評価するために、上記実施例1と同様にして、C3 6 の50%浄化温度を測定した。その結果、実施例3の50%浄化温度は187℃であり、また、触媒粒径をCO吸着法で測定したところ、平均で25nmであった。このように、還元剤を塗布して焼き付ける方法によっても、金属化温度を低温にして、上記比較例1(50%浄化温度210℃、平均粒径55nm)に比べて、触媒を微粒化することができ、浄化性能を向上できることが確認された。
【0070】(実施例3)弱酸、中性または弱塩基の原料を触媒成分の前駆体とする方法により本発明のセラミック触媒体を製作し、その効果を確認した。コーディエライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウムと、コーディエライト構成元素であるSiの5%に相当するWO3 、同じくSiの5%に相当するCoOを使用し、コーディエライトの理論組成点付近となるように調合した。この原料に、バインダ、潤滑剤および保湿剤、水分を適量添加し、混練して粘土化させたものを、セル壁厚100μm、セル密度400cpsi、直径50mmのハニカム形状に成形した。このハニカム構造体を乾燥させてから、大気雰囲気で1390℃で焼成して、置換元素(W、Co)に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体とした。
【0071】得られたセラミック担体に、触媒成分としてPtおよびRhを担持させるため、テトラアンミン白金硝酸酸(弱塩基)0.075mol/L、酢酸ロジウム(弱酸)0.02mol/Lを溶解させたエタノール溶液を用意した。この溶液にセラミック担体を5分間浸漬し、余剰な溶液をエアブローで取り除いた後、110℃の乾燥器で1時間乾燥させた。これを、大気雰囲気にて、300℃で焼き付けてPtおよびRhを金属化させ、本発明のセラミック触媒体とした(実施例3)。
【0072】得られた実施例3のセラミック触媒体の浄化性能を評価するために、上記実施例1と同様にして、C3 6 の50%浄化温度を測定した。その結果、実施例3の50%浄化温度は143℃であり、また、触媒粒径をCO吸着法で測定したところ、平均で10nmであった。このように、弱酸、中性または弱塩基の原料を使用することで、塩化白金酸(強酸)、塩化ロジウム(強酸)を用いる上記比較例1(50%浄化温度210℃、平均粒径55nm)に比べて、金属化温度を低温にし、触媒を微粒化して浄化性能を向上できることが確認された。
【0073】図5に(a)、(b)に、Pt、Rhの前駆体となる弱酸、中性または弱塩基の原料の金属化温度を、強酸の原料の金属化温度と比較して示した。金属化温度の測定は、各原料を大気雰囲気で加熱してその重量を測定することによって行い、塩の分解による重量変化が観察された温度を金属化温度とした。Pt系、Rh系それぞれの前駆体の金属化温度を以下に示す。
Pt系 a)テトラアンミン白金硝酸塩 :255℃ b)テトラアンミン白金塩化物塩 :397℃ c)アセチルアセトナト白金 :229℃ d)塩化白金酸(強酸) :487℃ Rh系 e)酢酸ロジウム :275℃ f)アセチルアセトナトロジウム :257℃ g)塩化ロジウム(強酸) :413℃図5に明らかなように、塩化白金酸(強酸)、塩化ロジウム(強酸)はいずれも大気雰囲気における金属化温度が400℃を超えているが、弱酸、中性、弱塩基の原料の金属化温度はいずれも400℃以下であり、焼き付け温度を低くできることが確認された。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
【住所又は居所】愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地
【出願日】 平成14年9月26日(2002.9.26)
【代理人】 【識別番号】100067596
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 求馬
【公開番号】 特開2003−205241(P2003−205241A)
【公開日】 平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願番号】 特願2002−280870(P2002−280870)