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【発明の名称】 高速大電流放電による高温超高圧の生成
【発明者】 【氏名】宮本 徹

【要約】 【課題】高温の超高圧状態を発生させる方法,及びそれを用い各種物資を合成させるための手段を提供する。

【解決手段】圧力容器中に1種類もしくは2種類以上の固体,液体,気体あるいはそれらの混合物からなる資料物質を封入し,高速大電流放電によりこの物質を加熱して,溶融,気化あるいは一部電離させることにより高温超高圧を発生させる。またこの超高圧状態を直接利用するか,あるいは生成された高温超高圧物質を小孔より減圧反応容器に噴出させて,急冷却状態および高密度粒子束を生成し各種物質の合成に供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】絶縁された電極間に,密閉された小スペースの圧力室(資料室)を作り,この圧力室中に1種類もしくは2種類以上の固体,液体,気体あるいはそれらの混合物からなる資料物質を封入し,パルス的な高速大電流放電によりこの資料物質を加熱し,溶融,気化あるいは一部電離させて高圧を発生させることを特徴とする高温超高圧発生方法。
【請求項2】請求項1において,圧力室に1個以上の密閉可能な小孔を設け,そこから請求項1の資料物質を充填,密閉後,高速大電流放電により溶融,気化あるいは一部電離させ高温超高圧状態を発生させた後,装置を分解することなく圧力室に設けた小孔から物質を排出できるようにした高温超高圧発生装置。
【請求項3】請求項2において,圧力室に減圧反応室を取り付け,両者の間を十分細い小孔あるいは設定された圧力で開く弁を持つ小孔で連結し,請求項1の資料物質を圧力室に充填,密閉後,高速大電流放電により圧力室内の物質を溶融,気化あるいは一部電離させ高温超高圧状態を発生させた後,この物質を小孔からラバールノズル等のノズルを通して,真空あるいは各種気体を封入した減圧反応室に噴出、膨張させることにより発生させた急冷却状態,あるいは高密度粒子束の利用を特徴とする各種物理的・化学的反応生成法。
【請求項4】請求項1及び2において,電極を冷却した状態で,圧力室中に請求項1の資料物質を封入し,高速大電流放電を反復することによりこの物質を繰り返し溶融,気化あるいは一部電離させ,複数回高温超高圧状態にすることを特徴とする高温超高圧状態の反復発生方法。
【請求項5】請求項2において,電極を冷却した状態で,圧力室中に請求項1の資料物質を封入し,高速大電流放電によりこの物質を溶融,気化あるいは一部電離させた後,迅速に排出する一連の過程を,短時間に反復することにより,繰り返し高温超高圧状態を発生させることを特徴とする高温超高圧状態の反復発生方法。
【請求項6】請求項3において,電極を冷却した状態で,圧力室中に請求項1の資料物質を封入し,高速大電流放電によりこの物質を溶融,気化あるいは一部電離させることにより生成した高温超高圧物質を,圧力室に設けた小孔からラバールノズル等のノズルを通して減圧反応室に噴出させる一連の過程を繰り返し発生させること特徴とする高温超高圧物質の急冷状態及び高密度粒子束の反復生成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温の超高圧状態を生成する方法,及び生成した高温超高圧物質を直接用いるか,あるいはその膨張により発生させた急冷状態及び高密度粒子束を,各種物質合成のため利用する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来,例えば特許出願公開番号2001−181777,2001−87892,平10−118481,平9−248443等のように,超高圧を発生させ,ダイヤモンドや立方晶窒化ほう素の生成あるいは物質の超高圧下における変形特性を試験するための装置が開示されている。これらは,本発明と類似の目的,機能を有する方法であるが,いずれも外部からピストン等を用い機械的な力を加えて超高圧を発生させる方法に関するものである。第2の例としては溶融した鉄等の金属が冷却,収縮するときに発生する高圧を利用する方法がある。さらに放電を利用するという点で若干の関連を持つ技術として,第3に希薄ガスあるいは細線に大電流を流し,超高温のプラズマを発生させ,周囲に生じる強磁場により,容器壁から隔離しこれを保持する技術がある。第4に,特許出願公開番号2000−219506のように,パルス放電で炭素を加熱しフラーレンを製造することを目的とする方法が開示されている。第5に,第3,4のようなパルス大電流放電ではなく,各種定常あるいは高周波の低電流放電により,低温プラズマを生成させ利用するプラズマCVD法が実用に供されている。この場合通常の意味の圧力は極めて低いが,個々のプラズマ粒子が他の物質と衝突する際のエネルギーあるいは圧力を利用しているとも云える。第6の方法として,第3,4,5のように,ほぼ真空に近い雰囲気中に超高温あるいは低温のプラズマを生成する方法とは別に,比較的高いガス圧を用いてアーク放電プラズマが生成されている。例えば,数気圧のガス中あるいは安定化のため回転させたガス中に,強磁場で熱絶縁されたプラズマ柱が生成されており,各種の用途に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来のもので,最も本発明に関連している第1の方法は,機械的な力を用いて超高圧を発生させるものであり,機械的駆動部が存在し,高圧を発生,持続する時間が長く,圧力容器の機械的強度のため,発生できる圧力に限度がある。容器の耐圧は,それが破壊されることだけでなく,超高圧下では容器壁に用いる金属等の固体も液化し,レイレー・テイラー型の不安定が発生することによっても制約される。また高温にするためには加圧することとは別に加熱しなければならないが,加圧時間が長いため、熱伝導及び放射損失のため生成温度にも限度がある。第2の溶融金属を用いる方法は,加熱膨張した物質を急冷してえられる熱的な収縮力により高圧を発生させるものであり,加圧できる物質に制約があり,冷却後に物質を採取するため金属を破砕すると云う煩雑な手続きを要する。第3の超高温プラズマの磁場閉じ込めは,放電を用いるという点では共通しているが,プラズマの温度が十分高くなければならず,物質の密度は低く,本発明が対象としている温度領域,密度領域とはかけ離れており,当然物質を合成する等の目的には適用できない。第4の方法は,「真空かもしくは非酸化性ガス雰囲気中でパルス放電することを特徴とするフラーレンの製法」に関するもので,超高圧発生を目的としたものではない。また電流の周波数は高々35kH以下の低速放電であり,固体あるいはそれに近い媒質を,この程度の周波数で低速加熱しようとすれば,温度勾配は小さく,温度の上昇と共に熱伝導損失は急速に増加する。高温を得るためにはそれを補うエネルギーを必要とするが,本発明が対象としている温度領域では,入力不可能な程膨大となる。また保持する容器の耐熱度による制約からも,生成可能な温度は制約される。電流不安定が発生し局所的にごく短時間電流が集中する場合を除き,資料が全体的に加熱される場合には,容器壁の耐熱温度を大きく超える高温を得ることは不可能である。第5のプラズマCVDに用いられているプラズマ温度は本発明が対象としている温度範囲にあるが,密度は極めて低く(本発明の百万分の1以下)当然その圧力も低い。第6のガス絶縁放電では,数万度のプラズマを生成することができ,第5の方法に比べると密度はかなり高いが,それを閉じこめている磁場及びガス圧は高々数気圧程度で,超高圧を発生させる目的のものではない。
【0004】本発明が解決しようとしている課題は、機械的駆動部なしに資料を1000度−10万度の高温に加熱し超高圧を発生させることにある。このような高温では,熱伝導損失,放射損失が極めて大きく,また一般に利用できる耐熱材料も3000度程度までである。こうした現実的制約の下で,超高圧を発生させる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、圧力容器内に封入した資料物質を,1000度−10万度の高温に加熱し,超高圧を発生させる課題を,パルス的な高速大電流放電により実現する。高速大電流は,回路インピーダンスを十分に減らしたコンデンサー放電回路を用いることにより発生させることができる。更に回路の浮遊抵抗を減らし,資料の抵抗より十分小さくすることにより,放電エネルギーの大部分を短時間の内に,封入した資料物質に与えることができる。このとき,資料物質の熱容量を十分小さくしておけば,高温にまで加熱することができる。また膨張しようとする高温の資料物質を圧力容器内に封じ込めておけば,同時に高圧を得ることができる。達成できる温度は加熱エネルギー,試料の熱容量だけでなく,加熱過程における熱伝導及び放射損失等のエネルギー損失も関係する。到達温度,密度,資料の幾何学的な大きさが決まっているとき,これらのエネルギー損失は加熱時間と共に増加する。このため,高い到達温度を得るためには,急速に加熱することが本質的に重要である。他の条件にもよるが,典型的には数十マイクロ秒程度以下で加熱することが必要であり,10万度を達成するためには,更に十分短時間に加熱することが要求される。
【0006】放電電流増加率が十分大きな時の極限では,これらエネルギー損失は十分小さくなる。このようなエネルギー損失が無視できる極限において,体積V(m)の圧力室にエネルギーW(J)が注入されれば,圧力はp=W/Vとなる。これは到達可能な圧力の上限を示している。投入エネルギーが同じ時,圧力室の体積を小さくすれば,発生する圧力はそれに反比例して大きくできる。しかし,このとき圧力に比例して温度も増加するため,エネルギー損失が無視できなくなり,達成できる圧力は制約されることになる。到達可能な温度Tの上限は,資料が全粒子数Nの分子,原子あるいはイオン及び電子から構成されており,ボルツマン定数がk(J/K)であるとき,T=W/Nkで与えられる。資料の質量がM(kg),その原子量がAの原子のとき全粒子数はN=6x1026M/Aである。更に資料の比重がρ(kg・m),体積がv(m)であるとき,到達可能な温度の上限はT=1.2x10−4(AW)/(ρv)とも書ける。一例として,A/ρ〜10−2,注入エネルギーW=10(kJ),資料の体積が圧力室の体積と同じでV=v=10−6(m−3)の時,温度はT〜10(K)程度となり,原理的に達成できる圧力は1010(N/m)=10万気圧となる。
【0007】実際には,各種のエネルギー損失のため,この上限値を達成することは出来ない。放電部を除く放電回路の損失は,原理的に十分小さくできるので,実際に達成される温度及び圧力は,前述のように加熱された資料物質からのエネルギー損失(熱伝導及び放射損失)とジュール加熱の釣り合いによりほぼ決まる。エネルギー損失は,加熱しそれを持続する時間と共に増加する。一方ジュール加熱は,同じ資料,放電エネルギーに対しては,回路のインピーダンスが小さく,最大電流が大きいとき,すなわち周期が短いとき大きい。それ故,よりパルス的であるとき,より高い温度,圧力が得られる。
【0008】一般に使用できる圧力容器材質の耐熱温度は,常識的には3000度程度に制約される。それ故,これ以上の温度を定常的あるいは長時間持続することはできない。しかし,パルス的であれば,資料中心部の温度を容器の耐熱温度以上にすることが可能である。その際,放電エネルギーを圧力室壁の有効熱容量(加熱時間の間に高温の資料からエネルギーが輸送される領域の熱容量)と同程度に押さえることが必要である。圧力室壁の温度は一時的に急速に増加するが,容器全体の熱容量が十分大きければ,短時間の内に冷却され,圧力容器の耐圧で許される範囲の高圧を発生することが可能となる。
【0009】上記高温高圧状態は,ダイアモンドの高圧合成等各種物質の合成に利用できる。さらに,生成された高温物質を小孔からラバールノズル等のノズルを通して,減圧室に噴射することにより,急速に冷却することができる。このとき物質は急冷されると共に,高密度の高速粒子束となる。これらの過程は,例えば,フラーレン等の合成に利用できる。また粒子束の密度は,通常のプラズマCVDで用いられている密度の数万倍以上にすることも可能であり,ダイアモンドの低温生成,ナノチューブの生成その他の目的に利用することができる。
【0010】高速パルス放電を用いるため,高温,超高圧状態にある時間は短く,放電エネルギーは小さくて済む。従って,十分な時間間隔で放電されれば,特に熱負荷の問題を考える必要はない。しかし高温,超高圧状態にある時間を増加させ,多量の高速粒子束をえるために放電を短時間に繰り返すと,装置の熱負荷が増加する。この課題は,請求項4−6のように装置を冷却することにより解決できる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明を実施するための形態例を請求各項に則して以下に説明する。図1は請求項1の実施形態例を示している。図1において,放電は電極1と電極2の間で行われる。電極1と電極2は,絶縁板3,絶縁ハット6(セラミック,ガラスエポキシ等)で絶縁され,また両電極間にもうけられた小スペースの圧力室(資料室)9が気密になるように,シール8を挟み締め付け用金属板4及び5によりボルト7,ナット7’により締め付けられている。電極1及び2の間の放電は,両電極間の圧力室に物質を充填した後,両電極に接続されているコンデンサー10及びスイッチ11を用いて行われる。図2は請求項2の実施例で,電極1及び2に小孔を設け,2つの小孔を用いて,電極1及び2の間にある圧力室に資料物質を充填,排出できるようにしている。資料を充填した後,これらの小孔は栓付きフランジ12によって塞がれ,この栓付きフランジはボルト13によりそれぞれ電極1及び2に固定されている。この栓付きフランジの固定は,ボルトを用いることなく油圧シリンダー等を用いて両側から圧着することも可能である。また栓の代わりにラプチャーディスクのような安全弁を取り付けることも可能である。図1の場合のように装置全体を分解することなく,資料物質を充填しまた排出できる特徴を持っている。図3は請求項3の実施例で,高電圧に対する耐圧を増すため絶縁シート15を挿入している点,コンデンサー及びスイッチを省略している点以外の放電系は,図1及び2と本質的に同じである。図2と同様に圧力室側面に小孔を設け,片側の電極に設けた小孔は資料を充填後に塞ぎ,もう一方の電極に設けられた小孔には,ラバールノズル等のノズル14,更にノズルを通して加圧された物質を噴出,膨張させる減圧反応容器16が取り付けられている。減圧反応容器16は,フランジ16’により密閉され,真空にされるかあるいは希薄ガスが充填されている。圧力室9にもうけられている小孔は,パルス的に資料物質が加熱され超高圧となることを妨げないよう十分細くするか,あるいはある圧力に到達した後開らくように設定された弁により塞がれている。放電により高温超高圧となった資料物質は,ノズル14を通って,減圧反応容器に噴出,膨張することにより急冷却され,また比較的速度のそろった高密度の粒子束となる。請求項4は,請求項1及び2において電極1及び2,絶縁物3を冷却できるようにし,圧力室内で資料物質を複数回高温超高圧にすることができるようにしたものである。請求項5は,請求項2の電極1及び2,絶縁物3を冷却できるようにし,圧力室に資料物質の充填し,放電により加熱した後,その物質の排出を迅速にできるようにすることにより,高温超高圧状態を短時間に繰り返し生成できるようにしたものである。請求項6は,請求項3において電極1及び2,絶縁物3を冷却できるようにし,圧力室に資料物質を充填し,放電により高温超高圧物質を生成後ノズルから噴出させ,急冷却すると共に高密度粒子束を短時間に繰り返し生成できるようにしたものである。
【0012】
【発明の効果】本発明は高温,超高圧状態を発生させる方法,及び生成された高温高圧物質の急冷状態及び高密度の粒子束を発生させる方法を与え,ダイアモンド,立方晶窒化ほう素の合成の外フラーレンあるいはまた特殊な環境下で生成されると期待される各種新物質合成,例えば炭素の代わりに窒素,シリコン等を用いたフラーレン状の構造の探索などに用いることができると共に,高密度プラズマ粒子束によるフラーレン,ナノチューブの生成あるいは高密度プラズマCVDを可能にする。
【出願人】 【識別番号】391005547
【氏名又は名称】宮本 徹
【出願日】 平成14年1月16日(2002.1.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−205232(P2003−205232A)
【公開日】 平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願番号】 特願2002−42341(P2002−42341)