| 【発明の名称】 |
超高圧発生方法及び装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】川島 康
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| 【要約】 |
【課題】従来得られなかった大きな超高圧力の発生を可能にする超高圧発生方法及び装置を提供する。
【解決手段】拘束手段1の有する空所に、原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料がその体積膨張を拘束して収容され、空所の少なくとも一部分が光エネルギー透過性を有する材料1a、1bによって形成されている。光エネルギー注入手段が、空所内に拘束されている高圧誘起材料に、光エネルギー透過性材料を通じて外部から光エネルギーを注入し、注入した光エネルギーによって高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させ、この原子間の結合の分解によって生じる高圧誘起材料の体積膨張の力を利用して空所内に超高圧を発生させている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一部分を光透過性のある材料によって形成した空所内に、原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料を、その体積膨張を拘束して収容し、前記光透過性材料を通じて外部から注入した光エネルギーによって前記高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させ、該原子間の結合の分解による前記高圧誘起材料の体積膨張の力を利用して前記空所内に超高圧を発生させることを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項2】 請求項1記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料を通じてパルスレーザ光を前記高圧誘起材料に照射することで前記光エネルギーの注入を行うことを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項3】 請求項2記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料は、前記パルスレーザ光に対する光透過率が大きい材料であることを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項4】 請求項3記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料はサファイアからなることを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項5】 請求項1記載の超高圧発生方法において、前記高圧誘起材料は、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい単一材料、又は、光吸収係数、原子間の結合力の少なくとも一方が大きい材料を複合して作成され、全体として、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい複合材料からなることを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項6】 請求項5記載の超高圧発生方法において、前記原子間の結合は、共有結合、金属結合又は水素結合であることを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項7】 請求項5記載の超高圧発生方法において、前記単一材料は黒鉛からなることを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項8】 請求項2記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料を通じて前記高圧誘起材料に照射するパルスレーザ光のビーム径を、その最小ビーム径が前記高圧誘起材料の先方に形成されるように調整することを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項9】 光透過性をもつサファイアアンビルを用いる高圧装置の前記サファイアアンビルにより形成した空所内に高圧誘起材料として少なくとも黒鉛を収容してその体積膨張を拘束し、該拘束状態にある黒鉛に前記サファイアアンビルの外からパルスレーザ光を照射することによって、前記黒鉛の原子間の結合を分解させ、該分解により得られる力を利用して前記黒鉛を収容した前記空所内に超高圧を発生させることを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項10】 空所内で超高圧を受ける試料が粉末状であるとき、請求項1〜9記載の超高圧発生方法によって超高圧を発生するに先立ち、前記方法により前記光透過性材料を通じて外部から注入する光エネルギーに比べて小さな光エネルギーを前記光透過性材料を通じて外部から注入し、該注入した光エネルギーによって前記高圧誘起材料の原子間の結合を分解させて前記空所内に超高圧を発生させた後、前記空所の体積を減少させるようにしたことを特徴とする超高圧発生方法。 【請求項11】 原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料を、その体積膨張を拘束して収容するための空所を有し、該空所の少なくとも一部分が光エネルギー透過性を有する材料によって形成されてなる拘束手段と、前記空所内に拘束されている高圧誘起材料に、前記光エネルギー透過性材料を通じて外部から光エネルギーを注入する光エネルギー注入手段とを備え、該光エネルギー注入手段によって注入した光エネルギーによって前記高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させ、該原子間の結合の分解によって生じる前記高圧誘起材料の体積膨張の力を利用して前記空所内に超高圧を発生させることを特徴とする超高圧発生装置。 【請求項12】 請求項11記載の超高圧発生装置において、前記光エネルギー注入手段は、前記光エネルギー透過性材料を透過して前記高圧誘起材料に照射するレーザビームを発生するパルスレーザ装置を有することを特徴とする超高圧発生装置。 【請求項13】 請求項11記載の超高圧発生装置において、前記光エネルギー注入手段は、前記光エネルギー透過性材料を透過する前に前記レーザビームの最小ビーム径が前記高圧誘起材料の先方に形成されるようにビーム径を絞り、前記高圧誘起材料に対するレーザビームの照射スポットの大きさを決定する絞り手段を更に有することを特徴とする超高圧発生装置。 【請求項14】 請求項11記載の超高圧発生装置において、前記光エネルギー注入手段は、前記レーザビームを複数に分割し、該分割したレーザビームを前記空所内に拘束されている前記高圧誘起材料に異なる複数の方向から照射する光分割手段を更に有することを特徴とする超高圧発生装置。 【請求項15】 請求項11記載の超高圧発生装置において、前記高圧誘起材料とともに前記空所内に収容され、励起用レーザビームによる励起によって蛍光を発し、その波長が前記空所内の圧力の大きさに応じて遷移する波長遷移材料と、該波長遷移材料が放出する前記蛍光の波長を計測する波長計測手段とを有し、該波長計測手段によって計測した波長によって前記空所内に発生した超高圧の圧力を測定する圧力測定手段をさらに備えることを特徴とする超高圧発生装置。 【請求項16】 請求項11記載の超高圧発生装置において、前記高圧誘起材料が分解したとき、前記空所内から輻射される輻射光の波長を計測し、該計測した波長によって前記空所内の温度を測定する温度測定手段をさらに備えることを特徴とする超高圧発生装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は超高圧発生方法及び装置に係り、特に、光エネルギー透過性の物質によって形成した空所内に外部から注入した光エネルギーを利用して空所内に超高圧を発生する超高圧発生方法及び装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】これまで、ダイヤモンドや立方晶化窒化ホウ素などの合成に用いることができる高圧装置として、ベルト高圧装置、マルチアンビル高圧装置などがあるが、これらの装置では10GPa(10万気圧)以上の高圧の発生は難しい。これらの装置は静的高圧を発生することができ、大型化が可能であり圧力室も200cm3 の容積を持つものが開発されている。しかし、100GPaに迫る高圧あるいはそれを越える高圧発生はこれらの装置では不可能であり、ダイヤモンドアンビル高圧装置あるいは衝撃圧縮を利用する動的方法によってしか達成することができない。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ダイヤモンドアンビル高圧装置によって得られる圧力室容積は10-9cm3 に過ぎない。衝撃波を利用する動的超高圧発生法には、爆薬法と衝撃銃法があるが、装置が大掛かりであり、その高圧力維持時間は1μs程度と極めて短く、またこれらの方法による1TPaを越える超高圧の発生は報告されていない。1TPaを越える超高圧の発生についての報告は、地下核爆発を用いた実験とレーザー核融合研究用に開発された大出力レーザーを用いた実験に関するものだけである。しかし、これらの方法によって得られる高圧の維持時間はnsオーダーに過ぎない。 【0004】ダイヤモンドアンビル高圧装置はその高圧室の容積が極めて小さいことから、その工業的応用は難しく、おそらく1TPaの高圧発生は不可能である。従来の動的高圧発生法では、その高圧力維持時間が極めて短く、物質合成には、不可逆性の相変態の場合に対して適用できるだけであり、その適用範囲は極めて狭い。 【0005】よって、本発明は、上述した現状に鑑みてなされたもので、従来得られなかった大きな超高圧力の発生を可能にする超高圧発生方法及び装置を提供することを主たる課題としている。 【0006】本発明はまた、従来と比較してより長い高圧力維持時間を実現できる超高圧発生方法及び装置を提供することを課題としている。 【0007】本発明はさらに、従来と比較してより大きな超高圧空所を実現できる超高圧発生方法及び装置を提供することを課題としている。 【0008】本発明はさらにまた、従来と比較して桁違いに少ないエネルギーの投入によって超高圧発生が可能である超高圧発生方法及び装置を提供することを課題としている。 【0009】本発明はまた、物質合成に必要な高温を加圧加熱を目的とする材料において高圧とともに発生させ、その高温を制御することもできる超高圧発生方法及び装置を提供することを課題としている。 【0010】 【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するためなされた請求項1記載の本発明は、少なくとも一部分を光透過性のある材料によって形成した空所内に、原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料を、その体積膨張を拘束して収容し、前記光透過性材料を通じて外部から注入した光エネルギーによって前記高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させ、該原子間の結合の分解による前記高圧誘起材料の体積膨張の力を利用して前記空所内に超高圧を発生させることを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0011】請求項1記載の発明によれば、原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料をその体積膨張を拘束して収容した空所の少なくとも一部分を光透過性のある材料によって形成し、光透過性材料を通じて外部から高圧誘起材料に注入した光エネルギーによって、高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させ、原子間の結合の分解による高圧誘起材料の体積膨張の力を利用して空所内に超高圧を発生させているので、高圧誘起材料に注入した光エネルギーは原子間の結合を分解するに必要な温度に加熱するだけでの小さなものでよく、また、原子間を結合している大きな力に抗して分解することによって得られる体積膨張の力が非常に大きいため、体積膨張を拘束している空所内に発生される超高圧も非常に大きなものとなる。 【0012】請求項2記載の発明は、請求項1記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料を通じてパルスレーザ光を前記高圧誘起材料に照射することで前記光エネルギーの注入を行うことを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0013】請求項2記載の発明によれば、光透過性材料を通じてパルスレーザ光を高圧誘起材料に照射することで光エネルギーの注入を行うので、高圧誘起材料を加熱するのに適した波長のレーザビームを発生する既存のパルスレーザ装置を利用して、パルスレーザビームの強さとその持続時間を制御することで、光エネルギーを効率よくかつ調整して注入することができる。 【0014】請求項3記載の発明は、請求項2記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料は、前記パルスレーザ光に対する光透過率が大きい材料であることを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0015】請求項3記載の発明によれば、光透過性材料がパルスレーザ光に対する光透過率が大きいので、効率よく外部からの光エネルギーを透過し、吸収による温度上昇がし難く、それだけ破損の原因となる熱応力も発生し難くなる。 【0016】請求項4記載の発明は、請求項3記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料はサファイアからなることを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0017】請求項4記載の発明によれば、サファイアはダイアモンドに比べて反射率が小さく、しかも安価で比較的大きな結晶のものが安価に得られるので、超高圧を発生する空所を形成する材料として都合がよい。 【0018】請求項5記載の発明は、請求項1記載の超高圧発生方法において、前記高圧誘起材料は、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい単一材料、又は、光吸収係数、原子間の結合力の少なくとも一方が大きい材料を複合して作成され、全体として、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい複合材料からなることを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0019】請求項5記載の発明によれば、高圧誘起材料が光吸収係数及び原子間の結合力が大きい材料からなっているので、外部から注入するエネルギーが小さくても大きな体積膨張の力が得られるようになる。また、高圧誘起材料が光吸収係数、原子間の結合力の少なくとも一方が大きい材料を複合して作成され、全体として、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい複合材料からなるので、材料の組み合わせによって、超高圧の発生とその後の変化パターンを制御することが可能になる。 【0020】請求項6記載の発明は、請求項5記載の超高圧発生方法において、前記原子間の結合は、共有結合、金属結合又は水素結合であることを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0021】請求項6記載の発明によれば、高圧誘起材料として、原子間の結合力の大きな、共有結合、金属結合又は水素結合の材料から必要に応じて選択して使用することができる。従って、高圧誘起材料が、光吸収係数、原子間結合力などの組み合わせによって、高圧誘起材料内の温度勾配を制御して加圧加熱を目的とする材料における温度を制御できる。 【0022】請求項7記載の発明は、請求項5記載の超高圧発生方法において、前記単一材料は黒鉛からなることを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0023】請求項7記載の発明によれば、黒鉛は光吸収性に優れ、しかも結合力の大きな共有結合の材料であるので、高圧誘起材料として単体で好ましく使用することがことができる。 【0024】請求項8記載の発明は、請求項2記載の超高圧発生方法において、前記光透過性材料を通じて前記高圧誘起材料に照射するパルスレーザ光のビーム径を、その最小ビーム径が前記高圧誘起材料の先方に形成されるように調整することを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0025】請求項8記載の発明によれば、光透過性材料を通じて高圧誘起材料に照射するパルスレーザ光のビーム径を、その最小ビーム径が高圧誘起材料の先方に形成されるように調整しているので、パルスレーザ光のピークが光透過性材料中に位置されなくなり、それだけ光透過性材料中での局所的な温度上昇を防ぐことができる。 【0026】請求項9記載の発明は、光透過性をもつサファイアアンビルを用いる高圧装置の前記サファイアアンビルにより形成した空所内に高圧誘起材料として少なくとも黒鉛を収容してその体積膨張を拘束し、該拘束状態にある黒鉛に前記サファイアアンビルの外からパルスレーザを照射することによって、前記黒鉛の原子間の結合を分解させ、該分解により得られる力を利用して前記黒鉛を収容した前記空所内に超高圧を発生させることを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0027】請求項9記載の発明によれば、原子間の結合の分解によって体積膨張する少なくとも黒鉛をその体積膨張を拘束して収容した空所の少なくとも一部分を光透過性のある材料によって形成し、光透過性材料を通じて外部から黒鉛に注入した光エネルギーによって、黒鉛を加熱してその原子間の共有結合を分解させ、原子間の共有結合の分解による黒鉛の体積膨張の力を利用して空所内に超高圧を発生させているので、黒鉛に注入した光エネルギーは、黒鉛によって効率よく吸収されて原子間の共有結合を分解するに必要な温度に黒鉛を素早く加熱するので、小さなものでよく、また、原子間を共有結合している大きな力に抗して分解することによって得られる体積膨張の力が非常に大きいため、体積膨張を拘束している空所内に発生される超高圧も非常に大きなものとなる。 【0028】請求項10記載の発明は、空所内で超高圧を受ける試料が粉末状であるとき、請求項1〜9記載の超高圧発生方法によって超高圧を発生するに先立ち、前記方法により前記光透過性材料を通じて外部から注入する光エネルギーに比べて小さな光エネルギーを前記光透過性材料を通じて外部から注入し、該注入した光エネルギーによって前記高圧誘起材料の原子間の結合を分解させて前記空所内に超高圧を発生させた後、前記空所の体積を減少させるようにしたことを特徴とする超高圧発生方法に存する。 【0029】請求項10記載の発明によれば、空所内で超高圧を受ける試料が粉末状であるとき、空所内に本格的な超高圧を発生するに先だって、拘束によっては取り除くことのできない試料が有する微細な空孔を事前に発生した超高圧によって減少させておくことできるので、空所内に本格的な超高圧を発生させたとき、発生した超高圧のピーク値をより高く、持続時間をより長いものにすることができる。 【0030】請求項11記載の発明は、原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料を、その体積膨張を拘束して収容するための空所を有し、該空所の少なくとも一部分が光エネルギー透過性を有する材料によって形成されている拘束手段と、前記空所内に拘束されている高圧誘起材料に、前記光エネルギー透過性材料を通じて外部から光エネルギーを注入する光エネルギー注入手段とを備え、該光エネルギー注入手段によって注入した光エネルギーによって前記高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させ、該原子間の結合の分解によって生じる前記高圧誘起材料の体積膨張の力を利用して前記空所内に超高圧を発生させることを特徴とする超高圧発生装置に存する。 【0031】請求項11記載の発明によれば、拘束手段の有する空所に、原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料が、その体積膨張を拘束して収容され、空所の少なくとも一部分が光エネルギー透過性を有する材料によって形成されている。光エネルギー注入手段が、空所内に拘束されている高圧誘起材料に、光エネルギー透過性材料を通じて外部から光エネルギーを注入し、注入した光エネルギーによって高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させ、この原子間の結合の分解によって生じる高圧誘起材料の体積膨張の力を利用して空所内に超高圧を発生させている。従って、高圧誘起材料に注入した光エネルギーは原子間の結合を分解するに必要な温度に加熱するだけでの小さなものでよく、また、原子間を結合している大きな力に抗して分解することによって得られる体積膨張の力が非常に大きいため、体積膨張を拘束している空所内に発生される超高圧も非常に大きなものとなる。 【0032】請求項12記載の発明は、請求項11記載の超高圧発生装置において、前記光エネルギー注入手段は、前記光エネルギー透過性材料を透過して前記高圧誘起材料に照射するレーザビームを発生するパルスレーザ装置を有することを特徴とする超高圧発生装置に存する。 【0033】請求項12記載の発明によれば、光エネルギー注入手段の有するパルスレーザ装置が、光エネルギー透過性材料を透過して高圧誘起材料に照射するレーザビームを発生するので、高圧誘起材料を加熱するのに適した波長のレーザビームを発生する既存のパルスレーザ装置を利用して、パルスレーザビームの強さとその持続時間を制御することで、光エネルギーを効率よくかつ調整して注入することができる。 【0034】請求項13記載の発明は、請求項11記載の超高圧発生装置において、前記光エネルギー注入手段は、前記光エネルギー透過性材料を透過する前に前記レーザビームの最小ビーム径が前記高圧誘起材料の先方に形成されるようにビーム径を絞り、前記高圧誘起材料に対するレーザビームの照射スポットの大きさを決定する絞り手段を更に有することを特徴とする超高圧発生装置に存する。 【0035】請求項13記載の発明によれば、光エネルギー注入手段の有する絞り手段が、光エネルギー透過性材料を透過する前にレーザビームの最小ビーム径が高圧誘起材料の先方に形成されるようにビーム径を絞り、高圧誘起材料に対するレーザビームの照射スポットの大きさを決定するので、パルスレーザ光のピークが光透過性材料中に位置されなくなり、それだけ光透過性材料中での局所的な温度上昇を防ぐことができる。 【0036】請求項14記載の発明は、請求項11記載の超高圧発生装置において、前記光エネルギー注入手段は、前記レーザビームを複数に分割し、該分割したレーザビームを前記空所内に拘束されている前記高圧誘起材料に異なる複数の方向から照射する光分割手段を更に有することを特徴とする超高圧発生装置に存する。 【0037】請求項14記載の発明によれば、光エネルギー注入手段の有する光分割手段が、レーザビームを複数に分割し、この分割したレーザビームを空所内に拘束されている高圧誘起材料に異なる複数の方向から照射するので、一方向からのみ照射される場合に比べて、より大きな体積膨張が空所内に生じ、より大きな超高圧が発生されるようになる。 【0038】請求項15記載の発明は、請求項10記載の超高圧発生装置において、前記高圧誘起材料とともに前記空所内に収容され、励起用レーザビームによる励起によって蛍光を発し、その波長が前記空所内の圧力の大きさに応じて遷移する波長遷移材料と、該波長遷移材料が放出する前記蛍光の波長を計測する波長計測手段とを有し、該波長計測手段によって計測した波長によって前記空所内に発生した超高圧の圧力を測定する圧力測定手段をさらに備えることを特徴とする超高圧発生装置に存する。 【0039】請求項15記載の発明によれば、高圧誘起材料とともに空所内に、励起用レーザビームによる励起によって蛍光を発し、その波長が空所内の圧力の大きさに応じて遷移する波長遷移材料が収容され、波長計測手段によって計測した波長遷移材料が放出する蛍光の波長に基づいて、圧力測定手段が空所内に発生した超高圧の圧力を測定するので、種類の異なる高圧誘起材料の使用によって、或いは、光エネルギーの注入の仕方によって変わる超高圧の発生の様子を測定によって知ることができる。 【0040】請求項16記載の発明は、請求項10記載の超高圧発生装置において、前記高圧誘起材料が分解したとき、前記空所内から輻射される輻射光の波長を計測し、該計測した波長によって前記空間内の温度を測定する温度測定手段をさらに備えることを特徴とする超高圧発生装置に存する。 【0041】請求項16記載の発明によれば、高圧誘起材料が分解したとき、空所内から輻射される輻射光の波長を温度測定手段が計測して、計測した波長によって空間内の温度を測定するので、種類の異なる高圧誘起材料の使用によって、或いは、光エネルギーの注入の仕方によって変わる高圧誘起材料の原子間の結合が分解する瞬間の温度及びその後の空所内の温度の変化の様子を知ることができる。 【0042】 【発明の実施の形態】以下、本発明による超高圧発生方法及び該方法を使用して超高圧を発生する超高圧発生装置を、その一実施の形態を示す図面を参照して説明する。 【0043】図1は、本発明による超高圧発生方法を実施する本発明による超高圧発生装置の一実施の形態を示す図である。同図において、超高圧発生装置は、原子間の結合の分解によって体積膨張する高圧誘起材料をその体積膨張を拘束して収容するための空所(図示せず)を有し、この空所の少なくとも一部分が光エネルギー透過性を有する材料によって形成されてなる拘束手段を構成する高圧装置1を備える。高圧装置1の詳細については、図2を参照して説明する。 【0044】高圧装置1は、図2に示すように、光エネルギー透過性材料である一対のサファイアアンビル1a及び1bと、一対のサファイアアンビル1a及び1bとともに高圧誘起材料2を収容する空所1′を形成するガスケット1cと、このガスケット1cをその両面より高圧力によって挟み付ける一対のサファイアアンビル1a及び1bを保持する図示しないクランプとによって構成されている。 【0045】図示のガスケット1cは、その両面より例えば5GPa(ギガパスカル)程度の高圧力によって一対のサファイアアンビル1a及び1bにより挟まれることによって、サファイアアンビルの当たっている部分が潰され、その周囲が盛り上がるように変形された状態で示されているが、挟まれて変形される前の状態では、例えば直径0.15mmの貫通孔1c′を有する、厚さ例えば0.2mmの例えば銅ベリリウムからなる平板であった。以上によって得られた、空所1′の容積は3.53mm3 である。一般には、ガスケットとしては、銅ベリリウム或いは銅のような比較的軟質のもので、加圧によってサファイアアンビル面を破損させることがない材質の平板が適用される。 【0046】再び図1に戻って説明すると、超高圧発生装置は、高圧装置1の有する空所内に拘束されている高圧誘起材料に、一対のサファイアアンビル1a及び1bを通じて外部から光エネルギーを注入する光エネルギー注入手段を構成するレーザ光照射装置を備える。レーザ光照射装置は、一対のサファイアアンビル1a及び1bを透過して高圧誘起材料に照射するレーザビームを発生するパルスレーザ装置3aを有する。パルスレーザ装置3aとしては例えばYAGレーザが適用され、実施の形態では、ビーム品質が良好な高出力レーザを発振できるスラブ型Nd:YAG結晶を使用したパルスYAGレーザが採用されている。このパルスレーザ装置3aとしては、出力するパルスレーザの出力レベルとその持続時間を任意に調整することができる。 【0047】レーザ光照射装置はまた、パルスレーザ装置3aが出力するレーザビームを直角方向に反射する第1の反射鏡3b1と、第1の反射鏡3b1によって反射された方向をさらに直角方向に反射する第2の反射鏡3b2とを有し、2つの反射鏡3b1及び3b2によって、レーザビームの方向をパルスレーザ装置3aからの出射方向と逆方向に変えているが、その理由は後述する。 【0048】パルスレーザ装置3aがスラブ型Nd:YAG結晶を使用している関係で、レーザビームのスポットが長方形になり、縦と横の広がり特性が異なり、離れるに従ってビーム形状がより長方形になる。そこで、レーザ光照射装置はまた、円形孔をもつアパーチャをレーザ装置共振器内に挿入し、パルスレーザ装置3aと第1の反射鏡3b1の間と、第1の反射鏡3b1と第2の反射鏡3b2の間のレーザビームの光路に、ビーム広がりによるビームパターンの長方形化を防ぎ、レーザ出力を有効に使用できるようにする第1の瞳転送用レンズ3c1及び第2の瞳転送用レンズ3c2が設けられ、丸いスポット形状のレーザビームが得られる構成となっている。 【0049】レーザ光照射装置はさらに、第2の反射鏡3b2によって反射され、高圧装置1の空所内に拘束されている高圧誘起材料に一方のサファイアアンビル1aを透過して注入するレーザビームの最小ビーム径が高圧誘起材料の先方に形成されるようにビーム径を絞り、高圧誘起材料に対するレーザビームの照射スポットの大きさを決定する絞り手段としての絞りレンズ3d1及び対物レンズ3d2と、対物レンズ3d2の焦点合わせ、及び、レーザビーム照射位置とスポット径の設定の際に使用する監視系3eとを有する。レーザビーム照射位置とスポット径の設定の際には、レーザビーム光路上には図示しない減光フィルタが置かれる。 【0050】絞りレンズ3d1及び対物レンズ3d2は、互いに連動しており、対物レンズ3d2の焦点を、図2に示すサファイアアンビル1aと高圧誘起材料2との界面に合わせたとき、絞りレンズ3d1及び対物レンズ3d2を透過したレーザビームのビーム径が界面における高圧誘起材料2の端面の形状に略合致するように絞りレンズ3d1が自動的に調整されるように構成されている。 【0051】監視系3eにおいては、照明光源3e1からの照明光をビームスプリッタ3e2によって反射して対物レンズ3d2を通じて入射させることで、サファイアアンビル1aと高圧誘起材料2との界面を照明し、この界面の様子を、対物レンズ3d2及びビームスプリッタ3e2及び3e3を介してCCDカメラ3e4によって撮像し、モニタ3e5に映し出すことによって、モニタ3e5に映し出された界面を観察しながら対物レンズ3d2の焦点が、界面が鮮明に映し出されるように調整されて、界面上に合わされる。 【0052】このように対物レンズ3d2の焦点が合わされた状態では、上述したように、レーザビームのビーム径が界面における高圧誘起材料2の端面の形状に略合致するようになる。そして、パルスレーザ装置3aから低レベルの試行用のパルスレーザ光を出射すると、界面にある高圧誘起材料2に照射されたレーザビームのスポットがモニタ3e5によって観察できるようになり、ビーム径が界面における高圧誘起材料2の端面の形状に略合致しているかどうかが確かめられる。略合致していることが確かめられた後は、監視系3eのビームスプリッタ3e2及び3e3は、図に矢印で示されるように、レーザビームの光路外に移動される。 【0053】上述したように、監視系3eを用いてパルスレーザの照射位置と照射径を調整した後、監視系3eのビームスプリッタ3e2及び3e3をレーザビームの光路外に移動させ、パルスレーザ装置3aから所定のレベルと持続時間のレーザビームを出力させる。このレーザビームは、瞳転送用レンズ3c1、第1の反射鏡3b1、瞳転送用レンズ3c2、第2の反射鏡3b2、絞り手段としての絞りレンズ3d1及び対物レンズ3d2、及び、サファイアアンビル1aを介して空所1′内に体積膨張を拘束して収容した高圧誘起材料2に照射され、このレーザビームの照射によって加熱された高圧誘起材料2の原子間の結合が分解して体積膨張するようになる。原子間の結合の分解によって生じる体積膨張の力は非常に大きく、空所1′内に超高圧が発生するようになる。 【0054】図1に示す超高圧発生装置は、空所1′内に発生した超高圧を測定するための圧力測定手段としての圧力測定系と、高圧誘起材料2が分解したとき、空所1′内から輻射される輻射光の波長を計測して空所1′内の温度を測定する温度測定手段としての温度測定系とをさらに備えるが、圧力測定系及び温度測定系の構成を説明する前に、圧力測定及び温度測定系の原理を、図3を参照して説明する。 【0055】図3に示すように、パルスレーザのビームBが透過されるサファイアアンビル1aと対向してガスケット1cを挟んで空所1′を形成しているサファイアアンビル1bと高圧誘起材料2との界面の近傍に位置するように、波長遷移材料としてのルビー4aが高圧誘起材料2とともに空所1′内に収容されている。レーザビームの照射によって加熱された高圧誘起材料2はその原子間の結合が分解し、この分解によって生じる体積膨張の力は空所1′内の高圧誘起材料2を介してサファイアアンビル1bとの界面に伝わり、波長遷移材料としてのルビー4aには発生した超高圧が加わる。 【0056】ルビー4aは、サファイアアンビル1bを透過して励起用レーザビームB1が照射されることによって励起され、蛍光B11を発しているが、その波長は空所1′内のルビー4aに加わっている圧力の大きさに応じて変化する。従って、ルビー4aが放出する蛍光B11の波長を計測することによって、空所1′内に発生した超高圧の大きさを測定することができる。 【0057】また、サファイアアンビル1bを透過して励起用レーザビームB1を照射していない状態で、空所1′内からサファイアアンビル1bを透過して放出されるサファイアアンビル1bとの界面にある高圧誘起材料2、すなわち、圧力面からの輻射光B2のスペクトルを測定し、測定したスペクトルが光学系を透過する際に受ける影響を取り除くため、基準光について測定した結果によって測定波長を補正して超高圧の発生している空所1′内の圧力面の温度を測定することができる。 【0058】再び図1に戻って説明すると、圧力測定系及び温度測定系は、励起用レーザビームB1をルビー4aに照射させるための対物レンズ4bと、対物レンズ4bの焦点合わせの際に使用する監視系4cとを有する。 【0059】監視系4cは、監視系3eとほぼ同じような構成を有し、照明光源4c1からの照明光をビームスプリッタ4c2によって反射して対物レンズ4bを通じて入射してサファイアアンビル1bと高圧誘起材料2との界面を照明させ、この界面の様子を、対物レンズ4b及びビームスプリッタ4c2及び4c3を介してCCDカメラ4c4によって撮像し、モニタ4c5に映し出すことによって、モニタ4c5に映し出された界面を観察しながら対物レンズ4bの焦点が界面に合わされて、界面がモニタ4c5に鮮明に映し出されるように調整される。 【0060】対物レンズ4bの焦点が界面に合わされた後は、監視系4cのビームスプリッタ4c2及び4c3は、図に矢印で示されるように、光路外に移動される。圧力測定する際には、監視系4cのビームスプリッタ4c2及び4c3を光路外に移動させた状態で、励起用レーザビームB1を発生するアルゴンレーザ(図示せず)からのレーザビームは、ビームスプリッタ(図示せず)によって反射された後、対物レンズ4bを介して空所1′内のルビー4aに照射され、ルビー4aが励起されて蛍光B11を発する。ルビー4aが発する蛍光は、ビームスプリッタ(図示せず)を透過して分光器(図示せず)に送られて分光される。 【0061】温度測定する際には、サファイアアンビル1bの圧力面からの輻射光B2を、対物レンズ4bが平行光にして分光器(図示せず)に送り、そのスペクトルを測定し、測定したスペクトル波長を補正した上で、超高圧の発生している空所1′内の圧力面での温度を測定する。なお、4dはパルスレーザ波長用ノッチフィルタで、パルスレーザ光が万が一にも測定系に至って測定光学系を破損させないように、パルスレーザ波長の光だけを遮断するためのものである。 【0062】上述した構成の超高圧発生装置を使用し、高圧誘起材料としての黒鉛の粉末を、高圧装置1の一対のサファイアアンビル1a及び1bがガスケット1cとともに形成した空所1′内にルビー4aとともに体積膨張を拘束して収容し、YAGレーザからなるパルスレーザ装置3aの発生する波長1060nm、図4に示すように持続時間約0.5msのパルスレーザビームを一方のサファイアアンビル1aを透過して照射し、黒鉛を加熱して原子間の共有結合を分解し、そのときルビー4aから発せられる蛍光を分光器によって分光し、時間に対する波長の変化を測定したところ、図5(b)に示すような分光特性が得られた。同図に波長に対応して示した圧力のスケールから分かるように、高圧装置1の空所1′内には、黒鉛の原子間の共有結合の分解によって、400〜500GPaの超高圧域が0.5ms近く持続して発生していることがわかる。なお、このときパルスレーザ装置3aが供給した総エネルギーを計算して見たところ、0.25J(ジュール)であり、単位面積単位時間当たりに換算すると、3.5×106 W/cm2であった。同図(a)はパルスレーザの波長と持続時間を示している。なお、図5中の圧力スケールは、良く知られている圧力p[Mbar]とルビーR1 蛍光線の波長シフトΔλ[nm]の関係式p=3.808[(Δλ/694.2+1)5 −1]から求めたものである。 【0063】図3について上述した例では、波長遷移材料としてのルビー4aの粒子を使用している。これに代えてルビー粉末を使用した場合の例を、図6を参照して、以下説明する。 【0064】ルビー粉末は、ルビーの蛍光波長遷移によって圧力を間接的に測定するための材料であり、重量1%クロムイオンのルビー粒子を潰して得られたものが用いられた。図6の例では、このルビー粉末4a′の使用に伴って、層状に配されたルビー粉末4a′と高圧誘起材料2として黒鉛粉末との間に圧力媒体として働く鉄粉末5を挟むようにし、黒鉛粉末としては、グラシーカーボンを使用され、パルスレーザーが照射されるアンビルの圧力面側に層状に配されている。 【0065】より詳細には、ルビー粉末、鉄粉末、黒鉛粉末は、この順に厚さ0.2mmのCu−Beガスケットに開けられた直径0.15mmの孔に詰め込まれ、サファイアアンビル1a及び1bの圧力面間に挟んで加圧された。拘束および加圧にはネジクランプタイプのサファイアアンビルセルが用いられている。 【0066】ルビー蛍光線は高圧実験中連続アルゴンレーザーからの514.5nmレーザー光B1によって励起した。ルビー粒子からの光はノッチフィルター付き分光器に送られ、分散された光は冷却CCDによって検出された。時間分解ルビー蛍光スペクトルは1024×256ピクセルを持つ冷却CCDによって30ms毎に記録された。ルビー蛍光線スペクトルはCCDのピクセルラインに記録された。 【0067】効率よく超高圧を発生するためには、粉末試料を隙間なくガスケット穴に詰め込む必要がある。サファイアアンビルにあまり大きな応力を掛けることなく、ガスケットをあまり潰すことなく試料を詰め込むために、サファイアアンビルによって約5GPaで加圧した後、試料に弱いYAGパルスレーザー光(パルスエネルギー:0.06J、パルス幅:0.2ms)を照射して試料だけに圧力を加え、さらにサファイアアンビルセルの3つのねじを軽く締め付けた。 【0068】図7(a)、(b)、および(c)はYAGパルス(パルスエネルギー:1.5J、パルス幅:0.4ms)が照射された試料のルビーからの蛍光のCCDカメラ記録を異なるグレースケールで示したものである。図7(d)はYAGレーザーパルスのCCD記録を示している。同図において、(b)のグレースケールは(a)の20倍、(c)は(b)の15倍にして表示してある。t=0はYAGパルスのピークである。 【0069】図7(a)からは、YAGパルスがピークに達してから約0.3ms後、高圧が発生し、ルビーから長波長の蛍光が発し始め、その直後に蛍光がほとんどなくなり、さらに約2ms後再び蛍光を放射するようになったことが分かる。圧力発生開始時におけるルビーの温度は、このときのR線の強度とYAGレーザー照射前の強度との比(0.6)から約380Kと推定され、この時点でルビーの蛍光寿命はほぼ3msであると考えられる。試料の熱伝導率を考慮すると、この圧力発生開始時でルビー粒子の温度は低下しつつある状態にあると考えられ、圧力による蛍光寿命の増大を考慮すると、UおよびY光吸収バンド(4A2→4T2、4A2→4T1)が高エネルギー側にシフトしたとしても、測定中ルビー蛍光は十分に持続するはずである。また、図7(b)からは、最長波長(860nm)が0.48msで射出されることが、図7(c)からは、最長波長(950nm)が0.42msで射出されていたことがそれぞれ分かる。 【0070】図7(a)、(b)、および(c)いずれも、広い範囲の波長のルビー蛍光が1ピクセルラインに記録されていることを示しており、変化が急激であること、圧力が非静水圧的であることを示唆している。ルビーには圧力により長波長側にシフトするそれぞれ2E→4A2と2T1→4A2遷移に帰属される幅が狭いRおよびR’バンドが存在する。常圧において、R’バンドはRバンドよりも低波長側に存在するが、Rバンドよりも圧力の影響を受けやすく、200GPaを越えると、Rバンドよりも長波長側に位置するようになる。RおよびR’バンドの圧力依存性を考慮すると、950nmの蛍光はR’バンドによると考えられる。また、0.48msでの860nmの蛍光はRバンドによるものであると考えられ、R’バンドはエネルギーギャプが0に近づいて消滅し、Rバンドが観察されるようになったと推定される。対応する圧力下でのバンド幅がはっきりしないので発生圧力の決定は難しいが、波長950nmのR’バンドと860nmのRバンドはそれらの圧力依存性を考慮すると、それぞれ600GPaおよび730GPaの圧力に相当する。 【0071】したがって、図7(a)および(b)は0.42msで圧力が急激に減少したのではなく、0.42から0.48msの間では圧力が上昇しつつある状態であったと推定され、それ以降さらに圧力が増大することによりR’、Rバンドが検出されなくなったと考えられる。図7における蛍光の消滅は、凡そ700GPa以上の圧力が1ms以上維持したことを示している。 【0072】図8は粉体試料の気孔を事前に小さなエネルギーのパルス照射により潰すことなく、パルスエネルギー1.5J、パルス幅0.4msのYAGパルスを照射して得られたルビー蛍光のCCD記録を、図7と同様に異なるグレースケールで示したものである。これらの図からルビーから発せられた蛍光の波長は事前に隙間を潰すためのパルス照射を行った図7の場合と比較してかなり短いことがわかる。さらに蛍光が消滅している時間も短い。この結果は本方法において粉末試料を加圧する場合、事前に気孔を潰して置くことによる効果が非常に大きいことを示している。事前にパルスエネルギーを照射する方法は、大きな試料室の確保が可能であるサファイアアンビルを用いた本超高圧発生方法において、硬度が大きい粉末試料の焼結を容易にする上で有効な方法である。 【0073】上述の実験における温度については実測していないが、黒鉛の原子間の結合を分解することから4000K以上の温度が発生しているものと考えられる。また、実験結果からは、パルスレーザビームのピーク値を上げることは勿論、ピーク値は変えず持続時間を延ばすことによって、発生する超高圧のピーク値を1TPa或いはそれ以上に上げることができることが分かる。 【0074】上述したように、絞りレンズ3d1及び対物レンズ3d2により構成されている絞り手段によって、レーザビームのビーム径が界面における高圧誘起材料2の端面の形状に略合致するように調整されることにより、パルスレーザ光は、その最小ビーム径が高圧誘起材料の先方に形成されるようになり、高圧誘起材料を加熱してその原子間の結合を分解させレーザビームのエネルギーレベルの大きな最小ビーム径の部分が、レーザビームが透過する光透過性材料であるサファイアアンビル1a中に存在することがなくなる。このことによって、パルスレーザ装置3aが出力するレーザビームの出力レベルが大きくなっても、サファイアアンビル1aが局部的に温度上昇して熱ひずみによって破損することを防ぐことができ、空所内の高圧誘起材料に、より大きな光エネルギーを比較的長い時間の間注入することを可能にするので、発生する超高圧をより大きくし、かつより長い時間維持することが可能になる。 【0075】図2について上述した、一対のサファイアアンビル1a及び1bとガスケット1cとによって形成されたる空所1′に収容される高圧誘起材料2としては、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい例えば黒鉛のような単一材料、又は、光吸収係数、原子間の結合力の少なくとも一方が大きい黒鉛、金属、水などの材料を複合して作成され、全体として、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい複合材料が使用できる。金属としては、コバルト、シリコン、ニッケル、タングステンなどの材料が適用できる。また、これらの材料は、空所1′内への収容などを考慮して粉体状にして使用され得る。 【0076】なお、高圧誘起材料2として光吸収係数が大きいことは、外部から注入される光エネルギーを効率よく吸収して注入する光エネルギーが少なくてもより高い温度に上昇することができるようになる。また、原子間の結合力が大きいことは、原子間の結合の分解によってより大きな体積膨張の力が得られ、空所1c内により大きな超高圧を発生することができるようになる。 【0077】また、高圧誘起材料を体積膨張を拘束して収容する空所の一部分を形成し、外部から空所内の高圧誘起材料に注入される光エネルギーを透過する光透過性材料としてのサファイアアンビル1a及び1bは、空所内に発生する超高圧に耐えるだけの強度を備えるだけでなく、光吸収係数が極めて小さく、透過する光エネルギーを吸収し難いので、自身が温度上昇し難く、それだけ大きな光エネルギーを透過しても破損し難い。さらにまた、ダイヤモンドと比較して反射率が小さいので、効率よくパルスレーザーを試料に照射できる。因みに、YAGレーザー光(波長:1.06μm)に対して、反射率はダイヤモンドの場合約17%であるが、サファイアの場合約7%である。また、サファイアは比較的大きな結晶体を安価に入手でき、より大きな空所を形成することができる点でも、ダイヤモンドに比べて優れている。さらに、サファイアは熱伝導率も低く、高圧誘起材料2に注入した光エネルギーによって加熱された高圧誘起材料2の熱を外部に逃がさず保持し、空所内に発生した超高圧をそれだけ長い時間維持できるようにする上でも有効である。 【0078】なお、上述した実施の形態では、高圧装置1は、その空所1′を、一対のサファイアアンビル1a及び1bによりガスケット1cをその両面より対向させて挟んで形成している、もっとも簡単な構造の対向アンビル型高圧装置として構成されているが、3つ以上のアンビルを用いて空所を形成するようにすることによって、より大きく、また一方向からだけでなく、複数方向から光エネルギーを注入することも可能になり、より大きな超高圧を発生することが期待できる。 【0079】なお、対向アンビル型高圧装置を使用したものにおいて、対向する2つのアンビルの各々からパルスレーザビームを注入する構成としては、図9に示すようなものが簡単に考えられる。すなわち、単一のパルスレーザ装置3aが出力するレーザビームは、ビームスプリッタ10aによって直進するビームと反射されたビームの2つにビームに分割される。直進されたビームは図1の場合と同じに対物レンズ3d2を介してサファイアアンビル1aを通じて入射される。一方、反射されたビームは、瞳転送用レンズ10bを介して入射されたビームスプリッタ10cによって直交する方向に反射された上でサファイアアンビル1bを通じて入射される。このことで、図10に示すように、高圧装置1の空所1′の相反する2方向から光エネルギーが注入されるようになり、図1のものに比べて2倍以上の大きさの超高圧を空所内の中央に発生することが可能になる。 【0080】なお、図9の本実施の形態では、図1に示す絞り手段としての絞りレンズ3d1及び対物レンズ3d2と配列方向は逆になっているが実質的に同一の構成、機能を有する絞り手段としての絞りレンズ11及び対物レンズ12と、監視系3e(図1)と実質的に同一の構成、機能を有する監視系13とが対物レンズ4bに代えて、他方のサファイアアンビル1bに対応して設けるだけで実現されている。 【0081】なお、監視系13のビームスプリッタは、パルスレーザの照射位置と照射径を調整した後、図1の監視系3eの場合と同様に、レーザビームの光路外に移動される。また、絞り手段としての絞りレンズ11及び対物レンズ12と監視系13は、ビームスプリッタ10a及び10bと一緒に、圧力測定及び温度測定を行うときには光路外に外され、対物レンズ4bが元の位置に戻される。 【0082】以上説明した実施形態によれば、1TPa以上の超高圧発生を可能にするだけでなく、従来の方法と比較して、その圧力維持時間は4桁ほど長く、発生に必要なパルスレーザー出力も数桁小さい。これまでの1TPaの超高圧を発生できる実験装置と比べれば、その規模ははるかに小さい。さらに、拘束用のアンビルとして、サファイアアンビルを用いれば、mm3 オーダーの高圧室の確保も可能である。このように、本発明では、これまでに存在する何れの超高圧発生法によっても達成できない高圧発生能力を持っている。この装置を用いれば、新規な物性的或いは化学的性質を有する新しい物質の合成や未知の物性を発見する可能性が格段に高められる。さらに、本発明の方法において、拘束用にサファイアよりも硬質のダイヤモンドアンビルを用いれば、工夫によっては、1TPaよりも更に数桁高い超高圧の発生が期待できる。 【0083】本発明は、光透過性の物体によって拘束された物体にパルスレーザーを照射して分解させ、その膨張を拘束することにより、1TPa(1000万気圧)以上の超高圧力の発生を可能にし、従来の1TPa以上の超高圧を発生できるレーザーショック法と比較して4桁以上長く、数100GPa以上の超高圧発生が可能である二段式ガス衝撃装置など衝撃銃法よりも3桁以上長い高圧力維持時間を実現でき、静的高圧発生が可能であるダイヤモンドアンビル高圧装置の試料容積(400〜500GPa発生時、10-9cm3 )と比べて、数桁大きく取れ、レーザーショック法と比較して桁違いに少ないエネルギーの投入によって超高圧発生が可能である超高圧発生方法と装置を提案し、これまでには不可能であった新規な物理的及び科学的性質を持つ物質の合成や未知の物質の性質を探求するための手段を提供する。 【0084】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の本発明は、高圧誘起材料に注入した光エネルギーは原子間の結合を分解するに必要な温度に加熱するだけでの小さなものでよく、また、原子間を結合している大きな力に抗して分解することによって得られる体積膨張の力が非常に大きいため、体積膨張を拘束している空所内に発生される超高圧も非常に大きなものとなり、従来得られなかった大きな超高圧力の発生を可能にする超高圧発生方法を提供することができる。 【0085】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、高圧誘起材料を加熱するのに適した波長のレーザビームを発生する既存のパルスレーザ装置を利用して、パルスレーザビームの強さとその持続時間を制御することで、光エネルギーを効率よくかつ調整して注入することができ、従来と比較してより長い高圧力維持時間を実現できる超高圧発生方法を提供することができる。 【0086】請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加え、光透過性材料が効率よく外部からの光エネルギーを透過し、吸収によって温度上昇し難く、それだけ熱歪みも発生し難くなり、より大きな光エネルギーを高圧誘起材料に照射してより大きな超高圧の発生を可能にする超高圧発生方法を提供することができる。 【0087】請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加え、サファイアはダイヤモンドに比べて反射率が小さく、しかも安価で比較的大きな結晶のものが安価に得られ、超高圧を発生する空所を形成する材料として都合がよいので、従来と比較してより大きな超高圧空所を実現できる超高圧発生方法を提供することができる。 【0088】請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、外部から注入するエネルギーが小さくても大きな体積膨張の力が得られ、高圧誘起材料が光吸収係数、原子間の結合力の少なくとも一方が大きい材料を複合して作成され、全体として、光吸収係数及び原子間の結合力が大きい複合材料からなるので、材料の組み合わせによって、超高圧の発生とその後の変化パターンを制御することが可能になるので、利用対象に応じて超高圧をコントロールして発生することのできる超高圧発生方法を提供することができる。 【0089】請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加え、高圧誘起材料として、原子間の結合力の大きな、共有結合、金属結合又は水素結合の材料から必要に応じて選択して使用することができるので、利用対象に応じて超高圧を発生するための高圧誘起材料を選択して使用することができ、高圧誘起材料内の温度勾配を制御して、加圧と加熱を目的とする材料の温度を制御することを可能にする超高圧発生方法を提供することができる。 【0090】請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加え、高圧誘起材料として黒鉛単体で好ましく超高圧を発生することができる超高圧発生方法を提供することができる。 【0091】請求項8記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加え、パルスレーザ光のピークが光透過性材料中に位置されなくなり、それだけ光透過性材料中での局所的な温度上昇を防ぐことができるので、より強力なパルスレーザビームを使用することが可能になり、より大きな超高圧を発生するのに都合の良い超高圧発生方法を提供することができる。 【0092】請求項9記載の発明は、黒鉛に注入した光エネルギーは黒鉛の原子間の共有結合を分解するに必要な温度に加熱するだけでの小さなものでよく、また、原子間を共有結合している大きな力に抗して分解することによって得られる体積膨張の力が非常に大きいため、体積膨張を拘束している空所内に発生される超高圧も非常に大きなものとなり、従来得られなかった大きな超高圧力の発生を可能にし、従来と比較してより長い高圧力維持時間を実現でき、従来と比較してより大きな超高圧空所を実現でき、かつ、従来と比較して桁違いに少ないエネルギーの投入によって超高圧発生が可能である超高圧発生方法を提供することができる。 【0093】請求項10記載の発明は、空所内で超高圧を受ける試料が粉末状であるとき、空所内に本格的な超高圧を発生するに先だって、拘束によっては取り除くことのできない試料が有する微細な空孔を事前に発生した超高圧によって減少させておくことできるので、空所内に本格的な超高圧を発生させたとき、発生した超高圧のピーク値をより高く、持続時間をより長いものにすることができる超高圧発生方法を提供することができる。 【0094】請求項11記載の発明は、高圧誘起材料に注入した光エネルギーは原子間の結合を分解するに必要な温度に加熱するだけでの小さなものでよく、また、原子間を結合している大きな力に抗して分解することによって得られる体積膨張の力が非常に大きいため、体積膨張を拘束している空所内に発生される超高圧も非常に大きなものとなる超高圧発生装置を提供することができる。 【0095】請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明の効果に加え、高圧誘起材料を加熱するのに適した波長のレーザビームを発生する既存のパルスレーザ装置を利用して、パルスレーザビームの強さとその持続時間を制御することで、光エネルギーを効率よくかつ調整して注入することができ、従来と比較してより長い高圧力維持時間を実現できる超高圧発生装置を提供することができる。 【0096】請求項13記載の発明によれば、請求項11記載の効果に加え、パルスレーザ光のピークが光透過性材料中に位置されなくなり、光透過性材料を破損することなく、より強力なパルスレーザビームを使用することが可能になり、より大きな超高圧を発生するのに都合の良い超高圧発生装置を提供することができる。 【0097】請求項14記載の発明は、請求項11記載の効果に加え、一方向からのみ照射される場合に比べて、より大きな体積膨張が空所内に生じ、より大きな超高圧が発生されるようになるので、より大きな超高圧を発生する超高圧発生装置を提供することができる。 【0098】請求項15記載の発明は、請求項11記載の効果に加え、種類の異なる高圧誘起材料の使用によって、或いは、光エネルギーの注入の仕方によって変わる超高圧の発生の様子を測定によって知ることができる超高圧発生装置を提供することができる。 【0099】請求項16記載の発明は、請求項11記載の効果に加え、種類の異なる高圧誘起材料の使用によって、或いは、光エネルギーの注入の仕方によって変わる高圧誘起材料の原子間の結合が分解する瞬間の温度及びその後の空所内の温度の変化の様子を知ることができる超高圧発生装置を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000125369 【氏名又は名称】学校法人東海大学
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| 【出願日】 |
平成14年10月31日(2002.10.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100060690 【弁理士】 【氏名又は名称】瀧野 秀雄 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−205233(P2003−205233A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月22日(2003.7.22) |
| 【出願番号】 |
特願2002−318884(P2002−318884) |
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